説明

ジシクロヘキサン誘導体の製造方法

【課題】フェニルトランスシクロヘキサン誘導体の水素化による、シクロヘキサン環のシス体への異性化なしにトランスジシクロヘキサン誘導体を収率よく与える製造方法の提供。
【解決手段】下記一般式で表されるフェニルトランスシクロヘキサン誘導体を、ロジウム触媒存在下で水素化反応を行って、対応するトランスジシクロヘキサン誘導体を得るジシクロヘキサン誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジシクロヘキサン誘導体の製造方法に関する。より詳しくは、トランスシクロヘキサン環を有する芳香族化合物を、シス体へと異性化させることなく水素化し、トランスジシクロヘキサン誘導体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジシクロヘキサン誘導体のトランス体は、表示用液晶化合物や医薬品中間体等の原料として期待される化合物である。
フェニルトランスシクロヘキサン誘導体からトランス体のジシクロヘキサン誘導体を得ようとする場合、金属触媒を用いて水素化反応を行い再結晶することでトランス体を得る方法(非特許文献1)が提案されている。
【非特許文献1】Tetrahedron Letters 45 (2004) 6669−6672
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記非特許文献1の方法では、原料のトランスシクロヘキサン環をシス体へと異性化させてしまい、トランス体の収率が低かった。また該シス体とトランス体を分離するために再結晶等の操作を行う必要があり、工程が複雑になったり、コストがかかるという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、水素化反応によりトランスシクロヘキサン環が下記一般式(III)のようなシス体へと実質的に異性化することなくトランスジシクロヘキサン誘導体を製造する方法を提供することである。
【0005】
【化1】

【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は以下の手段により達成された。
1.
下記一般式(I)で表されるトランスシクロヘキサン環を有する化合物を、ロジウム触媒存在下にて水素化することによって、下記一般式(II)で表されるトランスシクロヘキサン環を有するジシクロヘキサン誘導体を得る工程を有する、ジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
【0007】
【化2】

【0008】
【化3】

【0009】
(上記一般式(I)および一般式(II)中、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表す。Rは−COOR11又は−CONR1213を表す。R11、R12、及びR13はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、又はアルコキシ基を表す。)
2.
前記一般式(I)及び一般式(II)において、R、R、R、R、R、R、R、及びR10が全て水素原子である上記1に記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
3.
前記一般式(I)及び一般式(II)において、Rが−COOHである上記1または2に記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
4.
前記一般式(I)及び一般式(II)において、Rが、炭素数1〜30のアルキル基または炭素数1〜30のアルコキシ基である上記1〜3のいずれかに記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
5.
前記ロジウム触媒が、ロジウムを担体に担持させたものであり、該担体がカーボンまたはアルミナである上記1〜4のいずれかに記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
6.
担体に担持されたロジウムの量が、ロジウム触媒の全質量に対して、1〜30質量%である上記1〜5のいずれかに記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
7.
前記ロジウム触媒の使用量が、前記一般式(I)で表される化合物100質量部に対して、0.5〜30質量部である上記1〜6のいずれかに記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
8.
水素化反応における水素圧が0.1以上50MPa以下である上記1〜7のいずれかに記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
9.
水素化反応が溶媒中で行われる上記1〜8のいずれかに記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
10.
前記溶媒が、酢酸または水である上記9に記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定のトランスシクロヘキサン環を有する芳香族化合物のシクロヘキサン環をシス体へと異性化させることなく、芳香環を水素化し、トランスジシクロヘキサン誘導体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るジシクロヘキサン誘導体の製造方法について具体的に説明する。
本発明は、下記一般式(I)で表されるトランスシクロヘキサン環を有する化合物を、ロジウム触媒存在下にて水素化し、下記一般式(II)で表されるトランスシクロヘキサン環を有するジシクロヘキサン誘導体を得る、ジシクロヘキサン誘導体の製造方法である。
【0012】
【化4】

【0013】
【化5】

【0014】
(上記一般式(I)および一般式(II)中、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表す。Rは−COOR11又は−CONR1213を表す。R11、R12、及びR13はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、又はアルコキシ基を表す。)
【0015】
なお、上記一般式(I)および一般式(II)は以下のように表記することもできる。
【0016】
【化6】

【0017】
【化7】

【0018】
[一般式(I)または一般式(II)で表される化合物]
一般式(I)および一般式(II)中、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表すが、好ましくは水素原子である。
置換基としては、以下のものが挙げられる。
シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、ベンジル基、4−メトキシベンジル基、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、末端に重合性基を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜30のもの)、末端にカルバミン酸ベンジル基を有するアルキル基(好ましくは炭素数9〜30のもの)、末端にカルバミン酸t−ブチル基を有するアルキル基(好ましくは炭素数6〜30のもの)、末端にベンゼン環を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜10のもの)、エーテル結合を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜30のエーテル結合を有するアルキル基、例えば2−メトキシブチル基、3−メトキシブチル基、4−メトキシブチル基、4−エトキシブチル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル))等。
【0019】
は−COOR11又は−CONR1213を表す。R11、R12、及びR13はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基(例えば、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜6)を表す。好ましくは−COOR11であり、より好ましくは−COOHである。
【0020】
はアルキル基、シクロアルキル基、又はアルコキシ基を表す。これらは、無置換でもよいし、置換基を有するものであってもよい。置換基としては、前記R等の説明で例示した置換基が挙げられる。
は、好ましくは、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基であり、より好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基である。
【0021】
一般式(I)で表される化合物は公知の方法によって合成することができる。また市販品を用いることもでき、例えば、パラ(トランス−4−エチルシクロヘキシル)安息香酸は、Yantai Valiant Fine Chemicals Co.,Ltdより購入できる。
【0022】
[ロジウム触媒]
本発明に係る水素化反応は、ロジウム触媒を使用する。ロジウム触媒は、触媒金属活性成分としてのロジウム成分を担体に担持させたものであることが好ましい。担体としては、例えば、カーボン、アルミナ、シリカアルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、活性白土などが挙げられる。特にカーボンまたはアルミナが好ましい。
【0023】
担体に担持されるロジウム成分の量は、ロジウム触媒の全質量に対する金属ロジウムの量として、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜30質量%である。
【0024】
ロジウム触媒の使用量は、原料の一般式(I)で表される化合物(フェニルトランスシクロヘキサン誘導体ともよぶ)100質量部に対して、好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部の割合である。
【0025】
ロジウム触媒は公知の方法で製造することができるし、また、市販品を用いることもできる。例えば、5質量%ロジウム/アルミナ(N.E.CHEMCAT社製)、5質量%パラジウム/カーボン(N.E.CHEMCAT社製50質量%wet品)などが挙げられる。
【0026】
[水素圧]
水素化する際の水素圧は、好ましくは、0.1〜50MPa以下であり、より好ましくは0.1〜15MPaである。
【0027】
[溶媒]
フェニルトランスシクロヘキサン誘導体の水素化は溶媒中で行われることが好ましい。溶媒としては1種でもよいし、2種以上を混合してもよい。溶媒としては、炭素数1〜12の脂肪族飽和アルコール、ヘキサン、水、酢酸エチル、炭素数1〜5のカルボン酸等が挙げられる。特に、酢酸または水が好ましい。
【0028】
[フェニルトランスシクロヘキサン誘導体の水素化]
本発明に係るジシクロヘキサン誘導体の製造方法の好ましい態様としては、前記ロジウム触媒存在下に溶媒(好ましくは水または酢酸)中で、フェニルトランスシクロヘキサン誘導体の水素化を行う。水素化は、系内を窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスで置換した後、水素置換して行うことが望ましい。反応温度は20〜80℃が好ましい。反応は通常、プロトンNMR測定やGC測定によりモニターしながら行い、反応時間は特に限定されないが、通常は、30分〜20時間程度である。
本発明の製造方法によれば、上述の通り、特定のトランス体の芳香族化合物を特定の触媒存在下で反応させることにより、実質的にシス体に異性化させずにトランス体の水素化物(ジシクロヘキサン)を製造することができる。具体的には、ガスクロマトグラフィー分析において、水素化物全量に対するトランス体の割合が例えば99%以上(特に99.5%以上、さらには100%程度)という極めて高い収率でトランスジシクロヘキサンを得ることができる。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
[4’−エチル−ジシクロヘキシル−4−カルボン酸の調製]
内容量480mlのオートクレーブにパラ(トランス−4−エチルシクロヘキシル)安息香酸(Yantai Valiant Fine Chemicals Co.,Ltdより購入)34.8g(150mmol)と酢酸280mlを仕込み、ロジウム触媒として5質量%ロジウム/アルミナ(N.E.CHEMCAT社製)を1g添加した。
上記仕込み終了後、窒素でオートクレーブ内を0.5MPaまで昇圧し、その後脱圧する操作を計3回繰り返し、系内の窒素置換を行った。次いで、水素で上記窒素置換と同様の操作で系内を水素置換し、その後系内を昇温し、50℃に達した時点で系内の水素圧力が9MPaになるように調整し、水素化に必要な理論水素量の水素を供給した。
水素化反応を50℃で8時間行った後、系内の反応液を室温まで冷却し、反応液から触媒を濾別除去した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水で洗浄した。有機層を減圧濃縮し目的物である4’−エチル−ジシクロヘキシル−4−カルボン酸を35g(収率98%)得た。ガスクロマトグラフィーにより分析を行った結果、シクロヘキサン環Aのトランス体は100%であった。
【0030】
【化8】

【0031】
(実施例2)
[4’−プロピル−ジシクロヘキシル−4−カルボン酸の調製]
内容量50mlのオートクレーブにパラ(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)安息香酸0.50g(2.1mmol)と酢酸2mlを仕込み、ロジウム触媒として5質量%ロジウム/カーボン(N.E.CHEMCAT社製50質量%wet品)を60mg添加した。
上記仕込み終了後、窒素でオートクレーブ内を0.5MPaまで昇圧し、その後脱圧する操作を計3回繰り返し、系内の窒素置換を行った。次いで、水素で上記窒素置換と同様の操作で系内を水素置換し、その後系内を昇温し、50℃に達した時点で系内の水素圧力が4MPaになるように調整し、水素化に必要な理論水素量の水素を供給した。
水素化反応を50℃で8時間行った後、系内の反応液を室温まで冷却し、反応液から触媒を濾別除去した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水で洗浄した。有機層を減圧濃縮し目的物である4’−プロピル−ジシクロヘキシル−4−カルボン酸を0.52g(収率>99%)得た。ガスクロマトグラフィーにより分析を行った結果、シクロヘキサン環Cのトランス体は100%であった。
【0032】
【化9】

【0033】
(実施例3)
[4’−エチル−ジシクロヘキシル−3−メチル−4−カルボン酸の調製]
4−(トランス−4−エチルシクロヘキシル)−2−メチル安息香酸を原料とし、実施例1と同様に反応を行った結果、シクロヘキサン環Dのトランス体は100%であった。
【0034】
【化10】

【0035】
(実施例4)
[4’−エチル−ジシクロヘキシル−4−カルボン酸エチルエステルの調製]
パラ(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)安息香酸エチルエステルを原料とし、実施例1と同様に反応を行った結果、シクロヘキサン環Eのトランス体は100%であった。
【0036】
【化11】

【0037】
(実施例5)
[4’−エチル−ジシクロヘキシル−4−カルボン酸ジエチルアミドの調製]
パラ(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−N,N−ジエチルベンズアミドを原料とし、実施例1と同様に反応を行った結果、シクロヘキサン環Fのトランス体は100%であった。
【0038】
【化12】

【0039】
(比較例1)
[4’−エチル−ジシクロヘキシル−4−カルボン酸の調製]
内容量50mlのオートクレーブにパラ(トランス−4−エチルシクロヘキシル)安息香酸0.50g(2.2mmol)と酢酸2mlを仕込み、触媒として10質量%パラジウム/カーボン(川研ファインケミカル社製50質量%wet品)を100mg添加した。
上記仕込み終了後、窒素でオートクレーブ内を0.5MPaまで昇圧し、その後脱圧する操作を計3回繰り返し、系内の窒素置換を行った。次いで、水素で上記窒素置換と同様の操作で系内を水素置換し、その後系内を昇温し、120℃に達した時点で系内の水素圧力が0.9MPaになるように調整し、水素化に必要な理論水素量の水素を供給した。
水素化反応を120℃で8時間行った後、系内の反応液を室温まで冷却し、反応液から触媒を濾別除去した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水で洗浄した。有機層を減圧濃縮し目的物である4’−エチル−ジシクロヘキシル−4−カルボン酸を0.52g(収率>99%)得た。ガスクロマトグラフィーにより分析を行った結果、シクロヘキサン環Aのシス体/トランス体比は7/93であった。
【0040】
【化13】

【0041】
(比較例2)
[4’−エチル−ジシクロヘキシル−4−カルボン酸の調製]
内容量200mlのオートクレーブにパラ(トランス−4−エチルシクロヘキシル)安息香酸15g(65mmol)と10質量%KOH水60mlを仕込み、触媒としてスポンジニッケル触媒R−100(日興リカ社製)を6.6g添加した。
上記仕込み終了後、窒素でオートクレーブ内を0.5MPaまで昇圧し、その後脱圧する操作を計3回繰り返し、系内の窒素置換を行った。次いで、水素で上記窒素置換と同様の操作で系内を水素置換し、その後系内を昇温し、180℃に達した時点で系内の水素圧力が9.5MPaになるように調整し、水素化に必要な理論水素量の水素を供給した。
水素化反応を180℃で40時間行った後、系内の反応液を室温まで冷却し、反応液から触媒を濾別除去した。反応液に塩酸水を加え、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水で洗浄した。有機層を減圧濃縮し目的物である4’−エチル−ジシクロヘキシル−4−カルボン酸を得た(収率94%)。ガスクロマトグラフィーにより分析を行った結果、シクロヘキサン環Aのシス体/トランス体比は6/94であった。
【0042】
【化14】

【0043】
(比較例3)
[4’−エチル−ジシクロヘキシル−4−カルボン酸の調製]
内容量50mlのオートクレーブにパラ(トランス−4−エチルシクロヘキシル)安息香酸0.50g(2.2mmol)と10質量%KOH水2mlを仕込み、触媒として5質量%ルテニウム/カーボン(N.E.CHEMCAT社製50質量%wet品)を100mg添加した。
上記仕込み終了後、窒素でオートクレーブ内を0.5MPaまで昇圧し、その後脱圧する操作を計3回繰り返し、系内の窒素置換を行った。次いで、水素で上記窒素置換と同様の操作で系内を水素置換し、その後系内を昇温し、110℃に達した時点で系内の水素圧力が0.9MPaになるように調整し、水素化に必要な理論水素量の水素を供給した。
水素化反応を110℃で10時間行った後、系内の反応液を室温まで冷却し、反応液から触媒を濾別除去した。反応液に1N塩酸水を加え、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水で洗浄した。有機層を減圧濃縮し目的物である4’−エチル−ジシクロヘキシル−4−カルボン酸を(収率97%)得た。ガスクロマトグラフィーにより分析を行った結果、シクロヘキサン環Aのシス体/トランス体比は3/97であった。
【0044】
【化15】

【0045】
(比較例4)
[4’−エチル−ジシクロヘキシル−4−カルボン酸エチルエステルの調製]
パラ(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)安息香酸エチルエステルを原料とし、比較例1と同様に反応を行った結果、シクロヘキサン環Eのシス体/トランス体比は11/89であった。
【0046】
【化16】

【0047】
(比較例5)
[4’−エチル−ジシクロヘキシル−4−カルボン酸ジエチルアミドの調製]
パラ(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−N,N−ジエチルベンズアミドを原料とし、比較例1と同様に反応を行った結果、シクロヘキサン環Fのシス体/トランス体比は9/91であった。
【0048】
【化17】

【0049】
これらの結果から、本発明のロジウム触媒を用いる方法により原料のシクロヘキサン環をシス体へと異性化させることなく水素化反応を行うことができる。その結果、反応後に再結晶などの操作は不要であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるトランスシクロヘキサン環を有する化合物を、ロジウム触媒存在下にて水素化することによって、下記一般式(II)で表されるトランスシクロヘキサン環を有するジシクロヘキサン誘導体を得る工程を有する、ジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
【化1】

【化2】

(上記一般式(I)および一般式(II)中、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表す。Rは−COOR11又は−CONR1213を表す。R11、R12、及びR13はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を表す。Rはアルキル基、シクロアルキル基、又はアルコキシ基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(I)及び一般式(II)において、R、R、R、R、R、R、R、及びR10が全て水素原子である請求項1に記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(I)及び一般式(II)において、Rが−COOHである請求項1または2に記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(I)及び一般式(II)において、Rが、炭素数1〜30のアルキル基または炭素数1〜30のアルコキシ基である請求項1〜3のいずれかに記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
【請求項5】
前記ロジウム触媒が、ロジウムを担体に担持させたものであり、該担体がカーボンまたはアルミナである請求項1〜4のいずれかに記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
【請求項6】
担体に担持されたロジウムの量が、ロジウム触媒の全質量に対して、1〜30質量%である請求項1〜5のいずれかに記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
【請求項7】
前記ロジウム触媒の使用量が、前記一般式(I)で表される化合物100質量部に対して、0.5〜30質量部である請求項1〜6のいずれかに記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
【請求項8】
水素化反応における水素圧が0.1以上50MPa以下である請求項1〜7のいずれかに記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
【請求項9】
水素化反応が溶媒中で行われる請求項1〜8のいずれかに記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。
【請求項10】
前記溶媒が、酢酸または水である請求項9に記載のジシクロヘキサン誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2010−83807(P2010−83807A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255043(P2008−255043)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】