説明

ジフェニルスルフィド誘導体及びそれらを有効成分とする医薬

【課題】 優れたS1P3アンタゴニスト活性を有する医薬として有用なジフェニルスルフィド誘導体を提供する。
【解決手段】 S1P3アンタゴニスト活性を有する化合物を創製すべく鋭意研究を重ねた結果、一般式(1)
【化1】


[式(1)中、Rは1〜3個のハロゲン原子で置換していてもよい炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6の低級アルコキシ基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜6のアルケニル基を示し、R10は炭素数1〜6のアシル基又はカルボキシル基を示し、Xはメチレン又は酸素原子を示し、Zはハロゲン原子を示す]
で表されるジフェニルスルフィド誘導体が優れたS1P3アンタゴニスト活性を有することを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として有用な新規ジフェニルスルフィド誘導体若しくはその塩又はそれらの水和物、並びにそれらを有効成分とするスフィンゴシン−1−リン酸3(S1P3)レセプターアンタゴニスト及び医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)は、スフィンゴシン代謝における中間代謝物にすぎないとみなされていた。しかし、細胞増殖促進作用や細胞運動機能の制御作用を有することが報告されるに至り、アポトーシス作用、細胞形態調節作用、血管収縮などの多彩な生理作用を発揮する新しい脂質メディエーターであることが明らかとなってきている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0003】
このS1Pは細胞内セカンドメッセンジャーとしての作用と、細胞間メディエーターとしての二つの作用を併せ持つ。特に細胞間メディエーターとしてのS1Pの作用に関する研究が活発に行なわれており、細胞膜表面上に存在する複数のG蛋白質共役型受容体(Endothelial Differentiation Gene, EDG)を介して情報伝達がなされていることが報告されている(非特許文献1、非特許文献3)。現在S1P受容体にはEdg-1、Edg-3、Edg-5、Edg-6及びEdg-8の5つのサブタイプが知られており、各々S1P1、S1P3、S1P2、S1P4、S1P5とも呼ばれている。
【0004】
これらS1P受容体に対する様々な研究から、この受容体へのアゴニスト活性あるいはアンタゴニスト活性を示す、いわゆるS1P受容体調節剤が多岐にわたる疾患に対し有効性を発揮するとの報告がなされるようになった。特許文献2及び非特許文献4〜7には、S1P3アンタゴニストが気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症、敗血症またはインフルエンザウイルスもしくはRSウイルス感染に基づくサイトカインストームの治療または予防薬として有効であることが報告されている。
【0005】
また、特許文献3〜6は、S1P3アンタゴニストが動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症もしくは心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、ARDSなどの肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症または黄班変性症などにも有効であることを示している。
【0006】
また、現在敗血症治療薬として有効性が示されている医薬に活性化プロテインC製剤(rhAPC)があるが、rhAPCは副作用として出血リスクを伴うことから、これら副作用を示さない新規敗血症治療又は予防薬の開発が望まれている。非特許文献5、7は、S1P3ノックアウトマウスを用いた解析から、敗血症による多臓器不全にS1P3受容体が関与していることが報告されており、S1P3アンタゴニストが敗血症の治療又は予防薬として有効であることが示唆されている。また、S1P1アンタゴニストは血管壁透過性を亢進させ、肺水腫を起こすことが報告されている(非特許文献8)。よって、新規敗血症治療又は予防薬が高い安全性を得るには、当該治療または予防薬がS1P1アンタゴニスト作用の弱い、好ましくはS1P1アゴニスト作用を示す、更に好ましくはS1P1受容体に作用を示さないことが望まれている。
【0007】
S1P受容体調節剤として、例えば特許文献1記載の一般式(A)
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン置換しても良い炭素数1〜4の低級アルキル基、ヒドロキシ基、フェニル基、アラルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、トリフルオロメチルオキシ基、置換基を有しても良いアラルキルオキシ基、置換基を有しても良いフェノキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基、置換基を有しても良いアラルキルオキシ基、ピリジルメチルオキシ基、シンナミルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基、フェノキシメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、炭素数1〜4の低級アルキルチオ基、炭素数1〜4の低級アルキルスルフィニル基、炭素数1〜4の低級アルキルスルホニル基、ベンジルチオ基、アセチル基、ニトロ基、シアノ基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン置換しても良い炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、ヒドロキシ基、ベンジルオキシ基、フェニル基、炭素数1〜4の低級アルコキシメチル基、炭素数1〜4の低級アルキルチオ基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシメチル基、炭素数1〜4の低級アルキルチオメチル基、ヒドロキシメチル基、フェニル基、アラルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、XはO、S、SO、SOを示し、Yは-CH2O-、-CH2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH2CH2-、-CH2CFH-、-CH2CF2-、-CH(OH)CF2-を示す]
【0010】
で表される化合物が知られている。しかしながら、フェニル基にアシル基又はカルボキシル基が置換したジフェニルスルフィド骨格を有する2−アミノリン酸モノエステル誘導体及び3−アミノホスホン酸誘導体は特許文献1に含まれていない。また、このような構造を有する2−アミノリン酸モノエステル誘導体及び3−アミノホスホン酸誘導体が優れたS1P3レセプターアンタゴニスト作用を示すことも知られていない。
【0011】
また、S1P受容体調節剤として特許文献6には一般式(B)
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、Rは塩素原子、炭素数1〜3の直鎖状アルキル基又はトリフルオロメチル基を、Rはフッ素原子又は塩素原子を、Rは炭素数1〜3の直鎖状アルキル基を、Xは酸素原子又は硫黄原子を、nは2又は3の整数を示す]
【0014】
で表される化合物が知られている。また、前記一般式(B)で表される化合物のうち、一般式(Ba)
【0015】
【化3】

【0016】
[式中、R、R、X及びnは前記定義に同じ]
【0017】
で表される光学活性な化合物が、S1P3アゴニスト作用が弱く、S1P1及び/又はS1P4に対して優れたアゴニスト作用を有することが報告されている。しかしながら、一般式(Ba)で表される光学活性な化合物とは逆の不斉中心を有している化合物は知られていない。また、このような光学活性な化合物が優れたS1P3レセプターアンタゴニスト作用を示すことも知られていない。
【0018】
【特許文献1】WO04074297号パンフレット
【特許文献2】WO03020313号パンフレット
【特許文献3】特開2005−247691号公報
【特許文献4】WO07043568号パンフレット
【特許文献5】WO06063033号パンフレット
【特許文献6】WO08018427号パンフレット
【非特許文献1】Y.Takuma et al., Mol. Cell. Endocrinol., 177, 3(2001).
【非特許文献2】Y. Igarashi, Ann, N.Y. Acad. Sci., 845, 19(1998).
【非特許文献3】H. Okazaki et al., Biochem. Biophs. Res. Commun., 190, 1104(1993).
【非特許文献4】Y.Gon et.al., Proc Natl Acad Sci U S A. 102(26),9270(2005).
【非特許文献5】F.Nissen et al.,Nature,452,654(2008)
【非特許文献6】D.Christina et al.,Am.J.Pathol.,170(1),281(2007)
【非特許文献7】F.Nissen et al.,Blood,113(12),2859(2009)
【非特許文献8】M.G.Sanna et al.,Nature Chemical biology,2,434(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明が解決しようとする課題は、優れたS1P3アンタゴニスト活性を有するジフェニルスルフィド誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、S1P3アンタゴニストについて鋭意研究を重ねた結果、新規なジフェニルスルフィド誘導体が優れたS1P3アンタゴニスト作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0021】
即ち、第1発明は、一般式(1)
【0022】
【化4】

【0023】
[式(1)中、Rは1〜3個のハロゲン原子で置換していてもよい炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6の低級アルコキシ基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜6のアルケニル基を示し、R10は炭素数1〜6のアシル基又はカルボキシル基を示し、Xはメチレン又は酸素原子を示し、Zはハロゲン原子を示す]
【0024】
で表されるジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物に関する。
【0025】
また、第2発明は、前記一般式(1)で表される化合物が、一般式(1a)
【0026】
【化5】

【0027】
[式(1a)中、R、R10は前述の通り]
【0028】
で表される第1発明記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物に関する。
【0029】
また、第3発明は、前記一般式(1)で示される化合物が、
(S)−2−アミノ−4−{4−(2−カルボキシ−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)−2−クロロフェニル}−2−プロピルブチルリン酸モノエステル、
(S)−4−[4−(2−アセチル−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)− 2−クロロフェニル]−2−アミノ−2−プロピルブチルリン酸モノエステル、又は
(S)−3−アミノ−5−{4−(2−カルボキシ−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)−2−クロロフェニル}−3−プロピルペンチルホスホン酸である第1発明記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物に関する。
【0030】
また、第4発明は、第1〜第3発明のうち何れか1つに記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物を有効成分とするスフィンゴシン−1−リン酸3(S1P3)レセプターアンタゴニスト作用に基づく医薬に関する。
【0031】
また、第5発明は、気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症、敗血症またはインフルエンザウイルスもしくはRSウイルス感染に基づくサイトカインストームの治療又は予防薬である第4発明記載の医薬に関する。
【0032】
また、第6発明は、動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症または心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症または黄班変性症の治療又は予防薬である第4発明記載の医薬に関する。
【0033】
また、第7発明は、敗血症の治療又は予防薬である第4発明記載の医薬に関する。
【0034】
また、第8発明は、第1〜第3発明のうち何れか1つに記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物及び薬理学的に許容されうる担体を含有する医薬組成物に関する。
【発明の効果】
【0035】
本発明により優れたS1P3アンタゴニスト作用およびS1P3選択性を有するジフェニルスルフィド誘導体の提供が可能となった。また、本発明のジフェニルスルフィド誘導体は、溶血性、組織障害性、中枢抑制作用が弱いかあるいは全く無いことから、医薬として安全に用いることができる。さらに、本発明のジフェニルスルフィド誘導体は、水溶液中で安定である。これらの優れた特性を有する本発明化合物は、敗血症、気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植を原因とする気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症、インフルエンザウイルス・もしくはRSウイルス感染を原因とするサイトカインストーム(過剰産生)、動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症または心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、ARDSなどの肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症または黄班変性症の予防または治療に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明における「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。また、「炭素数1〜6のアルキル基」としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基若しくはn−ヘキシル基などの直鎖又はi−プロピル基若しくはt−ブチル基などの分岐した炭素数1〜6の炭化水素基が挙げられる。また、「炭素数3〜6のシクロアルキル基」としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基が挙げられる。また、「炭素数6〜10のアリール基」としては、例えばフェニル基やナフチル基が挙げられる。また、「炭素数1〜6のアルコキシ基」としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−プロポキシ基又はt−ブトキシ基などが挙げられる。また、「炭素数2〜6のアルケニル基」としては、例えばアリル基が挙げられる。また、「炭素数1〜6のアシル基」としては、例えばアセチル基が挙げられる。
【0037】
また、「炭素数1〜6のアルキル基」、「炭素数1〜6のアルコキシ基」、「炭素数1〜6のアシル基」及び「炭素数2〜6のアルケニル基」は、置換基を有していてもよい。当該「置換基」としては、例えばハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ベンジルオキシ基、炭素数1〜6のアシル基、シアノ基、炭素数2〜6のアルケニル基、水酸基、ニトロ基又はアミノ基などが挙げられる。例えば、「1〜3個のハロゲン原子で置換していてもよい炭素数1〜6のアルキル基」としては、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
【0038】
また、本発明において優れたS1P3アンタゴニスト作用を得る目的から、Rは1〜3個のハロゲン原子で置換していてもよい炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、更に好ましくはトリフルオロメチル基である。また、Rは炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜6のアルケニル基が好ましく、更に好ましくはn−プロピル基又はアリル基であり、特に好ましくはn−プロピル基である。また、R10は炭素数1〜6のアシル基又はカルボキシル基が好ましく、更に好ましくはアセチル基又はカルボキシル基であり、生体に対する安全性の面から、特に好ましくはカルボキシル基である。また、Xはメチレン又は酸素原子が好ましく、更に好ましくは酸素原子である。また、Zは塩素原子が好ましい。
【0039】
また、本発明における薬理学的に許容される塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、クエン酸塩若しくは酒石酸塩のような酸付加塩又はナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩若しくはアルミニウム塩などのアルカリ付加塩が挙げられる。
【0040】
本発明によれば、一般式(1)で表せる化合物のうち、Xが酸素原子である化合物、即ち一般式(1d)
【0041】
【化6】

【0042】
[式(1d)中、R、R、R10及びZは前述の通り]
【0043】
で表される化合物は、例えば以下に示すような合成経路Aにより製造することができる。

<合成経路A>
【0044】
【化7】

【0045】
合成経路Aで一般式(4)
【0046】
【化8】

【0047】
[式(4)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは前述の通り]
【0048】
で表される光学活性な化合物は、一般式(2)
【0049】
【化9】

【0050】
[式(2)中、Rは前述の通り]
【0051】
で表される光学活性な化合物と一般式(3)
【0052】
【化10】

【0053】
[式(3)中、Aはハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、パラトルエンスルホニルオキシ基又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基などの一般的な脱離基を示し、Rは前述の通り]
【0054】
で表される化合物とを塩基の存在下に作用させることによって製造することができる(工程A−1)。
【0055】
具体的には、まず、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテルなどの反応溶媒中で、−78℃で、一般式(2)で表される化合物を塩基を用いて処理する。その後、生じた一般式(2)で表される化合物のアニオンに一般式(3)で表される化合物を−78℃で作用させ、続いて徐々に常温まで昇温させて一般式(4)で表される化合物を得る。当該反応における塩基は、n−ブチルリチウム又はリチウムジイソプロピルアミドなど、好ましくはn−ブチルリチウムを用いることができる。
【0056】
なお、本明細書において、常温とは、日本薬局方にて定義されている15〜25℃を意味する。
【0057】
合成経路Aで一般式(6)
【0058】
【化11】

【0059】
[式(6)中、Aはハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、パラトルエンスルホニルオキシ基又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基などの一般的な脱離基を示し、R、R及びZは前述の通り]
【0060】
で表される光学活性な化合物は、一般式(4)で表される光学活性な化合物と一般式(5)
【0061】
【化12】

【0062】
[式(5)中、Aはハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、パラトルエンスルホニルオキシ基又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基などの一般的な脱離基を示し、A及びZは前述の通り]
【0063】
で表される化合物とを塩基の存在下で作用させることによって製造することができる(工程A−2)。
【0064】
具体的には、まず、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテルなどの反応溶媒中で、−78℃で、一般式(4)で表される化合物を塩基を用いて処理する。その後、生じた一般式(4)で表される化合物のアニオンに一般式(5)で表される化合物を−78℃で作用させ、続いて徐々に常温まで昇温させて一般式(6)で表される化合物を得る。当該反応における塩基は、n−ブチルリチウム又はリチウムジイソプロピルアミドなど、好ましくはn−ブチルリチウムを用いることができる。
【0065】
合成経路Aで一般式(7)
【0066】
【化13】

【0067】
[式(7)中、Rは一般的なアミノ基の保護基を示し、A、R、R及びZは前述の通り]
【0068】
で表される化合物は、一般式(6)で表される化合物を酸加水分解した後に、一般的な保護試薬によってアミノ基を保護することによって製造することができる。式中のRはアミノ基を保護するものであれば特に限定されないが、例えばアセチル基などのアシル基又はt−ブトキシカルボニル若しくはベンジルオキシカルボニルなどのカルバメートを用いることが出来る(工程A−3)。
【0069】
具体的には、まず、無機酸又は有機酸中、あるいは無機酸又は有機酸と有機溶媒との混合溶液中、一般式(6)で表される化合物について常温で酸加水分解を行う。このとき、無機酸は、塩酸若しくは臭化水素酸などを用いることができる。また、有機酸は、トリフルオロ酢酸などを用いることができる。また、有機溶媒は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン又は酢酸エチルなどを用いることができる。このうち、好ましくはトリフルオロ酢酸水溶液を用いて酸加水分解を行うことが好ましい。
次に、塩基で中和しアミノエステル体を得た後に、溶媒中で、当該アミノエステル体と酸塩化物又は酸無水物とを、0℃〜常温で反応させ、一般式(7)で表される化合物を得る。このとき、溶媒は、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルム、メタノール、エタノール又はアセトニトリルなどを用いることができる。また、酸塩化物は、塩化アセチル若しくは塩化ベンジルオキシカルボニルなどを用いることができる。また、酸無水物は、無水酢酸若しくはジ−t−ブチルジカルボナートなどを用いることができる。このうち、ジ−t−ブチルジカルボナートを用いて反応を行わせることが好ましい。
【0070】
合成経路Aで一般式(8)
【0071】
【化14】

【0072】
[式(8)中、A、R、R及びZは前述の通り]
【0073】
で表される化合物は、一般式(7)で表される化合物を還元することによって製造することができる(工程A−4)。
【0074】
例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エタノール又はメタノールなどの反応溶媒中で、還元剤を用いて一般式(7)で表される化合物を0℃〜加熱還流の温度、好ましくは常温で還元する。還元剤は、ボラン若しくは9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBN)のようなアルキルボラン誘導体、又はジイソブチルアルミニウムヒドリド((iBu)2AlH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)若しくは水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)などの金属水素錯化合物を用いることができる。好ましくは、還元剤は、水素化ホウ素リチウムである。
【0075】
合成経路Aで一般式(10)
【0076】
【化15】

【0077】
[式(10)中、R11は炭素数1〜6のアシル基又は一般式(31)

【0078】
(式(31)中、R12は炭素数1〜6のアルキル基を示す)
で表されるエステル基を示し、R、R、R及びZは前述の通り]
【0079】
で表される化合物は、一般式(8)で表される化合物と一般式(9)
【0080】
【化16】

【0081】
[式(9)中、R及びR11は前述の通り]
【0082】
で表される化合物とを反応させることによって製造することができる(工程A−5)。
例えば、当該反応は、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテルなどの反応溶媒中で、無機塩基又は有機塩基存在下で、触媒を用いて常温〜加熱還流の温度で行うことができる。無機塩基は、炭酸ナトリウム若しくはカリウムt−ブトキシドなどを用いることができる。また、有機塩基は、ジイソプロピルエチルアミンなどを用いることができる。また、触媒は、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)又は酢酸パラジウム(II)などのパラジウム化合物、好ましくはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)を用いることができる。
また4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル、1,1’−ビス(ジt−ブチルホスフィノ)フェロセンなどのホスフィン化合物を反応促進剤として反応溶媒中に加えることもできる。
【0083】
合成経路Aで一般式(12)
【0084】
【化17】

【0085】
[式(12)中、R、R、R、R、R11及びZは前述の通り]
【0086】
で表される化合物は、一般式(10)で表される化合物と一般式(11)
【0087】
【化18】

【0088】
[式(11)中、Rは前述の通り]
【0089】
で表される化合物とを反応させることによって製造することができる(工程A−6)。
【0090】
例えば、当該反応は、四臭化炭素及びピリジンの存在下において、無溶媒もしくは塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテルなどを溶媒として用い、0℃〜常温で行うことができる。
【0091】
合成経路Aで一般式(1d)で表される化合物のうちR10が炭素数1〜6のアシル基である化合物は、一般式(12)で表される化合物のうちR11が炭素数1〜6のアシル基である化合物を、酸加水分解及び/又はトリメチルシリルブロミド若しくはトリメチルシリルヨージドなどの求核試薬で処理することによって製造することができる。 また、合成経路Aで一般式(1d)で表される化合物のうちR10がカルボキシル基である化合物は、一般式(12)で表される化合物のうちR11が一般式(31)で表されるエステル基である化合物を、酸加水分解及び/又はトリメチルシリルブロミド若しくはトリメチルシリルヨージドなどの求核試薬で処理した後、必要に応じて、アルカリ加水分解することによって製造することができる(工程A−7)。
【0092】
酸加水分解反応の場合、塩酸又は臭化水素酸などの無機酸中、あるいはメタノール又はエタノールなどの有機溶媒と無機酸との混合溶液中加熱還流の温度で行うことができる。また、求核試薬を用いた処理は、好ましい反応溶媒としてアセトニトリル又は塩化メチレンなどを用い、0℃〜常温でトリメチルシリルブロミド又はトリメチルシリルヨージドを作用させるようにしてもよい。あるいは、求核試薬を用いた処理は、トリメチルシリルクロリドと臭化ナトリウム又はトリメチルシリルクロリドとヨウ化ナトリウムを組み合わせて作用させることでも行うことができる。
【0093】
アルカリ加水分解反応は、エステルの加水分解反応に通常用いられる方法により行うことができる。例えば、メタノール、エタノール又はテトラヒドロフランなどの溶媒中、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液又は水酸化リチウム水溶液などを用いて、常温から加熱還流の温度で行うことができる。

【0094】
合成経路Aで一般式(7)で表される化合物は、例えば以下に示すような合成経路Bにより製造することもできる。

<合成経路B>
【0095】
【化19】

【0096】
合成経路Bで一般式(14)
【0097】
【化20】

【0098】
[式(14)中、A、R及びZは前述の通り]
【0099】
で表される光学活性な化合物は、一般式(13)
【0100】
【化21】

【0101】
[式(13)中、Rは前述の通り]
【0102】
で表される光学活性な化合物と一般式(5)で表される化合物とを用いて工程A−2と同様の方法によって製造することができる(工程B−1)。
【0103】
合成経路Bで一般式(15)
【0104】
【化22】

【0105】
[式(15)中、A、R、R及びZは前述の通り]
【0106】
で表される光学活性な化合物は、一般式(14)で表される光学活性な化合物と一般式(3)で表される化合物とを用いて工程A−1と同様の方法によって製造することができる(工程B−2)。
【0107】
合成経路Bで一般式(7)で表される化合物は、一般式(15)で表される化合物を用いて工程A−3と同様の方法によって製造することができる(工程B−3)。
【0108】
合成経路Aで一般式(10)で表される化合物は、例えば以下に示すような合成経路Cにより製造することもできる。

<合成経路C>
【0109】
【化23】

【0110】
合成経路Cで一般式(17)
【0111】
【化24】

【0112】
[式(17)中、R、R、R、R11及びZは前述の通り]
【0113】
で表される光学活性な化合物は、一般式(4)で表される光学活性な化合物と一般式(16)
【0114】
【化25】

【0115】
[式(16)中、R、R11、A及びZは前述の通り]
【0116】
で表される化合物とを用いて工程A−2と同様の方法によって製造することができる(工程C−1)。
【0117】
合成経路Cで一般式(18)
【0118】
【化26】

【0119】
[式(18)中、R、R、R、R、R11及びZは前述の通り]
【0120】
で表される化合物は、一般式(17)で表される化合物を用いて工程A−3と同様の方法によって製造することができる(工程C−2)。
【0121】
合成経路Cで一般式(10)で表される化合物は、一般式(18)で表される化合物を用いて工程A−4と同様の方法によって製造することができる(工程C−3)。
【0122】
合成経路Cで一般式(18)で表される化合物は、例えば以下に示すような合成経路Dにより製造することもできる。

<合成経路D>
【0123】
【化27】

【0124】
合成経路Dで一般式(19)
【0125】
【化28】

【0126】
[式(19)中、R、R、R11及びZは前述の通り]
【0127】
で表される光学活性な化合物は、一般式(13)で表される光学活性な化合物と一般式(16)で表される化合物とを用いて工程A−2と同様の方法によって製造することができる(工程D−1)。
【0128】
合成経路Dで一般式(20)
【0129】
【化29】

【0130】
[式(20)中、R、R、R、R11及びZは前述の通り]
【0131】
で表される光学活性な化合物は、一般式(19)で表される光学活性な化合物と一般式(3)で表される化合物とを用いて工程A−1と同様の方法によって製造することができる(工程D−2)。
【0132】
合成経路Dで一般式(18)で表される化合物は、一般式(20)で表される化合物を用いて工程A−3と同様の方法によって製造することができる(工程D−3)。
【0133】
一般式(1)で表される化合物のうち、Xがメチレンである化合物、即ち一般式(1e)
【0134】
【化30】

【0135】
[式(1e)中、R、R、R10及びZは前述の通り]
【0136】
で表される化合物は、例えば以下に示すような合成経路Eにより製造することができる。

<合成経路E>
【0137】
【化31】

【0138】
合成経路Eで一般式(26)
【0139】
【化32】

【0140】
[式(26)中、R、R、R、R11及びZは前述の通り]
【0141】
で表される化合物は、一般式(10)で表される化合物を酸化することによって製造することができる(工程F−1)。
当該反応は、一般に用いられるアルコールのアルデヒドへの酸化手法を用いることができる。例えば、クロロクロム酸ピリジニウム若しくは二クロム酸ピリジニウムなどの酸化クロム−ピリジン錯体を用いた酸化処理又はデス−マーチン酸化などの超原子価ヨウ素を用いた酸化が挙げられる。又は、塩化オキザリル、無水トリフルオロ酢酸、無水酢酸、ジシクロヘキシルカルボジイミド、三酸化硫黄−ピリジン錯体などの各種ジメチルスルホキシド活性化剤を用いたジメチルスルホキシド酸化も挙げられる。
【0142】
合成経路Eで一般式(29)
【0143】
【化33】

【0144】
[式(29)中、R、R、R、R、R11及びZは前述の通り]
【0145】
で表される化合物は、例えば、一般式(26)で表される化合物と一般式(27)
【0146】
【化34】

【0147】
[式(27)中、Rは前述の通り]
【0148】
で表される化合物とを、反応溶媒中で、塩基存在下で反応させることによって製造することができる(工程F−2)。
【0149】
当該反応における塩基は、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド又はn−ブチルリチウムなど、好ましくはn−ブチルリチウムを用いることができる。また、反応溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル又は1,4−ジオキサンなどを用いることができる。また、反応温度は、−78℃〜常温とすることができる。
【0150】
合成経路Eで一般式(30)
【0151】
【化35】

【0152】
[式(30)中、R、R、R、R、R11及びZは前述の通り]
【0153】
で表される化合物は、一般式(29)で表される化合物を還元することによって製造することができる(工程F−3)。
【0154】
例えば、当該反応は、接触還元触媒の存在下、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド又は酢酸エチルなどの溶媒中で、常圧〜加圧の水素圧下において常温で行うことができる。接触還元触媒は、パラジウム炭素、白金炭素、酸化白金、ロジウム炭素又はルテニウム炭素などを用いることができる。
【0155】
また、当該反応は、ジイミド還元により行うこともできる。例えば、アゾジカルボン酸カリウムを用い、酢酸存在下、ピリジン、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサンなどの溶媒中で、常温から加熱還流の温度で行うことができる。
【0156】
合成経路Eで一般式(1e)で表される化合物は、一般式(30)で表される化合物を用いて工程A−7と同様の方法によって製造することができる(工程F−4)。
【0157】
なお、一般式(16)で表される化合物の合成法については、WO03029184号、WO03029205号、WO04026817号、WO04074297号及びWO050444780号の各パンフレットに記載された方法によって製造することができる。
【0158】
本発明のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物は優れたS1P3アンタゴニスト作用を示す。よって、これらの少なくとも一種類以上を有効成分とする医薬は、S1P3アンタゴニストが治療または予防薬として有効であることが知られている疾患の治療または予防薬として有効である。当該S1P3アンタゴニストが治療または予防薬として有効であることが知られている疾患は、例えば、敗血症、気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症、インフルエンザウイルス、RSウイルス感染に基づくサイトカインストームなどが挙げられる。
【0159】
また、本発明の医薬は、上記疾患以外にもS1P3アンタゴニスト作用が有効であることが知られている疾患の治療または予防にも有効である。当該S1P3アンタゴニスト作用が有効であることが知られている疾患は、例えば、動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症もしくは心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、ARDSなどの肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症または黄班変性症などが挙げられる。
【0160】
本発明の医薬は、経口又は直腸内、皮下、静脈内、筋肉内若しくは経皮等の非経口的手段によって投与することができる。
【0161】
本発明の化合物、薬理学的に許容されるその塩またはそれらの水和物を医薬として用いるためには、固体組成物、液体組成物又はその他の組成物のいずれの形態でもよく、必要に応じて最適のものが選択される。本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に薬理学的に許容される担体を配合して製造することもできる。具体的には、常用の賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、糖衣剤、pH調整剤、溶解剤又は水性若しくは非水性溶媒などを添加し、常用の製剤技術によって、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、散剤、液剤、乳剤、懸濁剤又は注射剤、などに調製することができる。
【0162】
次に本発明を具体例によって説明するが、これらの例によって本発明が限定されるものではない。

<参考例1>
(2R,5R)−2−(4−ブロモ−2−クロロフェニル)エチル−3,6−ジメトキシ−5−イソプロピル−2−プロピル−2,5−ジヒドロピラジン
【0163】
【化36】

【0164】
アルゴン雰囲気下、−78℃で(5R)−3,6−ジメトキシ−2−プロピル−5−イソプロピル−2,5−ジヒドロピラジン(5.21 g)の テトラヒドロフラン (100 mL) 溶液にn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(1.60 mol / L, 15.1 mL)を加えて反応液とした。次に、当該反応液を−78℃で30分間攪拌した。さらに反応液に4−ブロモ−2−クロロ−1−(2−ヨードエチル)ベンゼン (9.54 g) のテトラヒドロフラン (15 mL) 溶液を加えて−78℃で30分間、その後0℃で1時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾過により除去した後、溶媒を減圧留去しシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 60 : 1)を用いて精製し、目的物(8.01 g)を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.70 (3H, d, J = 6.7 Hz), 0.86 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.11 (3H, d, J = 6.7 Hz), 1.15-1.30 (2H, m), 1.49-1.62 (1H, m), 1.71-1.84 (2H, m), 1.98 (1H, td, J = 12.4, 4.8 Hz), 2.29-2.47 (3H, m), 3.69 (3H, s), 3.70 (3H, s), 3.95 (1H, d, J = 3.0 Hz), 7.01 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.27 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.46 (1H, d, J = 1.8 Hz).
ESIMS (+) :443 [M+H] +.

<参考例2>
(S)−4−(4−ブロモ−2−クロロフェニル)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−2−プロピル酪酸メチル
【0165】
【化37】

【0166】
参考例1の化合物 (53.4 g) に50%トリフルオロ酢酸-水溶液(800 mL)を加え、常温で1時間攪拌後、常温で一晩放置した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水、及び飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。抽出液を濃縮後、残渣をアセトニトリル(375 mL)に溶解し、ジ−tert−ブトキシジカルボネート(19.6 g)を加えた。常温で1時間攪拌し、常温で一晩放置した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 6 : 1)にて精製し、目的物(35.6 g)を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.89 (3H, t, J = 7.3 Hz). 0.96-1.10 (1H, m), 1.25-1.39 (1H, m), 1.46 (9H, s), 1.69 (1H, ddd, J = 13.9, 11.5. 4.8 Hz), 1.99-2.10 (1H, m), 2.20-2.35 (1H, m), 2.42 (1H, ddd, J = 13.9, 11.5, 4.8 Hz), 2.49-2.60 (1H, m), 2.64 (1H, td, J = 13.9, 4.8 Hz), 3.74 (3H, s), 5.62 (1H, br s), 7.03 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.29 (1H, dd, J = 8.5, 1.8 Hz), 7.48 (1H, J = 1.8 Hz).
ESIMS (+) : 448 [M+H] +.

<参考例3>
(R)−2−[2−(4−ブロモ−2−クロロフェニル)エチル]−2−t−ブトキシカルボニルアミノペンタン−1−オール
【0167】
【化38】

【0168】
参考例2の化合物(35.6 g)のテトラヒドロフラン(250 mL)溶液に氷冷下にて水素化ホウ素リチウム−テトラヒドロフラン溶液(3 mol / L, 125 mL)を加え、次いでエタノール(37.5 mL)を滴下し、氷冷下にて2時間攪拌した。反応液に10 % クエン酸水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 2 : 1)にて精製し、目的物(28.6 g)を無色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.96 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.29-1.42 (2H, m), 1.44 (9H, s), 1.53-1.62 (2H, m), 1.81 (1H, ddd, J = 13.9, 11.5, 5.4 Hz), 1.93 (1H, ddd, J = 13.9, 11.5, 5.4 Hz), 2.59-2.75 (2H, m), 3.73 (2H, d, J = 6.7 Hz), 4.15 (1H, br s), 4.62 (1H, br s), 7.11 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.31 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.49 (1H, d, J = 1.8 Hz).
ESIMS (+) : 420 [M+H] +.

<参考例4>
2−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチル安息香酸メチル
【0169】
【化39】

【0170】
2−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチル安息香酸(24.0 g) のメタノール (600 mL) 溶液に、氷冷下で塩化チオニル (41.5 g) を加えた。加熱還流下に 7 時間撹拌した後、反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (富士シリシア化学Chromathorex NH, 酢酸エチル) にて精製し、目的物 (25.9 g) を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 3.99 (3H, s), 7.12 (1H, dd, J = 8.6, 1.2 Hz), 7.25 (1H, d, J = 8.6 Hz).
EIMS (+):220 [M+H]+.

<参考例5>
2−ジメチルカルバモチオイルオキシ−4−トリフルオロメチル安息香酸メチル
【0171】
【化40】

【0172】
参考例4の化合物 (20.0 g) のN,N−ジメチルホルムアミド (100 mL) 溶液に、1,5−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン (34.6 g) およびジメチルチオカルバモイルクロリド (22.5 g) を加え,常温で 7 時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた固体をジイソプロピルエーテルに懸濁後、ろ取することで目的物 (20.3 g) を黄色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ3.41 (3H, s), 3.46 (3H, s), 3.87 (3H, s), 7.40 (1H, d, J = 1.2 Hz), 7.56 (1H, dd, J = 8.6, 1.2 Hz), 8.10 (1H, d, J = 8.6 Hz).
EIMS (+):307 [M+H]+.

<参考例6>
2−ジメチルカルバモイルチオ−4−トリフルオロメチル安息香酸メチル
【0173】
【化41】

【0174】
参考例5の化合物 (10.0 g) を無溶媒下190 ℃で4 時間撹拌した。反応物を常温まで冷却し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=2 : 1) にて精製し、目的物 (6.0 g) を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 3.03 (3H, br), 3.14 (3H, br), 3.91 (3H, s), 7.67 (1H, dd, J = 8.6, 1.2 Hz), 7.87 (1H, d, J = 1.2 Hz), 7.98 (1H, d, J = 8.6 Hz).
EIMS (+):307 [M+H]+.

<参考例7>
2−メルカプト−4−トリフルオロメチル安息香酸メチル
【0175】
【化42】

【0176】
参考例6の化合物 (2.00 g) に25%ナトリウムメトキシド-メタノール溶液 (19.5 mL) を加え、60℃で 30 分間撹拌した。反応液を常温まで冷却し、6 mol/L 塩酸を加え、pH<1 とした.ジエチルエーテルで抽出し、有機層を 0.5 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液で抽出した.抽出した水層をジエチルエーテルで洗浄し、濃塩酸でpH<1とした。水層をジエチルエーテルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去することにより、目的物 (1.23 g) を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 3.96 (3H, s), 4.92 (1H, s), 7.38 (1H, dd, J = 8.6, 1.2 Hz), 7.57 (1H, d, J = 1.2 Hz), 8.11 (1H, d, J = 8.6 Hz).
EIMS (+):236 [M+H]+.

<参考例8>
2-ヨード-5-(トリフルオロメチル)フェノール
【0177】
【化43】

【0178】
3-(トリフルオロメチル)フェノール (20.0 g) のトルエン (200 mL) 溶液に、60%水素化ナトリウム (4.93 g) を加え、常温で30分間撹拌した。次いでヨウ素 (31.2 g) を加え、常温で 1 時間撹拌した。反応液に3 mol%塩酸、および酢酸エチルを加え分液した。有機層を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=8 : 1) にて精製し、目的物 (22.6 g) を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 5.59 (1H, s), 6.93 (1H, dd, J = 8.6, 1.2 Hz), 7.22 (1H, d, J = 1.2 Hz), 7.78 (1H, d, J = 8.6 Hz).
EIMS (+):287 [M]+.

<参考例9>
1-{2-ヒドロキシ-4-(トリフルオロメチル)フェニル}エタノン
【0179】
【化44】

【0180】
参考例8の化合物 (15.0 g) のN,N-ジメチルホルムアミド (80 mL) 溶液に、トリエチルアミン (7.91 g) 、n-ブチルビニルエーテル (26.1 g) 、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン (4.29 g) 、および酢酸パラジウム (1.17 g) を加え110 ℃で5 時間撹拌した。反応液を常温まで冷却し、水および酢酸エチルを加え分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=30 : 1) にて精製し、目的物 (6.79 g) を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 2.69 (3H, s), 7.15 (1H, dd, J = 8.6, 1.2 Hz), 7.26 (1H, d, J = 1.2 Hz), 7.86 (1H, d, J = 8.6 Hz).
EIMS (+):204 [M+H]+.

<参考例10>
ジメチルチオカルバミン酸 O-{2-アセチル-5-(トリフルオロメチル)フェニル}
【0181】
【化45】

【0182】
参考例9の化合物 (3.50 g) を用い、参考例5と同様に反応を行い、目的物 (4.55 g) を黄色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 2.58 (3H, s), 3.42 (3H, sH,h), 3.46 (3H, s), 7.37 (1H, d, J = 1.2 Hz), 7.57 (1H, dd, J = 8.6, 1.2 Hz), 7.85 (1H, d, J = 8.6 Hz).
EIMS (+):291 [M+H]+.

<参考例11>
ジメチルチオカルバミン酸 S-{2-アセチル-5-(トリフルオロメチル)フェニル}
【0183】
【化46】

【0184】
参考例10の化合物 (4.50 g) を用い、参考例6と同様に反応を行い、目的物 (3.03 g) を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 2.61 (3H, s), 3.02 (3H, br), 3.11 (3H, br), 7.63-7.70 (2H, m), 7.83 (1H, s).
EIMS (+):291 [M+H]+.

<参考例12>
1-{2-メルカプト-4-(トリフルオロメチル)フェニル}エタノン
【0185】
【化47】

【0186】
参考例11の化合物 (400 mg) を用い、参考例7と同様に反応を行い、目的物 (210 mg) を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 2.67 (3H, s), 4.61 (1H, br), 7.44 (1H, dd, J = 8.6, 1.2 Hz), 7.56 (1H, d, J = 1.2 Hz), 7.97 (1H, d, J = 8.6 Hz).
EIMS (+):220 [M+H]+.

<参考例13>
(2−メトキシ−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)エトキシメタン−1−チオン
【0187】
【化48】

【0188】
アルゴン雰囲気下、氷冷下にて2−メトキシ−5−トリフルオロメチルアニリン(2.50 g)の メタノール (13 mL) 溶液に水(13 mL)及び濃塩酸(6.9 mL)を加え、氷冷下にて10分間攪拌した後、反応液に亜硝酸ナトリウム(1.26 g)を加え氷冷下にて1時間攪拌した。反応液を、65℃に加熱したエチルキサントゲン酸カリウム(4.19 g)の水溶液(13 mL)にゆっくりと滴下し、65℃にて1時間攪拌した。反応液を常温に戻し、反応液に氷水を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去しシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 20 : 1)にて精製し、目的物(913 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 1.31 (3H, t, J = 7.3 Hz). 3.92 (3H, s), 4.60 (2H, q, J = 7.3 Hz), 7.04 (1H, d, J = 8.6 Hz), 7.71 (1H, dd, J = 8.6, 2.4 Hz), 7.73 (1H, d, J = 2.4 Hz).
EIMS (+) : 296 [M] +.

<参考例14>
2−メトキシ−5−トリフルオロメチルベンゼンチオール
【0189】
【化49】

【0190】
アルゴン雰囲気下、氷冷下にて参考例13の化合物 (38.4 g)のジエチルエーテル(500 mL) 溶液に水素化アルミニウムリチウム(5.92 g)を加え、氷冷下にて30分間攪拌した。反応液に1 mol / L塩酸 を加え、ジエチルエーテルにて抽出した。有機層を1 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液で抽出し、水層をジエチルエーテルで洗浄した後、濃塩酸で pH 2とした。水層をジエチルエーテルで抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、目的物(400 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ3.93 (1H, s), 3.95 (3H, s), 6.90 (1H, d, J = 8.6 Hz), 7.38 (1H, dd, J = 8.6, 2.4 Hz), 7.51 (1H, d, J = 2.4 Hz).
EIMS (+) : 296 [M] +.

<参考例15>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−{2−クロロ−4−(2−メトキシカルボニル−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル}−2−プロピルブタン−1−オール
【0191】
【化50】

【0192】
アルゴンガス雰囲気下、参考例3の化合物 (500 mg)、参考例7の化合物 (337 mg)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(109 mg)および4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(138 mg)をジオキサン(8 mL)に溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(0.42 mL)を加え、加熱還流下にて2時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 4 : 1)にて精製し、目的物(638 mg)を茶褐色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.98 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.33-1.63 (4H, m), 1.45 (9H, s), 1.85-1.92 (1H, m), 1.97-2.05 (1H, m), 2.75-2.80 (2H, m), 3.77 (2H, d, J = 6.1 Hz), 3.98 (3H, s), 4.19 (1H, brs), 4.66 (1H, brs), 7.06 (1H, s), 7.34-7.39 (3H, m), 7.55 (1H, d, J = 1.8 Hz), 8.08 (1H, d, J = 8.6 Hz).
ESIMS (+):576 [M+H]+.

<参考例16>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−{2−クロロ−4−(2−メトキシカルボニル−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル}−1−ジメトキシホスホリルオキシ−2−プロピルブタン
【0193】
【化51】

【0194】
参考例15の化合物(598 mg)をピリジン(5 mL)に溶解し、氷冷下にて四臭化炭素(689 mg)および亜リン酸トリメチル(0.245 mL)を加え、常温にて4時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 1 : 1)にて精製し、目的物(504 mg)を黄色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.97 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.36-1.45 (2H, m), 1.45 (9H, s), 1.63-1.72 (2H, m), 1.82-1.88 (1H, m), 2.05-2.09 (1H, m), 2.75-2.79 (2H, m), 3.78 (3H, d, J = 1.2 Hz), 3.81 (3H, d, J = 1.2 Hz), 3.98 (3H, s), 4.13-4.16 (1H, m), 4.25-4.29 (1H, m), 4.55 (1H, brs), 7.05 (1H, s), 7.31-7.39 (3H, m), 7.55 (1H, d, J = 1.2 Hz), 8.08 (1H, d, J = 8.6 Hz).
ESIMS (+):684 [M+H]+.
【実施例1】
【0195】
(S)−2−アミノ−4−{4−(2−カルボキシ−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)−2−クロロフェニル}−2−プロピルブチルリン酸モノエステル
【0196】
【化52】

【0197】
参考例16の化合物(500 mg)を10%塩酸−メタノール溶液(15 mL)に溶解し、常温にて19時間、50℃にて2時間攪拌した。反応液を減圧下溶媒留去した後、残渣をアセトニトリル(7 mL)に溶解し、氷冷下にてヨードトリメチルシラン(0.44 mL)を加え、同温度にて2時間攪拌した。反応液に水を加えた後、生じた固体をろ取し、水、アセトニトリルにて洗浄後、減圧下60℃にて乾燥した。得られた固体をメタノール(5 mL)に溶解し、1 mol/L水酸化ナトリウム水溶液(1.7 mL)を加え、常温にて14時間攪拌した。反応液を減圧下溶媒留去した後、残渣を水で希釈し、氷冷下にて1 mol/L塩酸を用いて酸性(pH 2-3)とした。生じた固体をろ取することで、目的物(290 mg)を無色固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz):δ0.90 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.34-1.36 (2H, m), 1.60-1.62 (2H, m), 1.80-1.82 (2H, m), 2.74-2.76 (2H, m), 3.80-3.90 (2H, m), 6.94 (1H, s), 7.44 (1H, dd, J = 8.0, 1.2 Hz), 7.52 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.56 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.61 (1H, d, J = 1.2 Hz), 8.08 (1H, d, J = 8.0 Hz).
HRESIMS (+):542.07781 (C21H25ClF3NO6PS として計算値 542.07808).

<参考例17>
(S)−4−[4−(2−アセチル−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)− 2−クロロフェニル]−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−2−プロピルブタン−1−オール
【0198】
【化53】

【0199】
参考例3の化合物(375 mg)および参考例12の化合物 (251 mg)を用い、参考例15と同様に反応を行い、目的物(450 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.98 (3H, t, J = 6.7 Hz), 1.30-1.43 (2H, m), 1.44 (9H, s), 1.53-1.60 (2H, m), 1.83-1.91 (1H, m), 1.93-2.01 (1H, m), 2.69 (3H, s), 2.74-2.83 (2H, m), 3.76 (2H, d, J = 6.7 Hz), 4.18 (1H, brs), 4.66 (1H, brs), 7.13-7.14 (1H, m), 7.31-7.33 (2H, m), 7.43-7.45 (1H, m), 7.50-7.52 (1H, m), 7.88-7.92 (1H, m).
ESIMS (+):560 [M+H]+.

<参考例18>
(S)−4−[4−(2−アセチル−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)− 2−クロロフェニル]−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−1−ジメトキシホスホリルオキシ−2−プロピルブタン
【0200】
【化54】

【0201】
参考例17の化合物(479 mg)を用い、参考例16と同様に反応を行い、目的物(392 mg)を黄色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.97 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.34-1.42 (2H, m), 1.45 (9H, s), 1.64-1.70 (2H, m), 1.82-1.88 (2H, m), 2.69 (3H, s), 2.77 (2H, t, J = 8.6 Hz), 3.78 (3H, d, J = 1.2 Hz), 3.80 (3H, d, J = 1.2 Hz), 4.13-4.15 (1H, m), 4.25-4.29 (1H, m), 4.53 (1H, brs), 7.13 (1H, s), 7.29-7.34 (2H, m), 7.43 (1H, dd, J = 8.0, 1.2 Hz), 7.51 (1H, d, J = 1.2 Hz), 7.90 (1H, d, J = 8.0 Hz).
ESIMS (+):668 [M+H]+.
【実施例2】
【0202】
(S)−4−[4−(2−アセチル−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)− 2−クロロフェニル]−2−アミノ−2−プロピルブチルリン酸モノエステル
【0203】
【化55】

【0204】
参考例18の化合物(390 mg)を4 mol/L塩酸−酢酸エチル溶液(5 mL)に溶解し、常温にて12時間攪拌した。反応終了後、減圧下溶媒留去した。得られた残渣をアセトニトリル(6 mL)に溶解後、氷冷下にてヨードトリメチルシラン(0.4 mL)を加え、同温度にて2時間攪拌した。反応液に水を加え、生じた固体を水、アセトニトリルの順に洗浄後、減圧下80℃にて乾燥することで、目的物(280 mg)を無色固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz):δ0.84 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.27-1.29 (2H, m), 1.50-1.57 (2H, m), 1.71-1.73 (2H, m), 2.62 (3H, s), 2.69-2.71 (2H, m), 3.73-3.77 (2H, m), 6.98 (1H, s), 7.37 (1H, dd, J = 8.0, 1.8 Hz), 7.48 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.54 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.60 (1H, d, J = 8.6 Hz), 8.16 (1H, d, J = 8.6 Hz).
HRESIMS (+):540.09836 (C22H27ClF3NO5PS として計算値 540.09882).

<参考例19>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−{2−クロロ−4−(2−メトキシカルボニル−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル}−2−プロピルブタン−1−アール
【0205】
【化56】

【0206】
参考例15の化合物(704 mg)をジメチルスルホキシド(6 mL)に溶解し、トリエチルアミン(1.7 mL)および三酸化硫黄−ピリジン錯体(973 mg)を加え、常温にて1.5時間攪拌した。反応液に氷水を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。減圧下溶媒留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル = 5 : 1) で精製し、目的物(595 mg)を黄色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.92 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.05-1.15 (1H, m), 1.26-1.35 (1H, m), 1.47 (9H, s), 1.63-1.70 (1H, m), 2.02-2.07 (1H, m), 2.17-2.21 (1H, m), 2.52-2.58 (2H, m), 2.69-2.72 (2H, m), 3.98 (3H, s), 5.41 (1H, brs), 7.06 (1H, s), 7.26 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.34-7.39 (2H, m), 7.53 (1H, d, J = 1.8 Hz), 8.07 (1H, d, J = 8.0 Hz), 9.32 (1H, s).
ESIMS (+) : 574 [M+H] +.

<参考例20>
(S)−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−5−{2−クロロ−4−(2−メトキシカルボニル−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル}−3−プロピル−1−ペンテニルホスホン酸ジメチルエステル
【0207】
【化57】

【0208】
アルゴンガス雰囲気下にて、メチレンジホスホン酸テトラメチル(242 mg)をテトラヒドロフラン(9 mL)に溶解し、−78℃にてn−ブチルリチウム(1.65 mol/Lヘキサン溶液, 0.63 mL)を滴下し、同温度にて30分間攪拌した。−78℃にて反応液に参考例19の化合物(498 mg)のテトラヒドロフラン溶液(3 mL)を滴下し、常温にて2時間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル = 3 : 1 → 酢酸エチルのみ) で精製し、目的物(370 mg)を無色アモルファス状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.94 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.24-1.34 (2H, m), 1.45 (9H, s), 1.24-1.34 (2H, m), 1.61-1.76 (2H, m), 2.04-2.21 (1H, m), 2.66-2.77 (1H, m), 3.73 (3H, s), 3.76 (3H, s), 3.98 (3H, s), 4.64 (1H, brs), 5.70 (1H, t, J = 17.7 Hz), 6.76 (1H, t, J = 17.7 Hz), 7.06 (1H, s), 7.28 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.34-7.39 (2H, m), 7.54 (1H, d, J = 1.8 Hz), 8.07 (1H, d, J = 8.0 Hz).
ESIMS (+) : 680 [M+H] +.

<参考例21>
(S)−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−5−{2−クロロ−4−(2−メトキシカルボニル−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル}−3−プロピルペンチルホスホン酸ジメチルエステル
【0209】
【化58】

【0210】
参考例20の化合物(369 mg)をピリジン(11 mL)に溶解し、アゾジカルボン酸二カリウム(1.06 g)および酢酸(0.47 mL)を加え、常温にて64時間攪拌した。反応液をトルエンで希釈後、不溶物をセライトを用いて除去した。ろ液を減圧下溶媒留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル = 1 : 2) で精製し、目的物(177 mg)を無色アモルファス状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.96 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.32-1.37 (2H, m), 1.45 (9H, s), 1.51-1.56 (2H, m), 1.71-1.90 (4H, m), 2.05-2.14 (2H, m), 2.69-2.73 (2H, m), 3.74 (3H, s), 3.77 (3H, s), 3.98 (3H, s), 4.30 (1H, brs), 7.06 (1H, s), 7.29 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.35-7.39 (2H, m), 7.54 (1H, d, J = 1.8 Hz), 8.08 (1H, d, J = 8.0 Hz).
ESIMS (+) : 682 [M+H] +.
【実施例3】
【0211】
(S)−3−アミノ−5−{4−(2−カルボキシ−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)−2−クロロフェニル}−3−プロピルペンチルホスホン酸
【0212】
【化59】

【0213】
参考例21の化合物(177 mg)を用い、実施例1と同様に反応を行い、目的物(75 mg)を無色固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ 0.90 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.33 (2H, brs), 1.61 (4H, brs), 1.83-1.90 (4H, m), 2.74 (2H, brs), 6.82 (1H, s), 7.27 (1H, d, J = 6.7 Hz), 7.43-7.46 (3H, m), 8.00 (1H, d, J = 8.0 Hz).
HRESIMS (+) : 540.09808 (C22H27ClF3NO5PSとして計算値540.09882).

<参考例22>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[2−クロロ−4−(2−メトキシ−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル] −2−プロピルブタン−1−オール
【0214】
【化60】

【0215】
参考例14の化合物 (11.0 g)と参考例3の化合物 (18.5 g)とを参考例15と同様に反応させ目的物(19.2 g)を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.96 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.29-1.43 (2H, m), 1.44 (9H, s), 1.59 (2H, dd, J = 7.3, 1.8 Hz), 1.83 (1H, ddd. J = 13.9, 12.1, 5.4 Hz), 1.96 (1H, ddd, J = 13.9, 12.1, 5.4 Hz), 2.63-2.78 (2H, m), 3.75 (2H, d, J = 6.7 Hz), 3.92 (3H, s), 4.17 (1H, br s), 4.64 (1H, s), 6.96 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.17 (1H, dd, J = 8.5, 1.8 Hz), 7.17 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.32-7.35 (2H, m), 7.51 (1H, dd, J = 8.5, 1.8 Hz) .
ESIMS (+) :548 [M+H] +.

<参考例23>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[2−クロロ−4−(2−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル] −2−プロピルブタン−1−オール
【0216】
【化61】

【0217】
アルゴン雰囲気下、氷冷下にて参考例22の化合物 (3.69 g)の塩化メチレン(43 mL)溶液に、三臭化ホウ素−塩化メチレン溶液(1 mol / L, 26 mL)を加え、氷冷下にて1時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をアセトニトリル(43 mL)溶媒に溶解し、ジ−tert−ブトキシジカルボネート (2.78 g) を加え、常温で2時間攪拌した後、一晩放置した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、水、飽和食塩水の順に洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン : 酢酸エチル = 2 : 1)にて精製し、目的物(3.34 g)を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.95 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.28-1.41 (2H, m), 1.44 (9H, s), 1.59 (2H, dd, J = 7.3, 1.8 Hz), 1.79 (1H, ddd. J = 13.9, 11.6, 5.5 Hz), 1.90 (1H, ddd, J = 13.9, 11.6, 5.5 Hz), 2.57-2.72 (2H, m), 3.72 (2H, d, J = 6.7 Hz), 4.16 (1H, br s), 4.61 (1H, br s), 6.77 (1H, s), 6.91 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.09 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.13 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.16 (1H, J = 7.9 Hz), 7.63 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 7.80 (1H, d, J = 1.8 Hz) .
ESIMS (+) :534 [M+H] +.

<参考例24>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[2−クロロ−4−(2−エトキシ−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−プロピルブタン−1−オール
【0218】
【化62】

【0219】
参考例23の化合物(240 mg)をN, N-ジメチルホルムアミド (4.0 mL) に溶解し、テトラブチルアンモニウムヨージド(33 mg)、炭酸カリウム(68.4 mg)およびヨウ化エチル(39.6 mg)を加え、常温にて15時間攪拌した。反応液に水を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。減圧下溶媒留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル = 2 : 1) で精製し、目的物 (243 mg)を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.96 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.35-1.42 (2H, m), 1.37 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.44 (9H, s), 1.54-1.60 (2H, m), 1.82 (1H, ddd, J = 13.9, 12.1, 5.4 Hz), 1.95 (1H, ddd, J = 13.9, 12.1, 5.4 Hz), 2.63-2.79 (2H, m), 3.74 (2H, d, J = 6.7 Hz), 4.11 (2H, q, J = 7.3 Hz), 4.17 (1H, br s), 4.64 (1H, s), 6.91 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.19 (2H, s), 7.35 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.36 (1H, s), 7.47 (1H, dd, J = 8.5, 1.8 Hz).
ESIMS (+) : 562 [M+H] +.

<参考例25>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[2−クロロ−4−(2−メトキシ−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−1−ジメトキシホスホリルオキシ−2−プロピルブタン
【0220】
【化63】

【0221】
参考例22の化合物(194 mg)を用い、参考例16と同様に反応を行い、目的物(180 mg)を無色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.96 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.31-1.42 (2H, m), 1.44 (9H, s), 1.62-1.75 (1H, m), 1.76-1.89 (1H, m), 1.95-2.13 (2H, m), 3.74 (2H, t, J = 8.6 Hz), 3.78 (3H, d, J = 11.5 Hz), 3.79 (3H, d, J = 11.5 Hz), 3.92 (3H, s), 4.12 (1H, dd, J = 9.7, 4.8 Hz), 4.25 (1H, dd, J = 9.7, 4.8 Hz), 4.52 (1H, br s), 6.96 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.16 (1H, dd, J = 8.5, 1.8 Hz), 7.19 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.33 (2H, dd, J = 8.5, 1.8 Hz), 7.35 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.51 (1H, dd, J = 8.5, 1.8 Hz).
ESIMS (+) : 656 [M+H] +.

<参考例26>
(S)−2−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−[2−クロロ−4−(2−エトキシ−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−1−ジメトキシホスホリルオキシ−2−プロピルブタン
【0222】
【化64】

【0223】
参考例24の化合物(200 mg)を用い、参考例16と同様に反応を行い、目的物(180 mg)を無色固体として得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.96 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.35-1.42 (2H, m), 1.37 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.44 (9H, s), 1.59-1.74 (2H, m), 1.75-1.86 (1H, m), 1.96-2.12 (1H, m), 2.66-2.75 (2H, m), 3.78 (3H, d, J = 10.9 Hz), 3.79 (3H, d, J = 10.9 Hz), 4.11 (2H, q, J = 7.3 Hz), 4.12 (1H, dd, J = 10.3, 4.8 Hz), 4.25 (1H, dd, J = 10.3, 4.8 Hz), 4.52 (1H, br s), 6.91 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.18 (2H, s), 7.35 (1H, dd, J = 8.5, 1.8 Hz), 7.36 (1H, s), 7.47 (1H, dd, J = 8.5, 1.8 Hz).
ESIMS (+) : 670 [M+H] +.

<参考例27>
(S)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(2−メトキシ−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−プロピルブチルリン酸モノエステル
【0224】
【化65】

【0225】
参考例25の化合物(180 mg)を用い、実施例1と同様に反応を行い、目的物 (113 mg) を無色固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6-dTFA, 400 MHz) :δ 0.89 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.24-1.39 (2H, m), 1.45-1.81 (4H, m), 2,59-2.75 (2H, m), 3.70-3.83 (2H, m), 3.89 (3H, s), 7.25 (1H, dd, J = 8.5, 1.8 Hz), 7.27 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.28 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.37 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.38 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.69 (1H, dd, J = 8.6, 1.8 Hz), 8.73 (2H, br s).
HRESIMS (+) : 518.09956 (C21H27ClF3NO5PSとして計算値 518.09882).

<参考例28>
(S)−2−アミノ−4−[2−クロロ−4−(2−エトキシ−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)フェニル]−2−プロピルブチルリン酸モノエステル
【0226】
【化66】

【0227】
参考例26の化合物(180 mg)を用い、実施例1と同様に反応を行い、目的物 (110 mg) を無色固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6-dTFA, 400 MHz) :δ 0.89 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.23 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.25-1.39 (2H, m), 1.44-1.83(4H, m), 2,60-2.76 (2H, m), 3.70-3.83 (2H, m), 4.14 (2H, q, J = 7.3 Hz), 7.24 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.26 (1H, dd, J = 8.5, 1.8 Hz), 7.31 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.38 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.39 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.65 (1H, dd, J = 8.6, 1.8 Hz), 8.67 (2H, br s).
HRESIMS (+) : 542.11446(C22H29ClF3NO5PSとして計算値 542.11447).
【0228】
次に実施例として例示した化合物について、有用性を裏付ける成績を実験例1、実験例2、実験例3によって示す。

<実験例1> S1P(スフィンゴシン-1-リン酸)によるヒトS1P3受容体発現細胞の細胞内カルシウム動員に対する被験化合物の抑制作用
【0229】
10%のウシ胎児血清、及び300 μg/mLのGeneticinを含むHam’s F-12培地でヒトS1P3受容体発現CHO細胞を継代培養した。このヒトS1P3受容体発現CHO細胞を0.25 % トリプシン処理後、ディッシュより回収し、10% ウシ胎児血清および300 μg/mLのGeneticinを含むHam’s F-12培地に浮遊した。その後、ヒトS1P3受容体発現CHO細胞が2.5x 104 /100 μL/wellとなるように96 穴黒色クリアボトムプレート(BD Falcon Biocoat)に播種し、37℃、5 % CO2下で二晩培養した。翌日、100 μL 0.1 % 脂肪酸不含ウシ血清アルブミン (BSA)含有Ham’s F-12培地で、wellを3回洗浄した。0.1 % BSA含有Ham’s F-12培地に交換後、37℃ CO2インキュベータで6時間血清飢餓処理を行った。
【0230】
6時間後に培地を捨て、Fluo3 loading bufferを50 μL/well加え、さらに1時間培養した。なお、Fluo3 loading bufferは次のようにして調製した。まず、Fluo3-AM (Dojindo)とpluronic F-127 (20% DMSO溶液、invitrogen) を等量混合した。続いて、Fluo3-AMとpluronic F-127との当該混合溶液をHanks-HEPES バッファー(20 mM HEPES (pH7.4), 0.1% BSA (Fatty acid Free), 2.5 mM probenecid含有ハンクス平衡塩溶液)に加え、Fluo3-AMの終濃度を4μMとしたものを、Fluo3 loading bufferとした。
【0231】
1時間のインキュベートの後、100 μL のHanks-HEPES バッファーで3回洗った。被験化合物 (0.125 nM、1.25 nM、12.5 nM、125 nM、1.25 μM)またはDMSOを溶解した同バッファーを100 μL加え、マイクロプレート蛍光分光光度計 (FLEX Station (Molecular Device社))中で37 ℃、30分インキュベートした。その後、同装置を用いて、段階希釈法にて終濃度の5倍濃度で作製したS1P (終濃度0.1 nM、1 nM、10 nM、100 nM、1 μM)を25 μL加え、カルシウム動員に基づくFluo3による蛍光を、励起波長485nm、検出波長525nmで検出、測定した。測定データに基づき、最大蛍光強度から最小蛍光強度を引いた値 (蛍光増加量)を算出した。測定した蛍光増加量を使用し、PRISM 4ソフトウェア (GraphPad)を用いて、S1Pの濃度と蛍光増加量の関係を曲線近似した。その結果に基づき、化合物未処理時および各濃度の化合物処理時におけるEC50値を各々算出した。これら数値をもとにSchild Plot解析を行い、解離定数Kd値を求めた。なお、1000 nmol/L>Kd値≧100 nmol/Lについては+、100 nmol/L>Kd値≧10 nmol/Lについては++、10 nmol/L>Kd値≧1 nmol/Lについては+++、1 nmol/L>Kd値については++++と表記し、表1に示した。
【0232】
【表1】


<実験例2> ヒトS1P1受容体発現細胞に対する被験化合物の細胞内カルシウム動員誘導試験
【0233】
10%のウシ胎児血清、及び300 μg/mLのGeneticinを含むHam’s F-12培地でヒトS1P1受容体発現CHO細胞を継代培養した。このヒトS1P1受容体発現CHO細胞を0.25 % トリプシン処理後、ディッシュより回収し、10% ウシ胎児血清および300 μg/mLのGeneticinを含むHam’s F-12培地に浮遊した。その後、ヒトS1P1受容体発現CHO細胞が2.5 x 104 /100 μL/wellとなるように96 穴黒色クリアボトムプレート(BD Falcon Biocoat)に播種し、37℃、5 % CO2下で二晩培養した。翌日、100 μL 0.1 % 脂肪酸不含ウシ血清アルブミン (BSA)含有Ham’s F-12培地で、wellを3回洗浄した。0.1 % BSA含有Ham’s F-12培地に交換後、37℃ CO2インキュベータで6時間血清飢餓処理を行った。
【0234】
6時間後に培地を捨て、Fluo3 loading bufferを50 μL/well加え、さらに1時間培養した。なお、Fluo3 loading bufferは次のようにして調製した。まず、Fluo3-AM (Dojindo)とpluronic F-127 (20% DMSO溶液、invitrogen) を等量混合した。続いて、Fluo3-AMとpluronic F-127との当該混合溶液をHanks-HEPES バッファー(20 mM HEPES (pH7.4), 0.1% BSA (Fatty acid Free), 2.5 mM probenecid含有ハンクス平衡塩溶液)に加え、Fluo3-AMの終濃度を4μMとしたものを、Fluo3 loading bufferとした。
【0235】
1時間のインキュベートの後、100 μL のHanks-HEPES バッファーで3回洗った。次に同バッファーを100 μL加え、マイクロプレート蛍光分光光度計 (FLEX Station (Molecular Device社))中で37 ℃、15分インキュベートした。その後、同装置を用いて、DMSOを溶解した同バッファーまたは段階希釈法にて終濃度の5倍濃度で作製したS1Pまたは被験化合物 (終濃度0.1 nM、1 nM、10 nM、100 nM、1 μM、10 μM)を25 μL加え、カルシウム動員に基づくFluo3による蛍光を、励起波長485nm、検出波長525nmで検出、測定した。測定データに基づき、最大蛍光強度から最小蛍光強度を引いた値(蛍光増加量)を算出し、溶媒を添加したときの蛍光増加量とS1Pを10-6Mで作用させたときの蛍光増加量の差を100%として、被験化合物の蛍光増加率(%)を算出した。これを被験化合物の細胞内カルシウム動員誘導作用として、PRISMソフトウェア(GraphPad)を用いてEC50値を求めた。
【0236】
実施例1及び実施例2の化合物のEC50値は>10 μmol/Lであった。また実験例1の方法を用いてS1P1受容体のアンタゴニスト作用を評価した結果、実施例1及び実施例2の化合物のKd値は>1.0 μmol/Lであった。

<実験例3>盲腸穿孔結さつ敗血症モデル
【0237】
本モデルは腸内細菌の漏出に伴う多微生物性の腹部敗血症モデルとして広く用いられるものである。非特許文献9(D.Rittirsch et al.,Nature Protocols,4,31(2009))に記載の方法を参考にして行った。
【0238】
Wistar Rat ラット(日本チャールス・リバー 雄8W)を用いた。イソフルラン麻酔下でラットの腹部を切開し、盲腸を外に出した。盲腸を滅菌絹糸で結さつし、18G注射針を用いて盲腸先端部分に10箇所穴を開けた。処置後盲腸を体内に戻し、傷口を縫合した。さらに、生理食塩水を 30 mL/kg となるように皮下投与した。その後ラットをケージに戻し、3日間観察し、生存率を求めた。被験化合物は大腿静脈に留置したカニューレより0.1 mg/kg/hrとなるようにCLP処置後1時間後から持続投与した。
【0239】
実施例1の化合物の投与群は、媒体投与群に比べ生存曲線を右にシフトさせる統計学的に有意な作用(生存延長作用、Log-rank 検定 p<0.05)が認められた。また、媒体投与群では1日経過後までに全例が死亡したのに対し、実施例1の化合物の投与群では1日経過後で40%が生存しており、2日経過後でも12.5%が生存しており、生存率改善作用が認められた。本結果より、実施例1の化合物は敗血症に対し有効であることが示唆された。
【0240】
以上の結果から、本発明化合物はヒトS1P3受容体に対し優れたアンタゴニスト作用を示す一方、S1P1受容体に対するアンタゴニスト作用やアゴニスト作用は弱いか全く示さないことが明らかとなった。また、本発明化合物は、敗血症に対し優れた抑制効果を示すことも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0241】
本発明により優れたS1P3アンタゴニスト活性及びS1P3選択性をするジフェニルスルフィド誘導体の提供が可能となった。また、本発明のジフェニルスルフィド誘導体は、溶血性、組織障害性、中枢抑制作用が弱いかあるいは全く無いことから、医薬として安全に用いることができる。さらに、本発明のジフェニルスルフィド誘導体は、水溶液中で安定である。これらの優れた特性を有する本発明化合物は、気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症、敗血症、インフルエンザウイルス、RSウイルス感染に基づくサイトカインストーム、動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症または心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、ARDSなどの肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症、黄班変性症の予防又は治療薬として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式(1)中、Rは1〜3個のハロゲン原子で置換していてもよい炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6の低級アルコキシ基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜6のアルケニル基を示し、R10は炭素数1〜6のアシル基又はカルボキシル基を示し、Xはメチレン又は酸素原子を示し、Zはハロゲン原子を示す]
で表されるジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、一般式(1a)
【化2】

[式(1a)中、R、R10は前述の通り]
で表される請求項1記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物。
【請求項3】
前記一般式(1)で示される化合物が、
(S)−2−アミノ−4−{4−(2−カルボキシ−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)−2−クロロフェニル}−2−プロピルブチルリン酸モノエステル、
(S)−4−[4−(2−アセチル−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)− 2−クロロフェニル]−2−アミノ−2−プロピルブチルリン酸モノエステル、又は
(S)−3−アミノ−5−{4−(2−カルボキシ−5−トリフルオロメチルフェニルチオ)−2−クロロフェニル}−3−プロピルペンチルホスホン酸である請求項1記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物。
【請求項4】
請求項1〜3のうち何れか1つに記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物を有効成分とするスフィンゴシン−1−リン酸3(S1P3)レセプターアンタゴニスト作用に基づく医薬。
【請求項5】
気道収縮、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管狭窄症、びまん性汎細気管支炎、感染、結合組織病もしくは移植に伴う気管支炎、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、間質性肺炎、肺癌、過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎、肺線維症、敗血症、またはインフルエンザウイルスもしくはRSウイルス感染に基づくサイトカインストームの治療又は予防薬である請求項4記載の医薬。
【請求項6】
動脈硬化症、血管内膜肥厚、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、心不全、虚血性再灌流障害、くも膜下出血後の脳血管スパズム、冠血管スパズムを原因とする狭心症もしくは心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓症、肺浮腫を原因とする肺疾患、心不整脈、眼疾患、眼高血圧症、緑内障、緑内障性網膜症、視神経症または黄班変性症の治療又は予防薬である請求項4記載の医薬。
【請求項7】
敗血症の治療又は予防薬である請求項4記載の医薬。
【請求項8】
請求項1〜3のうち何れか1つに記載のジフェニルスルフィド誘導体若しくは薬理学的に許容されるその塩又はそれらの水和物及び薬学的に許容されうる担体を含有する医薬組成物。

【公開番号】特開2012−131725(P2012−131725A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284151(P2010−284151)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【Fターム(参考)】