説明

ジチエノゲルモール重合体及びそれを含有した有機半導体デバイス

【課題】耐久性及び半導体特性の安定性に優れた有機半導体材料として有用である熱安定性の高いジチエノゲルモール重合体、及びそれを含有する有機半導体材料より形成される有機半導体デバイスを提供する。
【解決手段】ジチエノゲルモール重合体は、下記化学式(1)
【化1】


(式中、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Arは置換基を有してもよい2価の芳香環と、芳香環数2〜7の置換基を有してもよい2価の多核芳香環と、置換基を有してもよい2価の芳香環及び/又は芳香環数2〜7の置換基を有してもよい2価の多核芳香環を複数連結させた2価のアリーレン基とから選ばれる何れかであり、nは少なくとも2の正数)で示されるものである。有機半導体デバイスは、このジチエノゲルモール重合体を有機半導体層とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ゲルモール縮環構造の重合体及びその重合体を有機半導体材料として含有する有機半導体デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は現在深刻さを増すエネルギー問題に対して有力なエネルギー源として着目されている。太陽電池における光起電力素子用の半導体材料としては、化合物半導体、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコンなどの無機半導体が使用されている。しかし、太陽電池発電は、その無機半導体の製造コストが高いために、現在主流となっている火力発電や原子力発電と比較して高コストとなる。製造コストが高くなる主要因としては薄膜作製時に高温・真空条件での蒸着工程を含むという点が挙げられる。一方で共役高分子などの有機材料を半導体材料として用いた場合、蒸着工程が不要となり製造プロセスが簡略化できるといった利点がある。そのため、有機半導体や有機色素を用いた有機太陽電池の検討が進められている。
【0003】
太陽電池の性能を決める要素としては、主に短絡電流密度(JSC)、開放電圧(VOC)、フィルファクター(FF)が挙げられる。中でも、短絡電流密度は半導体材料の光吸収特性に大きく依存していることから、材料の光吸収領域が広い材料の方がより多くの光を電気へと変換することが可能となる。有機材料において、広い光吸収領域を有する化合物の条件としては最高被占軌道(HOMO)準位と最低空軌道(LUMO)とのエネルギー差(バンドギャップ)が小さいことが必要となる。また、素子作製時における化合物の加工性の観点から、低分子よりも高分子の研究が盛んに進められている。
【0004】
これらの特徴を有する化合物としてローバンドギャップポリマー(LBGP)が挙げられる。例えば、特許文献1に、主鎖にチオフェンとケイ素原子とを含む繰り返し単位からなるポリマーまたはオリゴマーからなる有機半導体材料およびこれを用いた電子デバイスが開示されている。また、非特許文献1及び非特許文献2に、シクロペンタジチオフェン骨格やジチエノシロール骨格を含むLBGPを半導体材料として用いた有機薄膜太陽電池において高効率な光電変換特性を示すことが報告されている。
【0005】
しかし、有機物は無機物と比較して一般的に安定性が低く、素子の耐久性が低いため、化合物の安定性向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−114701号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ジャンフィ ホウ(Jianhui Hou),ヤン ヤン(Yang Yang)、ジャーナル オブザ アメリカン ケミカル ソサエティ(Journal of the American Chemical Society)、2008年、第30巻、pp.16144-16145
【非特許文献2】ジェイ.ピート(J.Peet),エイ.ジェイ.ヒーガー(A.J.Heeger), ジイ.シー.バザン(G.C.Bazan)ら、ネイチャー マテリアルズ(Nature Materials)、2007年、第6巻、pp.497-500
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、耐久性及び半導体特性の安定性に優れた有機半導体材料として有用である熱安定性の高いジチエノゲルモール重合体、及びそれを含有する有機半導体材料より形成される有機半導体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載されたジチエノゲルモール重合体は、下記化学式(1)
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Arは置換基を有してもよい2価の芳香環と、芳香環数2〜7の置換基を有してもよい2価の多核芳香環と、置換基を有してもよい2価の芳香環及び/又は芳香環数2〜7の置換基を有してもよい2価の多核芳香環を複数連結させた2価のアリーレン基とから選ばれる何れかであり、nは少なくとも2の正数)で示されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載のジチエノゲルモール化合物は、下記化学式(2)
【化2】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Y及びY’はそれぞれ独立してハロゲン原子、−Si(R(Rは炭素数1〜6の炭化水素基)、−Sn(R(Rは炭素数1〜6の炭化水素基)、ボロン酸基及びボロン酸エステル基から選ばれる1つである)で示されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、下記化学式(3)
【化3】

(式中、Rはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜6の炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立してハロゲン原子である)で示される化合物を有機リチウム化合物の存在下で、下記化学式(4)
【化4】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立してハロゲン原子である)で示される化合物と反応させて、下記化学式(5)
【化5】

(式中、R、R及びRは前記と同じである)で示される第一中間体を得て、前記第一中間体とハロゲン化剤とを反応させることにより、下記化学式(6)
【化6】

(式中、R及びRは前記と同じであり、X及びXはそれぞれ独立してハロゲン原子である)で示される第二中間体を得た後、
前記第二中間体と、ハロゲン化トリアルキルスズ、ボロン酸化剤、若しくはボロン酸エステル化剤とを反応させることにより、下記化学式(7)
【化7】

(式中、R及びRは前記と同じであり、Z及びZ’はそれぞれ独立して−Sn(R(Rは、炭素数1〜6の炭化水素基)、ボロン酸基及びボロン酸エステル基から選ばれる1つである)で示される第三中間体を得て、次いで下記化学式(8)
−Ar−X ・・・(8)
(式中、Arは置換基を有してもよい2価の芳香環と、芳香環数2〜7の置換基を有してもよい2価の多核芳香環と、前記置換基を有してもよい2価の芳香環及び/又は前記芳香環数2〜7の置換基を有してもよい2価の多核芳香環を複数連結させた2価のアリーレン基とから選ばれる何れかであり、X及びXはハロゲン原子である)で示される化合物と貴金属錯体存在下でカップリング反応させ、
又は
前記第二中間体と、下記化学式(9)
Z−Ar−Z’ ・・・(9)
(式中、Ar、Z及びZ’は前記と同じである)で示される化合物とを貴金属錯体存在下でカップリング反応させることにより、下記化学式(1)
【化8】

(式中、R、R及びArは前記と同じであり、nは少なくとも2の正数)で示されるジチエノゲルモール重合体を製造する方法である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、ジチエノゲルモール重合体を合成するための中間体の製造方法であって、
下記化学式(3)
【化9】

(式中、Rはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜6の炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立してハロゲン原子である)で示される化合物を有機リチウム化合物の存在下で、下記化学式(4)
【化10】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立してハロゲン原子である)で示される化合物と反応させること、
下記化学式(5)
【化11】

(式中、R及びR、Rは前記と同じである)で示される化合物とハロゲン化剤とを反応させること、
又は
下記化学式(6)
【化12】

(式中、R及びRは前記と同じであり、X及びXはそれぞれ独立してハロゲン原子である)で示される化合物と、ハロゲン化トリアルキルスズ、ボロン酸化剤、若しくはボロン酸エステル化剤とを反応させることにより、下記化学式(2)
【化13】

(式中、R及びRは前記と同じであり、Y及びY’はそれぞれ独立してハロゲン原子、−Si(R(Rは炭素数1〜6の炭化水素基)、−Sn(R(Rは炭素数1〜6の炭化水素基)、ボロン酸基及びボロン酸エステル基から選ばれる1つである)で示されるジチエノゲルモール化合物を製造する方法である。
【0013】
請求項5に記載の有機半導体用組成物は、請求項1に記載のジチエノゲルモール重合体を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の有機半導体用材料は、請求項1に記載のジチエノゲルモール重合体からなることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の有機半導体デバイスは、請求項1に記載のジチエノゲルモール重合体を有機半導体層とすることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の有機半導体デバイスは、請求項7に記載されたものであって、光電変換素子であることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の有機半導体デバイスは、請求項7に記載されたものであって、有機トランジスタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のジチエノゲルモール重合体は、高い熱安定性を有しているため、高安定性を示す有機半導体材料を提供することができる。
【0019】
本発明のジチエノゲルモール化合物は、含ゲルモール縮合環に芳香環が結合している化合物の繰返し単位を有するジチエノゲルモール重合体を合成する中間体であり、芳香族化合物とカップリング重合反応を行うことでその共重合体を得ることができる。
【0020】
本発明の有機半導体デバイスは、ジチエノゲルモール重合体を含有した有機半導体材料から形成されており、優れた耐久性及び半導体特性の安定性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用するジチエノゲルモール重合体を有機半導体層に含有している電界効果トランジスタの模式断面図である。
【図2】本発明を適用するジチエノゲルモール重合体を光活性層に含有している光電変換素子の模式断面図である。
【図3】本発明を適用する有機薄膜ランジスタの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0023】
本発明のジチエノゲルモール重合体は、下記化学式(1)で示されるように、含ゲルモール縮環構造の重合体、即ちジチエノゲルモールとArとの完全交互共重合体である。
【0024】
【化14】

【0025】
前記化学式(1)において、nは数平均重合度を表し2以上の数である。数平均重合度の上限は、本発明の重合体が効果を奏する観点からは特定されないが、2000以下であるのが好ましい。R及びRは、それぞれ独立して同一又は異なる置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状、又は環状の炭素数1〜20の炭化水素基である。例えば、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基などが挙げられる。
【0026】
置換基を有してもよいアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
【0027】
置換基を有してもよいアリール基とはフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基などが挙げられる。
【0028】
かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などのアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基などのアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基などのアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基などのアルキルチオ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;メチルスルフォキシド基、エチルスルフォキシド基、フェニルスルフォキシド基などのスルフォキシド基;メチルスルフォニルオキシ基、エチルスルフォニルオキシ基、フェニルスルフォニルオキシ基、メトキシスルフォニル基、エトキシスルフォニル基、フェニルオキシスルフォニル基などのスルフォン酸エステル基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基などの1級または2級のアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基、ベンゼンスルホニル基、tert−ブトキシカルボニル基などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基などのアルキル基またはアリール基などで置換されていてもよいアミノ基;シアノ基;ニトロ基;などが挙げられる。
【0029】
前記化学式(1)において、Arは置換基を有してもよい2価の芳香環と、芳香環数2〜7の置換基を有してもよい2価の多核芳香環と、置換基を有してもよい2価の芳香環及び/又は芳香環数2〜7の置換基を有してもよい2価の多核芳香環を複数連結させた2価のアリーレン基とから選ばれる1つである。
【0030】
置換又は未置換の2価の芳香環の具体例を化学式(a)〜(g)に示す。
【0031】
【化15】

【0032】
これらの置換又は未置換の2価の芳香環の中でも、特に化合物(b)の構造が望ましい。
【0033】
置換もしくは未置換の芳香環数2〜7の2価の多核芳香環の具体例を化学式(h)〜(s)に示す。
【0034】
【化16】

【0035】
これらの置換もしくは未置換の芳香環数2〜7の2価の多核芳香環の中でも、(k),(l),(m)に示される構造のような含ヘテロ原子芳香環が好ましく、特に(k)の構造であるベンゾチアジアゾール骨格が望ましい。
【0036】
pは、可能であれば、0、1、2、3又は4の数である。
【0037】
及びR5’はそれぞれ独立して置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状、環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素又は硫黄原子などで中断されてもよく、R及びR5’は環を形成してもよい。
【0038】
及びR6’はそれぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい直鎖状、分岐鎖状、環状の炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素または硫黄原子などで中断されてもよく、あるいは、R及びR6’は環を形成してもよい。
【0039】
及びR7’はそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素または硫黄原子などで中断されてもよい。
【0040】
及びR8’はそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、この炭化水素基が酸素または硫黄原子などで中断されてもよく、あるいは、R及びR8’は環を形成してもよい。
【0041】
及びR9’はそれぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0042】
10及びR10’はそれぞれ独立して置換基を有しても良い炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0043】
かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などのアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基などのアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基などのアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基などのアルキルチオ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;メチルスルフォキシド基、エチルスルフォキシド基、フェニルスルフォキシド基などのスルフォキシド基;メチルスルフォニルオキシ基、エチルスルフォニルオキシ基、フェニルスルフォニルオキシ基、メトキシスルフォニル基、エトキシスルフォニル基、フェニルオキシスルフォニル基などのスルフォン酸エステル基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基などの1級または2級のアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基、ベンゼンスルホニル基、tert−ブトキシカルボニル基などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基などのアルキル基またはアリール基などで置換されていてもよいアミノ基;シアノ基;ニトロ基;などが挙げられる。
【0044】
本発明のジチエノゲルモール重合体は、下記化学式(2)に示されるジチエノゲルモール化合物である中間体から合成することができる。
【0045】
【化17】

【0046】
前記化学式(2)において、Y及びY’はそれぞれ独立して同一又は異なり、ハロゲン原子、−Si(R、−Sn(R、ボロン酸及びボロン酸エステル基から選ばれる1つである。R及びRは、炭素数1〜6の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖アルキル基;シクロヘキシル基などの環状アルキル基;フェニル基などのアリール基が挙げられる。
【0047】
本発明のジチエノゲルモール重合体の製造方法の一実施例としてその製造工程を下記式(A)に示す。
【0048】
【化18】

【0049】
本発明のジチエノゲルモール重合体は、5段階の反応工程1〜5により得られる。テトラハロゲノゲルマニウム(10)から合成された前記化学式(4)で示されるジアルキルジハロゲノゲルマニウムと、前記化学式(3)で示される5,5’−ビス(トリアルキルシリル)−3,3’−ハロ−2,2’−ビチオフェン誘導体とを塩基である有機リチウム化合物存在下で反応させることで、前記化学式(2)で示されるY及びY’が−Si(Rであり前記化学式(5)に示される第一中間体(5)を得る。前記化学式(3)で示される化合物および以降の中間体または反応生成物では、2つのチオフェン環の4−位および4’−位の炭素原子に結合する水素原子が所望によりメチル基、エチル基などの低級アルキル基で置換された構造の化合物を用いてもよい。
【0050】
この第一中間体(5)にハロゲン化剤を反応させることで、前記化学式(2)で示されるY及びY’がハロゲン原子であり前記化学式(6)に示される第二中間体(6)を得る。
【0051】
この第二中間体(6)を塩基と共にハロゲン化トリアルキルスズ誘導体、ボロン酸化剤、又はボロン酸エステル化剤と反応させることで、前記化学式(2)で示されるY及びY’が−Sn(R、ボロン酸基及びボロン酸エステル基から選ばれる1つであり前記化学式(7)に示される第三中間体(7)を得る。この第三中間体(7)とジハロアリール誘導体とをクロスカップリング反応させることで、前記化学式(1)に示されるジチエノゲルモール重合体であるポリ(1,1−ジアルキルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−3,6−ジイル−alt−アリーレンを得る。
【0052】
反応式(A)中、R〜Rは前記と同じであり、X,X’,X〜Xはハロゲン原子であり、Z及びZ’は−Sn(R、ボロン酸基及びボロン酸エステル基から選ばれる1つである。また、−Sn(RにおけるRも前記と同じである。
【0053】
このジチエノゲルモール重合体の製造方法における各反応工程について詳細に説明する。
【0054】
反応工程1は、ヤロッシュ オー.ジイ(Yarosh O. G),コルトワ アイ.エム.(Korotaeva I. M.)ら、ロシアン ジャーナル オブ ゼネラル ケミストリー(Russian Journal of General Chemistry)、2005年、第75巻、pp.714-718に記載された合成方法を用いることができる。反応工程1の具体例を下記反応式(I)に示す。
【0055】
【化19】

【0056】
反応工程1は、溶媒存在下で、四塩化ゲルマニウム(10−1)と有機マグネシウムハロゲン化物とを反応させることでジアルキルジハロゲノゲルマニウム(4―1)を合成する方法が挙げられる。
【0057】
反応工程2であり、前記化学式(3)に示される5,5’−ビス(トリアルキルシリル)−3,3’−ハロ−2,2’−ビチオフェン誘導体と前記化学式(4)で示されるジアルキルジハロゲルマニウムとを反応させ、前記化学式(5)で示される第一中間体を合成する具体例を下記反応式(II)に示す。
【0058】
【化20】

【0059】
反応工程2は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下において、溶媒に、5,5’−ビス(トリアルキルシリル)−3,3’−ハロ−2,2’−ビチオフェン誘導体(3−1)を加え、次いで塩基と共にジアルキルジハロゲノゲルマニウム(4−1)を加えて反応させることで、第一中間体である1,1−ジアルキル−3,6−ビス(トリアルキルシリル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(5)を合成する方法が挙げられる。
【0060】
反応工程2は、溶媒の存在下で行われることが好ましい。かかる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、キシレン、エチルトルエンなどの芳香族炭化水素;ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテルなどが挙げられる。
【0061】
これらの中でも、エーテルを用いることが好ましく、具体的には、ジエチルエーテルやテトラヒドロフランを使用するのが好ましい。溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。かかる溶媒の使用量は、5,5’−ビス(トリアルキルシリル)−3,3’−ハロ−2,2’−ビチオフェン誘導体(3)1質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、1〜50質量部であることがより好ましい。
【0062】
反応工程2で用いられる塩基としては、有機リチウム化合物が好適に用いられる。有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム化合物;フェニルリチウムなどのアリールリチウム化合物;ビニルリチウムなどのアルケニルリチウム化合物;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビストリメチルシリルアミドなどのリチウムアミド化合物などが使用される。これらの中でもアルキルリチウム化合物を用いることが好ましい。有機リチウム化合物の使用量については特に限定されず、ジアルキルジハロゲノゲルマニウム(4)1モルに対して、0.5〜5molであることが好ましい。有機リチウム化合物の使用量が5molを超える場合、副反応や生成物の分解を促進する恐れがあり、4mol以下であることが好ましい。また、有機リチウム化合物の使用量は、1mol以上であることがより好ましい。
【0063】
反応工程2において、ジアルキルジハロゲノゲルマニウム(4)と5,5’−ビス(トリアルキルシリル)−3,3’−ハロ−2,2’−ビチオフェン誘導体(3)とを反応させる際の反応温度については、特に限定されず、−100〜100℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−100℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、−80℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が100℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、50℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることが更に好ましい。反応時間は、1分〜20時間であることが好ましく、0.5〜5時間であることがより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
【0064】
反応工程3である、前記化学式(5)に示される第一中間体とハロゲン化剤と反応させ、前記化学式(6)に示される第二中間体を合成する具体例を下記反応式(III)に示す。
【0065】
【化21】

【0066】
反応工程3は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下において、溶媒に、1,1−ジアルキル−3,6−ビス(トリアルキルシリル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール誘導体(5)を加え、次いでハロゲン化剤を加えて反応させることで、第二中間体である1,1−ジアルキル−3,6−ジハロジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(6−1)を合成する方法が挙げられる。
【0067】
反応工程3の反応は、溶媒の存在下で行われることが好ましい。かかる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、キシレン、エチルトルエンなどの芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジブチルエーテルなどのエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドンなどのアミド;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどが挙げられる。これらの中でも、エーテルを用いることが好ましく、具体的には、ジエチルエーテルやテトラヒドロフランを使用するのが好ましい。溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。かかる溶媒の使用量は、1,1−ジアルキル−3,6−ビス(トリアルキルシリル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール誘導体(5)1質量部に対して、1〜100質量部の範囲であるのが好ましい。
【0068】
反応工程3で用いられるハロゲン化剤としては、例えば、N−クロロスクシンイミド、N−クロロフタル酸イミド、塩素、五塩化リン、塩化チオニル、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンなどの塩素化剤;N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモフタル酸イミド、N−ブロモジトリフルオロメチルアミン、臭素、三臭化ホウ素、臭化銅、臭化銀、臭化−t−ブチル、酸化臭素、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンなどの臭素化剤;ヨウ素、ヨウドトリクロライド、N−ヨードフタル酸イミド、N−ヨードスクシンイミドなどのヨウ素化剤などが挙げられる。これらの中でも、臭素化剤またはヨウ素化剤を用いることが好ましく、臭素化剤を用いることがより好ましい。
【0069】
反応工程3において、ハロゲン化剤の使用量については特に限定されず、1,1−ジアルキル−3,6−ビス(トリアルキルシリル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール誘導体(5)1モルに対して、2〜8モルであることが好ましい。ハロゲン化剤の使用量が2モル未満の場合、臭素の置換反応が不十分となる、原料である第一中間体(5)との分離精製作業が煩雑になる、等の恐れがある。一方、ハロゲン化剤の使用量が8モルを超える場合、ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール骨格の3位、6位以外への置換反応が起こる、未反応のハロゲン化剤の除去作業が煩雑になる、等の恐れがあり、4モル以下であることがより好ましい。
【0070】
1,1−ジアルキル−3,6−ビス(トリアルキルシリル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール誘導体(5)とハロゲン化剤とを反応させる際の反応温度については特に限定されず、−100〜100℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−100℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、−20℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が100℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、50℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることが更に好ましい。反応時間は、1分〜20時間であることが好ましく、0.5〜10時間であることがより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
【0071】
反応工程4であり、前記化学式(6)で示される第二中間体と塩基と共にハロゲン化トリアルキルスズ誘導体、ボロン酸化剤、又はボロン酸エステル化剤と反応させ、前記化学式(7)に示される第三中間体を合成する具体例を下記化学式(IV)に示す。
【0072】
【化22】

【0073】
反応工程4は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で、溶媒の存在下に1,1−ジアルキル−3,6−ジハロジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール誘導体(6−1)を加え、次いでハロゲン化トリアルキルスズ誘導体を反応させることで、第三中間体である1,1−ジアルキル−3,6−ビス(トリアルキルスズ)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(7−1)を合成する方法が挙げられる。
【0074】
第二中間体(6)と反応させる化合物は、ハロゲン化トリアルキルスズ誘導体に限られず、ボロン酸化剤又はボロン酸エステル化剤であってもよい。反応させる化合物により、それぞれ前記化学式(7)に示される1,1−ジアルキルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール−3,6−ボロン酸又は1,1−ジアルキルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール−3,6−ボロン酸エステルが得られる。
【0075】
反応工程4は、溶媒の存在下で行われることが好ましい。かかる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、キシレン、エチルトルエンなどの芳香族炭化水素;ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、エーテルを用いることが好ましく、具体的には、ジエチルエーテルやテトラヒドロフランを使用するのが好ましい。溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。かかる溶媒の使用量は、第二中間体(6)1質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、1〜50質量部であることがより好ましい。
【0076】
反応工程4で用いられる塩基としては、有機リチウム化合物が好適に用いられる。有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム化合物;フェニルリチウムなどのアリールリチウム化合物;ビニルリチウムなどのアルケニルリチウム化合物;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビストリメチルシリルアミドなどのリチウムアミド化合物などが使用される。これらの中でもアルキルリチウム化合物を用いることが好ましい。有機リチウム化合物の使用量については特に限定されず、第二中間体(6)1モルに対して、0.5〜5molであることが好ましい。有機リチウム化合物の使用量が5molを超える場合、副反応や生成物の分解を促進する恐れがあり、4mol以下であることが好ましい。また、有機リチウム化合物の使用量は、1mol以上であることがより好ましい。
【0077】
反応工程4で用いられるハロゲン化トリアルキルスズとしては、例えば、塩化トリメチルスズ、塩化トリエチルスズ、塩化トリ−n−プロピルスズ、塩化トリ−n−ブチルスズなどが挙げられ、中でも塩化トリメチルスズを用いることが望ましい。また、前記反応工程4で用いられるボロン酸化剤としては、例えば、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリ−n−プロピル、ほう酸トリ−n−ブチル、ほう酸トリイソプロピルなどが挙げられ、中でも反応効率の観点からほう酸トリメチルを用いることが望ましい。また、前記反応工程4で用いられるボロン酸エステル化剤は、例えば、4、4、5、5−テトラメチル−1、3、2−ジオキサボロラン、2−メトキシ−4、4、5、5−テトラメチル−1、3、2−ジオキサボロラン、2−イソプロポキシ−4、4、5、5−テトラメチル−1、3、2−ジオキサボロランなどが挙げられ、中でも2−イソプロポキシ−4、4、5、5−テトラメチル−1、3、2−ジオキサボロランを用いることが望ましい。
【0078】
反応工程4において、1,1−ジアルキル−3,6−ジハロジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール誘導体とハロゲン化トリアルキルスズ、ボロン酸化剤又はボロン酸エステル化剤とを反応させる際の反応温度については、特に限定されず、−100〜100℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−100℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、−80℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が100℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、50℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることが更に好ましい。反応時間は、1分〜20時間であることが好ましく、0.5〜5時間であることがより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
【0079】
反応工程5であり、前記化学式(7)に示される第三中間体とジハロアリール誘導体(8)とを反応させ、前記化学式(1)に示されるジチエノゲルモール重合体を合成する具体例を下記反応式(V)に示す。
【0080】
【化23】

【0081】
反応工程5は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下において、溶媒及び貴金属錯体の存在下で、1,1−ジアルキル−3,6−ビス(トリアルキルスズ)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(7−1)とジハロアリール誘導体(8−1)とをクロスカップリング反応させることで、前記化学式(1)に示されるジチエノゲルモール重合体を合成する方法が挙げられる。
【0082】
反応工程5では、通常、有機溶媒又は水などの溶媒が用いられ、好適には有機溶媒が用いられる。用いられる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素などが挙げられ、中でも非プロトン性溶媒又はエーテルが好ましく用いられる。かかる溶媒はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。また、かかる有機溶媒の使用量は、第三中間体(7)1質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましく、5〜100質量部であることがより好ましい。
【0083】
反応工程5に用いられる貴金属錯体としては、例えば、パラジウムなどの貴金属錯体が挙げられ、特にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)や塩化〔1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン〕パラジウム(PdCl(dppf))などのようにホスフィン類が配位している貴金属錯体を用いることが好ましい。
【0084】
反応工程5におけるクロスカップリング反応としては、例えば、Stilleカップリング反応、Suzukiカップリング反応が好適に採用される。なお、Stilleカップリング反応は、第三中間体(7)中のZ及びZ’が−Sn(Rで示される基である有機スズ化合物を用いた反応であり、Suzukiカップリング反応は、第三中間体(7)中のZ及びZ’がボロン酸基又はボロン酸エステル基である有機ホウ素化合物を用いた反応である。
【0085】
このような本発明の製造方法によって得られるジチエノゲルモール重合体は、その末端基がハロゲン原子、トリアルキルスズ基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、又はそれらの原子若しくは基が脱離した水素原子であるものであってもよく、これらの末端基が臭化ベンゼンなどの芳香族ハロゲン化物や、芳香族ボロン酸化合物からなる末端封止剤で置換された末端構造であるものであってもよい。また、反応工程5では、ジチエノゲルモール重合体の効果を損なわない範囲の少量であれば、ジハロアリール誘導体(8)と反応させる第三中間体に、前記化学式(7)に示される以外のジチエノゲルモール縮環構造を有さない化合物を共存させてもよい。
【0086】
反応工程5のクロスカップリング反応における反応温度については特に限定されず、−50〜200℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−50℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、−20℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が200℃を超える場合、生成物または触媒である金属錯体の分解を促進するおそれがあり、170℃以下であることがより好ましい。反応時間は、1分〜100時間であることが好ましく、0.5〜80時間であることがより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
【0087】
このようにして得られたジチエノゲルモール重合体(1)は、有機重合体の一般的な精製方法であるソックスレー抽出法により、残留触媒の除去および低分子量成分の除去、それに伴う分子量分布の狭化を達成することができる。ソックスレー抽出に用いる溶媒としては、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼンなどが挙げられる。
【0088】
これらの反応工程で重合及び精製を行った場合、ジチエノゲルモール重合体(1)の数平均分子量(Mn)は、通常、200〜1,000,000であり、重量平均分子量(Mw)は、通常、200〜1,000,000である。
【0089】
次に、本発明のジチエノゲルモール重合体の別の製造方法について説明する。
【0090】
本発明のジチエノゲルモール重合体の製造方法は、その重合前駆体の置換基の組み合わせにより反応工程が異なるものである。前記反応工程3まで同様の方法で行なって得られた第二中間体(6)と、前記化学式(9)に示される化合物とをクロスカップリング反応させることで、ジチエノゲルモール重合体(1)を得ることができる。この反応を反応工程4−aとする。
【0091】
第二中間体(6)と前記化学式(9)に示される化合物とのクロスカップリング反応における具体例を下記反応式(VI)に示す。
【0092】
【化24】

【0093】
反応工程4−aは、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下において、溶媒及び貴金属錯体の存在下で、1,1−ジアルキル−3,6−ジハロジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール誘導体(6−1)と前記化学式(9)に示される化合物とをクロスカップリング反応させる方法が挙げられる。
【0094】
反応工程4−aでは、通常、有機溶媒又は水などの溶媒が用いられ、好適には有機溶媒が用いられる。用いられる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素などが挙げられ、中でも非プロトン性溶媒又はエーテルが好ましく用いられる。かかる溶媒はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。また、かかる有機溶媒の使用量は、第二中間体(6)1質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましく、5〜100質量部であることがより好ましい。
【0095】
反応工程4−aで用いられる貴金属錯体としては、例えば、パラジウムなどの貴金属錯体が挙げられ、特にPd(PPhやPdCl(dppf)などのようにホスフィン類が配位している貴金属錯体を用いることが好ましい。
【0096】
反応工程4−aにおけるクロスカップリング反応としては、例えば、Stilleカップリング反応、Suzukiカップリング反応が好適に採用される。なお、Stilleカップリング反応は、前記化学式(9)で示される化合物中のZ及びZ’が−Sn(Rで示される基である有機スズ化合物を用いた反応であり、Suzukiカップリング反応は、前記化学式(9)で示される化合物中のZ及びZ’がボロン酸基及びボロン酸エステル基である有機ホウ素化合物を用いた反応である。
【0097】
反応工程4−aのクロスカップリング反応における反応温度については、特に限定されず、−50〜200℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−50℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、−20℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が200℃を超える場合、生成物または触媒である金属錯体の分解を促進するおそれがあり、170℃以下であることがより好ましい。反応時間は、1分〜100時間であることが好ましく、0.5〜80時間であることがより好ましい。また、反応圧力は、0〜3MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
【0098】
このようにして得られたジチエノゲルモール重合体(1)は、前記反応工程5で例示した精製方法と同様の方法で精製することができる。
【0099】
反応工程4−aの方法で重合及び精製を行った場合、ジチエノゲルモール重合体(1)の数平均分子量(Mn)は、通常、200〜1,000,000であり、重量平均分子量(Mw)は、通常、200〜1,000,000である。
【0100】
また、前記化学式(9)に示される化合物を得る方法としては、下記反応式(VII)で示されるように、前記反応式(IV)で示される反応工程4と同様の方法により、前記化学式(8)で示されるジハロアリール誘導体から合成することが好ましい。
【0101】
【化25】

【0102】
これらの各反応工程における反応式(I)〜(VII)に示される、R〜R,X,X’,X〜X,Z,Z’,Arはそれぞれ前記と同じである。
【0103】
これらの反応工程により製造された本発明のジチエノゲルモール重合体は、非特許文献1に記載されている既報のLBGPであるジチエノシロールと類似の構造を有するが、そのC−Si結合と比較してより強固な結合であるC−Ge結合を構造中に含むため、より高い熱安定性を有するという特徴を有する。
【0104】
それらの結合解離エネルギーD298(kJ mol−1)は、デビット アール.リーデ(David R.Lide)ら、シーアールシー ハンドブック オヴ ケミストリー アンド フィジックス第90版 2009-2010年(CRC Handbook of Chemistry and Physics.90TH EDITTION 2009-2010.)、2009年、pp.9−64〜9−69の記載によると、C−Si結合で447kJ mol−1であり、C−Ge結合で470kJ mol−1である。この高い熱安定性を示すジチエノゲルモール重合体は、新しい有機半導体材料として使用することができ、光電変換素子、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ素子などの有機半導体デバイスを製造することができる。
【0105】
本発明の有機半導体デバイスの一実施例として有機電界効果トランジスタについて説明する。
【0106】
有機電界効果トランジスタは、基板上で、電圧が印加されるゲート電極層と、絶縁体層と、電流路となるソース−ドレイン電極層と、有機半導体層とが、積層されているものである。それらの各層の積層配置の違いにより、ボトムゲート・トップコンタクト型、ボトムゲート・ボトムコンタクト型、トップゲート・ボトムコンタクト型、およびトップゲート・トップコンタクト型がある。この有機半導体層1を形成する有機半導体材料として本発明のジチエノゲルモール重合体が用いられる。
【0107】
有機電界効果トランジスタの好ましい一形態について、図1に示す。
【0108】
有機電界効果トランジスタ10は、図1(a)に示されるように、基板である絶縁性支持基板6上に、ゲート電極5からなるゲート電極層、絶縁体層4、ソース電極2とドレイン電極3とからなるソース−ドレイン電極層2−3、及びジチエノゲルモール重合体を含有している有機半導体層1が、順次積層されているボトムゲート・ボトムコンタクト型である。ゲート電極5は、電流路に流れる電流を制御しており、絶縁体層4によって有機半導体層1およびソース−ドレイン電極層2−3から隔離されている。ソース−ドレイン電極層2−3は、有機半導体層1に蒸着されており、ソース電極2及びドレイン電極3の間の電流路となるチャネル領域を形成している。
【0109】
これらの各層や電極の配置は、電子デバイスの用途により適宜選択することができる。有機電界効果トランジスタ10は、図1(b)に示されるように、絶縁体性基板6上に、ゲート電極5、絶縁体層4、有機半導体層1及びソース電極2とドレイン電極3とであるソース−ドレイン電極層2−3が、順次積層されて形成されているボトムゲート・トップコンタクト型であってもよい。有機電界効果トランジスタ10の構造は、特に限定されず、例えば、有機半導体層1が露出している場合、有機半導体層1への外気の影響を最小限するための保護膜がその有機半導体層1の上に形成されているものであってもよい。
【0110】
有機電界効果トランジスタ10は、ゲート電極5に電圧を印加すると電界が生じ、ソース−ドレイン電極層2−3において、ソース電極2とドレイン電極3との間で電流路となるチャネル領域Lを形成する。そのソース−ドレイン電極層2−3と有機半導体層1とにおいて、ソース電極2から有機半導体層1へ電子の供給が行われ、また有機半導体層1からドレイン電極3へ電子の排出が行われ、電流が流れる。有機半導体層1と絶縁体層4のキャリア密度を変化させ、ソース電極2およびドレイン電極3の間に流れる電流量を変化させることで、トランジスタ動作が行われる。
【0111】
絶縁性支持基板6の材料としては、具体的に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ガラス、石英、シリコン、セラミック、プラスチックなどが挙げられる。
【0112】
絶縁性支持基板5の厚みは、0.05〜2mm程度であると好ましく、0.1〜1mm程度であるとより好ましい。
【0113】
絶縁体層4の材料としては、絶縁性を有する種々の材料を用いることができる。かかる材料としては、具体的に、酸化シリコン、窒化シリコン、アモルファスシリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタルなどが挙げられる。また、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シアノ基を有する炭化水素樹脂およびフェノール樹脂、ポリイミド樹脂およびポリパラキシリレン樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上の樹脂を主成分とする樹脂または樹脂組成物から形成してもよい。
【0114】
絶縁体層4の膜厚は、好ましくは50nm〜2μm程度であり、更に好ましくは100nm〜1μm程度である。
【0115】
絶縁体層4は、室温における電気伝導度が、1.0MV/cmの電界強度下においてリーク電流が10−2A/cm以下のものであると好ましい。また、その比誘電率は、通常で4.0程度であり、高い値を示すものであると好ましい。
【0116】
絶縁体層4の形成方法は、用いる材料に応じて適宜選択することができる。例えば、スピンコートやブレードコートなどの塗布法、蒸着法、スパッタ法、スクリーン印刷やインクジェット、静電荷像現像方法などの印刷法などにより形成することができる。また、絶縁体の前駆物質としてモノマーを塗布した後、光を照射して硬化させることにより絶縁体を形成する光硬化樹脂を用いてもよい。
【0117】
ゲート電極5、ソース電極2およびドレイン電極3の材料は、特に制限されず導電性を示すものであればよい。具体的に、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、シリコン、炭素、グラファイト、クラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アモルファスシリコンなどが挙げられる。また、ドーピングなどで導電率を向上させた、公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。
【0118】
ゲート電極5、ソース電極2、ドレイン電極3の膜厚は、0.01〜2μmであると好ましく、0.2〜1μmであるとより好ましい。
【0119】
また、ソース電極2とドレイン電極3との間の距離であるチャネル長(L)は、作成するデバイスの大きさや目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。チャネル長(L)は、通常では100μm以下であり、50μm以下であると好ましい。一方、チャネル幅Wは、通常では2000μm以下であり、500μm以下であると好ましい。L/Wは、通常では0.1以下であり、0.05以下であると好ましい。
【0120】
ゲート電極5、ソース電極2およびドレイン電極3は、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法などにより形成することができる。更に、それらのパターニング法としては、フォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷などの印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法などのソフトリソグラフィーの手法およびこれらの手法を複数組み合わせた手法などが挙げられる。また、レーザーや電子線などのエネルギー線を照射して材料を除去する方法などによっても形成することができる。
【0121】
有機半導体層1の材料は、本発明のジチエノゲルモール重合体又はそれを含有している有機半導体材料である。
【0122】
有機半導体層1の膜厚は、1nm〜10μm程度であると好ましく、10〜500nm程度であるとより好ましい。
【0123】
有機半導体層1は、ジチエノゲルモール重合体を溶媒に溶解してキャスト、ディップ、スピンコート法などにより塗布する方法や、真空蒸着法などにより製膜することができる。
【0124】
保護膜の材料として、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコールなどのポリマーや酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウムなどの無機酸化物や窒化物などが挙げられる。保護膜は、塗布法や真空蒸着法などで形成することができる。
【0125】
本発明の有機半導体デバイスは、ジチエノゲルモール重合体を含有する有機半導体材料を用いた光電変換素子であってもよい。
【0126】
光電変換素子20は、図2に示されるように、基板26上に、透明電極である陽極25、任意の平滑層である陽極緩衝層24、チエノゲルモール重合体を含有している光活性層23、アルカリハロゲン化物、特にフッ化リチウムのような任意の遷移層である陰極緩衝層22、及び陰極(電極)21が、順次積層されているものである。光電変換素子の構造は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0127】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0128】
本発明のジチエノゲルモール重合体の合成を実施例1に示し、それを有機半導体材料として用いた有機電界効果トランジスタ及び光電変換素子の作製をそれぞれ実施例2及び3に示す。
【0129】
(実施例1)
本発明のジチエノゲルモール重合体の製造方法である反応工程1〜5を合成例1〜5、反応工程4−aを合成例6に示し、別の反応工程を合成例7〜11に示す。
【0130】
(合成例1)
反応工程1で得られるジアルキルジハロゲノゲルマニウムを下記化学式(20)に示す。
【0131】
【化26】

【0132】
窒素雰囲気下、250mL三口フラスコに四塩化ゲルマニウム(14.4g、67mmol)とジエチルエーテル(80mL)を加え氷塩浴で0℃まで冷却した。2−エチルヘキシルブロマイド(25.8g、134mmol)とマグネシウム(3.28g、134mmol)から調製した2.68Mの2−エチルヘキシルマグネシウムブロマイドをゆっくりと滴下した。滴下終了後、混合液を24時間室温下で攪拌した後に、真空下で溶媒を留去することで粘性のある固体を得た。得られた固体をヘキサン(300mL×3)で抽出し、抽出液を硫酸マグネシウムにて乾燥した後に、減圧下で溶媒を留去することで油状の物質を得た。得られた油状物質を減圧蒸留することにより無色透明な油状物質としてジクロロビス(2−エチルヘキシル)ゲルマニウム(化合物20)を得た。その収量及び収率は、11.4g,71%であった。
【0133】
得られた化合物の質量分析及び核磁気共鳴(NMR)の測定結果を以下に示す。
質量分析 GC−MS:m/z 370(M
H−NMRスペクトル:(CDCl、400 MHz)δ1.43(quint、2H)、1.39−1.25(m、8H)、0.92(d、4H)、0.90(t、6H)、0.88(t、6H)
13C−NMRスペクトル:(CDCl、400MHz) δ36.17、34.80、34.50、28.48、27.72、22.87、14.08、10.48
【0134】
(合成例2)
反応工程2で得られる第一中間体を下記化学式(21)に示す。
【0135】
【化27】

【0136】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに5,5’−ビス(トリメチルシリル)−3,3’−ブロモ−2,2’−ビチオフェン(5.25g、11.2mmol)とテトラヒドロフラン(40mL)を加え−78℃に冷却した。1.66Mブチルリチウムヘキサン溶液(14.8mL、24.6mmol)を5分以上かけて−78℃でゆっくりと滴下し、混合液を−78℃で1時間攪拌した。その後、ジクロロビス(2−エチルヘキシル)ゲルマニウム(20)(4.44g、11.2mmol)を加え、室温下で5時間攪拌した。攪拌終了後、反応溶液を水(200mL)に注ぎ、エーテル(100mL×3)で抽出した。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物を、ヘキサンを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、黄色の油状物質として1,1−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6−ビス(トリメチルシリル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(化合物21)を得た。その収量及び収率は、4.77g、70%であった。
【0137】
得られた化合物の質量分析及びNMRの測定結果を以下に示す。
質量分析 GC−MS:m/z=608(M
H−NMRスペクトル:(CDCl、400 MHz)δ7.12 (s、2H)、1.47(quint、2H)、1.31−1.04(m、16H)、0.91(t、6H)、0.84(t、6H)、0.79(m、4H)、0.32(s、18H)
13C−NMRスペクトル:(CDCl、400MHz)δ154.70、145.86、140.57、136.77、36.94、35.44、28.90、28.76、23.02、20.54、14.16、10.89、0.1
Anal. Calcd for C3054GeSSi:C、59.29;H、8.96.Found:C、59.0;H、9.03
【0138】
(合成例3)
反応工程3で得られる第二中間体を下記化学式(22)に示す。
【0139】
【化28】

【0140】
窒素雰囲気下、50mL三口フラスコに1,1−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6−ビス(トリメチルシリル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(化合物21)(3.8g、6.25mmol)とテトラヒドロフラン(20mL)とを加えた後に、室温でN−ブロモスクシンイミド(2.45g、13.75mmol)を加えた。室温下で4時間攪拌した後に、反応溶液を水(50mL)に注ぎ、ジエチルエーテル(50mL×3)で抽出した。減圧下で溶媒を留去することで、得られた粗生成物を用いてヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより黄色の油状物質として3,6−ジブロモ−1,1−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(化合物22)を得た。その収量及び収率は、3.73g、96%であった。
【0141】
得られた化合物の質量分析及びNMRの測定結果を以下に示す。
質量分析 GC−MS:m/z 622(M
H−NMRスペクトル:(CDCl、400MHz)δ6.97(s、2H)、1.45(quint、2H)、1.31−1.04(m、16H)、0.91(t、6H)、0.84(t、6H)、0.79(m、4H)
13C−NMRスペクトル:(CDCl、400MHz)δ146.16、143.10、132.26、111.01、36.89、35.41、28.87、28.71、22.97、20.77、14.10、10.84
【0142】
(合成例4)
反応工程4で得られる第三中間体を下記化学式(23)に示す。
【0143】
【化29】

【0144】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに3,6−ジブロモ−1,1−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(化合物22)(0.3g、0.48mmol)とテトラヒドロフラン(40mL)とを加え−78℃に冷却し、1.66M n−ブチルリチウム(0.64mL、1.06mmol)を5分以上かけてゆっくりと滴下した。反応溶液を−78℃で15分攪拌した後に、塩化トリメチルすず(0.197mL、1.06mmol)を加え、室温まで昇温して2時間攪拌した。攪拌終了後、反応溶液を水(100mL)に注ぎ、ジエチルエーテル(50mL×3)で抽出した。硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下で溶媒を留去することにより透明緑色油状化合物として1,1−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6−ビス(トリメチルスタニル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(化合物23)を得た。その収量及び収率は、0.36g、96%であった。これ以上の精製作業は行わずに続く反応を行った。
【0145】
得られた化合物のNMR測定結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl、400MHz)δ7.07(s、2H)、1.45(quint、2H)、1.31−1.04(m、16H)、0.91(t、6H)、0.84(t、6H)、0.79(m、4H)、0.37(s、18H)
13C−NMRスペクトル(CDCl、400MHz)δ157.61、145.11、137.75、137.13、36.95、35.43、28.90、28.75、23.02、20.65、14.17、10.87、8.18
【0146】
(合成例5)
反応工程5で得られるジチエノゲルモール重合体を下記化学式(24)に示す。
【0147】
【化30】

【0148】
25mL三口フラスコに4,7−ジブロモベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(87.1mg,0.296mmol)、1,1−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6−ビス(トリメチルスタニル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(化合物23)(0.234g、0.296mmol)、クロロベンゼン(7mL)を加え、10分間かけてアルゴン置換を行った。置換終了後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(6.1mg、0.00592mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン(14.4mg、0.0474mol)、酸化銅(I)(25mg、0.296mmol)を加え、150℃で72時間還流した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、メタノール(100mL)を加え、析出した固体を濾取した。その後、ソックスレー抽出機を用いてメタノール(100mL)、ヘキサン(100mL)の順に洗浄を行い、不溶成分をクロロホルム(100mL)により抽出した。得られた溶液から減圧下で溶媒を留去することで得られた固体を24時間真空下で乾燥することにより黒色固体としてポリ(1,1−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−3,6−ジイル−alt−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール)−4,7−ジイル(化合物24)を得た。その収量及び収率は、80mg、40%であった。また、GPCで測定したその数平均分子量(Mn)は8000であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で求められる分子量分布(PDI)は、1.38であった。
【0149】
得られた化合物のNMR測定結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl、400MHz)δ8.19(br、s、2H)、7.80(br、s、2H)、2.10(br、s、2H)、1.25−1.08(m、20H)、0.89−0.75(m、12H)
【0150】
(合成例6:鈴木カップリングで合成)
反応工程4−aで得られるジチエノゲルモール重合体を下記化学式(24)に示す。
【0151】
【化31】

【0152】
100mL三口フラスコに3,6−ジブロモ−1,1−ビス(2−エチルヘキシル)−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(1.79g,2.88mmol)、4,7−ビス(3,3,4,4−テトラメチル−2,5,1−ジオキサボロラン−1−イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール(1.12g,2.88mmol)、トルエン(55mL)、2M炭酸カリウム水溶液(55mL)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(67.0mg,58.0μmol)、aliquat336(4mg,9.90μmol)を加えた後に80℃で2時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をメタノール(500mL)に注ぎ、析出した固体を濾取し、水(100mL)、メタノール(100mL)で洗浄し、得られた固体を減圧乾燥することで粗生成物を得た。粗生成物を、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、不溶成分をクロロホルム(200mL)で抽出した。得られた溶液をメタノール(2L)に注ぎ、析出した固体を濾取した後に減圧乾燥することで黒紫色の固体としてポリ(1,1−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−3,6−ジイル−alt−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール)−4,7−ジイル(化合物24)を得た。その収量および収率は0.66g,38%であった。また、Mnは10000であり、PDIは、1.38であった。
【0153】
得られた化合物のNMR測定結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl、400MHz)δ8.18(br、s、2H)、7.81(br、s、2H)、2.10(br、s、2H)、1.26−1.09(m、20H)、0.89−0.74(m、12H)
【0154】
反応工程4−aでジチエノゲルモール重合体(化合物24)を製造した場合でも、反応工程5で得られる化合物24と同様の重合体が得られた。
【0155】
(合成例7)
反応工程5で得られる別のジチエノゲルモール重合体を下記化学式(25)に示す。
【0156】
【化32】

【0157】
25mL三口フラスコに5,5’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン(0.154g、0.476mmol)、1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6’−ビス(トリメチルスタニル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(化合物23)(0.376g、0.476mmol)、クロロベンゼン(10mL)を加え、10分間かけてアルゴン置換を行った。置換終了後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(9.8mg、0.00952mol)、トリ(o−トリル)ホスフィン(23.2mg、0.0762mol)、酸化銅(I)(37.8mg、0.476mmol)を加え、150℃で72時間還流した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、メタノール(100mL)を加え、析出した固体を濾取した。その後、ソックスレー抽出機を用いてメタノール(100mL)、ヘキサン(100mL)の順に洗浄を行い、不溶成分をクロロホルム(100mL)により抽出した。得られた溶液から減圧下で溶媒を留去することで得られた固体を24時間真空下で乾燥することにより黒色固体としてポリ(1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−3,6−ジイル−alt−2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイレン(化合物25)を得た。その収量及び収率は、200mg、70%であった。また、Mnは10000であり、PDIは2.7であった。
【0158】
得られた化合物のNMR測定結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl、400MHz)δ7.17−6.86(b,6H)、1.26−1.09(m,22H),0.90−0.74(m,12H)
【0159】
(合成例8)
反応工程5で得られる別のジチエノゲルモール重合体を下記化学式(26)に示す。
【0160】
【化33】

【0161】
25mL三口フラスコに、4,7−ビス(5−ブロモ−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(160mg、0.353mmol)と1,1−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6−トリメチルスタニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(279mg、0.353mmol)と脱水クロロベンゼン(7mL)を加えた後に、フラスコ内に10分間アルゴンガスを流しアルゴン置換を行った。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(8.0mg、2mol%)とトリ(o−トリル)ホスフィン(18.7mg、16mol%)、酸化銅(29.6mg、0.353mmol)を加え、150℃で72時間攪拌を行った。反応終了後、室温まで冷却しメタノール(100mL)に加え析出した固体をろ取した。粗ポリマーを円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出機を用いてメタノール(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、メタノール、ヘキサン不溶分をクロロホルム(200mL)で抽出した。抽出液を濃縮した後にメタノールに注ぎ析出した固体をろ取し、減圧下室温で24時間乾燥することで、黒色の固体としてポリ{(1,1−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−3,6−ジイル−alt−(4,7−ビス(チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール)−5,5’−ジイル}(化合物26)を得た。その収量及び収率は、100mg、50%であった。また、Mnは3800であり、PDIは3.15であった。
【0162】
得られた化合物のNMR測定結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl,400MHz)δ8.30−6.32(br,8H)、1.53−1.43(br,4H)、1.41−1.05(m,20H)、0.93−0.72(m、10H)
【0163】
(合成例9)
反応工程5で得られる別のジチエノゲルモール重合体を下記化学式(27)に示す。
【0164】
【化34】

【0165】
100mL三口フラスコに、4,7−ジブロモベンゾ[c][1,2,5]セレナジアゾール(81.5mg、0.239mmol)と1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6−トリメチルスタニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(188.6mg、0.239mmol)と脱水トルエン(15mL)を加えた後に、フラスコ内に10分間アルゴンガスを流しアルゴン置換を行った。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(24.7mg、10mol%)とトリ(o−トリル)ホスフィン(29.1mg、40mol%)を加え、72時間還流を行った。反応終了後、室温まで冷却しメタノール(100mL)に加え析出した固体をろ取した。粗ポリマーを円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出した。抽出液を濃縮した後にメタノールに注ぎ析出した固体をろ取し、減圧下室温で24時間乾燥することで、暗紫色の固体としてポリ{(1,1’‐ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−3,6−ジイル‐アルト−(2,1,3−ベンゾセレナジアゾール)−4,7−ジイル}(化合物27)を得た。その収量及び収率は、130mg、70%であった。また、Mnは12000であり、PDIは11.0であった。
【0166】
得られた化合物のNMR測定結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl,400MHz)δ8.10(br,s,2H)、7.81(br,s,2H),2.03(br,s,2H),1.39−1.16(m,20H),0.89−0.78(m,12H)
【0167】
(合成例10)
反応工程5で得られる別のジチエノゲルモール重合体を下記化学式(28)に示す。
【0168】
【化35】

【0169】
5mL三口フラスコに、2,5−ビス(5−ブロモ−4−ヘキシルチオフェン−2−イル)−チアゾロ[5,4−d]チアゾール(200mg、0.316mmol)と1,1−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6−トリメチルスタニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(250mg、0.316mmol)と脱水クロロベンゼン(10mL)を加えた後に、フラスコ内に10分間アルゴンガスを流しアルゴン置換を行った。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(7.0mg、2mol%)とトリ(o−トリル)ホスフィン(16.5mg、16mol%)、酸化銅(27mg、0.316mmol)を加え、150℃で72時間攪拌を行った。反応終了後、室温まで冷却しメタノール(100mL)に加え析出した固体をろ取した。粗ポリマーを円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出機を用いてメタノール(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、メタノール、ヘキサン不溶分をクロロホルム(200mL)で抽出した。抽出液を濃縮した後にメタノールに注ぎ析出した固体をろ取し、減圧下室温で24時間乾燥することで、暗緑色の固体としてポリ{(1,1‐ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−3,6−ジイル‐アルト−(2,5−ビス(4−ヘキシルチオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール)−5,5‘−ジイル}(化合物28)を得た。その収量及び収率は、230mg、75%であった。また、Mnは11000であり、PDIは2.34であった。
【0170】
得られた化合物のNMR測定結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl,400MHz)δ7.41(br,2H)、7.20(br,2H)、2.80(br,4H)、1.72(br,6H)、1.50−1.06(m,30H)、1.05−0.66(m、20H)
【0171】
(合成例11)
反応工程5で得られる別のジチエノゲルモール重合体を下記化学式(29)に示す。
【0172】
【化36】

【0173】
100mL三口フラスコに、3,6−ビス(5−ブロモ−4−ヘキシルチオフェン−2−イル)−1,2,4,5−テトラジン(162mg、0.284mmol)と1,1’−ビス(2−エチルヘキシル)−3,6−トリメチルスタニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール(227mg、0.284mmol)と脱水トルエン(17mL)を加えた後に、フラスコ内に10分間アルゴンガスを流しアルゴン置換を行った。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(28.0mg、10mol%)とトリ(o−トリル)ホスフィン(33.0mg、40mol%)を加え、72時間還流を行った。反応終了後、室温まで冷却しメタノール(100mL)に加え析出した固体をろ取した。粗ポリマーを円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出機を用いてアセトン(200mL)、ヘキサン(200mL)で洗浄した後に、クロロホルム(200mL)で抽出し、不溶物をo−ジクロロベンゼン(200mL)で抽出した。抽出液を濃縮した後にメタノールに注ぎ析出した固体をろ取し、減圧下室温で24時間乾燥することで、暗紫色の固体としてポリ{(1,1‐ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−3,6−ジイル‐アルト−(2,5−ビス(4−ヘキシルチオフェン−2−イル)−1,2,4,5−テトラジン)−5,5‘−ジイル}(化合物29)を得た。その収量及び収率は、180mg、60%であった。また、Mnは27000であり、PDIは23.5であった。
【0174】
得られた化合物のNMR測定結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl,400MHz)δ8.10(s,2H)、7.32(s,2H)、2.90(t,4H)、2.04(br,s,4H)、1.78(m、4H)、1.46(m、4H)、1.42−1.21(m,24H),0.92(t,6H)、0.84(t、6H)
【0175】
(分解温度の測定)
前記化学式(24)で示されるポリ(1,1−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]ゲルモール)−3,6−ジイル−alt−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール)−4,7−ジイルと、そのゲルマニウム原子が、ケイ素原子で置換した構造を有する化合物との分解温度を測定した。
【0176】
ケイ素原子で置換した構造を有するポリ(1,1−ビス(2−エチルヘキシル)ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]シロール)−3,6−ジイル−alt−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール)−4,7−ジイルを下記化学式(30)に示す。
【0177】
【化37】

【0178】
本発明のジチエノゲルモール重合体である化合物(24)と比較例である化合物(30)との分解温度の測定結果を表1に示す。
【0179】
【表1】

【0180】
以下、Si体はケイ素原子で置換した構造を有する比較例を示し、Ge体は本発明のジチエノゲルモール重合体を示す。表1に示されるように、本発明のジチエノゲルモール重合体であるGe体は、比較例であるSi体に比べてその分解温度が高く、優れた熱安定性を有するものである。
【0181】
(実施例2)
合成例5及び7で得られた前記化学式(24)及び(25)で示されるジチエノゲルモール重合体を有機半導体材料として用いた有機薄膜トランジスタを作製した。
厚さ500μmのシリコンウェハを3.5×2.5cmの大きさに切り出し、このフィルムを絶縁性支持基板とした。この基板に、オゾン処理、またはオゾン処理後にヘキサメチルジシラザン(HMDS)かオクチルトリクロロシラン(OTS)かの処理をした。この処理基板上に、n型シリコンウェハを形成し、これをゲート電極とした。このゲート電極上に、熱酸化法を用いて200nmの酸化シリコン(SiO)絶縁体層を形成した。次いで、SiO上にスピンコート法を用いて、合成例5及び7で得られたジチエノゲルモール重合体を塗布し、有機半導体層を形成した。さらに、その有機半導体層上に、真空蒸着法を用いて、金を50nmの厚みで蒸着し、図3で示される有機薄膜ランジスタを得た。なお、チャネル長(L)が50、75および100μm、チャネル幅(W)が1000μmとなるようにして蒸着を行った。
【0182】
得られた有機薄膜ランジスタについて、エレクトロメーターを用いて、ソース電極およびドレイン電極間に−10〜−60Vの電圧を印加し、ゲート電圧を20〜−100Vの範囲で変化させて、電圧−電流曲線を25℃の温度において求め、そのトランジスタ特性を評価した。トランジスタ特性は、負バイアスについてのみ観察された。このことは、得られた有機薄膜ランジスタがp型有機薄膜ランジスタであることを意味する。
【0183】
電界効果移動度(μ)は、ドレイン電流Idを表わす下記式[A]を用いて算出した。
Id=(W/2L)μCi(Vg−Vt)・・・[A]
前記式[A]において、Lはゲート長であり、Wはゲート幅である。また、Ciは絶縁層の単位面積当たりの容量であり、Vgはゲート電圧であり、Vtは閾値電圧である。
また、オン/オフ比は、最大及び最小ドレイン電流値(Id)の比より算出した。
【0184】
得られたトランジスタ特性評価結果を表2に示す。
【0185】
【表2】

【0186】
表2に示されるように、本発明のジチエノゲルモール重合体(Ge体)を有機半導体材料として用いたp型有機薄膜ランジスタは、既存の重合体であるSi体を用いた場合と同などのキャリア移動度を示すことが明らかになった。
【0187】
(実施例3)
非特許文献1に記載の方法に従い、合成例5及び7で得られた前記化学式(24)及び(25)で示されるジチエノゲルモール重合体を有機半導体材料として用いた光電変換素子を作製した。
洗浄を行ったインジウム−スズ酸化物(ITO)を150nm積層させたガラス基板上にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルフォネート)をスピンコート法により積層させた。真空下、150℃で30分間熱処理を行った後に、合成例5及び7で得られたジチエノゲルモール重合体とフェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)との混合物(1:1、w/w)を10mg/mLでクロロベンゼンに溶解させた溶液をスピンコート法により塗布することで光活性層を作製した。作製した光活性層を真空下、150℃で30分間熱処理を行った。この際、光活性層の膜厚は80nmであった。作製した膜上にマスクを用いてフッ化リチウム(0.1nm)とAlパターン(80nm)を蒸着した。
【0188】
作製した光電変換素子を用いて、擬似太陽光(AM1.5、100mW/cm)を照射し、光電変換効率を測定した。測定結果を表3に示す。
【0189】
【表3】

【0190】
表3に示したとおり、本発明のGe体は既存のLBGPであるSi体と比較して、同等またはそれ以上の良好な性能を示すことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明のジチエノゲルモール重合体は、半導体特性の安定性に優れた有機半導体材料として電界効果トランジスタ、有機薄膜太陽電池などの電子デバイスに用いることができる。また、ジチエノゲルモール化合物は、このジチエノゲルモール重合体を製造するための中間体として用いることができる。ジチエノゲルモール重合体は、既存と有機半導体材料に比べて耐熱性に優れ、熱に対する安定性が高い。従って、軽量で柔軟性を有する電子デバイスの提供、真空プロセスを必要としないことによる電子デバイス製造コストの抑制、大画面デバイス製造の容易化など有機半導体材料の利点をさらに活かし有効に利用できる。本発明のジチエノゲルモール重合体は、有機半導体材料の製造を行う化学工業やこれを利用する種々の電子デバイスを製造する半導体工業において利用可能であるのみならず、電子デバイスを組み込んだ各種製品を製造する電子機器製造工業などにおいても有用である。
【符号の説明】
【0192】
1は有機半導体層、2はソース電極、3はドレイン電極、4は絶縁体層、5はゲート電極、6は絶縁性支持基板、7はゲート電極基板、8はゲートコンタクト、10は有機電界効果トランジスタ、10aは有機薄膜トランジスタ、20は光電変換素子、21は陰極、22は陰極緩衝層、23は光活性層、24は陽極緩衝層、25は陽極、26は基板である。Lはチャネル領域である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Arは置換基を有してもよい2価の芳香環と、芳香環数2〜7の置換基を有してもよい2価の多核芳香環と、置換基を有してもよい2価の芳香環及び/又は芳香環数2〜7の置換基を有してもよい2価の多核芳香環を複数連結させた2価のアリーレン基とから選ばれる何れかであり、nは少なくとも2の正数)で示されることを特徴とするジチエノゲルモール重合体。
【請求項2】
下記化学式(2)
【化2】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Y及びY’はそれぞれ独立してハロゲン原子、−Si(R(Rは炭素数1〜6の炭化水素基)、−Sn(R(Rは炭素数1〜6の炭化水素基)、ボロン酸基及びボロン酸エステル基から選ばれる1つである)で示されることを特徴とするジチエノゲルモール化合物。
【請求項3】
下記化学式(3)
【化3】

(式中、Rはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜6の炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立してハロゲン原子である)で示される化合物を有機リチウム化合物の存在下で、下記化学式(4)
【化4】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立してハロゲン原子である)で示される化合物と反応させて、下記化学式(5)
【化5】

(式中、R、R及びRは前記と同じである)で示される第一中間体を得て、前記第一中間体とハロゲン化剤とを反応させることにより、下記化学式(6)
【化6】

(式中、R及びRは前記と同じであり、X及びXはそれぞれ独立してハロゲン原子である)で示される第二中間体を得た後、
前記第二中間体と、ハロゲン化トリアルキルスズ、ボロン酸化剤、若しくはボロン酸エステル化剤とを反応させることにより、下記化学式(7)
【化7】

(式中、R及びRは前記と同じであり、Z及びZ’はそれぞれ独立して−Sn(R(Rは、炭素数1〜6の炭化水素基)、ボロン酸基及びボロン酸エステル基から選ばれる1つである)で示される第三中間体を得て、次いで下記化学式(8)
−Ar−X ・・・(8)
(式中、Arは置換基を有してもよい2価の芳香環と、芳香環数2〜7の置換基を有してもよい2価の多核芳香環と、前記置換基を有してもよい2価の芳香環及び/又は前記芳香環数2〜7の置換基を有してもよい2価の多核芳香環を複数連結させた2価のアリーレン基とから選ばれる何れかであり、X及びXはハロゲン原子である)で示される化合物と貴金属錯体存在下でカップリング反応させ、
又は
前記第二中間体と、下記化学式(9)
Z−Ar−Z’ ・・・(9)
(式中、Ar、Z及びZ’は前記と同じである)で示される化合物とを貴金属錯体存在下でカップリング反応させることにより、下記化学式(1)
【化8】

(式中、R、R及びArは前記と同じであり、nは少なくとも2の正数)で示されるジチエノゲルモール重合体を製造する方法。
【請求項4】
ジチエノゲルモール重合体を合成するための中間体の製造方法であって、
下記化学式(3)
【化9】

(式中、Rはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜6の炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立してハロゲン原子である)で示される化合物を有機リチウム化合物の存在下で、下記化学式(4)
【化10】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、X及びXはそれぞれ独立してハロゲン原子である)で示される化合物と反応させること、
下記化学式(5)
【化11】

(式中、R、R及びRは前記と同じである)で示される化合物とハロゲン化剤とを反応させること、
又は
下記化学式(6)
【化12】

(式中、R及びRは前記と同じであり、X及びXはそれぞれ独立してハロゲン原子である)で示される化合物と、ハロゲン化トリアルキルスズ、ボロン酸化剤、若しくはボロン酸エステル化剤とを反応させることにより、下記化学式(2)
【化13】

(式中、R及びRは前記と同じであり、Y及びY’はそれぞれ独立してハロゲン原子、−Si(R(Rは炭素数1〜6の炭化水素基)、−Sn(R(Rは炭素数1〜6の炭化水素基)、ボロン酸基及びボロン酸エステル基から選ばれる1つである)で示されるジチエノゲルモール化合物を製造する方法。
【請求項5】
請求項1に記載のジチエノゲルモール重合体を含むことを特徴とする有機半導体用組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のジチエノゲルモール重合体からなることを特徴とする有機半導体用材料。
【請求項7】
請求項1に記載のジチエノゲルモール重合体を有機半導体層とすることを特徴とする有機半導体デバイス。
【請求項8】
光電変換素子であることを特徴とする請求項7に記載の有機半導体デバイス。
【請求項9】
有機トランジスタであることを特徴とする請求項7に記載の有機半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−162514(P2012−162514A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125732(P2011−125732)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】