説明

ジッパー及びジッパー付き包装袋

【課題】本発明の目的は、ジッパーを構成する雄部材及び雌部材の変形を防止し、雄部材と雌部材との嵌合を容易に、かつ、確実にすることができるジッパー及びそのジッパーを取り付けたジッパー付き包装袋を提供することである。
【解決手段】本発明に係るジッパー100は、一対の雄部材20及び雌部材30を、袋体1の開口部5を構成するフィルム2(2a,2b)に向かい合わせに設けて、雄部材及び雌部材が嵌合して咬合部50を形成し、開口部5を再閉鎖可能にするジッパーにおいて、フィルムに、咬合部と平行にガイド40を並設し、ガイドと咬合部の中心50aとの間隔S1を5mm以下とし、かつ、ガイドを咬合部よりも高く形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋体の開口部に設けて、開口部を再閉鎖可能にするジッパー及びそのジッパーを備えるジッパー付き包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、医薬品、部品など各種物品を封入する包装袋として、開口部の内面にジッパーと呼ばれる帯状の構造体を設けた包装袋が利用されている(例えば、特許文献1を参照。)。ジッパーは、一般的に、一対の雄部材と雌部材とを有し、雄部材と雌部材とは、包装袋の開口部を構成するフィルムに向かい合わせに取り付けられている。このようなジッパーは、雄部材と雌部材とが嵌合状態とすることで、包装袋の開口部を閉鎖し、雄部材と雌部材とが非嵌合状態とすることで、包装袋の開口部を開放する。
【0003】
使用者は、包装袋の開口部を閉鎖する時には、指腹(一般的には、親指及び人差指の指腹)を雄部材及び雌部材の背面に押し当てて、挟持したまま、その指先をジッパーの長手方向全域にわたって滑らせることによって、雄部材と雌部材とを嵌合させて咬合部を形成する。こうした開口部を閉鎖する操作を、使用者が容易に、かつ、確実に行うための技術が開示されている(例えば、特許文献2を参照。)。特許文献2に記載の包装袋は、ジッパーの近傍にジッパーと平行に堰状帯を設けたものである。ジッパーの背面を指腹部で挟圧すると、指腹部が、ジッパーと堰状帯との間の窪みに入り込み、窪みに入り込んだ指腹部は、ジッパーと堰状帯とに挟まれた状態で案内規制され、指腹がジッパーの背面ラインから逸脱することを阻止する。
【0004】
また、開口部を閉鎖する操作においては、咬合部が指先によって覆われてしまうために、使用者はジッパーが適切に閉じられたか否かを感知し難くなってしまう。そこで、嵌合状態を容易に感知させる技術が開示されている(例えば、特許文献3又は特許文献4を参照。)。特許文献3及び特許文献4をはじめとするジッパーは、雄部材又は雌部材の少なくとも一方をその長手方向に沿って構造上不連続としている。雄部材と雌部材とが不連続に嵌合するため、使用者は、嵌合する毎に生じる振動又は動揺感を指先で感知し、更には、嵌合する時に生じるカチッという音を聞くことで、ジッパーが適切に閉じられたか否かを判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−511401号公報
【特許文献2】特開2009−196658号公報
【特許文献3】特開平8−58811号公報
【特許文献4】特表平11−501890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ジッパー付き包装袋は、物品の出し入れをしやすくする観点から、開口部の長手方向の長さが長いものが多く見られるようになり、それに合わせてジッパーの長手方向の長さも長くなっている。さらには、包装袋を構成するフィルムは、薄肉化する傾向にある。しかし、腰が弱い薄肉のフィルムを用いた包装袋で、ジッパーの長手方向の長さが長くなるほど、雄部材と雌部材とを挟持した時に、雄部材と雌部材とを適切に嵌合させることが困難となる。雄部材と雌部材との適切な嵌合位置からずれた状態で力強く挟持すると、雄部材及び雌部材は変形しやすい。一旦変形すると、再閉鎖の操作において、雄部材と雌部材とを嵌合させにくくなったり、変形箇所での密閉性が悪くなったり、本来の機能を果たさなくなる場合があった。そこで、雄部材及び雌部材の変形を防止する対策が必要となるが、特許文献1〜特許文献4に記載のジッパー付き包装袋では、このような対策はとられていない。
【0007】
本発明の目的は、ジッパーを構成する雄部材及び雌部材の変形を防止し、雄部材と雌部材との嵌合を容易に、かつ、確実にすることができるジッパー及びそのジッパーを取り付けたジッパー付き包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るジッパーは、一対の雄部材及び雌部材を、袋体の開口部を構成するフィルムに向かい合わせに設けて、前記雄部材及び前記雌部材が嵌合して咬合部を形成し、前記開口部を再閉鎖可能にするジッパーにおいて、前記フィルムに、前記咬合部と平行にガイドを並設し、該ガイドと前記咬合部の中心との間隔を5mm以下とし、かつ、前記ガイドを前記咬合部よりも高く形成することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るジッパーでは、前記ガイドの高さ及び前記ガイドと前記咬合部の中心との間隔を、前記雄部材と前記雌部材とを指腹で押さえた時に、前記ガイドと前記咬合部との間の前記雄部材を設けた側のフィルムと前記雌部材を設けた側のフィルムとが非接触となるように設定することが好ましい。ジッパーを閉鎖する操作において、ガイドと咬合部とを同時に押すこととなり、ジッパーにかかる押圧力を分散することができる。
【0010】
本発明に係るジッパーでは、前記ガイドが、前記咬合部の両脇に少なくとも1本ずつ設けられていることが好ましい。ジッパーの背面が凹型となるため、雄部材と雌部材との嵌合を誘導し、雄部材と雌部材とをより確実に嵌合することができる。
【0011】
本発明に係るジッパーでは、前記ガイドの天面が、平坦面又は溝部を有することが好ましい。指腹が、ガイドから滑り落ちるのを防止することができる。
【0012】
本発明に係るジッパー付き包装袋は、本発明に係るジッパーを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ジッパーを構成する雄部材及び雌部材の変形を防止し、雄部材と雌部材との嵌合を容易に、かつ、確実にすることができるジッパー及びそのジッパーを取り付けたジッパー付き包装袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るジッパーを取り付けた袋体の一例を示す部分平面図である。
【図2】図1のA‐A断面図であり、(a)は嵌合前の状態、(b)は嵌合した状態である。
【図3】袋体に取り付けられたジッパーの形態例を示す斜視図であり、(a)はガイドの天面が平坦面である形態、(b)はガイドの天面が溝部を有する形態である。
【図4】袋体に取り付けられた従来のジッパーを指腹で挟持した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0016】
図1は、本発明に係るジッパーを取り付けた袋体の一例を示す部分平面図である。図2は、図1のA‐A断面図であり、(a)は嵌合前の状態、(b)は嵌合した状態である。本実施形態に係るジッパー100は、一対の雄部材20及び雌部材30を、袋体1の開口部5を構成するフィルム2(2a,2b)に向かい合わせに設けて、雄部材20及び雌部材30が嵌合して咬合部50を形成し、開口部5を再閉鎖可能にするジッパーにおいて、フィルム2に、咬合部50と平行にガイド40を並設し、ガイド40と咬合部50の中心50aとの間隔S1を5mm以下とし、かつ、ガイド40を咬合部50よりも高く形成する。
【0017】
袋体1は、フィルム2(2a,2b)で構成される。フィルム2は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂である。フィルム2の構成は、単層であるか、又は多層であるかを問わない。多層である場合には、熱可塑性樹脂製フィルムが2層以上積層した積層フィルム又は1層以上の熱可塑性樹脂製フィルムとアルミニウム箔、紙、不織布などのシートとを積層した積層フィルムを用いることができる。ガスバリア性の向上を目的として、ガスバリア性フィルムを積層することができる。ガスバリア性フィルムとしては、クレハ社製のベセーラ(登録商標)R、ET‐Rなどの市販品を用いることができる。なお、フィルム2の材質及び構成は、包装される被包装物、使用温度などの諸条件を考慮して、適宜選択可能である。フィルム2の厚さは、特に限定されないが、例えば、総厚で10〜300μmである。
【0018】
袋体1は、開口部5を有する。開口部5を除く周辺には、シール部6が形成されて、収容空間4を形成している。袋体1の形状は、特に限定されず、例えば、三方シール袋、四方シール袋、スタンディングパウチ、ガゼットパウチ又はこれらの変形袋である。
【0019】
開口端辺5cから所定の距離離れた位置には、ジッパー100が設けられ、開口部5を再閉鎖可能としている。ジッパー100と開口端辺5cとの間の部分のフィルム2(2a,2b)は、ジッパー100を開封する時の摘み片3となる。
【0020】
摘み片3には、図1に示すように、開口端辺5cと略平行に延設されて、袋体1の内面側に凸であるアンチスリップリブ9を1本以上設けることが好ましい。アンチスリップリブ9は、指腹が滑るのを防止する役割、摘み片3を補強する役割及びジッパー100の開閉時に摘み片3同士の密着を防止する役割をもつ。アンチスリップリブ9は、摘み片3を構成するフィルム2a,2bに向かい合わせに形成することが好ましい。さらに、開口端辺5c近傍には、アンチスリップリブ9よりも高さが高い強化リブ9aを設けることが好ましい。強化リブ9aは、開口端辺5cのフィルム2(2a,2b)が変形するのを防止することができる。さらに、摘み片3同士の密着を防止して、使用者が容易にジッパー100の開封を行うことができる。
【0021】
ジッパー100は、図2(a)に示すように、袋体1の開口部5を構成する対向する2枚のフィルム2a,2bの内表面2a1,2b1に取り付けられ、一対の雄部材20及び雌部材30を有する。雄部材20と雌部材30とは、図2(b)に示すように、互いに嵌合して咬合部50を形成する。咬合部50は、収容空間4を密閉して、被包装物(不図示)を袋体1内に封入する。
【0022】
雄部材20は、フィルム2aの内表面2a1に雌部材30に向かって突設された足部22と、足部22の上端に幅広に突設された頭部21とを有する。頭部21の断面形状は、雌部材30と係脱可能であれば特に限定されないが、頭部21の下面21bから頭部21の上端部21aに向かって断面が先細になる形状であることが好ましい。このような頭部21の断面形状は、図2に示すような三角形状の他、例えば、台形状、円状、半円状、楕円状又はこれらの変形形状である。足部22の断面形状は、特に限定されないが、図2に示すような四角形状の他、例えば、三角形状、台形状又はこれらの変形形状である。
【0023】
雌部材30は、フィルム2bの内表面2b1に雄部材20に向かって突設され、対向する第一側片31及び第二側片32を有する。第一側片31と第二側片32との間には、凹部33が形成されている。凹部33の形状は、雄部材20の頭部21を収容可能な形状であればよく、頭部21と異なる形状とするか、又は同じ形状としてもよい。第一側片31の端部31a及び第二側片32の端部32aは、互いに近接する方向に鉤状に屈曲しており、凹部33の入口の間隔S3は、頭部21の下面21bの幅(図2の左右方向の寸法)W2よりも狭く形成されていることが好ましい。鉤状の第一側片31の端部31a,第二側片32の端部32aが、凹部33に嵌入した頭部21の下面21bに掛合して、雄部材20と雌部材30との嵌合状態を保持することができる。
【0024】
ジッパー100は、更に、咬合部50と平行にフィルム2に並設されたガイド40を有する。ガイド40は、咬合部50を形成時において、対向する2枚のフィルム2a,2b間を支持する役割をもつ。ガイド40は、雄部材20を設けた側のフィルム2aの内表面2a1若しくは雌部材30を設けた側のフィルム2bの内表面2b1のいずれか一方又は両方に突設される。ガイド40の形態例としては、雄部材20側及び雌部材30側にそれぞれ対面して設けた突条同士を上端で当接してガイド40を形成する形態、又は図2(a)に示すように、ガイド40と対面するフィルム(ガイド40を突設した側のフィルム2aと対向するフィルム)2bの内表面2b1が平坦面であり、該平坦面にガイド40の天面40aが当接する形態である。本実施形態では、後者の形態であることがより好ましい。前者の形態では、突条の上端の幅が狭いと、突条同士を当接させるのが困難となる場合があり、又は当接させても押圧力が与えられることで当接部が横ずれするおそれがあり、ガイド40の役割を果たさない場合があるところ、後者の形態とすることで、ガイド40が当接部を有さないため、対向する2枚のフィルム2a,2b間をより安定的に支持することができる。
【0025】
図3は、袋体に取り付けられたジッパーの形態例を示す斜視図であり、(a)はガイドの天面が平坦面である形態、(b)はガイドの天面が溝部を有する形態である。ガイド40の断面形状は、特に限定されないが、例えば、四角形状、台形状、半円状、円状、楕円状、三角形状又はこれらの変形形状である。本実施形態に係るジッパー100では、ガイド40の天面40aが、平坦面であることが好ましい。例えば、断面形状が三角形状のようにガイド40とフィルム2とが線で接する形状では、指腹がガイド40から滑りやすく、安定して挟圧するのが困難であるのに対して、図3(a)に示すようにガイド40フィルム2とが平坦面で接する形状では、指腹をガイドの天面40aに乗せて、安定して挟圧することができる。このようなガイド40の形状は、図3(a)に示す四角形状の他、例えば、台形状である。
【0026】
本実施形態に係るジッパー100では、図3(b)に示すように、ガイド41の天面41aが、溝部41bを有することが好ましい。ガイド41の天面41aが、溝部41bを形成することで、天面41aに段差ができるため、指腹が滑るのを更に防止して、より安定して挟圧することができる。天面41aに溝部41bを有する形態は、図3(b)にしめすような断面四角形状の上部に溝部41bを形成する形態の他、雌部材30と同様の形状で、高さT4が高い形態を包含する。この場合には、雌部材30の鉤状に屈曲した第一側片の端部31aと第二側片32の端部32aとが断面視で2点支持体を形成して指腹の滑り落ちを防止し、安定して挟圧することができる。
【0027】
ガイド40の天面40aの幅(図3の左右方向の寸法)Gは、0.5mm以上であることが好ましい。より好ましくは、1.0mm以上である。0.5mm未満では、指腹がガイド40から滑りやすくなる場合がある。また、ガイド40の強度が不足する場合がある。ガイド40の天面40aの幅Gの上限値は、袋体1との見た目のバランスの点で、2.0mmとすることが好ましい。より好ましくは、1.5mmである。
【0028】
ガイド40と咬合部50の中心50aとの間隔S1は、5mm以下である。より好ましくは、3mm以下であり、特に好ましくは、2mm以下である。ここで、ガイド40と咬合部50の中心50aとの間隔S1は、ガイド40の咬合部50側の側面と咬合部50との最短距離である。ガイド40と咬合部50の中心50aとの間隔S1を前記範囲とすることで、ジッパー100を閉鎖する操作において、ガイド40と咬合部50とを同時に押すこととなり、ジッパー100にかかる押圧力を分散することができる。結果として、雄部材20又は雌部材30の変形を防止することができる。さらに、指腹がガイド40と咬合部50との間に深く入り込むのを防止することができ、指腹が雄部材20及び雌部材30に与える力Fa,Fbが、雄部材20及び雌部材30が適切に嵌合する方向に働くため、より確実に嵌合することができる。ガイド40と咬合部50の中心50aとの間隔S1が5mmを超えると、ガイド40と咬合部50との間に指腹が入り込んで、咬合部50に過剰な押圧力が与えられ、変形するおそれがある。さらに、指腹が雄部材20及び雌部材30に与える力Fa,Fbが、雄部材20及び雌部材30が適切に嵌合する方向とは違う方向に働く場合があり、雄部材20と雌部材30とが不適切な位置で接した状態で力強く挟持すると、雄部材20及び雌部材30が変形するおそれがある。さらに、変形によって、雄部材20と雌部材30とが嵌合しにくくなる、変形箇所での密閉性が悪くなるなど、ジッパーとしての本来の機能を果たさなくなる場合がある。
【0029】
さらに、ガイド40の高さ(図2の上下方向の寸法)T4は、咬合部50の高さT5よりも高く形成する。ガイド40の高さT4は、0.5mmを超え3.0mm以下であることが好ましく、1.0mmを超え2.5mm以下であることがより好ましい。咬合部40の高さT5は、0.5mm以上3.0mm未満であることが好ましく、1.0mm以上2.5mm未満であることがより好ましい。
【0030】
ガイド40の高さT4と咬合部50の高さT5との比(T4/T5)は、1.0を超え1.5以下であることが好ましい。より好ましくは、1.2以上1.3以下である。T4/T5が、1.0以下では、咬合部50に過剰な押圧力が加わったときに、雄部材20又は雌部材30が変形する場合がある。T4/T5が、1.5を超えると、咬合部50を形成することが困難となる場合がある。
【0031】
本実施形態に係るジッパー100では、ガイド40の高さT4及びガイド40と咬合部50の中心50aとの間隔S1を、雄部材20と雌部材30とを指腹で押さえた時に、ガイド40と咬合部50との間の雄部材20を設けた側のフィルム2aと雌部材30を設けた側のフィルム2bとが非接触となるように設定することが好ましい。ガイド40と咬合部50との間に指腹が深く入り込んで、ガイド40と咬合部50との間の雄部材20を設けた側のフィルム2aと雌部材30を設けた側のフィルム2bとが接触すると、指腹が雄部材20及び雌部材30に与える力Fa,Fbが、雄部材20及び雌部材30が適切に嵌合する方向とは違う方向に働きやすくなり、ジッパー掛けを確実に行うことができない場合がある。これに対して、ガイド40と咬合部50との間の雄部材20を設けた側のフィルム2aと雌部材30を設けた側のフィルム2bとが非接触になるように設定することで、ガイド40と咬合部50とを同時に押すこととなり、かつ、ガイド40と咬合部50との間に指腹が深く入り込むのを防止することができるため、前述の効果を奏することができる。
【0032】
図4は、袋体に取り付けられた従来のジッパーを指腹で挟持した状態を示す断面図である。従来のジッパー900は、ガイド40を有さないため、図4に示すように、雄部材12及び雌部材13を指腹で挟圧すると、雄部材12及び雌部材13の背面が凸となり、指腹で雄部材12及び雌部材13を押し当てたままでジッパー900の長手方向にわたって滑らせると、指腹が、雄部材12及び雌部材13の背面から逸脱しやすい。さらに、指腹が雄部材12及び雌部材13に与える力Fa,Fbが、雄部材12及び雌部材13が適切に嵌合する方向とは違う方向に働く場合があり、雄部材12と雌部材13とが不適切な位置で接した状態で力強く挟持すると、雄部材12及び雌部材13が変形するおそれがある。特許文献2の図1〜図4に示された形態のように、ガイド(堰状帯)と咬合部との間隔が大きすぎても、同様のことが生じてしまう。
【0033】
このような従来のジッパーに対して、本実施形態に係るジッパー100では、ガイド40の高さT4及びガイド40と咬合部50の中心50aとの間隔S1を前記のとおり設定した上で、ガイド40が、咬合部50の両脇に少なくとも1本ずつ設けられていることが好ましい。このようにガイド40を配置することで、2本のガイド40間において、フィルム2a,2bが袋体1の内側に撓む。フィルム2a,2bが袋体1の内側に撓むと、雄部材20と雌部材30とが、互いに近接する方向に押し出されるため、指腹が雄部材20及び雌部材30に与える力Fa,Fbが、雄部材20及び雌部材30が適切に嵌合する方向に働く。このように、雄部材20と雌部材30との嵌合が誘導され、雄部材20と雌部材30とを容易に、かつ、確実に嵌合することができる。結果として、雄部材20又は雌部材30の変形を防止することができる。さらに、図2(b)に示すように、雄部材20及び雌部材30の背面が凹となる。これによって、指腹で雄部材20及び雌部材30を挟圧しながらジッパー100の長手方向にわたって滑らせても、指腹が雄部材20及び雌部材30の背面から逸脱するのを防止して、雄部材20と雌部材30とを容易に、かつ、確実に嵌合することができる。なお、図2では、ガイド40を、咬合部50の両脇に1本ずつ設けた形態を示したが、本実施形態はこの形態に限定されず、咬合部50の両脇に2本以上のガイド40を設ける形態としてもよい。このような形態は、例えば、ガイド40を咬合部50の両脇に2本ずつ設ける形態、ガイド40を咬合部50よりも摘み片3側に2本及び収容空間4側に1本設ける形態である。
【0034】
雄部材20、雌部材30又はガイド40の材料は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン‐酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン‐メタクリル酸共重合体樹脂である。一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。また、雄部材20、雌部材30又はガイド40の材料は、同質とするか、又は異質とするかを問わない。
【0035】
本実施形態に係るジッパー付き包装袋10は、本実施形態に係るジッパー100を備える。本実施形態に係るジッパー100は、前述のとおり、ジッパー100を構成する雄部材20及び雌部材30の変形を防止し、雄部材20と雌部材30との嵌合を容易に、かつ、確実にすることができるため、本実施形態に係るジッパー付き包装袋10は、閉鎖及び開封を繰り返す用途に特に適している。
【0036】
本実施形態に係るジッパー付き包装袋10では、咬合部50を1本だけ有することが好ましい。ジッパー付き包装袋10の製造時の品質管理において、咬合部50の嵌合状態の検査は、一般に、開口端辺5c側からセンサを用いて検査するが、咬合部50が2本以上あると、現行の品質管理方法では、開口端辺5c側の1つだけが検査可能であり、それよりも収容空間4側に配置された咬合部の嵌合状態は検査することができない。
【0037】
次に、本実施形態に係るジッパー付き包装袋の製造方法を、図1及び図2に示したジッパー付き包装袋10の製造方法を例にとって説明する。まず、雄部材20と雄部材20の両脇にガイド40を1本ずつとを有する雄部材側テープを、公知の押出成形機を用いて熱可塑性樹脂で一体成形する。一方、雌部材30を有する雌部材側テープを成形する。次いで、雄部材側テープと雌部材側テープとを内面に挟む状態で、袋体1を構成するフィルム2(2a,2b)を重ね合わせる。ここで、フィルム2(2a,2b)は、表裏2枚のフィルムを重ね合わせるか、又は1枚のフィルムを中央部で折り返して重ね合わせてもよい。これを所定の間隔を有するテープ取付用シールバーの間に通す。テープ取付用シールバーは、フィルム2(2a,2b)を外側から押圧するとともに、熱を加える。これによって、雄部材側テープが、フィルム2aに熱融着され、雌部材側テープがフィルム2bに熱融着されて、ジッパー100が袋体1に取り付けられる。その後、雄部材20と雌部材30とを嵌合する。最後に、周辺を密閉シール用のシールバーで熱融着して、シール部6を形成して、ジッパー付き包装袋10を得ることができる。
【0038】
なお、ここではジッパー100と袋体1とが別体である場合について説明したが、本実施形態では、ジッパー100と袋体1とが別体であるか、又は一体であるかを問わない。ジッパー100と袋体1とが一体である場合には、各種テープの成形に代えて、金型を用いて、袋体1を構成するフィルム2に雄部材20、雌部材30及びガイド40を成形することで、製造することができる。また、別体とする場合には、袋体1との接着強度を得る上で、ジッパー100の材料をフィルム2の内表面2a1,2b1を構成する材料と同質とすることが好ましい。
【0039】
また、雄部材側テープとして雄部材20とガイド40とを一体成形する場合について説明したが、本実施形態では、雄部材20を有する雄部材テープとガイド40を有するガイドテープとを別体で成形して、雄部材テープとガイドテープとを並列して取り付けてもよい。
【0040】
雄部材20及び雌部材30は、ジッパー100の長手方向にわたって連続的に形成する形態とする他、雄部材20又は雌部材30を断続的に形成する形態とすることができる。雄部材20又は雌部材30を断続的に形成することで、雄部材20と雌部材30とが不連続に嵌合するため、雄部材20と雌部材30とが嵌合するごとに生じる変位を使用者の指先が感知して、更には嵌合するごとの変位に伴う音を使用者が聞くことによって、ジッパー100が適切に閉じられたか否かを触感又は音感に基づいて感知することができる。
【0041】
図2では、雄部材20が左右対称形である形態を示したが、本実施形態はこれに限定されず、雄部材20を左右非対称形とすることができる。雄部材20を左右非対称形とする場合には、収容空間4側の下面21bの大きさを開口端辺5c側の下面21bの大きさよりも大きくすることが好ましい。このようにすることで、開口端辺5c側からは咬合部50の嵌合を外し易く、収容空間4側からは咬合部50の嵌合を外れにくくすることができるため、意図しない開封を防止しながら、開封したいときには小さな力で開封することができる。
【0042】
図2では、雌部材30を構成する第一側片31及び第二側片32が左右対称形である形態を示したが、本実施形態はこれに限定されず、第一側片31及び第二側片32を非対称形とすることができる。
【0043】
図2(a)では、ガイド40を雄部材20側だけに設ける形態を示したが、本実施形態はこれに限定されず、ガイド40を雌部材30側だけに設けるか、又はガイド40を雄部材20側及び雌部材30側の両方に設けることができる。
【0044】
図1〜図3では、ガイド40を咬合部50の両脇に少なくとも1本ずつ設ける形態を示したが、本実施形態はこの配置に限定されず、ガイド40を咬合部50よりも摘み片3側だけに設ける形態又はガイド40を咬合部50よりも収容空間4側だけに設ける形態とすることができる。
【0045】
ガイド40は、少なくとも1本設ければよいが、2本以上を並列して設けてもよい。また、ガイド40の本数は、咬合部50よりも摘み片3側と収容空間4側とで同じ本数とするか、又は異なる本数としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、例えば、食品、薬品、医療品、雑貨などの各種物品を包装するための袋体に用いられるジッパー及びジッパー付き包装袋として好適である。
【符号の説明】
【0047】
1 袋体
2(2a,2b) フィルム
2a1,2b1 フィルムの内表面
2a2,2b2 フィルムの外表面
3 摘み片
4 収容空間
5 開口部
5c 開口端辺
6 シール部
9 アンチスリップリブ
9a 強化リブ
10 ジッパー付き包装袋
20 雄部材
21 頭部
21a 頭部の上端部
21b 頭部の下面
22 足部
30 雌部材
31 第一側片
31a 第一側片の端部
32 第二側片
32a 第二側片の端部
33 凹部
40,41 ガイド
40a,41a ガイドの天面
41b 溝部
50 咬合部
50a 咬合部の中心
100 ジッパー
900 従来のジッパー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の雄部材及び雌部材を、袋体の開口部を構成するフィルムに向かい合わせに設けて、前記雄部材及び前記雌部材が嵌合して咬合部を形成し、前記開口部を再閉鎖可能にするジッパーにおいて、
前記フィルムに、前記咬合部と平行にガイドを並設し、
該ガイドと前記咬合部の中心との間隔を5mm以下とし、かつ、前記ガイドを前記咬合部よりも高く形成することを特徴とするジッパー。
【請求項2】
前記ガイドの高さ及び前記ガイドと前記咬合部の中心との間隔を、前記雄部材と前記雌部材とを指腹で押さえた時に、前記ガイドと前記咬合部との間の前記雄部材を設けた側のフィルムと前記雌部材を設けた側のフィルムとが非接触となるように設定することを特徴とする請求項1に記載のジッパー。
【請求項3】
前記ガイドが、前記咬合部の両脇に少なくとも1本ずつ設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のジッパー。
【請求項4】
前記ガイドの天面が、平坦面又は溝部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のジッパー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載のジッパーを備えることを特徴とするジッパー付き包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−115511(P2012−115511A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268405(P2010−268405)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】