説明

ジフェニルピリジン誘導体、その製造法および治療用途

本発明は、一般式(I)


(式中、R1はHまたは(C1−C4)アルキルであり、R2は窒素原子が(C1−C4)アルカノイルで置換された、5〜7原子のモノアゾ飽和複素環、NR10R11、(C1−C4)アルキルでトリ置換以上された非芳香族の(C3−C10)炭素環、非置換、または(C1−C4)アルキルでモノもしくはポリ置換された非芳香族の(C11−C12)炭素環、(C1−C4)アルキルでトリ以上置換された5〜7原子のモノ酸素系飽和複素環であるか、あるいはR1およびR2は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4−ジ置換ピペリジン−1−イル基を形成する)
の5,6−ジフェニルピリジン−3−カルボキサミド誘導体、その塩、溶媒和物および水和物に関する。本発明はさらに、その製造方法および治療用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5,6−ジフェニルピリジン−3−カルボキサミド誘導体、その製造法およびその治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
5,6−ジフェニル−2−ピリジン誘導体は、国際公開特許出願WO 92/02513号に記載されている。これらの化合物は、抗血栓作用、血管拡張作用および抗炎症作用を有すると示されている。
カンナビノイドCB1受容体のインバースアゴニストもしくはアンタゴニスト2,3−ジフェニルピリジン誘導体は、国際特許出願WO 2003/082191号に記載されている。
カンナビノイドCB1受容体アンタゴニスト特性を有する、新規な5,6−ジフェニル−3−ピリジンカルボキサミド誘導体が、ここに見出された。
【発明の開示】
【0003】
したがって、本発明の課題は、式:
【化1】

(式中:
− R1は、水素または(C1−C4)アルキルを表し;
− R2は:
・5〜7の原子を含み、窒素原子が(C1−C4)アルカノイル基で置換されている、飽和のモノ窒素系複素環式基;
・基NR10R11
・(C1−C4)アルキル基で3回より多く置換されている、非芳香族のC3−C10炭素環式基;
・置換されていないか、または(C1−C4)アルキル基で1回以上置換されている、非芳香族のC11−C12炭素環式基;
・5〜7の原子を含み、(C1−C4)アルキル基で3回より多く置換されている、飽和のモノ酸素系複素環式基を表すか;
【0004】
− または、R1およびR2 は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、フェニルもしくはベンジル基、および(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシ、シアノ、アミノカルボニル、(C1−C4)アルキルアミノカルボニル、ジ(C1−C4)アルキルアミノカルボニル、(C1−C3)アルカノイルもしくは(C1−C3)アルカノイルアミノ基で、4位がジ置換されているピペリジン−1−イル基を構成し;ピペリジン−1−イル基に置換している該フェニルもしくはベンジル基は、置換されていないか、あるいはハロゲン原子および/またはメチルおよび/またはトリフルオロメチル基で置換されている;
【0005】
− R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、互いに独立して、水素もしくはハロゲン原子、または(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシもしくはトリフルオロメチル基をそれぞれ表し;
− R9は水素原子、(C1−C4)アルキルもしくはシアノ基、またはCH2OH、CH2CNもしくはCH2O(C1−C4)アルキル基を表し;
− R10およびR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、可能ならばOおよびNから選択される第2のヘテロ原子を含む、7〜10の原子を含む、飽和もしくは不飽和の複素環式基を構成し、該基は置換されていないか、または(C1−C4)アルキル、ヒドロキシ、(C1−C4)アルコキシもしくはメトキシ(C1−C2)アルキレン基で1回以上置換されているか、あるいはスピロシクロブタン、スピロシクロペンタンもしくはスピロシクロヘキサンで置換されているか;
【0006】
− あるいは、R10およびR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、第2の窒素原子を含む、5または6の原子を含む、飽和もしくは不飽和の複素環式基を構成し、該基はメトキシ(C1−C2)アルキレン基で1回以上置換されているか、あるいはスピロシクロブタン、スピロシクロペンタンもしくはスピロシクロヘキサンで置換されているか;
【0007】
− あるいは、R10およびR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、可能ならば酸素原子を含む、5または6の原子を含む、飽和もしくは不飽和の複素環式基を構成し、該基は(C1−C4)アルキル、ヒドロキシ、(C1−C4)アルコキシもしくはメトキシ(C1−C2)アルキレン基で1回以上置換されているか、あるいはスピロシクロブタン、スピロシクロペンタンもしくはスピロシクロヘキサンで置換されている)
の化合物、およびその塩、溶媒和物ならびに水和物である。
【0008】
式(I)の化合物は、一つ以上の不斉炭素原子を含み得る。したがって、これらはエナンチオマーもしくはジアステレオアイソマーの形態で存在し得る。これらのエナンチオマーおよびジアステレオアイソマー、ならびにラセミ混合物を含むそれらの混合物も、本発明の一部である。
【0009】
式(I)の化合物は、塩基または酸付加塩の形態で存在し得る。
これらの塩は、医薬的に許容される塩で有利に製造されるが、例えば式(I)の化合物を精製または単離するためのその他の有用な酸の塩も本発明の一部である。
【0010】
式(I)の化合物のうち、
− R1が、水素または(C1−C4)アルキルを表し;
− R2が:
・5〜7の原子を含み、窒素原子が(C1−C4)アルカノイル基で置換されている、飽和のモノ窒素系複素環式基;
・基NR10R11
・置換されていないか、または(C1−C4)アルキル基で1回以上置換されている、非芳香族のC11−C12炭素環式基;
・5〜7の原子を含み、(C1−C4)アルキル基で3回より多く置換されている、飽和のモノ酸素系複素環式基を表すか;
【0011】
− または、R1およびR2が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、フェニルもしくはベンジル基、および(C1−C4)アルキルもしくは(C1−C4)アルカノイル基で、4位がジ置換されているピペリジン−1−イル基を構成し;ピペリジン−1−イル基に置換している該フェニルもしくはベンジル基は、置換されていないか、あるいはハロゲン原子および/またはメチル基で置換されている;
− R3、R4、R5、R6、R7およびR8が、互いに独立して、水素もしくはハロゲン原子、または(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシもしくはトリフルオロメチル基をそれぞれ表し;
− R9が水素原子、(C1−C4)アルキルもしくはシアノ基、またはCH2OHもしくはCH2O(C1−C4)アルキル基を表し;
【0012】
− R10およびR11が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、可能ならばOおよびNから選択される第2のヘテロ原子を含む、7〜10の原子を含む、飽和もしくは不飽和の複素環式基を構成し、該基は置換されていないか、または(C1−C4)アルキル、ヒドロキシ、(C1−C4)アルコキシもしくはメトキシ(C1−C2)アルキレン基で1回以上置換されているか、あるいはスピロシクロブタン、スピロシクロペンタンもしくはスピロシクロヘキサンで置換されているか;
【0013】
− あるいは、R10およびR11が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、第2の窒素原子を含む、5または6の原子を含む、飽和もしくは不飽和の複素環式基を構成し、該基はメトキシ(C1−C2)アルキレン基で1回以上置換されているか、あるいはスピロシクロブタン、スピロシクロペンタンもしくはスピロシクロヘキサンで置換されている;
【0014】
− あるいは、R10およびR11が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、可能ならば酸素原子を含む、5または6の原子を含む、飽和もしくは不飽和の複素環式基を構成し、該基は(C1−C4)アルキル、ヒドロキシ、(C1−C4)アルコキシもしくはメトキシ(C1−C2)アルキレン基で1回以上置換されているか、あるいはスピロシクロブタン、スピロシクロペンタンもしくはスピロシクロヘキサンで置換されている
化合物、およびその塩、溶媒和物ならびに水和物が極立っている。
【0015】
「アルキル」という用語は、特に:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシルもしくはイソヘキシルのような直鎖状もしくは分枝鎖状の基を意味し、(C1−C4)アルキルについてはメチル基が好ましく、(C3−C7)アルキルについてはtert−ブチル、2−メチル−2−ブチルおよび3,3−ジメチル−2−ブチル基が好ましい。
【0016】
「アルコキシ」基という用語は、直鎖状もしくは分枝鎖状の基を意味し、好ましくはメトキシ基である。
「ハロゲン原子」という用語は、フッ素、塩素、臭素もしくは沃素原子を意味し;好ましくはフッ素、塩素もしくは臭素原子である。
【0017】
非芳香族のC3−C12炭素環式基は、単環式または縮合もしくは架橋している多環式基を含む。単環式基は、シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを含み;シクロヘキシルおよびシクロペンチルが好ましい。
【0018】
縮合しているか、架橋しているか、またはスピロ基である2−もしくは3環式基は、例えばノルボルニル、ボルニル、イソボルニル、ノルアダマンチル、アダマンチル、スピロ[5.5]ウンデカニルおよびビシクロ[2.2.1]ヘプタニル基を含み;好ましくはアダマンチルである。
【0019】
「可能ならばOまたはNのような第2のヘテロ原子を含む、5〜10の原子を含む、飽和もしくは不飽和の複素環式基」という表現は、モルホリン−4−イル、ピペリジン−1−イル、ピペラジン−1−イル、ピロリジン−1−イル、3,6−ジヒドロピリジン−1−イルまたはオクタヒドロシクロペンタ[c]ピロール−2−イルのような基を意味し、ピペリジン−1−イルおよびモルホリン−4−イル基が好ましい。
【0020】
「5〜7の原子を含む、飽和のモノ窒素系複素環式基」という表現は、ピペリジン−4−イルまたはピロリジン−3−イルのような基を意味し、ピペラジン−4−イル基が好ましい。
「5〜7の原子を含む、飽和のモノ酸素系複素環式基」という表現は、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロ−2H−ピラニルもしくはオキセパニルのような基を意味し;テトラヒドロフラニルが好ましい。
【0021】
本発明によれば、式(I)
(式中:
− R1が水素を表し;
− R2が・基NR10R11
・置換されていないか、もしくはメチル基で1回以上置換されている、非芳香族のC11−C12炭素環式基を表すか;
− または、R1およびR2が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、フェニルもしくはベンジル基、および(C1−C4)アルキルもしくは(C1−C3)アルカノイル基で、4位がジ置換されているピペリジン−1−イル基を構成し;
【0022】
− そして/または、R3、R4、R5、R6、R7およびR8が、互いに独立して、水素もしくはハロゲン原子、あるいは(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシもしくはトリフルオロメチル基をそれぞれ表し;
− そして/または、R9が水素原子、またはメチル、メトキシメチレンもしくはシアノ基を表し;
【0023】
− R10およびR11が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、可能ならば酸素原子を含む、5〜10の原子を含む、飽和もしくは不飽和の複素環式基を構成し、該基は置換されていないか、またはメチル基で1回以上置換されている)
の化合物、その塩、溶媒和物ならびに水和物が好ましい。
【0024】
本発明の課題である化合物のうち、置換基について以下の意味によって定義される化合物が好ましいものとして挙げられ得る:
− R1が水素原子を表し;
− そして、R2が3−アミノ−2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン基を表すか;
− あるいは、R1およびR2が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4−アセチル−4−フェニルピペリジン−1−イル基を表し;
【0025】
− そして/または、置換基R3、R4およびR5のうちの少なくとも一つが、ハロゲン原子、好ましくは塩素もしくは臭素、あるいはメトキシ基を表し;
− そして/または、置換基R6、R7およびR8のうちの少なくとも一つが、ハロゲン原子、好ましくは塩素もしくは臭素を表し;
− そして/またはR9が、メチルもしくはメトキシメチル基を表す。
【0026】
特に、以下の化合物が好ましい:
1−(1−(6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)−2−メチルピリジン−3−イル)−4−フェニルピペリジン−4−イル)エタノン、
6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(メトキシメチル−N−(2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン−3−イル)ニコチンアミド、
5−(4−クロロフェニル)−6−(2,4−ジクロロフェニル)−2−メチル−N−(2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン−3−イル)ピリジン−3−カルボキサミド、
1−(1−(5−(4−ブロモフェニル)−6−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(メチルピリジン−3−イル)カルボニル)−4−フェニルピペリジン−4−イル)エタノン、
6−(4−ブロモフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)−2−メチル−N−(2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン−3−イル)ニコチンアミド。
【0027】
本発明の課題は、本発明による化合物の製造方法でもある。
この方法は、式:
【化2】

(式中、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、式(I)について定義されたとおりである)
の、5,6−ジフェニル−2−ピリジンカルボン酸の官能性誘導体を、式:
HNR1R2 (III)
(式中、R1およびR2は、式(I)について定義されたとおりである)
のアミンで処理することを特徴とする。このようにして得られる化合物は、任意に、その塩または溶媒和物に変換される。
【0028】
酸(II)の官能性誘導体としては、酸クロライド、酸無水物、混合酸無水物、アルキルが直鎖状もしくは分枝鎖状であるC1−C4アルキルエステル、活性化されたエステル、例えばp−ニトロフェニルエステル、または例えばN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、あるいは反応に際してベンゾトリアゾール−1−イルオキソトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)もしくはベンゾトリアゾール−1−イルオキソトリス(ピロリジノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)で活性化された遊離酸が用いられ得る。
【0029】
したがって、本発明による方法において、塩化チオニルを式(II)の酸と反応させることによって得られるピラゾール−3−カルボン酸クロライドを、塩素化溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、またはアミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)のような不活性溶媒中、不活性雰囲気下、0℃〜室温の間の温度で、トリエチルアミン、N−メチルモルホリンまたはピリジンのような第3級アミンの存在下に、アミンHNR1R2と反応させることができる。
【0030】
一つの変法は、トリエチルアミンのような塩基の存在下に、エチルクロロホルメートを式(II)の酸と反応させることによって、式(II)の酸の混合酸無水物を製造し、そしてそれをジクロロメタンのような溶媒中、不活性雰囲気下に、室温で、トリエチルアミンのような塩基の存在下に、アミンHNR1R2と反応させることからなる。
【0031】
式(II)の化合物は、置換基R9の意味に従って、種々の方法により製造され得る。
【0032】
スキーム1
【化3】

【0033】
THF:テトラヒドロフラン
LiHMDS:リチウム ヘキサメチルジシラジド
PTSA:パラ−トルエンスルホン酸
【0034】
スキーム1は、式(II)(式中、R9は(C1−C4)アルキルであり、より詳しくは、R9はMeである)の化合物の製造形態を説明する。
工程a1)は、THFのような無水溶媒中で行われ;低温(−78℃)で開始し、その後温度は室温(AT)に戻される。
【0035】
工程b1)は、無水酢酸の存在下に、AT〜100℃の間の温度で行われる。
工程c1)は、n−ブタノールのようなアルコール性溶媒中、パラ−トルエンスルホン酸のような触媒の存在下に、溶媒の還流温度に6時間加熱して行われる。
工程d1)において、エステルは、水性の塩基性媒体中、エタノールのような溶媒中で加熱することによって加水分解される。
【0036】
スキーム2
【化4】

【0037】
R9が水素原子である、式(II)の化合物を製造するために、式(VIII)のエステルは、水性媒体中のピリジン中で、酸化セレンのような酸化剤で処理され、次いで生成するジ酸は高温条件下にシリカで処理される。
【0038】
スキーム3
【化5】

【0039】
【化6】

Alk:(C1−C4)アルキル
NBS:N−ブロモスクシンイミド
【0040】
式(II)(式中、R9はシアノ、アルコキシメチレンまたはシアノメチル基を表す)の化合物は、式(VIII)のエステルから製造される。第1工程a3)において、メチルである基R9は、高温条件下で、CCl4のような溶媒中、UV照射の存在下に、N−ブロモスクシンイミドを作用させることによって、1もしくは2の臭素原子で置換されて、モノブロム化された誘導体(X)およびジブロム化された誘導体(XI)を与える。
【0041】
工程e3)において、モノブロム化された誘導体(X)は、アルコール中のナトリウムアルコキシド、例えばメタノール中のナトリウムメトキシドで処理され、次いで、高温条件下に、塩基性媒体中で鹸化されて、式(II)(式中、R9はアルコキシメチレン基である)の酸を与える。
【0042】
工程f3)において、モノブロム化された誘導体(X)は、クロロホルムのような溶媒中、テトラメチルアンモニウムシアナイドで処理され、次いで、緩和な条件下に、例えばTHF/水混液中のLiOHで鹸化されて、式(II)(式中、R9はシアノメチル基である)の酸を与える。
【0043】
ジブロム化された誘導体(XI)は、水性THF中、硝酸銀で処理されて、アルデヒド(XII)を生成し、次いで、これがギ酸中、ヒドロキシルアミン塩酸塩で処理されて、ニトリル誘導体(XIII)を与える。エステル(XIII)は、塩基性媒体中、緩和な条件下に、好ましくはLiOHで処理されて、式(II)(式中、R9はシアノ基である)の酸を与える。
【0044】
式(II)(式中、R9はCH2OHである)の化合物を製造するために、モノブロム化された誘導体(X)は、以下のスキームに従って、THF/水混液中、水酸化ナトリウムと還流することによって処理される。
【0045】
スキーム4
【化7】

【0046】
式(II)(式中、R3はCH2OCH3である)の化合物は、以下のスキームに従って、工程c1における適当な試剤を用いて、スキーム1に記載の方法によっても製造され得る。
【0047】
スキーム5
【化8】

試剤(XIV)は、以下の反応スキームに従って得られる。
【0048】
スキーム6
【化9】

【0049】
5,6−ジフェニル−3−ピリジンカルボン酸は、一般に知られており;6−(4−クロロフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)−2−メチルピリジン−3−カルボン酸および5,6−ビス−(4−メトキシフェニル)ピリジン−3−カルボン酸、ならびにこれらのエチルエステルは、国際特許出願WO 2002/055502に記載されている。
アミンHNR1R2は公知であるか、またはChem. Ber., 1986, 119, 1413−1423に記載のような公知の方法によって得られる。
【0050】
以下の略語が、本明細書において用いられる:
DCM: ジクロロメタン
LDA: リチウム ジイソプロピルアミド
THF: テトラヒドロフラン
TFA: トリフルオロ酢酸
AIBN: アゾビス(イソブチロニトリル)
【0051】
TMSiCl: トリメチルクロロシラン
Et2Oまたはエーテル: エチルエーテル
EtOAc: 酢酸エチル
Ac2O: 無水酢酸
NBuOH: n−ブタノール
【0052】
PTSA: パラ−トルエンスルホン酸
LiHMDS: リチウム ヘキサメチルジシラジド
KHSO4/K2SO4: 水(1リットル)中のKHSO4(0.5 mol)/K2SO4(0.19 mol)
TEA: トリエチルアミン
BOP: ベンゾトリアゾール−1−イルオキソトリス(ジメチルアミノ) ホス ホニウム ヘキサフルオロホスフェート
【0053】
PyBOP: ベンゾトリアゾール−1−イルオキソトリス(ピロリジノ)ホスホニ ウム ヘキサフルオロホスフェート
NBS: N−ブロモスクシンイミド
AT: 室温
Mp: 融点
【0054】
本発明による化合物は、LC/UV/MSカップリング(液体クロマトグラフィー/UV検出/質量分析)によって分析される。分子ピーク(M+)および保持時間(t)(分)が測定される。
Watersによって販売されているSymmetry C18カラム(2.1 × 50 mm, 3.5 μm)が、室温で流速0.4 ml/分で用いられる。
【0055】
溶離液は以下の組成を有する:
− 溶媒A:水中0.005%のトリフルオロ酢酸(TFA)
− 溶媒B:アセトニトリル中0.005%のTFA
グラジエント:溶媒Bのパーセンテージは、10分間に0〜90%になり、B90%で5分間横ばいである。
【0056】
UV検出は210 nm ± 8 nmで行われ、質量検出は大気圧下で、ポジティブイオン化モードで行われる。
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、d6−DMSO中、200 MHzで記録される。スペクトルの分析のために、次の略語が用いられる:s :シングレット;d :ダブレット;bs:幅広いシングレット;dd:ダブルダブレット;mt:マルチプレット。
【0057】
製造例 1
5−(2,4−ジクロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−2−メチル−ピリジン−3−カルボン酸
A) 1−(4−クロロフェニル)−2−(2,4−ジクロロフェニル)エタノン
LiHMDS(32 g)を、0℃でTHF(245 ml)中に入れ、(4−クロロフェニル)((トリメチルシリル)オキシ)アセトニトリル(40 g)を、−78℃でゆっくり加え、次いで2,4−ジクロロ−1−(クロロメチル)ベンゼン(32.64 g)を加える。温度をATに一夜で戻し、次いで反応物を3N HCl溶液(170 ml)で加水分解し、ガスを4N KOH溶液中で捕捉する。沈殿による分離の後、有機相を蒸発させ、次いでDCM中に採取し、2N NaOH(170 ml)で1時間撹拌する。DCMを蒸発させ、次いで所期の化合物をペンタンから結晶化して、38.6 gを得る。Mp = 119℃
【0058】
B) 1−(4−クロロフェニル)−2−(2,4−ジクロロフェニル)プロペン−2−エン−1−オン
前工程からの化合物(10 g)、N,N,N,N−テトラメチルメタンジアミン(17 ml)および無水酢酸(17 ml)をATで混合する;この混合物を90℃で3時間加熱し、次いでATに戻す。混合物を砕いた氷中に注ぎ、次いでろ過する。固体を真空下で乾燥する。所期の化合物(10 g)を得る。Mp = 89℃
【0059】
C) 5−(2,4−ジクロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−2−メチルピリジン−3−カルボン酸エチルエステル
前工程からの化合物(7 g)、エチル3−アミノ−2−ブテノエート(2.62 g)およびパラ−トルエンスルホン酸(140 mg)を含む混合物を、n−ブタノール(60 ml)中で調製し、次いで溶媒の還流温度で24時間加熱する。溶媒の3/4を留去し、次いでペンタン(80 ml)を0℃で加える。生成した沈殿物をろ去し、ろ液を濃縮する。残渣を、シクロヘキサン/EtOAc(90/10; v/v)混液で溶出するシリカクロマトグラフィにかけて、所期の化合物(7 g)を得る。Mp = 114℃
【0060】
D) 5−(2,4−ジクロロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−2−メチルピリジン−3−カルボン酸
前工程で得られたエステル(6 g)をEtOH(300 ml)中に入れ、水酸化カリウム(8 g)を加える。数分間撹拌した後、水(5 ml)を加え、混合物を19時間還流する。反応媒体を濃縮し、生成物をEt2Oおよび水で採取する。水相を、10%HClで酸性にしてpH = 1とし、次いでDCMで抽出し、Na2SO4で乾燥する。ヘプタンで洗浄して、所期の化合物(5.4 g)を得る。
NMR: 2.83 ppm: s: 3H; 7.2−7.6 ppm: 未解析ピーク: 5H; 7.68 ppm: s: 1H; 8.11 ppm: s: 1H; 13.2−13.7 ppm: bs: 1H
【0061】
製造例 2
6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)ピリジン−3−カルボン酸
A) 6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)ピリジン−2,3−ジカルボン酸
製造例1で得られた酸(2 g)をピリジン(7.2 ml)および水(0.8 ml)中に入れ、二酸化セレン(1.44 g)を加え、次いで混合物を3日間還流する。得られた溶液をろ過し、次いで酢酸で洗浄する。溶媒を蒸発させた後、砕いた氷を加え、撹拌を2時間維持する。生成した固体をろ取し、エーテルで洗浄し、次いでオーブン中で乾燥する。ろ液を濃縮し、次いで、DCMで溶出するシリカを通してろ過する。所期の化合物を、以下の工程においてそのまま反応させる。
【0062】
B) 6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)ピリジン−3−カルボン酸
前工程で得られた物質を、最小量のDCM中に溶解し、シリカ(25 g)に含浸させる。溶媒を蒸発させた後、シリカを120℃で8時間加熱する。生成した物質をDCM+EtOH、次いで純粋なEtOHで抽出する。溶媒を蒸発させた後、CHCl3、次いでCHCl3/MeOH/AcOH(95/3/1.5; v/v/v)で溶出するシリカクロマトグラフィを行って、所期の化合物(544 mg)を得る。
NMR: 5.76 ppm: s: 1H; 7.2−7.6 ppm: 未解析ピーク: 5H; 7.69 ppm: s: 1H; 8.19 ppm: s: 1H; 9.22 ppm: s: 1H; 13.2−13.9 ppm: bs: 1H
【0063】
製造例3
6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)−2−メトキシメチルピリジン−3−カルボン酸
A) 2−ブロモメチル−6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)ピリジン−3−カルボン酸エチルエステル
製造例1の工程Cで得られたエステル(3.8 g)を、CCl4(39 ml)中にNBS(7.07 g)と共に入れ、AIBN(10 mg)を加える。混合物を24時間還流し、次いで、UV照射とともに加熱を8時間維持する。冷却後、反応媒体をろ過し、ろ液を、DCMで溶出するシリカクロマトグラフィにかけて;2,2−ジブロモメチル−6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)ピリジン−3−カルボン酸エチルエステル(3.1 g)、および2−ブロモメチル−6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)ピリジン−3−カルボン酸エチルエステル(1 g)を得る。
【0064】
B) 6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)−2−メトキシメチルピリジン−3−カルボン酸エチルエステル
前工程において得られた、モノブロム化された化合物(1 g)を、MeOH(30 ml)中に入れ、次いでナトリウムメタノレート(0.13 g)を加え、混合物を24時間還流する。反応媒体を、10%HCl溶液で加水分解し、次いで溶媒を蒸発させ、生成物をEtOAcで採取し、水洗する。MgSO4で乾燥し、生成物を濃縮し、次いでシクロヘキサン/EtOAc (90/10; v/v)混液で溶出するシリカクロマトグラフィにかけて、所期のエステル(840 mg)を得る。
【0065】
C) 6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)−2−メトキシメチルピリジン−3−カルボン酸
前工程において得られたエステル(800 mg)を、EtOH(37 ml)中に入れ、KOH(1.02 g)を加え、次いで混合物を撹拌下にATで1時間放置し、水(600 μl)を加える。混合物を6時間還流し、次いでエタノールを蒸発させる。生成物をEt2O/水混液で採取し、次いで静置によって分離する。水相を1N HClを加えることによってpH = 2の酸性にして、所期の酸(890 mg)を得る。
NMR: 3.36 ppm: s: 3H; 4.86 ppm: s: 2H; 7.2−7.4 ppm: 未解析ピーク: 4H; 7.48 ppm: s: 1H; 7.68: s: 1H; 8.08 ppm: s: 1H; 13.0−13.8: bs: 1H
【0066】
製造例 3a
6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)−2−メトキシメチルピリジン−3−カルボン酸
この化合物は、次の手順に従って得ることもできる。
A) エチル 4−メトキシ−3−オキソブタノエート
水酸化ナトリウム(14 g)を、窒素下に、DMF (200 ml)中に導入し、混合物を0℃に冷却し、DMF(100 ml)中のメタノール(6 ml)を滴下し、混合物を撹拌しながら、0℃で1時間、次いでATで1時間放置する。DMF(100 ml)中の4−クロロ−3−オキソブタノエート(17.32 g)を0℃で加え、混合物を撹拌しながら一夜放置する。反応媒体を0℃で水中に注ぎ、次いで混合物をDCMで抽出し、水で3回、次いでNaCl飽和溶液で3回洗浄する。水相を採取し、pH > 4の酸性にし、次いでDCMで抽出し、水で3回洗浄し、次いでNaCl飽和溶液で洗浄する。生成物を乾燥し、次いで濃縮乾固する。生成物を、シクロヘキサン/EtOAc(80/20; v/v)で溶出するCelite(商標)クロマトグラフィにかけて、所期の化合物(3.90 g)を液体の形態で得る。
【0067】
B) エチル 3−アミノ−4−メトキシブト−2−エノエート
シクロヘキサン(50 ml)中の、分子篩(3 Å)、前工程において得られた化合物(3.9 g)、および新たに精製した酢酸アンモニウム(4 g)を窒素下に置き、80℃で1時間30分、次いでATで一夜加熱する。混合物をろ過し、ろ液をCHCl3で漱いで、所期の化合物(2.4 g)を得る。
【0068】
C) 6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)−2−メトキシメチルピリジン−3−カルボン酸エチルエステル
製造例1の工程Bの化合物(4.7 g)を、n−ブタノール(25 ml)中に加熱溶解し;n−ブタノール(5 ml)中の前工程で得られた化合物(2.29 g)、次いでPTSA(0.25 g)を加え、混合物を19時間還流する。反応媒体を冷却下に、Et2O中でトリチュレートする。不溶物をろ去し、有機相を濃縮し、次いで生成物を、シクロヘキサン/EtOAc (95/5; v/v)で溶出するシリカクロマトグラフィにかけて、所期の化合物(3.4 g)を得る。
【0069】
G) 6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)−2−メトキシメチルピリジン−3−カルボン酸
この化合物を、上記の製造例3の工程C)に記載のようにして得る。
以下の表における式(II)の中間体化合物も、上記の製造例に記載の手順によって製造された。
【0070】
表1
【化10】

【0071】
【表1】

【0072】
実施例1:化合物 3
1−(1−(6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)−2−メチルピリジン−3−イル)−4−フェニルピペリジン−4−イル)エタノン
製造例1で得られた酸(62.7 mg)、および1−フェニル−1−ピペリジン−4−イルアセトン(38.6 mg)を、DCM(2 ml)およびトリエチルアミン(67.5 ml)中に溶解する。次いで、PyBOP(104 mg)を加え、反応物を撹拌しながらATで2時間放置する。溶媒を蒸発させた後、粗生成物を次の溶出グラジエント:純粋なジクロロメタン、次いでジクロロメタン/メタノール (99/1; v/v)で溶出するシリカクロマトグラフィにかけて、所期の化合物(52 mg)を得る。
【0073】
実施例2:化合物 10
6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(メトキシメチル−N−(2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン−3−イル)ニコチンアミド
製造例3において得られた酸(0.42 g)をDCM(2 ml)中に入れ、(2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン−3−イル)アミン(0.34 g)、TEA(0.30 g)およびPyBOP(0.60 g)を加え、混合物を撹拌しながら、窒素下に一夜放置する。KHSO4/K2SO4の溶液を加え、混合物を激しく撹拌し、次いでDCMで抽出する。有機相をNaHCO3飽和溶液で洗浄し、次いで水洗する。生成物を乾燥し、濃縮し、次いで残渣をシクロヘキサン/EtOAc (3/1; v/v)で溶出するシリカクロマトグラフィにかけて、所期の化合物(0.54 g) を得る。Mp = 67−69℃
【0074】
以下の表は、本発明による化合物のいくつかの例の化学構造および物性を説明する。
この表におけるMe、Et、nPr、tBuおよびnPnは、メチル、エチル、n−プロピル、tert−ブチルおよびn−ペンチル基をそれぞれ表す。
【0075】
表2
【化11】

【0076】
【表2−1】

【0077】
【表2−2】

【0078】
【表2−3】

【0079】
本発明による化合物を、これらのカンナビノイドCB1受容体アンタゴニスト効果を測定するための薬理試験の対象とした。
式(I)の化合物は、M. Rinaldi−Carmonaら(FEBS Letters, 1994, 350, 240−244)により記載された試験条件下で、カンナビノイドCB1受容体に対して、in vitroで非常に良好な親和性(5 nM〜1000 nMの間のIC50)を有する。
【0080】
式(I)の化合物のアンタゴニスト性は、M. Rinaldi−Carmonaら(J. Pharmacol. Exp. Therap., 1996, 278, 871−878)、およびM. Bouaboulaら(J. Biol. Chem., 1997, 272, 22330−22339)に記載の、アデニレートシクラーゼ阻害モデルで得られた結果によって実証された。
【0081】
Rinaldi−Carmonaら(J. Pharmacol. Exp. Therap., 1998, 284, 644−650)により記載された試験条件に従って、本発明の化合物をマウスに静脈および/または経口投与し、in vivo (ex vivo結合)で、本発明による化合物を試験した。
式(I)の化合物の毒性は、医薬物質としてのこれらの使用と矛盾しない。
【0082】
本発明のもう一つの観点によれば、本発明は、カンナビノイドCB1受容体が関わる疾患の治療もしくは予防を意図した医薬を製造するための、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物の一つの使用に関する。
【0083】
例えば、非限定的な意味で、式(I)の化合物は向精神性医薬として、特に不安症、鬱病、気分障害、不眠症、精神錯乱を含む障害、強迫障害、一般的な精神病、精神分裂症、特に多動児(MBD)における注意欠陥多動性障害(ADHD)を含む精神障害の治療、ならびに向精神薬の使用に関連する障害、特に薬物乱用、および/またはアルコール中毒およびニコチン中毒を含む薬物中毒の場合の治療にも有用である。
【0084】
本発明による式(I)の化合物は、偏頭痛、ストレス、心因性疾患、恐慌発作、癲癇、運動障害、特にディスキネジーまたはパーキンソン病、振せんおよびジストニーの治療用医薬として用いられ得る。
【0085】
本発明による式(I)の化合物は、記憶障害、認知障害の治療、特に老人性痴呆症およびアルツハイマー病の治療、ならびに注意力障害もしくは覚性障害の治療にも用いられ得る。
【0086】
さらに、式(I)の化合物は、神経保護剤として、虚血および頭蓋損傷の治療、ならびに舞踏病、ハンチントン舞踏病およびトーレット症候群を含む神経変性疾患の治療に有用であり得る。
【0087】
本発明による式(I)の化合物は、疼痛:神経障害性疼痛、急性末梢性疼痛、炎症による慢性疼痛の治療において、医薬として用いられ得る。
【0088】
本発明による式(I)の化合物は、食欲障害、(砂糖、炭水化物、薬物、アルコールまたはいずれかの食欲を誘う物質への)渇望および/または摂食障害の治療において、医薬、特に食欲抑制剤として有用であり得るか、または肥満病もしくは過食症の治療、ならびにII型糖尿病もしくはインスリン非依存性糖尿病の治療、およびディスピデミア(dyslipidaemia)、代謝症候群の治療にも有用であり得る。
【0089】
さらに、本発明による式(I)の化合物は、医薬として、胃腸障害、下痢症、潰瘍、嘔吐、膀胱および尿路障害、内分泌に起因する障害、心臓血管障害、低血圧、出血性ショック、敗血性ショック、慢性肝硬変、喘息、慢性気管支炎および慢性閉鎖性気管支呼吸炎、レイノー症候群、緑内障、不妊症、炎症性症状、免疫系疾患、特に自己免疫、ならびにリウマチ関節炎のような神経炎症性疾患、反応性関節炎、脱髄をもたらす疾患、多発性硬化、脳炎のような感染症およびウイルス病、ならびに脳卒中の治療に医薬として用いられ、抗癌性化学療法およびギランバレー症候群の治療にも医薬として用いられ得る。
【0090】
本発明によれば、式(I)の化合物は、特に精神障害、特に精神分裂症、特に多動児(MBD)における注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療;食欲障害および肥満病の治療、記憶および認知障害の治療;アルコール中毒またはニコチン中毒の治療、つまりアルコールの禁断およびタバコの禁断;ディスピデミア、代謝症候群の治療に最も有用である。
【0091】
本発明の一つの観点によれば、本発明は、上記の障害および疾患を治療するための、式(I)の化合物、その医薬的に許容される塩、およびその溶媒和物もしくは水和物の使用に関する。
【0092】
本発明による式(I)の化合物は、上記の疾患の予防および/または治療に有用である、一つ以上のその他の活性成分と組み合わせて用いることもできる:式(I)の化合物と組み合わせられ得る活性成分の一例として、抗精神病薬、不安緩解剤、記憶増進剤、抗パーキンソン病薬、抗癲癇薬、食欲抑制剤もしくはその他の抗肥満薬、ニコチン性アゴニスト、モノアミン酸化酵素阻害剤、鎮痛剤、抗炎症薬、AT1アンジオテンシンII受容体アンタゴニストのような抗高血圧薬、変換酵素阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、ベータ−遮断剤、抗糖尿病剤、血中脂質低下剤、血中コレステロール低下剤、PPAR(ペロキシソーム増殖剤活性化受容体)アゴニストが挙げられ得る。
【0093】
本発明による化合物は、一般に、単位用量として投与される。
該単位用量は、好ましくは、活性成分が医薬賦形剤と混合される医薬組成物に製剤化される。
【0094】
したがって、本発明のもう一つの観点によれば、本発明は、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩、もしくはその溶媒和物を活性成分として含む医薬組成物に関する。
【0095】
上記の式(I)の化合物、およびその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物は、処置される哺乳動物の体重1 kgあたり0.01〜100 mgの1日用量、好ましくは0.02〜50 mg/kgの1日用量で用いられ得る。ヒトにおいて、用量は、治療対象者の年齢、または処置の種類、すなわち予防もしくは治療によって、好ましくは1日当たり0.05〜4000 mg、より詳しくは1日当たり0.1〜1000 mgの範囲であり得る。これらの投与量は、通常の場合の例であり、より多いか、またはより少ない用量が適当な特別な場合があり得る。そのような用量も、本発明に属する。
【0096】
慣行によって、各患者にとって適当な用量は、投与方法、ならびに患者の年齢、体重および応答に従って、医師により決定される。
経口、舌下、吸入、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局部もしくは直腸投与用の本発明の医薬組成物において、活性成分は、通常の医薬担体との混合物として、単位投与形態で、動物およびヒトに投与され得る。
【0097】
好適な単位投与形態は、錠剤、ゲルカプセル剤、粉末、顆粒および経口溶液もしくは懸濁液、舌下および口腔内投与形態、エアゾール、局所投与形態、インプラント、皮下、筋肉内、静脈内、鼻腔内もしくは眼内投与の形態、および直腸投与の形態を含む。
【0098】
本発明の医薬組成物において、活性成分は一般に、1日投与用の単位用量当たり、該活性成分を0.05〜1000 mg、有利には0.1〜500 mg、好ましくは1〜200 mg含む単位用量で製剤化される。
一例として、錠剤の形態にある本発明による化合物の単位投与形態は、以下の成分を含み得る:
【0099】
本発明による化合物: 50.0 mg
マンニトール: 223.75 mg
クロスカルメロースナトリウム: 6.0 mg
とうもろこし澱粉: 15.0 mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース: 2.25 mg
ステアリン酸マグネシウム: 3.0 mg
【0100】
経口投与されるとき、1日当たり投与される活性成分の用量は、1つ以上の用量で投与されるとき、0.01〜100 mg/kg、好ましくは0.02〜50 mg/kgに達し得る。
より多いか、またはより少ない用量が適当な特別な場合があり得る;そのような用量は、本発明の範囲外ではない。
【0101】
慣行によって、各患者にとって適当な用量は、投与方法、ならびに患者の体重および応答に従って、医師により決定される。
もう一つの観点によれば、本発明は、本発明による化合物、または該化合物の医薬的に許容される塩、または水和物もしくは溶媒和物の有効量を患者に投与することを含む、上記の疾患の治療方法にも関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式中:
− R1は、水素または(C1−C4)アルキルを表し;
− R2は:
・5〜7の原子を含み、窒素原子がアルカノイル基で置換されている、飽和のモノ窒素系複素環式基;
・基NR10R11
・(C1−C4)アルキル基で3回より多く置換されている、非芳香族のC3−C10炭素環式基;
・置換されていないか、または(C1−C4)アルキル基で1回以上置換されている、非芳香族のC11−C12炭素環式基;
・5〜7の原子を含み、(C1−C4)アルキル基で3回より多く置換されている、飽和のモノ酸素系複素環式基を表すか;
− または、R1およびR2 は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、フェニルもしくはベンジル基、および(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシ、シアノ、アミノカルボニル、(C1−C4)アルキルアミノカルボニル、ジ(C1−C4)アルキルアミノカルボニル、(C1−C3)アルカノイルもしくは(C1−C3)アルカノイルアミノ基で、4位がジ置換されているピペリジン−1−イル基を構成し;ピペリジン−1−イル基に置換している該フェニルもしくはベンジル基は、置換されていないか、あるいはハロゲン原子および/またはメチルおよび/またはトリフルオロメチル基で置換されている;
− R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、互いに独立して、水素もしくはハロゲン原子、または(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシもしくはトリフルオロメチル基をそれぞれ表し;
− R9は水素原子、(C1−C4)アルキルもしくはシアノ基、またはCH2OH、CH2CNもしくはCH2O(C1−C4)アルキル基を表し;
− R10およびR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、可能ならばOおよびNから選択される第2のヘテロ原子を含む、7〜10の原子を含む、飽和もしくは不飽和の複素環式基を構成し、該基は置換されていないか、または(C1−C4)アルキル、ヒドロキシ、(C1−C4)アルコキシもしくはメトキシ(C1−C2)アルキレン基で1回以上置換されているか、あるいはスピロシクロブタン、スピロシクロペンタンもしくはスピロシクロヘキサンで置換されているか;
− あるいは、R10およびR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、第2の窒素原子を含む、5または6の原子を含む、飽和もしくは不飽和の複素環式基を構成し、該基はメトキシ(C1−C2)アルキレン基で1回以上置換されているか、あるいはスピロシクロブタン、スピロシクロペンタンもしくはスピロシクロヘキサンで置換されているか;
− あるいは、R10およびR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、可能ならば酸素原子を含む、5または6の原子を含む、飽和もしくは不飽和の複素環式基を構成し、該基は(C1−C4)アルキル、ヒドロキシ、(C1−C4)アルコキシもしくはメトキシ(C1−C2)アルキレン基で1回以上置換されているか、あるいはスピロシクロブタン、スピロシクロペンタンもしくはスピロシクロヘキサンで置換されている)
の、塩基または酸付加塩の形態、および水和物または溶媒和物の形態にある化合物。
【請求項2】
− R1が水素を表し;
− R2が:・基NR10R11
・置換されていないか、もしくはメチル基で1回以上置換されている、非芳香族のC11−C12炭素環式基を表すか;
− または、R1およびR2が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、フェニルもしくはベンジル基、および(C1−C4)アルキルもしくは(C1−C3)アルカノイル基で、4位がジ置換されているピペリジン−1−イル基を構成し;
− そして/または、R3、R4、R5、R6、R7およびR8が、互いに独立して、水素もしくはハロゲン原子、あるいは(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシもしくはトリフルオロメチル基をそれぞれ表し;
− そして/または、R9が水素原子、またはメチル、メトキシメチレンもしくはシアノ基を表し;
− R10およびR11が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、可能ならば酸素原子を含む、5〜10の原子を含む、飽和もしくは不飽和の複素環式基を構成し、該基は置換されていないか、またはメチル基で1回以上置換されている
ことを特徴とする、塩基または酸付加塩の形態、および水和物または溶媒和物の形態にある、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
− R1が水素原子を表し;
− そして、R2が3−アミノ−2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン基を表すか;
− あるいは、R1およびR2が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4−アセチル−4−フェニルピペリジン−1−イル基を表し;
− そして/または、置換基R3、R4およびR5のうちの少なくとも一つが、塩素もしくは臭素原子、あるいはメトキシ基を表し;
− そして/または、置換基R6、R7およびR8のうちの少なくとも一つが、塩素もしくは臭素原子を表し;
− そして/または、R9がメチルもしくはメトキシメチル基を表すことを特徴とする、塩基または酸付加塩の形態、および水和物または溶媒和物の形態にある、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
− 1−(1−(6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)−2−メチルピリジン−3−イル)−4−フェニルピペリジン−4−イル)エタノン、
− 6−(4−クロロフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(メトキシメチル−N−(2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン−3−イル)ニコチンアミド、
− 5−(4−クロロフェニル)−6−(2,4−ジクロロフェニル)−2−メチル−N−(2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン−3−イル)ピリジン−3−カルボキサミド、
− 1−(1−(5−(4−ブロモフェニル)−6−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(メチルピリジン−3−イル)カルボニル)−4−フェニルピペリジン−4−イル)エタノン、
− 6−(4−ブロモフェニル)−5−(2,4−ジクロロフェニル)−2−メチル−N−(2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン−3−イル)ニコチンアミド
から選択される、塩基または酸付加塩の形態、および水和物または溶媒和物の形態にある、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
式:
【化2】

(式中、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、請求項1において式(I)について定義されたとおりである)
の、5,6−ジフェニル−3−ピリジンカルボン酸の官能性誘導体を、式
HNR1R2 (III)
(式中、R1およびR2は、請求項1において式(I)について定義されたとおりである)
のアミンで処理することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の式(I)の化合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の式(I)の化合物、または該化合物の医薬的に許容される酸との付加塩、または水和物もしくは溶媒和物を含むことを特徴とする医薬物質。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の式(I)の化合物、または該化合物の医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物、および少なくとも一つの医薬的に許容される賦形剤を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
摂食障害、胃腸障害、炎症性症状、免疫系疾患、精神異常、アルコール中毒またはニコチン中毒の治療を意図した医薬物質を製造するための、請求項1〜4のいずれか一つに記載の式(I)の化合物の使用。

【公表番号】特表2007−514638(P2007−514638A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516318(P2006−516318)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001581
【国際公開番号】WO2005/000817
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】