説明

ジデムニン(Didemnin)化合物の医薬製剤

【課題】デヒドロジデムニンB等のジデムニン化合物の、医薬投与形態の最良の、安定した調製のために、特に凍結乾燥調製製剤の提供。
【解決手段】ジデムニン化合物の安定な医薬組成物であって、第一に水溶性物質を含有する凍結乾燥したジデムニン調製物を、さらに第二に混合溶媒の再構成(戻し)溶液を含有する、上記医薬組成物。ジデムニンが、ジデムニン、デヒドロジデムニン、ノルジデムニン、ジデムニン同族体及びジデムニン類似体のなかから選択される化合物で、抗腫瘍治療として患者に投与する再構成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬製剤、より詳しくはジデムニン(didemnin)化合物の医薬製剤に関する。
【0002】
(背景技術)
リンハート(Rinehart)に対する米国特許第5,294,603号は、調剤上許容される担体、賦形剤又は希釈剤と組み合わせたジデムニン(didemnin)を含有する医薬組成物をクレームする。
【0003】
(課題)
実務において、患者に投与するために適したジデムニン化合物の医薬組成物を調製するには幾つかの問題があり、特に、安定した非経口的な医薬投与形態に対するニーズがある。より特定すると、アプリジン(aplidine)としても知られる、デヒドロジデムニンB等のジデムニン化合物では、医薬投与形態の最良の、安定した調製のために、特に凍結乾燥調製においては、マンニトール等の充填剤との混合が必要とされる。
【0004】
マンニトール等のこの目的のための一定の充填剤は、可溶化のために水を必要とするが、一方アプリジン等の薬物の水への溶解性は低い。しかしながら、患者への薬剤投与のためには、使用前に凍結乾燥物質を再懸濁することが必要である。
【0005】
(本発明)
本発明は、第一に水溶性物質を含有する凍結乾燥ジデムニン調製物を、及び第二に混合溶媒の再構成溶液(戻し溶液)を含有する、ジデムニン化合物の医薬組成物を提供することにより、当該問題を解決する。混合溶媒は、水溶性物質を溶解する働きをする水及びジデムニン化合物を溶解する働きをする他の溶媒を包する、水性溶媒を包含する。
【0006】
(好ましい態様)
本発明の医薬組成物は典型的に抗腫瘍治療として患者に投与するための再構成物に適した、安定な非経口医薬投与形態である。本発明は、相容れない溶媒に可溶性である、二つ又はそれ以上の物質の凍結乾燥された混合物として提供されなければならない薬剤(例えばアプリジン)に関する問題を解決する。それは、好ましくは、別々に瓶に詰められた、又はそうでなければ包装された、前もって混合した界面活性剤/アルカノール/水の三成分の溶媒の混合物を提供する。そのような医薬投与形態の適当な再懸濁を達成するために、別にパッケージされた溶媒混合物が、疾病の治療のための投与の前に薬剤及びマンニトール等の水溶性物質を含有する乾燥した凍結乾燥調製物へ添加するために、提供される。
【0007】
本発明の医薬組成物のための好ましいジデムニン(didemnin)化合物には、ジデムニン及び、例えばデヒドロジデムニン、ノルジデムニン、ジデムニン同族体、ジデムニン類似体等、のジデムニン誘導体を包含する。本発明は特に、例えばアプリジン(aplidine)としても知られるデヒドロジデムニンB等を包含する、限られた水溶性しか有しないジデムニンに向けられている。
【0008】
抗腫瘍性薬剤であるアプリジン(デヒドロジデムニンB)は、地中海産の被嚢類亜門、アプリジウム アルビカンズ(Aplidium albicans)から単離される、天然産生の環状デプシペプチドである。アプリジンは幾つかのクロマトグラフィーの及びスペクトロメトリーの技術を用いて特性決定されている。溶解性試験により、アプリジンは水溶性が低いことが解った。さらに、アプリジンの溶液中での長期の安定性は現在でも知られていない。
【0009】
凍結乾燥ジデムニン調製物は好ましくは、ジデムニン/アルカノール/水混合物、特にアルカノールとしてt−ブタノールを用いたもの、をフリーズドライすることにより調製される。アルカノール/水混合物は、適当には、25から60%v/vのアルカノールを含有する。そのような凍結乾燥された投与形態の調製に有用であると知られている、他の慣用の水溶性添加物も含有され得るが、マンニトール等の充填剤もまた含有され得る。
【0010】
再構成溶液(戻し溶液)は、好ましくは、界面活性剤/アルカノール/水の混合物、特に非イオン性界面活性剤及びアルカノールとしてエタノールを用いたもの、を包含する。界面活性剤は適当には、混合物の10から25%v/vであり;アルカノールは適当には混合物の10から25%v/vであり;水は適当には混合物の50から80%である。
【0011】
(例)
フリーズドライは、25mg/mlのマンニトールを充填剤として含有する、注射用水(WFI)中、40%v/vのt−ブタノール中の1.0mg/ml溶液アプリジンから行われる。示差的なスキャニング熱量測定法試験を、フリーズドライ・サイクル・パラメーターを測定するために行った。バイアル当たり、1.0mgのアプリジン及び25mgのマンニトールを含有する原型が、溶解性、フリーズドライのサイクルの長さ及び用量要件の点から、最良の調剤であることが解った。
【0012】
15/15/70%(v/v/v)のクレモフォア(Cremophor)EL/エタノールアブソリュート/WFIからなる溶液(クレモフォア(Cremophor)ELはグリセロール−ポリエチレングリコールリシノレアートであり、ドイツのBASFから入手し得る)が最良の再構成(戻し)溶液であることが解った。
【0013】
戻した製品の通常の食塩水による1:200までの希釈は、それが調製後少なくとも24時間まで安定であることを示した。フリーズドライ製剤の品質管理は、製造工程においてアプリジンがもとのまま変化しないことを示した。これまでに得られた貯蔵寿命のデータは、製剤が、+4℃の暗所において貯蔵された場合、少なくとも6週間安定であることを示した。
【0014】
したがって、本発明の好ましいアプリジン製品は、1mg/バイアルの凍結乾燥アプリジン製品を含む注射バイアル及び2mlの15/15/70%(v/v/v)のクレモフォアEL/エタノール/水を再構成(戻し)溶液として含む注射バイアルを包含する二部分からなるパッケージである。
【0015】
凍結乾燥された製品のための再構成(戻し)溶液としての15/15/70%(v/v/v)のクレモフォアEL/エタノール/水の使用には先例がない。これまで、市場で入手される製品中のクレモフォアEL/エタノールの組み合わせは、溶液ビヒクルとしてのみ用いられてきた(例えばタクソール(taxsol)又はシクロスポリン(cyclosporine))。
【0016】
クレモフォアEL/エタノール/水ビヒクルの開発は、将来の薬物製剤において再構成(戻し)溶液として適用され得る、そしてマンニトール等の水溶性充填剤の添加を可能とする、強力な副溶媒/界面活性剤系を提供する。さらに、クレモフォアELの相対的な量を減らすことにより、より毒性の低いビヒクルが作製される。
【0017】
凍結乾燥された製品の製造工程はまた、特別な特徴を有する。通常、薬剤のフリーズドライは水のなかの薬剤から行われる。アプリジンの場合、好ましくは40%(v/v)のt−ブタノール/水混合物がフリーズドライ媒体として用いられる。以前に記載されてはいるものの(例えばリゾキシン)、40%(v/v)のt−ブタノール/水混合物は、一般的な慣用手段ではない。
【0018】
結論として、t−ブタノール/水混合物からの薬剤の凍結乾燥及びそれに次ぐ15/15/70%(v/v/v)のクレモフォアEL/エタノール/水による凍結乾燥製品の再構成(戻し)の組み合わせは、独特のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一に水溶性物質を含む凍結乾燥したジデムニン調製物を、そして第二に混合溶媒の再構成(戻し)溶液を含む、ジデムニン化合物の医薬組成物。
【請求項2】
抗腫瘍治療として患者に投与する再構成物を目的とする、請求項1に記載のジデムニン組成物。
【請求項3】
ジデムニンが、ジデムニン、デヒドロジデムニン、ノルジデムニン、ジデムニン同族体及びジデムニン類似体のなかから選択される、請求項1又は2に記載のジデムニン組成物。
【請求項4】
ジデムニン化合物がアプリジン(aplidine)である、請求項3に記載のジデムニン組成物。
【請求項5】
再構成(戻し)溶液がアルカノール/水混合物を含有する、前記請求項に記載のジデムニン組成物。
【請求項6】
再構成(戻し)溶液が非イオン性界面活性剤を含有する、請求項5に記載のジデムニン組成物。
【請求項7】
非イオン性界面活性剤が溶液の10から25%v/vであり;アルカノールがエタノールであり、かつ溶液の10から25%v/vであり;水が溶液の50から80%v/vである、請求項6に記載のジデムニン組成物。
【請求項8】
水溶性充填剤を含有する凍結乾燥ジデムニン調製物のバイアル及び非イオン性界面活性剤/エタノール/水の前もって混ぜた混合物の別のバイアルを包含する、前記請求項のいずれか一項に記載のジデムニン組成物。
【請求項9】
ジデムニン化合物の医薬組成物の調製方法であって、ジデムニン/水溶性添加物/アルカノール/水混合物をフリーズドライして凍結乾燥第一成分を提供し、及びそれとは別に再構成(戻し)溶液としてアルカノール/水混合物を提供することを包含する、上記方法。
【請求項10】
混合物中のアルカノールがt−ブタノールである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アルカノール/水の混合物中のアルカノールの量が、25から60%v/vである、請求項9又は10に記載の方法。

【公開番号】特開2010−163443(P2010−163443A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50393(P2010−50393)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【分割の表示】特願2000−532139(P2000−532139)の分割
【原出願日】平成11年2月18日(1999.2.18)
【出願人】(501440835)ファルマ・マール・ソシエダード・アノニマ (30)
【Fターム(参考)】