説明

ジッパー付フィルム袋用鋏

【課題】ジッパー付フィルム袋の切断縁にズレ部を形成することで、老人、子供或いは指先の不自由な人でもジッパー付フィルム袋を容易に開封することができるジッパー付フィルム袋用鋏を提供する。
【解決手段】鋏本体1は、一対の鋏体2、3と、両鋏体2、3の間隙に挟装する中間刃体5を支軸4で連結して構成してある。中間刃体5の略中間には支軸4が挿通する長孔が形成してある。中間刃体5の下端側に基端側を連結ピン7で結合し、先端側を鋏体2、3の柄部2B、3Cに係合ピン8で連結した連動腕6、6が設けてあり、一対の鋏体2、3、中間刃体5及び一対の連動腕6、6によって四角形リンクが形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジッパー付フィルム袋を密封状態から開封するために使用するジッパー付フィルム袋用鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、菓子、調味料等の食品等の包装袋に、保存中における食品の乾燥や、逆に湿気るのを防止するため、袋内を密封することのできるジッパーを設けたタイプの袋が多く使用されるようになっている。このジッパー付フィルム袋51(以下、フィルム袋51という。)を図6及び図7に示す。図6に示すように長方形のフィルム素材を長手方向略中心で折り返して下端51Aとし、左右の側縁51B、51Bを衝合して熱溶着などの手段によって固着することにより、一側フィルム52と他側フィルム53とからなる上端が開放した袋状に形成してある。そして、この両フィルム52、53の上端52A、53A寄りの内面に、押圧することにより噛合するタイプのジッパー54を設け、フィルム52、53の上端52A、53Aは熱溶着などの手段で固着してフィルム袋51の密封部51Cとしてある。
【0003】
上記のフィルム袋51を開封する場合、従来は2枚刃の鋏でフィルム袋51のジッパー54より上端52A、53A側を切断しているが、衝合する一側フィルム52と他側フィルム53の切断縁52B、53Bが直線状に重なった状態になる(図7参照)。そして、フィルム袋51は食品等の保存性と繰り返し開閉操作することに対する強度性を考慮した剛性のあるポリプロピレン等の素材で成形しているため、切断縁52B、53Bは密接した状態で重なっており、老人、子供或いは指先が不自由な人にとっては切断縁52B、53Bを開くことが容易でないという問題がある。
【0004】
しかし、このようなフィルム袋51を開封する専用の鋏は知られていない。また、従来から限られた用途を持つ鋏として、例えば剪断線が異なるように刃形の異なる刃を組み合わせて3枚刃で構成した鋏、甲殻類の殻を切断するために3枚刃で構成した鋏、更には片方の刃を大きく開くように3枚刃で構成した鋏がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−58884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように3枚刃の鋏は知られているが、フィルム袋51を切断してジッパーを容易に開口することができるようにした鋏は提案されていない。また、鋏は用途によって刃の形状、噛合状態等が相違するものであり、用途の異なる3枚刃の鋏を転用しても、密封してあるフィルム袋51のフィルム52、53を異なる切断縁で夫々切断し、かつ切断縁を仕上がりよく切断することは事実上困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の未解決の問題点に鑑みなされたもので、2枚刃の鋏と同様な使い方でフィルム袋51を切断して開封することができ、取扱い性に優れているし、老人、子供或いは指先の不自由な人でもジッパー付フィルム袋を容易に開口することができるジッパー付フィルム袋用鋏を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために構成された本発明の手段は、長手方向一側が持ち手部になり、柄部を介して他側が刃部になり、該刃部の内側縁に切込み刃が形成してある一対の鋏体を支軸により回動可能に連結した鋏本体と、前記支軸が前後方向に変位可能に挿嵌する長孔及び両側縁に前記各鋏体の切込み刃と交わる受け刃を有し、前記長孔に前記支軸を挿通した状態で前記一対の鋏体の間に挟装した中間刃体と、下端側を該中間刃体の下端側とピン結合し、先端側を前記各鋏体の柄部にピン結合した一対の連動腕とからなる。
【0009】
そして、前記中間刃体は、厚さを約2乃至4mmに設定するとよい。
【0010】
また、前記一対の鋏体、中間刃体及び一対の連動腕は四辺形リンクを構成し、該中間刃体に対して一対の鋏体が直線方向に変位しながら交わるようにするとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)ジッパー付フィルム袋のジッパーより先端側の位置で、一側フィルムと他側フィルムを中間刃体の厚さ分のズレ部が存するように切断するので、開封者はズレ部に指先を差し込むことによりフィルム袋のジッパーを容易に確実に開封することができる。
(2)中間刃体は、厚さを約2乃至4mmに設定し、一側フィルムと他側フィルムの両切断縁に確実にズレ部が存するようにしたから、老人、子供或いは指先の不自由な人も指先を容易に差し込むことができ、確実に開封することができる。
(3)一対の鋏体、中間刃体及び一対の連動腕によって四辺形リンクを構成し、中間刃体に対して一対の鋏体が直線方向に変位しながら交わるようにしたから、2枚のフィルムを剪断ではなく、切り込むようにして切断するので切断抵抗が小さく、大きな力を入れなくても容易に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1乃至図5は本発明の実施の形態に係り、図1はジッパー付フィルム袋用鋏の正面図である。
【図2】ジッパー付フィルム袋用鋏を開いた状態の正面図である。
【図3】ジッパー付フィルム袋の開封手順を示し、フィルム袋の角部を切断する説明図である。
【図4】ジッパー付フィルム袋を切断する説明図である。
【図5】ジッパー付フィルム袋の切断状態の説明図である。
【図6】既存のジッパー付フィルム袋の一部を破断した説明図である。
【図7】ジッパー付フィルム袋の開封時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図5に基づき詳述する。図において、1は鋏本体、2は該鋏本体1を構成する一側鋏体で、該一側鋏体2は長手方向一側の輪形持ち手部2Aと、該輪形持ち手部2Aから伸長する柄部2Bと、該柄部2Bの先端に形成した長手方向他側の刃部2Cとからなり、該刃部2Cの内側縁には切込み刃2Dが形成してある。
【0014】
3は前記一側鋏体2と対向する他側鋏体で、該他側鋏体3は長手方向一側の輪形持ち手部3Aと、該輪形持ち手部3Aの内側に形成した突起部3Bと、輪形持ち手部3Aから伸長する柄部3Cと、該柄部3Cの先端に形成した長手方向他側の刃部3Dとからなり、該刃部3Dの内側縁には切込み刃3Eが形成してある。そして、一側鋏体2と他側鋏体3は、柄部2B、3Cに挿着した支軸4で間隙を存して連結してあり、互いに回動可能になっている。
【0015】
5は一側鋏体2と他側鋏体3との間隙に挟装した中間刃体で、該中間刃体5は厚さが約2乃至4mmの長板からなる本体5Aと、該本体5Aの略中間に長手方向に沿って形成し、前記支軸4が摺動可能な長孔5Bと、該長孔5Bの横方から先端にかけて本体5Aの両側縁に両刃剣のように形成した一側受け刃5C及び他側受け刃5Dとからなっている。
【0016】
6、6は一側鋏体2、他側鋏体3及び前記中間刃体5に連結した左右一対の連動腕を示す。該連動腕6、6は各基端側6Aと中間刃体5の下端側5Eを連結ピン7で軸着し、先端側6Bを一側鋏体2と他側鋏体3の各柄部2B、3Cに係合ピン8、8で連結してあり、一側鋏体2、他側鋏体3、中間刃体5及び一対の連動腕6、6によって四辺形リンクを構成している。
【0017】
かくして、一側鋏体2と他側鋏体3は支軸4を支点にして左右同じ角度で矢示イ、ロ方向に開閉し、また連結ピン7で連結した連動腕6、6の基端側6A、6Aは、左右の鋏本体2、3が拡開することにより前方に変位し、中間刃体5も矢示ハ方向の前方に直線的に変位し、左右の鋏本体2、3の支軸4も長孔5B内を摺動して前方に変位する。これら一連の連動は、一側鋏体2、他側鋏体3、中間刃体5及び一対の連動腕6、6が四辺形リンクを構成しているので、安定性よく円滑に作動することができる。
【0018】
本実施の形態に係るフィルム袋用鋏は上述の構成からなるもので、上述したフィルム袋51を開封する場合の作用について説明する。先ず、図3に示すように、フィルム袋51の上端側両角隅51C、51Cを三角片51D、51Dに切落として一側フィルム52と他側フィルム53との間に開口51Eを形成する。この開口51Eに中間刃体5を差し込み(図4参照)、鋏本体2、3を開閉操作して一側フィルム52は中間刃体5と一方の鋏体2により、他側フィルム53は中間刃体5と他側の鋏体3により、ジッパー54より先端側のフィルム袋51を同時に切断する。
【0019】
これにより、一側フィルム52の切断縁52Bと他側フィルム53の切断縁53Bは中間刃体5の厚さの約2〜4mm分のズレ部55を存して切断されるから(図5参照)、開封者はこのズレ部55に指先を差込んで両フィルム52、53の端部を開くことにより容易にジッパー54を開封することができる。
【0020】
また、上記切断の際、中間刃体5の一側受け刃5Dに対して両鋏体2、3の切込み刃2D、3Eは剪断するのではなく、前進しながら交わって切断するので、フィルム52、53に対して切込み刃2D、3Eは抵抗無く切り込むことが出来るフィルム袋51を大きな力を入れることなく容易に切断することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 鋏本体
2、3 鋏体
2A、3A 輪形持ち手部
2B、3C 柄部
2C、3D 刃部
2D、3E 切込み刃
4 支軸
5 中間刃体
5A 本体
5B 長孔
5C、5D 受け刃
5E 下端側
6 連動腕
6A 基端側
6B 先端側
51 ジッパー付きフィルム袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向一側が持ち手部になり、柄部を介して他側が刃部になり、該刃部の内側縁に切込み刃が形成してある一対の鋏体を支軸により回動可能に連結した鋏本体と、前記支軸が前後方向に変位可能に挿嵌する長孔及び両側縁に前記各鋏体の切込み刃と交わる受け刃を有し、前記長孔に前記支軸を挿通した状態で前記一対の鋏体の間に挟装した中間刃体と、基端側を該中間刃体の下端側とピン結合し、先端側を前記各鋏体の柄部にピン結合した一対の連動腕とから構成してなるジッパー付フィルム袋用鋏。
【請求項2】
前記中間刃体は、厚さを約2乃至4mmに設定してあることを特徴とする請求項1記載のジッパー付フィルム袋用鋏。
【請求項3】
前記一対の鋏体、中間刃体及び一対の連動腕は四辺形リンクを構成し、該中間刃体に対して一対の鋏体が直線方向に変位しながら交わるようにしてあることを特徴とする請求項1記載のジッパー付フィルム袋用鋏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−244839(P2011−244839A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117621(P2010−117621)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(510142014)
【Fターム(参考)】