説明

ジスキネジーの治療

本発明は、一般式(I)で示される化合物によるジスキネジーの治療に関する。化合物は、トピラメートまたはその誘導体である。ジスキネジーは、パーキンソニズムなどの基底核関連運動障害に関連する可能性があり、他の治療薬(L-DOPAなど)の副作用として生じる可能性もある。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、基底核関連運動障害、特にジスキネジーの治療に関する。
ジスキネジーは、異常な不随意運動障害である。異常な運動は、舞踏病(顔面、腕、脚または体幹に影響を及ぼす不随意の、急速で、不規則な、痙攣的運動)、バリスム(舞踏病に類似しているが、より激しく強硬な性質の不随意運動)、ジストニー(通常、捻転および反復性運動または異常な姿勢もしくは体位を生み出す持続性筋収縮)またはアテトーシス(特に手において重篤な、反復性不随意の、ゆっくりとした、曲がりくねった、身もだえするような運動)として現れる。
【0002】
大脳基底核および関連脳構造の機能不全による運動および他の障害は、社会経済学的に大きな重要性をもつ。このような障害は、遺伝的または後天的疾患、突発性神経変性の結果として起こりうるか、あるいは医原性であるかもしれない。障害の範囲は、非常に多様であり、運動の欠如(無動、寡動、動作緩慢)および緊張過度(パーキンソン病、いくつかの形態のジストニーなど)に関連するものから、不随意運動障害(ハンチントン病、レボドパ誘発性ジスキネジー、バリスム、いくつかの形態のジストニーなどの運動過剰またはジスキネジー)までに及ぶ。
【0003】
パーキンソニズムは、運動の緩慢さ(動作緩慢)、硬直および/または振せんを特徴とする症候群を含む周知の運動障害である。パーキンソン的症状は、様々な身体状態において見られるが、突発性パーキンソニズム(すなわち、パーキンソン病)において最も一般的であるが、統合失調症、毒/薬物への曝露および頭部傷害などの治療に付随して起こる場合もある。パーキンソン病において、一次的病変は、黒質緻密部のアミン作用性ニューロンの変性である。
【0004】
最も広範に用いられているパーキンソニズムに対する症候的治療は、ドーパミン置換薬(L-DOPAおよびドーパミン受容体アゴニストなど)である。ジスキネジーを生じる1つの一般的手段は、パーキンソニズムまたはその他の基底核関連運動障害に対するドーパミン置換療法の副作用である。ジスキネジーは、患者がドーパミン置換療法を受けているとき(舞踏病および/またはジストニーの場合)または療法をやめているとき(ジストニーが優勢である場合)のいずれにおいても見られる。最終的にこれらの副作用が、ドーパミン作用性の治療の有用性を厳く制限している。
【0005】
ドーパミン置換薬(たとえば、L-DOPAおよびドーパミン受容体アゴニストなど)に関連するもう1つの問題点は、治療の抗パーキンソン効力における有効時間短縮(ウェアリング−オフ)である。
もう1つのジスキネジーの一般的原因は、遅発性ジスキネジーとして知られる、神経遮断薬による精神病の治療である。
ジスキネジーは多くの他の身体状態:ハンチントン病;突発性ジストニー;ツレット症候群;パーキンソニズムにおける「オフ」ジストニー;バリスム;老年期舞踏病においても起こる。
【0006】
これらの障害の根底にある病態生理学的メカニズムに関する知識から、類似のメカニズムが、運動亢進またはジスキネジーを特徴とする障害を媒介するということが可能性として考えられる。したがって、ジスキネジーの一形態に有効な治療が、別の病因のジスキネジーにおいて利点を有することが予測される。
ジスキネジーの発現を予防する、および/または治療する作用薬を開発するために多くの試みがなされてきたが、このような試みはある程度の成功しかおさめていない。したがって、ジスキネジーを治療することができる方法の開発が必要とされている。
【0007】
本発明の第1の態様は、ジスキネジーの治療用医薬の製造における一般式(I):
【化1】

[式中、Xは、OまたはCH2
R2、R3、R4およびR5は独立して、H、低級アルキルであり、R2とR3および/またはR4とR5は一緒になって、以下の式(II):
【化2】

(ここで、R6およびR7は、同一または異なって、H、低級アルキルであるか、またはアルキルであり、一緒になってシクロペンチルまたはシクロヘキシル環を形成する)
で示される基であってもよい]
で示される化合物の使用を提供する。
【0008】
本発明の第2の態様は、患者に治療有効量の一般式(I)で示される化合物を投与することを含むジスキネジーの治療方法を提供する。
【0009】
「ジスキネジー」は、基底核として知られる脳領域の障害に関連する異常な不随意運動を意味する。ジスキネジーは、パーキンソン病(最も一般的な基底核疾患)の治療の合併症として起こる「レボドパ誘発性ジスキネジー」である。ジスキネジーは、身体的に、舞踏病およびジストニーという2種類の形態で現れる。舞踏病は、身体の一部分から別の部分へと流れるように移る不随意の、継続的な、無意味な、突然の、急速な、短時間の、非持続的な、不規則な運動からなる。ジストニーは、ねじれおよび反復運動または異常な姿勢を引き起こす持続的な筋肉の収縮を意味する。
【0010】
ジスキネジーは、運動失調またはカタレプシーとは区別される。運動失調は、通常、小脳と呼ばれる脳の部分またはその付属部の障害に関連する。それは、運動の協調ができないことを特徴とする。「酔っぱらい」のように見える、よろめく歩行やろれつが回らないことが現れる。カタレプシーは、また、ジスキネジーと混同することが不可能な異なる身体状態である。通常、精神障害に関連する。静止、刺激に対する応答性の低下および不動姿勢を維持する傾向を特徴とする。四肢は、たとえどのような位置に置かれてもそれを維持しようとする。したがって、用語ジスキネジー(舞踏病およびジストニーを含む)、運動失調およびカタレプシーは、異なった別の障害を意味する。それらは、異なる身体的徴候および異なる原因を有する。
【0011】
本発明は、抗痙攣薬である一般式(I)で示されるスルファミン酸塩の活性に関する、本発明者らによって行われた調査に基づく。驚いたことに、彼らは、このような化合物が、ジスキネジーを減少させる効能をもつことを見出した。
好ましい一般式(I)で示される化合物は、US 4,582,916、US 4,5123,006、US 6,420.369、US 6,559,293、US 6,583,172およびEP-B-0,138,441に開示されている。これらの文書に開示された化合物は、本発明に用いることができ、これらは全体を参考文献として本発明に援用される。したがって、本発明に用いることができる好ましい化合物として、スルファミン酸(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)メタン;スルファミン酸2,3:4,5-bis-O-(1-メチルエチリデン)-β-D-フルクトピラノース(後記参照);またはメチルスルファミン酸2,3:4,5-bis-O-(1-メチルエチリデン)-β-D-フルクトピラノースが挙げられる。
最も好ましい化合物は、トピラメート(Topiramate)またはその機能的類縁体もしくは誘導体である。
【0012】
トピラメートは、抗てんかん薬としての使用を対象とするスルファメート置換単糖である。トピラメートは、化学的には、スルファミン酸2,3:4,5-bis-O-(1-メチルエチリデン)-β-D-フルクトピラノースとして示される。トピラメートは、登録商標「Topamax」として販売されている。トピラメートは、以下の構造式を有する:
【化3】

【0013】
トピラメートは、苦味のある白色結晶粉末である。トピラメートは、水酸化ナトリウムまたはリン酸ナトリウムを含み、pH9〜10のアルカリ性溶液に最も溶けやすい。トピラメートは、アセトン、クロロホルム、ジメチルスルホキシドおよびエタノールに大量に溶解する。水に対する溶解度は、9.8 mg/mLである。その飽和溶液のpHは、6.3である。トピラメートの分子式は、C12H21NO8Sであり、分子量は、339.36である。
【0014】
ジスキネジーの治療のための本発明化合物の使用は、完全に新規な発明である。てんかんおよびジスキネジーの根底にある基本的な神経メカニズムは異なっている。ジスキネジーに有効なトピラメートのような化合物は予測されず、したがって、このことは、進歩性を意味する。
本発明化合物およびこのような化合物を含む組成物を用いて、多くのタイプのジスキネジーを治療することができる。たとえば、該化合物を用いてハンチントン病などの身体状態に関連するジスキネジーおよび運動亢進、特発性捻転ジストニー、遅発性ジスキネジー、ツレット症候群、特に、パ−キンソニズム(たとえば、突発性パ−キンソン病、脳炎後のパ−キンソニズムまたは頭部傷害に起因するパ−キンソニズム)などの運動障害、統合失調症の治療、薬物中毒、毒物の影響などに関連するジスキネジーを治療することができる。
【0015】
本態性振せんとして知られる身体状態におけるトピラメートの臨床試験が、近年、報告されており(Connor、GS、Neurology 2002;59:132-134)、ここで、25%という振せんの平均改善率が記録された。したがって、この報告と本発明の間に区別をつけることが重要である。
第1に、本態性振せんは、本発明の請求項の主題である運動障害とは無関係である。振せんは、パーキンソン病の身体状態における症状の3つの主たる特徴の1つとして存在するとはいえ(Burneら;J Clin Neurosci.、2002;9: 237-242)、特に、本態性振せんはパーキンソン病とは無関係であり、ハンチントン病、ウィルソン病、進行性核上麻痺(PSP)、ジストニーなどの身体状態とも無関係である。
【0016】
本態性振せんは、多くの点でパーキンソン病とは異なる。重要なことには、本態性振せんは、神経病理学的に原因不明であるが、パーキンソン病の病理学的根拠は、中脳の黒質緻密部の変性であることが確立されている。わかっている限りでは、2つの身体状態は、異なる脳メカニズムによって媒介される。さらに、2つの身体状態は、異なる薬理学的特性をもつ。たとえば、パーキンソン病の治療に用いられるL-DOPAは、本態性振せんの治療には、価値がない。一方、本態性振せんは、パーキンソン病が応答しない低用量のアルコールに応答することが多い。
【0017】
第2に、本発明は、パーキンソン病それ自体の治療に関するものではなくて、L-DOPAまたはドーパミンアゴニストによる長期従来治療の合併症として発症するジスキネジーに関するものである。本態性振せんおよびジスキネジーが、それらの原因、関与する脳経路またはそれらの臨床薬理学的特性に関して何らかの関連性があるという証拠はない。
本発明化合物は、他の治療薬の副作用として生じるジスキネジーの治療に有用である。たとえば、トピラメートは、パーキンソニズムまたはパーキンソン病のL-DOPA治療に関連するジスキネジーの治療に有用である。
【0018】
レボドパは、芳香族アミノ酸である。レボドパまたはL-DOPAの化学名は、(−)−L−α−アミノ−β−(3,4−ジヒドロキシベンゼン)プロピオン酸である。L-DOPAは、分子式C9H11NO4であり、分子量197.2である。化学的に、レボドパは、(−)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−L−アラニンである。無色結晶性化合物であり、わずかに水溶性であり、アルコールに不溶である。L-DOPAは、下記構造式:
【化4】

を有する。L-DOPAは、アミノ酸であり、パーキンソン病および症候群の治療のために、通例、カルビドパと併用して患者に投与される。カルビドパの化学名は、(−)−L−α−ヒドラジノ−α−メチル−β−(3,4−ジヒドロキシベンゼン)プロピオン酸・一水和物である。カルビドパは、実験式C10H14N2O4・H2Oであり、分子量244.3である。無水カルビドパの分子量は、226.3である。シネメット(Sinemet)(登録商標)は、パーキンソン病および症候群の治療のためのカルビドパとレボドパの組み合わせ薬である。シネメット(登録商標)は、米国特許4,832,957および4,900,755に記載されており、これらは全体を参考文献として本発明に援用される。カルビドパの構造式は:
【化5】

である。
【0019】
さらに、本発明化合物は、ロピニロール処置に関連するジスキネジーの治療に有用である。ロピニロールは、登録商標レキップ(Requip)として市販される非エルゴリンドーパミンアゴニストである。ロピニロールは、4−[2−(ジプロピルアミノ)エチル]−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン・モノヒドロクロリドというモノ塩酸塩であり、実験式C16H24N2O・HClである。ロピニロールの分子量は、296.84(遊離塩基として260.38)である。ロピニロールは、米国特許4,452,808および4,824,860に記載されており、これらは全体を参考文献として本発明に援用される。ロピニロールの構造式は:
【化6】

である。
【0020】
本発明化合物は、プラミペキソール処置に関連するジスキネジーの治療にも有用である。プラミペキソールの化学名は、(S)−2−アミノ− 4,5,6,7−テトラヒドロ−6−(プロピルアミノ)ベンゾチアゾール・ジヒドロクロリド・一水和物である。プラミペキソールは、登録商標ミラペックス(Mirapex)として市販されている。プラミペキソール・ジヒドロクロリドは、実験式C10H17N3S・2HCl・H2Oであり、分子量302.27である。プラミペキソールの合成は、米国特許4,843,086および4,886,812に記載されており、これらは全体を参考文献として本発明に援用される。プラミペキソール・ジヒドロクロリドの構造式は:
【化7】

である。
【0021】
本発明化合物は、カベルゴリン処置に関連するジスキネジーの治療にも有用である。カベルゴリンの化学名は、1−アダマンタンアミン・ヒドロクロリドである。分子量は、187.71であり、分子式は、C10H18NClである。カベルゴリンの構造式は:
【化8】

である。
【0022】
本発明化合物は、ブロモクリプチン処置に関連するジスキネジーの治療にも有用である。ブロモクリプチン・メシレートは、パーロデル(Parlodel)(登録商標)として市販されている。ブロモクリプチン・メシレートの化学名は、エルゴタマン−3’,6’,18−トリオン,2−ブロモ−12’−ヒドロキシ−2’−(1−メチルエチル)−5’−(2−メチルプロピル)−,(5’a)−モノメタンスルホネートである。ブロモクリプチン・メシレートの分子量は、750.70であり、実験式は、C32H40BrN5O5・CH4SO3である。ブロモクリプチン・メシレートの構造式は:
【化9】

である。
【0023】
本発明化合物は、リスリド処置に関連するジスキネジーの治療にも有用である。リスリドの化学名は、R(+)−N’−[(8α)−9,10−ジデヒドロ−6−メチルエルゴリン−8−イル]−N,N−ジエチルウレア水素メシレートである。リスリドの分子量は、338.45であり、実験式は、C20H26N4Oである。リスリドの構造式は:
【化10】

である。
【0024】
本発明化合物は、ペルゴリド処置に関連するジスキネジーの治療にも有用である。ペルゴリド・メシレートの化学名は、8β−[(メチルチオ)メチル]−6−プロピルエルゴリン・モノメタンスルホネートである。ペルゴリド・メシレートは、パーマックス(Permax)(登録商標)として市販されている。パーマックスの実験式は、C19H26N2S・CH4O3Sであり、分子量は、410.59である。ペルゴリド・メシレートの合成は、米国特許4,797,405および5,114,948に記載されており、これらは全体を参考文献として本発明に援用される。ペルゴリド・メシレートの構造式は:
【化11】

である。
【0025】
本発明化合物は、アポモルフィン処置に関連するジスキネジーの治療にも有用である。アポモルフィンの実験式は、C17H17NO2であり、分子量は、267.33である。アポモルフィンの構造式は:
【化12】

である。
【0026】
上記作用薬に関連するジスキネジーが、トピラメートで治療されるのが好ましい。本発明の特定の態様において、トピラメートを用いて、L-DOPAまたはアポモルフィン治療に関連するジスキネジーを治療する。
本発明化合物は、パーキンソニズムなどの運動障害の治療に用いられる作用薬によって引き起こされるジスキネジーの治療に特に有用である。この点において、本発明化合物の使用は、パーキンソニズムに対するL-DOPAまたはドーパミンアゴニスト療法に関連する運動障害性副作用の治療における使用である。
本発明化合物は、存在するジスキネジーの治療に用いることができるが、予防的処置が医療的に必要であると見なされる場合に用いることもできる。たとえば、L-DOPA療法を開始することが必要であると見なされ、ジスキネジーが発現するおそれがある場合である。
【0027】
本発明化合物は、単剤療法として(すなわち、本発明化合物単独の使用);組成物が引き起こすジスキネジー性副作用を予防するための該組成物の補助剤として(たとえば、パーキンソン病患者に投与されるL-DOPAまたはアポモルフィンの補助剤としてなど)、ジスキネジーの治療に用いることができ、あるいは、別法として、本発明化合物は、これもジスキネジーを減少させる他の治療薬(たとえば、μ−オピオイド受容体アンタゴニスト、α2−アドレノ受容体アンタゴニスト、カンナビノイドCB1−アンタゴニスト、NMDA受容体アンタゴニスト、コリン受容体アンタゴニスト、ヒスタミンH3−受容体アゴニストおよび淡蒼球/視床下部核損傷/脳深部電気刺激法)と組み合わせて投与することができる。
【0028】
本発明化合物は、補助剤として、または公知療法と組み合わせて用いることもできる。たとえば、我々は、L-DOPAとトピラメートの組み合わせが、ジスキネジー性副作用を有意に減少しながらパーキンソン病などの運動障害を治療することを見出している。
【0029】
本発明化合物は、遅発性ジスキネジーに苦しむ患者を治療するために、公知の神経遮断薬と組み合わせて用いることもできる。用語「神経遮断」とは、精神病患者において、混乱、妄想、幻覚および精神運動性激越を減少させる、抗精神病薬の認識および行動における効果を意味する。ドーパミンと呼ばれる脳における天然の化学物質の神経伝達物質がある。ドーパミンは、主として思考、感情、行動および認知に関与する、脳における化学的メッセンジャーである。幾つかの病気において、ドーパミンは、過剰活動的となり、脳内の化学物質の正常なバランスを混乱させる。この過剰なドーパミンは、病気の症状の幾つかを生み出すのに寄与する。これらの薬物が有する主な効果は、脳内で、いくらかのドーパミン受容体を遮断して、過剰のドーパミンを受け取ることの影響を減少させ、アンバランスを正すことである。このことは、過剰のドーパミンを受け取ることによって引き起こされる症状を減少させる。
【0030】
神経遮断薬は、抗精神病薬のひとつの種類である。神経遮断性化合物の例として、ハロペリドール(Haldol)、クロルプロマジン(Thorazine)、チオリダジン(Mellaril)、リスペリドン(Risperdal)、クエチアピン(Seroquel)、オランザピン(Zyprexa)、クロザピン(Clozaril)、アミスルプリド(Solian)、セルチンドール(Serdolect)、ゾテピン(Zoleptil)、チオチキセン(Navane)、モリドン(Moban)、ロキサピン(Loxitane)、プロクロルペラジン(Compazine)、トリフルオペラジン(Stelazine)、ペルフェナジン(Trilafon)およびメトクロプラミド(Reglan)が挙げられる。
【0031】
ハロペリドールは、分子式C21H23ClFNO2および分子量375.8696 g/molである。ハロペリドールは、Haldol;4−[4−(p−クロロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジノ]−4'−フルオロブチロフェノン;ガンマ−(4−(パラ−クロロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジノ)−パラ'−フルオロブチロフェノン;およびSerenaceとも称される。
フェノチアジン誘導体であるクロルプロマジン・塩酸塩は、化学式2−クロロ−10−[3(−ジメチルアミノ)プロピル]フェノチアジン・一塩酸塩である。クロルプロマジン・塩酸塩は、分子式:C17H19ClN2S・HClおよび分子量355.33である。
SEROQUEL(登録商標)(フマル酸クエチアピン)は、新規化学種であるジベンゾチアゼピン誘導体に属する抗精神病薬である。フマル酸クエチアピンの化学名は、2−[2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ]−エタノール・フマル酸(2:1)(塩)である。フマル酸クエチアピンは、フマル酸塩として錠剤で存在する。すべての用量および錠剤含量は、フマル酸塩としてではなく、塩基のミリグラムとして表される。フマル酸クエチアピンは、分子式C42H50N6O4S2・C4H4O4および分子量883.11(フマル酸塩)である。
クロザピンの化学名は、8−クロロ−11−(4−メチル−1−ピペラジニル)−5H−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピンである。クロザピンは、三環式ジベンゾジアゼピン誘導体である非定型抗精神病薬である。クロザピンは、「CLOZARIL(登録商標)」と命名された固形である。クロザピンは、分子量326.83および分子式C18H19ClN4である。
【0032】
トリフルオペラジン・塩酸塩の化学名は、10−[3−(4−メチル−1−ピペラジニル)プロピル]−2−(トリフルオロメチル)フェノチアジン・二塩酸塩である。トリフルオペラジンは、分子量480.43および分子式C21H24F3N3S・2HClである。
メトクロプラミド・塩酸塩は、白色結晶性、無臭物質であり、水に溶けやすい。メトクロプラミドの化学名は、4−アミノ−5−クロロ−N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−2−メトキシベンズアミド・一塩酸塩・一水和物である。メトクロプラミドの分子量は、354.3である。
フルフェナジン・塩酸塩は、統合失調症の統御を目的としたトリフルオロ−メチルフェノチアジン誘導体である。フルフェナジンの化学名は、4−[3−[2−(トリフルオロメチル)フェノチアジン−10−イル]プロピル]−1−ピペラジンエタノール・二塩酸塩である。フルフェナジンの分子式は、C22H26F3N3OS・2HClであり、分子量は、510.44である。
【0033】
本発明の組成物は、特に組成物が用いられることになっている作法に応じて多くの異なる剤形にすることができる。したがって、たとえば、本発明組成物は、散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、ヒドロゲル剤、エアロゾル剤、スプレー剤、ミセル剤、経皮パッチ剤、リポソーム剤あるいはヒトまたは動物に投与することができるその他の適当な形態のいずれかといったような形態をとることができる。本発明組成物のビヒクルは、投与される患者が十分に耐性をもち、脳へ本発明化合物をデリバリーしうるものであるべきであることが理解されるであろう。
【0034】
本発明組成物は、多くの投与経路で使用することができる。たとえば、全身投与が必要な場合、本発明化合物は、錠剤、カプセル剤または液剤という剤形で経口摂取されるような組成物に包含される。別法として、注射によって本発明組成物を血流内へ投与することもできる。静脈内(瞬時投与または点滴)または皮下注射(瞬時投与または点滴)を行うことができる。本発明化合物は、吸入(鼻腔内など)によって投与することもできる。
本発明化合物は、大脳内、大脳室内または鞘内デリバリーという手段によって中枢神経投与することもできる。
【0035】
本発明化合物は、徐放性または遅延放出性デバイスに入れることもできる。このようなデバイスは、たとえば、皮膚下に挿入することができ、該化合物を数週間または数ヶ月にわたって放出することができる。他方では、経皮デリバリーを用いて、同様な結末に達することもできる。このようなデバイスは、継続的L-DOPA療法を受けている患者などの長期ジスキネジー患者にとって特に有用である。該デバイスは、標準的に頻繁な投与(少なくとも錠剤を毎日摂取するか毎日注射を行う場合など)を必要とする化合物を用いる場合に特に有利である。
必要とされる化合物の量は、生物学的活性ならびに投与モード、使用する化合物の物理化学的特性および該化合物が、単剤療法で用いられるか、あるいは組み合わせ療法でもちいられるかどうかによって変わるバイオアベイラビリティによって決定されることが理解されるであろう。投与頻度は、上記ファクターおよび特に治療される患者における化合物の半減期によっても影響される。
投与される最適用量は、当業者によって決定され、使用する特定の化合物、製剤の有効成分含量、投与モードおよび疾患状態の進行に応じて変化する。患者の年齢、体重、性別、食事および投与時間などの治療される特定の患者に応じて変化するさらなるファクターにより、用量を調節する必要性がもたらされる。
【0036】
薬品製造業において従来から用いられているような公知の手順(インビボ実験、臨床試行など)を用いて、本発明化合物を含む特定の製剤(上記薬またはその他のものと製剤するかどうか)および正確な治療養生法(化合物の1日当たりの用量および投与頻度など)を確立することができる。
一般に、運動障害の治療には、用いる特定の化合物に応じて、0.01μg/体重kg〜1.0g/体重kgの1日用量で一般式(I)で示される化合物を用いることができ、0.01mg/体重kg〜100mg/体重kgの1日用量がより好ましい。
【0037】
1日の用量を1回投与(経口消費用1日錠または1日1回の注射など)で投与してもよい。別法として、1日の用量を2ないし3回以上に分けて投与することもできる。たとえば、パーキンソン病の患者におけるL-DOPA誘発性ジスキネジーを治療するためのトピラメートは、1日2回(あるいはジスキネジーの重篤度に応じてそれ以上)、25mg〜5000mgの用量を錠剤にて投与することができる。治療を受けている患者は、起床時に第1の用量を投与され、次いで、夜に第2の用量を投与される(2回用量養生法の場合)か、あるいはその後3または4時間間隔で投与される。別法として、徐放性デバイスを用いて、繰り返し投与を必要とすることなく患者に最適用量を提供することもできる。
【0038】
本発明は、さらに、治療有効量の本発明化合物および医薬的に許容しうるビヒクルを含む医薬組成物を提供する。1つの態様において、本発明化合物(たとえば、トピラメートなど)の量は、約0.01 mg〜約800 mgである。別の態様において、該量は、約0.01 mg〜約500 mgである。化合物がトピラメートである場合、トピラメートの量は、約0.01 mg〜約250 mg;好ましくは約0.1 mg〜約60 mg;およびより好ましくは約1 mg〜約20 mgである。
さらなる態様において、ビヒクルは液体であり、組成物は溶液である。もう一つの態様において、ビヒクルは固体であり、組成物は錠剤である。されに別の態様において、ビヒクルはゲルであり、組成物は座剤である。
【0039】
本発明は、治療有効量の一般式(I)で示される化合物および医薬的に許容しうるビヒクルを組み合わせることによって製造される医薬組成物を提供する。
投与前に、一般式(I)で示される化合物を医薬的に許容しうるビヒクルと合わせるのが好ましい。
本発明は、治療有効量の一般式(I)で示される化合物および医薬的に許容しうるビヒクルを組み合わせることを含む医薬組成物の製造方法を提供する。
本発明において、「治療有効量」は、本発明化合物が有効である疾患に苦しむ患者に投与する場合に、疾患の減少、寛解または退縮を引き起こす化合物または組成物の量である。「患者」は、脊椎動物、哺乳動物、家畜またはヒトである。
本発明の実施において、「医薬的に許容しうるビヒクル」は、医薬組成物の製剤において有用な当業者に公知の生理学的ビヒクルのいずれかである。
【0040】
1つの態様において、医薬的ビヒクルは液体であり、医薬組成物は液剤の形態である。もう一つの態様において、医薬的ビヒクルは固体であり、組成物は散剤または錠剤の形態である。さらに別の態様において、医薬的ビヒクルはゲルであり、組成物は、座剤またはクリーム剤の形態である。さらに他の態様において、化合物または組成物は、医薬的に許容しうる経皮パッチの部分として製剤することができる。
固体ビヒクルは、香味剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁剤、充填剤、流動促進剤、圧縮補助剤、結合剤または錠剤崩壊剤としても働く1つ以上の物質を含むことができる;固体ビヒクルは、カプセル化物質であることもできる。散剤において、ビヒクルは微粉化した有効成分と混合される微粉化した固体である。錠剤において、有効成分は、適当な割合で必要な圧縮特性を有するビヒクルと混合され、所望の形および大きさに圧縮される。散剤および錠剤が99%以下の有効成分を含むのが好ましい。適当な固体ビヒクルとして、たとえば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリドン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂が挙げられる。
【0041】
液体ビヒクルは、液剤、懸濁液剤、乳液剤、シロップ剤、エリキシル剤および与圧組成物の製造に用いられる。有効成分は、水、有機溶媒、両者の混合物または医薬的に許容しうる油または脂肪などの医薬的に許容しうる液体ビヒクルに溶解または懸濁させることができる。液体ビヒクルは、可溶化剤、乳化剤、緩衝液、保存剤、甘味料、香味剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤、粘度調節剤、安定化剤または浸透圧調節剤などの他の適当な医薬品添加物を含むことができる。経口および非経口投与のための液体ビヒクルの適当な例として、水(上記の添加剤、たとえばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を一部含む)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコールなど)およびそれらの誘導体ならびに油(分別ココナッツ油およびピーナッツ油など)が挙げられる。非経口投与には、ビヒクルは、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルであってもよい。滅菌液体ビヒクルは、非経口投与用の滅菌液剤組成物に用いる。加圧組成物のための液体ビヒクルは、ハロゲン化炭化水素または他の医薬的に許容しうる高圧ガスでありうる。
【0042】
また滅菌溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、たとえば、筋肉内、くも膜下腔内、硬膜外、腹腔内または皮下注射などによって利用することができる。滅菌溶液は、静脈内投与することができる。化合物は、滅菌水、生理食塩水または他の適当な滅菌注射用媒体を用いて、投与時に溶解または懸濁されてもよい滅菌固体組成物として製造されてもよい。ビヒクルは、必要で不活性な結合剤、懸濁化剤、滑沢剤、香味剤、甘味料、保存剤、色素およびコーティング剤を含むことを企図される。
一般式(I)で示される化合物は、他の溶質または懸濁化剤(たとえば、溶液を等張性にするのに十分な生理食塩水またはグルコース)、胆汁酸塩、アラビアゴム、ゼラチン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80(ソルビトールのオレイン酸エステルおよびエチレンオキシドとのその無水コポリマー)などを含む滅菌溶液または懸濁液の剤形において経口で投与することができる。
【0043】
一般式(I)で示される化合物は、液体または固体組成物の剤形のいずれかにおいて経口で投与することもできる。経口投与に適する組成物として、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、錠剤および散剤ならびに溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤および懸濁液剤などの液体剤形が挙げられる。非経口投与に有用な剤形として、滅菌溶液剤、乳液剤および懸濁液剤が挙げられる。
本発明化合物は、投与前に、医薬的に許容しうるビヒクルおよび他の治療有効成分と組み合わせてもよい。他の治療有効成分は、パーキンソニズム(パーキンソン病など)の治療のためのものであってよい。
本発明のもう1つの態様において、本発明化合物は、投与前に、医薬的に許容しうるビヒクルおよびもう1つの治療有効作用薬(ここで、このような作用薬は、精神病の治療に用いられる抗精神病薬である)と組み合わせることができる。
本発明の態様を、添付図面を参照して実施例により説明する。
【実施例】
【0044】
実施例1
トピラメートはL-DOPA誘発性ジスキネジーを減少させる
MPTP障害霊長類
1-メチル-4-フェニル-テトラヒドロピリジン(MPTP)は、非ヒト霊長類に投与すると、ドーパミン細胞に対して選択的に毒性であり、パーキンソン病の実験動物モデルを作成する。MPTP障害霊長類は、パーキンソン病およびL-DOPA誘発性ジスキネジーの最適な動物モデルとなり、臨床的症状において見られるジスキネジーの最も一般的な形態である。治療に対する病理学、症候学および症状の応答ならびに治療に続く副作用の発生は、MPTP障害霊長類において、パーキンソン病の患者で見られるものに非常に似ている。したがって、治療しない場合、MPTP障害霊長類は、運動の範囲の減少、運動速度の減少(動作緩慢)および異常な猫背のパーキンソン性姿勢などのパーキンソン性症状を示す。本発明に特に関連するのは、L-DOPAで繰り返して処置した場合、MPTP障害霊長類は、パーキンソン病患者に見られるものとは本質的に区別できない様式でL-DOPA誘発性ジスキネジーという副作用を発症するということである(Nash JEら、Exp Neurol 2000、165:136-42;Kanda Tら、Exp Neurol 2000、162:321-7;Bibbiani Fら、Neurology 2001、57:1829-34;Konitsiotis Sら、Neurology 2000、54:1589-95;Blanchet PJら、J Pharmacol Exp Ther 1999、290:1034-40;Hille CJら、Exp Neurol 2001、172:189-98;Henry Bら、Exp Neurol 2001、171:139-46;およびFox SHら、Mov Disord 2001、16:642-50)。
【0045】
パーキンソン病およびL-DOPA誘発性ジスキネジーのMPTP障害マーモセットモデルの作成
ジスキネジー、特に、L-DOPA誘発性ジスキネジーを減少させるトピラメートの能力を評価するために、6匹の成体マーモセット(Callithrix jacchus:コモンマーモセット)で実験を行った。5日間連続して2mg/kgのMPTPを皮下注射することによって、マーモセットをパーキンソン病にした。パーキンソニズムが安定するまで、マーモセットを18週間回復させた。自発運動、可動性、動作緩慢および姿勢を判定する評価基準の組み合わせを用いて(下記)、MPTP処置前後の活動および運動能力障害の度合いを評価した。動物をL-DOPA(12mg/kg、1日2回、6週間)で処置して、ジスキネジーを誘発するように準備した。本実験を行う前に、動物に種々の可能な抗パーキンソン療法を施した。いずれかの他の実験と本実験の開始の間に2週間の洗い流し(washout)期間を置いた。
【0046】
薬物投与の詳細
動物のホームケージ内のシリンジを介して5 ml/kgの量のトピラメートまたはビヒクルを経口投与した。行動評価のために、動物を素早く実験ケージ(60cm x 55cm x 75cm、ケージの床から25cmの位置に止まり木を有する)に移した。
すべての動物に毎日L-DOPA (15mg/kg)を与えた。
【0047】
行動の評価
行動を薬物投与後6時間評価した。
一連の行動試験を行った。
1)ジスキネジー−以下の評価基準に基づくノンパラメトリック測定:
ジスキネジースコア:0=なし;1=軽度、束の間、観察期間の30%以下に現れる;2=中程度、正常な行動を妨げない、観察期間の30%以上に現れる;3=著しい、時々正常な行動を妨げる、観察期間の70%以下に現れる;4=重篤、継続的、正常な行動と入れ替わる、観察期間の70%以上に現れる。
【0048】
2)パーキンソン性運動能力障害−以下の評価基準に基づくノンパラメトリック測定:
a)可動域スコア:0=全く運動せず;1=ケージの床における頭の運動;2=ケージの床における移動なしの手足の運動;3=ケージの壁または止まり木における頭または胴体の運動;4=ケージの壁または止まり木における移動なしの手足の運動;5=ケージの床における歩き回りまたは床におけるホッパーから食べる動作;6=ケージの床におけるホッピング;7=ケージの壁または止まり木へのクライミング;8=ケージの壁または止まり木に沿っての登り降り;9=ケージの壁/止まり木/屋根の間における、広範囲の手足の動作および活動を用いたランニング、ジャンピング、クライミング。付与されたスコアは、それぞれ10分間の観察期間内に達成された最高値であった。
b)動作緩慢スコア:0=動作の正常な速度および開始;1=動作の軽度の緩徐化;2=動作の中程度の緩徐化、開始および維持の困難、著しいすくみ;3=無動、身動き不能、長期のすくみ発症。付与されたスコアは、観察期間にわたって行動を代表するものであった。
c)姿勢異常スコア:0=正常、直立、頭を上げた状態の持続、正常なバランス;1=異常、屈み、うつむき、バランスを失う可能性。付与されたスコアは、観察期間にわたって行動を代表するものであった。
d)パーキンソン性運動能力障害スコア:式[18−(可動域*2)+(動作緩慢*3)+(姿勢*9)]にしたがって、可動性、動作緩慢および姿勢スコアを組み合わせて、全体的なパーキンソン性運動能力障害評点を得る。
【0049】
処置に対してブラインドな観察者によるビデオ記録のpost hoc分析によって、3時間にわたり30分ごとに10分間、行動試験1および2(それぞれ、ジスキネジーおよびパーキンソン性運動能力障害)を評価した。それぞれの10分間の期間に付与/獲得されたスコアを前述のように現した。
結果を図1Aおよび1Bに示す。図1A:各データポイントは、動物群(n=6)からの中央値スコアを表す。Y軸は、パーキンソン性運動能力障害スコアが、0(なし)、9(軽度)、18(中程度)、27(著しい)および36(重篤)として提供されるように標示する。図1B:各データポイントは、動物群(n=6)からの中央値スコアを表す。Y軸は、ジスキネジースコアが、0(なし)、1(軽度)、2(中程度)、3(著しい)および4(重篤)として現されるように標示する。
【0050】
ジスキネジーデータの分析
データは、ジスキネジーの重篤度に対し、それぞれ1時間の期間で集め、ウィルコクソンのマッチドペア検定(使用したソフトウェアは、Prism version 3.0、GraphPad Software Incであった)で分析した。図2、3および4に示した結果は、それぞれ投与後0−1時間、1−2時間および2−3時間の期間における、レボドパ処置後のMPTP障害マーモセットに対するトピラメート処置の効果を示す。
結果からさらに、L-DOPAとトピラメートの追随投与では、L-DOPA単独と比較してジスキネジーが少ないことが実証される。
【0051】
図2は、トピラメートの存在または不在下でのMPTP障害マーモセットにおける、レボドパ投与後0〜1時間の期間での加法的パーキンソン性運動能力障害(図2A)およびジスキネジー(図2B)を示す。図2A:データは、グループの中央値(水平線)とともに各動物からの個々のデータとして提供される。パーキンソン性運動能力障害スコアは、それぞれの1時間の期間で得られた両方のスコアを累積することによって計算した(最大72)。Y軸は、パーキンソン性運動能力障害スコアが、0(なし)、9(軽度)、18(中程度)、27(著しい)および36(重篤)として提供されるように標示する。データは、ウィルコクソンのマッチドペア検定を用いて分析した、P>0.05。図2B:データは、グループの中央値(水平線)とともに各動物からの個々のデータとして提供される。ジスキネジースコアは、それぞれの1時間の期間で得られた両方のスコアを累積することによって計算した(最大72)。Y軸は、パーキンソン性運動能力障害スコアが、0(なし)、1(軽度)、2(中程度)、3(著しい)および4(重篤)として提供されるように標示する。データは、ウィルコクソンのマッチドペア検定を用いて分析した、*P<0.05。
【0052】
図3は、トピラメートの存在または不在下でのMPTP障害マーモセットにおける、レボドパ投与後1〜2時間の期間での加法的パーキンソン性運動能力障害(図3A)およびジスキネジー(図3B)を示す。図3Aおよび図3Bの詳細は、図2Aおよび図2Bと同じである。
図4は、トピラメートの存在または不在下でのMPTP障害マーモセットにおける、レボドパ投与後2〜3時間の期間での加法的パーキンソン性運動能力障害(図4A)およびジスキネジー(図4B)を示す。図4Aおよび図4Bの詳細は、図4Bにおいて分析されたデータのウィルコクソンのマッチドペア検定値がP>0.05である以外は、図3Aおよび図3Bと同じである。
【0053】
ウィルコクソンのマッチドペア検定は2つのペアグループを比較するためのノンパラメトリック検定である。この検定は、ウィルコクソンのマッチドペア符号付き検定とも呼ばれている。ウィルコクソンの検定は、各対象についてのペアの測定間の差のみを分析する。P値がこの問題の答えである:もし、中央値の差が確かに全体的にゼロならば、何が、ランダムサンプリングが、ゼロ(またはそれ以上)からこの実験で観察される範囲までの中央値差をもたらす可能性であるのか。もしP値が小さいならば、差が偶然の一致であるという概念を拒絶することができ、代わりに、母集団が、異なる中央値をもつと結論付けることができるる。これが、本実施例においてP<0.05(すなわち、結果がまったくの偶然の一致であるという可能性が1/20以下である)である場合である。
【0054】
ウィルコクソンの検定は、動物におけるジスキネジーのレベルの間の差が、本実験の設計において、ビヒクルと比較して、トピラメートを投与される場合と異なるかどうかを評価するのに最も適した統計的検定である。すべての動物がトピラメートとビヒクルを投与された。ウィルコクソンの検定は、各個の動物における2つの値(トピラメートに関するものとビヒクルに関するもの)の間の差を計算し、差を分析する。ウィルコクソンの検定は、それらの差がガウス分布からサンプル収集されることを仮定するものではなく、ジスキネジーはノンパラメトリック統計値であり、ジスキネジースコアがガウス様式で分布するという保証はないので、このことは重要である。
【0055】
結果から、L-DOPAとトピラメートの追随投与では、L-DOPA単独と比較してジスキネジーが少ないことが実証される(図1B、2Bおよび3B)。結果から、トピラメートは、ジスキネジーを緩和する一方、L-DOPAの抗パーキンソン作用における主要な効果を妨げないことも実証される(図1A、2A、3Aおよび4A)。
当業者であれば、実施例に記載された特定の方法および結果は、請求の範囲においてより完全に記載された本発明を詳しく説明するためのみのものであることを容易に理解するであろう。
【0056】
参考文献
Bibbiani、F.ら、「Serotonin 5-HT1A agonist improves motor complications in rodent and primate parkinsonian models」 Neurology 57: 1829-34 (2001).
Blanchet、PJら、「Differing effects of N-methyl-D-aspartate receptor subtype selective antagonists on dyskinesias in levodopa-treated 1-methyl-4-phenyl-tetrahydropyridine monkeys」 J Pharmacol Exp Ther 290: 1034-40 (1999).
Burne、et al;「The contribution of tremor studies to diagnosis of Parkinsonian and essential tremor: a statistical evaluation」 J Clin Neurosci.、9(3): 237-242 (2002).
Connor、GS、「A double-blind placebo-controlled trial of topiramate treatment for essential tremor」 Neurology 59(1): 132-134 (2002).
Fox、SHら、「Neural mechanisms underlying peak-dose dyskinesia induced by levodopa and apomorphine are distinct: evidence from the effects of the alpha(2) adrenoceptor antagonist idazoxan」 Mov Disord 16: 642-50 (2001).
Henry、B.ら、「Mu- and delta-opioid receptor antagonists reduce levodopa-induced dyskinesia in the MPTP-lesioned primate model of Parkinson's disease」 Exp Neurol 171: 139-46 (2001).
Hille、CJら、「Antiparkinsonian action of a delta opioid agonist in rodent and primate models of Parkinson's disease」 Exp Neurol 172: 189-98 (2001).
Kanda Tら、「Combined use of the adenosine A(2A) antagonist KW-6002 with L-DOPA or with selective D1 or D2 dopamine agonists increases antiparkinsonian activity but not dyskinesia in MPTP-treated monkeys」 Exp. Neurol. 162: 321-7 (2000).
Konitsiotis、S.ら、「AMPA receptor blockade improves levodopa-induced dyskinesia in MPTP monkeys」 Neurology 54: 1589-95 (2000).
Nash、J.E.ら、「Antiparkinsonian actions of ifenprodil in the MPTP-lesioned marmoset model of Parkinson's disease」 Exp. Neurol. 165: 136-42、(2000) .
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、トピラメートの存在または不在下でのMPTP障害マーモセットにおける、レボドパ投与後のパーキンソン性運動能力障害(図1A)およびジスキネジー(図1B)の時間経過のグラフ表示である。
【図2】図2は、トピラメートの存在または不在下でのMPTP障害マーモセットにおける、レボドパ投与後0〜1時間の期間での加法的パーキンソン性運動能力障害(図2A)およびジスキネジー(図2B)のグラフ表示である。
【図3】図3は、トピラメートの存在または不在下でのMPTP障害マーモセットにおける、レボドパ投与後1〜2時間の期間での加法的パーキンソン性運動能力障害(図3A)およびジスキネジー(図3B)のグラフ表示である。
【図4】図4は、トピラメートの存在または不在下でのMPTP障害マーモセットにおける、レボドパ投与後2〜3時間の期間での加法的パーキンソン性運動能力障害(図4A)およびジスキネジー(図4B)のグラフ表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジスキネジーの治療用医薬の製造における一般式(I):
【化1】

[式中、Xは、OまたはCH2
R2、R3、R4およびR5は独立して、H、低級アルキルであり、R2とR3および/またはR4とR5は一緒になって、以下の式(II):
【化2】

(ここで、R6およびR7は、同一または異なって、H、低級アルキルであるか、またはアルキルであり、一緒になってシクロペンチルまたはシクロヘキシル環を形成する)
で示される基であってもよい]
で示される化合物の使用。
【請求項2】
化合物が、トピラメートである請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ジスキネジーが、基底核関連運動障害に関連する請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
ジスキネジーが、パーキンソニズムに関連する請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
パーキンソニズムが、突発性パーキンソン病または脳炎後パーキンソニズムである請求項4に記載の使用。
【請求項6】
ジスキネジーが、ドーパミン置換療法に関連する請求項1または2に記載の使用。
【請求項7】
ジスキネジーが、パーキンソン病におけるオフ−ジストニーに関連する前記請求項のいずれか1つに記載の使用。
【請求項8】
患者に治療有効量の神経遮断薬も投与する前記請求項のいずれか1つに記載の使用。
【請求項9】
神経遮断薬が、ハロペリドール、クロルプロマジン、クエチアピン、クロザピン、トリフルオペラジン、メトクロプラミドおよびフルフェナジンから選ばれる請求項8に記載の使用。
【請求項10】
ジスキネジーが、ハンチントン病、特発性捻転ジストニー、遅発性ジスキネジー、ツレット症候群、バリスム、老年期舞踏病に関連する請求項1または2に記載の使用。
【請求項11】
ジスキネジーが、治療薬の副作用として生じる請求項1または2に記載の使用。
【請求項12】
ジスキネジーが治療薬によるパーキンソニズムの治療の副作用として生じる請求項11に記載の使用。
【請求項13】
治療薬が、ロピニロール、プラミペキソール、カベルゴリン、ブロモクリプチン、リスリド、ペルゴリド、L-DOPAおよびアポモルフィンから選ばれる請求項12に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−502234(P2006−502234A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568894(P2004−568894)
【出願日】平成15年9月1日(2003.9.1)
【国際出願番号】PCT/GB2003/003801
【国際公開番号】WO2004/026299
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(503080578)モタック・ニューロサイエンス・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】MOTAC NEUROSCIENCE LIMITED
【Fターム(参考)】