説明

ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチド

本出願は、とりわけ、ジテルペンシンターゼ活性を有する新規ポリペプチド、それをコードする核酸分子、およびプロイロムチリンを産生する生合成経路に関与していると考えられているクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)由来の遺伝子クラスターに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、ジテルペンシンターゼ活性を有する新規ポリペプチド、それをコードする核酸分子、およびクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)由来の遺伝子クラスター(該クラスターは、ジテルペン、より厳密にはプロイロムチリンを産生する生合成経路に関与していると考えられている)に関する。
【背景技術】
【0002】
テルペンおよびテルペノイドは共に、多数の様態で合体し次いで修飾される5炭素イソプレン単位に由来する、大部分は天然に存在する有機化合物の、多様かつ非常に大きなクラスである。テルペンおよびテルペノイドは共に、それらの炭素骨格およびそれらの官能基において互いに異なりうる。テルペンおよびテルペノイドの大多数は1以上の環構造を含む。テルペノイドは一般に、イソプレノイドとも称される。テルペンおよびテルペノイドは、それらの骨格の一部であるテルペン単位(C5)の数に従い分類されうる。したがって、モノテルペンは2つのイソプレン単位(C10;10個の炭素原子の骨格)から構成され、セスキテルペンは3つのイソプレン単位(C15;15個の炭素原子の骨格)から構成され、ジテルペンは4つのイソプレン単位(C20;20個の炭素原子の骨格)から構成されるなどである。ジテルペンおよびジテルペノイドは一般にゲラニルゲラニルピロホスファート(GGPP)から誘導される。
【0003】
ジテルペンシターゼは、当業者によく知られている酵素であり、これは通常、それぞれジテルペンまたはジテルペノイドを形成するようにゲラニルゲラニルピロホスファート(GGPP)を基質として利用する反応を触媒する。この場合、GGPPは通常、1以上の炭素環を含む環状化合物に変換される。したがって、ジテルペンシンターゼはジテルペンシクラーゼと称されることが多い。ジテルペンシンターゼは一般に、ジテルペンまたはジテルペノイドを産生する生合成経路に関与している。
【0004】
遺伝子クラスターは、例えば1つの特定の生合成経路(例えば、二次代謝産物を産生する経路)に関与するポリペプチドをコードすることにより機能性単位を形成する隣接遺伝子の一群として一般に公知である。二次代謝産物は、特定の条件下で特定生物により通常産生される物質である。一次代謝産物とは異なり、それは通常、それを産生する生物に必須ではない。広域スペクトル抗生物質プロイロムチリンはテルペノイド、より厳密にはジテルペノイドであり、真菌二次代謝産物の一例である。それはプロイロツス・ムチルス(Pleurotus mutilus)(Fr.)Sacc.およびプロイロツス・パッセケリアヌス(Pleurotus passeckerianus)Pil.から1951年に最初に単離された。主として、プロイロムチリンはグラム陽性菌およびマイコプラズマ(Mycoplasma)の増殖を抑制する。プロイロムチリンはリボソームの50Sサブユニットのペプチジルトランスフェラーゼ成分に結合し、細菌におけるタンパク質合成を抑制する。プロイロムチリンはプロイロムチリン抗生物質のグループの唯一のメンバーであり、該グループは、ブタ赤痢および肺炎の治療に有効であると記載されているチアムリン、バルネムリンおよびレタパムリンを含む幾つかの半合成誘導体を更に含む(Yao,2007を参照されたい)。
【0005】
【化1】

【0006】
プロイロムチリンのグループの他の典型的メンバーはアザムリンおよびBC−3781である。他のプロイロムチリンはHunt,E.,2000およびそれにおいて引用されている参考文献に開示されている。プロイロムチリンは元々は主に獣医学において使用されてきたものであるが、それはヒト用治療用物質としての関心を次第に獲得しつつある(Huら,2009を参照されたい)。
【0007】
プロイロムチリンを産生する一般的生合成経路は1960年代に同位体標識実験により明らかにされた。プロイロムチリンを産生する生合成経路における重要な反応はゲラニルゲラニルピロホスファート(GGPP)から三環性プロイロムチリン前駆体への反応であり、この反応は、プロイロムチリンシンターゼと一般に称されている推定酵素である特定のジテルペンシンターゼ(DS)により触媒されると考えられている。該提示反応の詳細(Yao,2007を参照されたい)を図1に示す。プロイロムチリンを産生する経路の後続反応においては、シトクロムP−450酵素(C3およびC11における機能)およびアシルトランスフェラーゼ(C14ヒドロキシルにおける機能)の作用が、プロイロムチリンの形成を完了するのに必要だと考えられている(Yao,2007を参照されたい)。GGPPからのプロイロムチリンの形成の、より後の提示段階を(Tsukagoshiら,2007を参照されたい)、図2に示す。
【0008】
二次代謝産物の生合成をもたらす遺伝子のクラスター化は、ストレプトミセス菌(Streptomycetes)(Ikedaら,2003;Oiynykら,2007)および真菌(Kellerら,2007)を含むほとんどの微生物における共通の特徴である。プロイロムチリンの形成のための生合成遺伝子クラスターを特定するための努力がなされている。例えば、Yao(2007)は、プロイロムチリンの形成のためのジテルペンシンターゼ遺伝子を特定するための3つの異なる試みを記載している。Yaoは幾つかのGGPPシンターゼ遺伝子(ggs遺伝子)を発見したが、ジテルペンシンターゼ遺伝子を特定することはできなかった。
【0009】
したがって、ジテルペンシンターゼをコードする遺伝子クラスターおよび遺伝子のような核酸を特定すること、ならびにそれによりコードされるポリペプチドを特定することが当技術分野で必要とされている。なぜなら、プロイロムチリン遺伝子クラスターの特定はプロイロムチリン産生の論理的操作への道を開くであろうからである。抗生物質耐性の問題が増加しつつあるため、医学用途における可能な使用のためのプロイロムチリンまたはその前駆体もしくは変異体のような代替的抗生物質を製造するための手段を提供することが当技術分野で特に必要とされている。
【0010】
本発明者らは、ジテルペノイド、より詳細にはプロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する遺伝子クラスターを含むと想定される核酸配列を特定することに成功した。該核酸配列はクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のゲノムに由来し、プロイロムチリンの生合成に関与すると考えられるポリペプチドをコードする少なくとも6つの転写的に共調節されるオープンリーディングフレームを含むと予想される。更に、本発明者らは更に、この遺伝子クラスターの一部として、新規ジテルペンシンターゼであるポリペプチドを特定することに成功している。それはクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のゲノムにおける唯一のジテルペンシンターゼであるらしく、したがって、長く追い求められていたプロイロムチリンシンターゼであると予想されている。該ジテルペンシンターゼ遺伝子は、推定ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼ遺伝子、2以上のシトクロムp450酵素コード化遺伝子および推定アシルトランスフェラーゼコード化遺伝子に接近して位置しており、それらと共に実際に共調節されており、このことは、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のプロイロムチリンを産生する生合成経路にそれが関与していることを妥当かつ信頼しうるものにしている。プロイロムチリン合成のための生合成遺伝子クラスターの発見により、本発明は更に、ジテルペノイド、特にプロイロムチリンおよびプロイロムチリン前駆体を製造するための貴重な手段を提供し、本明細書に開示されているジテルペンシンターゼの産物から出発することにより、新規プロイロムチリン抗生物質またはプロイロムチリン類似体を合成するための基礎を提供すると考えられる。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、とりわけ、添付の特許請求の範囲において定義されている、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドに関する。
【0012】
もう1つの態様においては、本発明は、添付の特許請求の範囲において定義されている対応核酸分子に関する。個々の核酸分子は、ジテルペン、より厳密にはプロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する遺伝子クラスターであると予想される核酸分子である。
【0013】
更に詳細な態様においては、本発明は、特許請求の範囲において定められており後記に記載されている方法および使用のような主題に関する。
【0014】
本発明の態様および個々の実施形態は特許請求の範囲および以下の開示に記載されている。
【0015】
定義
後記で特に示されていない限り、本明細書中で用いる技術用語は一般に、当技術分野で理解されている一般的な意味を有する。
【0016】
一般に、本明細書中で用いる「含む」なる語は、「有する」および「からなる」なる意味を含む。
【0017】
ポリペプチドは通常、個々のアミノ酸がペプチド結合により互いに連結されている直鎖状アミノ酸重合体である。低い比率、例えば10%未満、5%未満、3%未満または更には1%未満、例えば0%〜1%の修飾または非天然アミノ酸を含有するポリペプチドも想定される。しかし、好ましいポリペプチドは非天然アミノ酸を含有せず、修飾は専ら天然に生じる修飾、例えばグリコシル化、ユビキチン化などである。当業者によく知られているとおり、ポリペプチドは、例えば、セリン、トレオニンまたはチロシン残基のリン酸化により、あるいは例えばアスパラギン残基またはセリン残基のグリコシル化により修飾されうる。修飾ポリペプチドは同様に本発明においてポリペプチドに含まれると想定される。
【0018】
ポリペプチドに関して本明細書中で用いる「野生型」なる語は、そのようなポリペプチドの、天然に存在する非突然変異形態を意味する。
【0019】
本発明のポリペプチドは特に非天然ポリペプチドを含む。本明細書に記載されている「非天然ポリペプチド」自体は天然に存在しないが、実験的操作、例えば遺伝子工学技術、またはポリペプチドへの他の分子の化学的カップリングにより製造可能であり、個別的には既に製造されている。修飾ポリペプチドの例としては、特に、遺伝子工学技術により生じる付加、置換、欠失、トランケート化を含有するポリペプチドが挙げられる。好ましくは、「非天然ポリペプチド」は、天然に存在する種のゲノムによりそれ自体はコードされていないポリペプチド、特に、天然に存在する種がその起源として特定されている本出願の出願日における遺伝子バンクデータベースのポリペプチドのいずれとも同一でないポリペプチドである。ある好ましい一般的実施形態においては、本明細書に記載されているポリペプチドは非天然ポリペプチドである。
【0020】
本明細書中で用いる「ポリペプチド」は、特に、30個超、特に少なくとも35、40、45個または少なくとも50もしくは100個であるが10,000個以下、特に9,000、8,000、7,000、6,000または5,000個以下のアミノ酸を含む分子に関するものである。本発明の好ましいジテルペンシンターゼは、約500〜約1,500個のアミノ酸、特に約800〜約1,200個のアミノ酸、特に約900〜約1,100個のアミノ酸、より詳しくは約900〜約1,020個のアミノ酸を含む。好ましくは、このポリペプチドの分子量は90kDa〜140kDa、特に100kDa〜130kDa、特に105kDa〜120kDaである。
【0021】
「単離(された)」ポリペプチドは、それが天然で存在する又はそれが産生された環境とは異なる環境中に存在するポリペプチドを意味する。好ましくは、単離ポリペプチドは、欧州薬局方(European Pharmacopoeia)6.6(これを参照により本明細書に組み入れることとする)に従い、不連続的SDS PAGEを12% 分解ゲルによる変性およびクーマシー染色により決定された場合に、少なくとも0.01%、特に少なくとも0.1%、より詳しくは少なくとも1%、より詳しくは少なくとも10%、例えば少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、より詳しくは少なくとも90%、例えば少なくとも95%、96%、97%、98%、99%純粋である。好ましくは、単離ポリペプチドは生物または細胞内には含有されない。好ましい実施形態においては、該単離ポリペプチドは、その天然環境または産生環境のいずれのポリペプチド成分をも伴わない。
【0022】
ポリペプチドの場合、好ましくは、参照配列に対して少なくともX%の同一性を有するポリペプチドを該参照配列と異ならせているアミノ酸残基変化の性質は、半保存的な、より好ましくは保存的なアミノ酸残基置換である。
【0023】
【表1】

【0024】
A、F、H、I、L、M、P、V、WまたはYからCへの変化は、新たなシステインが遊離チオールのままである場合、半保存的である。MからE、RまたはKへの変化は、新たな側鎖基のイオン性先端部がタンパク質表面に達しうる一方でメチレン基が疎水性接触を引き起こす場合、半保存的である。PからK、R、EまたはDの1つへの変化は、側鎖基がタンパク質の表面上に存在する場合、半保存的である。更に、立体的に厳しい位置におけるグリシンは置換されるべきではなく、アルファ−ヘリックスまたはベータシート構造を有するタンパク質部分にPは導入されるべきではない、と当業者は理解するであろう。
【0025】
核酸分子は当業者によく知られている。好ましくは、本明細書中で用いる「核酸分子」は、DNAまたはRNAのような、ヌクレオチド単量体からなる核酸重合体を意味する。
【0026】
「単離(された)」核酸分子は、それが天然で存在する又はそれが産生された環境とは異なる環境中に存在する核酸分子を意味する。特に、それは、それがそれぞれその天然環境または産生環境において通常伴っている少なくとも1つの核酸分子から分離されている。好ましくは、単離核酸分子は生物または細胞内には含有されない。好ましい実施形態においては、該単離核酸分子は、その天然環境または産生環境に伴ういずれの核酸分子をも伴わない。
【0027】
核酸分子に関して本明細書中で用いる「野生型」なる語は、そのような核酸分子の天然に存在する非突然変異形態を意味する。
【0028】
本発明の核酸分子は特に非天然核酸分子を含む。本明細書に記載されている「非天然核酸分子」自体は天然に存在しないが、実験的操作、例えば遺伝子工学技術、またはポリペプチドへの他の分子の化学的カップリングにより製造可能であり、個別的には既に製造されている。修飾核酸分子の例としては、特に、遺伝子工学技術により生じる付加、置換、欠失、トランケート化を含有する核酸分子が挙げられる。好ましくは、「非天然核酸分子」は、天然に存在する種がその起源として特定されている本出願の出願日における遺伝子バンクデータベースの核酸分子と同一でないポリペプチドである。ある好ましい一般的実施形態においては、本明細書に記載されている核酸分子は非天然核酸分子である。
【0029】
「配列xの部分配列」は一般に、配列xの1以上の連続的断片を含む配列を意味する。ある好ましい実施形態においては、それは配列xの、1つの連続的断片を含む。好ましくは、ヌクレオチド配列の場合には、該部分配列は、1以上の、特に1つのオープンリーディングフレームを含む。より好ましくは、該部分配列は、ポリペプチドをコードする配列、特に、イントロンを含まないコード配列(cds)である。
【0030】
本明細書中で用いるヌクレオチド配列が「種由来」と称されるのは、それが該種のゲノム内のどこかに含有されている場合である。該ヌクレオチド配列は遺伝子の一部分であってもそうでなくてもよい。
【0031】
関連配列における対応位置の決定および同一性の割合(%)の計算は、よく知られたアライメントアルゴリズムおよび場合によってこれらのアルゴリズムを利用するコンピュータプログラムの助けにより行われうる。本特許出願における同一性は、デフォルトパラメータを用いるフリーウェアプログラムClustalX(バージョン1.83)により配列を整列させ、ついで同一残基を手動で計数することにより計算した。ついで、同一物の数を最短配列の(全体の)長さで割り算することにより、同一性(%)(PID)を計算した。例えばペアワイズアライメント(遅−正確)のためのデフォルト設定は以下のとおりである:ギャップ・オープニング・パラメータ:10.00;ギャップ伸長パラメータ0.10;タンパク質重み行列:Gonnet 250;DNA重み行列IUB。ClustalXプログラムはThompsonら,1997に詳細に記載されている。
【0032】
したがって、本明細書中で用いるヌクレオチドまたはアミノ酸配列が或る与えられた配列に対する「X%の配列同一性」を有すると称されるのは、デフォルトパラメータを用いるフリーウェアプログラムClustalX(バージョン1.83)でのアライメント、後続の同一残基の決定[例えば、手動計算、およびそれに続く、同一物の数を最短配列の(全体の)長さで割り算することによる同一性の割合(%)(PID)の計算によるもの]が「X%の配列同一性」を示す場合である。
【0033】
本明細書中で用いる「ベクター」は特に、外来DNA配列を宿主内に移入し導入するために使用されうるDNA要素を意味する。ベクターには、プラスミド、ウイルス、ファージおよびコスミドが含まれるが、これらに限定されるものではない。好ましい実施形態においては、該ベクターは「発現ベクター」である。当業者に公知のとおり、特定の部位に挿入されたコード配列が転写されポリペプチドに翻訳されるように、発現ベクターは設計される。
【0034】
本明細書中で用いる「宿主」は、好ましくは、細胞、組織および非ヒト生物から選択される。好ましい実施形態においては、該宿主は真菌宿主であり、より詳しくは担子菌門の真菌、より一層詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌である。好ましい実施形態においては、該宿主はクリトピルス(Clitopilus)属のものであり、特に、クリトピルス・シフォイデス(Clitopilus scyphoides)、クリトピルス・プルヌルス(Clitopilus prunulus)、クリトピルス・ホブソニイ(Clitopilus hobsonii)、クリトピルス・プソイド−ピンシツス(Clitopilus pseudo−pinsitus)、クリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)およびクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からなる群から選択され、より詳しくは、クリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)およびクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)から選択される。もう1つの好ましい実施形態においては、該宿主はプロイロツス(Pleurotus)属のものである。好ましくは、該宿主は、プロイロムチリンを産生しうることが公知である細胞、組織および非ヒト生物、例えば、オムファリナ・ムチナ(Omphalina mutila)クリトピルス・シフォイデス(Clitopilus scyphoides)、クリトピルス・プルヌルス(Clitopilus prunulus)、クリトピルス・ホブソニイ(Clitopilus hobsonii)、クリトピルス・プソイド−ピンシツス(Clitopilus pseudo−pinsitus)、クリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)およびクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からなる群から選択される。特に、該宿主はクリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)およびクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)である。
【0035】
本明細書中で用いる「細胞」は特に限定されるものではない。好ましくは、該細胞は、本発明のベクターが複製可能な細胞である。好ましくは、該細胞は、ベクター内に挿入されたコード配列が転写されポリペプチドに翻訳される細胞である。好ましくは、該細胞は全能性幹細胞ではない。幾つかの実施形態においては、該組織は非動物細胞である。好ましい実施形態においては、該細胞は前記の真菌からのものである。
【0036】
本明細書中で用いる「組織」は特に限定されるものではない。好ましくは、該組織は、本発明のベクターが複製可能な組織である。好ましくは、該組織は、ベクター内に挿入されたコード配列が転写されポリペプチドに翻訳される組織である。幾つかの実施形態においては、該組織は非動物組織である。好ましい実施形態においては、該組織は前記の真菌からのものである。組織は器官でありうる。1つの好ましい真菌組織は菌糸である。
【0037】
本明細書中で用いる「非ヒト生物」は特に限定されるものではない。好ましくは、該非ヒト生物は、本発明のベクターが複製可能な非ヒト生物である。好ましくは、該非ヒト生物は、ベクター内に挿入されたコード配列が転写されポリペプチドに翻訳される非ヒト生物である。好ましい実施形態においては、該非ヒト生物は非動物生物である。好ましい実施形態においては、該非ヒト生物は真菌生物、より詳しくは担子菌門の真菌、より一層詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌である。好ましい実施形態においては、該真菌生物はクリトピルス(Clitopilus)属またはプロイロツス(Pleurotus)属の真菌である。
【0038】
本明細書中で用いる「野生型宿主」なる語および「天然に存在する宿主」なる語は共に、天然に存在する宿主を意味する。特に、そのような野生型宿主は、本出願の出願日現在のデータベースに含まれる天然に存在する種である又は該種の一部であるいずれかの細胞、組織または非ヒト生物である。
【0039】
「天然に存在する宿主」なる語は、天然には存在しない宿主を意味する。好ましい実施形態においては、該宿主は、例えば本発明の核酸分子またはベクターがそれに導入されていることにより、天然に存在しないものである。好ましい実施形態においては、該宿主は、本明細書に記載されている核酸分子の配列を有する核酸分子がそれにおいて修飾されていることにより、天然に存在しないものである。
【0040】
天然に存在しない宿主の「天然に存在する対応宿主」は、天然に存在しない対応宿主の非天然的特徴を示さない、天然に存在する対応宿主を意味する。一般に、天然に存在する対応宿主は、プロイロムチリンを産生しうる又は産生し得ない宿主でありうる。一般に、天然に存在する対応宿主は、プロイロムチリン前駆体、特に、式(I)の化合物を産生しうる又は産生し得ない宿主でありうる。本明細書中で用いる「プロイロムチリンを産生し得ない宿主」は、検出可能な量のプロイロムチリンを産生しない宿主を意味する。したがって、本明細書中で用いる「プロイロムチリンを産生しうる宿主」は、前記方法の1つにより、検出可能な量のプロイロムチリンを産生する宿主を意味する。
【0041】
ある与えられた宿主が、検出可能な量のプロイロムチリンを産生するか否かは、該宿主の細胞の均一化サンプルを適当な溶媒で抽出し、例えば、HPLC(例えば、Hartleyら,2009に記載されているとおり)、MS(例えば、Tsukagoshiら,2007)またはNMRもしくはMS(例えば、Yao,2007に記載されているとおり)を含む方法により、同時に陽性対照としてプロイロムチリンを含有するサンプルをも使用して、該抽出物中のプロイロムチリンの存在または非存在に関してアッセイすることにより、容易に決定されうる。
【0042】
真菌宿主に関しては、「プロイロムチリンを産生し得ない宿主」は、好ましくは、Hartleyら,2009の26ページに記載されている「プロイロムチリン産生の評価」により判定された場合にプロイロムチリン産生に関する陰性結果を示す宿主を意味する。非真菌宿主に関しては、「プロイロムチリンを産生し得ない宿主」は、好ましくは、Hartleyら,2009の26ページに記載されている「プロイロムチリン産生の評価」に記載されているHPLC分析に該宿主の細胞の均一化サンプルの抽出物を付した場合に、プロイロムチリン産生に関する陰性結果を示す宿主を意味する。
【0043】
したがって、真菌の「プロイロムチリンを産生しうる宿主」は、好ましくは、Hartleyら,2009の26ページに記載されている「プロイロムチリン産生の評価」(すなわち、「プロイロムチリンピーク」の観察)により判定された場合にプロイロムチリン産生に関する陽性結果を示す宿主を意味する。非真菌宿主に関しては、「プロイロムチリンを産生しうる宿主」は、好ましくは、Hartleyら,2009の26ページに記載されている「プロイロムチリン産生の評価」に記載されているHPLC分析に該宿主の細胞の均一化サンプルの抽出物を付した場合に、プロイロムチリン産生に関して陽性結果を示す宿主を意味する。
【0044】
プロイロムチリンを産生しうる非限定的な典型的な真菌株は、例えば、Hartleyら,2009に開示されている。これらには、オムファリナ・ムチラ(Omphalina mutila)、クリトピルス・ホブソニイ(Clitopilus hobsonii)、クリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)およびクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)の株が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
遺伝子クラスターは、一般に、機能性単位を構成する遺伝子の一群を意味しうる。本明細書中で用いる「遺伝子クラスター」は、一緒になって少なくとも1つの生合成経路、好ましくは1つの生合成経路に関与するポリペプチドをコードする配列を含む核酸である。特に、該配列は隣接している。好ましくは、該配列は互いに直に連続しており、この場合、それらは種々の量の非コードDNAにより隔てられている。好ましくは、本発明の遺伝子クラスターは10kb〜50kb、より好ましくは14kb〜40kb、より一層好ましくは15kb〜35kb、より一層好ましくは20kb〜30kb、特に23kb〜28kbのサイズを有する。
【0046】
本明細書中の序論に既に記載されているとおり、テルペンおよびテルペノイドは当業者によく知られている。本明細書においては、「テルペン」と「テルペノイド」との間で区別はされていない。したがって、本明細書においては、「ジテルペン」と「ジテルペノイド」との間で区別はされていない。ジテルペンは15個の炭素原子を含みうる。好ましくは、ジテルペンは1以上の環状構造要素を含む。ジテルペンはまた、15個を超える又は15個未満の炭素原子を含みうる。典型的なジテルペン/ジテルペノイドには、アコニチン、カフェストール、センブレン(cembrene)、カーベオール、フィタン、レチノール、ステビオシドおよびタキサジエンが含まれるが、これらに限定されるものではない。ジテルペン/ジテルペノイドの好ましい例には、限定的ではないが、プロイロムチリン、チアムリン、バルネムリン、レタパムリンが含まれ、プロイロムチリンが特に好ましい。
【0047】
プロイロムチリンは縮合5−6−8三環性ジテルペノイドとして当業者によく知られている。それは図1においては「プロイロムチリン1」として示されうる。
【0048】
本明細書中で用いる「プロイロムチリン抗生物質」は抗生物質のプロイロムチリンファミリーのいずれかの抗細菌物質を意味する。プロイロムチリン抗生物質には、プロイロムチリン、チアムリン、バルネムリン、レタパムリン、アザムリン、BC−3781およびHunt,E.,2000に開示されているものが含まれるが、これらに限定されるものではない。ここにおいては、プロイロムチリン抗生物質は、好ましくは、プロイロムチリンまたはプロイロムチリン誘導体である。プロイロムチリン誘導体は特に限定されるものではなく、認識可能なあらゆるプロイロムチリン誘導体を包含する。
【0049】
本明細書中で用いる「プロイロムチリン前駆体」は、プロイロムチリンを産生する生合成経路のいずれかの中間化合物を意味する。プロイロムチリン前駆体はゲラニルゲラニルピロホスファートシンターゼの産物であっても又はそうでなくてもよく、したがって、ゲラニルゲラニルピロホスファートであっても又はそうでなくてもよい。好ましくは、「プロイロムチリン前駆体」は、ゲラニルゲラニルピロホスファートの下流でプロイロムチリンを産生する生合成経路のいずれかの中間化合物を意味する。好ましい「プロイロムチリン前駆体」は、本明細書に開示されているとおり、ジテルペンシンターゼの産物、特にプロイロムチリンシンターゼの産物である。本発明における好ましいプロイロムチリン前駆体は、図1に示されているプロイロムチリン前駆体である。本発明における特に好ましいプロイロムチリン前駆体は、図1に示されている式(I)の化合物である。
【0050】
「プロイロムチリン前駆体」はまた、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するポリペプチドにより触媒されるいずれかの他の反応の産物でありうる。他の好ましいプロイロムチリン前駆体には、特に、本出願における図2に示されている化合物(II)および(III)が含まれる。
【0051】
また、「ジテルペンシンターゼ」および「ジテルペノイドシンターゼ」は本明細書においては互換的に用いられている。また、「ジテルペンシンターゼ」は「ジテルペンシクラーゼ」とも称されうる。ジテルペンシンターゼは、前記にも記載されているとおり、当業者によく知られている。換言すれば、当業者は、例えば公知ジテルペンシンターゼに対するその相同性により、ジテルペンシンターゼを認識するのに容易な位置にあるであろう。この目的のために、当業者は、コンピュータによる方法、例えばアライメント、例えば本出願の図5に開示されているものに類似したアライメントを適切に用いることが可能である。本明細書においては、「ジテルペンシンターゼ」は、特に、1以上の環構造を含有する分子にゲラニルゲラニルピロホスファートを変換するのを触媒しうるポリペプチドを意味する。好ましくは、該分子はプロイロムチリン前駆体である。したがって、好ましい実施形態においては、ジテルペンシンターゼはプロイロムチリンシンターゼである。本明細書においては、「プロイロムチリンシンターゼ」は、特に、1以上の環構造を含有する分子[該分子はプロイロムチリン前駆体、特に、図1に示されているプロイロムチリン前駆体、特に、式(I)の化合物である]にゲラニルゲラニルピロホスファートを変換するのを触媒しうるポリペプチドを意味する。
【0052】
本明細書中で用いる「ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチド」は、好ましくは、1以上の環構造を含有する分子にゲラニルゲラニルピロホスファートを変換するのを触媒しうるポリペプチドを意味する。該ポリペプチドは他の活性を有していても又は有していなくてもよく、ジテルペンシンターゼ活性は該ポリペプチドの主要活性でなくてもよい。ジテルペンシンターゼ活性は、例えば、該ポリペプチド、好ましくは該精製ポリペプチドを含有するサンプルをGGDPと共に適当なバッファー中でインキュベートし、場合によってはGGDPの消費に関連したジテルペンシンターゼの産物(例えば、1以上の環構造を含有するジテルペン分子)の産生を適当な方法(例えば、MSまたはGC/MSを含む方法)により検出することにより検出および/または測定されうる。ジテルペンシンターゼの活性に関する1つの特定の典型的な酵素アッセイがToyomasuら,2000に開示されている。該アッセイは、基本的に、GC−MSによるジテルペンシンターゼの産物の検出を含む。ジテルペンシンターゼ活性に関する典型的アッセイはKawaideら,1997にも開示されており、1つの特定のアッセイは、[H]GGDPを用いることによる、GGDP消費および産物生成の検出を含み、もう1つのアッセイは、GC−MSにより代謝産物を特定するのに適している。ある与えられたアッセイのために必要な場合には、ジテルペンシンターゼは、例えば真菌宿主または大腸菌(E.coli)内で発現されることが可能であり、場合によっては、それから精製されうる。
【0053】
本明細書中で用いる「プロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチド」は、好ましくは、プロイロムチリン前駆体、特に、図1に示されているプロイロムチリン前駆体、特に、式(I)の化合物にゲラニルゲラニルピロホスファートを変換するのを触媒しうるポリペプチドを意味する。該変換は1以上の工程を含みうる。該ポリペプチドは他の活性を有していても又は有していなくてもよく、プロイロムチリンシンターゼ活性は該ポリペプチドの主要活性でなくてもよい。プロイロムチリンシンターゼ活性は、例えば、該ポリペプチド、好ましくは該精製ポリペプチドを含有するサンプルをGGDPと共に適当なバッファー中でインキュベートし、プロイロムチリン前駆体、特に式(I)の化合物の産生に関してアッセイすることにより検出および/または測定されうる。プロイロムチリン前駆体、特に、図1に示されている化合物、特に、式(I)の化合物の産生の検出は、本明細書に開示されている参考文献の教示を含む本明細書の開示に基づいて、例えば、MSまたはNMRを含む方法により、当業者により容易に達成可能であろう。好ましい実施形態においては、本発明のプロイロムチリンシンターゼは、配列番号9のプロイロムチリンシンターゼの活性の少なくとも5%、10%または20%、好ましくは、少なくとも30%または40%、例えば、少なくとも50%または少なくとも60%、70%、80%、特に、少なくとも90%または95%、特に、少なくとも100%、例えば、少なくとも125%、150%または175%、特に、配列番号9のプロイロムチリンの活性の少なくとも2倍または5倍、少なくとも10倍または25倍、例えば、50〜100倍の活性を有する。
【0054】
GGPPと略される「ゲラニルゲラニルピロホスファート」なる語およびGGDPと略される「ゲラニルゲラニルジホスファート」は本明細書においては互換的に用いられる。
【0055】
本明細書中で用いる「ジテルペンを産生する生合成経路」は、プロイロムチリンのようなジテルペンにつながる生合成経路を意味する。該経路は少なくとも、ジテルペンまたはジテルペン前駆体にGGPPを変換する工程を含み、GGPPの形成の工程、および/または該ジテルペンの合成の、1以上の後期工程を更に含みうる。
【0056】
本明細書中で用いる「プロイロムチリンを産生する生合成経路」は、プロイロムチリンのようなプロイロムチリン抗生物質につながる生合成経路を意味する。好ましい実施形態においては、それは、ゲラニルゲラニルピロホスファート(GGPP)[これは、好ましくは、ファルネシルピロホスファート(FPP)から形成され、プロイロムチリンにつながる]の形成の工程から始まる生合成経路を意味する。他の好ましい実施形態においては、それは、ゲラニルゲラニルピロホスファート(GGPP)からプロイロムチリンにつながる生合成経路を意味する。該経路は、GGPPからプロイロムチリン前駆体、特に式(I)の化合物への反応、および更には、本明細書においては該生合成経路の後期工程とも称されうる、図2に記載されているような反応工程(Yao,2007を参照されたい)を含むと記載されている。GGPPの共通前駆体はイソペンテニルジホスファート(IPP)およびジメチルアリルジホスファート(DMAPP)である。当業者に公知のとおり、ゲラニルピロホスファート(GPP)はIPPおよびDMAPPから合成されることが可能であり、FPPはIPPおよびGPPから合成されることが可能である。
【0057】
真菌および動物においては、イソペンテニルジホスファート(IPP)およびジメチルアリルジホスファート(DMAPP)は、いわゆるメバロン酸(メバロナート)(MVA)経路により合成されると記載されている(Dewick,2002を参照されたい)。後者の経路においては、アセチル−補酵素A(アセチル−CoA)の2つの分子が反応してアセトアセチル−CoAが生じる。アセトアセチル−CoAはアセチル−CoAのもう1つの分子と反応して3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)を与える。この反応はHMG−CoAシンターゼにより触媒される。ついでHMG−CoAレダクターゼがHMG−CoAをメバロン酸(MVA)へ変換する。ついで、6個の炭素原子を含有するメバロン酸は、2つのリン酸化反応により、5個の炭素原子を含有するイソペンテニル−5−ピロホスファート(IPP)に変換されて、それぞれメバロナート−5−ホスファートおよびメバロナート−5−ピロホスファートを与え、ついで脱カルボキシル化反応によりIPPを与える。イソペンテニルジホスファートはIPPイソメラーゼにより異性化されて、ジメチルアリルジホスファート(DMAPP)を与える。
【0058】
イソペンテニルピロホスファート(IPP)およびジメチルアリルピロホスファート(DMAPP)の形成をもたらす代替的代謝経路は、いわゆる非メバロン酸経路またはメチルエリトリトールホスファート経路(MEP経路)であり、これはピルバートおよびグリセリンアルデヒド−3−ホスファートから出発し、例えば、ほとんどの細菌および緑藻類により利用される(Kuzuyama,2002を参照されたい)。高等植物および紅藻類はMVAまたはMEP経路を利用しうる。
【0059】
真菌においては、プロイロムチリンを産生する全生合成経路はFPPからゲラニルゲラニルピロホスファートへの反応を含むと記載されており、該反応は、特定のプレニルトランスフェラーゼ、いわゆるGGPPシンターゼ(ggs)(これはFPPを1つのIPP分子で伸長させる)により触媒される。ついで、GGPPは、プロイロムチリンシンターゼとも称される特定のジテルペンシンターゼにより反応して環状プロイロムチリン前駆体を与える。このようにして得られたプロイロムチリン前駆体は次いで、プロイロムチリン合成のいわゆる後期段階でプロイロムチリンに変換される。プロイロムチリン合成の後期段階はアシルトランスフェラーゼおよびシトクロムP−450酵素の作用を含むと考えられる。
【0060】
本明細書中で用いる「プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する」ポリペプチドの発現は特に、プロイロムチリン抗生物質、特にプロイロムチリンを産生する生合成経路、特に前記の経路の反応の少なくとも1つを触媒しうるポリペプチドを意味する。好ましくは、該ポリペプチドはFPPからプロイロムチリン抗生物質(例えば、プロイロムチリン)への変換における少なくとも1つの反応を触媒する。好ましくは、該ポリペプチドはGGPPからプロイロムチリン抗生物質(例えば、プロイロムチリン)への変換における少なくとも1つの反応を触媒する。好ましい実施形態においては、該発現は特に、図2に示されている反応の少なくとも1つを触媒しうるポリペプチドを意味する。最も好ましくは、該ポリペプチドはGGPPからプロイロムチリンへの全体的な変換における少なくとも1つの反応に必須である。
【0061】
プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する好ましいポリペプチドはジテルペンシンターゼ、例えば本発明のものである。プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する特に好ましいポリペプチドはプロイロムチリンシンターゼであり、これは、GGPPから式(I)の三環性中間体への変換を触媒しうる。最も好ましくは、該プロイロムチリンシンターゼはGGPPから式(I)の三環性中間体への変換に必須である。本明細書中で用いる「プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する」核酸、遺伝子または遺伝子クラスターの発現は特に、プロイロムチリン抗生物質、例えばプロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する1以上のポリペプチドをコードする核酸、遺伝子または遺伝子クラスターを意味する。後者の核酸、遺伝子または遺伝子クラスターは、プロイロムチリンを産生する生合成経路に直接的に関与するとも言われる。プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する核酸、遺伝子または遺伝子クラスターは、直接的に関与する核酸、遺伝子または遺伝子クラスターに作用することにより、プロイロムチリンを産生する生合成経路に間接的に関与する例えばプロモーターまたはエンハンサーのようなものをも含む。好ましくは、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する核酸、遺伝子または遺伝子クラスターは、本明細書に記載されているとおり、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する好ましいポリペプチドをコードしている。
【0062】
本明細書中で用いる「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」および「ストリンジェントな条件」は、核酸分子がその標的および最小数の他の配列のみにハイブリダイズする条件を意味する。
【0063】
本発明の意味におけるストリンジェントな条件は、22℃で6×SSC、0.2% SDSの溶液中の予備洗浄、6×SSC、0.2% SDS中で65℃で一晩のハイブリダイゼーション、およびそれに続く、65℃でのそれぞれ30分間の4回の洗浄(2回は1×SSC,0.1% SDS中、および2回は0.2×SSC、0.1% SDS中)を含む。
【0064】
ポリペプチドの「発酵的製造方法」は当業者によく知られている。本明細書においては、それは、生きた系、例えば生物、例えば細菌もしくは真菌生物、または細胞(培養)、または組織(培養)を伴う方法である。そのような生きた系は、本明細書に開示されている宿主のいずれかでありうる。
【0065】
「発酵的製造方法」は、生きた系を伴う製造工程を含むことのみにより特徴づけられうる。「発酵的製造方法」はまた、生きた系を伴う製造工程および生きた系を伴わない製造工程の両方を含むことにより特徴づけられうる。後者の方法は本明細書においては「半合成的製造方法」とも称されうる。
【0066】
本明細書中で用いる「合成的製造方法」は生きた系、例えば生物、例えば細菌もしくは真菌生物、または細胞(培養)、または組織(培養)を伴わない。好ましくは、そのような方法は化学的手段、または単離されたポリペプチド、例えば、本明細書に開示されているポリペプチドを使用する。
【0067】
本明細書中で用いる「ポリペプチドの製造方法」は特に限定されるものではない。それはポリペプチドの発酵的製造方法、ポリペプチドの合成的製造方法および後者の方法のいずれかの組合せを含む。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、GGDPから式(I)の化合物につながる、プロイロムチリンシンターゼにより触媒される反応の、提示されている詳細を示す(Yao,2007参照)。
【図2】図2は、GGDPからプロイロムチリンにつながる、プロイロムチリンを産生する生合成経路、すなわち、ジテルペンシンターゼにより触媒される反応の段階およびプロイロムチリン合成の後期段階を示す(Tsukagoshiら,2007から改変)。
【図3−1】図3は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するジテルペンシンターゼ(遺伝子)のポリペプチド(配列番号9)およびコード核酸配列(配列番号8)を示す。また、対応ゲノム核酸配列(配列番号13)が示されており、ここにおいて、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からの推定遺伝子クラスターを含む配列およびイントロンが小文字で示されている(配列番号15)。
【図3−2】図3は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するジテルペンシンターゼ(遺伝子)のポリペプチド(配列番号9)およびコード核酸配列(配列番号8)を示す。また、対応ゲノム核酸配列(配列番号13)が示されており、ここにおいて、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からの推定遺伝子クラスターを含む配列およびイントロンが小文字で示されている(配列番号15)。
【図3−3】図3は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するジテルペンシンターゼ(遺伝子)のポリペプチド(配列番号9)およびコード核酸配列(配列番号8)を示す。また、対応ゲノム核酸配列(配列番号13)が示されており、ここにおいて、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からの推定遺伝子クラスターを含む配列およびイントロンが小文字で示されている(配列番号15)。
【図3−4】図3は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するジテルペンシンターゼ(遺伝子)のポリペプチド(配列番号9)およびコード核酸配列(配列番号8)を示す。また、対応ゲノム核酸配列(配列番号13)が示されており、ここにおいて、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からの推定遺伝子クラスターを含む配列およびイントロンが小文字で示されている(配列番号15)。
【図3−5】図3は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するジテルペンシンターゼ(遺伝子)のポリペプチド(配列番号9)およびコード核酸配列(配列番号8)を示す。また、対応ゲノム核酸配列(配列番号13)が示されており、ここにおいて、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からの推定遺伝子クラスターを含む配列およびイントロンが小文字で示されている(配列番号15)。
【図3−6】図3は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するジテルペンシンターゼ(遺伝子)のポリペプチド(配列番号9)およびコード核酸配列(配列番号8)を示す。また、対応ゲノム核酸配列(配列番号13)が示されており、ここにおいて、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からの推定遺伝子クラスターを含む配列およびイントロンが小文字で示されている(配列番号15)。
【図3−7】図3は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するジテルペンシンターゼ(遺伝子)のポリペプチド(配列番号9)およびコード核酸配列(配列番号8)を示す。また、対応ゲノム核酸配列(配列番号13)が示されており、ここにおいて、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からの推定遺伝子クラスターを含む配列およびイントロンが小文字で示されている(配列番号15)。
【図3−8】図3は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するジテルペンシンターゼ(遺伝子)のポリペプチド(配列番号9)およびコード核酸配列(配列番号8)を示す。また、対応ゲノム核酸配列(配列番号13)が示されており、ここにおいて、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からの推定遺伝子クラスターを含む配列およびイントロンが小文字で示されている(配列番号15)。
【図3−9】図3は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するジテルペンシンターゼ(遺伝子)のポリペプチド(配列番号9)およびコード核酸配列(配列番号8)を示す。また、対応ゲノム核酸配列(配列番号13)が示されており、ここにおいて、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からの推定遺伝子クラスターを含む配列およびイントロンが小文字で示されている(配列番号15)。
【図3−10】図3は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するジテルペンシンターゼ(遺伝子)のポリペプチド(配列番号9)およびコード核酸配列(配列番号8)を示す。また、対応ゲノム核酸配列(配列番号13)が示されており、ここにおいて、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からの推定遺伝子クラスターを含む配列およびイントロンが小文字で示されている(配列番号15)。
【図3−11】図3は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するジテルペンシンターゼ(遺伝子)のポリペプチド(配列番号9)およびコード核酸配列(配列番号8)を示す。また、対応ゲノム核酸配列(配列番号13)が示されており、ここにおいて、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からの推定遺伝子クラスターを含む配列およびイントロンが小文字で示されている(配列番号15)。
【図4】図4は、本発明者により特定された遺伝子クラスターの一部の、提示された概要を示す。
【図5−1】図5は、公知および推定ジテルペンシンターゼ配列[フォモプシス・アミグダリ(Phomopsis amygdali)コパリルジホスファートシンターゼ(BAG30962)、ホモプシス・アミグダリ(Phomopsis amygdali)フィロクラダン−16a−オールシンターゼ(BAG30961)、フォーマ・ベタエ(Phoma betae)アフィジコラン−16b−オールシンターゼ(BAB62102)、フェオスフェリア種(Phaeosphaeria sp.)ent−カウレンシンターゼ(BAA22426)、フザリウム・プロリフェラツム(Fusarium proliferatum)ent−カウレンシンターゼ(ABC46413)、ジベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi)ent−カウレンシンターゼ(BAA84917)、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)ent−カウレンシンターゼ(EEQ29644)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)仮想タンパク質An18g02710(XP 001398730)、ネオサルトリア・フィスチェリ(Neosartorya fischeri)仮想タンパク質NFIA 009790(XP 001264196)]に対する本発明の好ましいジテルペンシンターゼ配列(「C.p」と示されている)のアミノ酸アライメントを示す。
【図5−2】図5は、公知および推定ジテルペンシンターゼ配列[フォモプシス・アミグダリ(Phomopsis amygdali)コパリルジホスファートシンターゼ(BAG30962)、ホモプシス・アミグダリ(Phomopsis amygdali)フィロクラダン−16a−オールシンターゼ(BAG30961)、フォーマ・ベタエ(Phoma betae)アフィジコラン−16b−オールシンターゼ(BAB62102)、フェオスフェリア種(Phaeosphaeria sp.)ent−カウレンシンターゼ(BAA22426)、フザリウム・プロリフェラツム(Fusarium proliferatum)ent−カウレンシンターゼ(ABC46413)、ジベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi)ent−カウレンシンターゼ(BAA84917)、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)ent−カウレンシンターゼ(EEQ29644)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)仮想タンパク質An18g02710(XP 001398730)、ネオサルトリア・フィスチェリ(Neosartorya fischeri)仮想タンパク質NFIA 009790(XP 001264196)]に対する本発明の好ましいジテルペンシンターゼ配列(「C.p」と示されている)のアミノ酸アライメントを示す。
【図5−3】図5は、公知および推定ジテルペンシンターゼ配列[フォモプシス・アミグダリ(Phomopsis amygdali)コパリルジホスファートシンターゼ(BAG30962)、ホモプシス・アミグダリ(Phomopsis amygdali)フィロクラダン−16a−オールシンターゼ(BAG30961)、フォーマ・ベタエ(Phoma betae)アフィジコラン−16b−オールシンターゼ(BAB62102)、フェオスフェリア種(Phaeosphaeria sp.)ent−カウレンシンターゼ(BAA22426)、フザリウム・プロリフェラツム(Fusarium proliferatum)ent−カウレンシンターゼ(ABC46413)、ジベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi)ent−カウレンシンターゼ(BAA84917)、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)ent−カウレンシンターゼ(EEQ29644)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)仮想タンパク質An18g02710(XP 001398730)、ネオサルトリア・フィスチェリ(Neosartorya fischeri)仮想タンパク質NFIA 009790(XP 001264196)]に対する本発明の好ましいジテルペンシンターゼ配列(「C.p」と示されている)のアミノ酸アライメントを示す。
【図6】図6は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するCYP450−1(遺伝子)の推定アミノ酸配列およびコード核酸配列を示す。
【図7】図7は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するアシルトランスフェラーゼ(遺伝子)の推定アミノ酸配列およびコード核酸配列を示す。
【図8】図8は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼ(遺伝子)の推定アミノ酸配列およびコード核酸配列を示す。
【図9】図9は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するCYP450−2(遺伝子)の推定アミノ酸配列およびコード核酸配列を示す。
【図10】図10は、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するCYP450−3(遺伝子)の推定アミノ酸配列およびコード核酸配列を示す。
【図11−1】プロイロムチリン生産性の増加はプロイロムチリン生合成クラスター内の遺伝子の転写の増強と相関すると推定することが可能である。したがって、2つの株、すなわち、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)DSM1602(ATCC34646,NRLL3100)および誘導体(Cp24;プロイロムチリン生産性の増強に関して選択されたもの)の発現プロファイルを分析した(図11A参照)。全サンプルを三重に測定した。内因性対照としてのベータアクチン遺伝子の場合に対する標的遺伝子(検出手段)に関する計算された値の正規化の後、プロイロムチリン生合成遺伝子(B:CYP450−1;C:アシルトランスフェラーゼ;D:ジテルペンシンターゼ;E:GGDPS;F:CYP450−2;G:CYP450−3)に関する相対転写産物レベル値を得た。GAPDH(図11H)を陰性対照として使用した。
【図11−2】プロイロムチリン生産性の増加はプロイロムチリン生合成クラスター内の遺伝子の転写の増強と相関すると推定することが可能である。したがって、2つの株、すなわち、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)DSM1602(ATCC34646,NRLL3100)および誘導体(Cp24;プロイロムチリン生産性の増強に関して選択されたもの)の発現プロファイルを分析した(図11A参照)。全サンプルを三重に測定した。内因性対照としてのベータアクチン遺伝子の場合に対する標的遺伝子(検出手段)に関する計算された値の正規化の後、プロイロムチリン生合成遺伝子(B:CYP450−1;C:アシルトランスフェラーゼ;D:ジテルペンシンターゼ;E:GGDPS;F:CYP450−2;G:CYP450−3)に関する相対転写産物レベル値を得た。GAPDH(図11H)を陰性対照として使用した。
【図11−3】プロイロムチリン生産性の増加はプロイロムチリン生合成クラスター内の遺伝子の転写の増強と相関すると推定することが可能である。したがって、2つの株、すなわち、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)DSM1602(ATCC34646,NRLL3100)および誘導体(Cp24;プロイロムチリン生産性の増強に関して選択されたもの)の発現プロファイルを分析した(図11A参照)。全サンプルを三重に測定した。内因性対照としてのベータアクチン遺伝子の場合に対する標的遺伝子(検出手段)に関する計算された値の正規化の後、プロイロムチリン生合成遺伝子(B:CYP450−1;C:アシルトランスフェラーゼ;D:ジテルペンシンターゼ;E:GGDPS;F:CYP450−2;G:CYP450−3)に関する相対転写産物レベル値を得た。GAPDH(図11H)を陰性対照として使用した。
【図11−4】プロイロムチリン生産性の増加はプロイロムチリン生合成クラスター内の遺伝子の転写の増強と相関すると推定することが可能である。したがって、2つの株、すなわち、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)DSM1602(ATCC34646,NRLL3100)および誘導体(Cp24;プロイロムチリン生産性の増強に関して選択されたもの)の発現プロファイルを分析した(図11A参照)。全サンプルを三重に測定した。内因性対照としてのベータアクチン遺伝子の場合に対する標的遺伝子(検出手段)に関する計算された値の正規化の後、プロイロムチリン生合成遺伝子(B:CYP450−1;C:アシルトランスフェラーゼ;D:ジテルペンシンターゼ;E:GGDPS;F:CYP450−2;G:CYP450−3)に関する相対転写産物レベル値を得た。GAPDH(図11H)を陰性対照として使用した。
【図12】図12は、プライマーペアCp dts U1およびCp dts L1での定量的PCRにより測定されたジテルペンシンターゼの発現レベルを示す。
【図13】図13は、プライマーペアCp dts U2およびCp dts L2での定量的PCRにより測定されたジテルペンシンターゼの発現レベルを示す。
【図14】図14は、プラスミドP2558を含有する形質転換体(C1〜C6)および親株DSM1602と比較された場合の、プラスミドP2543を含有するRNA干渉形質転換体(T1〜T9)のプロイロムチリン生産性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
配列の説明
【0070】
【化2】



【0071】
配列番号1〜3は、本発明の好ましいポリペプチド、より厳密には好ましいジテルペンシンターゼの保存領域のアミノ酸配列であり、一方、配列番号4〜7は該ポリペプチドの署名配列に関するものである。
【0072】
配列番号9(配列番号14も参照)は、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のプロイロムチリンの産生に関与するジテルペンシンターゼの推定ポリペプチド配列を示す。
【0073】
配列番号8は、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のプロイロムチリンの産生に関与するジテルペンシンターゼcDNAの対応ヌクレオチド配列を示す。配列番号8はまた、配列番号15の逆相補鎖(すなわち、(−)鎖)に含まれる。
【0074】
配列番号10〜12は、配列番号1〜3の保存領域をコードする核酸配列である。
【0075】
配列番号13は、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のプロイロムチリンの産生に関与するジテルペンシンターゼの推定遺伝子配列を示す。
【0076】
配列番号15は、ジテルペノイド、より厳密にはプロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する遺伝子クラスターを含むと想定される核酸配列を示す。該核酸配列はクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のゲノムに由来する。
【0077】
配列番号16〜39は、後記実施例3に記載されているRACEにおいて使用したプライマーおよびネステッドプライマーである。
【0078】
配列番号40は、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のプロイロムチリンの産生に関与するCYP450−1の推定オープンリーディングフレームを示す。配列番号41はCYP450−1の推定アミノ酸配列である。
【0079】
配列番号42は、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のプロイロムチリンの産生に関与するアシルトランスフェラーゼの推定オープンリーディングフレームを示す。配列番号43はアシルトランスフェラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0080】
配列番号44は、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のプロイロムチリンの産生に関与するGGDPSの推定オープンリーディングフレームを示す。配列番号45はGGDPSの推定アミノ酸配列である。
【0081】
配列番号46は、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のプロイロムチリンの産生に関与するCYP450−2の推定オープンリーディングフレームを示す。配列番号47はCYP450−2の推定アミノ酸配列である。
【0082】
配列番号48は、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のプロイロムチリンの産生に関与するCYP450−3の推定オープンリーディングフレームを示す。配列番号49はCYP450−3の推定アミノ酸配列である。
【0083】
配列番号50〜63は、後記実施例3に記載されている定量的PCR発現分析において使用したプライマーである。
【0084】
配列番号64〜66はP2543 ヘアピンのRNAiカセットを定めている。
【0085】
配列番号67および68は、該ヘアピンカセットの効率的転写のために使用されるプロモーターおよびターミネーターを示す。
【0086】
配列番号69は、後記実施例4に記載されているP2558を構築するために使用された。
【0087】
配列番号70および71は、後記実施例4に記載されている定量的PCR発現分析において使用したプライマーである。
【0088】
好ましい態様および実施形態の詳細な説明
本発明は特に、特許請求の範囲に定義されているとおりのポリペプチドおよび核酸分子のような化合物ならびに方法および用途に関する。
【0089】
一般に、第1の態様においては、本発明は、単離された新規ポリペプチド、特に新規ジテルペンシンターゼ、特にプロイロムチリンシンターゼに関する。
【0090】
1つの実施形態においては、該ポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、配列番号2に対して少なくとも40%の配列同一性を有する配列、ならびにi)配列番号7に対して少なくとも15%の配列同一性を有する配列、ii)配列番号4に対して少なくとも25%の配列同一性を有する配列、iii)配列番号5に対して少なくとも45%の配列同一性を有する配列、およびiv)配列番号6に対して少なくとも45%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される少なくとも1つの配列を含むアミノ酸配列を含み、ここで、配列番号1〜2および4〜7はクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)由来である。そのような単離されたポリペプチドのアミノ酸配列は更に、配列番号3に対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列を含みうる。配列番号1〜7はクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)由来である。
【0091】
もう1つの実施形態においては、該ポリペプチドは、配列番号3に対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、配列番号2に対して少なくとも40%の配列同一性を有する配列、および前記のi)〜iv)からなる群から選択される少なくとも1つの配列を含むアミノ酸配列を含む。
【0092】
もう1つの実施形態においては、該ポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、配列番号3に対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、および前記のi)〜iv)からなる群から選択される少なくとも1つの配列を含むアミノ酸配列を含む。
【0093】
もう1つの実施形態においては、該ポリペプチドは、配列番号9に対して少なくとも60%、特に少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、配列番号9に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えば、より一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むアミノ酸配列を含む。
【0094】
本明細書中に定められている単離されたポリペプチドの分子量は、好ましくは90kDa〜140kDaの間、特に100kDa〜130kDaの間、特に105kDa〜120kDaの間である。
【0095】
特定の実施形態においては、該ポリペプチドは、配列番号1および配列番号2、ならびに前記のi)〜iv)からなる群から選択される少なくとも1つの配列、特に、i’)配列番号7、ii’)配列番号4、iii’)配列番号5およびiv’)配列番号6からなる群から選択される少なくとも1つの配列を含むアミノ酸配列を含む。アミノ酸配列は更に配列番号3を含みうる。
【0096】
本発明の単離ポリペプチドは、好ましくは、ジテルペンシンターゼ活性、特に、プロイロムチリンシンターゼ活性を有する。したがって、該単離ポリペプチドは、好ましくは、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するものであり、好ましくは、ゲラニルゲラニルピロホスファートをプロイロムチリン前駆体、特に式(I)の化合物に変換するのを触媒しうる。より好ましくは、それはプロイロムチリンの産生のためにプロイロムチリン産生生物において必須である。
【0097】
前記のとおり、本発明者らは、ジテルペノイド、より厳密にはプロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のゲノムに由来する遺伝子クラスターを含むと想定される核酸配列を特定することに成功した。該核酸配列は、プロイロムチリン生合成に関与すると考えられるポリペプチド、すなわち、アシルトランスフェラーゼ(AT)、ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼ(GGDPS)および3つのシトクロムP450酵素をコードする少なくとも6つの転写的に共調節されているオープンリーディングフレームを含むと予想される。典型的に、ヒドロキシルまたは他の酸素官能基は、モノオキシゲナーゼ、例えばシトクロムP450モノオキシゲナーゼの作用により導入される。生じたヒドロキシル基はアシル化、アルキル化およびグリコシル化により更に修飾されうる。プロイロムチリンを産生する経路の後続反応においては、シトクロムP−450酵素(例えばC3およびC11に作用する)およびアシルトランスフェラーゼ(例えばC14ヒドロキシルに作用する)の作用は、プロイロムチリンの形成を完了するのに必要と考えられる(Yao,2007参照)。
【0098】
したがって、もう1つの実施形態においては、該ポリペプチドは、配列番号43に対して少なくとも60%、特に少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは配列番号43に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えばより一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むアミノ酸配列を含む。この単離ポリペプチドは、好ましくは、アシルトランスフェラーゼ活性を有する。したがって、該単離ポリペプチドは、好ましくは、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するものであり、好ましくは、例えば、図2に示されている式(III)の化合物から式(IV)への変換において、例えばC14ヒドロキシルに作用する。より好ましくは、それはプロイロムチリンの産生のためにプロイロムチリン産生生物において必須である。好ましい実施形態においては、本発明のアシルトランスフェラーゼは、配列番号43のアシルトランスフェラーゼの活性の少なくとも5%、10%または20%、好ましくは少なくとも30%または40%、例えば少なくとも50%または少なくとも60%、70%、80%、特に少なくとも90%または95%、特に少なくとも100%、例えば少なくとも125%、150%または175%の活性、特に、配列番号43のアシルトランスフェラーゼの活性の少なくとも2倍または5倍、少なくとも10倍または25倍、例えば50〜100倍の活性を有する。配列番号45のアシルトランスフェラーゼと比較して変異体アシルトランスフェラーゼの活性を測定するためには、アシルトランスフェラーゼ活性を可能にする同一条件下でインキュベートした場合に、式(IV)の化合物の濃度の経時的な増加、または適当な基質、例えばアシル−CoAもしくは式(III)の化合物の減少を測定することを含む、いずれかの適当な方法が用いられうる。典型的アッセイは、[H]標識基質を使用することによる産物形成および/またはGC−MSによる検出を含みうる。しかし、用いられうる適当なアッセイは当技術分野において一般に公知である。
【0099】
もう1つの実施形態においては、該ポリペプチドは、配列番号45に対して少なくとも60%、特に少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは配列番号45に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えばより一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むアミノ酸配列を含む。この単離ポリペプチドは、好ましくは、ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼ活性を有する。したがって、該単離ポリペプチドは、好ましくは、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するものであり、好ましくは、ゲラニルゲラニルピロホスファート(GGPP)の形成に関与するものであり、これは、好ましくは、ファルネシルピロホスファート(FPP)から形成される。より好ましくは、それはプロイロムチリンの産生のためにプロイロムチリン産生生物において必須である。好ましい実施形態においては、本発明のゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼは、配列番号45のゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼの活性の少なくとも5%、10%または20%、好ましくは少なくとも30%または40%、例えば少なくとも50%または少なくとも60%、70%、80%、特に少なくとも90%または95%、特に少なくとも100%、例えば少なくとも125%、150%または175%の活性、特に、配列番号45のゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼの活性の少なくとも2倍または5倍、少なくとも10倍または25倍、例えば50〜100倍の活性を有する。配列番号45のゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼと比較して変異体ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼの活性を測定するためには、GGPP形成を可能にする同一条件下で適当な基質、例えばFPPと共にインキュベートした場合に、GGPPの濃度の経時的な増加、または適当な基質、例えばFPPの減少を測定することを含む、いずれかの適当な方法が用いられうる。典型的アッセイは、[H]標識基質を使用することによる産物形成および/またはGC−MSによる検出を含みうる。GGDPS活性を測定するための好適でありうる他のアッセイは、例えば、Changら(2006)Crystal structure of type−III geranylgeranyl pyrophosphate synthase from Saccharomyces cerevisiae and the mechanism of product chain length determination.Journal of Biological Chemistry;281(21):14991−15000;およびSingkaravanit S.ら,(2010)Geranylgeranyl diphosphate synthase genes in entomopathogenic fungi.Appl Microbiol Biotechnol;85(5):1463−1472に記載されている。しかし、一般に用いられうる適当なアッセイは当技術分野において公知である。
【0100】
更にもう1つの実施形態においては、該ポリペプチドは、配列番号41に対して少なくとも60%、特に少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは配列番号41に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えばより一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むアミノ酸配列を含む。
【0101】
あるいは、該ポリペプチドは、配列番号47に対して少なくとも60%、特に少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは配列番号47に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えばより一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むアミノ酸配列を含む。あるいは、該ポリペプチドは、配列番号49に対して少なくとも60%、特に少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは配列番号49に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えばより一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むアミノ酸配列を含む。
【0102】
この単離ポリペプチドは、好ましくは、シトクロムP450活性、例えばモノオキシゲナーゼ活性を有する。したがって、該単離ポリペプチドは、好ましくは、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与し、好ましくは、例えばプロイロムチリン前駆体、例えば図2の式(I)または(II)に示されているプロイロムチリン前駆体のC3およびC11に作用する。したがって、シトクロムP450は、好ましくは、モノオキシゲナーゼである。好ましくは、該シトクロムP450は、図2に示されている式(I)の化合物から式(II)の化合物への変換および/または式(II)の化合物から式(III)の化合物への変換に関与する。より好ましくは、それはプロイロムチリンの産生のためにプロイロムチリン産生生物において必須である。好ましい実施形態においては、該シトクロムP450酵素は、それぞれ配列番号41、47および49によりコードされる対応シトクロムP450の活性の少なくとも5%、10%または20%、好ましくは少なくとも30%または40%、例えば少なくとも50%または少なくとも60%、70%、80%、特に少なくとも90%または95%、特に少なくとも100%、例えば少なくとも125%、150%または175%、特に、それぞれ配列番号41、47および49によりコードされる対応シトクロムP450の活性の少なくとも2倍または5倍、少なくとも10倍または25倍、例えば50〜100倍の活性を有する。それぞれ配列番号41、47または49のシトクロムP450酵素と比較して変異体シトクロムP450酵素の活性を測定するためには、シトクロムP450活性を可能にする同一条件下でインキュベートした場合に、式(II)または(III)の化合物の濃度の経時的な増加、または適当な基質、例えば式(I)または(II)の化合物の減少を測定することを含む、いずれかの適当な方法が用いられうる。典型的アッセイは、[H]標識基質を使用することによる産物形成および/またはGC−MSによる検出を含みうる。しかし、用いられうる適当なアッセイは当技術分野で公知である。
【0103】
ある好ましい実施形態においては、本発明のポリペプチドは非天然ポリペプチドである。
【0104】
第2の態様においては、
A)請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは配列番号9のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
B)a)配列番号8の配列、または
a’)配列番号15の配列もしくはそれに相補的な配列、または
b)a’)に記載の配列の部分配列(該部分配列はジテルペンシンターゼをコードするものである)、または
c)a’)に記載の配列に対して少なくとも40%の配列同一性を有する、もしくはa)に記載の配列もしくはb)に記載の部分配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有し、ジテルペンシンターゼをコードする配列、または
d)ジテルペンシンターゼをコードし、a)、a’)、b)およびc)のいずれかに記載の配列に対する遺伝暗号の結果として縮重している配列、または
e)ジテルペンシンターゼをコードし、ストリンジェントな条件下で配列番号8および/もしくは配列番号13にハイブリダイズしうる配列
であるヌクレオチド配列、
C)B項に記載のヌクレオチド配列の少なくとも18個の連続的ヌクレオチド、および/または
D)ストリンジェントな条件下でA項もしくはB項に記載のヌクレオチド配列を有する核酸分子にハイブリダイズしうる少なくとも18個の連続的ヌクレオチドを含む単離された核酸分子を提供する。
【0105】
1つの好ましい実施形態においては、該単離核酸分子は前記のA)を含む。もう1つの好ましい実施形態においては、該単離核酸分子は前記のB)のいずれか、例えばBa、Ba’、Bb、Bc、Beを含む。
【0106】
一般に、本発明の好ましい核酸分子はジテルペンシンターゼ、より好ましくはプロイロムチリンシンターゼをコードしており、および/または、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチド、より好ましくは、プロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードしている。追加的または代替的に、該単離核酸分子は
A)配列番号43のポリペプチド、または前記のとおり配列番号43に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含みアシルトランスフェラーゼ活性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
B)a)配列番号42の配列、または
b)アシルトランスフェラーゼをコードする、配列番号15の部分配列、もしくはそれに相補的な配列、または
c)a)に記載の配列もしくはb)に記載の部分配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有し、アシルトランスフェラーゼをコードする配列、または
d)アシルトランスフェラーゼをコードし、a)、b)およびc)のいずれかに記載の配列に対する遺伝暗号の結果として縮重している配列、または
e)アシルトランスフェラーゼをコードし、ストリンジェントな条件下で配列番号42にハイブリダイズしうる配列であるヌクレオチド配列を(も)含みうる。
【0107】
好ましくは、該アシルトランスフェラーゼは、プロイロムチリンまたはプロイロムチリン前駆体、例えば図2に示されている式(IV)の化合物の産生に関与する。
【0108】
追加的または代替的に、該単離核酸分子は、
A)配列番号45のポリペプチド、または前記のとおり配列番号45に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含みゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
B)a)配列番号44の配列、または
b)ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼをコードする、配列番号15の部分配列、もしくはそれに相補的な配列、または
c)a)に記載の配列もしくはb)に記載の部分配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有し、ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼをコードする配列、または
d)ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼをコードし、a)、b)およびc)のいずれかに記載の配列に対する遺伝暗号の結果として縮重している配列、または
e)ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼをコードし、ストリンジェントな条件下で配列番号44にハイブリダイズしうる配列であるヌクレオチド配列を(も)含みうる。
【0109】
追加的または代替的に、該単離核酸分子は、
A)配列番号41のポリペプチド、または前記のとおり配列番号41に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含みシトクロムP450活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
B)a)配列番号40の配列、または
b)シトクロムP450をコードする、配列番号15の部分配列、もしくはそれに相補的な配列、または
c)a)に記載の配列もしくはb)に記載の部分配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有し、シトクロムP450をコードする配列、または
d)シトクロムP450をコードし、a)、b)およびc)のいずれかに記載の配列に対する遺伝暗号の結果として縮重している配列、または
e)シトクロムP450をコードし、ストリンジェントな条件下で配列番号40にハイブリダイズしうる配列であるヌクレオチド配列を(も)含みうる。
【0110】
追加的または代替的に、該単離核酸分子は、
A)配列番号47のポリペプチド、または前記のとおり配列番号47に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含みシトクロムP450活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
B)a)配列番号46の配列、または
b)シトクロムP450をコードする、配列番号15の部分配列、もしくはそれに相補的な配列、または
c)a)に記載の配列もしくはb)に記載の部分配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有し、シトクロムP450をコードする配列、または
d)シトクロムP450をコードし、a)、b)およびc)のいずれかに記載の配列に対する遺伝暗号の結果として縮重している配列、または
e)シトクロムP450をコードし、ストリンジェントな条件下で配列番号46にハイブリダイズしうる配列であるヌクレオチド配列を(も)含みうる。
【0111】
追加的または代替的に、該単離核酸分子は、
A)配列番号49のポリペプチド、または前記のとおり配列番号49に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含みシトクロムP450活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
B)a)配列番号48の配列、または
b)シトクロムP450をコードする、配列番号15の部分配列、もしくはそれに相補的な配列、または
c)a)に記載の配列もしくはb)に記載の部分配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有し、シトクロムP450をコードする配列、または
d)シトクロムP450をコードし、a)、b)およびc)のいずれかに記載の配列に対する遺伝暗号の結果として縮重している配列、または
e)シトクロムP450をコードし、ストリンジェントな条件下で配列番号48にハイブリダイズしうる配列であるヌクレオチド配列を(も)含みうる。
【0112】
好ましくは、該シトクロムP450活性はモノオキシゲナーゼ活性であり、より好ましくは、プロイロムチリン前駆体、例えば図2に示されている式(II)の化合物および/または式(III)の化合物の産生に関与する。
【0113】
本明細書中で用いる「ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする配列」は、好ましくは、ジテルペンシンターゼをコードする配列である。好ましくは、ジテルペンシンターゼをコードする配列は、プロイロムチリンシンターゼをコードする配列である。
【0114】
また、本明細書中で用いる「ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする配列」は、好ましくは、プロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする配列である。好ましくは、プロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする配列は、プロイロムチリンシンターゼをコードする配列である。
【0115】
1つの追加的実施形態においては、該単離核酸分子は前記のC)を含む。1つの追加的実施形態においては、該単離核酸分子は前記のD)を含む。C)またはD)の少なくとも18個の連続的ヌクレオチドは、好ましくは、少なくとも19、20、25個、特に少なくとも30、35、40、45個、特に少なくとも50、55、60、65個、特に少なくとも70、75、80、85、90、95個、特に少なくとも100、150、200、250個、特に少なくとも300、350、400、450または500個の連続的ヌクレオチドである。
【0116】
Ba’の配列は、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のゲノムDNAを単離し、配列決定することにより得られた。
【0117】
好ましい実施形態においては、本発明の核酸分子は、配列番号8に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、配列番号8に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には90%、例えば、より一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列を含む。
【0118】
他の好ましい実施形態においては、本発明の核酸分子は、配列番号15に対して少なくとも50%、特に少なくとも60%、特に少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、配列番号15に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には90%、例えば、より一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列を含む。ある好ましい実施形態においては、本発明の核酸分子は、ジテルペンを産生する、特にプロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する遺伝子クラスターを含む。
【0119】
該単離ポリペプチドおよび該単離核酸分子は、好ましくは真菌宿主、特に担子菌門の真菌、より詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌、特にクリトピルス(Clitopilus)属の真菌、特に、クリトピルス・シフォイデス(Clitopilus scyphoides)、クリトピルス・プルヌルス(Clitopilus prunulus)、クリトピルス・ホブソニイ(Clitopilus hobsonii)、クリトピルス・プソイド−ピンシツス(Clitopilus pseudo−pinsitus)、クリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)およびクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からなる群からの真菌、特に、クリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)またはクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)の真菌、あるいはプロイロツス(Pleurotus)属の真菌に由来しうる。
【0120】
ある好ましい実施形態においては、本発明の核酸分子は非天然核酸分子である。
【0121】
本発明の核酸分子は更に、1以上の調節配列、例えばプロモーター、特に強力プロモーター、エンハンサー、リプレッサー結合部位、内部リボソーム進入部位(IRES)およびターミネーターから選択される調節配列を含むことが可能であり、あるいはそれらのあらゆる組合せを更に含むことが可能である。該核酸分子が、ジテルペン合成経路、例えばプロイロムチリン生合成経路に関与する本発明の2以上の核酸配列を含む場合、該核酸配列は縦列配向で位置することが可能であり、あるいはポリシストロン性であることが可能である。縦列発現またはポリシストロン発現のための調節配列は当技術分野で公知である。本発明の核酸分子は、プロイロムチリン生合成経路に関与する本発明のジテルペンシンターゼをコードしうる。あるいは、該核酸分子は、プロイロムチリン生合成経路に関与する本発明のアシルトランスフェラーゼをコードしうる。あるいは、該核酸分子は、プロイロムチリン生合成経路に関与する本発明のゲラニルゲラニルシンターゼをコードしうる。あるいは、該核酸分子は、プロイロムチリン生合成経路に関与する本発明の少なくともシトクロムP450酵素、例えばモノオキシゲナーゼをコードしうる。あるいは、該核酸分子は、プロイロムチリン生合成経路に関与する本発明のジテルペンシンターゼおよび本発明のアシルトランスフェラーゼの両方をコードしうる。あるいは、該核酸分子は、プロイロムチリン生合成経路に関与する本発明のジテルペンシンターゼおよび本発明のゲラニルゲラニルシンターゼの両方をコードしうる。あるいは、該核酸分子は、プロイロムチリン生合成経路に関与する本発明のジテルペンシンターゼおよび本発明の少なくとも1つのシトクロムP450酵素の両方をコードしうる。しかし、プロイロムチリン生合成経路に関与する本発明のアシルトランスフェラーゼおよび本発明の少なくとも1つのシトクロムP450酵素の両方をコードしうる核酸分子も想定される。また、プロイロムチリン生合成経路に関与する本発明のアシルトランスフェラーゼおよび本発明のゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼの両方をコードしうる核酸分子も想定される。また、プロイロムチリン生合成経路に関与する本発明の少なくとも1つのシトクロムP450酵素および本発明のゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼの両方をコードしうる核酸分子も想定される。該単離核酸分子は、プロイロムチリン生合成経路に関与する本発明のジテルペンシンターゼ、本発明の少なくとも1つのシトクロムP450酵素および本発明のゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼをもコードしうる。あるいは、該単離核酸分子は、プロイロムチリン生合成経路に関与する本発明のジテルペンシンターゼ、本発明のアシルトランスフェラーゼおよび本発明のゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼをもコードしうる。あるいは、該単離核酸分子は、プロイロムチリン生合成経路に関与する本発明のジテルペンシンターゼ、本発明のアシルトランスフェラーゼおよび本発明の少なくとも1つのシトクロムP450酵素をもコードしうる。最後に、該単離核酸分子は、プロイロムチリン生合成経路に関与する本発明のジテルペンシンターゼ、本発明のゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼ、本発明のアシルトランスフェラーゼおよび本発明の少なくとも1つのシトクロムP450酵素をもコードしうる。1つの実施形態(i)においては、前記の少なくとも1つのシトクロムP450酵素は、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有するポリペプチド、または前記のとおりに配列番号41に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含みシトクロムP450活性を有するポリペプチドである。もう1つの実施形態(ii)においては、前記の少なくとも1つのシトクロムP450酵素は、配列番号47に示されているアミノ酸配列を有するポリペプチド、または前記のとおりに配列番号47に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含みシトクロムP450活性を有するポリペプチドである。更にもう1つの実施形態(iii)においては、前記の少なくとも1つのシトクロムP450酵素は、配列番号49に示されているアミノ酸配列を有するポリペプチド、または前記のとおりに配列番号49に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含みシトクロムP450活性を有するポリペプチドである。この文脈における「少なくとも1つのシトクロムP450酵素」なる語は、前記実施形態(i)、(ii)および(iii)から選択される1、2または3個のシトクロムp450酵素を意味する。特に好ましいのは、(i)および(ii)の組合せ、または(i)および(iii)の組合せ、または(ii)および(iii)の組合せ、および(i)、(ii)および(iii)の組合せである。
【0122】
第3の態様は、本発明の核酸分子を含むベクターに関する。ベクターは当技術分野で一般に公知である。一般的なベクターには、表現型マーカー、好ましくは選択マーカーが含まれ、その非限定的な例には、抗生物質耐性または或るアミノ酸に関する原栄養性を付与するマーカーが含まれる。あるいは、該マーカーはスクリーニング可能なマーカーでありうる。特定の発現ベクター、例えば縦列発現ベクターまたはポリシストロン発現ベクターも想定される。
【0123】
第4の態様は、宿主、特に、細胞、組織および非ヒト生物から選択される天然に存在しない宿主に関するものであり、該宿主は、本発明の少なくとも1つの核酸分子および/または本発明の少なくとも1つのベクターを含む。特に、該宿主は真菌宿主、特に担子菌門の真菌、より詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌、特にクリトピルス(Clitopilus)属またはプロイロツス(Pleurotus)属の真菌である。
【0124】
幾つかの好ましい実施形態においては、該宿主は、配列番号8に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、配列番号8に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えば、より一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列を含む。
【0125】
他の好ましい実施形態においては、該宿主は、配列番号40に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、配列番号40に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えば、より一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列を含む。
【0126】
他の好ましい実施形態においては、該宿主は、配列番号42に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、配列番号42に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えば、より一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列を含む。
【0127】
他の好ましい実施形態においては、該宿主は、配列番号44に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、配列番号44に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えば、より一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列を含む。
【0128】
他の好ましい実施形態においては、該宿主は、配列番号46に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、配列番号46に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えば、より一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列を含む。
【0129】
他の好ましい実施形態においては、該宿主は、配列番号48に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、配列番号48に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えば、より一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列を含む。
【0130】
他の好ましい実施形態においては、該宿主は、配列番号13に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、配列番号13に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えば、より一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列を含む。
【0131】
他の好ましい実施形態においては、該宿主は、配列番号15に対して少なくとも50%、特に少なくとも60%、特に少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、配列番号15に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えば、より一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列を含む。
【0132】
本明細書中の開示ならびに特に推定DTSコード配列(cds)および配列番号8、13の遺伝子、またはコード配列配列番号40、42、44、46、48および配列番号15(ジテルペンを産生する生合成経路に関与する推定遺伝子クラスターを含む)に基づいて、ジテルペンシンターゼ、アシルトランスフェラーゼ、GGDPSおよび/またはシトクロムP450酵素をコードする本発明の核酸分子が当業者により容易に得られうると予想される。すなわち、バイオインフォマティクス技術/計算技術、例えば遺伝子予測ソフトウェア、例えば「GeneScan」を用いて、真核生物DNA配列からのタンパク質コード遺伝子の全ゲノム予測のための計算手段が、該核酸分子、およびジテルペンを産生する生合成経路に関与するタンパク質をコードする他の核酸配列(該配列は、本明細書に記載されている遺伝子クラスターの一部である)の同一性および位置を特定するために適切に用いられうる。
【0133】
また、ジテルペンを産生する生合成経路に関与する遺伝子クラスターをコードする予想される配列番号15が、これに関して適切に使用されうる。該核酸分子は、例えば、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)から取り出されることが可能であり、および/または本発明の他のヌクレオチド配列を得るために、通常の技術、例えば部位特異的突然変異誘発により修飾されることが可能である。
【0134】
特に、本発明の好ましいポリペプチドの保存領域をコードする部分核酸配列配列番号10〜12、および特に、本発明の好ましいポリペプチドをコードする配列番号8、40、42、44、46、48、および特に、ジテルペンを産生する生合成経路に関与する遺伝子クラスターをコードすると予想される配列番号15に基づいて、当業者は本発明の核酸を容易に特定し入手すると考えられる。
【0135】
本明細書中の開示に基づいて、本発明の核酸分子および本発明のベクターは、以下に概説する方法によっても得られうると予想される。第1工程は、例えば、特定の細胞培養、例えばクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からの細胞培養、例えばクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からの菌糸から単離されたメッセンジャーRNA集団を調製し、所望のメッセンジャーRNAの少なくとも一部にハイブリダイズさせるのに適したDNAプローブを調製することである。この目的に適していると考えられる典型的なDNAプローブは、DNA配列、例えば配列番号8および10〜13に基づくものであることが可能であり、該DNA配列のうち、配列番号8は、本発明の好ましいポリペプチドをコードする核酸配列であり、配列番号10〜12は本発明の好ましいポリペプチドの保存領域をコードしている。この目的に適していると考えられる他の有用なDNAプローブは、配列番号40、42、44、46および48(これらはそれぞれ、本発明の好ましいポリペプチドをコードする核酸配列である)に示されているDNA配列に基づくものでありうる。
【0136】
後続工程は、該DNAプローブにより該メッセンジャーRNA集団をスクリーニングし、逆転写酵素により該メッセンジャーRNAからcDNA分子を調製し、該cDNA分子をベクター内にクローニングし、これらのベクターを例えば制限酵素またはDNA配列決定により分析し、該cDNA断片を含有する又は含有する可能性のあるベクターを選択することである。ついで該cDNA断片を、該ポリペプチドの発現を可能にする良く知られた遺伝的要素を備えた適当な発現ベクター内に移すことが可能である。該cDNA断片が所望の遺伝子を表さない場合には、異なるクローンのcDNA断片を組合せ、ついで、該ポリペプチドの発現を可能にする良く知られた遺伝的要素を備えた適当な発現ベクター内に挿入することが可能である。更に、より大きな配列部分を含有するコスミドライブラリーをスクリーニングすることにより、または例えば相互重複DNA領域を含む遺伝子バンク内のゲノムウォーキングのような技術により、関心のある領域の隣接領域を分析することが可能である。
【0137】
該核酸分子は、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)、またはジテルペン、特にプロイロムチリン抗生物質、特にプロイロムチリンを産生することが公知である若しくは疑われる別の生物から調製されうると予想される。好ましくは、該生物は真菌宿主、より詳しくは担子菌門の真菌、より一層詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌、特にクリトピルス(Clitopilus)属またはプロイロツス(Pleurotus)属の真菌、特に、本明細書に開示されているプロイロムチリン産生体である。陽性クローンは、例えば制限酵素分析、配列決定、配列比較などにより分析されうる。
【0138】
RNA転写産物の完全長配列を得るための1つの典型的な適当な技術は「RACE」(cDNA末端の迅速増幅)として公知であり、これは、cDNAコピーの逆転写により産生された関心のあるRNA配列のcDNAコピーを産生する。ついでPCR増幅cDNAコピーは配列決定される。RACEは、RNAの5’末端(5’RACE−PCR)または3’末端(3’RACE−PCR)に該転写産物内の小さな既知配列からのRNA転写産物の配列を供与しうる。この方法は後記実施例3において更に詳しく例示される。
【0139】
該遺伝子クラスターの境界をより厳密に定め、該クラスターの調節を明らかにするための、当業者に公知の手段には、qRT−PCR(定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応)による転写プロファイリングが含まれ、この場合、反応が進行するにつれて増幅cDNAがリアルタイムで検出される。特に、この技術は、共調節を特定するのに、および遺伝子クラスターに属し機能的に関連した遺伝子の発現レベルを定量するのに適している。また、転写プロファイリングは、ゲノム内のどこかに位置する機能性関連遺伝子を特定するためにも適用されうる。この方法は後記実施例3において更に詳しく例示される。
【0140】
本開示に基づいて本発明の核酸配列を入手するのを補助するための適当な詳細は、例えば、Kawaideら,1997またはKilaruら,2009bから得られうる。
【0141】
本発明のポリペプチドの配列は、このようにして得られた核酸配列から容易に推定されうる。更に、本発明のポリペプチドは、このようにして得られたcDNA(核酸分子)または発現ベクターを適当な方法で使用してポリペプチドの発現を達成することにより、例えば、宿主内への導入により製造されうる。
【0142】
したがって、第5の態様は、(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、本発明の少なくとも1つの核酸分子および/または本発明の少なくとも1つのベクターを導入し、(ii)該ポリペプチドの産生に適した条件下で該宿主を培養することを含む、本発明のポリペプチドの製造方法に関する。個別的には、該方法は、(iii)該宿主から該ポリペプチドを回収する、もう1つの工程を含む。
【0143】
遺伝的物質を宿主内に導入するための方法は当業者によく知られており、好ましい方法はそれぞれの宿主に左右される。例えば、該宿主が真菌、例えばクリトピルス(Clitopilus)属の真菌である場合、非限定的な例は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換系およびPEG媒介形質転換系(Kilaruら,2009b参照)を含むと考えられる。
【0144】
宿主からポリペプチドをそれぞれ回収または精製する方法は当業者に公知である。これらの方法は、いずれかの公知クロマトグラフィー技術、例えばイオン交換クロマトグラフィーまたはHPLC、遠心分離技術、例えば超遠心分離、沈殿技術、例えば硫酸アンモニウム沈殿、差次的可溶化技術などを用いうる。簡便には、ポリペプチドは、N末端またはC末端タグ、例えばHisタグの使用、および対応精製技術、例えばNi2+−アフィニティークロマトグラフィーの使用を含むいずれかの公知技術により精製されうる。また、該宿主からの該ポリペプチドの分泌を可能にする手段、例えばシグナルペプチドの使用による手段を用いる場合、工程(iii)は必須でないかもしれない。後者の場合、増殖培地がそのまま使用されることが可能であり、あるいは1以上の精製工程に付されることが可能である。
【0145】
第6の態様は、(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、本発明の遺伝子クラスター、例えば、前記Ba’に記載の配列を有する核酸分子を導入し、(ii)プロイロムチリンの産生に適した条件下で該宿主を培養することを含む、プロイロムチリンの製造方法に関する。
【0146】
1つの実施形態においては、該方法は、前記Ba’に記載の配列を有する核酸分子に加えて又はその代わりに、前記Ba’に記載の配列を含むベクターを導入することを含む。
【0147】
該宿主は、プロイロムチリンを産生しうる又は産生し得ない宿主であることが可能であり、好ましくは、プロイロムチリンを産生し得ない宿主である。該宿主は、プロイロムチリンを産生するための全遺伝子クラスターが欠如しているため、またはその一部が欠如しているため、プロイロムチリンを産生し得ないことが可能である。したがって、該方法は、全クラスター、例えば前記Ba’に記載の配列を提供することにより実施可能であると考えられる。あるいは、該クラスターを完全なものにし、プロイロムチリンの産生を可能にするために、該クラスターの(欠落している)一部のみが提供されうる。特に、該宿主は、プロイロムチリンシンターゼまたはプロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチド(本明細書に記載されているもの)をコードする核酸が存在しないため、プロイロムチリンを産生し得ないことが可能である。この場合、本発明の核酸分子またはポリペプチドが導入されうる。一般に、プロイロムチリンの産生を増加させるために、該核酸分子の2以上のコピーが導入されうる。該核酸分子はベクターの一部でありうる。導入に際して、該導入核酸分子は染色体内に組込まれても組込まれなくてもよい。
【0148】
第7の態様は、一般に、細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主におけるプロイロムチリンの産生の改変方法に関する。好ましい実施形態においては、それは、細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主におけるプロイロムチリンの産生の改変方法に関するものであり、ここで、該宿主はプロイロムチリンを産生することが可能であり、前記A)またはB)に記載のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの核酸分子を含み、該方法は、前記の少なくとも1つの核酸分子のi)発現、ii)同一性、またはiii)発現および同一性の両方を操作することを含む。
【0149】
この方法は、プロイロムチリンの産生(製造)を増加させる方法であると想定される。プロイロムチリンの産生の増加は、前記の少なくとも1つの核酸分子の発現を直接的または間接的に操作することにより達成されうる。これに関する直接的操作は、例えば、前記の少なくとも1つの核酸分子の更なるコピーの供与により、例えば、本明細書に開示されているベクターの導入により、および/または染色体内への組込みにより達成されうる。好ましい実施形態においては、本発明の1以上の核酸分子の過剰発現は1以上のベクターにより達成される。1つの実施形態においては、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)から入手可能な配列番号15の配列(該配列は、ジテルペンを産生する生合成経路に関与する遺伝子クラスターをコードすると予想され、本明細書に記載されている情報、特に核酸配列配列番号8および10〜12が当業者に与えられれば、該配列は当技術分野で公知の分子生物学的方法により入手可能である)が該宿主内に導入される。代替的または追加的に、核酸配列配列番号40、42、44、46および/または48を含む本発明の核酸分子は該宿主内に導入されうる。適当なベクターおよび発現系が当技術分野で公知であり、これらには、担子菌に関する例としての以下の刊行物:Binningerら,1987;Kilaruら,2009a;およびKilaruら,2009b(それらを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているベクター/選択系、ならびにストレプトミセテス(Streptomycetes)に関する例としての以下の刊行物:Lacalleら,1992;JonesおよびHopwood,1984ならびにMotamediおよびHutchison,1987(それらを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているベクター/選択系が含まれる。
【0150】
これに関する間接的操作は、例えば、適当なプロモーターまたはエンハンサーのような要素の提供により、あるいはリプレッサー結合部位またはターミネーターの除去により、あるいはそれらの組合せにより達成されうる。プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどは当業者に公知である。プロイロムチリンの産生は、前記の少なくとも1つの核酸分子の同一性を操作することによっても、例えば、その突然変異誘発およびプロイロムチリン産生の増加に関する選択によっても増加されうる。あるいは、プロイロムチリンの産生はそれらの組合せにより増加されうる。該発現は、生理的パラメーターおよび/または発酵条件の調節により該宿主の発酵中に少なくとも1つの核酸分子の発現および/または転写調節を最適化することによっても間接的に増加されうる。1つの実施形態においては、調節性遺伝子、および/または少なくとも1つの核酸分子の調節性タンパク質のDNA結合部位が影響される。
【0151】
第7の態様の方法がプロイロムチリンの産生(製造)の減少方法であることも想定される。特に、それは、前記の少なくとも1つの核酸分子を破壊またはダウンレギュレーションすることを含みうる。これに関する調節的操作のための方法は、当技術分野でよく知られている、遺伝子の標的化破壊を含む。したがって、例えば、突然変異宿主、例えば突然変異クリトピルス(Clitopilus)株、例えば突然変異クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)株が構築可能であり、それにおいては、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するポリペプチドをコードする1以上の天然核酸がゲノムから部分的または完全に欠失している。あるいは、前記の少なくとも1つの核酸分子の同一性は、例えば、その突然変異誘発およびプロイロムチリン産生の減少に関する選択により操作されうる。一般に、プロイロムチリンの産生を減少させるための他の適当なそのような方法はRNA干渉(RNAi)の利用を含みうる。この方法は後記実施例4に更に詳しく例示されている。特定の遺伝子の発現をノックダウンする手段としてのRNAi媒介遺伝子サイレンシングの実施可能性は、二核クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)において、Kilaruら(2009b)により、ごく最近実証されている。この場合、それは、この真菌の二核性により、標的化遺伝子破壊より簡便であると考えられている。この参考文献に記載されている方法は、他の担子菌類、特にクリトピルス(Clitopilus)属の他のメンバー、例えば、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)を含む本明細書に開示されている好ましいものにおいて、同様に適用可能であると想定される。代替的または追加的に、プロイロムチリンの産生は、適当なプロモーターまたはエンハンサーのような要素の除去により、あるいはリプレッサー結合部位またはターミネーターの供与により、あるいはそれらの組合せにより、発現を間接的に操作することにより減少されうる。
【0152】
一般に、プロイロムチリンの産生を改変するためには、例えばプロモーター領域またはコード配列におけるプロイロムチリン遺伝子クラスターの例えば(限定的)突然変異誘発が用いられうる。例えば、それは、プロイロムチリン前駆体を産生するプロイロムチリン産生生物の能力における有益な増強をもたらすことが可能であり、あるいは更にはプロイロムチリン生合成の最終産物を変化させうる。
【0153】
宿主におけるプロイロムチリンの産生は、前記の少なくとも1つの核酸分子における個々の断片を他の断片(例えば、他の遺伝子クラスターからの断片)により置換することによっても改変されうる。また、宿主におけるプロイロムチリンの産生は、プロイロムチリンを産生する生合成経路における個々の工程を不活性化することにより、例えば、該遺伝子クラスターの他のポリペプチドを欠失または破壊することにより改変されうる。また、この態様においては、該宿主は、好ましくは、前記のとおりである。
【0154】
細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主におけるプロイロムチリンの産生を改変する方法は特に、a)プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子を過剰発現させるための、あるいはb)プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する1以上の遺伝子を不活性化または修飾するための、あるいはc)プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する1以上の遺伝子が欠失している、天然に存在しない宿主を構築するための、あるいはc)プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する1以上の遺伝子が欠失または破壊されている、突然変異宿主、例えばクリトピルス(Clitopilus)株を構築するための、本発明の単離核酸分子、ベクターまたは宿主細胞の使用を含みうる。
【0155】
細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主におけるプロイロムチリンの産生を改変する方法はまた、代謝流動をMVA経路の排出物、すなわち、アセチル−CoAへと向け直すこと、および/または例えば前駆体IPPおよびDMAPPに関して競合する非必須反応を遮断することにより、ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼの基質の量を増加させることを含みうる。
【0156】
第8の態様は、プロイロムチリンの製造における、本発明の核酸分子の使用に関するものであり、ここで、該核酸分子の配列の2〜50ヌクレオチドは、プロイロムチリンを産生しうる野生型生物に含まれるプロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する遺伝子クラスターの配列とは異なっている。好ましくは、前記の2〜50ヌクレオチドは少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40または45ヌクレオチド、好ましくは3〜100、より好ましくは5〜80ヌクレオチド、より一層好ましくは8〜60ヌクレオチドである。例えばプロモーター領域またはコード配列におけるプロイロムチリン遺伝子クラスターのそのような限定的突然変異誘発は、プロイロムチリンを産生するプロイロムチリン産生生物の能力における有益な増強をもたらすことが可能であり、あるいは更にはプロイロムチリン生合成の最終産物を変化させ、それにより、プロイロムチリン前駆体の、より高い収率を与えうる。しかし、該核酸分子は、本出願の優先日において、プロイロムチリンを産生しうる野生型生物またはプロイロムチリン産生に関して選択された生物のいずれかに含まれるプロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する遺伝子クラスターの配列と同一でなくてもよい。該使用は特に限定されるものではなく、本明細書に開示されているプロイロムチリンの製造方法のいずれをも含みうる。該使用は、前記の完全遺伝子クラスター、またはそのいずれかの部分配列を含みうるが、使用される配列は、野生型生物、特にプロイロムチリンを産生しうる野生型生物に含まれるプロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する遺伝子クラスターの配列とは異なっている。該使用は、例えばインビボ、エクスビボもしくはインビトロの使用またはそれらの組合せでありうる。
【0157】
第9の態様は、プロイロムチリン前駆体の製造における、本発明の単離された核酸分子の使用に関するものであり、ここで、該核酸分子の配列の2〜50ヌクレオチドは、プロイロムチリンを産生しうる野生型生物に含まれるジテルペンシンターゼをコードする配列とは異なっている。好ましくは、前記の2〜50ヌクレオチドは少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40または45ヌクレオチド、好ましくは3〜100、より好ましくは5〜80ヌクレオチド、より一層好ましくは8〜60ヌクレオチドである。例えばプロモーター領域またはコード配列におけるプロイロムチリン遺伝子クラスターのそのような限定的突然変異誘発は、プロイロムチリン前駆体を産生するプロイロムチリン産生生物の能力における有益な増強をもたらすことが可能であり、あるいは更にはプロイロムチリン生合成の最終産物を変化させ、それは例えば、プロイロムチリン前駆体の、より高い収率を与えうる。特に、該プロイロムチリン前駆体は式(I)の化合物である。あるいは、該プロイロムチリン前駆体は式(II)の化合物でありうる。もう1つの実施形態においては、該プロイロムチリン前駆体は式(III)の化合物でありうる。更にもう1つの実施形態においては、該プロイロムチリン前駆体は式(IV)の化合物でありうる。該使用は特に限定されるものではなく、本明細書に開示されているプロイロムチリン前駆体の製造方法のいずれをも含みうる。該使用は、前記の完全遺伝子クラスター、またはそのいずれかの部分配列を含みうるが、使用される配列は、野生型生物、特にプロイロムチリンを産生しうる野生型生物に含まれるジテルペンシンターゼをコードする配列とは異なっている。該使用は、例えばインビボ、エクスビボもしくはインビトロの使用またはそれらの組合せでありうる。
【0158】
第10の態様は、プロイロムチリンまたはプロイロムチリン前駆体の製造における、請求項8に記載の宿主の使用に関するものであり、特に、この場合、該プロイロムチリン前駆体は式(I)の化合物である。
【0159】
また、式(II)のプロイロムチリン前駆体の製造における、本発明の宿主の使用も想定される。更に、式(III)のプロイロムチリン前駆体の製造における、本発明の宿主の使用が想定される。最後に、式(IV)のプロイロムチリン前駆体の製造における、本発明の宿主の使用も想定される。
【0160】
該使用は特に限定されるものではない。それは、本明細書に開示されている宿主のいずれをも含むことが可能であり、例えばインビボ、エクスビボもしくはインビトロの使用またはそれらの組合せでありうる。
【0161】
同様に、本発明は、本発明の単離核酸分子、ベクターまたは宿主を使用する少なくとも1つの工程を含み第8〜第10の態様の使用に対応する、プロイロムチリンまたはプロイロムチリン前駆体の製造方法に関する。
【0162】
同様に、例えば固体発酵法における、本発明のポリペプチドの使用を含む、プロイロムチリンまたはプロイロムチリン前駆体の製造方法も含まれる。
【0163】
第11の態様は、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする1以上の核酸を特定するための、本発明の単離核酸分子の使用に関する。好ましくは、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするそのような核酸は、プロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードしている。
【0164】
同様に、本発明の単離核酸分子は、アシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする1以上の核酸を特定するために使用されうる。好ましくは、アシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするそのような核酸は、プロイロムチリン生合成経路に関与するポリペプチドをコードしている。
【0165】
あるいは、本発明の単離核酸分子は、シトクロムP450活性を有するポリペプチドをコードする1以上の核酸を特定するために使用されうる。好ましくは、シトクロムP450活性、例えばモノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするそのような核酸は、プロイロムチリン生合成経路に関与するポリペプチドをコードしている。
【0166】
最後に、本発明の単離核酸分子は、ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする1以上の核酸を特定するために使用されうる。好ましくは、ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするそのような核酸は、プロイロムチリン生合成経路に関与するポリペプチドをコードしている。
【0167】
また、この態様は、ジテルペンシンターゼをコードする、好ましくはプロイロムチリンシンターゼをコードする1以上の核酸を特定するための、本発明の単離核酸分子の使用に関する。
【0168】
ある実施形態においては、該態様は、ジテルペンを産生する、特にプロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する本発明の遺伝子クラスターを特定するための、本発明の核酸分子の使用に関する。
【0169】
例えば、本発明の核酸分子は、cDNAまたはゲノムライブラリーを確立し、本明細書に開示されている核酸分子を使用することにより該ライブラリーをスクリーニングし、陽性クローンを単離する工程により特徴づけられる方法において使用されうる。言い換えれば、本明細書に開示されている核酸分子またはその部分配列は、cDNAまたはゲノムライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして使用されうる。陽性クローンを特定するためには種々の標準的な方法が利用可能である。幾つかの実施形態においては、検出可能性を改善するために、本明細書に記載されている単離核酸分子は、例えば公知の物理的または化学的方法により容易に同定可能ないずれかの標識のような検出可能標識で標識されうる。検出可能標識は当技術分野でよく知られており、限定的なものではないが、放射能標識、発色団、蛍光物質、酵素、補酵素、基質、酵素インヒビター、抗生物質などを包含する。
【0170】
該cDNAまたはゲノムライブラリーは、いずれかの候補生物から、特に、ジテルペン、特にプロイロムチリン抗生物質、特にプロイロムチリンを産生しうることが公知である又は疑われる生物から調製されうる。好ましくは、該生物は、真菌宿主、より詳しくは担子菌門の真菌、より一層詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌、特にクリトピルス(Clitopilus)属またはプロイロツス(Pleurotus)属の真菌、例えば、クリトピルス・シフォイデス(Clitopilus scyphoides)、クリトピルス・プルヌルス(Clitopilus prunulus)、クリトピルス・ホブソニイ(Clitopilus hobsonii)、クリトピルス・プソイド−ピンシツス(Clitopilus pseudo−pinsitus)、クリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)およびクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からなる群からの真菌であり、ここで、該生物はクリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)またはクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)である。陽性クローンは、例えば制限酵素分析、配列決定、配列比較などにより分析されうる。関心のある領域の隣接領域は、より大きな配列部分を含有するコスミドライブラリーをスクリーニングすることにより、または例えば相互重複DNA領域を含むゲノムライブラリー内のゲノムウォーキングのような技術により更に分析されうる。
【0171】
i)ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする、ii)プロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする、iii)ジテルペンシンターゼをコードする、および/またはiv)プロイロムチリンシンターゼをコードする核酸を特定するための方法は、本明細書に開示されている核酸分子に対する相同性を有する核酸の存在を検出するために、候補生物の染色体DNAを使用してサザンブロットを行う工程を含みうる。
【0172】
所望により、i)ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする、ii)プロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする、iii)ジテルペンシンターゼをコードする、および/またはiv)プロイロムチリンシンターゼをコードする核酸を特定するための方法は、いずれかの公知方法によりプロイロムチリン産生に関してアッセイすることにより、該候補生物がプロイロムチリンを産生しうるかどうかを決定する先行工程を含みうる。
【0173】
同様に、本明細書に開示されている核酸分子に対する相同性を有する核酸の存在を検出するために、候補生物の染色体DNAを使用してサザンブロットを行う工程を含みうる、i)アシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、および/またはii)アシルトランスフェラーゼをコードする核酸を特定するための方法も想定される。
【0174】
更に、本明細書に開示されている核酸分子に対する相同性を有する核酸の存在を検出するために、候補生物の染色体DNAを使用してサザンブロットを行う工程を含みうる、i)ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする、および/またはii)ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼをコードする核酸を特定するための方法が想定される。
【0175】
また、本明細書に開示されている核酸分子に対する相同性を有する核酸の存在を検出するために、候補生物の染色体DNAを使用してサザンブロットを行う工程を含みうる、i)シトクロムP450活性を有するポリペプチドをコードする、ii)モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、および/またはiii)シトクロムP450酵素をコードする核酸を特定するための方法も想定される。
【0176】
所望により、前記方法は、いずれかの公知方法によりプロイロムチリン産生に関してアッセイすることにより、該候補生物がプロイロムチリンを産生しうるかどうかを決定する先行工程を含みうる。
【0177】
本発明は更に、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする、および/またはプロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする1以上の核酸を生物(好ましくは、該生物は前記のとおりである)から単離するための、本発明の単離核酸分子の使用に関する。
【0178】
また、この態様は、ジテルペンシンターゼをコードする、好ましくは、プロイロムチリンシンターゼをコードする1以上の核酸を生物(好ましくは、該生物は前記のとおりである)から単離するための、本発明の単離核酸分子の使用に関する。
【0179】
更に、アシルトランスフェラーゼをコードする、好ましくは、生物(好ましくは、該生物は前記のとおりである)からのアシルトランスフェラーゼをコードする1以上の核酸を生物(好ましくは、該生物は前記のとおりである)単離するための、本発明の単離核酸分子の使用が想定される。
【0180】
また、ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼをコードする、好ましくは、生物(好ましくは、該生物は前記のとおりである)からのゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼをコードする1以上の核酸を生物(好ましくは、該生物は前記のとおりである)単離するための、本発明の単離核酸分子の使用が想定される。
【0181】
最後に、シトクロムP450酵素、例えばモノオキシゲナーゼをコードする、好ましくは、生物(好ましくは、該生物は前記のとおりである)からのシトクロムP450酵素をコードする1以上の核酸を生物(好ましくは、該生物は前記のとおりである)単離するための、本発明の単離核酸分子の使用も想定される。
【0182】
第12の態様は、プロイロムチリン前駆体、特に式(I)の化合物の製造方法に関するものであり、該方法は該前駆体の発酵的製造方法であり、(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、本発明の少なくとも1つの核酸分子および/または本発明の少なくとも1つのベクターを導入し、(ii)該前駆体の発酵的製造に適した条件下で該宿主を培養する工程を含む。
【0183】
プロイロムチリン前駆体、特に式(II)および/または(III)の化合物の製造方法も想定され、該方法は該前駆体の発酵的製造方法であり、(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、シトクロムP450酵素、例えばモノオキシゲナーゼをコードする核酸配列を含む本発明の少なくとも1つの核酸分子および/または本発明の少なくとも1つのベクターを導入し、(ii)該前駆体の発酵的製造に適した条件下で該宿主を培養する工程を含む。
【0184】
更に、プロイロムチリン前駆体、特に式(IV)の化合物の製造方法も想定され、該方法は該前駆体の発酵的製造方法であり、(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、アシルトランスフェラーゼをコードする核酸配列を含む本発明の少なくとも1つの核酸分子および/または本発明の少なくとも1つのベクターを導入し、(ii)該前駆体の発酵的製造に適した条件下で該宿主を培養する工程を含む。
【0185】
第13の態様は、プロイロムチリン前駆体、特に式(I)の化合物の製造方法に関するものであり、該方法は該前駆体の合成製造方法であり、ゲラニルゲラニルピロホスファートを本発明のポリペプチドまたは前記方法により入手可能なポリペプチドと反応させることを含む。後者の2つの態様においては、該宿主は、好ましくは、前記で開示されているものである。
【0186】
更にもう1つの態様においては、本発明は、式(I)の単離化合物に関する。幾つかの実施形態においては、式(I)の単離化合物は、本明細書に開示されている方法により、特に、第12または第13の態様の方法により入手可能である。
【0187】
更に詳細な態様においては、本明細書は、本明細書に開示されている方法により入手可能な式(II)の単離化合物、本明細書に開示されている方法により入手可能な式(III)の単離化合物、および/または本明細書に開示されている方法により入手可能な式(IV)の単離化合物を主題とする。
【0188】
更にもう1つの態様においては、本発明に従い製造されたジテルペン、特にプロイロムチリン前駆体はプロイロムチリン抗生物質、例えば新規プロイロムチリン抗生物質に変換されうる。これは、合成有機化学により、例えば、プロイロムチリンがチアムリン(IN 2005CH00521に記載されている方法に類似している)、バルネムリン(CN 101318921に記載されている方法に類似している)、レタパムリン(WO 2009075776に記載されている方法に類似している)に変換される類似方法により行われうる。したがって、本発明はまた、プロイロムチリン抗生物質の半合成的製造における、中間体I(すなわち、式(I)の化合物)の使用に関する。「半合成的製造」は、プロイロムチリン前駆体の発酵的製造、およびそれに続く、該プロイロムチリン前駆体の共有結合的修飾をもたらす少なくとも1つの合成化学的工程の組合せに関する。
【0189】
したがって、本発明はまた、本発明のポリペプチドまたは方法を用いて得られたジテルペンまたはプロイロムチリン前駆体を反応させる少なくとも1つの工程を含む、プロイロムチリン抗生物質の製造方法に関する。
【0190】
更にもう1つの態様においては、本発明により得られた新規プロイロムチリン抗生物質、特に該プロイロムチリンは中間体として使用される。1つの実施形態においては、それは細菌感染症の治療方法において使用される。また、本発明により得られたジテルペン、特に該新規プロイロムチリン抗生物質、特に該新規半合成プロイロムチリンを、それを要する対象、特に、細菌感染症または細菌を伴う障害もしくは疾患に罹患している対象に投与する工程を含む、細菌感染症の治療方法も予想される。
【0191】
該細菌(細菌感染症を引き起こす又は該障害もしくは疾患に関与するもの)は、グラム陽性菌、特にブドウ球菌、レンサ球菌、肺炎球菌および腸球菌;グラム陰性菌、特にナイセリア(Neisseria)、ヘモフィルス(Haemophilus)、モラクセラ(Moraxella)、ボルデテラ(Bordetella)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ(Leptospira)属から選択されるもの;マイコプラズマ;クラミジア;グラム陽性嫌気性細菌およびグラム陰性嫌気性細菌からなる群から選択されうる。
【0192】
一般に、本明細書中で引用されている全ての文書の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。また、本発明の或る態様および実施形態が記載され例示されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の修飾が施されうると当業者により理解されるであろう。
【実施例】
【0193】
以下の実施例は本発明を更に例示するものであり、本発明を限定するものではない。該実施例は技術的特徴を含み、本発明は、この例示の節に記載されている技術的特徴の組合せにも関連していることが理解されるであろう。
【0194】
実施例1:ジテルペンシンターゼ(DS)の特定
本発明者らはクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)におけるds遺伝子を特定した。ds遺伝子によりコードされるポリペプチドの部分タンパク質配列が特定され、それらは配列番号1〜7として本明細書に記載されている。ds遺伝子ジテルペンシンターゼの推定タンパク質配列は本明細書中に配列番号9として記載されており、コンピュータによる方法により得られた。公知テルペンシンターゼ配列に対する該配列のアライメントは多数の共有保存領域を示しており、このことは、該ポリペプチドがジテルペンシンターゼ活性を有する可能性があることを示している。特に、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)はプロイロムチリン産生株として本発明者らに公知であるため、およびこれがクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)における唯一のジテルペンシンターゼであることを考慮すると、特定されたジテルペンシンターゼはプロイロムチリンシンターゼ活性を有すると予想される。ds遺伝子によりコードされるジテルペンシンターゼの推定タンパク質配列(「C.p」と表示されている)および幾つかの公知ジテルペンシンターゼ配列のアライメントが図5に示されている。
【0195】
実施例2:クリトピルス・パッセケリアヌスにおける推定プロイロムチリン遺伝子クラスターの特定
本発明に到達するために、本発明者らは、前記の推定ジテルペンシンターゼの周囲のゲノム領域を分析し、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のゲノム配列を使用するバイオインフォマティクス手段を用いた。
【0196】
本発明者らは、推定ds遺伝子の近傍において、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)の従来未知の推定ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼ(ggs)遺伝子を特定した。クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からの新規ggs遺伝子は公知ggs遺伝子に対する密接な関連性を示している。ホモプシス・アミグダリ(Phomopsis amygdali)(BAG30959)の公知ggs遺伝子に対するアライメントは31%の同一性を示している。該同一性は、フリーウェアプログラムClustalX(バージョン1.83)をデフォルトパラメータで使用して配列を整列させ次いで同一残基を手動で計数することにより計算した。ついで、同一のものの数を最短配列の長さで割り算することにより、同一性(%)(PID)を計算した。例えばペアワイズアライメント(遅−正確)のためのデフォルト設定は以下のとおりである:ギャップ・オープニング・パラメータ:10.00;ギャップ伸長パラメータ0.10;タンパク質重み行列:Gonnet 250;DNA重み行列IUB。ClustalXプログラムはThompsonら,1997に詳細に記載されている。
【0197】
図4に示されているとおり、配列番号8を含み約27kbのサイズを有するゲノム領域の更なる分析は更に、3つの推定CYP450遺伝子(推定アシルトランスフェラーゼ遺伝子ならびにggsおよびds遺伝子に近傍の他の推定遺伝子)を明らかにした。これは、このクラスターがプロイロムチリン生合成遺伝子クラスターであることを示唆している。更に、これらの酵素活性の存在は推定生合成経路に沿っている。更に、発現分析は、それらの遺伝子が、遺伝子発現パターンに影響を及ぼすことが知られている種々の条件下で共調節を示すことを明らかにしており、このことは前記結論を更に裏付けている。
【0198】
実施例3:クリトピルス・パッセケリアヌスにおけるプロイロムチリン候補遺伝子の特定
クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のプロイロムチリン候補遺伝子に関する推定遺伝子モデルを、配列番号15由来の翻訳ヌクレオチド問合せ配列を使用するblastx検索タンパク質データベース(例えば、nr=非重複タンパク質配列)により手動で開発した。これらの推定遺伝子モデルに基づいて、5’−および3’−cDNA末端(RACE)の迅速な増幅のための特異的プライマーを設計した。断片が重複し、それにより完全長cDNAが得られるように、プライマー(以下の表を参照されたい)を設計した。GeneRacer(登録商標)RACE cDNAキット(Invitrogen)を該製造業者のプロトコールに従い使用して、RACEを行った。アンプリコンをアガロースゲルにより精製し、pCR(登録商標)−Blunt II−TOPO(登録商標)(Invitrogen)またはpCR(登録商標)4 BluntTOPO(Invitrogen)内にクローニングした。
【0199】
【表2】


【0200】
重複配列を合体させ、各cDNA(RACEから得られたもの)内の最大オープンリーディングフレーム(ORF)を翻訳して対応アミノ酸配列を推定した。
【0201】
該推定プロイロムチリンコアクラスターは、プロイロムチリン生合成に要求される生化学反応を行うのに必要な以下の全ての酵素をコードしている:(I)ゲラニルゲラニルジホスファートシンターゼ(GGDPS)に連結されたジテルペンシンターゼ(DTS)(これらは同一プロモーター領域を共有しているが、それらの遺伝子は逆方向の相補的プロモーターから転写される)、(II)三環式ジテルペン炭化水素中間体に酸素機能を加えるための3つのシトクロムP450(CYP450)酵素、(III)C14のアセチル化のためのアセチルトランスフェラーゼ(AT)。該ORFおよび推定アミノ酸配列は図3および6〜10に示されている。該ORFは、以下の位置(終止コドンを含む)において、配列番号15に示されている推定プロイロムチリン遺伝子クラスター上でコードされている。
CYP450−1:(501..699,759..867,917..943,998..1186,1240..1504,1560..1677,1732..1909,1966..2070,2120..2251,2303..2446,2502..2607)。
AT:(2856..3281,3335..3362,3416..3474,3536..4156)。
DTS:(5029..6714,6767..7053,7109..7229,7284..8069)。
GGDPS:(9021..9158,9217..9386,9446..9735,9795..10040,10101..10309)。
CYP450−2:(10725..10823,10894..10998,11053..11091,11143..11258,11316..11336,11388..11436,11494..11556,11613..11811,11865..12229,12287..12417,12472..12537,12594..12681,12730..12769,12820..13010)。
CYP450−3:(13901..13993,14046..14135,14187..14344,14399..14419,14475..14523,14574..14636,14693..14900,14960..15333,15385..15515,15568..15721,15778..15817,15870..16129)。
【0202】
定量的PCR発現分析
プロイロムチリン生産性の増加はプロイロムチリン生合成クラスター内の遺伝子の転写の増強と相関すると考えられうる。したがって、2つの株、すなわち、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)DSM1602(ATCC34646,NRLL3100)および誘導体(プロイロムチリン生産性の増加に関して選択されたCp24)を分析した。両方の株を、例えばHartleyら(2009)に記載されているのと実質的に同じ方法で、振とうフラスコ内で培養した。1つの前培養を使用して3つの並行主培養(生物学的重複体)に接種した。2つの培養のそれぞれをRNA分析のためにサンプル採取した。3つ目の培養をプロイロムチリン分析に使用した。サンプルは該主培養のt=72時間、96時間、120時間、144時間および168時間の時点で採取した。
【0203】
無菌布での濾過により集めた菌糸から全RNAを単離した。湿潤菌糸を液体窒素中で急速冷凍し、乳鉢および乳棒を使用して粉末へと粉砕した。TRIZOL(登録商標)試薬(Invitrogen)抽出プロトコールを使用して全RNAを抽出した。全ての方法は、該製造業者のプロトコールに従い行った。抽出後、該RNAサンプルをRNeasy(登録商標)カラム(Qiagen)で精製し、RNアーゼ非含有DNアーゼセットキット(Qiagen)を該製造業者のプロトコールに従い使用して、カラム上でDNアーゼ消化を行った。RNAを、DEPCで処理された無菌蒸留水に再懸濁させ、その濃度を分光測光法(Ultrospec 3100 pro,Amersham)により測定した。RNA6000ナノアッセイ(Agilent)を使用して、Bioanalyzer測定(Agilent)により該RNAの質を調べた。High Capacity cDNA Archive Kit(Applied Biosystems)を該製造業者のプロトコールに従い使用して、後続の逆転写を行った。該RT−PCRは、Applied Biosystems 7900HT Fast Real−Time PCR System and Power SYBR(登録商標)Green PCR Mix(Applied Biosystems)を使用して行った。Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して、全ての遺伝子特異的プライマーを設計した。逆転写全RNAの系列希釈を用いて、各プライマーペアに関する相対的標準曲線を作成した。プライマーは以下の基準に完全に適合しなければならない:−3.60勾配3.10および0.960R2。
【0204】
クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)の定量的RT−PCR分析に使用したプライマー:
【0205】
【表3】


【0206】
該反応は、50ngの鋳型cDNAをそれぞれが含有する20μlの反応を用いて、該製造業者のプロトコールに従い行った。各鋳型用の試薬における混入物に関する対照としての添加鋳型RNAを伴わない無鋳型対照(NTC)を含める。
【0207】
PCR条件は以下のとおりであった:変性の初期サイクル(95℃で10分)、それに続く40サイクル(95℃で15秒および60℃で1分)。95℃で15秒、60℃で15秒および95℃で15秒の追加的サイクルでの解離曲線決定により非特異的増幅に関してサンプルを試験した。競合的CT法を用いて一括販売SDSソフトウェアver.2.3(Applied Biosystems)でデータ分析を行った。
【0208】
全てのサンプルは三重に測定した。プロイロムチリン生合成遺伝子に関する相対転写産物レベル値を、内在性対照としてのベータアクチン遺伝子の場合に対する標的遺伝子(検出体)に関して計算された値の正規化の後で得た。
【0209】
図11に示されている結果から理解されうるとおり、コアプロイロムチリンクラスター遺伝子(CYP450−1、AT、DTS、GGDPS、CYP450−2、CYP450−3)は、予想と全く同じプロファイル(Cp24における構成的アップレギュレーション)を示している。これとは対照的に、陰性対照としてのGAPDHは発現プロファイルにおける有意な相違を示していない。
【0210】
実施例4:クリトピルス・パッセケリアヌスのジテルペンシンターゼのRNAiノックダウン
RNAiに使用したプラスミドの構築
RNA干渉による標的遺伝子の転写抑制は、標的遺伝子のmRNAと部分的に同一である二本鎖RNAの断片を細胞に供給することにより実験的に誘導されうることが文献からよく知られている。真菌においてこれを達成するための効率的方法は、ヘアピンループ構造へと折り畳まれうるmRNAを転写するプラスミドで細胞を形質転換することからなる。ヘアピンループ一本鎖核酸は、塩基対形成したステム構造と、対形成していないスペーサー配列からなり、ループを形成する。
【0211】
厳密には、RNAiの生成は、配列伸長およびその自己相補的対応物(短いスペーサー配列により隔てられた反復体としてのもの)をクローニングすることにより達成される。このRNAiカセットは、選択プラスミド上、プロモーターとターミネーターとの間に位置していて、RNAiヘアピンベクターを与え、これは、ジテルペンシンターゼ遺伝子の発現に対して標的化されるRNAiベクターを構成する(例えば、P2543 ヘアピン)。
【0212】
P2543 ヘアピンのRNAiカセットは配列A、BおよびCの連続的伸長として定められる。
【0213】
【化3】

【0214】
RNAiカセットの転写に際して、生じるmRNAは、ステムを形成する配列A)およびC)、ならびにループを形成するスペーサーB)とヘアピン構造を形成しうる。しばしば、文献においては、スペーサー配列はイントロン配列を含有する。RNAi誘導におけるイントロンの厳密な機能は理解されていないが、RNAi効率を増加させると考えられている。文献との合致の理由により、マグナポルセ・グリセア(Magnaporthe grisea)のクチナーゼ遺伝子のイントロン1はスペーサー領域の一部として用いられている。
【0215】
プロモーター(D)およびターミネーター(E)はヘアピンカセットの効率的転写のために用いられている。
【0216】
【化4】



【0217】
プロモーター(D)、RNAiカセット(A、B、C)およびターミネーター(E)を連続的伸長として含有するDNA配列を遺伝子合成により作製し、選択プラスミドpPHT1(Cummingsら,1999)内にクローニングした。生じたプラスミドP2543 ヘアピンはクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)をヒグロマイシン耐性へと形質転換し、ジテルペンシンターゼ遺伝子に対するRNAi干渉を誘導しうる。
【0218】
RNAi誘導過程に関する陰性対照として、プラスミドP2558を案出した。ジテルペンシンターゼ配列F)に隣接するAscIおよびPacI制限部位を用いてRNAiカセット(AscI 8’1335位〜PacI 1位)を配列(F)で置換することにより、P2543 ヘアピンからP2558を構築した。
【0219】
【化5】

【0220】
プラスミドP2558は、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)をヒグロマイシン耐性に形質転換することが可能であるが、RNA干渉を誘導し得ない。
【0221】
クリトピルス・パッセケリアヌスDSM1602の形質転換
クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)DSM1602をGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures DSMZ,38124 Braunschweigから得た。この株は、プラスミドpPHT1(Kilaruら,2009)を使用してヒグロマイシン耐性へと容易に形質転換されうる。プラスミドP2558およびP2543 ヘアピン(プラスミドpPHT1由来)は以下のとおりにプロトプラストへと形質転換された。
【0222】
接種物の調製のためには、DSM1602の良く成長したコロニーを平均5〜10個の細胞の菌糸断片へと水中で機械的にせん断し、綿栓で閉じられたガラスフラスコ内の100mlの湿潤破壊トウモロコシへの接種に使用する。25℃で14日間のインキュベーションの後、50mlの水を加え、230rpmで2時間激しく振とうすることにより、該菌糸メッシュを集める。破壊菌糸断片を含有する懸濁液を、トウモロコシから分離するために濾過し、液体培養を調製するために接種物として使用した。
【0223】
ついで、炭素および窒素源としてコーンスティープリカーおよびグルコースを含有する100mlの培地に10mlのDSM1602接種物を接種することにより、プロトプラスト化のための菌糸を27℃で3日間成長させた。27℃および230rpmで3日間の培養の後、該菌糸を遠心分離により集めた。プロトプラスト化溶液(グルカネックス(glucanex)を含有するMgSO/POバッファー(pH 6.8))中、27℃および230rpmで2時間、プロトプラスト化を行った。プロトプラストを遠心分離により2回洗浄するため、およびプロトプラストを10/mlの密度まで濃縮するために、スクロース/CaCl/Trisバッファー(pH 7.5)を使用した。
【0224】
該形質転換法のために、50μlのプロトプラスト懸濁液を5〜10μgのプラスミドDNAおよび25μlの36% PEG混合物(CaCl/Trisバッファー(pH 7.5)中のポリエチレングリコール4,000)と混合した。破砕氷上で20分間インキュベートした後、200μlのPEG混合物を加え、該懸濁液を室温で5分間インキュベートした。プラスミドP2543 ヘアピンまたは対照P2558を含有する形質転換サンプルのほかに、DNAを含有しないサンプルも該選択過程の対照として調製した。100μg/ml ヒグロマイシンを含有するジャガイモデキストロース寒天上で形質転換体の選択を行った。増殖速度および形態学的特徴に関して正常表現型を示す選択された形質転換体を、振とうフラスコ発酵におけるプロイロムチリン生産性、およびプロイロムチリン生産性とジテルペンシンターゼ遺伝子の発現との間の相関性に関して試験するためのジテルペンシンターゼ遺伝子の転写の分析に使用した。
【0225】
クリトピルス・パッセケリアヌスのジテルペンシンターゼの定量的PCR発現分析
RNAi構築物を含有する形質転換体およびこの構築物を含有しない対照株におけるジテルペンシンターゼ遺伝子の発現パターンを定量するために、実施例3に記載されているとおりに定量的PCR分析を行った(ABI7900 HT,Applied Biosystems)。
【0226】
クリトピルス・パッセケリアヌス(C.passeckerianus)の菌糸からのRNAを無菌布での濾過により集めた。該湿潤菌糸を液体窒素中で急速冷凍し、ボールミルを使用して粉末へと粉砕した。TRIZOL(登録商標)試薬(Invitrogen)抽出プロトコールを使用して全RNAを抽出した。全ての方法は、該製造業者のプロトコールに従い行った。抽出後、該RNAサンプルをRNeasy(登録商標)カラム(Qiagen)で精製し、RNアーゼ非含有DNアーゼセットキット(Qiagen)を該製造業者のプロトコールに従い使用して、カラム上でDNアーゼ消化を行った。RNAを、DEPCで処理された無菌蒸留水に再懸濁させ、その濃度を分光測光法(Nanodrop 1000,Peqlab)により測定した。RNA6000ナノアッセイ(Agilent)を使用して、Bioanalyzer測定(Agilent)により該RNAの質を調べた。High Capacity cDNA Archive Kit(Applied Biosystems)を該製造業者のプロトコールに従い使用して、後続の逆転写を行った。
【0227】
Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して、該ジテルペンシンターゼ遺伝子の、2つの独立したプライマーセットを設計した。それぞれ997〜1021位および1096〜1077位を含むフォワードプライマーCp dts U1(5’−GTTACAGAGTTTGAGGCACCTACCT−3’)(配列番号56)およびリバースプライマーCp dts L1(5’−CGTGGAGGAGCGACATAAGG−3’)(配列番号57)、ならびにスプライス化ジテルペンシンターゼメッセンジャーRNA配列の1125〜1147位および1214〜1188位を含むCp DTS U2(5’−AATCGTCAAGATCGCCACTTATG−3’(配列番号70)およびリバースプライマーCp DTS L2(5’−GAGTACCATTCTGATACATTCCATTTG−3’)(配列番号71)を設計した。対照として、クリトピルス・パッセケリアヌス(C.passeckerianus)のact遺伝子を以下のプライマーの設計のために使用した:Cp act U1(5’−TGATGGTCAAGTTATCACGATTGG−3’)(配列番号50)およびリバースプライマーCp act L1(5’−GAGTTGTAAGTGGTTTCGTGAATACC−3’)(配列番号51)(これは119bpのアンプリコンを与える)。PCR反応のために、SYBR Green Mastermix(Applied Biosystems)を使用した。該反応は、12ngの鋳型cDNAをそれぞれが含有する12μlの反応を用いて、該製造業者のプロトコールに従い行った。プライマーの各ペア用の試薬における混入物に関する対照としての添加鋳型RNAを伴わない無鋳型対照(NTC)を含めた。使用した全てのプライマーセットの良好な効率が標準曲線により実証された。
【0228】
使用した両方のプライマーペアでの結果は、RNAi構築物で形質転換された全ての株におけるジテルペンシンターゼ転写の、より低いレベル(約4倍)を明らかに証明している(図12;図13参照)。プラスミドP2543 ヘアピンを含有する形質転換体(T1〜T9)は、プラスミドP2558(C1〜C6)を含有する形質転換体および親株DSM1602と比較した場合にジテルペンシンターゼの有意な低下を明らかに示している。
【0229】
クリトピルス・パッセケリアヌスDSM1602形質転換体の生産性
選択された形質転換体のプロイロムチリン生産性を、コーンスティープリカー、グルコースおよびブチロールイート(butyloleat)を炭素および窒素源として含有する培地M2を使用する振とうフラスコ発酵において分析した。
【0230】
RNA干渉の結果として、プラスミドP2543 ヘアピンを含有する形質転換体(T1〜T9)は、プラスミドP2558(C1〜C6)を含有する形質転換体および親株DSM1602と比較した場合にプロイロムチリン生産性の有意な低下を明らかに示している(図14参照)。
【0231】
このデータから、クリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のジテルペンシンターゼはプロイロムチリンシンターゼ活性を有すると結論づけられうる。
【0232】
特定の実施形態
以下の節においては、幾つかの実施形態により本発明を例示するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0233】
1.a1)配列番号1に対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、
a2)配列番号2に対して少なくとも40%の配列同一性を有する配列、および
a3)配列番号3に対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される1つ、特に2つ、特に3つの配列を含む、ならびに、
b1)配列番号4に対して少なくとも25%の配列同一性を有する配列、
b2)配列番号7に対して少なくとも15%の配列同一性を有する配列、
b3)配列番号5に対して少なくとも45%の配列同一性を有する配列、および
b4)配列番号6に対して少なくとも45%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される少なくとも1つの配列を含むアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【0234】
2.該アミノ酸配列が、実施形態1において定義されている以下の配列群:
a1,b1;a1,b2;a1,b3;a1,b4;a1,b1,b2;a1,b1,b3;a1,b1,b4;a1,b2,b3;a1,b2,b4;a1,b3,b4;a1,b1,b2,b3;a1,b1,b2,b4;a1,b1,b3,b4;a1,b2,b3,b4;a1,b1,b2,b3,b4;
a2,b1;a2,b2;a2,b3;a2,b4;a2,b1,b2;a2,b1,b3;a2,b1,b4;a2,b2,b3;a2,b2,b4;a2,b3,b4;a2,b1,b2,b3;a2,b1,b2,b4;a2,b1,b3,b4;a2,b2,b3,b4;a2,b1,b2,b3,b4;a3,b1;a3,b2;a3,b3;a3,b4;a3,b1,b2;a3,b1,b3;a3,b1,b4;a3,b2,b3;a3,b2,b4;a3,b3,b4;a3,b1,b2,b3;a3,b1,b2,b4;a3,b1,b3,b4;a3,b2,b3,b4;a3,b1,b2,b3,b4から選択されるいずれかの配列群を含む、実施形態1に記載の単離されたポリペプチド。
【0235】
3.a1)配列番号1に対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、
a2)配列番号2に対して少なくとも40%の配列同一性を有する配列、および場合によっては、
a3)配列番号3に対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列を含む、ならびに、
b1)配列番号4に対して少なくとも25%の配列同一性を有する配列、
b2)配列番号7に対して少なくとも15%の配列同一性を有する配列、
b3)配列番号5に対して少なくとも45%の配列同一性を有する配列、および
b4)配列番号6に対して少なくとも45%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される少なくとも1つの配列を含むアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【0236】
4.該アミノ酸配列が、実施形態1において定義されている以下の配列群:
a1,a2,b1;a1,a2,b2;a1,a2,b3;a1,a2,b4;
a1,a2,b1,b2;a1,a2,b1,b3;a1,a2,b1,b4;a1,a2,b2,b3;a1,a2,b2,b4;a1,a2,b3,b4;
a1,a2,b1,b2,b3;a1,a2,b1,b2,b4;a1,a2,b1,b3,b4;a1,a2,b2,b3,b4;
a1,a2,b1,b2,b3,b4から選択されるいずれかの配列群を含む、実施形態1または3のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチド。
【0237】
5.該アミノ酸配列が、実施形態1において定義されている以下の配列群:
a1,a2,a3,b1;a1,a2,a3,b2;a1,a2,a3,b3;a1,a2,a3,b4;
a1,a2,a3,b1,b2;a1,a2,a3,b1,b3;a1,a2,a3,b1,b4;a1,a2,a3,b2,b3;a1,a2,a3,b2,b4;a1,a2,a3,b3,b4;
a1,a2,a3,b1,b2,b3;a1,a2,a3,b1,b2,b4;a1,a2,a3,b1,b3,b4;a1,a2,a3,b2,b3,b4;
a1,a2,a3,b1,b2,b3,b4から選択されるいずれかの配列群を含む、実施形態1または3に記載の単離されたポリペプチド。
【0238】
6.b1、b2、b3およびb4の2つの配列、特に3つの配列、特に4つの配列を含む、実施形態1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0239】
7.a1で定義されている配列が、配列番号1に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、97%または99%、特に100%の配列同一性を有する、実施形態1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0240】
8.a2で定義されている配列が、配列番号2に対して少なくとも45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、97%または99%、特に100%の配列同一性を有する、実施形態1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0241】
9.a3で定義されている配列が、配列番号3に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、97%または99%、特に100%の配列同一性を有する、実施形態1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0242】
10.b1で定義されている配列が、配列番号4に対して少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、97%または99%、特に100%の配列同一性を有する、実施形態1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0243】
11.b2で定義されている配列が、配列番号7に対して少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、97%または99%、特に100%の配列同一性を有する、実施形態1〜10のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0244】
12.b3で定義されている配列が、配列番号5に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、97%または99%、特に100%の配列同一性を有する、実施形態1〜11のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0245】
13.b4で定義されている配列が、配列番号6に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、97%または99%、特に100%の配列同一性を有する、実施形態1〜12のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0246】
14.配列a1,a2,a3,b1,b2,b3およびb4を含む、実施形態5に記載の単離されたポリペプチドであって、配列a1,a2,a3,b1,b2,b3およびb4が以下の配列同一性を有する、すなわち、
a1が配列番号1に対して少なくとも60%の配列同一性を有し、a2が配列番号2に対して少なくとも50%の配列同一性を有し、a3が配列番号3に対して少なくとも60%の配列同一性を有し、b1が配列番号4に対して少なくとも35%の配列同一性を有し、b2が配列番号7に対して少なくとも25%の配列同一性を有し、b3が配列番号5に対して少なくとも55%の配列同一性を有し、b4が配列番号6に対して少なくとも55%の配列同一性を有する、より好ましくは、
a1が配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、a2が配列番号2に対して少なくとも60%の配列同一性を有し、a3が配列番号3に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、b1が配列番号4に対して少なくとも45%の配列同一性を有し、b2が配列番号7に対して少なくとも35%の配列同一性を有し、b3が配列番号5に対して少なくとも65%の配列同一性を有し、b4が配列番号6に対して少なくとも65%の配列同一性を有する、より一層好ましくは、
a1が配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、a2が配列番号2に対して少なくとも70%の配列同一性を有し、a3が配列番号3に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、b1が配列番号4に対して少なくとも55%の配列同一性を有し、b2が配列番号7に対して少なくとも45%の配列同一性を有し、b3が配列番号5に対して少なくとも75%の配列同一性を有し、b4が配列番号6に対して少なくとも75%の配列同一性を有する、実施形態5に記載の単離されたポリペプチド。
【0247】
15.配列番号1〜7の少なくとも5つ、特に少なくとも6つ、特に7つ全てがクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)由来である、実施形態1〜14のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチド。
【0248】
16.該ポリペプチドの分子量が90kDa〜140kDaの間、特に100kDa〜130kDaの間、特に105kDa〜120kDaの間である、および/または
該ポリペプチドが、配列番号9に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、配列番号9に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%、または更には少なくとも90%、例えば、より一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むアミノ酸配列を含む、実施形態1〜15のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチド。
【0249】
17.該ポリペプチドがジテルペンシンターゼ、特にプロイロムチリンシンターゼである、および/または該ポリペプチドがジテルペンシンターゼ活性、特にプロイロムチリンシンターゼ活性を有する、実施形態1〜16のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチド。
【0250】
18.該ポリペプチドが、プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する、実施形態1〜17のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチド。
【0251】
19.該ポリペプチドが、ゲラニルゲラニルピロホスファートからプロイロムチリン前駆体への、特に式(I)の化合物への変換を触媒しうる、実施形態1〜18のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチド。
【0252】
20.該ポリペプチドが、真菌宿主、特に担子菌門の真菌、より詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌から誘導可能であり、特に、ここで、該ポリペプチドが、クリトピルス(Clitopilus)属またはプロイロツス(Pleurotus)属から誘導可能であり、特に、ここで、該ポリペプチドが、クリトピルス・シフォイデス(Clitopilus scyphoides)、クリトピルス・プルヌルス(Clitopilus prunulus)、クリトピルス・ホブソニイ(Clitopilus hobsonii)、クリトピルス・プソイド−ピンシツス(Clitopilus pseudo−pinsitus)、クリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)およびクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のいずれかから、特にクリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)またはクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)から誘導可能である、実施形態1〜19のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチド。
【0253】
21.A)実施形態1〜20のいずれか1項に記載のポリペプチドもしくは配列番号9のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
B)a)配列番号8の配列、または
a’)配列番号15の配列もしくはそれに相補的な配列、または
b)a’)に記載の配列の部分配列(該部分配列はジテルペンシンターゼをコードするものである)、または
c)a’)に記載の配列に対して少なくとも40%の配列同一性を有し、もしくはa)に記載の配列もしくはb)に記載の部分配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有し、ジテルペンシンターゼをコードする配列、または
d)ジテルペンシンターゼをコードし、a)、a’)、b)およびc)のいずれかに記載の配列に対する遺伝暗号の結果として縮重している配列、または
e)ジテルペンシンターゼをコードし、ストリンジェントな条件下で配列番号8および/もしくは配列番号13にハイブリダイズしうる配列
であるヌクレオチド配列、
C)B項に記載のヌクレオチド配列の少なくとも18個の連続的ヌクレオチド、および/または
D)ストリンジェントな条件下でA項もしくはB項に記載のヌクレオチド配列を有する核酸分子にハイブリダイズしうる少なくとも18個の連続的ヌクレオチドを含む単離された核酸分子。
【0254】
22.実施形態1〜20のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは配列番号9のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【0255】
23.a)配列番号8の配列もしくはそれに相補的な配列、または
a’)配列番号15の配列もしくはそれに相補的な配列、または
b)a)もしくはa’)に記載の配列の部分配列(該部分配列は、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするものである)、または
c)a)もしくはa’)に記載の配列に対して少なくとも40%の配列同一性を有し、もしくはb)に記載の部分配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有し、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする配列、または
d)ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードし、a)、a’)、b)およびc)のいずれかに記載の配列に対する遺伝暗号の結果として縮重している配列、または
e)ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードし、ストリンジェントな条件下でa)、a’)、b)およびc)のいずれかに記載の配列、特に配列番号8および/もしくは配列番号13にハイブリダイズしうる配列であるヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【0256】
24.a)配列番号15の配列、または
b)それに相補的な配列、または
c)a)もしくはb)に記載の配列に対して少なくとも40%の配列同一性を有し、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする配列、または
d)ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードし、a)、b)およびc)のいずれかに記載の配列に対する遺伝暗号の結果として縮重している配列、または
e)ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードし、ストリンジェントな条件下でa)、b)、c)およびd)のいずれかに記載の配列、特に配列番号15にハイブリダイズしうる配列であるヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【0257】
25.a)ジテルペンを産生する生合成経路に関与する遺伝子クラスターをコードする、配列番号15の配列、または
b)プロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する遺伝子クラスターをコードする、配列番号15の配列、または
c)a)もしくはb)に記載の配列に対して少なくとも40%の配列同一性を有し、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする配列、または
d)ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードし、a)、b)およびc)のいずれかに記載の配列に対する遺伝暗号の結果として縮重している配列、または
e)ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードし、配列番号15にハイブリダイズしうる配列であるヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【0258】
26.該核酸分子が、ゲラニルゲラニルピロホスファートからプロイロムチリンへの変換を触媒しうる、特に、ファルネシルジホスファートからプロイロムチリンへの変換を触媒しうるポリペプチドをコードする核酸配列を含む遺伝子クラスターを含む、実施形態24または25に記載の単離された核酸分子。
【0259】
27.a)配列番号8の配列、または
b)配列番号13の配列、または
c)a)もしくはb)に記載の配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有し、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする配列、または
d)ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードし、a)、b)およびc)のいずれかに記載の配列に対する遺伝暗号の結果として縮重している配列、または
e)ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードし、ストリンジェントな条件下でa)、b)、c)およびd)のいずれかに記載の配列にハイブリダイズしうる配列であるヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【0260】
28.a)ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号15の部分配列、または
b)プロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号15の部分配列、または
c)a)もしくはb)に記載の部分配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有し、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする配列、または
d)ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードし、a)、b)およびc)のいずれかに記載の部分配列に対する遺伝暗号の結果として縮重している配列、または
e)ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードし、ストリンジェントな条件下でa)、b)、c)およびd)のいずれかに記載の配列にハイブリダイズしうる配列であるヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【0261】
29.c)項における少なくとも40%の配列同一性が少なくとも45%、50%、55%、特に少なくとも60%、65%、70%、特に少なくとも75%、80%、85%、より詳しくは少なくとも90%、92%、95%、97%、99%、特に100%の配列同一性である、および/または
c)項における少なくとも60%の配列同一性が少なくとも65%、70%、75%、特に少なくとも80%、85%、特に少なくとも90%、92%、より詳しくは少なくとも95%、97%、99%、特に100%の配列同一性である、実施形態21、23、24、25、27および28のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
【0262】
30.該核酸分子が、真菌宿主、特に担子菌門の真菌、より詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌から誘導可能であり、特に、ここで、該核酸分子が、クリトピルス(Clitopilus)属またはプロイロツス(Pleurotus)属から誘導可能であり、特に、ここで、該核酸分子が、クリトピルス・シフォイデス(Clitopilus scyphoides)、クリトピルス・プルヌルス(Clitopilus prunulus)、クリトピルス・ホブソニイ(Clitopilus hobsonii)、クリトピルス・プソイド−ピンシツス(Clitopilus pseudo−pinsitus)、クリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)およびクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)のいずれかから、特にクリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)またはクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)から誘導可能である、実施形態21〜29のいずれか1項に記載の核酸分子。
【0263】
31.プロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする配列が、
i)ジテルペンシンターゼをコードする配列、および/または
ii)プロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする配列、および/または
ii)プロイロムチリンシンターゼをコードする配列であり、
特に、ここで、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドが、ゲラニルゲラニルピロホスファートからプロイロムチリン前駆体への、特に式(I)の化合物への変換を触媒しうる、実施形態21〜30のいずれか1項に記載の核酸分子。
【0264】
32.少なくとも18、19、20、25個、特に少なくとも30、35、40、45個、特に少なくとも50、55、60、65個、特に少なくとも70、75、80、85、90、95個、特に少なくとも100、150、200、250個、特に少なくとも300、350、400、450または500個の、実施形態22〜31のいずれか1項に記載の配列の連続的ヌクレオチドを含む、特に、検出可能標識を更に含む単離された核酸分子。
【0265】
33.少なくとも18、19、20、25個、特に少なくとも30、35、40、45個、特に少なくとも50、55、60、65個、特に少なくとも70、75、80、85、90、95個、特に少なくとも100、150、200、250個、特に少なくとも300、350、400、450または500個の連続的ヌクレオチドを含む単離された核酸分子であって、該核酸分子が、ストリンジェントな条件下で実施形態22〜31のいずれか1項に記載の核酸分子にハイブリダイズしうる、特に、該核酸分子が検出可能標識を更に含む、単離された核酸分子。
【0266】
34.実施形態21および23〜31のいずれか1項に記載の核酸分子によりコードされるポリペプチド。
【0267】
35.実施形態1〜20のいずれか1項において更に定義されている、実施形態34に記載のポリペプチド。
【0268】
36.実施形態21〜31のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター、または実施形態21〜31のいずれか1項に記載の核酸配列を含むベクター。
【0269】
37.細胞、組織および非ヒト生物から選択される天然に存在しない宿主であって、該宿主が、実施形態21〜31のいずれか1項に記載のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの核酸を含み、特に、ここで、該ヌクレオチド配列が、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチド、特にジテルペンシンターゼまたはプロイロムチリンシンターゼをコードしており、特に、ここで、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドがゲラニルゲラニルピロホスファートからプロイロムチリン前駆体への、特に式(I)の化合物への変換を触媒しうる、宿主。
【0270】
38.細胞、組織および非ヒト生物から選択される天然に存在しない宿主であって、実施形態36に記載の少なくとも1つのベクターを含む、宿主。
【0271】
39.細胞、組織および非ヒト生物から選択される天然に存在しない宿主であって、該宿主が、実施形態21〜31のいずれか1項に記載のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの核酸分子を含み、特に、ここで、該ヌクレオチド配列が、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチド、特にジテルペンシンターゼまたはプロイロムチリンシンターゼをコードしており、特に、ここで、ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドがゲラニルゲラニルピロホスファートからプロイロムチリン前駆体への、特に式(I)の化合物への変換を触媒することが可能であり、該宿主が、実施形態36に記載の少なくとも1つのベクターを含む、宿主。
【0272】
40.該宿主がプロイロムチリン前駆体、特に式(I)の化合物を産生しうる、実施形態37〜39のいずれか1項に記載の宿主。
【0273】
41.該宿主がジテルペンまたはジテルペノイド、特にプロイロムチリンを産生しうる、実施形態37〜40のいずれか1項に記載の宿主。
【0274】
42.細胞、組織および非ヒト生物から選択される、前記の少なくとも1つの核酸分子および/またはベクターを含まない対応する天然に存在しない宿主が、
(i)式(I)の化合物を産生しうる、および/または
(ii)プロイロムチリンを産生しうる、実施形態37〜41のいずれか1項に記載の宿主。
【0275】
43.細胞、組織および非ヒト生物から選択される、前記の少なくとも1つの核酸分子および/またはベクターを含まない対応する天然に存在しない宿主が、
(i)式(I)の化合物を産生し得ない、および/または
(ii)プロイロムチリンを産生し得ない、実施形態37〜41のいずれか1項に記載の宿主。
【0276】
44.該宿主が真菌宿主、より詳しくは担子菌門の真菌、より一層詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌であり、特に、ここで、該宿主がクリトピルス(Clitopilus)属またはプロイロツス(Pleurotus)属のものであり、特に、ここで、該宿主が、クリトピルス・シフォイデス(Clitopilus scyphoides)、クリトピルス・プルヌルス(Clitopilus prunulus)、クリトピルス・ホブソニイ(Clitopilus hobsonii)、クリトピルス・プソイド−ピンシツス(Clitopilus pseudo−pinsitus)、クリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)およびクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)、特にクリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)またはクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からなる群から選択される、前記実施形態のいずれか1項に記載の宿主。
【0277】
45.(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、実施形態21〜31のいずれか1項に記載の少なくとも1つの核酸分子および/または実施形態36に記載の少なくとも1つのベクターを導入し、(ii)該ポリペプチドの産生に適した条件下で該宿主を培養することを含み、特に、(iii)該宿主から該ポリペプチドを回収するもう1つの工程を含む、実施形態1〜20、34および35のいずれか1項に記載のポリペプチドの製造方法。
【0278】
46.(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、実施形態21〜31のいずれか1項に記載の少なくとも1つの核酸分子を導入し、(ii)該ポリペプチドの産生に適した条件下で該宿主を培養することを含み、特に、(iii)該宿主から該ポリペプチドを回収するもう1つの工程を含む、実施形態1〜20、34および35のいずれか1項に記載のポリペプチドの製造方法。
【0279】
47.(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、実施形態36に記載の少なくとも1つのベクターを導入し、(ii)該ポリペプチドの産生に適した条件下で該宿主を培養することを含み、特に、(iii)該宿主から該ポリペプチドを回収するもう1つの工程を含む、実施形態1〜20、34および35のいずれか1項に記載のポリペプチドの製造方法。
【0280】
48.(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、実施形態21〜31のいずれか1項に記載の少なくとも1つの核酸分子および実施形態36に記載の少なくとも1つのベクターを導入し、(ii)該ポリペプチドの産生に適した条件下で該宿主を培養することを含み、特に、(iii)該宿主から該ポリペプチドを回収するもう1つの工程を含む、実施形態1〜20、34および35のいずれか1項に記載のポリペプチドの製造方法。
【0281】
49.(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、実施形態21Ba’、23、24および25のいずれか1項に記載の核酸分子ならびに/または実施形態21Ba’、23、24、25および26のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクターを導入し、(ii)プロイロムチリンの産生に適した条件下で該宿主を培養することを含む、プロイロムチリンの製造方法。
【0282】
50.(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、実施形態21Ba’、23、24、25および26のいずれか1項に記載の核酸分子を導入し、(ii)プロイロムチリンの産生に適した条件下で該宿主を培養することを含む、プロイロムチリンの製造方法。
【0283】
51.(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、実施形態21Ba’、23、24、25および26のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクターを導入し、(ii)プロイロムチリンの産生に適した条件下で該宿主を培養することを含む、プロイロムチリンの製造方法。
【0284】
52.(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、実施形態21Ba’、23、24および25のいずれか1項に記載の核酸分子ならびに実施形態21Ba’、23、24、25および26のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクターを導入し、(ii)プロイロムチリンの産生に適した条件下で該宿主を培養することを含む、プロイロムチリンの製造方法。
【0285】
53.(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、実施形態21〜31のいずれか1項に記載の核酸分子および/または実施形態36に記載のベクターを導入し、(ii)該プロイロムチリン前駆体の産生に適した条件下で該宿主を培養することを含む、プロイロムチリン前駆体、特に式(I)の化合物の製造方法。
【0286】
54.(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、実施形態21〜31のいずれか1項に記載の核酸分子を導入し、(ii)該プロイロムチリン前駆体の産生に適した条件下で該宿主を培養することを含む、プロイロムチリン前駆体、特に式(I)の化合物の製造方法。
【0287】
55.(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、実施形態36に記載のベクターを導入し、(ii)該プロイロムチリン前駆体の産生に適した条件下で該宿主を培養することを含む、プロイロムチリン前駆体、特に式(I)の化合物の製造方法。
【0288】
56.(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、実施形態21〜31のいずれか1項に記載の核酸分子および実施形態36に記載のベクターを導入し、(ii)該プロイロムチリン前駆体の産生に適した条件下で該宿主を培養することを含む、プロイロムチリン前駆体、特に式(I)の化合物の製造方法。
【0289】
57.細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主におけるプロイロムチリンの産生の改変方法であって、該宿主がプロイロムチリンを産生することが可能であり、実施形態21〜31のいずれか1項に記載のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの核酸分子を含み、該方法が、前記の少なくとも1つの核酸分子のi)発現、ii)同一性、またはiii)発現および同一性の両方を操作することを含み、特に、ここで、該方法が、
a)プロイロムチリンの産生を増加させる方法、または
b)特に、前記の少なくとも1つの核酸分子を破壊またはダウンレギュレーションすることを含む、プロイロムチリンの産生を減少させる方法であり、特に、ここで、該宿主が真菌宿主、より詳しくは担子菌門の真菌、より一層詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌である、方法。
【0290】
58.細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主におけるプロイロムチリンの産生の改変方法であって、該宿主がプロイロムチリンを産生することが可能であり、実施形態21〜31のいずれか1項に記載のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの核酸分子を含み、該方法が、前記の少なくとも1つの核酸分子の同一性を操作することを含む、方法。
【0291】
59.細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主におけるプロイロムチリンの産生の改変方法であって、該宿主がプロイロムチリンを産生することが可能であり、実施形態21〜31のいずれか1項に記載のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの核酸分子を含み、該方法が、前記の少なくとも1つの核酸分子の発現を操作することを含む、方法。
【0292】
60.該方法が、プロイロムチリンの産生を増加させる方法である、実施形態57〜59のいずれか1項に記載の方法。
【0293】
61.該方法が、プロイロムチリンの産生を減少させる方法であり、特に、前記の少なくとも1つの核酸分子を破壊またはダウンレギュレーションすることを含む、実施形態57〜59のいずれか1項に記載の方法。
【0294】
62.該宿主が真菌宿主、より詳しくは担子菌門の真菌、より一層詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌であり、特に、ここで、該宿主がクリトピルス(Clitopilus)属またはプロイロツス(Pleurotus)属のものであり、特に、ここで、該宿主が、クリトピルス・シフォイデス(Clitopilus scyphoides)、クリトピルス・プルヌルス(Clitopilus prunulus)、クリトピルス・ホブソニイ(Clitopilus hobsonii)、クリトピルス・プソイド−ピンシツス(Clitopilus pseudo−pinsitus)、クリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)およびクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)、特にクリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)またはクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からなる群から選択される、実施形態57〜61のいずれか1項に記載の方法。
【0295】
63.プロイロムチリンの製造における、実施形態21〜31のいずれか1項に記載の単離された核酸分子の使用であって、該核酸分子の配列の2〜50ヌクレオチドが、プロイロムチリンを産生しうる野生型生物に含まれるプロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する遺伝子クラスターの配列とは異なっており、または該核酸分子が非天然核酸分子である、使用。
【0296】
64.プロイロムチリン前駆体の製造における、実施形態21〜31のいずれか1項に記載の単離された核酸分子の使用であって、該核酸分子の配列の2〜50ヌクレオチドが、プロイロムチリンを産生しうる野生型生物に含まれるジテルペンシンターゼをコードする配列とは異なっており、また該核酸分子が非天然核酸分子であり、特に、ここで、該プロイロムチリン前駆体が式(I)の化合物である、使用。
【0297】
65.2〜50ヌクレオチドが、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40または45ヌクレオチドであり、特に3〜100、より詳しくは5〜80ヌクレオチド、より一層詳しくは8〜60ヌクレオチドである、実施形態63または64記載の使用。
【0298】
66.プロイロムチリンまたはプロイロムチリン前駆体の製造における、実施形態37〜44のいずれか1項に記載の宿主の使用であって、特に、ここで、該プロイロムチリン前駆体が式(I)の化合物である、使用。
【0299】
67.ジテルペンシンターゼ活性、特にプロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする、および/またはジテルペンシンターゼ、特にプロイロムチリンシンターゼをコードする1以上の核酸を特定するための、実施形態21〜33のいずれか1項、特に実施形態32または33に記載の単離された核酸分子の使用。
【0300】
68.ジテルペンシンターゼ活性、特にプロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする、および/またはジテルペンシンターゼ、特にプロイロムチリンシンターゼをコードする1以上の核酸を単離するための、実施形態21〜33のいずれか1項、特に実施形態32または33に記載の単離された核酸分子の使用。
【0301】
69.ジテルペンシンターゼ活性、特にプロイロムチリンシンターゼ活性を有するポリペプチドを単離する、および/またはジテルペンシンターゼ、特にプロイロムチリンシンターゼを単離する方法における、実施形態21〜33のいずれか1項、特に実施形態32または33記載の単離された核酸分子の使用。
【0302】
70.ジテルペンシンターゼ活性を有する該ポリペプチドまたはジテルペンシンターゼが、実施形態1〜20のいずれか1項のポリペプチドと同様に更に定義される、実施形態67〜69のいずれか1項に記載の使用。
【0303】
71.前記の1以上の核酸が、実施形態21〜33のいずれか1項の核酸と同様に更に定義される、実施形態67〜68のいずれか1項に記載の使用。
【0304】
72.プロイロムチリン前駆体、特に式(I)の化合物の製造方法であって、該方法が、
A)該前駆体の発酵的製造方法であり、特に、
(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、実施形態21〜31のいずれか1項に記載の少なくとも1つの核酸分子および/または実施形態36に記載の少なくとも1つのベクターを導入し、
(ii)該前駆体の発酵的製造に適した条件下で該宿主を培養する工程を含み、または
B)該前駆体の合成的製造方法であり、ゲラニルゲラニルピロホスファートを請求項1〜20、34および35のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは実施形態45〜48のいずれか1項に記載の方法により入手可能なポリペプチドと反応させることを含む、製造方法。
【0305】
73.プロイロムチリン前駆体、特に式(I)の化合物の製造方法であって、該方法が該前駆体の発酵的製造方法であり、特に、
(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、実施形態21〜31のいずれか1項に記載の少なくとも1つの核酸分子および/または実施形態36に記載の少なくとも1つのベクターを導入し、
(ii)該前駆体の発酵的製造に適した条件下で該宿主を培養する工程を含み、特に、ここで、該方法が、(iii)該宿主から該前駆体を回収するもう1つの工程を含む、製造方法。
【0306】
74.該宿主が真菌宿主、より詳しくは担子菌門の真菌、より一層詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌であり、特に、ここで、該宿主がクリトピルス(Clitopilus)属またはプロイロツス(Pleurotus)属のものであり、特に、ここで、該宿主が、クリトピルス・シフォイデス(Clitopilus scyphoides)、クリトピルス・プルヌルス(Clitopilus prunulus)、クリトピルス・ホブソニイ(Clitopilus hobsonii)、クリトピルス・プソイド−ピンシツス(Clitopilus pseudo−pinsitus)、クリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)およびクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)、特にクリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)またはクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)からなる群から選択される、実施形態72または73記載の製造方法。
【0307】
75.プロイロムチリン前駆体、特に式(I)の化合物の製造方法であって、該方法が該前駆体の合成的製造方法であり、ゲラニルゲラニルピロホスファートを請求項1〜20、34および35のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは実施形態45〜48のいずれか1項に記載の方法により入手可能なポリペプチドと反応させることを含む、製造方法。
【0308】
76.式(I)の単離された化合物。
【0309】
77.実施形態53〜56または72〜75のいずれか1項に記載の製造方法により入手可能である式(I)の単離された化合物。
【0310】
78.i)実施形態53〜56および72〜75のいずれか1項に記載の製造方法により得られるプロイロムチリン前駆体、
ii)実施形態64の使用により得られるプロイロムチリン前駆体、または
iii)実施形態76または77記載の単離された化合物を反応させる工程を含み、場合によっては、プロイロムチリン抗生物質を製造するための更なる反応工程を含む、プロイロムチリン抗生物質の製造方法。
【0311】
79.プロイロムチリン抗生物質、特にプロイロムチリン誘導体の製造における、
i)実施形態53〜56および72〜75のいずれか1項に記載の製造方法により得られるプロイロムチリン前駆体、
ii)実施形態64の使用により得られるプロイロムチリン前駆体、または
iii)実施形態76または77記載の単離された化合物の使用。
【0312】
80.i)医薬としての使用のための、または
ii)細菌感染症、特に、グラム陽性菌、特にブドウ球菌、レンサ球菌、肺炎球菌および腸球菌から選択されるグラム陽性菌;グラム陰性菌、特にナイセリア(Neisseria)、ヘモフィルス(Haemophilus)、モラクセラ(Moraxella)、ボルデテラ(Bordetella)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ(Leptospira)属から選択されるグラム陰性菌;マイコプラズマ;クラミジア;グラム陽性嫌気性細菌およびグラム陰性嫌気性細菌からなる群から選択される細菌により引き起こされる感染症の治療方法における使用のための、または
iii)グラム陽性菌、特にブドウ球菌、レンサ球菌、肺炎球菌および腸球菌から選択されるグラム陽性菌;グラム陰性菌、特にナイセリア(Neisseria)、ヘモフィルス(Haemophilus)、モラクセラ(Moraxella)、ボルデテラ(Bordetella)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ(Leptospira)属から選択されるグラム陰性菌;マイコプラズマ;クラミジア;グラム陽性嫌気性細菌およびグラム陰性嫌気性細菌からなる群から選択される細菌が関与する障害もしくは疾患の治療における使用のための、実施形態49〜52,63および66のいずれか1項に従い得られるプロイロムチリン。
【0313】
81.i)医薬としての使用のための、または
ii)細菌感染症、特に、グラム陽性菌、特にブドウ球菌、レンサ球菌、肺炎球菌および腸球菌から選択されるグラム陽性菌;グラム陰性菌、特にナイセリア(Neisseria)、ヘモフィルス(Haemophilus)、モラクセラ(Moraxella)、ボルデテラ(Bordetella)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ(Leptospira)属から選択されるグラム陰性菌;マイコプラズマ;クラミジア;グラム陽性嫌気性細菌およびグラム陰性嫌気性細菌からなる群から選択される細菌により引き起こされる感染症の治療方法における使用のための、または
iii)グラム陽性菌、特にブドウ球菌、レンサ球菌、肺炎球菌および腸球菌から選択されるグラム陽性菌;グラム陰性菌、特にナイセリア(Neisseria)、ヘモフィルス(Haemophilus)、モラクセラ(Moraxella)、ボルデテラ(Bordetella)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ(Leptospira)属から選択されるグラム陰性菌;マイコプラズマ;クラミジア;グラム陽性嫌気性細菌およびグラム陰性嫌気性細菌からなる群から選択される細菌が関与する障害もしくは疾患の治療における使用のための、実施形態78に記載の製造方法により得られるプロイロムチリン抗生物質。
【0314】
【表4】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、
配列番号2に対して少なくとも40%の配列同一性を有する配列、ならびに
i)配列番号7に対して少なくとも15%の配列同一性を有する配列、
ii)配列番号4に対して少なくとも25%の配列同一性を有する配列、
iii)配列番号5に対して少なくとも45%の配列同一性を有する配列、および
iv)配列番号6に対して少なくとも45%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される少なくとも1つの配列を含むアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、配列番号1〜2および4〜7がクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)由来であり、ポリペプチドがジテルペンシンターゼである、単離された該ポリペプチド。
【請求項2】
該アミノ酸配列が、配列番号3に対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列を更に含み、配列番号3がクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)由来である、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項3】
ポリペプチドの分子量が90kDa〜140kDaの間、特に100kDa〜130kDaの間、特に105kDa〜120kDaの間である、および/またはポリペプチドが、配列番号9に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、配列番号9に対して少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%または更には少なくとも90%、例えば、より一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項4】
ポリペプチドがゲラニルゲラニルピロホスファートからプロイロムチリン前駆体への、特に式(I)の化合物への変換を触媒しうる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項5】
A)請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドもしくは配列番号9のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
B)a)配列番号8の配列、または
a’)配列番号15の配列もしくはそれに相補的な配列、または
b)a’)に記載の配列の部分配列(該部分配列はジテルペンシンターゼをコードするものである)、または
c)a’)に記載の配列に対して少なくとも40%の配列同一性を有し、もしくはa)に記載の配列もしくはb)に記載の部分配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有し、ジテルペンシンターゼをコードする配列、または
d)ジテルペンシンターゼをコードし、a)、a’)、b)およびc)のいずれかに記載の配列に対する遺伝暗号の結果として縮重している配列、または
e)ジテルペンシンターゼをコードし、ストリンジェントな条件下で配列番号8および/もしくは配列番号13にハイブリダイズしうる配列
であるヌクレオチド配列、
C)B項に記載のヌクレオチド配列の少なくとも18個の連続的ヌクレオチド、および/または
D)ストリンジェントな条件下でA項もしくはB項に記載のヌクレオチド配列を有する核酸分子にハイブリダイズしうる少なくとも18個の連続的ヌクレオチドを含む単離された核酸分子。
【請求項6】
ポリペプチドまたは核酸分子が、真菌宿主、特に担子菌門の真菌、より詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌から誘導可能である、特に、該ポリペプチドまたは核酸分子が、クリトピルス・ピンシツス(Clitopilus pinsitus)またはクリトピルス・パッセケリアヌス(Clitopilus passeckerianus)から誘導可能である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチドまたは請求項5に記載の単離された核酸分子。
【請求項7】
請求項5のAまたはBに記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項8】
細胞、組織および非ヒト生物から選択される天然に存在しない宿主であって、該宿主が、請求項5のAもしくはBに記載のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの核酸分子および/または請求項7に記載の少なくとも1つのベクターを含み、特に、ここで、該宿主が、真菌宿主、より詳しくは担子菌門の真菌、より詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌である、宿主。
【請求項9】
(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、請求項5のAもしくはBに記載の少なくとも1つの核酸分子および/または請求項7に記載の少なくとも1つのベクターを導入し、(ii)ポリペプチドの産生に適した条件下で該宿主を培養することを含み、特に、(iii)宿主からポリペプチドを回収するもう1つの工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの製造方法。
【請求項10】
(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、請求項5のBa’に記載の核酸分子および/または請求項5のBa’に記載の核酸分子を含むベクターを導入し、(ii)プロイロムチリンの産生に適した条件下で宿主を培養することを含む、プロイロムチリンの製造方法。
【請求項11】
細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主におけるプロイロムチリンの産生の改変方法であって、該宿主がプロイロムチリンを産生することが可能であり、請求項5のAまたはBに記載のヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの核酸分子を含み、該方法が、前記の少なくとも1つの核酸分子のi)発現、ii)同一性、またはiii)発現および同一性の両方を操作することを含み、特に、ここで、該方法が、
a)プロイロムチリンの産生を増加させる方法、または
b)特に、前記の少なくとも1つの核酸分子を破壊またはダウンレギュレーションすることを含む、プロイロムチリンの産生を減少させる方法であり、特に、ここで、該宿主が真菌宿主、より詳しくは担子菌門の真菌、より一層詳しくはハラタケ目の真菌、より一層詳しくはイッポンシメジ科の真菌である、方法。
【請求項12】
請求項5のAまたはBに記載の単離された核酸分子の使用であって、
a)該核酸分子の配列の2〜50ヌクレオチドが、プロイロムチリンを産生しうる野生型生物により含まれるプロイロムチリンを産生する生合成経路に関与する遺伝子クラスターの配列とは異なっている、プロイロムチリンの製造における、または
b)該核酸分子の配列の2〜50ヌクレオチドが、プロイロムチリンを産生しうる野生型生物により含まれるジテルペンシンターゼをコードする配列とは異なっている、プロイロムチリン前駆体(特に、該プロイロムチリン前駆体は式(I)の化合物である)の製造における、使用。
【請求項13】
プロイロムチリン前駆体が式(I)の化合物である、プロイロムチリンまたはプロイロムチリン前駆体の製造における請求項8に記載の使用。
【請求項14】
ジテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする、特に、ジテルペンシンターゼをコードする、特に、プロイロムチリンシンターゼをコードする1以上の核酸を特定するための、請求項5に記載の単離された核酸分子の使用。
【請求項15】
プロイロムチリン前駆体、特に式(I)の化合物の製造方法であって、該方法が、
A)該前駆体の発酵的製造方法であり、
(i)細胞、組織および非ヒト生物から選択される宿主内に、請求項5のAもしくはBに記載の少なくとも1つの核酸分子および/または請求項7に記載の少なくとも1つのベクターを導入し、
(ii)該前駆体の発酵的製造に適した条件下で宿主を培養する工程を含み、または
B)該前駆体の合成的製造方法であり、ゲラニルゲラニルピロホスファートを請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは請求項9に記載の製造方法により入手可能なポリペプチドと反応させることを含む、製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【図3−7】
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【図3−8】
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【図3−9】
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【図3−10】
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【図3−11】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図11−4】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−521006(P2013−521006A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556513(P2012−556513)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2011/053571
【国際公開番号】WO2011/110610
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(305008042)サンド・アクチエンゲゼルシヤフト (54)
【Fターム(参考)】