説明

ジスルフィド架橋二重鎖型のタンパク質の組換え発現法

【課題】大腸菌宿主細胞内の組換え発現によって二鎖型のポリペプチドまたはタンパク質を産生するための方法を提供する。
【解決手段】核酸レベルでポリペプチドまたはタンパク質を改変する段階;核酸レベルで改変された構築物を大腸菌細胞へ導入する段階;宿主細胞を培養し、次いで溶解する段階;ならびに二鎖のポリペプチドまたはタンパク質を単離する段階。ポリペプチドまたはタンパク質は、ボツリヌス神経毒、特にボツリヌス神経毒A型(BoNT(A))である。ポリペプチドまたはタンパク質は、二鎖のポリペプチドまたはタンパク質として、その生物学的活性を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一つの局面は、二鎖(dichain)型のタンパク質を大腸菌(E. coli)宿主細胞内で組換え発現によって産生するための方法に関する。本発明の別の局面は、上述した方法によって産生することができる二鎖型および生物学的活性型のタンパク質またはポリペプチドに関する。
【0002】
本発明による特徴を示さない対応する組換えタンパク質/ポリペプチドとの比較において重要な利点は、産生方法が著しく単純化されるように、それらがポリペプチド鎖の標的切断に対する特異的プロテアーゼで処理されてはならないという点にある。本発明のさらなる局面は、本発明によるポリペプチド/タンパク質をコードする核酸;そのような核酸または核酸配列を含むベクター;次に、上述したベクターを含む宿主細胞;および、最後に二鎖型および生物学的活性タンパク質/ポリペプチドを含む薬学的調製物である。
【背景技術】
【0003】
クロストリジウムの神経毒は、神経細胞においてカルシウム依存性の神経伝達物質分泌の強い阻害物質である。例えば腐敗した食品を介してボツリヌス毒素(BoNT)を経口摂取した後、様々な筋肉の麻痺によって特徴付けられるボツリヌス菌中毒と呼ばれる臨床像が現れる。呼吸筋肉の麻痺は、最終的に罹患した人を死に至らしめる。これに関連して、運動ニューロンがもはやアセチルコリンを排出することができないため、神経から筋肉へのシグナル伝達はミオセプター(myoceptor)で中断される。ボツリヌス神経毒は、分泌プロセスに関与しているタンパク質である、いわゆるSNAREタンパク質のタンパク質分解切断によってそれらの阻害作用を展開する。この文脈において、異なる血清型の神経毒は、SNAREタンパク質に関する異なる特異性およびそれぞれのアミノ酸配列での切断部位を有する。BoNT(A)およびBoNT(E)は、SNAREタンパク質SNAP-25を切断し、BoNT(C)は基質としてシンタキシン-1と同様にSNAP-25を認識する。同様に、血清型B、D、F、およびGの毒素は、破傷風毒素(TeNT)と同様に、VAMP-2(シナプロブレビン-2)を切断する(Schiavo et al., 1997)。
【0004】
クロストリジウム神経毒は、最も強い公知の毒物である。例えば、投与群の全マウスのうち半数がボツリヌス菌中毒で死滅する静脈内投与の致死量は、わずか5 pgである。経口投与される場合、大部分の血清型の毒素が同様に毒性であることは、複合体タンパク質内に毒素が包埋され、したがって胃腸管を通過する際消化酵素による分解から毒素が保護される結果である。それらはまた、小腸上皮を介した毒素の吸収における機能に起因する(Fujinaga, 1997)。
【0005】
過去数十年の間に、血清型AおよびBのボツリヌス毒素は、治療的用途を見出された。例えば、最小投与量のみの標的化注射によって、個々の慢性的に痙攣した筋肉を弛緩することが可能である。特別な利点は、例えば3〜6ヵ月以上にわたるBoNT(A)およびBoNT(B)の長い有効性である。第一の適応症は、特に斜頸、眼瞼痙攣、および斜視のようなジストニアであり;多汗症のようなさらなる適応症、またはしわを伸ばすための美容処置が加えられた。治療剤としてのボツリヌス毒素の市場は、特にさらなる適応症の開発および既存の適用におけるより強力な利用のため、急速に増大している。これに関連して、活性、効力、および抗原能力の持続期間に関して神経毒の特性を改善するよう試みられている。試験は、商業的に入手可能な調製物に含まれる複合体タンパク質(Allergenから入手可能なBOTOX、およびIpsen-BeaufortからBoNT(A)調製物として入手可能なDysport、ならびにElanからBoNT(B)調製物として入手可能なMyobloc/Neurobloc)が、活性および効力の持続に対して正の作用は有さないが、同じ活性を有する純粋な神経毒の調製物と比較してより高いタンパク質量のため、患者の免疫反応の引き金となり得、さらなる注射が無効になることを示した。
【0006】
複合体タンパク質は活性成分製剤において必要ではなく、不利でさえあり、かつ特性の改善のためのいくつかの改変は遺伝子技術によってのみ達成することができることから、組換え発現、例えば大腸菌内での発現によって、神経毒を産生する大きな必要性がある(このような方法で生成される神経毒は、上述した複合体タンパク質から遊離している)。ボツリヌス毒素が異なる細胞特異性と共に与えられるであろうことから、新しい適応症がさらに開発されると考えられる。これに関して、組換え毒素または毒素誘導体を介した経路は、同様に好ましい。
【0007】
ボツリヌス毒素は破傷風毒素と同様に、それらのアミノ酸配列に関して高い相同を有し、かつ特にそれらのドメイン構造に関して類似している。それらは、受容体結合ドメイン(HC)、転位ドメイン(HN)、および神経細胞において対応するSNAREタンパク質の切断をもたらす触媒サブユニット(L)からなる。HCは神経毒のミオセプターへの特異的結合の原因となり、一方転位ドメインは、エンドソームからニューロンの原形質へLが通過することができることを確実にする。HN(N末端)およびHC(C末端端)は100 kDaの重鎖を形成する一方、Lは軽鎖であり、かつ50 kDaの触媒サブユニットを形成する。両方のポリペプチド鎖は、ジスルフィド架橋によって互いに連結される。関与するシステイン残基間にある、リンカー領域またはループ領域(同義的にまた、リンカー配列もしくはループ配列、またはより簡単にリンカーもしくはループと呼ばれる)の個々の血清型のボツリヌス毒素間の長さは大きく異なる。溶菌過程の間のクロストリジウム由来の毒素の放出の最新の時点で、現在まで特徴付けられていなかったクロストリジウムエンドペプチダーゼによってループは切断され、ここで血清型間で切断された種および切断されていない種の比は異なる。神経毒の活性のために、二鎖の毒素へのループの切断は必須である(Schiavo et al., 1997)。例えばボツリヌス神経毒Aの場合、ループから、すなわちC末端ならびにN末端で近接してシステイン残基を有するループ配列VRGIITSKTKSLDKGYNKALNDL内で、デカペプチドが切断され、1つのペプチド結合が切断されるのみでなく、2つのタンパク質分解切断活性が生じる。これに関連して、生物学的に活性なボツリヌス神経毒Aの分子量は、当然本来のクロストリジウムで翻訳された毒素の分子量を下回る。クロストリジウムプロテアーゼが、大腸菌のような他の宿主生物内に存在しないため、組換えボツリヌス毒素およびそれらの断片または誘導体は、そこに単鎖ペプチドとして発現される。これは、二鎖タンパク質としてそれらの正常な生物学的/生物化学的な活性を発揮する他のいかなるタンパク質についても、同様に言えることである:一般に、そのようなタンパク質は単鎖タンパク質として、組換えDNA技術によって得られ、それらが二鎖タンパク質として天然に発揮するそれらの生物学的/生物化学的な活性は、したがってほとんど存在しないかまたは全く存在しない。
【0008】
活性タンパク質、特に活性ボツリヌス毒素を生成するために、精製後、切断およびしたがって活性化を、エンドプロテアーゼの付加によって実施することができるように、トロンビン、第Xa因子AA、またはジェネナーゼ(genenase)のような配列特異的プロテアーゼに対する認識配列の挿入が、従来必要だった。そのようなエンドプロテアーゼの使用は、本質的に2つの不利な点を有する:一方では、遺伝子工学的手段によって付加された一つの切断部位に加えて、他のさらなる切断部位がアミノ酸配列内に存在することは必ずしも排除することができない。これらの第二の切断部位で、切断が非常に非能率的に行われる場合でさえ、プロテアーゼ処理後、毒素の異なる切断変種の混合物は結果として、苦労して分離することができる。他方では、薬学的調製物の場合、薬剤法の理由で(法的考察)、その後タンパク質を付加するか、または調製物をさらなるタンパク質と接触させることは、このタンパク質の完全な除去、およびさらなるプロセッシングにおけるその任意で存在する混入物の完全な除去が、証明されなければならないことから、非常に不利である;これは一般に、多くの費用を必要とする。
【0009】
他の細菌毒素、例えばシュードモナス外毒素またはジフテリア毒素の場合も同様に、(例えば、延長因子のADPリボシル化、およびしたがってタンパク質合成の阻害によって)酵素ドメインが毒性作用を発揮するために、二鎖のジスルフィド架橋ポリペプチドへのタンパク質分解切断による活性化が必要とされる。これらの毒素は、特に腫瘍治療において用いられるいわゆる免疫毒素を産生するために使用される。この目的のために、毒素の細胞結合ドメインは、腫瘍特異的表面タンパク質(分化抗原または腫瘍関連抗原)に高い結合親和性を有するタンパク質ドメインと置換される。古典的な免疫毒素においてこれらのタンパク質ドメインが、モノクローナル抗体またはその断片からなる一方、サイトカイン、増殖因子、ならびにいくつか例を挙げればアフィリン(affilin)、アンキリン反復タンパク質、またはアンチカリン(anticalin)のファミリーの変異され選択されたタンパク質よって、特定の腫瘍細胞に対する特異性を与えることもできる。そのような融合タンパク質の組換え発現において、単鎖ポリペプチドが得られる。例えば、リシンが、トウゴマ(Ricinus communis)の部位を除いてプロテアーゼに対するプロセッシング部位を有さず、そのような部位が挿入されなければならない一方、ジフテリア毒素断片およびシュードモナス外毒素断片は、免疫毒素の成分としてエンドソーム区画内のインターナリゼーション後、標的細胞のプロテアーゼによって切断することができる。これは、ジスルフィド架橋を形成するシステイン残基の間のループ領域において行われる。しかしながら、最小の部分および全てではないインターナライズされた免疫毒素分子は、この方法でプロセッシングされる(Ogata et al., 1990)。
【0010】
組換えタンパク質、特により小さいポリペプチドを、十分な量でかつ可溶性型で得るために、大腸菌において、例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼもしくはマルトース結合タンパク質を有する融合タンパク質またはハイブリッドタンパク質としてそれらを発現することは、多くの場合必要である。さらに、アフィニティ精製に対するN末端またはC末端タグ、例えば、Hisタグ、Strepタグ、またはFLAGタグによって望ましいポリペプチドが発現させられる、多数の発現系が市販されている。多くの状況で、発現プラスミドにおいて、望ましいタンパク質をコードするDNA配列が挿入された多重クローニング部位と、融合パートナーまたはアフィニティタグに対するコード配列の間に、プロテアーゼ認識配列がある。この配列は、融合タンパク質の発現および精製の後、適切な配列特異的エンドプロテアーゼ(例えばトロンビン、第Xa因子、またはジェネナーゼ)の付加による望ましいタンパク質を、さらなるペプチド領域から分離することができることを可能にするように設計される。2つの融合パートナーが、ペプチド結合の代わりにジスルフィド架橋によって互いに共有結合された場合、β-メルカプトエタノール、DTT、または還元グルタチオンのようなチオール含有物質による簡単な還元によって、精製の後に互いに分離することは可能であろう。例えば、アフィニティタグがマトリックスに結合されたまま残る一方、望ましいタンパク質は、アフィニティマトリックス、例えばNi-NTAアガロースまたはStrepTactinセファロースから、上述の還元剤を用いて溶出させることができる。アフィニティタグまたは加えられたエンドプロテアーゼを分離するためのさらなる精製段階は、したがって省くことができる。
【発明の概要】
【0011】
したがって、一般にタンパク質/ポリペプチド、特に神経毒、加えて該神経毒の断片および誘導体、ならびに融合タンパク質またはハイブリッドタンパク質、特に宿主細胞の溶解後、2つの鎖がジスルフィド架橋されるそれらの生物学的活性二鎖構造ですでに存在する免疫毒素の組換え発現の方法を提供することが望ましい。そのようなタンパク質およびポリペプチドを生成するためのそのような方法は、本明細書に記載される発明によって提供される。
【0012】
驚くべきことに、本発明者らは、LHN断片または完全な毒素が、好ましくは核酸レベルで、少なくとも一つの特定の改変に供される場合、両方とも組換え発現によって単鎖として得られるが、二鎖のジスルフィド架橋型でそれらの正常な生物学的/生物化学的な活性を発揮する、BoNT(A)のLHN断片と同様に完全な神経毒Aが、二鎖型で組換え発現によって得られることを見出した。本発明者らによって行われたその後の試験によって、それらが従来の組換え方法に従って単鎖として得られるが、二鎖のジスルフィド架橋型でそれらの生物活性を発揮することから、同じことが、任意の他のタンパク質/ポリペプチドに対しても当てはまることが示された。
【0013】
BoNT(A)の場合またはBoNT(A)のLHN断片の場合、上述した「少なくとも一つの改変」は、本明細書においてPRS(プロテアーゼ認識部位)と称されるペンタペプチド配列の挿入に関する。タンパク質/ポリペプチドの一般的な場合、(好ましくは核酸レベルで)改変されるタンパク質/ポリペプチドに存在するペンタペプチド配列は、すでに存在する配列に挿入されるペンタペプチド配列PRSを適合させるそのような方法で(例えば、アミノ酸残基の少なくとも一つの置換によって、またはPRSの少数のアミノ酸残基のみの挿入によって、またはアミノ酸残基の欠失によって)改変することができる。同様に、1または2または3またはいくつかのアミノ酸残基の欠失を必要とすることの有無に関わらず、ヘキサ/ヘプタ/オクタ(など)ペプチド配列は挿入することができる。本発明によれば、最終的に発現されたポリペプチドが、そのループ領域内にPRS(ペンタペプチド)配列を有するという利点のみであり、ここで本発明によるループ領域は、ジスルフィド架橋に関与する2つのシステイン残基間に配置されるアミノ酸配列として規定される。このPRS配列がループ領域内に存在する場合、(アミノ酸レベルで)ポリペプチド配列PRSに隣接した単鎖ポリペプチドの切断において、2つの異なる鎖内に天然に存在する配列が、同様に2つの異なる鎖上へ分配されるという結果を有する。ボツリヌス神経毒A(BoNT(A))の場合、このPRS配列は好ましくは、BoNT(A)のペンタペプチドAsp443-Asp447を欠失させることにより、ループに挿入される(図3-1を参照されたい)。他のタンパク質/ポリペプチドにおいて(例えば、BoNT(B)、BoNT(C1)、BoNT(D)、BoNT(E)の場合、リシンの場合、シュードモナス外毒素のPE40の場合、またはジフテリア毒素(DT)の場合)、BoNT(A)の改変ループを、ループ配列(図3-2〜3-5を参照)に挿入することはそれよりも好ましく、ここで自然なループ配列のアミノ酸残基は欠失し得るまたは欠失し得ない。図3-2〜3-5の改変ループ配列は、PRS配列の中心アミノ酸がR、Y、H、またはQだけでなく任意の他の天然アミノ酸でもあり得る、2つの末端Cys残基を伴わないそれらの配列である。上述した他のタンパク質/ポリペプチドの場合、BoNT(A)の改変ループの一部、特に配列GIITSKTKSLVPXGSKALNDL(X=天然のアミノ酸)のみを挿入することが特に好ましく、ここで自然なループ配列のアミノ酸残基は欠失し得るまたは欠失し得ない。図3-2〜3-5の改変ループ配列は、2つの末端Cys残基を伴わないそれらの配列である。
【0014】
BoNT(A)のLHN断片に対して、または完全な組換え毒素に対して、これはしたがって、配列改変がLおよびHNの間のループ領域内の変化であり、この変化がPRS配列の存在を提供することを意味する。本発明によれば、PRS配列はBoNT(A)に対してだけでなく、ペンタペプチド配列Val-Pro-Xaa-Gly-Serである。Xaaは任意の天然アミノ酸を意味する。XaaがArgまたは任意の他の天然のアミノ酸であるかどうかに依存せず、ペンタペプチド配列Val-Pro-Xaa-Gly-Serはいずれにせよペンタペプチド配列として言及される。しかしながら、PRS配列の4つの他のアミノ酸残基のうち1つが置換され、それが特に対応する親水性/疎水性または極性単極残基によって、本発明の文脈内で実際可能である場合、これをこの文脈内および以下で、PRS-ペンタペプチド配列の変種として言及する。例えばValがLeu、Ile、Ala、Phe、Pro、またはGlyによって置換される場合、変種が存在する。さらに、N末端から見てPRSの第2の位置のプロリンが(同様にまたは単独で)、Leu、Ile、Ala、Phe、Val、またはGlyによって置換される場合、変種は存在する。同様に、PRSの第4の位置のグリシンは、例えば、Leu、Ile、Ala、Pro、Phe、またはValによって置換することができ;これは他の変種をもたらす。および、PRSの第5の位置のセリンが、例えばTyr、Trp、Thr、任意で同様にCysまたはMetによって置換される場合、変種のさらなるタイプが存在する。本発明によって、PRS配列の位置1、2、4、および5の少なくとも一つで、Val-1、Pro-2、Gly-4、および/またはSer-5とは異なるアミノ酸残基を含むそれらの配列は、ペンタペプチド配列の変種と呼ばれる。
【0015】
BoNT(A)のLHN断片(または完全な毒素)、または通常、組換え発現によって単鎖タンパク質/ポリペプチドとして得られるが、二鎖型で(のみ)生物学的/生化学的に活性である任意の他のタンパク質/ポリペプチドが、ペンタペプチド配列Val-Pro-Xaa-Gly-Ser(式中、Xaaは20の天然のアミノ酸のうち任意のものであり、前述のパラグラフの意味に従って4つの他のアミノ酸を置換することができる)を含む場合、それは大腸菌宿主細胞の溶菌液(例えば大腸菌K12、特に株M15[pREP4]、XL1-BLUE、またはUT5600の大腸菌K12宿主細胞)内に二鎖型で存在し、ここでBoNT(A)の場合、軽鎖は、HNまたは完全な重鎖にジスルフィド架橋によって共有結合する(図7)。ポリペプチド鎖の切断は、細胞溶解の直後に実現されるか、または実質的に細胞溶解物のインキュベーションの数時間後に完成するかのいずれかである。結果的にループ領域内で改変されるプロテアーゼ不活性変異体もまた、大腸菌宿主細胞の発現および崩壊の後に、二鎖構造で存在することから、毒素または毒素断片のプロテアーゼドメインの活性による自己タンパク分解を排除することができる。明らかに、大腸菌宿主株のプロテアーゼは、PRSペンタペプチド配列の切断の原因となる。
【0016】
4パラグラフ前の「驚くべきことに、本発明者らは…」で始まるパラグラフ(6ページ)に従うさらなる好ましい改変は、1〜20アミノ酸残基の間隔でPRS配列のそのN末端に属し(図3-2〜図3-5の場合、ペンタペプチドPRS配列のバリン残基に近接してロイシン残基が配置された、N末端終末の方向のアミノ酸は、PRS配列から1アミノ酸残基の間隔を有する)、特に3〜15アミノ酸残基の間隔で、特に3〜10アミノ酸残基の間隔で、特に好ましくは3〜8アミノ酸残基の間隔で、およびさらにより好ましくは3アミノ酸残基の間隔で、塩基性のアミノ酸残基、好ましくはリジン残基またはアルギニン残基は存在し、そのC末端終末で、大腸菌宿主細胞のプロテアーゼはループ配列を切断する。切断後に、例えば、(上記の定義された間隔が3アミノ酸残基である場合)2アミノ酸残基−PRS配列のバリン残基から末端を有するポリペプチドは、したがって得られる。この場合、その後前に定義された1〜20アミノ酸の間隔内のPRS配列のN末端に、塩基性のアミノ酸残基(例えばリジン残基)が配置されるために、「改変」が、真に改変、すなわちアミノ酸残基の挿入または置換を必ずしも意味するわけではない。塩基性のアミノ酸残基(例えばリジン残基またはアルギニン残基)が、上述の間隔でPRS配列のN末端に存在することのみが重要である。
【0017】
5パラグラフ前の「驚くべきことに、本発明者らは…」のパラグラフに従う他の改変(同様に、必須でないが好ましい)は、大腸菌宿主細胞のプロテアーゼが切断するループ配列が、少なくとも9アミノ酸残基の長さを有するという点に属する。ループ配列の好ましい長さは、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも18、少なくとも20、および少なくとも23アミノ酸残基である。ループ配列の特に好ましい長さは、15〜22、特に18〜22アミノ酸残基である。
【0018】
本発明による方法は、非常に一般的な表現では、2つの鎖が大腸菌宿主細胞内の組換え発現によってジスルフィド架橋される、二鎖型のタンパク質/ポリペプチドを生成するための方法であり、ここで(i)タンパク質/ポリペプチドは、二鎖のジスルフィド架橋タンパク質/ポリペプチドとして、その生物学的活性を発揮し;(ii)第一の鎖のC末端アミノ酸残基は、Arg残基またはLys残基であり;(iii)タンパク質/ポリペプチドの第二の鎖は、1〜20アミノ酸残基のN末端終末としてシステイン残基のN末端、およびPRSとして示されたペンタペプチド配列VPXGSを有し、式中、Xは任意の天然のアミノ酸であり、VはVal、Leu、Ile、Ala、Phe、Pro、またはGlyであり、PはPro、Leu、Ile、Ala、Phe、Val、またはGlyであり、GはGly、Leu、Ile、Ala、Pro、Phe、またはValであり、SはSer、Tyr、Trp、またはThrであり;ならびに(iv)方法は以下の段階を含む:(a)その改変形態でのタンパク質/ポリペプチドが、そのループ領域内に上述のペンタペプチド配列(VPXGS)を有するような、タンパク質/ポリペプチドの核酸レベルでの改変;(b)核酸レベルで改変された構築物の大腸菌細胞への挿入;(c)宿主細胞の培養およびその後の溶解;ならびに(d)二鎖タンパク質/ポリペプチドの単離。
【0019】
本発明によれば、タンパク質/ポリペプチドの第一の鎖は、好ましくは対応するDNAのN末端終末によってコードされる鎖であり、一方タンパク質/ポリペプチドの第二の鎖は、したがって対応するDNAのC末端終末によってコードされる鎖である。5'-DNA-3'の発現がN-ポリペプチド-Cをもたらすことから、本発明の上述した好ましい場合において、発現を以下のように表すことができることを意味する:5' DNA-3'は、N-第一のポリペプチド鎖-C-ループ-N-第二のポリペプチド鎖-Cと表される。本発明によれば、最終的に本発明によるポリペプチド/タンパク質、N-第一のポリペプチド鎖-C-N-第二のポリペプチド鎖-Cが二鎖構造で得られるように、ループは元の位置ですでに切断される。
【0020】
「タンパク質/ポリペプチドの第二の鎖は、1〜20アミノ酸残基のN末端終末としてシステイン残基のN末端、およびPRSとして示されたペンタペプチド配列VPXGSを有する」という句は、例えばペンタペプチド配列VPXGSのバリン残基によって、しかし他の(任意の)アミノ酸残基によって、N末端終末が形成されないことを意味する。後者とPRSのバリン残基の間で、さらなる1〜19アミノ酸残基を配置することができるが、N末端アミノ酸残基は、ペプチド結合によって、直接、例えばバリン残基に結合することができる、すなわちPRSのバリン残基のすぐ隣にあることができる。
【0021】
それらの(生物学的に)活性な二鎖構造で単離することができる、本発明のタンパク質/ポリペプチドは、その第一の鎖のC末端終末が塩基性のアミノ酸残基、特にArg残基またはLys残基を有し、その第二の鎖が1〜20アミノ酸残基および、式中X、V、P、G、およびSが上記で定義されたPRSと呼ばれるペンタペプチド配列VPXGSを有するN末端を提供するタンパク質である。
【0022】
本発明によれば、組換えリシンに基づく免疫毒素の場合、例えばトロンビンのような配列特異的プロテアーゼまたは活性化のための第Xa因子による処理は、現在用いられていない。例えば、ジフテリア毒素またはシュードモナス毒素に基づく免疫毒素の場合、毒素の酵素ドメインの原形質への転位に対する律速段階として、標的細胞のプロテアーゼによるプロセッシングはもはや必要でないため、効率における有意な増加が期待されており、また実際に得られている。二鎖のジスルフィド架橋ポリペプチドとしてすでに存在するそのような免疫毒素は、小用量で適用することができ、なお同じ細胞-毒作用を提供することができる。これは一方で、治療費用を減少させ、他方では、さらなる適用に対して無効な免疫毒素を作製する抗体の形成のリスクを低下させる。二鎖のジスルフィド架橋、およびしたがって活性化された免疫毒素を生成するための方法は、本発明によって提供された。
【0023】
本発明によって提供される方法について、融合タンパク質またはハイブリッドタンパク質、すなわちアフィニティ精製のためのペプチドタグを有するタンパク質であって、二鎖型で、その2つのポリペプチド鎖がジスルフィド架橋によって共有結合し、かつアフィニティクロマトグラフィーまたは他の精製法の後に、β-メルカプトエタノール、DTTまたは還元グルタチオンのようなチオール含有物質による簡単な還元によって分離することができるタンパク質を調製することは、同様に可能である。
【0024】
M15[pREP4]またはBL21(DE3)のような大腸菌の発現株において、クロストリジウム神経毒およびその断片の組換え発現(例えば、改変細胞特異性を有する、例えばLHN断片またはクロストリジウム神経毒の誘導体)は、単鎖ポリペプチドを生成する。トリプシンによるこれらのポリペプチドの処理によって、プロテアーゼドメインの転位ドメインへの移行領域内のループ配列の領域で、切断が生じる。トリプシンが配列特異的プロテアーゼではないことから、ポリペプチドのさらなる領域における、通常は不必要な切断が起こり得る。例えば、BoNT(A)は、二鎖LHN断片およびHC断片が生成されるように、トリプシンによってさらにHNとHCの間で切断される。ほとんどの場合所望のループ領域内で選択的な切断を確実にするために、特異的エンドプロテアーゼに対する認識配列の存在は、任意で挿入後、必要である。
【0025】
トロンビン、第Xa因子、ジェネナーゼなどの配列特異的エンドプロテアーゼによる、組換え融合タンパク質/ハイブリッドタンパク質の切断は、一般に公知の一連の方法の範囲内にある。精製後に、組換えタンパク質/ポリペプチドに、改良された可溶性および/もしくは改良された発現を与えるか、またはアフィニティ精製のためのペプチドタグとして働く融合パートナーを分離することが可能である。この目的のために、タンパク質溶液を、可溶性型でまたはマトリックス上の固定された形態で、適したエンドプロテアーゼと共にインキューベートした。
【0026】
この技術は、二鎖のタンパク質/ポリペプチドとしてそれらの正常な生物学的/生物化学的な活性を発揮するが、組換えDNA技術によって不活性単鎖タンパク質/ポリペプチドとして得られる上述の組換えタンパク質/ポリペプチドの発現(例えばクロストリジウム神経毒、LHN断片のようなクロストリジウム神経毒の断片、または例えば改変細胞特異性を有するクロストリジウム神経毒の誘導体の発現)に対しても、利用することができる:エンドプロテアーゼに対する認識配列は、ポリペプチドに、好ましくは核酸のレベルで、例えばLとHNの間のループ領域にクローニングされ、さらにN末端またはC末端の端で、同じかまたはさらなるエンドプロテアーゼに対するさらなる認識配列が、アフィニティ精製のためのペプチドタグに隣接して、クローニングされる。単鎖発現タンパク質/ポリペプチドは次いで、LとHNの間のループ領域内の切断による、対応するエンドプロテアーゼまたは同時もしくは経時的な複数のエンドプロテアーゼでの処理によって活性化され、ペプチドタグは除去される。
【0027】
そのようなエンドプロテアーゼの使用のための費用、およびしたがって必要なさらなる作業段階を除いて、薬学的調製物におけるそれらの使用(例えば組換えボツリヌス毒素またはそれらの誘導体の使用)は、薬事法に基づく(規制)理由に関して、非常に問題がある。一方で、使用されたエンドプロテアーゼの純度は、実験的に証明されなければならず、他方では、精製プロトコールのさらなる過程における、調製物の完全な除去および特にウイルスが存在しないことは、正確に実証されなければならない;これは一般に、膨大な分析支出を必要とする。将来、例えば改良された特性または改変細胞特異性を有するボツリヌス毒素もまた、組換え発現によって作製されるであろうことから、二鎖タンパク質/ポリペプチドとしてそれらの正常な生物学的/生物化学的な活性を発揮するが、組換えDNA技術によって不活性単鎖タンパク質/ポリペプチドの形態で得られる、上述の組換えタンパク質/ポリペプチドを提供することを可能にし、特に、エンドプロテアーゼを用いることなく、二鎖のジスルフィド架橋およびしたがって生物学的活性ポリペプチド/タンパク質として、ボツリヌス毒素またはそれらの誘導体を提供することを可能にする発現方法の大きな必要がある。
【0028】
したがって、以下でさらに詳細に説明される本発明は、最も広い意味で、クロストリジウム神経毒ならびにそれらの断片および誘導体のようなタンパク質を、大腸菌宿主細胞内で組換え発現によって生成することができ、それらの二鎖のジスルフィド架橋型で、およびしたがって生物学的活性形態で、エンドプロテアーゼの添加を必要とするそれらの活性化を伴わずに単離することができる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
添付の図および配列表の配列を、以下に記載する。
【図1】ボツリヌス菌または大腸菌K12からの、野生型ループまたは本発明の改変ループを有するボツリヌス神経毒Aの放出の概略図を示す。A:ボツリヌス菌細胞の溶解において、神経毒は、軽鎖(L)と重鎖(H)の間のループ領域内で、クロストリジウムエンドプロテアーゼによって切断される。両方の鎖は、ジスルフィド架橋によって互いに連結される。B:大腸菌において野生型ループを有する組換え神経毒の発現および細胞の溶解の後、それは単鎖の形態で存在する。C:本発明に従って改変されるループを有する組換え神経毒が大腸菌細胞から放出される場合、ループ領域内の切断はエンドプロテアーゼによって行われる。
【図2】大腸菌細胞からのそれらの放出後と比較して、本発明に従って改変したループ領域同様に野生型ループ領域を有する異なる組換え毒素の概略図を示す。A:ボツリヌス神経毒;B:シュードモナス外毒素;C:ジフテリア毒素。
【図3】野生型ループと、本発明によって改変されたBoNT(A)のループ配列の選択肢との比較を示す。軽鎖および重鎖の境界のシステイン残基を含む、ヌクレオチド配列ならびに由来するアミノ酸配列を図示する。矢印は、大腸菌溶解物内のエンドプロテアーゼに対する切断部位を示す。
【図4】野生型ループと、それぞれ血清型B、C1、およびEのボツリヌス神経毒の、本発明に従って改変された例示的なループ配列との比較を示す。軽鎖および重鎖の境界のシステイン残基を含む、ヌクレオチド配列ならびに由来するアミノ酸配列を図示する。矢印は、大腸菌溶解物内のエンドプロテアーゼに対する切断部位を示す。
【図5】野生型ループと、それぞれシュードモナス外毒素の断片PE40、ジフテリア毒素(DT)、およびリシンの、本発明に従って改変される例示的なループ配列との比較を示す。境界のシステイン残基を含む、ヌクレオチド配列および由来するアミノ酸配列を図示する。矢印は、大腸菌溶解物内のエンドプロテアーゼに対する切断位置を示す。
【図6】組換え毒素および毒素断片のクローンニングに用いられた、オリゴヌクレオチドの組み合わせを示す。制限エンドヌクレアーゼに対する認識配列は、下線で示される。
【図7】SDSポリアクリルアミドゲル上の、本発明に従って改変されるループ配列を有するBoNT(A)の組換えLHN断片の分析を示す。LHN断片の発現は、プラスミドpQE-BoNT(A)-Lmod1HNによって形質転換されたM15[pREP4]細胞中で実行された。レーン2および5:Ni-NTAアガロース上で精製されたLHN断片;レーン1および4:トロンビンと共にインキュベート後のLHN断片;トレース3:分子量マーカー。還元性条件(レーン1および2)ならびに非還元性条件(レーン4および5)下での試料適用。
【図8】SDSポリアクリルアミドゲル上の、本発明に従って改変されるループ配列を有するBoNT(B)の組換えLHN断片の分析を示す。LHN断片の発現は、プラスミドpQE-BoNT(B)-Lmod1HNによって形質転換されたM15[pREP4]細胞中で実行される。レーン1および4:Ni-NTAアガロース上で精製されたLHN断片;レーン2:分子量マーカー;レーン3:適用なし。還元性条件(レーン1)および非還元性条件(レーン4)下での試料適用。
【図9】SDSポリアクリルアミドゲルにおいて、本発明に従って改変されるループ配列を有する組換えBoNT(C1)の分析を示す。毒素の発現は、プラスミドpQE-BoNT(C1)-Lmod1HNHCによって形質転換されるM15[pREP4]細胞中で行われる。レーン1および4:Ni-NTAアガロース上で精製された毒素;レーン2:分子量マーカー;レーン3:適用なし。還元性条件(レーン1)または非還元性条件(レーン4)下での試料適用。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第一の好ましい態様において、シスチン残基430と454の間のBoNT(A)のループ領域のアミノ酸配列(図3-1〜3-5を参照)は、大腸菌宿主細胞の溶解物中の発現された毒素またはその断片/誘導体が、二鎖のポリペプチドとしてすでに存在するという点で改変された。2つの鎖は、シスチン残基430と454が関与し、ジスルフィド架橋によって互いに共有結合される。本発明の特に好ましい態様において、図3で述べたように、ペンタペプチドAsp443-Asn447(DKGYN)は、Val-Pro-Arg-Gly-Ser(VPRGS)によって置換することができる。本発明のさらなる好ましい態様において、ペンタペプチドAsp443-Asn447(DKGYN)は、同様にVal-Pro-Tyr-Gly-Ser(VPYGS)、Val-Pro-His-Gly-Ser(VPHGS)、またはVal-Pro-Gln-Gly-Ser(VPQGS)によって置換することができる。この文脈において、上記で詳細に説明したように、中心のアミノ酸残基が任意の天然のアミノ酸であり得るだけでなく、4つの他のアミノ酸残基も置換することができることが、同様に当てはまる(これらの残基の少なくとも一つを置換する場合、PRS配列の変種は本発明の意味において存在する)。さらに、この態様および以下で説明される他の全ての好ましい態様に関して、ループ配列が1〜28のアミノ酸の間隔でPRSのN末端に、塩基性のアミノ酸残基、特にリジンまたはアルギニン残基を有する場合さらに好ましいことが当てはまる。
【0031】
BoNT(A)の上記の特徴付けられたループの領域内の、個々のもしくはいくつかのアミノ酸残基のさらなる置換、またはさらなるアミノ酸残基の挿入または欠失もまた、溶解物中の本発明による発現された毒素、またはそれに由来する断片/誘導体が、二鎖のポリペプチドとして存在するという結果をもたらすことは、当業者に容易に明らかである。このような可能性のある変異も本発明の範囲に含まれる。
【0032】
発現され、単鎖で翻訳されたポリペプチド/タンパク質において、PRS-ペンタペプチド配列またはその考えられる変種の一つがループ領域内に存在する限り、BoNT(A)の野生型で存在するペンタペプチドAsp443-Asn447(DKGYN)が、ヘキサペプチドによって、ヘプタペプチドによって、オクタペプチドによって置換できることが同様に当業者に容易に明らかである。上記で説明したように、ペンタペプチドのN末端に塩基性のアミノ酸残基(好ましくはリジン)が存在する場合、好ましい。
【0033】
PRSのペンタペプチド(Val-Pro-Arg-Gly-Ser)の好ましい態様が、血液凝固のカスケードにおいて重要な役割を担い、高い配列特異性を有するプロテアーゼトロンビンに対する可能な認識配列の一部であることは、当業者にさらに明らかである。第一にボツリヌス神経毒Aでも他のポリペプチドでも、トロンビンによる切断は、望ましい二鎖のジスルフィド架橋型を得るために必要ではなく、第二にトロンビン認識配列がそれ自体で、すなわちその改変されない形態で、大腸菌溶解物のプロテアーゼ活性による切断に対して有益であるが、全く必要でないことが明白に指摘される。そのC末端終末でトロンビンが切断することができる(その代わりに、他の天然のアミノ酸が存在する)、アルギニン残基を含まない対応するポリペプチドにおいて(それらのループにおいてより良好)、挿入されるまたは生成されるPRSペンタペプチド配列の態様はまた、上記で説明したように、ループ内の切断をもたらす。上記で説明したように、切断は好ましくは、ペンタペプチドのN末端であるループのリジン残基で実現される(同様に実施例2;図3を参照されたい)。
【0034】
長時間作用性の神経毒としてBoNT(B)およびBoNT(C1)、および短時間作用性の神経毒としてBoNT(E)などのボツリヌス毒素の他の血清型、ならびに単鎖として組換え発現され得るが、二鎖としてのみそれらの生物学的活性を発揮することができる完全に異なるポリペプチド/タンパク質が、治療的に利用することができるため、これらの神経毒、ならびにその断片または誘導体(さらに他のポリペプチド/タンパク質)が、大腸菌溶解物由来の二鎖のジスルフィド架橋ポリペプチド/タンパク質として、得ることもできることが望ましい。特にBoNT(B)の場合、大腸菌溶解物における組換え毒素の二鎖のポリペプチド/タンパク質への完全な切断は、一般に単鎖として、したがって不活性ポリペプチドとして少なくとも40パーセント存在し、かつ活性二鎖の形態から分離することができないボツリヌス菌において分泌される天然の神経毒と比較して、有意な利点を提供する。BoNT(A)のループと比較して、ジスルフィド架橋に関与しているシステイン残基間の血清型B、C1、およびEの神経毒のループ領域は、著しく短いこともまた明らかである(図3および4)。BoNT(A)の場合、23アミノ酸残基(Val431-Leu453)が存在する一方、BoNT(B)においてわずか8(Lys438-Ile445)、BoNT(C1)において15(His438-Asp452)、およびBoNT(E)において13アミノ酸残基(Lys413-Ile425)が、この領域内に存在する。これにも関わらず、BoNT(B)を除いて、これらの比較上短い領域が、本発明のPRS配列を有する場合、鎖の切断およびジスルフィド架橋の形成を可能にするのに十分長いことが判明した。たとえBoNT(B)が、ループ内のペンタペプチドがPRSペンタペプチド配列で置換された場合(したがって、ループ配列の全長が8アミノ酸残基のみ)、本発明の意味において2つの鎖(軽鎖および重鎖)に切断されたとしても、よりよい結果は得られた。すなわち、少なくとも9、少なくとも15、少なくとも20、または少なくとも22のアミノ酸残基のループを有することは、本発明において好ましい。ループが22のアミノ酸残基を有する最後に言及された態様の一つは、例示的な様式で、図4-1および4-2の配列、またはこれら2つの間の比較によって説明される。
【0035】
特に、この方法において、ループが、少なくとも9、好ましくは15残基に伸張し、および/またはPRSのN末端で塩基性のアミノ酸残基(例えばおよび好ましくはLys残基)が挿入された場合(予めN末端に塩基性残基またはLys残基が存在しなかったため)、BoNT(A)のループ領域またはその重要な部分による、サブタイプB、C1、などまたはそれらの重要な部分におけるループ領域の置換が、神経毒のジスルフィド架橋二鎖のポリペプチド/タンパク質への切断に関して好ましいことが、同様に実験的に証明された。図4に図示したような変化は、特に好ましい(図4におけるPRS配列はVPRGSであるが、同時にかつ同様に配列VPYGS、VPHGS、VPQGS、VPKGS、VPIGS、およびVPAGSが好ましい)。
【0036】
本発明の他の態様において、大腸菌宿主細胞の溶解物中で発現した毒素またはそれに由来する断片/誘導体は、2つの鎖がジスルフィド架橋によって共有結合される二鎖のポリペプチドとしてすでに存在するという点で、血清型B、C1、D、E、F、およびGのボツリヌス毒素におけるループ領域および破傷風毒素の、アミノ酸配列ならびにそれらをコードしている遺伝子部分は、LとHNの間のジスルフィド架橋に関与しているシステイン残基の間で改変される(組換え発現によって単鎖として生成されるが、二鎖の形態でのみ生物学的活性を展開する、他のいかなるポリペプチド/タンパク質に対しても同様に当てはまる)。本発明の好ましい態様において、神経毒またはそれに由来する毒素断片/誘導体の完全なループ領域(またはその部分)は、図3で特徴付けられるようなBoNT(A)の完全なループ領域、またはBoNT(A)のループ領域の一部を置換することができ、ここでペンタペプチドAsp443-Asn447は、好ましくは例えばVal-Pro-Arg-Gly-Ser(VPRGS)によって置換される。本発明のさらなる好ましい態様において、ペンタペプチドAsp443-Asn447は、同様にVal-Pro-Tyr-Gly-Ser、Val-Pro-His-Gly-Ser、またはVal-Pro-Gln-Gly-Serによって置換することができる。特に本発明の好ましい態様において、上述した神経毒およびそれに由来する断片/誘導体のループ領域またはループの一部は、オリゴペプチドArg/Ser-Gly-Ile-Ile-Thr-Ser-Lys-Thr-Lys-Ser-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-Lys-Ala(18mer:R/SGIITSKTKSLVPRGSKA)によって置換することができる。例えば図4において示されるように、大腸菌(例えば、大腸菌K12宿主細胞またはその誘導体)内の発現の後、ジスルフィド架橋二鎖ポリペプチド/タンパク質として発現した神経毒またはその断片/誘導体ももたらす、上記のループ配列の領域内の個々のもしくはいくつかのアミノ酸残基のさらなる置換、挿入、または欠失は、明らかに本発明に含まれる(同じことは、組換え発現によって単鎖として生成されるが、二鎖の形態でのみ生物学的活性を有する、他のいかなるポリペプチド/タンパク質に対しても同様に当てはまる)。
【0037】
たびたび上で繰り返したように、本発明のさらなる態様に従う本発明の方法に関して、融合タンパク質またはハイブリッドタンパク質は生成することができ、同様に例えば以下の成分A、B、およびCを有する:
−その酵素活性によって、例えば標的細胞において分泌を阻害するか、またはそれらを死滅させることが可能である、エフェクタードメイン(A);
−前述したように本発明に従って改変され、上記の定義されたPRSペンタペプチド配列VPXGS(例えば図3に図示したような、BoNT(A)またはその変種の改変ループ配列)を有し、N末端および/またはC末端にシステイン残基を結合し得る、ループ配列(B);ならびに
−融合タンパク質またはハイブリッドタンパク質に細胞特異性を与える、細胞結合ドメイン(C)。
【0038】
成分B(ループ配列)はまた、すぐ上で述べた態様の両方において、好ましくは同様に(i)図4で図示するような改変ループ配列、(ii)PRSの中心残基が任意の天然のアミノ酸の残基であり得ることから、任意のそれに由来する配列、または(iii)(i)もしくは(ii)の変種(変種の定義に関しては上記参照)であり得る。図4において、1つまたは2つのN末端、および2つのC末端アミノ酸残基を除いて、BoNT(B)、BoNT(C1)、またはBoNT(E)のそれぞれのループ配列を欠失させ、欠失したアミノ酸残基は、17mer GIITSKTKSLVPRGSKA(図4-2および4-6)またはBoNT(A)の改変ループ配列の18mer RGIITSKTKSLVPRGSKA(図4-4)によって置換した。
【0039】
上述した成分A、B、およびCに加えて、融合/ハイブリッドタンパク質は、翻訳ドメインを有し得る(ボツリヌス神経毒の場合、ループ配列と細胞結合ドメインの間に配置される)。このさらなるドメインは、標的細胞の原形質へのエフェクタードメインの挿入を支援する。大腸菌(例えば大腸菌K12またはその誘導体)内のそのような融合タンパク質の発現は、1つのドメインがある鎖上に、2つの他のドメインが第二の鎖上にある、二鎖のポリペプチド/タンパク質をもたらす(ボツリヌス毒素の場合、軽鎖上のエフェクタードメインは、ジスルフィド架橋によって重鎖上の2つの他のドメインに共有結合する)。
【0040】
これらの発明の融合またはハイブリッドタンパク質は、腫瘍治療における使用を特に見出された、いわゆる免疫毒素であり得る。この点について、細胞結合ドメインを接着することにより、毒素ドメインは、特定の細胞型、一般に腫瘍細胞に対する特異性を与えられた。毒素ドメインとして、主にジフテリア毒素、シュードモナス毒素、およびリシンの酵素ドメインが用いられる。これらの毒素は、酵素活性を提供するA鎖が、転位作用および細胞結合活性を組み合わせるB鎖に、ジスルフィド架橋によって共有結合した、二鎖のAB毒素に属する。しかしながら、望ましい作用(例えば、腫瘍細胞の死滅)が標的細胞において生じる限り、免疫毒素において他の毒素または毒素断片が考えられる。免疫毒素の第一世代が、例えばリシンのA鎖のような毒素ドメインとモノクローナル抗体との化学的結合によって生成される一方、第二世代の免疫毒素は、組換え発現によって、Fab毒素、単鎖Fv毒素(scFv毒素)、またはジスルフィド安定化Fv(dsFv毒素)として、しかし同様に主に大腸菌において増殖因子またはサイトカインを有する融合タンパク質として生成される(Reiter, 2001)。免疫毒素の将来の世代において、細胞特異性はまた、例えばアンフィリン、アンキリン反復タンパク質、またはアンチカリンのタンパク質ファミリーの、例えば腫瘍特異的表面タンパク質への高親和性結合に従って選択される、改変ポリペプチドによって与えることができる。
【0041】
免疫毒素の全ての考えられる変種において、そこに毒作用を生ずるために、酵素毒素ドメインが標的細胞の原形質を通過できることを確実にしなければならない。大腸菌において免疫毒素が単鎖ポリペプチドとして発現することから、鎖に関して、転位単位および細胞結合ドメインから酵素毒素ドメインを分離するために、ジスルフィド架橋の還元と同様に、タンパク質分解切断が必要とされる。組換えジフテリア毒素断片および組換えシュードモナス外毒素断片の場合、切断は、標的細胞のエンドソームの区画におけるインターナリゼーション後、フューリンのような細胞プロテアーゼによって生じる(Williams et al., 1990)。一方では、リシンは、そのようなプロセッシング部位を有さず、したがって、それをすでに二鎖のジスルフィド架橋免疫毒素として投与するために、人工的に挿入したプロテアーゼ認識配列を必要とする。しかしながら、ジフテリア毒素およびシュードモナス外毒素に基づく免疫毒素の場合、インターナライズされた融合タンパク質の最小の部分のみが切断され、そのため酵素ドメインの同程度に最小の部分のみが原形質に到達することができる(Ogata et al., 1990)。その後示された本発明の好ましい態様は、方法および構築物を記載し、ここで本方法によって免疫毒素の変種が、前述のパラグラフにおいて説明したように、大腸菌宿主細胞内で組換え発現によって生成され、インビトロで添加した細胞エンドプロテアーゼを必要とするそれらの活性化なしで、それらの二鎖のジスルフィド架橋型で、およびしたがって生物学的に(酵素的に)活性型で、単離することができる。細胞プロテアーゼによる切断が必要とされず、免疫毒素の著しく低い投与量が、望ましい細胞毒作用を達成するために使用され得るように、これらの免疫毒素は、転位能力がある形態で標的細胞に酵素毒素ドメインを輸送することが可能である。
【0042】
さらなる本発明の好ましい態様は、したがってさらに、以下の成分A、B、およびCを有する融合タンパク質またはハイブリッドタンパク質を含む:
−毒素ドメインまたはその断片/誘導体(A);
−上記のように本発明に従って改変され、上記の定義されたPRSペンタペプチド配列VPXGS(例えば図3に図示されるBoNT(A)またはその変種の改変ループ配列の一つ)を有し、そのN末端および/またはC末端にシステイン残基を接着してもよい、ループ配列(B);ならびに
−モノクローナル抗体、それらの断片、アフィリン、アンキリン反復タンパク質、アンチカリン、増殖因子(例えばTGFα、FGF、VEGF、またはIGF-1)、またはサイトカイン(例えばIL2、IL4、またはIL6)のタンパク質ファミリーの代表から得られる細胞結合ドメイン(C)。
【0043】
この最後の好ましい態様に従って、成分B(ループ配列)は、同様に(i)図4で図示する改変ループ配列の1つ、(ii)PRSの中心残基が任意の天然のアミノ酸の残基であり得ることから、任意のそれに由来する配列、または(iii)(i)もしくは(ii)の変種(変種の定義に関しては上記参照)であり得る。
【0044】
毒素ドメインは、リシンのA鎖、PE40またはPE38のようなシュードモナス外毒素の断片(ドメインIbを伴うまたは伴わないドメインIIおよびIII;図2)、またはジフテリア毒素の断片であり得る。上述したエフェクターまたは毒素、および細胞結合ドメインは、例としてのみ理解されるであろう。全てのタンパク質またはタンパク質断片は、一方で、融合タンパク質/ハイブリッドタンパク質に、標的細胞、例えば腫瘍細胞の表面抗原に対する特異的結合活性を与え、かつ他方では、インターナリゼーション後の標的細胞で、例えば細胞の死滅のような特定の作用を発揮し、ここで大腸菌内での本発明によるそのような融合/ハイブリッドタンパク質の発現は、毒素ドメインまたはその誘導体がジスルフィド架橋によって細胞結合ドメインに共有結合される二鎖のポリペプチド/タンパク質を生成する、本発明に包含される。
【0045】
シュードモナス外毒素に基づく免疫毒素の効率および特異性を改善するために、様々なアプローチが従来選択されてきた。例えば、受容体結合ドメイン(アミノ酸残基1〜152を有するドメインIa)は、モノクローナル抗体の断片で置換され、同時にシステイン残基13と35(ドメインIIに対する番号付け)の間の転位ドメイン(ドメインII)内のループ領域(図2および5)が改変され、そのため、後者は、遍在する細胞プロテアーゼフューリンの切断にもはや感受性でなかったが、その代わり、より大きな程度に発現され、かつ特定の腫瘍細胞によってのみ部分的に分泌される特別なプロテアーゼに感受性であった(米国特許第6,426,075号)。この改変プロテアーゼ感受性は、置換された受容体結合ドメインに加えて、免疫毒素に増大した細胞特異性を与えるように設計された。しかしながら、ループ内の増加した切断、およびしたがって酵素ドメインIIIの改良された転位効率が、他の細胞プロテアーゼによってもたらされることは期待されない。
【0046】
免疫毒素のためのさらなるアプローチに従い、受容体結合ドメインおよび転位ドメインのN末端領域は、ループ領域においてアルギニン残基27まで除去された。そのような免疫毒素において必要とされる細胞特異性は、例えばドメインIIとIIIの間のIbドメインの部位でジスルフィド架橋によってVLドメインを結合されたモノクローナル抗体のVHドメインの挿入によって、またはドメインIIIのC末端終末の接着によって、与えられた(米国特許第5,980,895号)。そのような構築物において、プロテアーゼによる活性化はもはや必要ではなかった;一方で、これは、有意に増大された輸送効率をもたらすべきである。しかしながら、一方で、酵素ドメインIIIのN末端またはC末端に配置された受容体結合ドメインによる転位は、モノクローナル抗体のVHドメインまたはTGFαのように障害され得ることが予想される。これらの受容体結合ドメインが酵素ドメインから分離されないことから、標的細胞内の酵素活性に対する負の効果およびしたがって毒性は、予想されるであろう。一方で、システイン残基13と35の間のループが、切断されたジスルフィド架橋型ですでに存在し、細胞プロテアーゼによる活性化は、したがって必要とされない場合、および、他方では、原形質における減少後、毒素ドメインから分離され、およびしたがってドメインIIIの酵素活性を損なわないように、受容体結合ドメインが、外毒素のドメインIの代わりに転位ドメインのN末端終末に融合される場合、細胞障害性活性の相対的に最大の程度が、シュードモナス外毒素に基づく免疫毒素によって得られる。
【0047】
本発明の特に好ましい態様は、したがって、モノクローナル抗体、それらの断片、アフィリン、アンキリン反復タンパク質、アンチカリン、増殖因子(例えばTGFα、FGF、VEGF、またはIGF-1)、またはサイトカイン(例えばIL2、IL4、およびIL6)のタンパク質ファミリーの代表から得られる細胞結合ドメインを含む融合/ハイブリッドタンパク質を含み、そのC末端に、小胞体に対する維持シグナル、Lys-Asp-Gly-Leu、またはその変種をC末端の一番端に運ぶことができる改変PE38断片を融合させる。PE38断片の改変は、PRSペンタペプチド配列VPXGS、好ましくは図3において図示されるBoNT(A)またはその変種の改変ループ配列、特にペプチド配列Arg-Gly-Ile-Ile-Thr-Ser-Lys-Thr-Lys-Ser-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-Lys-Ala(図5)で置換された、シスチン残基13と35の間の完全なループ配列(またはその一部のみ)からなる(変種の定義については上記を参照されたい)。好ましくは、本態様において、図5の配列で図示したように、塩基性のアミノ残基がPRSのN末端に1〜20アミノ酸残基の間隔で配置されることが同様に確実にされる。対応する改変PE38断片、およびこの改変断片を含む融合/ハイブリッドタンパク質は、二鎖のジスルフィド架橋型で、大腸菌宿主細胞(例えばM15[pREP4])の溶解物中に存在する。
【0048】
シュードモナス外毒素とは対照的に、ジフテリア毒素の酵素ドメイン、A鎖は、N末端終末に存在する。C末端B鎖に、転位ドメインおよび受容体結合ドメインは存在する。両方の鎖は、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)の細胞からの分泌の際、アルギニン残基193でタンパク質分解切断がプロテアーゼによって生じるループ配列によって連結される(Collier, 2001)。切断後の2つの鎖は、システイン残基186と201の間のジスルフィド架橋によって、互いに共有結合されたまま残る。この点に関しては、ジフテリア毒素は、そのドメイン構造において、ボツリヌス毒素および破傷風毒素に類似している。
【0049】
組換え免疫毒素を生成するために、受容体結合ドメインまたはその一部は、融合タンパク質に新規な細胞特異性を与えるために、例えばVEGFまたはIL2(Arora e al., 1999;Williams et al., 1990)で置換された。A鎖が標的細胞の原形質に到達するために、一方で、大腸菌において単鎖として発現される免疫毒素のポリペプチド鎖は、A鎖とB鎖の間のループの領域で切断されなければならず、他方では、ジスルフィド架橋は減少されなければならない。後者が転位プロセスの間に生じる一方、細胞プロテアーゼによるタンパク質分解切断は不完全であり、そのためA鎖の最小の部分のみが原形質に放出され得る(Williams et al., 1990)。免疫毒素が投与時にすでに二鎖のジスルフィド架橋型で存在する場合、全てのA鎖が、転位能力のある形態で入手され得ることから、有意な効率増加が予想され得る。
【0050】
本発明のさらに特に好ましい態様は、したがって、モノクローナル抗体、それらの断片、アフィリン、アンキリン反復タンパク質、アンチカリン、増殖因子(例えばTGFα、FGF、VEG、またはIGF-1)、またはサイトカイン(例えばIL2、IL4、またはIL6)のタンパク質ファミリーの代表から得られる細胞結合ドメイン)を含む融合またはハイブリッドタンパク質を含み、そのN末端終末に、改変ジフテリア毒素断片を融合させる。この毒素断片は、A鎖、およびB鎖の少なくとも一つの転位ドメイン(Gly1-Phe389またはGly1-Asn486)を含むことができる。ジフテリア毒素断片の改変は、シスチン残基186と201の間の完全なループ配列(またはその一部のみ)が、図3において図示されるBoNT(A)またはその変種の改変ループ配列、特にペプチド配列Arg-Gly-Ile-Ile-Thr-Ser-Lys-Thr-Lys-Ser-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-Lys-Ala(図5)で置換されたものからなる(変種の定義については上記を参照されたい)。対応する改変ジフテリア毒素断片、およびこの改変断片を含む融合タンパク質は、二鎖のジスルフィド架橋型で、例えばM15[pREP4]のような大腸菌宿主細胞の溶解物中に存在する。
【0051】
リシンに基づく第一世代の免疫毒素を、モノクローナル抗体をリシンのA鎖に結合することにより生成した。これは、A鎖のC末端終末に位置するシステイン残基のチオール機能によりジスルフィド架橋を形成した、化学的リンカー分子による抗体の誘導体化によって、過去に達成された。そのような結合体は、抗体の方向性のない誘導体化のため、不均一であった。結合体のサイズおよびB鎖で局所化される転位ドメインの欠失以外の理由により、腫瘍に対する効率は不十分だった。天然の形態でB鎖が同様に、免疫毒素の成分として存在する場合、毒性は有意に増大されたが、B鎖のレクチン様細胞結合特性の結果として、望ましい標的細胞より非特異的な取り込みもまた生じる。この標的コンフリクトは、B鎖が改変され、そのため転位作用は損なわれず残るが、しかしながら細胞表面の糖構造に対する結合親和性が有意に減少するという戦略によって対処された(特許出願WO 89/04839)。そのような改変B鎖を含む組換え発現免疫毒素は、しかしながら単鎖構造であり、そのためA鎖とB鎖の間のリンカーペプチドにおける細胞プロテアーゼに対する認識配列の欠失の結果、標的細胞への免疫毒素の取込みの際、A鎖の放出および転位は、全く不可能であるかまたは非常に非効率的なだけである。米国特許第6,593,132号において、この天然のリンカーペプチドの改変は、異なる細胞特異的プロテアーゼに対する認識配列を表すことを実証する。有意に増大した量における他の細胞タイプと比較して、改変リンカーペプチドをタンパク分解性切断することができるそれぞれのプロテアーゼが、望ましい標的細胞のみにおいて発現されることから、そのような改変によるリシン変種は、対応する細胞特異性を有するであろう。しかしながら、切断がインターナライズされた毒素分子の一部分のみで生じ、したがってまたA鎖の対応する最小量のみが原形質に転位すると仮定されなければならない。転位作用は損なわれず残るが、非特異的なペクチン様細胞結合特性は抑制される改変B鎖に、ジスルフィド架橋によってA鎖が結合し、特異的細胞結合ドメインとそれらのC末端終末で融合する、リシンに基づく二鎖免疫毒素が望ましい。そのような免疫毒素は、細胞特異性および高い毒性を組み合わせる。
【0052】
本発明のさらなる好ましい態様は、したがって以下の成分A、B、およびCを有する融合タンパク質を含む:
−リシンのA鎖(A);
−上記のように本発明に従って改変され、上記の定義されたPRSペンタペプチド配列VPXGS(例えば図3に図示されるBoNT(a)またはその変種のループ配列の一つ)を有し、N末端および/またはC末端にシステイン残基を接着してもよい、ループ配列(B);ならびに
−モノクローナル抗体、それらの断片、アフィリン、アンキリン反復タンパク質、アンチカリン、増殖因子(例えばTGFα、FGF、VEGF、またはIGF-1)、またはサイトカイン(例えばIL2、IL4、またはIL6)のタンパク質ファミリーの代表から得られる細胞結合ドメイン(C)。
【0053】
この最後の好ましい態様に従って、成分Bは、同様に(i)図4で図示する改変ループ配列の1つ、(ii)PRSの中心残基としてそれに由来する任意の配列が天然のアミノ酸の残基であり得る、または(iii)(i)もしくは(ii)の変種(変種の定義に関しては上記参照)であり得る。
【0054】
特に、ループ配列は、ペプチド配列Ala-Pro-Pro-Arg-Gly-Ile-Ile-Thr-Ser-Lys-Thr-Lys-Ser-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-Lys-Ala-Asp-Val(図5〜6)、すなわちリシンのA鎖の改変ループを含むことができる。好ましくはさらに、ループ配列でC末端にシステイン残基が提供される。そこに含まれるPRS配列Val-Pro-Arg-Gly-Serにおいて、しかしながらArgは、他のいかなる天然のアミノ酸Xaaでもあり得る。両端で、ループ配列は、さらなるアミノ酸残基(例えばグリシンおよびセリン残基)によって拡大することができる。さらに、完全にまたは部分的にプロリシンの野生型配列のシステイン残基259と283の間のアミノ酸残基を置換し、かつ少なくとも図3において記載される改変BoNT(A)ループまたはその変種の領域を含むループ配列によって、リシンのA鎖は、完全なB鎖、またはその一部もしくは変種に結合することができる。これに関連して、ジスルフィド架橋は、(プロリシンの野生型配列に関して)システイン残基259と283によって形成される。細胞結合ドメインは、B鎖のC末端終末に融合し、上述のポリペプチドファミリーから得られる。対応する融合/ハイブリッドタンパク質は、二鎖のジスルフィド架橋型で、大腸菌宿主細胞、例えば細胞株M15[pREP4]の溶解物中に存在する。
【0055】
本発明のさらなる態様は、以下の成分A、B、およびCを有する組換え融合タンパク質に関する:
−融合タンパク質により良好な可溶性を与え、より高い発現率をもたらし、および/もしくはアフィニティ精製を可能にするタンパク質またはオリゴペプチド(例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、Hisタグ、StrepTag、FLAGタグ(A);
−上記のように本発明に従って改変され、上記の定義されたPRSペンタペプチド配列VPXGS(例えば図3に図示されるBoNT(a)またはその変種の改変ループ配列)を含み、N末端および/またはC末端にシステイン残基を接着してもよい、ループ配列;ならびに
−任意のタイプのポリペプチド(C)。
【0056】
この最後の好ましい態様に従って、成分B(ループ配列)は、同様に(i)図4で図示する改変ループ配列の1つ、(ii)PRSの中心残基としてそれに由来する任意の配列は天然のアミノ酸の残基であり得る、または(iii)(i)もしくは(ii)の変種(変種の定義に関しては上記参照)であり得る。
【0057】
特に、ループは、PRSの中心のArgがさらにまたXaaであり得るペプチド配列Val-Arg-Gly-Ile-Ile-Thr-Ser-Lys-Thr-Lys-Ser-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-Lys-Ala-Leu-Asn-Asp-Leuを有することができる。両端で、それは、さらなるアミノ酸残基(例えばグリシンおよびセリン残基)によって拡大することができる。大腸菌内のそのような融合タンパク質の発現は、二鎖のポリペプチド/タンパク質をもたらし、これらの2つの鎖は、ジスルフィド架橋によって共有結合し、精製終了後、チオール含有物質(例えばβ-メルカプトエタノール、DTT、または還元グルタチオン)による簡単な還元の後にプロテアーゼを添加することなく、互いから分離することができる。そのような発現系は、反応性のチオール基による融合パートナーの精製および分離の後、例えばチオール反応性リンカー分子との共役反応、または例えばポリエチレングリコールによる改変に対する部位を提供するために、システイン残基を有する2つの末端終末の一つで提供される組換えタンパク質に特に適している。
【0058】
本発明はさらに、前述のセクションで記載する発明に従い、コドンの使用の異なる可能性を考慮して、ポリペプチドをコードする全ての核酸を含む。さらに、本発明は、対応する発現プラスミドによって形質転換され、それらの活性二鎖ジスルフィド架橋型で本発明によって、それぞれのポリペプチドを発現することができる大腸菌の、適したクローニングおよび発現株と同様に、本発明によるそれぞれのポリペプチドのコーディングDNA配列を含む、商業的に入手可能であるかまたは個々に構築されたクローニングおよび発現プラスミドを包含する。そのような発現系に対する一例は、大腸菌宿主株M15[pREP4]と組み合わせたpQE系列の発現プラスミドである。
【0059】
特に薬学的に使用可能なポリペプチド/タンパク質の開発に従事する当業者にとって、これらのポリペプチド/タンパク質の活性化のために、エンドプロテアーゼが加えられてはならないという事実に関連する利点は、非常に明らかである。前述のセクションで記載される本発明のポリペプチド/タンパク質の最も大きな部分は、特に薬学的な使用に対して標的とされる。したがって、本発明はまた、調製物に十分な安定性を与え、その成分が投与の望ましい形態に適合する有用な添加物と同様に、発明のポリペプチド/タンパク質の一つまたは発明のポリペプチド/タンパク質の混合物を活性成分として含む薬学的調製物を含む。
【実施例】
【0060】
実施例
実施例1:改変ループを有するボツリヌス神経毒A型のLHN断片のクローニングおよび発現
軽鎖および転位ドメインのDNA配列のクローニングのために、染色体DNAを、ボツリヌス菌A型(菌株ATCC 3502)の培養培地から単離した。プライマー#1および#2(図6)によるPCR増幅によって、改変ループ配列およびC末端のHisタグを有するBoNT(A)の軽鎖をコードする遺伝子断片が得られた。PCR増幅産物を、Nco 1およびSal 1に対する制限部位を介して、発現プラスミドpQE-60にクローニングし、プラスミドpQE-BoNT(A)-Lmod1を結果として得た。プライマー#3および#4(図6)によるPCR増幅によって、BoNT(A)の転位ドメインをコードする遺伝子断片を生成した。Stu IおよびXho Iに対する制限部位を介して、pQE-BoNT(A)-Lmod1内のループ配列とHisタグに対する配列との間に、それをクローニングした(プラスミドpQE-BoNT(A)-Lmod1HN;配列#2、図3、No.2)。大腸菌発現株M15[pREP4](Qiagen)を、プラスミドpQE-BoNT(A)-Lmod1HNによって形質転換した。改変LHN断片の発現は、500 Mの最終濃度IPTGによる段階的誘導によって、摂氏25℃で一晩実行した。細胞を、300 mMのNaClを含む50 mMリン酸緩衝液中pH 8.0で、リゾチーム処理および超音波処理によって溶解した。遠心分離した溶解物を、Ni-NTAアガロースカラム上で色層分析した。SDSポリアクリルアミドゲル上の分析は、還元性条件下で約50kDAの2つのバンドおよび100kDAのバンドが、クーマシーによって染色された一方、非還元性条件下では100kDaのバンドのみが観察されたことを示した(図7)。このような方法で、2つの鎖が互いにジスルフィド架橋によって共有結合する二鎖のポリペプチドとして、75パーセント以上、LHN断片が細菌から放出されたことが明解に示される。トロンビンによるその後の処理は、一方では、単鎖形態の切断、および他方では、二鎖のポリペプチドにおける転位ドメインの短縮をもたらした(図7)。LHN断片の精製前2時間の大腸菌溶解物のインキュベーションは、二鎖ポリペプチドにおける完全な切断をもたらした。
【0061】
対応して発現し、精製された天然ループ配列を有するLHN断片(図3、No.1)は、SDSポリアクリルアミドゲル上に、非還元性および還元性条件下で100kDaのバンドを示した。単鎖ポリペプチドは、トリプシンによる切断においてのみ、二鎖ジスルフィド架橋LHN断片に変換することができる。
【0062】
実施例2:改変ループを有するボツリヌス神経毒A型のLHNHCN断片のクローニングおよび発現、ならびに切断部位の特徴付け
HNHCN断片(BoNT(A)の受容体結合ドメインのN末端半分を有する転位ドメイン)を、プライマー#3および#5(図6)によるPCR増幅によって生成し、Stu IおよびXho Iに対する制限部位を介してプラスミドpQE-BoNT(A)-Lmod1にクローンニングした(プラスミドpQE-BoNT(A)-Lmod1HNHCN;配列#3)。実施例1に記載のスキームに従って、発現および精製を実施した。SDSポリアクリルアミドゲル上の分析は、単鎖ポリペプチドに相当する弱いバンドおよびさらなる未決定のバンドに加えて、軽鎖およびHNHCN断片に相当する50kDaのバンドならびに75kDaのバンドを示した。HNHCN断片の最初の4つのアミノ酸残基のN末端シークエンシングは、配列Ser-Leu-Val-Proを提供した。したがって、大腸菌溶解物内のプロテアーゼ活性による切断がLys440の後で生じ、したがってペンタペプチドVal-Pro-Arg-Gly-SerのN末端がループに挿入された。
【0063】
実施例3:改変ループを有するボツリヌス神経毒B型のLHN断片のクローニングおよび発現
軽鎖および転位ドメインのDNA配列のクローニングのために、染色体DNAを、ボツリヌス菌B型(菌株Okra)の培養培地から単離した。プライマー#6および#7(図6)によるPCR増幅によって、BoNT(A)の改変ループ配列を有するBoNT(B)の軽鎖をコードする遺伝子断片を生成した。プライマー#8および#9(図6)により、BoNT(B)の転位ドメインをコードする遺伝子断片を生成した。発現プラスミドpQE-60へのクローニングは最初に、Nco IおよびStu Iに対する制限部位を介したpQE-BoNT(A)-Lmod1におけるBoNT(A)-L遺伝子断片と、BoNT(B)-Lmod1増幅産物との置換によって実現した。その後、BoNT(B)-HN増幅産物を、Stu IおよびXho Iに対する制限部位を介してその後ろにクローニングし、結果としてプラスミドpQE-BoNT(B)-Lmod1HNを得た(配列#5)。宿主株M15[pREP4]内の発現およびLHN断片の精製は、実施例1と同様に実行した。SDSポリアクリルアミドゲル上の分析は、還元性条件下で約50kDaおよび55kDaの2つのバンドが、クーマシーによって染色された一方、非還元性条件下では約105kDaのバンドが観察されたことを示した(図8)。これらは、2つの鎖が互いにジスルフィド架橋によって80パーセント以上共有結合する、実質的に二鎖のポリペプチドとして、LHN断片が細菌から放出されたことを明解に示す。
【0064】
実施例4:改変ループを有するボツリヌス神経毒C1型のLHN断片のクローニングおよび発現、ならびに切断部位の特徴付け
軽鎖および転位ドメインのDNA配列のクローニングのために、染色体DNAを、ボツリヌス菌C1型(菌株C205)の培養培地から調製した。プライマー#10および#11(図6)によるPCR増幅によって、BoNT(A)の改変ループ配列を有するBoNT(C1)の軽鎖をコードする遺伝子断片を生成した。プライマー#12および#13(図6)により、BoNT(C1)の転位ドメインをコードする遺伝子断片を生成した。発現プラスミドpQE-60へのクローニングは最初に、Nco IおよびStu Iに対する制限部位を介したpQE-BoNT(A)-Lmod1におけるBoNT(A)-L遺伝子断片と、pQE-BoNT(C1)-Lmod1増幅産物との置換によって実現した。その後、BoNT(C1)-HN増幅産物を、Stu IおよびXho Iに対する制限部位を介してその後ろにクローニングし、結果としてプラスミドpQE-BoNT(C1)-Lmod1HNを得た(配列#7)。宿主株M15[pREP4]内の発現およびLHN断片の精製は、実施例1と同様に実行した。SDSポリアクリルアミドゲル上の分析は、還元性条件下で約50kDaおよび55kDaの2つのバンドが、クーマシーによって染色された一方、非還元性条件下では約105kDaのバンドが観察されたことを示した。これは、2つの鎖が互いにジスルフィド架橋によって共有結合する二鎖のポリペプチドとして、LHN断片が90パーセント以上細菌から放出されたことを明解に示す。HN断片の最初の4つのアミノ酸残基のN末端シークエンシングは、配列Ser-Leu-Val-Proをもたらした。大腸菌溶解物内のプロテアーゼ活性による切断がLys447の後で生じ、したがってペンタペプチドVal-Pro-Arg-Gly-SerのN末端がBoNT(A)ループに挿入された。定方向突然変異誘発により、挿入されたペンタペプチドのアルギニン残基は、ヒスチジン、チロシン、およびグルタミンによって置換された。同様に発現される突然変異誘発されたLHN断片は、大腸菌溶解物の2時間のインキュベーション後、二鎖のジスルフィド架橋型で90パーセント以上存在し、ここで切断の効率は、ペンタペプチドVal-Pro-Arg-Gly-Serによって改変されたBoNT(A)ループを含むLHN断片に対するよりわずかに少ない。
【0065】
実施例5:改変ループを有する組換えボツリヌス神経毒C1型のクローニングおよび発現
ボツリヌス菌株C205の染色体DNAを使用することにより、重鎖をコードする遺伝子断片を、プライマー#12および#14(図6)によって増幅した。Stu IおよびXho Iに対する制限部位を介して、プラスミドBoNT(C1)-Lmod1HNの軽鎖をコードする配列セクションとHisタグに対する配列との間に、それをクローニングした(プラスミドpQE-BoNT(C1)-Lmod1HNHC;配列#6)。大腸菌発現株M15[pREP4](Qiagen)を、対応する発現プラスミドによって形質転換した。宿主株M15[pREP4]内の発現およびその精製は、実施例1と同様に実行した。SDSポリアクリルアミドゲル上の分析は、還元性条件下で約50kDaおよび105kDaの2つのバンドが、クーマシーによって染色された一方、非還元性条件下では約155kDaのバンドのみが観察されたことを示した(図9)。このような方法で、2つの鎖が互いにジスルフィド架橋によって共有結合した二鎖のポリペプチドとして、90パーセント以上、組換え神経毒が細菌から放出されたことが明解に示される。半横隔膜分析における活性試験は、毒性がボツリヌス菌から単離された天然神経毒C1型と同等に高いという結果になった。軽鎖と転位ドメインの間のループ領域の改変はしたがって、毒性に対する効果を有しなかった。
【0066】
実施例6:改変ループを有するシェードモナス外毒素(Pe40)の組換え断片のクローニングおよび発現
株シュードモナス-アエルギノーザ103の染色体DNAを使用することにより、ループのC末端、システイン残基13と36の間に位置するドメインIIの領域、およびドメインIIIをコードする遺伝子断片を、プライマー#17および#18(図6)によるPCRによって増幅した。増幅産物は、Nco IおよびMlu Iを介して、遺伝子断片BoNT(A)-Lmod1との置換により、プラスミドpQE-BoNT(A)-Lmod1にクローンニングした(プラスミドpQE-PEII3 III)。ループのN末端であるドメインIIの領域に対する配列セクションを、オリゴヌクレオチド#15および#16(図6)のハイブリダイゼーション、ならびにNco IおよびKpn Iに対する制限部位を経たクローニングによって、プラスミドpQE-PEII3 IIIに挿入した(プラスミドpQE-PEIImod III;配列#9)。大腸菌発現株M15[pREP4](Qiagen)を、対応する発現プラスミドによって形質転換した。宿主株M15[pREP4]内の発現およびその精製は、実施例1と同様に実行した。還元性条件下でのSDSゲル上の分析は、40kDaのより弱いバンドおよび37kDaのより強いバンドをもたらした。しかしながら非還元の条件下では、40kDaの単一バンドのみが観察された。アフィニティクロマトグラフィーによる精製の前に、室温で少なくとも2時間細胞溶解物をインキューベートする場合、還元性条件下で40kDaのバンドはもはや検出可能でなかった。改変BoNT(A)ループと、PE40断片(fragrant)のドメインIIにおけるシステイン残基13と36の間のループ領域との置換によって、ポリペプチド鎖の切断はしたがって、上述のシステイン残基がジスルフィド架橋を形成した位置で生じた。約3kDaのN末端断片は、還元の後12%SDSゲルにおいて、もはや検出されなかった。
【0067】
実施例7:改変ループを有するジフテリア毒素(Dt389)の組換え断片のクローニングおよび発現
ジフテリア菌株NCTC 13129の染色体DNAを使用することにより、ジフテリア毒素のA鎖をコードする遺伝子断片を、プライマー#19および#20(図6)によるPCRによって増幅した。Nco IおよびStu Iに対する制限部位を介して、増幅産物を、プラスミドpQE-BoNT(A)-Lmod1にクローニングした(実施例1を参照されたい)(プラスミドpQE-DT-Amod1)。同様の方法で、B鎖のN末端断片をコードする遺伝子断片を、プライマー#21および#22(図6)によって増幅し、Stu IおよびXho Iに対する制限部位を介してpQE-DT-Amod1にクローンニングした(プラスミド(プラスミドpQE-DT389-mod1;配列#10)。大腸菌発現株M15[pREP4](Qiagen)を、対応する発現プラスミドによって形質転換した。宿主株M15[pREP4]内の発現およびその精製は、実施例1と同様に実行した。SDSポリアクリルアミドゲル上の分析は、還元性条件下で約22kDaの2つのバンドが、クーマシーによって染色された一方、非還元性条件下では約43kDaの単一バンドが観察されたことを示した。これは、2つの鎖が互いにジスルフィド架橋によって共有結合する二鎖のポリペプチドとして、組換えジフテリア毒素断片が90パーセント以上細菌から放出されたことを明解に示す。
【0068】
実施例8:改変ループを有する組換えリシンのクローニングおよび発現
トウゴマの種のmRNAを使用することにより、リシンのA鎖をコードする遺伝子断片を、プライマー#23および#24(図6)によるRT-PCRによって増幅した。Nco IおよびXho Iに対する制限部位を介して、それを、プラスミドpQE-BoNT(A)-Lmod1にクローニングした(実施例1を参照されたい)(プラスミドpQE-ricin-A)。同様の方法で、B鎖をコードする遺伝子断片を、プライマー#25および#26(図6)によって増幅し、Kpn IおよびXho Iに対する制限部位を介してpQE-ricin-Aにクローンニングした(プラスミドpQE-ricin-mod1;配列#11)。大腸菌発現株M15[pREP4](Qiagen)を、対応する発現プラスミドによって形質転換した。宿主株M15[pREP4]内の発現および発現したリシンの可溶性タンパク質の精製は、実施例1と同様に実行した。SDSポリアクリルアミドゲル上の分析は、還元性条件下で約19kDaおよび42kDaの2つのバンドが、クーマシーによって染色された一方、非還元性条件下では約62kDaのバンドが観察されたことを示した。これは、2つの鎖が互いにジスルフィド架橋によって共有結合する二鎖のポリペプチドとして、組換えリシンの可溶性タンパク質が90パーセント以上細菌から放出されたことを明解に示す。
【0069】
科学文献

【0070】
特許文献
Borgford, 米国特許第6,593,132号
Brown and Jones, WO 89/04839
Fitzgerald et al., 米国特許第6,426,075号
Pastan et al., 米国特許第5,980,895号
【配列表フリーテキスト】
【0071】
SEQ ID NO:1は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、組換えボツリヌス神経毒A型(rBoTN(A)-mod1)をコードする核酸(DNA)の例である。
SEQ ID NO:2は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、組換えボツリヌス神経毒A型(rBoTN(A)-mod1)の例である。
SEQ ID NO:3は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、ボツリヌス神経毒A型の組換えLHN断片(rBoTN(A)-Lmod1HN)をコードする核酸(DNA)の例である。配列は、ヌクレオチド2620〜3888が欠失したSEQ ID NO:1に相当する。
SEQ ID NO:4は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、ボツリヌス神経毒A型の組換えLHN断片(rBoTN(A)-Lmod1HN)の例である。配列は、アミノ酸残基874〜1296が欠失したSEQ ID NO:2に相当する。
SEQ ID NO:5は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、ボツリヌス神経毒A型の組換えLHNHCN断片(rBoTN(A)-Lmod1HNHCN)をコードする核酸(DNA)の例である。配列は、ヌクレオチド3286〜3888が欠失したSEQ ID NO:1に相当する。
SEQ ID NO:6は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、ボツリヌス神経毒A型の組換えLHNHCN断片(rBoTN(A)-Lmod1HNHCN)の例である。配列は、アミノ酸残基1096〜1296が欠失したSEQ ID NO:2に相当する。
SEQ ID NO:7は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、組換えボツリヌス神経毒B型(rBoTN(B)-mod1)をコードする核酸(DNA)の例である。
SEQ ID NO:8は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、組換えボツリヌス神経毒B型(rBoTN(B)-mod1)の例である。
SEQ ID NO:9は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、ボツリヌス神経毒B型の組換えLHN断片(rBoTN(B)-Lmod1HN)をコードする核酸(DNA)の例である。配列は、ヌクレオチド2623〜3915が欠失したSEQ ID NO:7に相当する。
SEQ ID NO:10は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、ボツリヌス神経毒B型の組換えLHN断片(rBoTN(B)-Lmod1HN)の例である。配列は、アミノ酸残基875〜1305が欠失したSEQ ID NO:8に相当する。
SEQ ID NO:11は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、組換えボツリヌス神経毒C1型(rBoTN(C1)-mod1)をコードする核酸(DNA)の例である。
SEQ ID NO:12は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、組換えボツリヌス神経毒C1型(rBoTN(C1)-mod1)の例である。
SEQ ID NO:13は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、ボツリヌス神経毒C1型の組換えLHN断片(rBoTN(C1)-Lmod1HN)をコードする核酸(DNA)の例である。配列は、ヌクレオチド2599〜3858が欠失したSEQ ID NO:11に相当する。
SEQ ID NO:14は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、ボツリヌス神経毒C1型の組換えLHN断片(rBoTN(C1)-Lmod1HN)の例である。配列は、アミノ酸残基867〜1296が欠失したSEQ ID NO:12に相当する。
SEQ ID NO:15は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、組換えボツリヌス神経毒E型(rBoTN(E)-mod1)をコードする核酸(DNA)の例である。
SEQ ID NO:16は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、組換えボツリヌス神経毒E型(rBoTN(E)-mod1)の例である。
SEQ ID NO:17は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有し、ドメインII、Ib、およびIIIを含むシュードモナス外毒素の組換え40kDaの断片(PE40-mod1)をコードする核酸(DNA)の例である。
SEQ ID NO:18は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有し、ドメインII、Ib、およびIIIを含むシュードモナス外毒素の組換え40kDaの断片(PE40-mod1)の例である。
SEQ ID NO:19は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有し、A鎖およびB鎖のN末端断片を含むジフテリア毒素の組換え断片(DT389-mod1)をコードする核酸(DNA)の例である。
SEQ ID NO:20は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有し、A鎖およびB鎖のN末端断片を含むジフテリア毒素の組換え断片(DT389-mod1)の例である。
SEQ ID NO:21は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、組換えリシン毒素(rRicin-mod1)をコードする核酸(DNA)の例である。
SEQ ID NO:22は、本発明に従って改変されるループ配列およびC末端のヘキサヒスチジンタグを有する、組換えリシン毒素(rRicin-mod1)の例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二鎖(dichain)型のポリペプチドまたはタンパク質を産生するための方法であって、2つの鎖が大腸菌(E. coli)宿主細胞内の組換え発現によってジスルフィド架橋され、以下である、方法:
(i)ポリペプチドまたはタンパク質が、二鎖のジスルフィド架橋ポリペプチドまたはタンパク質として、その生物学的活性を発揮し;
(ii)第一の鎖のC末端アミノ酸残基が、Arg残基またはLys残基であり;
(iii)タンパク質/ポリペプチドの第二の鎖が、N末端に1〜20のアミノ酸残基、およびPRSと呼ばれるペンタペプチド配列VPXGSを有し、式中Xが任意の天然のアミノ酸であり、VがVal、Leu、Ile、Ala、Phe、Pro、またはGlyであり、PがPro、Leu、Ile、Ala、Phe、Val、またはGlyであり、GがGly、Leu、Ile、Ala、Pro、Phe、またはValであり、SがSer、Tyr、Trp、またはThrであり;ならびに
(iv)以下の段階を含む:
(a)そのループ領域内でその改変形態でのポリペプチドまたはタンパク質が、X、V、P、G、およびSが上記の通りである配列VPXGSを有するような、核酸レベルでのポリペプチドまたはタンパク質の改変;
(b)核酸レベルで改変された構築物の大腸菌細胞への挿入;
(c)宿主細胞を培養し、その後溶解する段階;ならびに
(d)二鎖のジスルフィド架橋ペプチドまたはタンパク質を単離する段階。
【請求項2】
ポリペプチド/タンパク質の第一の鎖がポリペプチド/タンパク質の軽鎖であり、第二の鎖がポリペプチド/タンパク質の重鎖である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリペプチドまたはタンパク質がボツリヌス神経毒である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ポリペプチドまたはタンパク質が血清型Aのボツリヌス神経毒(BoNT(A))である、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
ポリペプチドまたはタンパク質がBoNT(A)のLHN断片である、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
PRS配列VPXGSが、アミノ酸443〜447の欠失を伴い、BoNT(A)のアミノ酸Leu442とLys448の間に挿入される、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
PRS配列VPRGS、VPYGS、VPHGS、またはVPQGSが挿入される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
PRS配列VPXGSが、少なくとも一つのアミノ酸の欠失を伴い、BoNT(B)のオクタペプチドLys438〜Ile445に、BoNT(C1)の15mer His438〜Asp452に、またはBoNT(E)の13mer Lys413〜Ile425に挿入される、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
PRS配列VPXGSが、17mer GIITSKTKSLVPRGSKAまたは18mer RGIITSKTKSLVPRGSKAの形態で挿入される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
タンパク質がハイブリッドタンパク質である、請求項1または2記載の方法。
【請求項11】
ハイブリッドタンパク質が以下の成分A、B、およびCを有する、請求項10記載の方法:
−その酵素活性によって、標的細胞において分泌を阻害するか、もしくはそれらを死滅させることが可能であるエフェクタードメイン、または毒素ドメイン(成分A);
−配列VPXGSを含むループ配列(成分B);ならびに
−融合タンパク質またはハイブリッドタンパク質に細胞特異性を与える、細胞結合ドメイン(成分C)。
【請求項12】
ハイブリッドタンパク質がさらに成分Dとして転位ドメインを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
毒素ドメイン(A)が、ジフテリア毒素、シェードモナス外毒素、またはリシンのドメインである、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
毒素ドメイン(A)が、シェードモナス外毒素の断片PE40(ドメインIII、ドメインII、およびドメインIb)もしくは断片PE38(ドメインIIIおよびドメインII)、またはリシンのA鎖である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
細胞結合ドメイン(C)が、モノクローナル抗体、アフィリン(affilin)、アンキリン反復タンパク質、アンチカリン(anticalin)、TGFα、FGF、VEGF、もしくはIGF-1のような増殖因子、またはIL2、IL4、もしくはIL6のようなサイトカインである、請求項11〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
ハイブリッドタンパク質が以下の成分A、B、およびCを有する、請求項10記載の方法:
−融合タンパク質により良好な可溶性を与え、より高い発現率をもたらし、および/もしくはアフィニティ精製を可能にするタンパク質またはオリゴペプチド(成分A);
−配列VPXGSを含むループ配列(成分B);ならびに
−任意のタイプのポリペプチド(成分C)。
【請求項17】
成分Aが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、Hisタグ、StrepTag、またはFLAGタグである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
大腸菌細胞が、大腸菌K12細胞、特に菌株M15[pREP4]、XL1-BLUE、またはUT5600の大腸菌K12細胞である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
二鎖のジスルフィド架橋ポリペプチド/タンパク質として存在し、生物学的に活性であるポリペプチドまたはタンパク質であって、ポリペプチド/タンパク質の第一の鎖のC末端終末が、Arg残基またはLys残基であり、ポリペプチド/タンパク質の第二の鎖が、N末端に1〜20アミノ酸残基、およびPRSと呼ばれるペンタペプチド配列VPXGSを含む点で特徴付けられ、式中、Xが任意の天然のアミノ酸であり、VがVal、Leu、Ile、Ala、Phe、Pro、またはGlyであり、PがPro、Leu、Ile、Ala、Phe、Val、またはGlyであり、GがGly、Leu、Ile、Ala、Pro、Phe、またはValであり、SがSer、Tyr、Trp、またはThrである、ポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項20】
ポリペプチド/タンパク質の第一の鎖がポリペプチド/タンパク質の軽鎖であり、第二の鎖がポリペプチド/タンパク質の重鎖である、請求項19記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項21】
第一の鎖のC末端終末がLys残基である、請求項19もしくは20記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項22】
第二の鎖が、N末端にペンタペプチド配列VPXGS、ヘキサペプチド配列XVPXGS、またはヘプタペプチド配列XXVPXGSを有する、請求項19〜21のいずれか一項記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項23】
ボツリヌス神経毒、ボツリヌス神経毒の誘導体もしくは断片、特にLHN断片を含むか、またはボツリヌス神経毒の生物学的活性を有する、請求項19〜22のいずれか一項記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項24】
血清型Aのボツリヌス神経毒(BoNT(A))を含むか、または BoNT(A)の生物学的活性を有する、請求項19〜23のいずれか一項記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項25】
BoNT(A)のLHN断片であるか、または BoNT(A)の生物学的活性を有する、請求項19〜22のいずれか一項記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項26】
第二の鎖が、N末端にヘプタペプチド配列SLVPXGSを有する、請求項19〜25のいずれか一項記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項27】
XがR、Y、H、またはQである、請求項26記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項28】
タンパク質がハイブリッドタンパク質である、請求項19〜22、26、または27のいずれか一項記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項29】
ハイブリッドタンパク質が以下の成分A、B、およびCを有する、請求項28記載のポリペプチドまたはタンパク質:
−その酵素活性によって、標的細胞において分泌を阻害するか、もしくはそれらを死滅させることが可能であるエフェクタードメイン、または毒素ドメイン(成分A);
−配列VPXGSを含むループ配列(成分B);ならびに
−融合タンパク質またはハイブリッドタンパク質に細胞特異性を与える、細胞結合ドメイン(成分C)。
【請求項30】
ハイブリッドタンパク質がさらに成分Dとして転位ドメインを有する、請求項29記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項31】
毒素ドメイン(A)が、ジフテリア毒素、シェードモナス外毒素、またはリシンのドメインである、請求項29もしくは30記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項32】
毒素ドメイン(A)が、シェードモナス外毒素の断片PE40(ドメインIII、ドメインII、およびドメインIb)もしくは断片PE38(ドメインIIIおよびドメインII)、またはリシンのA鎖である、請求項31記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項33】
細胞結合ドメイン(C)が、モノクローナル抗体、アフィリン、アンキリン反復タンパク質、アンチカリン、TGFα、FGF、VEGF、もしくはIGF-1のような増殖因子、またはIL2、IL4、もしくはIL6のようなサイトカインである、請求項29〜32のいずれか一項記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項34】
ハイブリッドタンパク質が以下の成分A、B、およびCを有する、請求項28記載のポリペプチドまたはタンパク質:
−融合タンパク質により良好な可溶性を与え、より高い発現率をもたらし、および/もしくはアフィニティ精製を可能にするタンパク質またはオリゴペプチド(成分A);
−配列VPXGSを含むループ配列(成分B);ならびに
−任意のタイプのポリペプチド(成分C)。
【請求項35】
成分Aが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、Hisタグ、StrepTag、またはFLAGタグである、請求項34記載のポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項36】
請求項19〜35のいずれか一項記載のポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸。
【請求項37】
DNAである、請求項36記載の核酸。
【請求項38】
請求項36または37記載の核酸を含むベクター。
【請求項39】
請求項38記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項40】
原核生物、特に大腸菌細胞、特に大腸菌K12細胞である、請求項39記載の宿主細胞。
【請求項41】
宿主細胞がM15[pREP4]であり、ベクターがpQE系列のプラスミドである、請求項39または40記載の宿主細胞。
【請求項42】
請求項19〜35のいずれか一項記載のポリペプチドまたはタンパク質を含む、薬学的調製物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−254088(P2012−254088A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180318(P2012−180318)
【出願日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【分割の表示】特願2007−551542(P2007−551542)の分割
【原出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(509348720)メルツ ファーマ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲーエーエー (1)
【Fターム(参考)】