説明

ジッパー及びジッパー袋

【課題】閉じた感覚を指で察知することができつつ閉めやすいジッパー及びジッパー袋を提供する。
【解決手段】ジッパー15は、一方係合部材20と他方係合部材30とを備える。一方係合部材20は、第1のレール21と、第2のレール22と、第1のレール21と第2のレール22との間に設けられた第3のレール23とを有する。他方係合部材30は、ジッパー15を閉じたときに第1のレール21と第3のレール23との間に嵌る第4のレール34と、ジッパー15を閉じたときに第2のレール22と第3のレール23との間に嵌る第5のレール35とを有する。第1のレール21及び第4のレール34の少なくとも一方、又は第2のレール22及び第5のレール35の少なくとも一方に、断続的な窪み35dが形成されている。ジッパー袋10は、袋本体12、13と、ジッパー15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジッパー及びジッパー袋に関し、特に合成樹脂で形成されたレールをかみ合わせて閉じるジッパー及びこのジッパーを用いたジッパー袋に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の保存等に好適に用いられる袋体として、合成樹脂で形成された袋の開口部にジッパーを設け、開口を繰り返し開閉可能に構成したジッパー袋がある。ジッパー袋に食品を入れて保存する際には、密閉性を確保したいという要請がある。ジッパー袋は、ジッパーのかみ合わせを誤ると開口が閉じられないことになるところ、ジッパーの長手方向に延びるかみ合い得る2つの対向するリブ異形材及び溝異形材の少なくとも一方の異形材の、対向する異形材と接触してかみ合い得る長手方向に延びる部分が、その長さに沿って構造上不連続でありかつそこで2つの異形材がかみ合ったときに対向するジッパー異形材と実質的に組み合わされないが互いに接触しているジッパーを採用することで、ジッパーを閉じるときに振動又は動揺感を有することとして、音及び感触の両方でジッパーが閉じたことを確認することができるジッパー袋がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−58811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のジッパー袋は、ジッパーが閉じたことを音及び感触の両方で確認できるため、ジッパーを閉めたつもりが実際には閉められていないという事態を回避することができる反面、不連続構造の部分が密閉性に劣るおそれがある。密閉性を担保するために、不連続構造を有するジッパーとは別に、密閉性の高いジッパーを並行して設けることが考えられるが、2本のジッパーを並行して設けると、各ジッパー間の距離が広くなって、指先で押さえられる範囲から外れてしまい、ジッパーを閉めたときの感触を得にくくなる。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、閉じた感覚を指で察知することができつつ閉めやすいジッパー及びこのジッパーを用いたジッパー袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係るジッパーは、例えば図2に示すように、合成樹脂で形成されたジッパー15であって;ジッパー15が延びる方向に直交するジッパー直交断面に第1の突起として現れる第1のレール21と、第1のレール21に対して平行かつ隣接して設けられてジッパー直交断面に第2の突起として現れる第2のレール22と、第1のレール21と第2のレール22との間に設けられてジッパー直交断面に第3の突起として現れる第3のレール23と、を有する一方係合部材20と;ジッパー15を閉じたときに第1のレール21と第3のレール23との間に嵌ってジッパー直交断面に第4の突起として現れる第4のレール34と、ジッパー15を閉じたときに第2のレール22と第3のレール23との間に嵌ってジッパー直交断面に第5の突起として現れる第5のレール35と、を有する他方係合部材30とを備え;第1のレール21及び第4のレール34の少なくとも一方、又は第2のレール22及び第5のレール35の少なくとも一方に、窪み35dが断続的に形成されている。
【0007】
このように構成すると、第3のレールが第4のレールを挟む部材と第5のレールを挟む部材とを兼ねることとなり、ジッパーの幅が比較的狭くなるので閉じやすい構成でありながら、第1のレール及び第4のレールの少なくとも一方、又は第2のレール及び第5のレールの少なくとも一方に窪みが断続的に形成されているので密閉性を確保しつつ指で閉じた感覚を察知することができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係るジッパーは、例えば図2に示すように、上記本発明の第1の態様に係るジッパーにおいて、他方係合部材30が、開口10hを閉じたときに第4のレール34との間に第1のレール21を嵌める、ジッパー直交断面に第6の突起として現れる第6のレール36を有し;第1のレール21及び第6のレール36の少なくとも一方に、開口10hを閉じたときにジッパー直交断面において第1の突起及び第6の突起のうちの接触する相手方に付勢する密閉突起21sがジッパー15が延びる方向に沿って連続して形成されている。
【0009】
ここで、第1の突起及び第6の突起のうちの接触する相手方に付勢するとは、密閉突起が第1のレールに形成されていて第6のレールとは分離している場合はその密閉突起が第6のレールに対して接触して付勢することを意味し、密閉突起が第6のレールに形成されていて第1のレールとは分離している場合はその密閉突起が第1のレールに対して接触して付勢することを意味している。典型的には、密閉突起は、第1のレールに、袋本体の内部側に突き出て開口を閉じたときにジッパー直交断面において第6の突起に付勢するように第1のレールに沿って連続して形成されている。
【0010】
このように構成すると、ジッパーの密閉性を向上させることができる。なお、第1の突起及び第6の突起のうち密閉突起が形成されていない方の突起のジッパー直交断面における先端に、密閉突起が形成されている突起の側に向けて突出した係合突起が、ジッパーが延びる方向に沿って連続して形成されていてもよい。典型的には、密閉突起が第1のレールに形成されている場合に、ジッパー直交断面における第6の突起の先端に、第4の突起側に突出した係合突起が、第6のレールに沿って連続して形成されていてもよい。
【0011】
また、本発明の第3の態様に係るジッパーは、例えば図2に示すように、合成樹脂で形成されたジッパー15であって;ジッパー15が延びる方向に直交するジッパー直交断面に第1の突起として現れる第1のレール21と、第1のレール21に対して平行かつ隣接して設けられてジッパー直交断面に第2の突起として現れる第2のレール22と、第1のレール21と第2のレール22との間に設けられてジッパー直交断面に第3の突起として現れる第3のレール23と、を有する一方係合部材20と;ジッパー15を閉じたときに第1のレール21と第3のレール23との間に嵌ってジッパー直交断面に第4の突起として現れる第4のレール34と、ジッパー15を閉じたときに第2のレール22と第3のレール23との間に嵌ってジッパー直交断面に第5の突起として現れる第5のレール35と、を有する他方係合部材30とを備え;他方係合部材30が、開口10hを閉じたときに第4のレール34との間に第1のレール21を嵌める、ジッパー直交断面に第6の突起として現れる第6のレール36を有し;第1のレール21及び第6のレール36の少なくとも一方に、開口10hを閉じたときにジッパー直交断面において第1の突起及び第6の突起のうちの接触する相手方に付勢する密閉突起21sがジッパー15が延びる方向に沿って連続して形成され;第1のレール21、第2のレール22、第4のレール34及び第5のレール35のうちの1つ又は複数に、窪み35dが断続的に形成されている。
【0012】
このように構成すると、第3のレールが第4のレールを挟む部材と第5のレールを挟む部材とを兼ねることとなり、ジッパーの幅が比較的狭くなるので閉じやすい構成でありながら、第1のレール及び第6のレールの少なくとも一方に密閉突起が形成され、かつ、第1のレール、第2のレール、第4のレール及び第5のレールのうちの1つ又は複数に窪みが断続的に形成されているので密閉性を確保しつつ指で閉じた感覚を察知することができる。
【0013】
また、本発明の第4の態様に係るジッパー袋は、例えば図1及び図2に示すように、物体を出し入れ可能な開口10hが形成された袋本体11と;上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係るジッパー15とを備え;一方係合部材20が、開口10hを閉じたときに重なる袋本体11の一方の面12に、第1のレール21よりも第2のレール22の方が開口10hの端部側になるように設けられると共に、袋本体11の他方の面13に他方係合部材30が設けられることにより、開口10hが繰り返し開閉可能に構成されている。
【0014】
このように構成すると、閉じやすく、指で閉じた感覚を察知することができる、開口を繰り返し開閉可能な袋となる。
【0015】
また、本発明の第5の態様に係るジッパー袋は、例えば図2に示すように、上記本発明の第4の態様に係るジッパー袋において、窪み35dが、第5のレール35に形成されている。
【0016】
このように構成すると、袋本体に収容された物体が第4のレールと第5のレールとの間に入り込むことを抑制することが可能となり、密閉性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の第6の態様に係るジッパー袋は、例えば図2に示すように、上記本発明の第4の態様又は第5の態様に係るジッパー袋において、他方係合部材30が、開口10hを閉じたときに第5のレール35との間に第2のレール22を嵌める、ジッパー直交断面に第7の突起として現れる第7のレール37を有し;第7のレール37が、開口10hを閉じたときに一方の面12に接触するように構成されている。
【0018】
このように構成すると、ジッパーにおける開口側の密閉性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の第7の態様に係るジッパー袋は、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第4の態様乃至第6の態様のいずれか1つの態様に係るジッパー袋10において、一方係合部材20及び他方係合部材30の、一方は第1の色が着色され、他方は第1の色とは異なる第2の色が着色されると共にジッパー15を閉じたときに第1の色が混ざることにより第1の色及び第2の色とは異なる第3の色となる半透明に構成されている。
【0020】
このように構成すると、ジッパーが閉じたことを、窪みに起因して指に作用する皮膚感覚と、色の変化による視覚との両方で、確認することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第3のレールが第4のレールを挟む部材と第5のレールを挟む部材とを兼ねることとなり、ジッパーの幅が比較的狭くなるので閉じやすい構成でありながら、第1のレール及び第4のレールの少なくとも一方、又は第2のレール及び第5のレールの少なくとも一方に窪みが断続的に形成されているので密閉性を確保しつつ指で閉じた感覚を察知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係るジッパー袋の斜視図である。
【図2】(A)は本発明の実施の形態に係るジッパー袋の部分断面図、(B)は本発明の実施の形態に係るジッパーを構成する裏レールの部分平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るジッパー袋の製造工程を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0024】
まず図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態に係るジッパー15及びジッパー袋10を説明する。図1は、ジッパー袋10の斜視図である。図2(A)はジッパー袋10の部分断面図、図2(B)はジッパー15を構成する他方係合部材としての裏レール30の部分平面図である。ジッパー袋10は、袋本体11と、ジッパー15とを備えている。
【0025】
袋本体11は、合成樹脂で形成された1枚の長方形状のシートを、長手方向の中央で折り返し、対向するシートの、折り返し辺10tに直交する2つの側辺10sで溶着することによって袋状に形成されている。この折り返したシートの、一方が一方の面としての袋表面12となり、残った方が他方の面としての袋裏面13となる。袋本体11を形成する合成樹脂には、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂成形体を用いることができ、これらを用いることで気密性を備えることができる。袋本体11は、折り返し辺10tの反対側が、開口10hとなっている。袋本体11には、開口10hを横断するように、換言すれば開口10hを周回するように、ジッパー15が設けられている。
【0026】
ジッパー15は、スライダーがなく、人の手で着脱する線ファスナーである。ジッパー15は、一方係合部材としての表レール20と、裏レール30とを備えている。表レール20は、第1のレールとしての表内レール21と、第2のレールとしての表外レール22と、第3のレールとしての表中レール23とを有している。裏レール30は、第4のレールとしての裏内レール34と、第5のレールとしての裏外レール35と、第6のレールとしての裏最内レール36と、第7のレールとしての裏最外レール37とを有している。表レール20及び裏レール30は、共に可撓性のある合成樹脂で形成されている。本実施の形態では、表レール20は、半透明の材質で形成されていると共に青色に着色されており、裏レール30は、黄色に着色されている。
【0027】
図2(A)の部分断面図は、ジッパー15が延びる方向であるジッパー延方向E(図1参照)に直交する断面、すなわちジッパー直交断面を示している。ジッパー直交断面において、表内レール21、表外レール22、表中レール23、裏内レール34、裏外レール35、裏最内レール36、及び裏最外レール37は、それぞれ突起として現れている。以下、ジッパー直交断面における表レール20及び裏レール30のより詳細な構成を説明する。なお、以下のジッパー直交断面における説明においては、便宜上、袋表面12又は袋裏面13を基準として高さH方向における袋本体11の内側(対向する袋裏面13又は袋表面12が存在する側)を上(あるいは上方)といい、幅W方向における折り返し辺10t(図1参照)側を内側(内部側)、開口10h側(端部側)を外側ということとする。
【0028】
表レール20は、袋本体11の内側から外側(開口10h側)に向かって、表内レール21、表中レール23、表外レール22の順に配設されている。表レール20の幅Wは、本実施の形態では概ね3〜7mmとなっている。表内レール21は、概略、矩形状の基本形状をなし、矩形の概ね中央から上方の外側(表中レール23側)がえぐれたフック状に形成されている。そして、表内レール21には、その内側の辺の上部からさらに内側に突き出た密閉突起21sが形成されている。表内レール21の高さH方向の長さは、図2(A)では便宜上表レール20の幅Wよりも高く現されているが、本実施の形態では概ね0.1〜0.5mmである。表外レール22は、密閉突起21sを除いた表内レール21と線対称に構成されている。このような構成により、表内レール21及び表外レール22のフック状のえぐれが、対向して共に表中レール23側を向くこととなる。
【0029】
表中レール23は、表内レール21及び表外レール22のようなフック状のえぐれが形成されておらず、細長い長方形状に形成されている。表中レール23は、高さH方向の長さが、表内レール21及び表外レール22以下に形成されており、典型的には、表内レール21(表外レール22)の約0.4〜1.0倍に形成されている。本実施の形態では、この表中レール23の上端が、表内レール21(表外レール22)のフックの先端よりも下がった位置に存在している。表中レール23と表内レール21との間には表内隙間21gが形成され、表中レール23と表外レール22との間には表外隙間22gが形成されている。
【0030】
裏レール30は、袋本体11の内側から外側に向かって、裏最内レール36、裏内レール34、裏外レール35、裏最外レール37の順に配設されている。裏レール30の幅Wは、本実施の形態では概ね3〜7mmとなっている。裏内レール34及び裏外レール35は、表外レール22と同じ形状であるが、配置が表内レール21及び表外レール22の関係とは異なっている。すなわち、裏内レール34及び裏外レール35は、えぐれが形成された面とは反対側の面が相互に向き合う態様で配置されている。これにより、裏内レール34のえぐれは内側を向き、裏外レール35のえぐれは外側を向いている。裏内レール34及び裏外レール35の高さH方向の長さは、図2(A)では便宜上裏レール30の幅Wと同程度になっているが、本実施の形態では、表内レール21と同様、概ね0.1〜0.5mmである。
【0031】
裏最内レール36及び裏最外レール37は、それぞれ、表中レール23と概ね同じ形状になっているが、下記の点で異なっている。裏最内レール36は、上端に、裏内レール34側に突出した係合突起36pが形成されている。裏最内レール36の高さH方向の長さは、裏内レール34(裏外レール35)の約0.4〜1.0倍に形成されている。本実施の形態では、裏最内レール36の上端が、裏内レール34(裏外レール35)のフックの先端よりも下がった位置に存在している。他方、裏最外レール37は、突起が形成されていない点で表中レール23と同じであるが、表中レール23よりも高さH方向に長く形成されている。裏最外レール37の高さH方向の長さは、ジッパー15を閉じたときに上端が袋表面12に接触する長さに形成されており、本実施の形態では裏内レール34の約1.1〜1.5倍に形成されている。裏内レール34と裏外レール35との間には中央隙間33gが形成され、裏内レール34と裏最内レール36との間には裏内隙間34gが形成され、裏外レール35と裏最外レール37との間には裏外隙間35gが形成されている。
【0032】
表レール20と裏レール30とを嵌合させると、すなわちジッパー15を閉じると、表中レール23は中央隙間33gに入り込み、表内レール21は裏内隙間34gに入り込み、裏内レール34は表内隙間21gに入り込み、表外レール22は裏外隙間35gに入り込み、裏外レール35は表外隙間22gに入り込む。このとき、各レール21、22、23、34、35は、その幅W方向の距離が、これらが嵌合する各隙間34g、35g、33g、21g、22gの幅W方向の距離よりも大きくなるように構成され、弾性変形することによって各隙間に入り込むようにするとよい。このようにして、中央隙間33gの幅W方向の距離が表中レール23の幅Wよりも小さく形成され、裏内レール34は内側に、裏外レール35は外側に、それぞれたわむこととなる構造とするのが望ましい。すると、裏内レール34は表内レール21を押し付けることとなり、他方、表内レール21はその内側に裏最内レール36が存在しているために内側への移動が抑制することとなるため、表内レール21と裏内レール34とは相互に力を及ぼし合うこととなる。表内レール21が裏内隙間34gに入り込むと共に裏内レール34が表内隙間21gに入り込んだ際に表内レール21のフックと裏内レール34のフックとが係合することとなるが、表内レール21と裏内レール34とが相互に力を及ぼし合うことにより、系合した表内レール21のフックと裏内レール34のフックとが外れにくくなる。
【0033】
上述の、表内レール21と裏内レール34との相互作用は、表外レール22と裏外レール35との間においても同様に生じることとなる。このとき、裏最外レール37が、裏最内レール36と同様に作用することとなる。なお、表内レール21には密閉突起21sが形成されているため、表内レール21が裏内隙間34gに入り込んだときに密閉突起21sが裏最内レール36に押し付けられるように作用する。これにより、表内レール21と裏内レール34及び裏最内レール36との密閉性が向上することとなる。また、裏最内レール36に形成されている係合突起36pと袋裏面13との間に密閉突起21sが入り込むことで、さらに密閉性を向上させることができる。他方、裏最外レール37が袋表面12に接触することで、開口10h側の密閉性を向上させることができる。
【0034】
次に図2(B)を主に参照し、図2(A)及び図1も適宜参照して、ジッパー延方向Eにおける裏レール30の構成を説明する。ジッパー延方向Eにおいて、裏外レール35には、窪み35dが断続的に形成されている。窪み35dは、裏外レール35の上端から下方に向かって形成されている。窪み35dの深さ(高さH方向の距離)は、裏外レール35自体の上端とフックを形成するえぐれの上端との距離の、1/3〜2/3程度になっている。窪み35dの長さである窪み長さ35dL(ジッパー延方向Eの距離)は、適宜決定することができるが、ジッパー15を閉じたときの密閉性の低下を抑制する観点から、1mm以下とするとよく、0.3〜0.9mmがより好ましく、本実施の形態では0.7mmとなっている。また、本実施の形態では、ジッパー延方向Eにおいて、窪み35dが等間隔で形成されている。隣接する窪み35dの間の距離、換言すれば、窪み35dが形成されていない突部35pの長さである突部長さ35pLは、窪み長さ35dL以上であり、ジッパー15を閉じたときの密閉性を向上させる観点からは、窪み長さ35dLの1.5倍以上とするとよく、2倍以上とするのがより好ましく、3倍以上とするのがさらに好ましい。本実施の形態では2.5mmとなっている。このように、窪み長さ35dLが1mm以下で、突部長さ35pLが窪み長さ35dLの1.5倍以上に形成されていると、ジッパー15を閉じるときの表レール20と裏レール30との嵌合の衝撃の指への返りが低減されるために指への負担が軽減されると共に、開口を閉じたときの密閉性の低下を抑制することができる。また、本実施の形態では、裏外レール35以外のレール21、22、23、34、36、37は、窪みのような不連続構造が形成されておらず、円滑に形成されている。
【0035】
上述のように構成されたジッパー袋10において、ジッパー15を閉める際は、最初にジッパー15の端(袋本体11の一方の側辺10s付近)で表レール20と裏レール30とを指先で挟み込むように摘んで嵌合させ、次いで、指先を摘んだままジッパー延方向Eに摺動させる。これにより、指先の動きに沿って、表レール20と裏レール30とが順次嵌合することとなる。このとき、裏外レール35に窪み35dが所定の間隔で形成されているので、指先を摺動させたときにプチプチという感覚(微小な振動)が指先に伝わり、ジッパー15が閉じられていることを実感することができる。仮に、表レール20と裏レール30とが嵌合していないときは、このプチプチ感を実感することができない。プチプチ感は、その有無を感じられれば足りるため、本実施の形態では窪み35dの深さを比較的浅く形成しており、ジッパー15を閉じたときの密閉性の低下を抑制している。さらに、窪み35dは、裏外レール35に形成され、裏内レール34には形成されていないので、裏内レール34で密閉性を確保することができ、袋本体11に液体状のものを入れることにも適している。
【0036】
また、ジッパー15は、表レール20及び裏レール30の幅Wが共に3〜7mm程度と小さめに形成されているので、指先で摘んだときの指が接触する面積が比較的小さくて足りる。このことにより、ジッパー15を閉める際に摘んだ指先の形状を自然な形の円状に(例えば親指と人差し指とで摘む場合に親指と人差し指とで輪をつくるように)することができ、指先に力を入れやすくなる。仮に、ジッパー15の幅Wが大きいとすると、指先で摘んだときの指が接触する面積を大きくするために、それぞれの指の第1関節程度までを接触させるようにすることとなるため、指先に力が入りにくく、ジッパー15を閉めにくくなる。
【0037】
さらに、ジッパー15は、表レール20が青色の半透明に、裏レール30が黄色に形成されているので、表レール20と裏レール30とが嵌合したときに、裏レール30の黄色が表レール20の青色に映り込んで、表レール20が緑色に見える。つまり、表レール20と裏レール30とが嵌合したときの表レール20の色は、もともとの表レール20の青色でも裏レール30の黄色でもない、緑色に見える。この色の変化によって、ジッパー15が閉じたことが視覚でも把握することができることとなり、指先のプチプチ感と併せて、ジッパー15が閉じたことを2つの感覚で確認することができる。なお、ジッパー15を開けるのは、袋本体11の開口10h側の端部を、袋表面12側を一方の手の指先で、袋裏面13側を他方の手の指先でそれぞれ摘み、両方の手を相互に離れる方向に動かすことで、容易に行うことができる。
【0038】
次に、図3のフローチャートを参照して、ジッパー袋10の製造方法を説明する。まず、袋本体11並びに表レール20及び裏レール30の原料である合成樹脂原料を押出機に投入して溶融する(St1)。押出機の吐出部には、サーキュラーダイ及びジッパー用ダイが設けられている。溶融した合成樹脂原料は、サーキュラーダイにより、袋本体11となる合成樹脂シートが円筒状で押し出される(シート押出成形工程、St2)。さらに、溶融した合成樹脂原料は、ジッパー用ダイにより、ジッパー15となる合成樹脂材であるジッパー樹脂が、着色されたうえで押し出され、円筒状で押し出された合成樹脂シートに、その長手方向に沿って接合される(ジッパー接合工程、St3)。
【0039】
合成樹脂シートにジッパー樹脂が接合されたら、裏レール30となる部分のジッパー樹脂に窪み形成ローラーを押し当てて、裏外レール35となる部分に窪み35dを断続的に形成する(窪み形成工程、St4)。窪み形成ローラーは、円筒状の側面に、窪み35dに対応する突起が形成されたローラーである。ジッパー樹脂が接合された合成樹脂シートは、窪み形成ローラーの下流側に設けられたピンチローラーにより上向きに引っ張られながら円筒が押しつぶされる(ピンチ工程、St5)。ピンチローラーでピンチされた(引っ張られながら円筒がつぶされた)合成樹脂シートは、歪みが取り除かれ、ピンチローラーの下流側で、フラット状に折り畳まれた状態で、ジッパー樹脂より外側で、円筒状の長手方向に沿った切断が行われる(切断工程、St6)。さらに、ジッパー袋10の大きさに溶断され、シールされる(溶断シール工程、St7)。ここで溶断される間隔は、ジッパー袋10の両側辺10s(図1参照)の間隔である。また、溶断されたジッパー袋10の両側辺10sに対応する部分は、溶断に伴う熱溶着によりシールされる。これらの切断工程(St6)及び溶断シール工程(St7)により、開口10hが形成され、ジッパー袋10となる。両側辺10sがシールされたジッパー袋10は、その下流側の工程で、両側辺10sのシール部分及びジッパー15部分のチェックが行われたうえで、出荷用に梱包される。なお、切断工程(St6)と溶断シール工程(St7)とは、同時に行われてもよく、溶断シール工程(St7)が切断工程(St6)よりも先に行われてもよい。
【0040】
上述のように製造されるジッパー袋10では、窪み形成ローラーで窪み35dが形成されるため、裏内レール34と裏外レール35とが3〜7mm以内に近接していても裏外レール35にのみ窪み35dを形成することができ、ジッパー15の幅が比較的狭くて閉めやすい構造でありながら、ジッパー15を閉めたことが実感できるプチプチ感を得ることができる。
【0041】
以上の説明では、断続的に形成される窪みが裏外レール35のみに形成されているとしたが、裏最内レール36及び/又は裏最外レール37が設けられていて密閉性が確保できる場合は、表内レール21、表外レール22、裏内レール34、及び裏外レール35のうちの1つ又は複数のレールに窪みが断続的に形成されていてもよい。このように、1つ又は複数のレールに窪みが断続的に形成されることを許容する前提として、裏最内レール36及び/又は裏最外レール37が設けられることに代えて、中央隙間33gの幅W方向の距離が表中レール23の幅W方向の距離よりも小さくなるように形成して表中レール23が中央隙間33gに入り込んだときに嵌合したレールが弾性変形するように構成することとしてもよい。しかしながら、袋本体11に液体状のものを収納したときに密閉性を向上させる観点からは裏外レール35又は表外レール22に窪みが形成されていることが好ましく、ジッパー15を閉じたときのたわみが小さくなって窪みが相手方のレールと衝突した際の振動を大きくする観点からは裏外レール35又裏内レール34に窪みが形成されていることが好ましい。これらを勘案すると、窪みは裏外レール35に形成されているのが好ましい。
【0042】
以上の説明では、裏レール30が裏最内レール36及び裏最外レール37を有しているとしたが、ジッパー15を閉じたときに、表内レール21、表外レール22、表中レール23、裏内レール34、及び裏外レール35が嵌合することで密閉性を確保できる場合は、裏最内レール36及び裏最外レール37の両方又は一方を省略してもよい。しかしながら、このような場合であっても、裏最内レール36及び裏最外レール37の両方又は一方を設けることにより、密閉性を向上させることができる。なお、裏最内レール36及び裏最外レール37を設けなくても密閉性を確保できる例として、窪みを裏外レール35及び表外レール22の少なくとも一方、又は裏内レール34及び表内レール21の少なくとも一方に形成して袋表面12から袋裏面13にジッパー15を介して辿ったときに窪みが形成されていないルートが形成されるようにすること、あるいは、中央隙間33gの幅W方向の距離が表中レール23の幅W方向の距離よりも小さくなるように形成して表中レール23が中央隙間33gに入り込んだときに嵌合したレールが弾性変形するように構成することが挙げられる。
【0043】
以上の説明では、密閉突起が表内レール21に形成されているとしたが、表内レール21に代えて、又は表内レール21と共に、裏最内レール36に形成されていてもよい。
【0044】
以上の説明では、表レール20が半透明であり、裏レール30は半透明ではないとしたが、表レールが半透明ではなく裏レール30が半透明であることとしてもよく、表レール及び裏レール30が共に半透明であってもよい。また、表レール20が青色で裏レール30が黄色であるとしたが、表レール20及び裏レール30の色を相互に入れ替えてもよく、あるいは、それぞれ又はどちらか一方を異なる色としてもよい(青色及び黄色以外の色の組み合わせでもよい)。
【符号の説明】
【0045】
10 ジッパー袋
10h 開口
11 袋本体
12 袋表面
13 袋裏面
15 ジッパー
20 表レール
21 表内レール
21s 密閉突起
22 表外レール
23 表中レール
30 裏レール
34 裏内レール
35 裏外レール
35d 窪み
35dL 窪み長さ
35pL 突部長さ
36 裏最内レール
36p 係合突起
37 裏最外レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂で形成されたジッパーであって;
前記ジッパーが延びる方向に直交するジッパー直交断面に第1の突起として現れる第1のレールと、前記第1のレールに対して平行かつ隣接して設けられて前記ジッパー直交断面に第2の突起として現れる第2のレールと、前記第1のレールと前記第2のレールとの間に設けられて前記ジッパー直交断面に第3の突起として現れる第3のレールと、を有する一方係合部材と;
前記ジッパーを閉じたときに前記第1のレールと前記第3のレールとの間に嵌って前記ジッパー直交断面に第4の突起として現れる第4のレールと、前記ジッパーを閉じたときに前記第2のレールと前記第3のレールとの間に嵌って前記ジッパー直交断面に第5の突起として現れる第5のレールと、を有する他方係合部材とを備え;
前記第1のレール及び前記第4のレールの少なくとも一方、又は前記第2のレール及び前記第5のレールの少なくとも一方に、窪みが断続的に形成された;
ジッパー。
【請求項2】
前記他方係合部材が、前記開口を閉じたときに前記第4のレールとの間に前記第1のレールを嵌める、前記ジッパー直交断面に第6の突起として現れる第6のレールを有し;
前記第1のレール及び前記第6のレールの少なくとも一方に、前記開口を閉じたときに前記ジッパー直交断面において前記第1の突起及び前記第6の突起のうちの接触する相手方に付勢する密閉突起が前記ジッパーが延びる方向に沿って連続して形成された;
請求項1に記載のジッパー。
【請求項3】
合成樹脂で形成されたジッパーであって;
前記ジッパーが延びる方向に直交するジッパー直交断面に第1の突起として現れる第1のレールと、前記第1のレールに対して平行かつ隣接して設けられて前記ジッパー直交断面に第2の突起として現れる第2のレールと、前記第1のレールと前記第2のレールとの間に設けられて前記ジッパー直交断面に第3の突起として現れる第3のレールと、を有する一方係合部材と;
前記ジッパーを閉じたときに前記第1のレールと前記第3のレールとの間に嵌って前記ジッパー直交断面に第4の突起として現れる第4のレールと、前記ジッパーを閉じたときに前記第2のレールと前記第3のレールとの間に嵌って前記ジッパー直交断面に第5の突起として現れる第5のレールと、を有する他方係合部材とを備え;
前記他方係合部材が、前記開口を閉じたときに前記第4のレールとの間に前記第1のレールを嵌める、前記ジッパー直交断面に第6の突起として現れる第6のレールを有し;
前記第1のレール及び前記第6のレールの少なくとも一方に、前記開口を閉じたときに前記ジッパー直交断面において前記第1の突起及び前記第6の突起のうちの接触する相手方に付勢する密閉突起が前記ジッパーが延びる方向に沿って連続して形成され;
前記第1のレール、前記第2のレール、前記第4のレール及び前記第5のレールのうちの1つ又は複数に、窪みが断続的に形成された;
ジッパー。
【請求項4】
物体を出し入れ可能な開口が形成された袋本体と;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のジッパーとを備え;
前記一方係合部材が、前記開口を閉じたときに重なる前記袋本体の一方の面に、前記第1のレールよりも前記第2のレールの方が前記開口の端部側になるように設けられると共に、前記袋本体の他方の面に前記他方係合部材が設けられることにより、前記開口が繰り返し開閉可能に構成された;
ジッパー袋。
【請求項5】
前記窪みが、前記第5のレールに形成された;
請求項4に記載のジッパー袋。
【請求項6】
前記他方係合部材が、前記開口を閉じたときに前記第5のレールとの間に前記第2のレールを嵌める、前記ジッパー直交断面に第7の突起として現れる第7のレールを有し;
前記第7のレールが、前記開口を閉じたときに前記一方の面に接触するように構成された;
請求項4又は請求項5に記載のジッパー袋。
【請求項7】
前記一方係合部材及び前記他方係合部材の、一方は第1の色が着色され、他方は前記第1の色とは異なる第2の色が着色されると共に前記ジッパーを閉じたときに前記第1の色が混ざることにより前記第1の色及び前記第2の色とは異なる第3の色となる半透明に構成された;
請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のジッパー袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−14354(P2013−14354A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147763(P2011−147763)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】