説明

ジピロメテン化合物、着色組成物、着色感光性組成物、着色硬化膜、カラーフィルタ、その製造方法及び表示装置

【課題】高い吸光係数を有し、耐熱性、及び、耐光性に優れた新規なジピロメテン化合物及び、該化合物を含有する着色組成物及び薄層化可能な高い吸光係数を有し、耐光性、耐熱性に優れた硬化膜を形成しうる着色感光性組成物、これを用いたカラーフィルタ及び該カラーフィルタを備えた表示装置を提供する
【解決手段】下記一般式(I)で表されるジピロメテン化合物又はその互変異性体である。一般式(I)中、R〜Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等を、X、Xは、NR、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を、Rは水素原子、アルキル基等を表す。Y及びYは、NRc、窒素原子、又は炭素原子を表し、Rcは水素原子、アルキル基等を表す。R及びRは、アルキル基、アルケニル基等を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色感光性組成物に有用な新規なジピロメテン化合物、該化合物を含有する着色組成物、着色感光性組成物、該着色感光性組成物を用いてなる着色硬化膜、該着色硬化膜を備えるカラーフィルタ及びその製造方法、並びに該カラーフィルタを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、特に大画面液晶テレビの発達に伴い、液晶ディスプレイ(LCD)、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。更なる高画質化の要求から有機ELディスプレイの普及も待ち望まれている。
これらのディスプレイのキーデバイスとしてカラーフィルタが使用されており、更なる高画質化の要求とともにコストダウンへの要求が高まっている。このようなカラーフィルタは、通常、赤(R)、緑(G)、及び青(B)の3原色の着色パターンを備えており、表示デバイスにおいて、通過する光を3原色へ分画する役割を果たしている。
従来、カラーフィルタは、有機顔料や無機顔料を分散させた顔料分散組成物と、多官能モノマー、重合開始剤、アルカリ可溶性樹脂及びその他の成分を含有して着色感光性組成物とし、これを用いてフォトリソ法、インクジェット法などにより着色パターンを形成することで製造されている。
【0003】
近年、カラーフィルタは、液晶表示素子(LCD)用途においてモニターのみならずテレビ(TV)へと用途が拡大する傾向にある。この用途拡大の傾向に伴い、カラーフィルタには、色度、コントラストなどにおいて高度の色特性が要求されるに至っている。また、イメージセンサ(固体撮像素子)用途のカラーフィルタにおいても、同様に色むらの低減、色分解能の向上など色特性の高いものが求められるようになっている。
しかしながら、従来の顔料分散系では、顔料の粗大粒子による散乱の発生、分散安定性不良による粘度上昇等の問題が起きやすく、コントラスト、輝度をさらに向上させることは困難であることが多い。
そこで、従来から着色材としては、顔料だけでなく、染料を用いることが検討されている(例えば、特許文献1参照)。着色剤として染料を使用すると、染料自体の色純度やその色相の鮮やかさにより、画像表示させたときの表示画像の色相や輝度を高めることができ、且つ、粗大粒子がなくなるためコントラストを向上させられる点で有用とされている。しかし、染料を使用した場合、従来の顔料を使用した場合と比較して、耐光性、耐熱性の低下が生じやすい。特に耐熱性の低下は,カラーフィルタ製造工程中に色変化が生じてしまうことにつながるため、カラーフィルタ用着色硬化膜に用いる染料は熱的に安定であることが好ましい。
【0004】
着色感光性組成物に用いる染料の例としては、ジピロメテン系染料、ピリミジンアゾ系染料、ピラゾールアゾ系染料、キサンテン系染料など、多種多様な色素母体を持つ化合物が知られている(例えば、特許文献2〜4参照)。また、カラーフィルタに好適な分光特性に着目して、ジピロメテン染料を用いた着色硬化性組成物及び色素化合物が検討されている(例えば、特許文献5参照)。
ジピロメテン染料は鮮やかな色相と安定性で注目されてはいるが、実用に供するためには、さらに高い耐熱性、耐光性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−75375号公報
【特許文献2】特開2008−292970号公報
【特許文献3】特開2007−039478号公報
【特許文献4】特許第3387541号
【特許文献5】特開2008−292970号公報
【特許文献6】特許第3736221号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、染料を含有するカラーフィルタ用着色組成物においては、実用上十分な耐熱性及び耐光性を有する染料が求められているのが現状である。
【0007】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、高い吸光係数を有し、耐熱性、及び、耐光性に優れた新規なジピロメテン化合物及び、該ジピロメテン化合物を含有する着色組成物及び薄層化可能な高い吸光係数を有し、耐光性、耐熱性に優れた硬化膜を形成しうるカラーフィルタ用に有用な着色感光性組成物を提供することを目的とする。
また、本発明のさらなる目的は、前記本発明の着色感光性組成物により得られた、色純度に優れ、薄層でも良好な発色が達成され、耐光性、耐熱性に優れた着色硬化膜及びその着色硬化膜を備えたカラーフィルタ及びその製造方法、並びに、該カラーフィルタを備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、ジピロメテン化合物において、従来の錯体構造に換えて、ジピロメテン骨格内に特定のイオンを導入し、イオン性の結合を形成させることで化合物の安定性向上が達成されることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の構成は以下に示すとおりである。
<1> 下記一般式(I)で表されるジピロメテン化合物又はその互変異性体。
【0009】
【化1】

【0010】
〔一般式(I)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Mは、アルカリ金属カチオン又はアンモニウムカチオンを表す。X及びXは、各々独立に、NR、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。Y及びYは、各々独立に、NRc、窒素原子、又は炭素原子を表し、Rcは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。R及びRは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。RとYとは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、RとYとは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。〕
<2> 下記一般式(II)で表されるジピロメテン化合物又はその互変異性体。
【0011】
【化2】

【0012】
〔一般式(II)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは、アルカリ金属カチオン又はアンモニウムカチオンを表す。R及びRは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。〕
<3> 下記一般式(III)で表されるジピロメテン化合物又はその互変異性体。
【0013】
【化3】

【0014】
〔一般式(III)中、R10、R11、R12、及びR13は、各々独立に1価の置換基を表し、Mは、アルカリ金属カチオン又はアンモニウムカチオンを表す。n1、n2、n3及びn4は、各々独立に0〜5の整数を表す。〕
<4> <1>〜<3>のいずれか1項に記載のジピロメテン化合物を含有する着色組成物。
<5> <1>〜<3>のいずれか1項に記載のジピロメテン化合物、重合性化合物、及び重合開始剤を含有する着色感光性組成物。
<6> <1>〜<3>のいずれか1項に記載のジピロメテン化合物、及び感光性のキノンジアジド化合物を含有するポジ型着色感光性組成物。
<7> さらに、架橋剤を含有する<6>に記載のポジ型着色感光性組成物。
<8> <5>〜<7>に記載の着色感光性組成物により形成された着色硬化膜。
<9> <8>に記載の着色硬化膜を備えたカラーフィルタ。
<10> <5>〜<7>に記載の着色感光性組成物を支持体上に付与して着色感光性組成物層を形成する工程と、形成された着色感光性組成物層を、パターン状に露光する工程と、露光された着色感光性組成物層を現像してパターン状の着色硬化膜を形成する工程と、をこの順で有するカラーフィルタの製造方法。
<11> <9>に記載のカラーフィルタを備えた表示装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い吸光係数を有し、耐熱性、及び、耐光性に優れた新規なジピロメテン化合物、該ジピロメテン化合物を含有する着色組成物及び薄層化可能な高い吸光係数を有し、耐光性、耐熱性に優れた硬化膜を形成しうる、青色、緑色、赤色に配置された原色カラーフィルタ用に有用な着色感光性組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記本発明の着色感光性組成物を用いることで、色純度に優れ、薄層でも高い吸光係数を有し、耐光性、耐熱性に優れた着色硬化膜及びその着色硬化膜を備えたカラーフィルタ及びその製造方法、並びに、該カラーフィルタを備えた表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の着色組成物、着色感光性組成物、これら組成物に用いることができる新規ジピロメテン化合物及びその互変位性体、該着色感光性組成物を用いてなるカラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、及び該カラーフィルタを備えた表示装置について詳述する。
以下に記載する本発明の構成の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、ジピロメテン化合物とは、分子内に「ジピロメテン骨格」を有する化合物を指し、置換基等で修飾されたものを包含してジピロメテン化合物と称する。なお、「ジピロメテン骨格」とは、以下に示す構造式で表される骨格を意味する。本明細書中では、下記構造式に従って、ジピロメテン骨格の置換位置を表記する。
【0017】
【化4】

【0018】
また、本明細書においては各種置換基を示す場合、さらに置換基を有するもの及び無置換のものを含めて表記する。即ち、例えば、本明細書における「アルキル基」とは、無置換のアルキル基とともに置換基を有するアルキル基を包含するものであり、他の置換基についても同様である。
なお、本明細書においてジピロメテン化合物の5−位及び5’−位のアミド基は、前記一般式(II)及び一般式(III)においては、ケト−エノール互変異性平衡におけるケト型で記載しているが、エノール型であってもよい。
【0019】
本発明のジピロメテン化合物又はその互変位性体は、後述する一般式(I)、一般式(II)又は一般式(III)で表される構造を有する。本発明のジピロメテン化合物及びその互変位性体を、以下、「特定ジピロメテン化合物」と称することがある。
アルカリ金属カチオン又はアンモニウムカチオンを有する本発明の特定ジピロメテン化合物を着色剤として使用した着色感光性組成物によれば、耐熱性、耐光性、発色に優れた着色膜を有する、コントラスト及び輝度に優れたカラーフィルタを提供することができる。
従来公知のジピロメテン化合物は、一般的には、中心金属に2価の金属を有しており、電荷を中和するために酢酸を始めとした種々の金属配位子を導入するか、もしくは分子間又は分子内で2座配位させていた。これらの酸配位子を有したジピロメテン化合物は、通常よりも厳しい高温雰囲気下におかれた場合では、配位子が脱離してしまう懸念があり、実用上、より厳しい条件下での耐熱性及び耐光性の向上が望まれているのが現状である。
本発明の特定ジピロメテン化合物は、1価のカチオンを配位させた構造を有することに特徴があり、酸配位子が存在しないため、ピロメテン化合物の高い吸光度と優れた色相を維持しながら、耐熱性及び耐光性に優れたものとなったと考えている。
【0020】
<<着色組成物・着色感光性組成物>>
本発明の着色組成物は、以下に詳述する一般式(I)、一般式(II)又は一般式(III)で表されるジピロメテン化合物及びその互変異性体化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする。
また、該着色組成物に、さらに、感光性の化合物を含有することで、露光によりパターン形成性を有する本発明の着色感光性組成物となる。例えば、感光性の化合物として、重合性化合物、及び重合開始剤を含むことで露光領域が重合硬化する特性を有するネガ型の着色感光性組成物となり、感光性の化合物として感光性のキノンジアジド化合物を含有することで、露光領域が可溶化するポジ型着色感光性組成物となる。
【0021】
本発明の着色組成物及び着色感光性組成物は、前記必須成分に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、更に、アルカリ可溶性樹脂等のバインダー樹脂、有機溶剤、並びに各種添加剤を含んでもよい。
まず、本発明の着色組成物、着色感光性組成物における重要な成分である特定ジピロメテン化合物について説明する。本発明の特定ジピロメテン化合物は、下記一般式(I)で表される化合物及びその互変位性体である。
【0022】
【化5】

【0023】
前記一般式(I)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。
前記一般式(I)における中のR、R、R、及びRが1価の置換基を表す場合の、1価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−ノルボルニル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、シリル基(好ましくは炭素数3〜38、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ヘキシルジメチルシリル)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、1−ブトキシ、2−ブトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、ドデシルオキシ、シクロアルキルオキシ基で、例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、
【0024】
ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ、ジフェニルメチルシリルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ、ピバロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ドデカノイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基で、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜48、よりこの好ましくは炭素数1〜24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N−ブチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ、N−プロピルスルファモイルオキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ、シクロヘキシルスルホニルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ)、アシル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアシル基で、例えば、ホルミル、アセチル、ピバロイル、ベンゾイル、テトラデカノイル、シクロヘキサノイル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル)、
【0025】
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−エチル−N−オクチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−メチル−N−フェニルカルバモイル、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ、メチルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、テトラデシルアミノ、2−エチルへキシルアミノ、シクロヘキシルアミノ)、アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは6〜24のアニリノ基で、例えば、アニリノ、N−メチルアニリノ)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは1〜18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは2〜24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド、ベンズアミド、テトラデカンアミド、ピバロイルアミド、シクロヘキサンアミド)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のウレイド基で、例えば、ウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−フェニルウレイド)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、オクタデシルオキシカルボニルアミノ、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、ヘキサデカンスルホンアミド、シクロヘキサンスルホンアミド)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ、3−ピラゾリルアゾ)、
【0026】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ、シクロヘキシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2−ピリジルチオ、1−フェニルテトラゾリルチオ)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、オクチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N−エチル−N−フェニルスルファモイル、N−シクロヘキシルスルファモイル)、スルホ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ)などが挙げられる。
【0027】
一般式(I)中のR、R、R、及びRで表される1価の置換基が更に置換可能な基である場合には、さらに置換基を有するものであってもよく、導入可能な置換基としては、R、R、R、及びRにおける1価の置換基の例として記載した置換基が挙げられる。なかでも、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、へテロ環基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、及びアルキルチオ基が好ましく挙げられる。
前記R、R、R、及びRが1価の置換基であり、2個以上の置換基さらに有する場合には、複数存在する置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
一般式(I)中のRとRとは、互いに結合して5員、6員、又は7員の飽和環、又は不飽和環を形成していてもよい。また、RとRとは、互いに結合して5員、6員、又は7員の飽和環、又は不飽和環を形成していてもよい。形成される5員、6員、及び7員のなかでも、熱安定性の観点から、5員環又は6員環が好ましい。形成された環は、更に置換基を有していてもよく、該環構造に導入可能な置換基としては、前記R〜Rにおける1価の置換基として記載した置換基が挙げられ、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、へテロ環基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルチオ基が好ましく挙げられる。該環構造が2個以上の置換基を有する場合、複数存在する置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
一般式(I)中のRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、ここで、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、及びヘテロ環基としては、前記R、R、R、及びRで表される1価の置換基の例として記載したハロゲン原子、アルキル基、アリール基、及びヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
で表されるアルキル基、アリール基、及びヘテロ環基はさらに置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、前記R〜Rで表される1価の置換基として記載した置換基が挙げられる。なお、2個以上の置換基を有する場合、複数存在する置換基は同一であっても互いに異なっていてもよい。
としては、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基)、アリール基(例えば、フェニル基)などが好ましい。
【0030】
一般式(I)におけるMは、1価のアルカリ金属カチオン又はアンモニウムカチオンを表す。
1価のアルカリ金属カチオンの例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等のカチオンが挙げられる。なかでも、好ましいのは、リチウム、ナトリウム、及び、カリウムのカチオンであり、より好ましくはナトリウムカチオン又は、カリウムカチオンである。
また、アンモニウムカチオンとしては、下記一般式(IV)で表されるカチオンが挙げられる。
【0031】
【化6】

【0032】
前記一般式(IV)中、R20、R21、R22及びR23は各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、1,1−ジメチルプロピル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは6〜12のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル、トリル)を表す。これらが置換可能な基である場合には、前記R〜Rで説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
一般式(IV)で表される具体的なアンモニウムカチオンとしては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオン、セチルトリメチルアンモニウムカチオン、トリメチルフェニルアンモニウムカチオン、トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムカチオン、などが挙げられ、なかでも、溶解性の観点から、テトラアルキルアンモニウムカチオンであることが好ましい。
【0034】
一般式(I)中、R及びRは、各々独立に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜12の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、1,1−ジメチルプロピル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは6〜18のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル、トリル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜18のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ドデシルオキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは1〜18のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、ナフチルオキシ)、アルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜18のアルキルアミノ基で、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ヘキシルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノ、t−オクチルアミノ、シクロヘキシルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジプロピルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ)、アリールアミノ(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは6〜18のアリールアミノ基で、例えば、フェニルアミノ、ナフチルアミノ、N,N−ジフェニルアミノ、N−エチル−N−フェニルアミノ)、又はヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜12のヘテロ環アミノ基で、例えば、2−アミノピロール、3−アミノピラゾール、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン)を表す。
【0035】
一般式(I)中、R及びRで表されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基は、更に置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、前記R〜Rで説明した1価の置換基の例が挙げられる。2個以上の置換基を有する場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
及びRとしては、無置換のアルキル基、アリール基、へテロ環基、アルコキシ基、及び、アルキルアミノ基、置換基としてアルキル基、ハロゲン原子、アリール基、へテロ環基、アルコキシ基を有するアルキル基、アリール基、へテロ環基、アルコキシ基、アルキルアミノ基などであることが好ましい。R及びRは同じでも異なっていてもよいが、合成適性上は同じであることが好ましい。
【0036】
一般式(I)中、X及びXは、各々独立に、NR、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表し、Rは、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜12の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ドデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは6〜18のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、アシル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは2〜18のアシル基で、例えば、アセチル、ピバロイル、2−エチルヘキシル、ベンゾイル、シクロヘキサノイル)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜18のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜18のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル)を表す。
前記Rで表されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基は、更に、前記R〜Rの置換基で説明した基で置換されていてもよく、複数の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
及びXは、互いに同一であって、酸素原子、窒素原子、硫黄原子であることが、合成適性の観点から好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
【0037】
一般式(I)中、Y及びYは、各々独立に、NRc、窒素原子、又は炭素原子を表し、Rcは、前記X及びXにおけるNRのRと同義である。
一般式(I)中、RとYとは、互いに結合して、R、Y、及び炭素原子と共に5員環(例えば、シクロペンタン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン)、6員環(例えば、シクロヘキサン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ペンタメチレンスルフィド、ジチアン、ベンゼン、ピペリジン、ピペラジン、ピリダジン、キノリン、キナゾリン)、又は7員環(例えば、シクロヘプタン、ヘキサメチレンイミン)を形成してもよい。
一般式(I)中、RとYとは、互いに結合して、R、Y、及び炭素原子と共に5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。形成される5員、6員、及び7員の環は、前記のR、Y及び炭素原子で形成される環と同様のものが挙げられる。
一般式(I)中、RとY、及びRとYが結合して形成される5員、6員、及び7員の環が、更に置換可能な環である場合には、前記R〜Rの置換基で説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
一般式(I)で表される化合物の好ましい態様を以下に示す。
即ち、前記一般式(I)において、R及びRは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表し、R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Mは、チウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンを表す。
【0039】
及びXは、各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、又はヘテロ環基)、窒素原子、又は酸素原子を表し、Y及びYは、各々独立に、NRc(Rcは水素原子又はアルキル基)、窒素原子、又は炭素原子を表し、R、Rは、各々独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基を表し、また、RとYとは互いに結合して5員又は6員環を形成し、あるいはRとYとが互いに結合して5員、6員環を形成する。
【0040】
一般式(I)で表される化合物の更に好ましい態様としては、R及びRは、各々独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表し、R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Mはナトリウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンを表す。X及びXは、酸素原子であり、Y、YはNHであり、R、Rは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基が好ましく、またRとYとが互いに結合して5員又は6員環を形成し、又はRとYとが互いに結合して5員、6員環を形成する。
【0041】
前記一般式(I)で表される化合物の特に好ましい態様としては、R及びRは、各々独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はカルバモイル基を表し、R及びRは、各々独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、Rは水素原子を表し、Mはナトリウムカチオン、カリウムカチオン、又は、テトラアルキルアンモニウムカチオンを表す。X及びXは、酸素原子であり、Y及びYはNHであり、R及びRはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基の組み合わせか、もしくは、下記の一般式(II)で表されるジピロメテン化合物である。
【0042】
[一般式(II)で表されるジピロメテン化合物〕
前記一般式(I)で表されるジピロメテン化合物の中でも、下記一般式(II)で表されるジピロメテン化合物が、合成の容易さ、熱に対する安定性、光に対する安定性の点でより優れている。
【0043】
【化7】

【0044】
前記一般式(II)におけるR、R、R、R、及びMは、それぞれ前記一般式(1)におけるR、R、R、R及びMと同じであり、好ましい例も同じである。
一般式(II)で表される化合物の好ましい態様を以下に示す。
即ち、一般式(II)において、R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基を表し、R、Rは、各々独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基を表し、Mはリチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンである組み合わせである。ここでR及びRは同じ置換基であることが好ましく、R及びRは同じ置換基であることが好ましい。
【0045】
一般式(II)で表される化合物の更に好ましい態様としては、R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R及びRは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基で表され、Mはナトリウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンである組み合わせである。ここでR及びRは同じ置換基であることが好ましく、R及びRは同じ置換基であることが好ましい。
【0046】
前記一般式(II)で表される化合物の特に好ましい態様としては、R及びRは、各々独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基で表され、R及びRはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基で表され、Mはナトリウム、カリウム、又はテトラアルキルアンモニウムカチオンである組み合わせか、もしくは、下記の一般式(III)で表されるジピロメテン化合物である。
【0047】
[一般式(III)で表されるジピロメテン化合物〕
前記一般式(II)で表されるジピロメテン化合物の中でも、下記一般式(III)で表されるジピロメテン化合物が、合成の容易さ、熱に対する安定性、光に対する安定性の点でより優れている。
【0048】
【化8】

【0049】
前記一般式(III)におけるMは、前記一般式(1)におけるMと同じであり、好ましい例も同じである。
前記一般式(III)におけるR10、R11、R12及びR13は、各々独立に1価の置換基を表し、前記R〜Rの置換基で説明した基が当てはまる。
前記一般式(III)中、n1及びn2は、各々独立に、0〜5の整数であり、好ましくは0〜3であり、より好ましくは0〜2であり、特に好ましくは0又は1である。
前記一般式(1)中、n3及びn4は、各々独立に、0〜5の整数であり、好ましくは0〜2であり、特に好ましくは1又は2である。
【0050】
一般式(III)で表される化合物の好ましい態様を以下に示す。
即ち、一般式(III)において、R10、R11、R12及びR13は、各々独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換若しくは無置換の6〜10のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、又はハロゲン原子であり、n1、n2、n3及びn4が、各々独立に0〜3であり、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムカチオン、である組み合わせである。ここでR10及びR11は同じ置換基であることが好ましく、R12及びR13は同じ置換基であることが好ましい。
【0051】
一般式(III)で表される化合物の更に好ましい態様としては、R10、R11、R12及びR13は、各々独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換若しくは無置換のフェノキシ基、塩素原子、又は臭素原子であり、n1及びn2が共に0〜2であり、n3及びn4が共に1又は2であり、Mはナトリウムカチオン、カリウムカチオン、又はアンモニウムカチオンである組み合わせである。ここでR10及びR11は同じ置換基であることが好ましく、R12及びR13は同じ置換基であることが好ましい。
【0052】
前記一般式(III)で表される化合物の特に好ましい態様としては、R10、R11、R12及びR13は、各々独立に、無置換の炭素数1〜12のアルキル基、無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は塩素原子であり、n1及びn2が共に0又は1であり、n3及びn4が共に1又は2であり、Mはナトリウムカチオン、カリウムカチオン、又はテトラアルキルアンモニウムカチオンである組み合わせである。ここでR10及びR11は同じ置換基であることが好ましく、R12及びR13は同じ置換基であることが好ましい。
【0053】
以下に前記一般式(I)で表されるジピロメテン化合物の具体例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表1〜表4に記載の例示化合物1〜例示化合物37は、下記一般式(V)中の置換基R101、R102、R103、及びカチオンMを明示することで表すが、1分子内において同一の符号(例えば、R101)で示される置換基は、同一の置換基を示す。また、例示化合物38〜例示化合物41はその全体的な構造を示す。なお、下記構造中t−Buはt−ブチル基を意味する。
【0054】
【化9】

【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】



【0058】
【表4】

【0059】
【化10】



【0060】
【化11】

【0061】
前記一般式(I)、一般式(II)及び一般式(III)で表される化合物は、米国特許第4,774,339号、同−5,433,896号、特開2001−240761号、同2002−155052号、同2008/0076044A1、特許第3614586号、Aust.J.Chem,1965,11,1835−1845、J.H.Boger et al,Heteroatom Chemistry,Vol.1,No.5,389(1990)、等に記載の方法で合成することができる。
前記一般式(I)、一般式(II)及び一般式(III)で表されるジピロメテン化合物の最大吸収波長λmaxは、好ましくは500〜620nmの範囲であり、より好ましくは520〜600nmの範囲であり、特に好ましくは530〜580nmの範囲である。なお、本明細書における最大吸収波長λmaxは、分光光度計UV−1800PC(島津製作所社製)により測定された値を記載している。
本発明の特定ジピロメテン化合物を含有する着色組成物は、カラー画像形成材料用途では、3原色のうちのマゼンタ色として使用されることが好ましい。
本発明の特定ジピロメテン化合物は、カラーフィルタ材料用途では、例えば輝線カット用途(YAGレーザーの発振波長1064nmの2倍波である532nm光の遮断用途)や、赤色フィルタの長波長端の色補正用途、青色フィルタの短波長端の色補正用途として使用されることが好ましい。
【0062】
本発明の着色組成物では、一般式(I)で表されるジピロメテン化合物又はその互変異性体、その好ましい態様である一般式(II)又は一般式(III)で表されるジピロメテン化合物又はその互変異性体は、1種単独で含有してもよいし、二種以上併用してもよい。
前記特定ジピロメテン化合物の着色組成物中における含有量としては、分子量、及びその吸光係数によって異なるが、着色組成物の全固形分に対して、1〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。特定ジピロメテン化合物の含有量は、1質量%以上であると、良好な色濃度(例えば液晶表示するのに適した色濃度)が得られ、70質量%以下であると、画素のパターニングが良好になる点で有利である。
【0063】
(その他の着色剤)
本発明の着色組成物には、前記特定ジピロメテン化合物に加えて、その他の構造の染料化合物を含んでもよい。
染料化合物としては、着色画像の色相に影響を与えないものであればどのような構造であってもよく、例えば、アントラキノン系(例えば、特開2001−108815記載のアントラキノン化合物)、フタロシアニン系(例えば、米国特許2008/0076044A1記載のフタロシアニン化合物)、キサンテン系(例えば、シー・アイ・アシッド・レッド289(C.I.Acid.Red 289))、トリアリールメタン系(例えば、シー・アイ・アシッドブルー7(C.I.AcidBlue7)、シー・アイ・アシッドブルー83(C.I.Acid Blue83)、シー・アイ・アシッドブルー90(C.I.Acid Blue90)、シー・アイ・ソルベント・ブルー38(C.I.Solvent Blue38)、シー・アイ・アシッド・バイオレット17(C.I.Acid Violet17)、シー・アイ・アシッド・バイオレット49(C.I.Acid Violet49)、シー・アイ・アシッド・グリーン3(C.I.Acid Green3)、スクアリリウム系、ピラゾールアゾ系、メチン系、ピラゾロンアゾ系、バルビツールアゾ系、などが挙げられる。
前記その他の染料の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で使用でき、本発明の着色組成物の全固形分に対して、0.5質量%〜70質量%であることが好ましい。
【0064】
本発明の着色組成物は、着色剤として高い吸光係数を有し、耐熱性、及び、耐光性に優れた本発明の特定ジピロメテン化合物を含有するため、マゼンダ系の色相を有する各種の用途、例えば、後述する着色感光性組成物、塗料、インクジェットインクなどに好適に使用される。
<着色感光性組成物>
以下、本発明の着色組成物の好適な用途である着色感光性組成物について説明する。
本発明の着色組成物に、さらに、感光性の化合物を含有する本発明の着色感光性組成物として用いてもよい。例えば、感光性の化合物としては、重合性化合物、重合開始剤などを添加することで、露光により重合硬化して、着色硬化膜を形成しうるネガ型着色感光性組成物を得る。
また、本発明の着色組成物に、キノンジアジド化合物などの光分解性化合物を添加することで、露光領域が可溶化するポジ型着色感光性組成物を得る。ポジ型の感光性組成物には、光酸発生剤や架橋剤を含んでもよい。
以下、本発明の着色感光性組成物に含まれる前記着色剤以外の成分について説明する。まず、ネガ型の着色感光性組成物について説明する。
【0065】
〔重合性化合物〕
本発明の着色感光性樹脂組成物がネガ型の感光性を示す場合、重合性化合物を含有する。
本発明に用いることができる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。
また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応生成物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応生成物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。)
なお、本明細書ではアクリレート及びメタクリレートの双方あるいはいずれかを表す場合、(メタ)アクリレートと記載することがある。
【0066】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、
【0067】
ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートEO変性体、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートEO変性体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートEO変性体などが好ましいものとして挙げられる。
【0068】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0069】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0070】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報に記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0071】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(VI)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0072】
一般式(VI)
CH=C(R)COOCHCH(R)OH
(一般式(VI)中、R及びRは、各々独立に、H又はCHを示す。)
【0073】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0074】
その他の例としては、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報の各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号公報、特公平1−40337号公報、特公平1−40336号公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。
また、市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、DPHA(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)が好ましい。
更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0075】
本発明のネガ型着色感光性組成物における重合性化合物の好ましい態様は、分子内に重合性基を5以上15以下含む化合物と分子内に重合性基を1以上4以下含む化合物との混合物を用いることである。分子内に重合性基を5以上15以下含む化合物、及び分子内に重合性基を1以上4以下含む化合物としては、好ましくは以下の化合物である。
【0076】
分子内に重合性基を5以上15以下含む化合物の例としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びU−6HA、U−15HA、UA−32P、UA−7200(以上、新中村化学社製)、TO−2248、2349、1382(以上、東亞合成社製)などである。また、ネオペンチルグリコールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、及びエポキシ(メタ)アクリレート等の分子内に(メタ)アクリル基を5以上15以下含む化合物が挙げられるが、このようなオリゴマーの場合には分子量として1000〜5000の範囲であることが好ましい。
【0077】
分子内に重合性基を1以上4以下含む化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO(プロピレンオキサイド)変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO(エチレンオキサイド)変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
【0078】
分子内に重合性基を5以上15以下含む化合物と分子内に重合性基を1以上4以下含む化合物との混合物を用いる場合、分子内に重合性基を5以上15以下含む化合物と分子内に重合性基を1以上4以下含む化合物との比は、分子内に重合性基を5以上15以下含む化合物:分子内に重合性基を1以上4以下含む化合物が質量換算で60:40〜95:5の範囲が好ましく、70:30〜90:10の範囲がより好ましい。
【0079】
重合性化合物の含有量の合計は、本発明の着色感光性組成物層中の全固形分中、10質量%〜50質量%であることが好ましく、15質量%〜40質量%であることがより好ましく、15質量%〜30質量%であることが更に好ましい。
重合性化合物の含有量が上記範囲であると、得られる硬化膜の耐熱性が良好となり、塗膜形成時、或いは、ポストベーク後のシワの発生が抑制され、表面粗さが小さく平滑な硬化膜が形成される。
【0080】
本発明の着色感光性樹脂組成物において、重合性化合物と後述する重合開始剤との質量比「重合開始剤/重合性化合物」は0.1以上2.0以下であり、好ましくは0.1以上1.0以下であり、特に好ましくは0.3以上0.9以下である。上記範囲内とすることで、パターン形成性が良好で、基板との密着性に優れる。また、露光・現像後のマスク太り量が充分であり、パターン剥離が抑制される。
【0081】
〔重合開始剤〕
(光重合開始剤)
本発明の着色感光性組成物は、光重合開始剤を含有してもよい。
光重合開始剤は、上述の重合性化合物を重合させ得るものであれば、特に制限はなく、特性、開始効率、吸収波長、入手性、コスト等の観点で選ばれるのが好ましい。
光重合開始剤は、露光光により感光し、重合性化合物の重合を開始、促進する化合物である。波長300nm以上の活性光線に感応し、重合性化合物の重合を開始、促進する化合物が好ましい。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光重合開始剤についても、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
具体的には例えば、オキシムエステル化合物、有機ハロゲン化化合物、オキシジアゾール化合物、カルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オニウム塩化合物、アシルホスフィン(オキシド)、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物及びその誘導体等が挙げられる。
これらの中でも、感度の点から、オキシムエステル化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物が好ましい。
【0082】
オキシムエステル化合物としては、特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特表2004−534797号公報、国際公開第2005/080337号、国際公開第2006/018973号、特開2007−210991号公報、特開2007−231000号公報、特開2007−269779号公報、特開2009−191061号公報、国際公開第2009/131189号に記載の化合物を使用できる。
【0083】
具体的な例としては、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ペンタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘキサンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘプタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(エチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(o−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(ブチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−メチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−プロピル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(o−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−ブチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノンなどが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
また、本発明においては、感度、径時安定性、後加熱時の着色の観点から、オキシム系化合物として、下記一般式(1)で表される化合物も好適である。
【0084】
【化12】

【0085】
前記一般式(1)中、R及びXは、各々独立に、1価の置換基を表し、Aは、2価の有機基を表し、Arは、アリール基を表す。nは、0〜5の整数である。nが2〜5の場合、複数存在するXは互いに同じであっても、異なっていてもよい。
Rで表される一価の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホスフィノイル基、複素環基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノチオカルボニル基等が挙げられ、高感度化の点から、Rとしてはアシル基がより好ましく、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トルイル基が好ましい。
Aで表される二価の有機基としては、炭素数1〜12のアルキレン、シクロヘキシレン、及びアルキニレンが挙げられる。
Arで表されるアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましい。なかでも、高感度化の観点から置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。
Xで示される1価の置換基としては、溶剤溶解性と長波長領域の吸収効率向上の点から、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオキシ基、アリールチオキシ基、アミノ基などが好ましい。
また、一般式(1)におけるnは0〜5の整数を表すが、0〜2の整数が好ましい。
【0086】
有機ハロゲン化化合物の例としては、具体的には、若林等、「Bull Chem. Soc. Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号公報、特開昭48−36281号公報、特開昭55−32070号公報、特開昭60−239736号公報、特開昭61−169835号公報、特開昭61−169837号公報、特開昭62−58241号公報、特開昭62−212401号公報、特開昭63−70243号公報、特開昭63−298339号公報、M.P.Hutt“Journal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)等に記載の化合物が挙げら
れ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物、s−トリアジン化合物が挙げられる。
【0087】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物の例としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0088】
光重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、露光波長に吸収を持たない開始剤を用いる場合には、増感剤を使用する必要がある。
【0089】
光重合開始剤の総含有量は、着色感光性樹脂組成物中の全固形分に対して、0.5〜30重量%であることが好ましく、2〜20重量%であることがより好ましく、5質量%〜18質量%が最も好ましい。この範囲内であると、露光時の感度が高く、また色特性も良好である。
【0090】
次に、ポジ型の着色感光性組成物に含まれる成分について説明する。
〔感光性のキノンジアジド化合物〕
ポジ型の感光性化合物としては、感光性のキノンジアジド化合物(以下、適宜、キノンジアジド化合物と称する)としての1,2−キノンジアジド感光剤は、例えば、1,2−キノンジアジドスルホニルクロリド類とヒドロキシ化合物、アミノ化合物などとを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。
【0091】
キノンジアジド化合物としては、例えば、以下の構造を有する化合物を挙げることができる。
【0092】
【化13】

【0093】
【化14】

【0094】
【化15】

【0095】
【化16】

【0096】
【化17】

【0097】
式中、Dは、独立して、H又は以下の基のいずれかである。
【0098】
【化18】

【0099】
ただし、各々の化合物において少なくとも1つのDが、上記のキノンジアジド基であればよい。
【0100】
本発明におけるキノンジアジド化合物としては、1,2−ナフトキノンジアジド基を有する化合物が高感度で現像性が良好である点で好ましい。
なかでも、以下に示す化合物であり、Dがそれぞれ独立して水素原子又は1,2−ナフトキノンジアジド基であるものが高感度である観点から特に好ましい。
【0101】
【化19】



【0102】
キノンジアジド化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上併用して用いてもよい。
キノンジアジド化合物の着色感光性組成物への添加量は、固形分換算で、2質量%〜50質量%の範囲が好ましく、2質量%〜30質量%であることがより好ましい。
なお、キノンジアジド化合物が、分子内にアルカリにより分解し酸性基となる部分構造、例えば、スルホン酸エステル構造を有する場合、キノンジアジド化合物自体が後述する光酸発生剤としての機能を兼ね備えることになるため、光酸発生剤の併用は必要ない。
【0103】
〔光酸発生剤〕
ポジ型着色感光性組成物には、感度向上を目的として光酸発生剤を用いてもよい。光酸発生剤は、露光領域で分解して酸を発生し、前記キノンジアジド化合物の可溶化を促進する機能を有するものであり、この機能により、露光領域が効率よく可溶化してパターン状の着色硬化膜が形成される。
光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0104】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。好ましい感光剤としては、スルホン酸を発生する化合物であるイミドスルホネート、オキシムスルホネート、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0105】
また、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物を樹脂の主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号明細書、独国特許第3914407号明細書、及び特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号の各公報等に記載の化合物を用いることができる。
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等の各明細書に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0106】
光酸発生剤は1種のみを用いてもよく、2種以上併用して用いてもよい。
光酸発生剤を着色感光性組成物に添加する場合の添加量は、固形分換算で、1質量%〜20質量%の範囲が好ましく、2質量%〜18質量%であることがより好ましい。
【0107】
〔架橋剤〕
ポジ型の着色感光性組成物においては、形成されたパターン状の着色硬化膜を改質する目的で、架橋剤を併用することが好ましい。即ち、着色パターンを形成した後、後加熱或いは後露光を行って架橋構造を形成することで、得られた着色硬化膜の強度が向上する。
ここで、架橋剤とは、酸又は熱により特定共重合体と架橋する化合物であり、例えばメチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの基で置換されたメラミン系化合物、グアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物、ウレア系化合物、フェノール系化合物もしくはフェノールのエーテル化合物や、エポキシ系化合物、オキセタン系化合物、チオエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、アジド系化合物、又はメタクリロイル基又はアクリロイル基を含む化合物、などを挙げることができるが、膜物性、耐熱性、及び溶剤耐性の点でエポキシ系化合物、オキセタン系化合物、メタクリロイル基又はアクリロイル基を含む化合物、メラミン系化合物、グリコールウリル系化合物、及びフェノール系化合物が好ましく使用される。
【0108】
これらの架橋剤は1種のみを用いてもよく、2種以上併用して用いてもよい。
架橋剤の着色感光性組成物への添加量は、固形分換算で、0.5質量%〜40質量%の範囲が好ましく、3質量%〜30質量%であることがより好ましい。
【0109】
〔その他の添加剤〕
着色感光性組成物には、目的に応じてさらに公知の添加剤を含有してもよい。
例えば、アルカリ可溶性のバインダー樹脂、界面活性剤などが挙げられる。ネガ型の組成物には、重合禁止剤、ポジ型の組成物には、熱ラジカル発生剤、密着促進剤などをさらに含んでもよい。
【0110】
<<カラーフィルタ>>
本発明のカラーフィルタは、前記一般式(I)で表されるジピロメテン化合物を含有する。前記カラーフィルタは、前記ジピロメテン化合物を含有することにより、透過率が高く、耐熱性に優れる。
前記カラーフィルタの形成方法としては、初めにフォトレジストによりパターンを形成し、次いで染色する方法、あるいは特開平4−163552号、特開平4−128703号、特開平4−175753号、特開2008−292970号などの各公報で開示されているように、着色剤を添加したフォトレジストによりパターンを形成する方法がある。
【0111】
代表的なカラーフィルターの製造方法としては、前記本発明の着色感光性組成物を支持体上に付与して着色感光性組成物層を形成する工程と、形成された着色感光性組成物層を、パターン状に露光する工程と、露光された着色感光性組成物層を現像してパターン状の着色硬化膜を形成する工程と、をこの順で有するカラーフィルタの製造方法が挙げられる。
前記特定ジピロメテン化合物を含む着色感光性組成物を用いて、カラーフィルタを製造する場合に用いられる方法としては、前記いずれの方法を用いてもよいが、特開平4−175753号公報や特開平6−35182号公報に記載されている方法、即ち、熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、着色剤及び溶剤を含有してなるポジ型レジスト組成物を基体上に塗布後、マスクを通して露光し、該露光部を現像してポジ型レジストパターンを形成させ、上記ポジ型レジストパターンを全面露光し、次いで露光後のポジ型レジストパターンを硬化させることからなるカラーフィルタの形成方法が好ましい。
【0112】
また、特開2008−292970号公報に記載されている方法、即ち、重合性化合物、重合開始剤、現像樹脂、着色剤及び溶剤を含有してなるネガ型レジスト組成物を基体上に塗布後、マスクを通して露光し、該露光部を現像してネガ型レジストパターンを形成させ、上記ポジ型レジストパターンを全面露光し、次いで露光後のネガ型レジストパターンを硬化させることからなるカラーフィルタの形成方法も好ましい。また、常法に従いブラックマトリックスを形成させ、RGB原色系あるいはYMC補色系カラーフィルタを得ることができる。
この際使用する熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、重合性化合物、重合開始剤、現像樹脂、及び溶剤とそれらの使用量については、既述の通りであり、また、前記各公報に記載されている技術は本明細書にも適用しうる。
【0113】
<<表示装置>>
発明の液晶表示装置は、既述の本発明のカラーフィルタを備えたものである。 液晶表示装置の定義や各表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0114】
本発明のカラーフィルタは、中でも特に、カラーTFT方式の液晶表示装置に対して有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。更に、本発明はIPSなどの横電界駆動方式、MVAなどの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置や、STN、TN、VA、OCS、FFS、及びR−OCB等にも適用できる。また、本発明のカラーフィルタは、COA(Color-filter On Array)方式にも供することが可能である。
【0115】
本発明のカラーフィルタを液晶表示素子に用いると、従来公知の冷陰極管の三波長管と組み合わせたときに高いコントラストを実現できるが、更に、赤、緑、青のLED光源(RGB−LED)をバックライトとすることによって輝度が高く、また、色純度の高い色再現性の良好な液晶表示装置を提供することができる
【実施例】
【0116】
以下に合成例と実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
〔実施例1〕
[例示化合物(1)の合成]
前記一般式(1)で表されるジピロメテン化合物である、既述の例示化合物(1)を、以下に記載の方法で合成した。
−中間体Aの合成−
下記構造式の中間体Aを、米国特許出願公開2008/0076044号明細書に記載の方法により合成した。
【0117】
【化20】

【0118】
−中間体Bの合成−
中間体A 225.8g(0.55mol)にアセトニトリル690mlを加え、氷冷下で攪拌した。この溶液に、o−トルオイルクロリド93.5g(0.61mol)を滴下して加えた。その後、ピリジン52.2g(0.66mol)を滴下して加え、氷冷下で1時間、室温で2時間攪拌した。反応終了後、析出した固体をろ過し、ろ物をアセトニトリルで洗浄し、乾燥した。このようにして、下記構造式の中間体Bを229g(収率79%)得た。
なお、H−NMR(CDCl)の詳細は、δ:11.04(d、2H)、7.64(d、1H)、7.45〜7.23(m、8H)、6.37(d、1H)、5.86(s、1H)、2.60(s、3H)、1.27〜1.12(m、3H)、1.06〜0.92(m、2H)0.84(s、18H)、0.70(d、3H)、0.63〜0.47(m、2H)であった。
【0119】
【化21】

【0120】
−例示化合物(1)の合成−
アセトニトリル50ml中に、中間体Bを22.2g、オルトギ酸トリエチルを3.1g加え、室温で攪拌した。この溶液に、トリフルオロ酢酸63mlを滴下して加え、室温で3時間攪拌した。反応終了後、反応液を、水700mlに水酸化ナトリウム40gを加えた水溶液中に注いだ後、酢酸エチル200mlを加えた。得られた固体をろ過し、水、酢酸エチル、メタノールで洗浄した後、乾燥した。このようにして、例示化合物(1)を10.3g(収率45%)得た。
尚、H−NMR(CDCl)の詳細は、δ: 11.41(s、2H)、7.65(d、2H)、7.39〜7.03(m、16H)、6.24(s、1H)、5.81(s、2H)、2.59(s、6H)、1.26〜1.15(m、6H)、1.02〜0.92(m、4H)0.79(s、36H)、0.64(d、6H)、0.44〜0.31(m、4H)であった。
なお、この化合物の融点は、365℃であった。
【0121】
−極大吸収波長の評価−
例示化合物(1)を下記表5に記載の測定溶媒に溶かし(濃度1×10−6mol/L)、吸収スペクトルを測定した(光路長10mm)。例示化合物(1)の吸収スペクトルの極大吸収波長λmax及びモル吸光係数(ε)を下記表5に示す。
【0122】
<実施例2〜8>
表5に記載の例示化合物を、実施例1に準じた方法で合成した。なお、表5に記載以外の前記一般式(I)で表されるジピロメテン化合物も、化学的な見地から、実施例1に準じた方法で合成することができる。
【0123】
−極大吸収波長の評価−
表5に記載の化合物を、表5に記載の測定溶媒にそれぞれ溶かし(濃度1×10−6mol/L)、吸収スペクトルを測定した(光路長10mm)。それぞれの吸収スペクトルの極大吸収波長λmax及びモル吸光係数(ε)を下記表5に示す。
【0124】
【表5】

【0125】
表5に明らかなように、本発明の特定ジピロメテン化合物は、高いモル吸光係数を達成しており、鮮やかな色相を有することがわかる。
〔実施例101〕
[カラーフィルタの作製]
−ポジ型レジスト組成物の調製−
m−クレゾール/p−クレゾール/ホルムアルデヒド混合物から得たクレゾールノボラック樹脂(反応モル比=5/5/7.5、ポリスチレン換算質量平均分子量4300:アルカリ可溶性樹脂)3.4質量部、下記構造式のフェノール化合物を用いて製造したo−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル(平均2個の水酸基がエステル化されている:酸エステル構造を有するキノンジアジド化合物)1.8質量部、ヘキサメトキシメチロール化メラミン(架橋剤)0.8質量部、乳酸エチル(溶剤)20質量部、及び実施例101で得られた例示化合物(1)(特定ジピロメテン化合物)を1質量部混合して、ポジ型レジスト組成物を得た。
【0126】
【化22】



【0127】
−カラーフィルタの作製−
得られたポジ型レジスト組成物をガラス基板にスピンコートした後、溶剤を蒸発させた。次いで、マスクを通してシリコンウエハを露光し、キノンジアジド化合物を分解させた。その後100℃で加熱し、次いでアルカリ現像により露光部を除去して0.8μmの解像度を有するポジ型着色パターンを得た。これを全面露光後、220℃、30分加熱して実施例501のマゼンタ単色のカラーフィルタを得た。露光は、i線露光ステッパーHITACHI LD−5010−i(商品名、日立製作所(株)製、NA=0.40)により行った。また、現像液は、SOPD又はSOPD−B(いずれも商品名、住友化学工業(株)製)を用いた。
【0128】
−評価−
色素化合物の耐熱性、耐光性、及び、カラーフィルタの面状を以下の方法で評価した。評価結果を下記表2に示す。
<1.耐熱性>
前記カラーフィルタを、ホットプレートにより250℃で10分加熱した後、色度計MCPD−1000(大塚電子製)にて、耐熱テスト前後の色差のΔEab値を測定して、下記基準に従って評価した。ΔEab値の小さい方が、耐熱性が良好であることを示す。
<判定基準>
5:ΔEab値<3
4:3≦ΔEab値<5
3:5≦ΔEab値<10
2:10≦ΔEab値<20
1:20≦ΔEab値
【0129】
<2.耐光性>
前記カラーフィルタに対し、キセノンランプを5万luxで100時間照射(500万lux・h相当)した後、耐光テスト前後の色差のΔEab値を測定した。ΔEab値の小さい方が、耐光性が良好であることを示す。
<判定基準>
5:ΔEab値<3
4:3≦ΔEab値<5
3:5≦ΔEab値<10
2:10≦ΔEab値<20
1:20≦ΔEab値
【0130】
<3.カラーフィルタの面状>
作製したカラーフィルタの面状を目視で観察し、以下に示す基準で均一性を評価した。下記評価による面状が均一であることで、均一で透明性に優れた着色硬化膜(着色画素)を有するカラーフィルタが得られる。
○:面状が均一であるもの
△:一部ヘイズがあるもの
×:明らかなヘイズもしくは析出があるもの
【0131】
〔実施例102〜108、比較例101〜103〕
実施例101で用いた特定ジピロメテン化合物である例示化合物(1)を、表6に記載の例示化合物、下記の比較用色素(1)及び(2)に替えた以外は実施例101と同様にして、ポジ型レジスト組成物を作製し、カラーフィルタを作製した。更に実施例101と同様の評価を行った。評価結果を下記表6に示す。
【0132】
【化23】

【0133】
【表6】

【0134】
表6から明らかなように、本発明の特定ジピロメテン化合物を含む着色感光性組成物により得られた着色硬化膜は、従来報告されていたジピロメテン化合物及び公知の染料を含む組成物と比較して、耐熱性、耐光性に優れており、さらに、形成された着色硬化膜の面状も優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるジピロメテン化合物又はその互変異性体。
【化1】


〔一般式(I)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Mは、アルカリ金属カチオン又はアンモニウムカチオンを表す。X及びXは、各々独立に、NR、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。Y及びYは、各々独立に、NRc、窒素原子、又は炭素原子を表し、Rcは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。R及びRは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。RとYとは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、RとYとは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。〕
【請求項2】
下記一般式(II)で表されるジピロメテン化合物又はその互変異性体。
【化2】


〔一般式(II)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは、アルカリ金属カチオン又はアンモニウムカチオンを表す。R及びRは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。〕
【請求項3】
下記一般式(III)で表されるジピロメテン化合物又はその互変異性体。
【化3】


〔一般式(III)中、R10、R11、R12、及びR13は、各々独立に1価の置換基を表し、Mは、アルカリ金属カチオン又はアンモニウムカチオンを表す。n1、n2、n3及びn4は、各々独立に0〜5の整数を表す。〕
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のジピロメテン化合物を含有する着色組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のジピロメテン化合物、重合性化合物、及び重合開始剤を含有するネガ型着色感光性組成物。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のジピロメテン化合物、及び感光性のキノンジアジド化合物を含有するポジ型着色感光性組成物。
【請求項7】
さらに、架橋剤を含有する請求項6に記載のポジ型着色感光性組成物。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の着色感光性組成物により形成された着色硬化膜。
【請求項9】
請求項8に記載の着色硬化膜を備えたカラーフィルタ。
【請求項10】
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の着色感光性組成物を支持体上に付与して着色感光性組成物層を形成する工程と、
形成された着色感光性組成物層を、パターン状に露光する工程と、
露光された着色感光性組成物層を現像してパターン状の着色硬化膜を形成する工程と、
をこの順で有するカラーフィルタの製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載のカラーフィルタを備えた表示装置。

【公開番号】特開2012−177037(P2012−177037A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40701(P2011−40701)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】