説明

ジヒドロピリジンカルシウム拮抗剤を含む局部用組成物

ジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬、硬化剤及び放出調節剤を含む局部用組成物。該硬化剤は12〜22個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有しそして約45〜75℃の融点を有する、脂肪族アルコール、脂肪酸ソルビタンエステル、又は脂肪酸グリセロールエステルを含む。該放出調節剤は12〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有しそして約−10〜40℃の融点を有する、脂肪族アルコール、脂肪族アルコールグリコールエーテル、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸グリセロールエステル、又は脂肪酸ソルビタンエステルを含む。かかる組成物の、皮膚又は粘膜障害、好ましくは高い肛門圧力又は肛門括約筋けいれんに関連する肛門直腸障害の治療及び/又は予防への使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分としてジヒドロピリジンカルシウム拮抗剤又はそのプロドラッグ、及び薬学的に許容される担体を含む局部用組成物、皮膚又は粘膜障害、好ましくは肛門直腸障害、の治療又は予防用の医薬の製造へのかかる組成物の使用、及びかかる障害の治療又は予防方法に関する。
【背景技術】
【0002】
裂肛は粘膜皮膚移行部に対して丁度末梢側の肛門の偏平上皮における潰瘍であり、通常、後正中線における潰瘍である。それは典型的には排便中又はその後1ないし2時間痛みを引き起こす。裂肛は普通であっても、病原及び病因はまだ不完全にしか理解されていない。それにもかかわらず、文献には、裂肛は高い肛門静止圧に関係するという証拠がある。後正中線における場合、粘膜虚血の90%は、肛門管における高い圧力が毛細血管圧力を越えると生じ得る。恒久的な高い静止圧は括約筋内血流を損傷すると考えられている。この粘膜血流の減少は微細循環撹乱及び低い治癒傾向へと導く。
【0003】
亀裂は急性裂肛と慢性裂肛に分けることができる。亀裂は、それが6週間未満存在すると急性、そして6週間より長く存在すると慢性と定義されていた。更に、裂肛は男性及び女性に同等に発症することが主張されている。自然治癒は、治療しても治療しなくても、成人にける急性裂肛の50%に起こる。高繊維食事が推奨され、そして痛みの緩和(局部麻酔)が幾人かには急性裂肛に有効であることが報告されている。しかしながら、かなり多くの患者が慢性裂肛を発症している。
【0004】
側部括約筋切開を介した外科的介入が慢性裂肛の治療に究極の判断基準としてまだ記載されている。治癒割合は94−100%と報告されている。しかしながら、括約筋切開は肛門管を非対称とすること及び不可逆的な括約筋損傷を伴うので、長期間にわたる結果及び排便失禁についての心配がある。排便及び放屁の失禁の有病率は手術後38%にもなる。括約筋切開を受けた患者の30%までがいくらかの程度の失禁の危険性があるとも記載されている。この心配により過去数年にわたって、基礎となる薬理学に基づいて、一時的且つ可逆的に肛門圧力を低減する裂肛のための医学的治療を開発することが考慮されてきた。
【0005】
最近の研究で、内部肛門括約筋の基礎的薬理学が明らかになった。Cook T. A.,外は非特許文献1で、この観点についての詳細な概説を提供し、該文献は医学的治療のための可能性のある出発点を示す。カルシウム濃度が肛門括約筋の緊張の重要な因子であると考えられる。細胞外カルシウム濃度、及びL−型カルシウムチャンネルを通って細胞膜を横切る流動(flux)、並びに細胞内貯蔵からのカルシウム放出が重要である。収縮は、細胞内カルシウムイオン濃度を約10-7mol/lより大に増加させるメカニズムに関係し、そして弛緩は細胞質カルシウムをこの濃度未満に減少させるメカニズムに関係する。
【0006】
いくつかの化合物類が過去数年にわたって、裂肛の薬理学的治療用の候補として評価された。これらの化合物類はNOドナー、ボツリヌス菌毒素A、ムスカリン剤、β−受容体作動薬、α−拮抗薬及びカルシウム拮抗薬、カルシウム拮抗薬及び最も有望な代替物とみられる特にジヒドロピリジンを包含する。ジヒドロピリジンは血管拡張剤であり、そして比較的平滑筋選択性である。
【0007】
特許文献1は肛門直腸障害の治療用及びそれに伴う痛みの抑制用の方法及び組成物を提供する。該方法は、かかる治療が必要な対象にカルシウムチャンネルブロッカーを単独で又は一酸化窒素ドナーと共に治療有効量投与することを含む。実施例では、ジルチアゼム塩酸塩クリームの局部塗布が開示される。該クリームは50%w/wのジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。
【0008】
毒物学的理由から、DMSOを含む医薬は望ましくない。従って、従来技術は肛門障害の治療又は予防のためにカルシウム拮抗薬を投与するための有用な組成物を提供できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US2004/0028752
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Cook T. A.et.al.,“The Pharmacology of the internal anal sphincter and new treatments of ano-rectal disorders”, Aliment Pharmacol Ther 2001:15:887-898
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、カルシウム拮抗薬又はそのプロドラッグの改良された生物学的利用能を提供することである。従って、本発明の目的は、局部用組成物からカルシウム拮抗薬又はそのプロドラッグの改良された薬物放出を与えることである。本発明の目的はまた、皮膚又は粘膜のような生物的膜にわたってカルシウム拮抗薬又はそのプロドラッグの改良された薬物浸透性を与えることである。
【0012】
本発明の目的はまた、長い塗布間隔にわたってカルシウム拮抗薬又はそのプロドラッグを治療有効な組織濃度で与えることである。
【0013】
本発明の別の目的は、カルシウム拮抗薬又はそのプロドラッグの放出のための従来の局部用組成物の代替物を提供すること、特に毒性成分を含むかかる組成物の代替物を提供することである。
【0014】
本発明の更に別の目的は、肛門障害の有効な治療又は予防を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的、並びに当業者が以下の記載の検討後に集めることができる本発明の他の目的は、有効成分として、実質的部分が未変化形態で存在するジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬又はそのプロドラッグ、並びに硬化剤(stiffening agent)及び放出調節剤を含む薬学的に許容される担体を含む局部用組成物により達成され、ここで、
該硬化剤は、12〜22個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有しそして純粋な状態で約45〜75℃の融点を有する、脂肪族アルコール、脂肪酸ソルビタンエステル、又は脂肪酸グリセロールエステルを含み;
該放出調節剤は12〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有しそして純粋な状態で約−10〜40℃の融点を有する、脂肪族アルコール、脂肪族アルコールグリコールエーテル、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸グリセロールエステル、又は脂肪酸ソルビタンエステルを含み;そして
該硬化剤及び該放出調節剤は、該硬化剤の炭化水素鎖に含まれる炭素原子の数と該放出調節剤の炭化水素鎖に含まれる炭素原子の数が0、1、2、3又は4だけ違うように選ばれる。
【0016】
従って、本発明の組成物では、ジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬又はそのプロドラッグは、有効成分として実質的部分が未変化の形態で存在する。未変化の形態は、皮膚のような生物学的膜を、例えば有効成分の塩形態よりも高度に浸透することが見出された。
【0017】
本発明の組成物は更に、未変化のジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬又はそのプロドラッグの放出用に特に設計された薬学的に許容される担体を含む。従って、前に定義した担体の中で、該硬化剤及び該放出調節剤は有効成分の放出を容易にするように相互作用することが見出された。
【発明の効果】
【0018】
本発明の組成物により、有効成分の改良された生物学的利用能が達成され、そして更に、毒性成分がない組成物において達成される。
【0019】
本願で使用する用語「ジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬」とは、2つの水素原子が1つの二重結合を置き換えた半飽和されたピリジンに基づくカルシウム拮抗薬(カルシウムチャンネル遮断剤)を云う。かかるカルシウム拮抗薬は、骨格筋T結合膜、即ち、興奮−収縮カップリングの主な分子変換器、の電位依存性カルシウムチャンネルに結合しそしてそれを阻害する物質である。薬物の分類に使用され、そして薬物統計的方法論のためのWHO協力センター(WHO Collaborating Centre for Drug Statistics Methodology)が管理する作用部位・薬効・化学構造別分類システム(ATCCS)において、かかる化合物はC08CA類(主に血管作用を有する選択的カルシウムチャンネルブロッカー、ジヒドロピリジン誘導体)に分類される。従って、本発明のジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬の使用を求める当業者に豊富な手引きが存在する。
【0020】
本願で使用される用語「プロドラッグ」とは、薬物の誘導体、この場合はジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬の誘導体、であり、それは活性な薬理学的薬剤になる前に、代謝過程により化学的変換を受けなければならない。本発明において、ジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬、並びにそのプロドラッグは、実質的部分が未変化形態で存在する。
【0021】
本願で使用される用語「実質的部分」とは、問題とする物質の約10質量%又はそれ以上を云う。
【0022】
本願で使用される用語「炭化水素鎖」とは、分子の「脂肪」又は「脂肪酸」部分の炭化水素鎖を云う。炭化水素鎖中の炭素原子数には、もしあるなら分岐鎖中の炭素原子が含まれる。
【0023】
本願で使用する用語「純粋な状態での融点」とは、融点キャピラリー又は示差走査熱量計の使用のような慣用手段により測定した物質の融点を云う。この用語はまた、慣用でもあるが、如何なる実質的量の他の物質と混合してないそのままの物質の融点を云う。しかしながら、これは、用語「純粋な状態」が本願で該物質は100%純粋でなければならないことを示すことを意味しない。用語「純粋な状態」は本願では、薬学的用途に市販され得る物質の純度を云う。従って、「純粋な状態での融点」とは本願で、薬学的用途に市販され得る物質の融点に関する。本願で云われる物質の融点は、ハンドブック及び/又はルーチン測定を参照して当業者に容易に入手可能である。従って、当業者は特許請求の範囲内で適当な担体成分を選ぶことができる。
【0024】
当業者に知られているように、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪酸グリコールエステル及び脂肪酸グリセロールエステルのような脂質の融点はそれらの分子構造に高度に依存性である。これらの物質のサーモトロピック挙動に関する主な研究は遊離脂肪酸に対して行われたが、成された観察は関連するアルコール、エーテル及びエステルについても一般に有効である。かかる依存性に基づいて、熟練者は、特許請求の範囲内での適当な担体成分の選択に関して更に助言される。
【0025】
本願で使用される用語「炭素原子の数が...だけ違う」とは、それぞれの担体成分の炭化水素鎖間の炭素原子の数の相違を云う。従って、本発明では、硬化剤の炭化水素鎖は、放出調節剤の炭化水素鎖よりも0、1、2、3又は4個多い又は少ない炭素原子を有し得る。0、1又は2の相違が好ましく、0の相違がより好ましい。従って、熟練者は、特許請求の範囲内で硬化剤及び放出調節剤を容易に選択できる。
【0026】
本発明で、未変化の形態のジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬又はそのプロドラッグは、遊離塩基の形態で存在し得る。
【0027】
ジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬の血清半減期は、例えば裂肛の治療に関係する。何故なら、亀裂の治癒を促進するために、括約筋の圧力の低減を、更なる投薬量が適用されるまで維持しなければならないからである。約8時間、好ましくは約12時間を越える血清半減期が、望ましい投薬間隔の観点から望ましい。十分長い半減期が、アムロジピン(amlodipine)、フェロジピン(felodipine)、ラシジピン(lacidipine)、ニトレンジピン(nitrendipine)、又はニソルジピン(nisoldipine)により;好ましくはアムロジピン、フェロジピン、又はニソルジピンにより;さらに好ましくはアムロジピンにより達成することができる。
【0028】
本発明において、ジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬又はそのプロドラッグは、組成物の質量を基準として6質量%まで、好ましくは約0.1〜3質量%の量で存在し得る。該量は、治療又は予防されるべき症状への要求に適合させることができる。
【0029】
本発明の態様において、硬化剤は16〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有し、そして純粋な状態で約45〜65℃の融点を有する脂肪族アルコールを含む。
【0030】
本発明の別の態様において、硬化剤はセチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、エイコサノール、ドコサノール、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、グリセリルモノパルミテート、グリセリルモノステアレート、又はグリセリルモノパルミトステアレートである。
【0031】
適した硬化剤はセチルアルコール、ステアリルアルコール、又はセトステアリルアルコール;好ましくはステアリルアルコールであることが見出された。
【0032】
硬化剤はそのまま本発明の組成物に提供し得る。或いは、硬化剤は、更なる構成要素を含む成分の一部として提供し得る。例として、セトマクロゴール乳化ワックス(英国薬局方で規定される)又は乳化ワックス(米国薬局方で規定される)は、硬化剤、セトステアリルアルコール、の適した原料である。
【0033】
本発明の組成物で、硬化剤は該組成物の質量を基準として約10〜30質量%の量で存在し得る。
【0034】
本発明の態様で、放出調節剤は、12〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有し、そして純粋な状態で約−10〜40℃の融点を有する脂肪族アルコール又は脂肪酸グリセロールエステルを含む。
【0035】
本発明の別の態様で、放出調節剤は12〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有し、そして純粋な状態で約−10〜40℃の融点を有する脂肪族アルコールを含む。
【0036】
本発明の別の態様で、放出調節剤はドデカノール、テトラデカノール、パルミトイルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、又はグリセリルモノオレエートである。
【0037】
適した放出調節剤はドデカノール、テトラデカノール、パルミトイルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、又はグリセリルモノオレエートであることが見出された。或いは、適した放出調節剤はドデカノール、テトラデカノール、パルミトイルアルコール、オレイルアルコール、又はリノレイルアルコール;好ましくはオレイルアルコールである。
【0038】
本発明の組成物において、放出調節剤は該組成物の質量を基準として約20質量%までの量、好ましくは約1〜15質量%の量で存在し得る。
【0039】
本発明の組成物からのジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬又はそのプロドラッグの放出は、油及び水の両方に混和性の極性溶媒が該組成物に存在する場合、更に改良され得ることが見出された。従って、本発明の一態様は、前に規定した組成物で更に、オクタノール−水分配係数(P)約−1.5<logP<0.5、好ましくは約−1<logP<0、を有する極性溶媒を含む組成物に関する。オクタノール−水分配係数は一般に、それぞれ油及び水との溶媒の混和性の特徴付けに使用される。従って、熟練者は該係数に関する情報に基づいて、適した極性溶媒を容易に選択することができる。
【0040】
本発明で使用するための適した極性溶媒はジエタノールアミン、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メチルエチルケトン、1−メチル−2−ピロリドン、1−プロパノール、2−プロパノール、プロピレングリコール、又はプロピレンカーボネート、又はそれらの組み合わせ;好ましくはジエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メチル−2−ピロリドン、プロピレングリコール、又はプロピレンカーボネート、又はそれらの組み合わせ;更に好ましくはプロピレングリコールである。
【0041】
本発明の組成物において、極性溶媒は該組成物の質量を基準として約20質量%までの量で存在する。極性溶媒の量は、好ましくは約7〜17質量%、更に好ましくは約10〜14質量%である。
【0042】
本発明の組成物の特性を調節するために、該組成物は更に石油留分、例えばペトロラタム及び/又は鉱物油を、該組成物の質量を基準として好ましくは約15〜75質量%の量で含み得る。
【0043】
石油留分を含む本発明の組成物において、放出調節剤の一部分は該石油留分中に存在してもよいことが理解される。石油留分を含む組成物において、硬化剤及び放出調節剤は質量比約10:1〜1:1、好ましくは約5:1〜1.5:1で存在し得る。
【0044】
本発明の目的はまた、前に規定した組成物を皮膚又は粘膜障害、好ましくは高い肛門圧力又は肛門括約筋けいれんに関連する肛門直腸障害の治療又は予防用の医薬の製造に使用することによって成就される。
【0045】
本発明の目的はまた、皮膚又は粘膜障害、好ましくは高い肛門圧力又は肛門括約筋けいれんに関連する肛門直腸障害の治療又は予防方法であって、かかる治療又は予防が必要な患者に前に規定した組成物を治療有効量投与することを含む方法によって成就される。
【0046】
かかる障害の治療又は予防/阻止は、本発明の組成物を用いて特に十分達成される。何故なら、該組成物は、有効成分としてのジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬又はそのプロドラッグに関して、顕著な放出性及び浸透性を有するからである。
【0047】
高い肛門圧力又は肛門括約筋けいれんに関連する肛門直腸障害は急性裂肛、慢性裂肛、又は痔であってもよい。
【0048】
本発明の組成物は、肛門管内又はその周りのような皮膚又は粘膜に局部塗布するためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
一態様において、本発明の組成物は、時々エマルションと呼ばれるクリームとして存在する。かかるクリームは、有効成分、硬化剤及び放出調節剤に加えて、上記の極性溶媒、水又はその代替物、及び石油留分を含む。
【0050】
かかるクリームにおいて、硬化剤は、16〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有し、そして純粋な状態で約45〜65℃の融点を有する脂肪族アルコールを含み得る。或いは、硬化剤はセチルアルコール、ステアリルアルコール、又はセトステアリルアルコール、好ましくはステアリルアルコールであってもよい。
【0051】
かかるクリームにおいて、放出調節剤は12〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有し、そして純粋な状態で約−10〜40℃の融点を有する脂肪族アルコール、脂肪族アルコールグリコールエーテル、又は脂肪酸ソルビタンエステルを含み得る。或いは、放出調節剤はドデカノール、テトラデカノール、パルミトイルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、又はグリセリルモノオレエート、好ましくはオレイルアルコールであってもよい。
【0052】
好ましいクリームにおいて、放出調節剤は12〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有し、そして純粋な状態で約−10〜40℃の融点を有する脂肪族アルコールを含み得る。或いは、放出調節剤はドデカノール、テトラデカノール、パルミトイルアルコール、オレイルアルコール、又はリノレイルアルコール、好ましくはオレイルアルコールであってもよい。
【0053】
放出調節剤はクリーム中に、組成物の質量を基準として約1〜12質量%、好ましくは約2〜10質量%の量で存在し得る。
【0054】
クリーム中に水又はその代替物が存在する。適した代替物はグリセロール又はエタノールである。
【0055】
クリーム中には、ペトロラタムのような石油留分が組成物の質量を基準として15〜40質量%の量で存在してもよい。
【0056】
別の態様では、本発明の組成物は軟膏として存在する。かかる軟膏は、有効成分、硬化剤及び放出調節剤に加えて、上記の極性溶媒及び石油留分を含む。
【0057】
かかる軟膏において、硬化剤は16〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有し、そして純粋な状態で約45〜65℃の融点を有する脂肪族アルコールを含み得る。或いは、硬化剤はセチルアルコール、ステアリルアルコール又はセトステアリルアルコール、好ましくはステアリルアルコールであり得る。セトマクロゴール乳化ワックスはセトステアリルアルコールの原料であり、従って、軟膏に硬化剤を提供するための便利な方法である。
【0058】
かかる軟膏において、放出調節剤は、12〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有しそして純粋な状態で約−10〜40℃の融点を有する脂肪族アルコール、脂肪族アルコールグリコールエーテル、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸グリセロールエステル、又は脂肪酸ソルビタンエステルを含み得る。或いは、放出調節剤はドデカノール、テトラデカノール、パルミトイルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート又はグリセリルモノオレエート、好ましくはオレイルアルコールであってもよい。
【0059】
かかる軟膏において、放出調節剤は12〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有しそして純粋な状態で約−10〜40℃の融点を有する脂肪族アルコール、脂肪族アルコールグリコールエーテル、又は脂肪酸ソルビタンエステルを含み得る。
【0060】
好ましい軟膏において、放出調節剤はドデカノール、テトラデカノール、パルミトイルアルコール、オレイルアルコール、又はリノレイルアルコール;好ましくはオレイルアルコールであってもよい。
【0061】
放出調節剤は軟膏中に、組成物の質量を基準として約5〜15質量%、好ましくは約8〜12質量%の量で存在し得る。
【0062】
軟膏において、ペトロラタム及び/又は鉱物油のような石油留分が、組成物の質量を基準として50〜75質量%の量で存在し得る。
【実施例】
【0063】
下記の非限定的例は本発明を更に例示するであろう。
【0064】
実施例1(比較例)
ジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬(アムロジピン)を含む、1つの親水性軟膏及び1つの脂肪親和性の軟膏を製造した(組成物1−2,表1a)。
【表1】

【0065】
該組成物を、フランツ(Franz)細胞内の放出速度について試験した。ここで、シリコーン膜上の薬物放出を37℃で測定した(表1b)。
【表2】

【0066】
実施例2
色々な量の生物学的活性薬剤(アムロジピン)、放出調節剤(オレイルアルコール)、硬化剤(セトマクロゴール乳化ワックスとしてセトステアリルアルコール)、極性溶媒(プロピレングリコール)及び特性調節剤として石油留分(ペトロラタム及びパラフィン油)を含む一連の関連軟膏を製造した(組成物3−8、表2a)。
【表3】

【0067】
該組成物を、フランツ(Franz)細胞内の放出速度について試験した。ここで、シリコーン膜上の薬物放出を37℃で測定した(表2b)。
【表4】

【0068】
組成物3−7は、放出調節剤(ここではオレイルアルコール)の効果を例示する。硬化剤の放出調節剤に対するおおよその割合2:1を含む組成物6は、ベヒクルから最適な薬物放出を生じた。薬物放出は放出調節剤の添加により7倍改良された(組成物3参照)。組成物5及び8は薬物含量の効果を例示する。
【0069】
実施例3
生物学的活性薬剤(アムロジピン)、放出調節剤(オレイルアルコール)、硬化剤(ステアリルアルコール)、極性溶媒(プロピレングリコール)、水及び特性調節剤として石油留分(ペトロラタム)を含む一連の関連クリームを製造した。ここで、放出調節剤の量を、硬化剤の量を少なくして増加させた(組成物9−16、表3a)。
【表5】

【0070】
該組成物を、フランツ(Franz)細胞内の放出速度について試験した。ここで、シリコーン膜上の薬物放出を37℃で測定した(表3b)。
【表6】

【0071】
硬化剤を放出調節剤に対しておおよその割合4:1で含む組成物14は、ベヒクルから最適な薬物放出を生じた。薬物放出は放出調節剤の添加により100%改良された(組成物9参照)。
【0072】
実施例4
生物学的活性薬剤(アムロジピン)、放出調節剤(オレイルアルコール)、硬化剤(ステアリルアルコール)、極性溶媒(プロピレングリコール)、水及び特性調節剤として石油留分(ペトロラタム)を含む一連の関連クリームを製造した(組成物13、17及び18、表4a)。
【表7】

【0073】
該組成物を、フランツ(Franz)細胞内の放出速度について試験した。ここで、シリコーン膜上の薬物放出を37℃で測定した(表4b)。
【表8】

組成物13及び18は優れた薬物流動を与えた。
【0074】
実施例5
生物学的活性薬剤(アムロジピン)、放出調節剤(オレイルアルコール)、硬化剤(ステアリルアルコール)、極性溶媒(プロピレングリコール)、水(又はその代替物)及び特性調節剤として石油留分(ペトロラタム)を含む一連の関連クリームを製造して、存在する極性溶媒の量の変化の影響を評価し、そして水をバッファ、グリセロール又はエタノールで置き換える試みをした(組成物13及び19−24、表5a)。
【表9】

【0075】
該組成物を、フランツ(Franz)細胞内の放出速度について試験した。ここで、シリコーン膜上の薬物放出を37℃で測定した(表5b)。
【表10】

【0076】
プロピレングリコール12%を含む組成物13、22及び23は優れた薬物流動を与え、水をグリセロール又はエタノールで置き換えてもよいことが見出された。
【0077】
実施例6
生物学的活性薬剤(アムロジピン)、放出調節剤(オレイルアルコール又はその代替物)、硬化剤(ステアリルアルコール)、極性溶媒(プロピレングリコール)、水及び特性調節剤として石油留分(ペトロラタム)を含む一連の関連クリームを製造して、代替の試験的な放出調節剤の影響を評価した(組成物13及び25−29、表6a)。
【表11】

【0078】
該組成物を、フランツ(Franz)細胞内の放出速度について試験した。ここで、シリコーン膜上の薬物放出を37℃で測定した(表6b)。
【表12】

【0079】
放出調節剤としてオレイルアルコールを含む組成物13は優れた薬物流動を与え、一方脂肪酸(ラウリン酸及びオレイン酸、組成物25及び29)は薬物放出を減少させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、実質的部分が未変化形態で存在するジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬又はそのプロドラッグ、並びに硬化剤及び放出調節剤を含む薬学的に許容される担体を含む局部用組成物であって、ここで、
該硬化剤は、12〜22個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有しそして約45〜75℃の融点を有する、脂肪族アルコール、脂肪酸ソルビタンエステル、又は脂肪酸グリセロールエステルを含み;
該放出調節剤は12〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有しそして約−10〜40℃の融点を有する、脂肪族アルコール、脂肪族アルコールグリコールエーテル、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸グリセロールエステル、又は脂肪酸ソルビタンエステルを含み;そして
該硬化剤及び該放出調節剤は、該硬化剤の炭化水素鎖に含まれる炭素原子の数と該放出調節剤の炭化水素鎖に含まれる炭素原子の数が0、1、2、3又は4だけ違うように選ばれる、上記局部用組成物。
【請求項2】
ジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬又はそのプロドラッグが遊離塩基形態で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ジヒドロピリジンカルシウム拮抗薬がアムロジピン、フェロジピン、ラシジピン、ニトレンジピン、又はニソルジピン;好ましくはアムロジピン、フェロジピン、又はニソルジピン;更に好ましくはアムロジピンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
硬化剤が16〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有しそして約45〜65℃の融点を有する脂肪族アルコールを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
硬化剤がセチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、エイコサノール、ドコサノール、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、グリセリルモノパルミテート、グリセリルモノステアレート、又はグリセリルモノパルミトステアレートである請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
硬化剤がセチルアルコール、ステアリルアルコール、又はセトステアリルアルコール;好ましくはステアリルアルコールである、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
硬化剤が、組成物の質量を基準として約10〜30質量%の量で存在する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
放出調節剤が、12〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有しそして約−10〜40℃の融点を有する脂肪族アルコール又は脂肪酸グリセロールエステルを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
放出調節剤が、12〜18個の炭素原子を含む炭化水素鎖を有しそして約−10〜40℃の融点を有する脂肪族アルコールを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
放出調節剤が、ドデカノール、テトラデカノール、パルミトイルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、又はグリセリルモノオレエートである請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
放出調節剤が、ドデカノール、テトラデカノール、パルミトイルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、又はグリセリルモノオレエートである請求項8又は10に記載の組成物。
【請求項12】
放出調節剤が、ドデカノール、テトラデカノール、パルミトイルアルコール、オレイルアルコール、又はリノレイルアルコール;好ましくはオレイルアルコールである請求項8〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
放出調節剤が、組成物の質量を基準として約20質量%までの量、好ましくは約1〜15質量%の量で存在する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物が更に、オクタノール−水分配係数(P)約−1.5<logP<0.5、好ましくは約−1<logP<0、を有する極性溶媒を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
極性溶媒がジエタノールアミン、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メチルエチルケトン、1−メチル−2−ピロリドン、1−プロパノール、2−プロパノール、プロピレングリコール、又はプロピレンカーボネート、又はそれらの組み合わせ;好ましくはジエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メチル−2−ピロリドン、プロピレングリコール、又はプロピレンカーボネート、又はそれらの組み合わせ;更に好ましくはプロピレングリコールである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
極性溶媒が、組成物の質量を基準として約20質量%までの量で存在する、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
組成物が更に石油留分を含み、好ましくは組成物の質量を基準として約15〜75質量%の量で含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
硬化剤及び放出調節剤が質量比約10:1〜1:1、好ましくは約5:1〜1.5:1で存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物の、皮膚又は粘膜障害、好ましくは高い肛門圧力又は肛門括約筋けいれんに関連する肛門直腸障害の治療又は予防用の医薬の製造のための使用。
【請求項20】
障害が急性裂肛、慢性裂肛、又は痔である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
医薬が、肛門管内又は肛門管の周りの局部塗布用である、請求項19又は20に記載の使用。
【請求項22】
皮膚又は粘膜障害、好ましくは高い肛門圧力又は肛門括約筋けいれんに関連する肛門直腸障害の治療又は予防が必要な患者に、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物の治療有効量を投与することを含む該障害の治療又は予防方法。
【請求項23】
障害が急性裂肛、慢性裂肛、又は痔である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
組成物が肛門管内又は肛門管の周りに局部的に投与される、請求項22又は23に記載の方法。

【公表番号】特表2010−502598(P2010−502598A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526567(P2009−526567)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000758
【国際公開番号】WO2008/026984
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509056559)モーベルイ・デルマ・アーベー (1)
【Fターム(参考)】