説明

ジフェニル置換シクロアルカン類、そのような化合物を含む組成物、ならびに使用方法

本発明は、5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質阻害薬である式(I)の化合物を提供する。式(I)の化合物は、抗アテローム性動脈硬化剤、抗喘息剤、抗アレルギー剤、抗炎症剤および細胞保護剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)を阻害する化合物、そのような化合物を含む組成物、ならびにアテローム性動脈硬化および関連する疾患および状態の治療および予防においてそのような化合物を用いる治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロイコトリエン生合成の阻害は、長年にわたって活発に行われてきた製薬上の研究分野であった。ロイコトリエンは、5−リポキシゲナーゼによるアラキドン酸の酸素化によって誘導される強力な収縮介在物質および炎症介在物質である。
【0003】
ロイコトリエン生合成阻害薬の一つの種類として、5−リポキシゲナーゼ(5−LO)の阻害によって作用することが知られているものがある。一般に5−LO阻害薬は、アレルギー性鼻炎、喘息および関節炎などの炎症状態の治療について研究されてきた。5−LO阻害薬の1例は、喘息の治療を適応とする市販されている薬剤ジレウトンである。さらに最近では、5−LOが、アテローム発生プロセスに重要な寄与をしている可能性があることが報告されている(Mehrabian, M. et al., Circulation Research, 2002 Jul 26,91 (2): 120-126参照)。
【0004】
5−LO阻害薬と異なる新たな種類のロイコトリエン生合成阻害薬(現在、FLAP阻害薬と称される)が、ミラーらの報告(Miller, D. K. et al., Nature, vol. 343, No. 6255, pp. 278-281, 18 Jan 1990)に記載されている。これらの化合物は、細胞ロイコトリエン類の形成を阻害するが、可溶性5−LO活性に対しては直接の効果を持たない。これらの化合物を用いて、内側核膜18000ダルトンタンパク質5−リポキシゲナーゼ−活性化タンパク質(FLAP)が同定および単離された。細胞では、細胞質内ホスホリパーゼ2の作用によって、アラキドン酸が膜リン脂質から放出される。そのアラキドン酸は、FLAPによって核膜に結合した5−リポキシゲナーゼに送られる。ロイコトリエン類の合成には、細胞でのFLAPの存在が必須である。さらに、ヘルガドッチルらの報告(Helgadottir, A. , et al., Nature Genetics, vol 36, no. 3 (March 2004) 233-239)に記載の試験に基づいて、5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質をコードする遺伝子によって、ヒトでの心筋梗塞および卒中のリスクが生じるものと考えられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HMG−CoAレダクターゼ阻害薬によって達成された改善のように、アテローム性動脈硬化およびその結果として起こるアテローム性動脈硬化疾患事象の治療および予防においてはかなりの治療上の進歩があったが、さらなる治療選択肢が必要とされていることは明らかである。本発明は、アテローム性動脈硬化ならびに関連する状態の治療または予防のための化合物、組成物および方法を提供することによって、そのニーズに応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、FLAP阻害薬である式Iの化合物、それの製造方法、ならびに哺乳動物、特にヒトにおいてその化合物を使用する方法および医薬製剤に関するものである。本発明は、下記構造式Iの化合物:
【0007】
【化14】

ならびにその化合物の製薬上許容される塩、エステルおよび溶媒和物を提供する。本発明には、アテローム形成を遅延または停止させる上での本明細書に記載の化合物の使用も関与する。従って、本発明の一つの目的は、アテローム性動脈硬化疾患が臨床的に明らかになった時にその疾患の進行を停止または遅延することを含むアテローム性動脈硬化の治療方法であって、そのような処置を必要とする患者に対して、治療上有効量の式Iの化合物を投与する段階を有する方法を提供することにある。別の目的は、アテローム性動脈硬化およびアテローム性動脈硬化疾患事象の発症を予防またはリスク低下させる方法であって、アテローム性動脈硬化発症リスクのある患者またはアテローム性動脈硬化疾患事象を有する患者に対して、予防上有効量の式Iの化合物を投与する段階を有する方法を提供することにある。
【0008】
式Iの化合物は、抗喘息薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬および細胞保護薬としても有用である。その化合物は、狭心症、脳性痙攣、糸状体腎炎、肝炎、内毒素血症、ぶどう膜炎および同種移植片拒絶反応の治療においても有用である。本発明は、上記の治療を必要とする患者に対して、治療上有効量の式Iの化合物を投与する段階を有する治療方法を提供する。
【0009】
さらに別の目的は、他の抗アテローム性動脈硬化薬などの他の治療上有効な薬剤との併用での式IのFLAP阻害薬の使用を提供することにある。上記および他の目的については、本明細書における説明から明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、下記構造式Iによって表される化合物ならびにその化合物の製薬上許容される塩、エステルおよび溶媒和物を提供する。
【0011】
【化15】

式中、
「a」は、1、2および3から選択される整数であり;
bおよびcはそれぞれ、0、1および2から独立に選択される整数であり;
「A」は、メチレンまたはエチレン基を表し;
各R1aは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−C1−6アルキル、−CN、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−N(R、−C1−6アルキルN(R、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択され;
各R1bは独立に、−H、−F、−C1−6アルキル、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−N(Rおよび−C1−6アルキルN(R)からなる群から選択され、
あるいは一方のR1b基がオキソを表すことができ、他方は前記で定義の通りであり;
は、−Hを表すか、あるいは
a)ハロ、−OH、−COR、−C(O)NR、−C(O)−Hetcy、−N(R、−S(O)NR、−NO、−SONRC(O)R、−NRSO、−NRC(O)R、−C(O)SONR、−NRC(O)NR、−NRCO、−OC(O)NR、−C(O)NRNR、−CN、−S(O)および−OSO
b)−C1−10アルキル、−C2−10アルケニル、−C2−10アルキニル、−OC1−10アルキル、−OC3−10アルケニルおよび−OC3−10アルキニル[これらの基は、−OH、−CO、−C(O)NR、−C(O)N(R)C1−6アルケニル、−C(O)N(R)C1−6アルキニル、−C(O)−Hetcy、−N(R、−S(O)NR、−SONRC(O)R、−NRSO、−NRC(O)R、−C(O)SONR、−NRC(O)NR、−NRCO、−OC(O)NR、−C(O)NRNR、−S(O)、アリール、HAR、−Hetcyおよび5個以下のフッ素基で置換されていても良く;Hetcyは、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルおよびγ−ラクタムから選択される。];
c)−F、−Cl、−Br、−C1−6アルキル、−CN、−OH、−C1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−C1−6アルキルNH、−C1−6アルキル−NHC1−4アルキル、−C1−6アルキルN(C1−4アルキル)、−C1−6アルキル−CN、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択される1〜2個の構成員で置換されていても良いアリールまたはHAR
からなる群から選択され;
「d」および「e」はそれぞれ、0、1、2および3から独立に選択されて、d+eの合計が1〜6となるようになっている整数であり;
各pは独立に、0、1および2から選択される整数を表し;
Xは、結合を表すか、あるいは−O−、−S(O)−および−NR−からなる群から選択され;
、R、RおよびRはそれぞれ独立に、−H、−C1−6アルキル、−OC1−6アルキル、−OH、−フッ素、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−N(Rからなる群から選択され、
0〜1個のCRおよび0〜1個のCRが、カルボニル、チオカルボニル、C=NRおよび3〜7員シクロアルキル環から選択される基を表すことができ、
ただし、Xが−S(O)−を表し、pが1または2である場合、Xに隣接する前記CRおよびCR基は、カルボニル、チオカルボニルおよびC=NR以外の部分を表し、
さらにはXが−O−または−NR−である場合、Xに隣接するCRおよびCRのうちの少なくとも一つがカルボニル、チオカルボニルおよびC=NR以外の部分を表し;
Yは、アリール、HARおよびHetcyからなる群から選択され、それぞれがR1aでモノ置換またはジ−置換されていても良く;
各Rは独立に、−Hならびに
(a)1〜3個のフッ素基または−OH、−OC1−6アルキル、−CN、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)からなる群から選択される1〜2個の構成員で置換されていても良い−C1−10アルキル、−C3−10アルケニルまたは−C3−10アルキニル、;
(b)アリールまたはAr−C1−6アルキル−[前記アリール部分は、1〜2個の−C1−6アルキル、−CN、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−C1−6アルキルNH、−C1−6アルキルNHC1−4アルキル、−C1−6アルキルN(C1−4アルキル)、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキル、−C(O)N(C1−4アルキル)、−COHおよび−CO1−6アルキル基および1〜3個のF、−Clもしくは−Br基で置換されていても良いく;Ar−C1−6アルキル−の前記アルキル部分は、−OH、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)および1〜3個のフッ素基で置換されていても良い。];
(c)HetcyまたはHetcy−C1−6アルキル−[それぞれ、炭素上で、−F、−OH、−COH、−C1−6アルキル、−CO1−6アルキル、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NHC(O)C1−4アルキル、オキソ、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択される1〜2個の構成員で置換されていても良く;−C1−6アルキルまたは−C1−6アシルが存在する場合には窒素上で置換されていても良く;Hetcy−C1−6アルキル−の前記アルキル部分は、1〜2個の−F、−OH、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)で置換されていても良い。];
(d)HARまたはHAR−C1−6アルキル−[前記HARおよびHAR−C1−6アルキル−のHAR部分は、−F、−Cl、−Br、−C1−6アルキル、−CN、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシNH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキル、−C(O)N(C1−4アルキル)、−COH、−CO1−6アルキルからなる群から選択される1〜2個の構成員で置換されており;HAR−C1−6アルキル−の前記アルキル部分は、1〜2個の−F、−OH、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)で置換されていても良い。]
からなる群から選択され;
各Rは独立に、−H、−NHおよび(1〜3個のフッ素基および1〜2個の−OH、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)からなる群から選択される構成員で置換されていても良い)−C1−10アルキルからなる群から選択され;
同一部分に存在する場合、(a)RおよびR、(b)2個のR基または(c)2個のR基がそれらが結合している原子および介在原子と一体となって、O、S(O)およびNから選択される0〜3個のヘテロ原子を有する4〜7員環を表すことができ;前記4〜7員環は、−C1−6アルキル、−C2−6アシルおよびオキソからなる群から選択される構成員で置換されていても良い。
【0012】
本明細書において、別段の断りがない限り下記で定義の用語を用いて、本発明を詳細に説明する。「アルキル」ならびにアルコキシ、アルカノイルのように接頭語「アルク」を有する他の基は、指定数の炭素原子を有する、直鎖、分岐または環状、あるいはそれらの組合せであることができる炭素鎖を意味する。数の指定がない場合、直鎖または分岐アルキル基の場合には1〜10個の炭素原子が意図される。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−およびtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルなどなどがある。シクロアルキルはアルキルの部分集合であり、「アルキル」の意味の範囲に包含されるものである。原子数に指定がない場合、3〜10個の炭素原子が意図されて、縮合している1〜3個の炭素環が形成されている。単環式アルキル環では3〜6個の炭素が好ましい。「シクロアルキル」には、結合箇所が非芳香族部分にあるアリール基に縮合した単環式の環も含まれる。シクロアルキルの例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、テトラヒドロナフチル、デカヒドロナフチル、インダニルなどがある。
【0013】
「アルケニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有し、直鎖もしくは分岐またはそれらの組合せであることができる炭素鎖を意味し、3〜10個の炭素、より詳細には3〜6個の炭素を有する鎖を含む。アルケニルの例には、ビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニルなどがある。
【0014】
「アルキニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有し、直鎖もしくは分岐またはそれらの組合せであることができる炭素鎖を意味し、3〜10個の炭素、より詳細には3〜6個の炭素を有する鎖を含む。アルキニルの例には、エチニル、プロパルギル、3−メチル−1−ペンチニル、2−へプチニルなどがある。
【0015】
「アリール」(Ar)は、6〜12個の炭素原子を有する単環式および二環式芳香環を意味する。アリールの例には、フェニル、ナフチル、インデニルなどがある。
【0016】
「アシル」は、カルボニル基を介して連結された上記で定義のアルキル基を指す。好ましい例は、アセチル、すなわちCHC(O)−である。
【0017】
「ヘテロアリール」(HAR)は、2個以下の環を有し、各環が5〜6個の原子とO、SおよびNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する単環式または縮合した芳香族または部分不飽和の環または環系を意味する。例としては、下記のものなどがある。
【0018】
【化16】

上記において、ZはO、SまたはNHを表し;ZはOまたはSを表す。
【0019】
ヘテロアリールには、シクロアルキル環に縮合した非芳香族もしくは部分芳香族および芳香族の複素環基である複素環に縮合した芳香族複素環基も含まれる。この用語には、窒素を介して結合した2−もしくは4−ピリドン類またはN−置換−(1H,3H)−ピリミジン−2,4−ジオン類(N−置換ウラシル類)などの、芳香族ではない部分不飽和単環式環も含まれる。ヘテロアリールには、例えばピリジニウムのような電荷を有する形態でのそのような基も含まれる。置換基が存在する場合、この基は環のいずれか使用可能な炭素上であることができる。好適な置換基は、この環の使用可能な窒素上であっても良い。
【0020】
「複素環」(Hetcy)は、N、SおよびOから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する単環式および二環式の飽和環および環系であって、その各環が3〜10個の原子を有し、結合箇所は炭素または窒素であることができるものを意味する。「複素環」の例には、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、γ−ラクタム、イミダゾリジニル、2,3−ジヒドロフロ(2,3−b)ピリジル、ベンゾキサジニル、テトラヒドロヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ジヒドロインドリルなどがある。この用語には、窒素を介して結合した2−もしくは4−ピリドン類またはN−置換−(1H,3H)−ピリミジン−2,4−ジオン類(N−置換ウラシル類)などの芳香族ではない部分不飽和単環式環も含まれる。複素環にはさらに、例えばピペリジニウムなどの電荷を有する形態でのそのような部分も含まれる。置換基が存在する場合、この基は環のいずれか使用可能な炭素上であることができる。好適な置換基は、環の使用可能な窒素上にあっても良い。「Hetcy」はHetcyの部分集合であり、上記の式Iで定義されている。部分−C(O)−Hetcy内において、Hetcyは−C(O)−にN−連結しており、例えば
【0021】
【化17】

である。式IでのHetcyの他のものはいずれも、Hetcy環での炭素または窒素を介して、構造に連結されていることができる。
【0022】
「ハロゲン」(ハロ)には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素などがあり、好ましくはFおよびCl、より好ましくはFである。ハロC1−6アルキル、ハロC1−6アルコキシなどは、パ−ハロまでの少なくとも1個のハロ基で置換されたアルキル、アルコキシなどを意味する。フルオロアルキルおよびフルオロアルコキシは、1〜6個のフッ素基で置換されたアルキル基およびアルコキシ基を意味する。好ましくは、1〜4個のハロ基またはフッ素基がアルキルまたはアルコキシ部分上に存在する。好ましいハロアルキルは、−CFである。好ましいハロアルコキシは−OCFである。
【0023】
本発明の化合物を「式I」、「式Ia」、「式Ib」および「式Ic」の化合物と称する場合、それは本明細書においては、塩およびエステルが可能である場合の製薬上許容される塩およびエステルを含むそれら各構造式の範囲に包含される化合物を含むものである。「製薬上許容される塩」という用語は、無機もしくは有機の塩基および無機もしくは有機の酸などの製薬上許容される無毒性の塩基もしくは酸から製造される塩を指す。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などがある。特に好ましいものは、アンモニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩である。製薬上許容される有機無毒性塩基から誘導される塩には、1級、2級および3級アミン類、天然置換アミン類などの置換アミン類、環状アミン類および塩基性イオン交換樹脂の塩、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N′−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂類、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩などがある。本発明の化合物が塩基性である場合、塩は、無機酸および有機酸などの製薬上許容される無毒性酸から製造することができる。そのような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、ムコ酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などがあり、特には、クエン酸、フマル酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸などがある。
【0024】
使用可能なヒドロキシ基またはカルボン酸基の製薬上許容されるエステルも、形成されていても良い。製薬上許容されるエステルの例には、−C1−4アルキルおよびフェニル−、ジメチルアミノ−およびアセチルアミノで置換された−C1−4アルキルなどがあるがこれらに限定されるものではない。
【0025】
式Iの化合物は、1以上の不斉中心を持つことができることから、ラセミ体、ラセミ混合物、単独のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物および個々のジアステレオマーとして得られる可能性がある。本発明は、そのような全ての異性体、ならびにそのようなラセミ体、混合物、エナンチオマーおよびジアステレオマーの塩および溶媒和物を含むものである。さらに、本発明の化合物の結晶型の中には多形体として存在し得るものがあり、それ自体、本発明に含まれるものとする。さらに、本発明の化合物の中には、水または一般的な有機溶媒と溶媒和物を形成し得るものがある。そのような溶媒和物および水和物も同様に、本発明の範囲に包含されるものである。本明細書に記載の化合物の中には、オレフィン性二重結合を有するものがある。本発明は、EおよびZの両方の幾何異性体を含むものである。本明細書に記載の化合物の中には、例えばケト−エノール互変異体のような互変異体として存在し得るものがある。個々の互変異体ならびにそれらの混合物は本発明に含まれる。
【0026】
構造式Iの化合物は、例えば塩化メチレン/ヘキサンまたはEtOAc/ヘキサンなどの好適な溶媒からの分別結晶によって、あるいは光学活性な固定相を用いるキラルクロマトグラフィーによって個々のジアステレオマー異性体に分離することができる。絶対立体化学は、必要に応じて立体配置が既知である不斉中心を有する試薬で誘導体化した結晶性生成物または結晶性中間体のX線結晶解析によって決定することができる。あるいは、一般式Iの化合物のいずれの立体異性体も、絶対配置が既知である光学的に純粋な原料または試薬を用いる立体特異的合成によって得ることができる。
【0027】
本発明の1態様は、下記構造式Iaを有する式Iの範囲内の化合物ならびにその化合物の製薬上許容される塩、エステルおよび溶媒和物に関するものである。
【0028】
【化18】

式中、「a」は1、2および3から選択される整数であり;bおよびcはそれぞれ、0、1および2から独立に選択される整数であり;ただし、「a」+b+cの合計が1〜5であることで、5〜9員の二環式環系が提供される。本発明のこの態様の範囲内では、式Iで示した「A」はメチレン基を表し、他の全ての変数は式Iで最初に定義した通りである。より詳細には、本発明の別の態様は、「a」が1または2であり、bおよびcのうちの一方が0(ゼロ)であって他方が1であることで、6〜7員の二環式環系が提供される式Iaの化合物に関するものである。式Iで示した「A」は、メチレン基を表し、他の変数はいずれも式Iで最初に定義の通りである。
【0029】
本発明のさらに別の態様は、下記式Ibを有する式Iの範囲に含まれる化合物ならびにその化合物の製薬上許容される塩、エステルおよび溶媒和物に関するものである。
【0030】
【化19】

式中、「a」は2および3から選択される整数であり;bおよびcは、0および1から独立に選択される整数であり;ただし、「a」+b+cの合計が2〜4であることで、7〜9員の二環式環系が提供される。本発明のこの態様の範囲内では、式Iで示した「A」はエチレン基を表し、他の全ての変数は式Iで最初に定義した通りである。
【0031】
より詳細には、本発明の別の態様は、「a」が2であり、bおよびcが0および1から独立に選択される整数であることで、7〜9員の環が提供される式Ibの化合物に関するものである。やはり、式Iに示したように、「A」はエチレン基を表し、他の全ての変数は式Iで最初に定義した通りである。
【0032】
さらに詳細には、本発明の別の態様は、「a」が2を表し、bが1を表し、cが0または1を表す式Ibの化合物に関するものである。本発明のこの態様の範囲内では、式Iに示したように、「A」はエチレン基を表し、他の全ての変数は式Iで最初に定義した通りである。
【0033】
本発明の別の態様は、下記構造式Icを有する式Iの範囲内の化合物に関するものである。
【0034】
【化20】

式中、dは0(ゼロ)であり;eは1であり;Xは−O−であり;RおよびRはいずれも−Hであり;Yは、
【0035】
【化21】

からなる群から選択され、ZはO、SまたはNHを表し;ZはOまたはSを表し;より詳細には、Yは、
【0036】
【化22】

から選択され;R
a)−OC(O)NRおよび−C(O)NR
b)−C(O)−NRおよび−C(O)−Hetcyから選択される構成員で置換されたC1−3アルキル;および
c)−F、−Cl、−C1−6アルキル、−CN、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−C1−6アルキルNH、−C1−6アルキル−NHC1−4アルキル、−C1−6アルキルN(C1−4アルキル)、−C1−6アルキル−CN、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択される1〜2個の構成員で置換されていても良いHAR
からなる群から選択され;
より詳細には、RがHARである場合、HARは、
【0037】
【化23】

から選択され、
は、−H、−C1−3アルキル、−C3−6シクロアルキル、−Fおよび−Clから選択され;残りの変数はいずれも、式Iで最初に定義の通りである。
【0038】
式Icのこの態様の1小群では、Rは、
(a)−C1−4−アルキルおよびC3−6シクロアルキル[それぞれ、1〜3個のフッ素貴または−OC1−6アルキル、−CN、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)からなる群から選択される1構成員で置換されていても良い。]、
(b)Hetcyおよび
(c)ピリジニル
から選択され;
は−Hであり;残りの変数はいずれも、式Icで定義の通りである。
【0039】
本発明の別の態様は、式Iの一般的構造図で示した3個のR1a基のうち、2個のR1a基が−Hを表し、1個のR1a基が−F、−Cl、−C1−6アルキル、−CN、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−N(R、−C1−6アルキルN(R、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択される式Iの化合物に関する。本発明のこの態様の範囲内では、他の変数はいずれも式Iで最初に定義の通りである。本発明の別の態様は、式Iの一般的構造図に示した3個のR1a基全てが−Hである式Iの化合物に関する。本発明のこの態様の範囲内では、他の変数はいずれも、式Iで最初に定義の通りである。
【0040】
本発明の別の態様では、一方のR1bが−Hを表し、他方のR1bが−H、−F、−C1−6アルキル、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−N(Rおよび−C1−6アルキルN(Rおよびオキソからなる群から選択される式Iの化合物が開示される。本発明のこの態様の範囲内では、他の変数はいずれも式Iで最初に定義の通りである。より詳細には、本発明の別の態様は、両方のR1b基が−Hを表す式Iの化合物に関する。本発明のこの態様の範囲内では、他の変数はいずれも式Iで最初に定義の通りである。
【0041】
本発明の別の態様では、Rが、
a)−C(O)NR、−C(O)−Hetcy、−N(R、−S(O)NR、−SONRC(O)R、−NRSO、−NRC(O)R、−CN、−S(O)および−OSO
b)−C1−10アルキル、−C3−6アルケニル、−C3−6アルキニル、−OC1−10アルキル、−OC3−6アルケニルおよび−OC3−10アルキニル[これらの基は、−CO、−C(O)NR、−C(O)N(R)C1−6アルケニル、−C(O)N(R)C1−6アルキニル、−C(O)−Hetcy、−N(R、−S(O)NR、−SONRC(O)R、−NRSO、NRC(O)R、−S(O)、アリール、HAR、−Hetcyおよび5以下のフッ素基からなる群から選択される構成員で置換されていても良い。];および
c)−F、−Cl、−Br、−C1−6アルキル、−CN、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−C1−6アルキルNH、−C1−6アルキル−NHC1−4アルキル、−C1−6アルキルN(C1−4アルキル)、−C1−6アルキル−CN、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択される1〜2個の構成員で置換されていても良いHAR
からなる群から選択される構成員を表す式Iの化合物が開示される。本発明のこの態様の範囲内では、他の変数はいずれも式Iで最初に定義の通りである。本発明の別の態様は、Rが、
a)−OC(O)NRおよび−C(O)NR
b)−C(O)−NRおよび−C(O)−Hetcyから選択される構成員で置換されたC1−3アルキル;および
c)−F、−Cl、−C1−6アルキル、−CN、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−C1−6アルキルNH、−C1−6アルキル−NHC1−4アルキル、−C1−6アルキルN(C1−4アルキル)、−C1−6アルキル−CN、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択される1〜2個の構成員で置換されていても良いHAR
からなる群から選択される構成員を表し;より詳細には、RがHARである場合、HARが、
【0042】
【化24】

から選択され;
が、−H、−C1−3アルキル、−C3−6シクロアルキル、−Fおよび−Clから選択され;残りの変数がいずれも式Iで最初に定義の通りである式Iの化合物に関する。
【0043】
興味深い本発明の別の態様では、dおよびeが、0、1、2および3から独立に選択される整数であり;ただし、d+eの合計が1〜3である式Iの化合物が開示される。本発明のこの態様の範囲内では、他の変数はいずれも式Iで最初に定義の通りである。
【0044】
興味深い本発明の別の態様では、Xが結合、−Oまたは−S(O)−を表し、より詳細にはXが−O−である式Iの化合物が開示される。本発明のこの態様の範囲内では、他の変数はいずれも式Iで最初に定義の通りである。
【0045】
興味深い本発明の別の態様では、R、R、RおよびRが独立に、−H、−C1−6アルキル、−OC1−6アルキル、−OH、−フッ素、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシおよび−N(Rからなる群から選択される式Iの化合物が開示される。本発明のこの態様の範囲内では、他の変数はいずれも式Iで最初に定義の通りである。
【0046】
特に興味深い本発明の別の態様では、−(CR−X−C(R−が−O−CH−または−CHCH−を表す式Iの化合物が開示される。本発明のこの態様の範囲内では、dは0(ゼロ)を表し;Xは−O−または結合を表し、eは1または2を表し、RおよびRはそれぞれ−Hを表し、他の変数はいずれも式Iで最初に定義の通りである。
【0047】
興味深い本発明の別の態様では、YがHARである式Iの化合物が記載される。本発明のこの態様の範囲内では、他の変数はいずれも式Iで最初に定義の通りである。
【0048】
興味深い本発明の別の態様は、Yが、
【0049】
【化25】

からなる群から選択されるHARを表し;
ZがO、SまたはNHを表し;ZがOまたはSを表す式Iの化合物に関する。
【0050】
本発明のこの態様の範囲内では、他の変数はいずれも式Iで最初に定義の通りである。より詳細には、興味深い本発明の1態様は、Yが、
【0051】
【化26】

からなる群から選択されるHARである式Iの化合物に関する。本発明のこの態様の範囲内では、他の変数はいずれも式Iで最初に定義の通りである。
【0052】
興味深い本発明の別の態様では、各Rは独立に、−Hならびに
(a)−C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル、C3−6アルケニル、C3−6アルキニル[それぞれ、1〜3個のフッ素基または−OC1−6アルキル、−CN、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)からなる群から選択される構成員で置換されていても良い。];
(b)アリールまたはAr−C1−6アルキル−[前記アリール部分は、−F、−Cl、−C1−4アルキル、−CN、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−4アルキル、−フルオロC1−4アルコキシ、−C1−4アルキルNH、−C1−4アルキルNHC1−4アルキル、−C1−4アルキルN(C1−4アルキル)、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキル、−C(O)N(C1−4アルキル)、−COHおよび−CO1−6アルキルから選択される構成員で置換されていても良く;Ar−C1−6アルキル−のアルキル部分は、−F、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)で置換されていても良い。];
(c)HetcyまたはHetcy−C1−6アルキル−[それぞれ、−F、−COH、−C1−6アルキル、−CO1−6アルキル、−OC1−6アルキル、−NH、NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NHC(O)C1−4アルキル、オキソ、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択される1〜2個の構成員によって炭素上で置換されていても良く;窒素が存在する場合には窒素上で、−C1−6アルキルまたは−C1−6アシルで置換されていても良く;Hetcy−C1−6アルキル−のアルキル部分は、−F、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)で置換されていても良い。];
(d)HARまたはHAR−C1−6アルキル−[前記HARおよびHAR−C1−6アルキル−のHAR部分は、−F、−Cl、−Br、−C1−6アルキル、−CN、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシNH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキル、−C(O)N(C1−4アルキル)、−COH、−CO1−6アルキルで置換されていても良く;HAR−C1−6アルキル−のアルキル部分は、−F、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)で置換されていても良い。]
からなる群から選択される。本発明のこの態様の範囲内では、他の変数はいずれも式Iに関して最初に定義の通りである。
【0053】
興味深い本発明の別の態様では、各Rは、−Hおよび1〜3個のフッ素基で置換されていても良い−C1−10アルキルからなる群から選択される。
【0054】
特に興味深い本発明の態様は、前記二環式環部分:
【0055】
【化27】

が、
【0056】
【化28】

からなる群から選択され;
−(CR−X−(CR−Y−(R1aが、
【0057】
【化29】

からなる群から選択され;Rが、
【0058】
【化30】

からなる群から選択される式Iの化合物に関する。
【0059】
本発明に包含される化合物の例としては、本明細書にある実施例で示されるもの、ならびにそれらの 塩および溶媒和物などがある。ラセミ混合物が示されている場合、個々の エナンチオマーも 含まれ、その個々のエナンチオマーの塩および溶媒和物も同様である。
【0060】
式Iの化合物は、アテローム性動脈硬化の治療において有用であることができ、そのような治療を必要とする患者に対して治療上有効量の式Iの化合物を投与する段階を有する。本発明の別の態様には、アテローム性動脈硬化の予防または発症リスク低減方法であって、そのような治療を必要とする患者に対して予防上有効量の式Iの化合物を投与する段階を有する方法が関与する。アテローム性動脈硬化は、大きい動脈および中等度の大きさの動脈の壁の最内層でのコレステロールおよび脂質を含むアテローム性プラークの沈着を特徴とする。アテローム性動脈硬化は、関連する医学分野に従事する医師が認識および理解する血管の疾患および状態を包含する。血管再開術後再狭窄などのアテローム性動脈硬化性心血管疾患、冠状動脈性心臓病(冠動脈疾患または虚血性心疾患とも称される)、多発梗塞性痴呆などの脳血管疾患および勃起不全などの末梢血管疾患はいずれも、アテローム性動脈硬化の臨床的顕れであることから、「アテローム性動脈硬化」および「アテローム性動脈硬化疾患」という用語に包含される。
【0061】
FLAP阻害薬を投与して、冠動脈性心疾患事象、脳血管事象および/または間欠跛行の発生または可能性がある場合は再発を予防またはリスク低下することができる。冠状動脈性心臓病事象には、CHD死、心筋梗塞(すなわち心臓発作)および冠動脈再開術などがあるものとする。脳血管疾患事象には、虚血性または出血性卒中(脳血管発作とも称される)および一過性虚血発作などがあるものとする。間欠跛行は、末梢血管疾患の臨床的顕れである。本明細書で使用される「アテローム性動脈硬化疾患事象」という用語は、冠状動脈性心臓病事象、脳血管疾患事象および間欠跛行を包含するものである。1以上の非致死的アテローム性動脈硬化疾患事象を過去に経験したことがある人は、そのような事象が再発する可能性のある人であるとする。
【0062】
従って本発明は、アテローム性動脈硬化疾患事象の最初の発生または後の発生を予防またはリスク低減する方法であって、そのような事象のリスクを有する患者に対して、予防上有効量のFLAP阻害薬を投与する段階を有する方法をも提供する。その患者は、投与時点ですでにアテローム性動脈硬化疾患を有していても良く、あるいはそれを発症するリスクを有していても良い。
【0063】
本発明の方法は特に、新たなアテローム性動脈硬化性の病変またはプラーク形成を予防または遅延させ、そして既存の病変またはプラークの進行を予防または遅延させ、さらには既存の病変またはプラークの退行を生じさせる上で役立つ。従って、本発明の1態様には、アテローム性動脈硬化性プラーク進行の停止または遅延などのアテローム性動脈硬化進行の停止または遅延方法であって、そのような処置を必要とする患者に対して治療上有効量のFLAP阻害薬を投与する段階を有する方法が関与する。この方法には、その治療を開始する時点で存在するアテローム性動脈硬化性プラーク(すなわち、「既存アテローム性動脈硬化性プラーク」)の進行の停止または遅延、ならびにアテローム性動脈硬化患者での新たなアテローム性動脈硬化性プラーク形成の停止または遅延も含まれる。
【0064】
本発明の別の態様には、その治療を開始する時点で存在するアテローム性動脈硬化性プラークの退行などのアテローム性動脈硬化の退行方法であって、そのような処置を必要とする患者に対して治療上有効量のFLAP阻害薬を投与する段階を有する方法が関与する。本発明の別の態様には、アテローム性動脈硬化性プラークの破裂の予防またはリスク低減方法であって、そのような処置を必要とする患者に対して治療上有効量のFLAP阻害薬を投与する段階を有する方法が関与する。
【0065】
式Iの化合物はロイコトリエンの生合成を阻害することができることから、ヒト被験者でのロイコトリエンが誘発する症状を予防または回復させる上で有用である。ロイコトリエンの哺乳動物での生合成をそのように阻害するということは、その化合物およびそれの医薬組成物が、哺乳動物、特にはヒトにおいて1)喘息、慢性気管支炎および関連の気道閉塞疾患のような疾患を含む肺疾患、2)アレルギー性鼻炎、接触皮膚炎、アレルギー性結膜炎などのようなアレルギーおよびアレルギー性反応、3)関節炎または炎症性腸疾患のような炎症、4)疼痛、5)アトピー性皮膚炎などのような皮膚疾患、6)狭心症、アテローム性動脈硬化性プラークの形成、心筋虚血、高血圧症、血小板凝集などのような心血管障害、7)免疫的または化学的(シクロスポリン)病因により誘発される虚血に起因する腎不全、8)偏頭痛または群発頭痛、9)ぶどう膜炎のような眼の状態、10)化学的、免疫的または感染性の刺激に起因する肝炎、11)火傷、内毒素血症などのような外傷またはショック状態、12)同種移植片拒絶反応、13)インターロイキンIIおよび腫瘍壊死因子のようなサイトカインの治療的投与に関連する副作用の予防、14)膿胞性線維症、気管支炎および他の小気道および大気道疾患のような慢性の肺疾患、15)胆嚢炎、16)多発性硬化症、および17)骨髄芽球性白血病細胞の増殖の治療、予防または軽減に有用であることを示している。
【0066】
従って、本発明の化合物は、びらん性胃炎;びらん性食道炎;下痢;大脳性痙攣;早産;自然流産;月経困難症;虚血;肝臓、膵臓、腎臓または心筋組織での有害物質誘発の損傷または壊死;CClおよびD−ガラクトスアミンのような肝臓毒により引き起こされる肝臓の実質損傷;虚血性腎不全;疾患誘発の肝損傷;胆汁酸塩誘発性の膵臓または胃の損傷;外傷またはストレス誘発性の細胞損傷;およびグリセリン誘発腎不全のような哺乳動物(特にヒト)の病態の治療または予防にも用いることができる。それらの化合物は、腫瘍転移阻害剤としても作用し、細胞保護作用を示す。
【0067】
本発明のFLAP阻害薬を投与して、糸球体腎炎の予防、改善および治療を行うこともでき(Guasch A., Zayas C. F., Badr KF. (1999), ″MK- 591 acutely restores glomerular size selectivity and reduces proteinuria in human glomerulonephritis,″ Kidney Int., 56: 261-267参照)、糖尿病合併症が原因で生じる腎臓損傷の予防、改善および治療を行うこともできる(Valdivielso JM, Montero A., Badr KF. , Munger KA. (2003), ″Inhibition of FLAP decreases proteinuria in diabetic rats,″ J. Nephrol. , 16 (1): 85-940参照)。
【0068】
さらに本発明の化合物は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療においても使用可能である。キルフェザーの報告(S. Kilfeather, Chest, 2002, vol 121, 197)に記載のように、COPD患者での気道好中球増加が炎症の原因であると考えられており、気道の再構築を伴う。好中球の存在には部分的にLTB4が介在しており、本発明の化合物による治療を用いて、COPD患者での好中球性炎症を軽減することができると考えられる。
【0069】
化合物の細胞保護活性は、強い刺激物の毒性作用、例えば、アスピリンまたはインドメタシンの潰瘍誘発効果に対する胃腸粘膜の抵抗が増進することにより、動物にもヒトにも認めることができる。非ステロイド系抗炎症剤が消化管に及ぼす作用を低減させることに加えて、動物実験から、細胞保護化合物が、強酸、強塩基、エタノール、高張性生理的食塩水溶液などの経口投与により誘発される胃病変をも予防することが明らかになっている。2種類のアッセイを用いて細胞保護能力を測定することができる。これらのアッセイは、(A)エタノール誘発病変アッセイおよび(B)インドメタシン誘発潰瘍アッセイであり、両アッセイともEP140684号に記載されている。
【0070】
特に、本発明の化合物は、シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害薬および低用量アスピリンの同時投与によって引き起こされる胃びらんを低減する上で有用であると考えられる。シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害薬は、従来の非選択的非ステロイド系抗炎症薬と比較して消化管系の合併症が弱い有効な抗炎症薬として広く使用されている。しかしながら、心臓保護におけるシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害薬と低用量アスピリンの併用は、この種の化合物の消化管での安全性を低下させる可能性がある。5−リポキシゲナーゼ阻害薬としての活性を有することで、本発明の化合物は、この点において胃保護性を有すると予想されるものと考えられる(Fiorucci, et al. FASEB J. 17: 1171-1173, 2003参照)。本発明で使用されるシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害薬には、ロフェコキシブ(VIOXX;登録商標))、エトリコキシブ(ARCOXIA;商標名)、セレコキシブ(CELEBREX;登録商標)およびバルデコキシブ(BEXTRA;商標名)などがあるが、これらに限定されるものではない。シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害薬との併用での本発明の化合物は、低用量アスピリン療法において患者に対して、単位製剤あるいは別個で投与することができると考えられる。あるいは、シクロオキシゲナーゼ−2阻害薬は、低用量アスピリンとともに単位製剤で投与することができると考えられ、その場合には本発明の化合物は別個に投与されるものと考えられる。単位製剤中に3種類全ての有効成分が入っていることも包含される。シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害薬およびアスピリン(心臓保護用)における従来の用量を用いることが可能である。例えばロフェコキシブは、1日1回12.5mg、25mgまたは50mgで投与することが可能であると考えられる。アスピリンは、1日1回81mgで投与することができると考えられる。
【0071】
概してFLAP阻害薬は、「FLAP結合アッセイ」で、1μM以下、好ましくは500nM以下のIC50を有する化合物として識別することができる。
【0072】
「患者」という用語は、医学的状態の予防または治療を目的として本発明の活性剤を使用する哺乳動物、特にはヒトを含むものである。患者への薬剤の投与は、自己投与および別の人物による患者への投与の両方を含む。患者は、既存の疾患もしくは医学的状態のために治療を必要としている場合があるか、あるいはアテローム性動脈硬化発症を予防もしくはリスク低減するための予防的処置を望んでいる場合がある。
【0073】
「治療上有効量」という用語は、研究者、獣医、医師その他の臨床関係者が追求している組織、系、動物またはヒトの生体応答または医学的応答を誘発する薬剤または医薬の量を意味するものとする。「予防上有効量」という用語は、研究者、獣医、医師その他の臨床関係者が組織、系、動物またはヒトにおいて予防することを求めている生体事象または医学的事象の発生を予防またはリスク低減する医薬の量を意味するものとする。
【0074】
本発明の方法におけるFLAP阻害薬の有効量は、単回投与または分割投与で、約0.001mg/kg/日〜約100mg/kg/日、好ましくは 0.01mg〜約10mg/kg、最も好ましくは0.1〜1mg/kgの範囲である。単一の1日1回単回投与が好ましいが、それが必要であるというわけではない。他方、場合によっては、これらの範囲外の用量を使う必要があることがある。例を挙げると、1日用量は、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、200mgおよび250mgから選択することができるが、これらに限定されるものではない。しかしながら、特定の患者における具体的な用量レベルは、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時刻、投与経路、排泄速度、併用薬剤および患者の状態の重度などの各種要素によって決まることは明らかであろう。これらの要素を考慮することは、前記状態の進行を予防、対抗または停止させる上で必要な治療上有効または予防上有効な用量を決定することを目的として、通常の技術を有する臨床関係者の領域に十分に含まれるものである。FLAP阻害薬が、治療が続く月数、年数または患者の一生の期間などの患者に関連する前記医学的状態を治療または予防する上で適切な期間にわたって、1日1回にて慢性的に投与されることが予想される。
【0075】
広い実施形態において、抗アテローム性動脈硬化薬などの好適な別の活性薬剤または複数のそのような薬剤を、単一用量製剤中で式Iの化合物と組み合わせることができるか、あるいは別個の用量製剤で患者に投与することができ、それによって活性薬剤を同時または順次投与することができる。1以上の別の活性薬剤を、式Iの化合物とともに投与することができる。その別の活性薬剤は、脂質改善性化合物または他の医薬活性を有する薬剤、あるいは脂質改善効果および他の医薬活性の両方を有する薬剤であることができる。使用可能な別の活性薬剤の例には、ロバスタチン(米国特許第4342767号参照)、シンバスタチン(米国特許第4444784号参照)、ジヒドロキシ開環酸であるシンバスタチン、特にはそれのアンモニウム塩またはカルシウム塩、プラバスタチン、特にはそれのナトリウム塩(米国特許第4346227号参照)、フルバスタチン、特にはそれのナトリウム塩(米国特許第5354772号参照)、アトルバスタチン、特にはそれのカルシウム塩(米国特許第5273995号参照)、NK−104とも称されるピタバスタチン(PCT国際公開番号WO97/23200参照)およびZD−4522とも称されるロスバスタチン(CRESTOR(登録商標)、米国特許第5260440号およびDrugs of the Future, 1999, 24(5), pp.511-513参照)のような(これらに限定されるものではない)ラクトン型もしくはジヒドロキシ開環酸型のスタチン類ならびにそれらの製薬上許容される塩およびエステルを含むHMG−CoAレダクターゼ阻害薬;5−リポキシゲナーゼ阻害薬;例えばJTT−705およびCP529414とも称されるトルセトラピブなどのコレステロールエステル転送タンパク質(CETP)阻害薬;HMG−CoA合成酵素阻害薬;スクアレンエポキシダーゼ阻害薬;スクアレンシンターゼ阻害薬(スクアレンシンターゼ阻害薬とも称される)、ACAT−1またはACAT−2の選択的阻害薬ならびにACAT−1および−2の二重阻害薬などのアシル−補酵素A:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害薬;ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(MTP)阻害薬;ナイアシン;胆汁酸封鎖剤;LDL(低密度リポタンパク質)受容体誘導物質;例えば糖タンパク質IIb/IIIaフィブリノーゲン受容体拮抗薬およびアスピリンなどの血小板凝集阻害薬;例えばピオグリタゾンおよびロシグリタゾンなどのグリタゾン類と一般に称される化合物そしてチアゾリジンジオン類と称される構造種に含まれる化合物ならびにチアゾリジンジオン構造種外のPPARγ作働薬などのヒトペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)作働薬;クロフィブレート、微細化フェノフィブレートなどのフェノフィブレートおよびゲムフィブロジルなどのPPARα作働薬;PPAR二重α/γ作働薬;ビタミンB(ピリドキシンとも称される)およびHCl塩などのそれの製薬上許容される塩;ビタミンB12(シアノコバラミンとも称される);葉酸あるいはナトリウム塩およびメチルグルカミン塩などのそれの製薬上許容される塩またはエステル;ビタミンCおよびEおよびβ−カロテンなどの抗酸化性ビタミン類;β−遮断薬;ロサルタンなどのアンギオテンシンII拮抗薬;エナラプリルおよびカプトプリルなどのアンギオテンシン変換酵素阻害薬;ニフェジピンおよびジルチアザム(diltiazam)などのカルシウムチャンネル遮断薬;エンドテリン拮抗薬;ABCA1遺伝子発現を促進する薬剤;阻害薬および作働薬の両方を含むFXRおよびLXRリガンド;アレンドロネート・ナトリウムなどのビスホスホネート化合物;ならびにロフェコキシブおよびセレコキシブなどのシクロオキシゲナーゼ−2阻害薬などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
本発明の化合物と併用可能なさらに別の種類の薬剤は、コレステロール吸収阻害薬である。コレステロール吸収阻害薬は、腸管腔から小腸壁の腸細胞へのコレステロールの移動を遮断する。その遮断は、血清コレステロールレベル低下におけるその薬剤の主要な作用機構である。その化合物は、核ホルモンの作働薬または拮抗薬などの、主としてアシル補酵素A−コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害、トリグリセリド合成阻害、MTP阻害、胆汁酸封鎖および転写調節のような作用機序によって血清コレステロールレベルを低下させる化合物とは区別される。コレステロール吸収阻害薬は、米国特許第5846966号、米国特許第5631365号、米国特許第5767115号、米国特許第6133001号、米国特許第5886171号、米国特許第5856473号、米国特許第5756470号、米国特許第5739321号、米国特許第5919672号、WO00/63703、WO/0060107、WO00/38725、WO00/34240、WO00/20623、WO97/45406、WO97/16424、WO97/16455およびWO95/08532に記載されている。
【0077】
コレステロール吸収阻害薬の例としては、米国特許第5767115号および5846966号に記載され、
【0078】
【化31】

のように示される1−(4−フルオロフェニル)−3(R)−[3(S)−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル)]−4(S)−(4−ヒドロキシフェニル)−2−アゼチジノンである、SCH−58235とも称されるエゼチミベである。
【0079】
ヒドロキシ−置換アゼチジノン系コレステロール吸収阻害薬の別の例が、米国特許第5767115号第39欄54〜61行および第40欄1〜51行に具体的に記載されており、第2欄20〜63行に定義の式:
【0080】
【化32】

によって表されている。これらおよび他のコレステロール吸収阻害薬は、ハムスターを7日間にわたってコレステロールを制御した飼料で飼育し、被験化合物を投与する米国特許第5767115号第19欄47〜65行に記載の高脂血症ハムスターを用いる脂質低下性化合物アッセイに従って確認することができる。血漿脂質分析を行い、データを対照に対する脂質低下パーセントとして報告する。
【0081】
コレステロール吸収阻害薬の治療上有効量には、約0.01mg/kg/日〜約30mg/kg/日、好ましくは約0.1mg/kg〜約15mg/kgの用量などがある。従って、平均体重70kgの場合には、用量レベルは薬剤約0.7mg〜約2100mg/日、例えば10、20、40、100または200mg/日であり、好ましくは1日1回投与または1日2〜6回の分割投与で、あるいは徐放形態で投与する。その投与法を調節して、本発明の化合物とコレステロール吸収阻害薬を併用した場合の至適な治療応答を提供することができる。
【0082】
本発明の治療方法では、FLAP阻害薬は、経口、非経口または直腸などのいずれか適当な投与経路で、従来の無毒性の製薬上許容される担体、補助剤および媒体を含む単位用量製剤で投与することができる。本明細書で使用される非経口という用語は、皮下注射、静脈、筋肉、関節内の注射もしくは注入法を含む。経口製剤が好ましい。
【0083】
経口で使用する場合、有効成分を含む本発明の医薬組成物は、錠剤、トローチ、ロゼンジ剤、水系または油系懸濁液、分散性粉体または粒剤、乳濁液、硬もしくは軟カプセル、あるいはシロップまたはエリキシル剤などの形態とすることができる。経口で使用される組成物は、医薬組成物の製造に関して当業界で公知のいずれかの方法に従って製造することができ、そのような組成物は、甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤からなる群から選択される1以上の薬剤を含むことで、医薬的に見た目および風味の良い製剤を提供することができる。錠剤は、錠剤の製造に好適な無毒性で製薬上許容される賦形剤との混合で有効成分を含む。それらの賦形剤は、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;例えばコーンスターチもしくはアルギン酸などの造粒剤および崩壊剤;例えばデンプン、ゼラチンおよびアカシアなどの結合剤;例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどの潤滑剤であることができる。
【0084】
経口の即時放出製剤および徐放製剤と、さらには腸溶コーティング経口製剤を用いることができる。錠剤はコーティングすることができ、あるいはそれを公知の方法によってコーティングして、消化管中での崩壊および吸収を遅らせることで、長期間にわたって持続的活性を提供するようにすることができる。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を用いることができる。徐放装置の1例が米国特許第5366738号に記載されている。それは、米国特許第4256108号;4166452号;および4265874号に記載の方法によってコーティングして、徐放のための浸透圧性治療錠剤を形成することもできる。
【0085】
経口投与用製剤は、有効成分を例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンなどの不活性固体希釈剤と混和した硬ゼラチンカプセルとして、あるいは有効成分を水またはプロピレングリコール、PEG類およびエタノールなどの混和性溶媒または例えば落花生油、液体パラフィンもしくはオリーブ油などの油系媒体と混和した軟ゼラチンカプセルとして提供することもできる。
【0086】
水系懸濁液は、水系懸濁液の製造に好適な賦形剤と混和した形で活性材料を含む。そのような賦形剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガムなどの懸濁剤などがある。分散剤または湿展剤には、レシチンなどの天然ホスファチド、あるいは例えばポリオキシエチレンステアレートなどのアルキレンオキサイドと脂肪酸との縮合生成物、ヘプタデカエチレンオキシセタノールなどのエチレンオキサイドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなどのエチレンオキサイドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートなどのエチレンオキサイドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物があり得る。水系懸濁液には、例えばp−ヒドロキシ安息香酸のエチルもしくはn−プロピルエステルなどの1以上の保存剤、1以上の着色剤、1以上の香味剤、ショ糖、サッカリンもしくはアスパルテームなどの1以上の甘味剤を含有させることもできる。
【0087】
油系懸濁液は、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油などの植物油または液体パラフィンなどの鉱油中に有効成分を懸濁させることで製剤することができる。油系懸濁液には、蜜ロウ、硬パラフィンもしくはセチルアルコールなどの増粘剤を含有させることができる。上記のような甘味剤および香味剤を加えて、風味の良い経口製剤を得ることができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの酸化防止剤を加えることで防腐することができる。
【0088】
水を加えることで水系懸濁液を調製する上で好適な分散性粉体および粒剤では、有効成分を、分散剤もしくは湿展剤、懸濁剤および1以上の保存剤との混合で提供する。好適な分散剤もしくは湿展剤および懸濁剤の例としては、前述したものがある。例えば甘味剤、香味剤および着色剤などの別の賦形剤を存在させることもできる。
【0089】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型乳濁液の形とすることもできる。油相は、オリーブ油もしくは落花生油などの植物油または液体パラフィンなどの鉱油、あるいはそれらの混合物とすることができる。好適な乳化剤には、例えば大豆レシチンなどの天然ホスファチド、ならびにソルビタンモノオレエートなどの脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導されるエステルもしくは部分エステル、および例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどのエチレンオキサイドと前記部分エステルとの縮合生成物があり得る。乳濁液にはさらに、甘味剤および香味剤を含有させることもできる。
【0090】
シロップおよびエリキシル剤は、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールまたはショ糖などの甘味剤を加えて製剤することができる。そのような製剤には、粘滑剤、保存剤ならびに香味剤および着色剤を含有させることもできる。医薬組成物は、無菌の注射用水系もしくは油系懸濁液の形とすることができる。この懸濁液は、上記の好適な分散剤もしくは湿展剤および懸濁剤を用いて、公知の方法に従って製剤することができる。無菌注射製剤は、例えば1,3−ブタンジオール溶液として、無毒性の非経口的に許容される希釈剤もしくは溶媒中の無菌注射用液剤または懸濁液とすることもできる。使用可能な許容される担体および溶媒には、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液などがある。エタノール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール類などの共溶媒も使用することができる。さらに、従来から溶媒または懸濁媒体として、無菌の固定油が使用されている。それに関しては、合成モノもしくはジグリセリドなどのいかなる種類の固定油も使用可能である。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射剤の製剤に使用することができる。
【0091】
本発明の治療方法で有用な化合物は、薬剤の直腸投与用の坐剤の形で投与することもできる。その組成物は、常温では固体であるが直腸温度では液体となることで、直腸で融解して薬剤を放出する好適な無刺激性賦形剤とその薬剤とを混和することで製剤することができる。そのような材料には、カカオ脂およびポリエチレングリコール類がある。
【0092】
本発明はまた、製薬上許容される担体と式Iの化合物とを組み合わせる段階を有する医薬組成物の製造方法をも包含する。式Iの化合物を製薬上許容される担体と組み合わせることによって製造される医薬組成物も包含される。
【0093】
治療上有効量の式Iの化合物は、本明細書に記載の用量で本明細書に記載の状態を治療または予防する上で有用な医薬の製造に用いることができる。例えば、式Iの化合物は、喘息、アレルギーおよびアレルギー状態、炎症、COPDまたはびらん性胃炎の治療において有用な医薬の製造で用いることができる。さらにその医薬は、アテローム性動脈硬化疾患発症の予防またはリスク低減、一旦臨床的に顕れた場合にはアテローム性動脈硬化疾患の進行の停止または遅延、さらにはアテローム性動脈硬化疾患事象の第1の発生またはその後の発生の予防またはリスク低減において有用であることができる。式Iの化合物を含む医薬は、本明細書に記載のものなどの1以上の別の活性薬剤を用いる製造することもできる。
【0094】
本発明の構造式Iの化合物は、適切な材料を用いて、下記の図式および実施例の手順に従って製造することができ、下記の具体的な実施例によってさらに例示される。さらに、本明細書に記載の手順を用いることで、当業者は本明細書で特許請求される別の本発明の化合物を容易に製造することができる。しかしながらこれら実施例で示した化合物は、本発明と考えられる唯一の属を形成するものと解釈すべきではない。これら実施例はさらに、本発明の化合物の製造の詳細を説明するものである。当業者であれば、下記の製造手順の条件および方法についての公知の変更を用いてこれら化合物を製造可能なことは容易に理解できる。本発明の化合物は通常、本明細書で前述したものなどの製薬上許容される塩の形態で単離される。単離された塩に相当する遊離アミン塩基は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムの水溶液などの好適な塩基で中和することで発生させることができ、放出されアミン遊離塩基を有機溶媒で抽出し、次に溶媒留去する。このようにして単離されたアミン遊離塩基は、有機溶媒に溶かしてから、適切な酸を加え、次に溶媒留去、沈殿または結晶化を行うことで、別の製薬上許容される塩にさらに変換することができる。温度はいずれも、別段の断りがない限り摂氏単位である。質量スペクトラム(MS)は、電子スプレーイオン質量分析によって測定した。
【0095】
「標準的なペプチドカップリング反応条件」という用語は、HOATまたはHOBTなどの補助的求核剤の存在下に、塩化メチレンまたはDMFなどの不活性溶媒中で、HATU、EDCおよびPyBOPなどの酸活性化剤を用いて、アミンとカルボン酸をカップリングさせることを意味する。アミンおよびカルボン酸感応基について保護基を使用して所望の反応を促進し、望ましくない反応を低減することは、十分に実証された技術である。保護基を付加および脱離させる上で必要な条件は、グリーンらの著作(Greene, T, and Wuts, P. G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, 1999)などの標準的な教科書に記載されている。CBZおよびBOCが、有機合成で一般的に使用されるアミノ保護基であり、それらの脱離条件は当業者には公知である。例えばCBZは、メタノールまたはエタノールなどのプロトン性溶媒中、パラジウム/活性炭などの貴金属またはそれの酸化物の存在下での接触水素化によって脱離させることができる。他の反応性である可能性がある官能基が存在するために接触水素化が禁忌である場合、CBZ基の脱離は、臭化水素の酢酸溶液で処理することで、あるいはTFAおよびジメチルスルフィドの混合物で処理することで行うこともできる。BOC保護基の脱離は、塩化メチレン、ジオキサン、メタノールまたは酢酸エチルなどの溶媒中、トリフルオロ酢酸、塩酸または塩化水素ガスなどの強酸で行う。
【0096】
略称
Ar:アリール
9−BBN:9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン
BOC(Boc):tert−ブチルオキシカルボニル
Bn:ベンジル
Bu:ブチル
Bu:tert−ブチル
セライト:セライト(商標名)珪藻土
CBZ(Cbz):ベンジルオキシカルボニル
DEAD:ジエチルアゾジカルボキシレート
デス−マーチンペルヨージナン:1,1,1−トリス(アセチルオキシ)−1,1−ジヒドロ1,2−ベンゾジオキソール−3−(1H)−オン
DIAD:ジイソプロピルアゾジカルボキシレート
DIBAL−H:水素化ジイソブチルアルミニウム
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
DMAP:4−ジメチルアミノピリジン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
dppf:1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
EDC:1−(3−ジメチルアミノプロピル)3−エチルカルボジイミド・HCl
equiv.:当量
ES−MS:電子スプレーイオン質量分析
Et:エチル
EtOAc:酢酸エチル
h:時間
HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HetArまたはHAR:ヘテロアリール
HOAt:1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HOBt:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
i:イソ
LDA:リチウムジイソプロピルアミド
LG:脱離基
Me:メチル
min:分
m.p.:融点
MS:質量スペクトラム
Ms:メタンスルホニル
NMM:N−メチルモルホリン
NMO:N−メチルモルホリン−N−オキサイド
NMP:1−メチル−2−ピロリジノン
p:パラ
PCC:クロロクロム酸ピリジニウム
Ph:フェニル
Pr:プロピル
Pr:イソプロピル
p−TSA:パラ−トルエンスルホン酸
PyBOP:ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジンホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
Tf:トリフルオロメタンスルホニル
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン。
【0097】
反応図式A〜Mに、本発明の構造式Iの化合物の好ましい合成方法を示してある。置換基はいずれも、別段の断りがない限り上記で定義の通りである。
【0098】
反応図式Aには、1型のケトンの好ましい合成方法を示した。通常、1は市販されているか、あるいは文献法に従って合成することができる。有機合成で公知の方法を用い、2型のアルコールまたは3型のアルケンを用いて1を製造することもできる。例えば、直接酸化プロトコールを用いて、2を1に変換することができる。そのような変換の好ましい実行方法には、デス−マーチンペルヨージナン、PCC、TPAPなどの炭素−酸素単結合を酸化することができる薬剤で2を処理する操作が関与し得る。別の方法では、2段階ハイドロボレーション−酸化手順を用いて、3を1に変換することもできる。その場合、3を最初に、9−BBN、ジボランなどの好適なハイドロボレーション剤で処理して、中間体のアルキルボランを発生させる。後者の化学種は単離せず、in situで酸化して2とする。次に、上記の酸化方法を用いて、後者を1に変換することができる。
【0099】
【化33】

【0100】
1の製造に関する参考文献をいくつか挙げると、LeBel, N. A., Liesemer, R. N. J. Am. Chem. Soc. 1965, 87, 4301; Gibson, T. J. Org. Chem. 1972, 37, 700; Nicolaou, K. C., Magolda, R. L., Claremon, D. A., J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, 1404; Meltzer, P. C.; Blundell, P., Chen, Z., Yong, Y. F., Madras, B. K., Bioorg. Med. Chem. Let. 1999, 9, 857などがある。
【0101】
反応図式Bには、8型の化合物の好ましい合成方法を示してある。この方法では、アリール基を転位させることができる4型の有機金属試薬で1を処理する。この変換に好ましい有機金属試薬には、有機マグネシウム(グリニャル)または有機リチウム化合物などがある。グリニャル試薬を図式Bに示したように用いる場合、ジエチルエーテル、THFまたはそれらの混合物などの好適なエーテル系溶媒中、−78℃〜溶媒の沸点の温度で反応を行うのが普通である。有機リチウム試薬の場合、その反応は、ジエチルエーテルまたはヘキサンなどの各種溶媒中、−78℃〜室温の温度で行うことができる。グリニャルおよび有機リチウム試薬は多くの場合市販されているが、有機合成での公知の方法に従って合成によって製造することができる。この反応からの生成物は5型のアルコールであり、それはフリーデル−クラフツ反応と称される求電子的芳香族置換プロセスでアリール化することができる。そのようなアリール化を行う上での代表的な条件には、5から誘導される7型の中間体3級炭素カチオンの発生と、それに続く6型の好適な芳香族カップリング相手によるin situでの捕捉などがある。7の形成は、溶液で自発的に起こる場合があり、あるいはそれはp−TSAもしくは濃塩酸などのプロトン酸または好適なルイス酸などの5をイオン化することができる試薬で促進することができる。場合によっては、3−メルカプトプロピオン酸などのフリーラジカル捕捉剤の存在下に、その反応を行うことが好ましいことがある。その反応は代表的には、−20℃〜溶媒の沸点の温度で不活性有機溶媒中で行う。生成物は8型の化合物であり、それを後続の図式に記載の方法に従って操作して、本発明の化合物とすることができる。
【0102】
【化34】

【0103】
反応図式Cには、構造式10の化合物の好ましい合成方法を示してあり、この場合、最初に8の相対的に反応性が高いヒドロキシル基(1位)を作ることが望ましい。例えば、8を、9型のアルキル化剤を用いて直接アルキル化することができる。その反応は代表的には、DMFなどの極性非プロトン性溶媒中、炭酸カリウムまたは炭酸セシウムなどの好適な塩基の存在下に行い、その場合に、9の置換基LGはハライド、メシレートまたはトリフレートなどの良好な脱離基である。この反応からの主要生成物は、構造式10のモノアルキル化生成物と構造式12のビスアルキル化生成物であり、それらはフラッシュクロマトグラフィーによって容易に分離することができる。場合によっては、少量の11型の位置異性体であるモノアルキル化生成物も認められる。10では、下記の図式の残りの部分に示したように、1位に示したORその他の基は、式Iの−(CR−X−(CR−Y−(R1aと等価であり、式12に示したような4位のORその他の基は、式IのRと等価である。
【0104】
【化35】

【0105】
反応図式Dに、15型の化合物の合成における保護基戦略を示してあり、ここでは8の相対的に反応性が低いヒドロキシル基(4位)を最初に作ることが望ましい。例えば、8の相対的に反応性が高いヒドロキシル基(1位)を、シリコン系の保護基手法を用いて選択的に保護することができる。この方法では、DMFなどの溶媒中、イミダゾールの存在下にクロロ−tert−ブチルジフェニルシランなどの好適なシリル化剤で、8を処理する。この反応は代表的には、12〜24時間の期間にわたって、0℃〜室温の温度で行う。生成物は13型のシリルエーテルであり、それは図式Cにおける説明で説明した条件を用いて直接アルキル化することができる。シリコン保護基は、THF中TBAFまたはピリジン中フッ化水素での処理などの適切な脱シリル化法によって脱離することができ、この反応の生成物は、15型のフェノールである。
【0106】
【化36】

【0107】
反応図式Eには、10の好ましい処理方法をいくつか示してある。例えば、トルエンのような非プロトン性溶媒中ピリジンまたはトリエチルアミンなどの好適な塩基存在下に、無水トリフ酸などのトリフ化剤で10を処理することができる。−78℃〜室温の温度で、1〜24時間にわたってその反応を行うのが普通である。この反応の生成物は構造式16のトリフレートであり、それは有機合成の当業者には公知の各種合成方法によって処理することができ、そのうちの3種類を図式F、GおよびHに示してある。
【0108】
あるいは、トルエンのような不活性溶媒中、トリエチルアミンなどの好適な塩基存在下に、10を17型のイソシアネートで処理することができる。代表的には、17は市販されているか、あるいは合成的に製造することができ、この反応の生成物は構造式18のカーバメートである。場合によっては、17をin situで発生させることが好ましいことがあり、それは代表的には、アシルアジドなどの適切な前駆体から行う。別法では、ホスゲン、トリホスゲンまたはカルボニルジイミダゾールなどの好適なカルボニル等価体で10を処理することができる。短時間の後、代表的には0.1〜1時間後に、1級または2級アミンを加え、この反応の生成物は構造式18のカーバメートである。この反応手順は、0℃〜室温の温度で1〜24時間にわたり、塩化メチレンのような好適な不活性有機溶媒中にて行う。
【0109】
さらに別の例では、図式Cの議論で説明した条件を用いて10を直接アルキル化して、構造式19の誘導体を得ることができる。
【0110】
【化37】

【0111】
反応図式Fには、構造式20、21および22の化合物の好ましい合成方法を示した。この方法では、DMFまたはNMPのような不活性有機溶媒中、[1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]ジクロロパラジウム(II)などの好適なパラジウム触媒の存在下に、16をアリルトリブチルスタンナンまたはビニルトリブチルスタンナンのいずれかで処理する。この反応は通常、2〜24時間の期間にわたり、代表的には50〜100℃という高温で行う。場合によっては、塩化リチウムなどの添加剤を用いて、反応を促進することが必須であることがある。多くの場合、反応をマイクロ波照射下で行った場合に、反応時間を大幅に短縮することができる。この反応の生成物は構造式20のアルケンであり、それを有機合成で公知の各種方法を用いて合成的に処理することができる。例えば、20を酸化的に開裂させて21型のアルデヒドを得ることができ、それをさらに酸化して構造式22のカルボン酸誘導体とすることができる。その酸化的開裂反応の好ましい方法は、反応図式Fに示した2段階法である。最初に、アセトン−水などの溶媒系中、NMOなどの化学量論量の再酸化剤(reoxidant)存在下に、触媒の四酸化オスミウムを用いて、アルケン20を酸化して隣接ジオールとする。生成する中間体の隣接ジオールは通常は単離せず、次にTHF−水のような好適な混合溶媒系中にて過ヨウ素酸ナトリウムで開裂させて、21を得る。この酸化的開裂手順の両方の段階は通常、0℃〜室温の温度で数分間〜数時間の期間で完了する。あるいは、20の酸化的開裂は、オゾンを用いるか、あるいは当業者には公知の他の方法によって行うこともできる。次に、緩衝亜塩素酸塩酸化系を用いて、アルデヒド21をさらに酸化して22とすることができる。この方法では、2−メチル−2−ブテンなどの塩素捕捉剤存在下に21を亜塩素酸ナトリウムおよびリン酸一ナトリウムで処理する。この反応は代表的には、0℃〜室温の温度で、1〜6時間の期間にわたり、n−ブタノール−水のような溶媒系中で行う。21および22のいずれも、有機合成で公知の多くの方法で処理して、本発明の他の化合物を形成することができる。
【0112】
【化38】

【0113】
反応図式Gには、構造式22の化合物(n=0)の別途合成方法を示してある。この方法では、DMFのような不活性有機溶媒中、1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]ジクロロパラジウム(II)などの好適なパラジウム触媒およびトリエチルアミンなどの3級アミン塩基の存在下に、16をメタノールで処理する。この反応は通常、一酸化炭素雰囲気下、6〜24時間にわたり、高温にて、代表的には50〜100℃で行う。場合によっては、高圧の一酸化炭素または塩化リチウムなどの添加剤を用いて、反応を促進または加速することが好ましいことがある。この反応の生成物は構造式16aのエステルであり、それは有機合成の当業者には公知の各種加水分解方法を用いて22(n=0)に変換することができる。
【0114】
【化39】

【0115】
反応図式Hには、構造式24の化合物の好ましい合成方法を示してある。スズキ−ミヤウラ(Suzuki-Miyaura)反応と一般に称されるこの方法では、[1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]ジクロロパラジウム(II)および炭酸ナトリウム水溶液などの好適なパラジウム触媒の存在下に、16を23型のアリール−もしくはヘテロアリール−ボロン酸で処理する。この反応は通常、6〜24時間にわたり約80℃でトルエン−エタノールなどの好適な組み合わせの不活性有機溶媒中で行い、生成物は構造式24のビアリールである。
【0116】
【化40】

【0117】
反応図式Iには、22を25型のアミンで処理して構造式26のアミドを得る最も一般的な場合の合成方法を示している。反応図式Iに示したアミド結合カップリング反応は、DMF、塩化メチレンなどの適切な不活性溶媒中で行い、HATU、EDCまたはPyBOPなどのアミドカップリング反応に好適な各種試薬を用いて行うことができる。反応図式Iに示したアミド結合カップリング反応に好ましい条件は、有機合成の当業者には公知である。そのような変更には、トリエチルアミン、DIPEAもしくはNMMなどの塩基性試薬の使用またはHOAtもしくはHOBtなどの添加剤の添加などがあるが、これらに限定されるものではない。あるいは、25を22の活性化エステルまたは酸塩化物誘導体で処理することができ、それによっても構造式26のアミドが得られる。反応図式Iに示したアミド結合カップリングは通常、0℃〜室温の温度、場合によっては高温で行い、そのカップリング反応は代表的には1〜24時間行う。
【0118】
【化41】

【0119】
反応図式Jには、構造式28の化合物の好ましい合成方法を示した。この方法では、22についてクルチウス反応を行って、構造式27のN−Boc保護アミンを得る。この反応は、トルエンのような溶媒中、トリエチルアミンまたはDIPEAなどの3級アミンの存在下に、ジフェニルホスホリルアジドと22を反応させることで行う。最初の生成物はアシルアジドであると一般に認められており、それがアシルカルベン類のウォルフ転位に類似の熱プロセスでイソシアネートに転位する。この転位は、代表的には溶媒の還流温度で、例えば110℃で行い、その転位は通常は1〜5時間で完了する。生成する中間体のイソシアネートは通常は単離せず、次にtert−ブチルアルコールなどの好適なアルコールとのin situ反応を行って、構造式27のアミンを得る。EtOAc中塩化水素または塩化メチレン中TFAでの処理などの好適な脱保護方法によって、N−BOC基を脱離させる。その脱保護は、代表的には0℃〜室温の温度で行い、その反応は通常0.5〜3時間で完了する。生成物である構造式28のアミンを、反応図式Kでカップリング相手として用いたり、あるいは有機合成で公知の各種方法を用いて合成的に修飾することで、本発明の他の化合物を得ることができる。
【0120】
【化42】

【0121】
反応図式Kには、構造式31の化合物の好ましい合成方法を示した。例えば、反応図式Iに示した一般的なアミドカップリングプロトコールについて記載の試薬および条件を用いて、29型のカルボン酸とのアミド結合カップリング反応で28を用いることで、構造式31のアミドを得ることができる。あるいは、28を30型の活性化エステルまたは酸塩化物誘導体で処理することができ、それによっても31が得られる。そのような変換を行う上での代表的な条件には、トリエチルアミンなどの3級アミン塩基存在下で28を30で処理するものなどがある。0℃〜溶媒の還流温度の温度で、非常に多くの場合室温で、1〜24時間にわたり、DMFまたは塩化メチレンなどの不活性有機溶媒中で、その反応を行うのが一般的である。
【0122】
【化43】

【0123】
反応図式Lに示したように、ミツノブ反応のフクヤマによる変更(Fukuyama, T.; Jow, C.-K.; Cheung, M. Tetrahedron Lett. 1995, 36, 6373-74)を用いて、28を処理することもできる。例えば、塩化メチレンなどの不活性有機溶媒中、28を2−ニトロベンゼンスルホニルクロライド、4−ニトロベンゼンスルホニルクロライドもしくは2,4−ジニトロベンゼンスルホニルクロライドなどのアリールスルホニルクロライドおよび2,4,6−コリジンもしくは2,6−ルチジンなどの3級アミン塩基と反応させることができる。この反応の生成物は32型のスルホンアミドであり、それをトリフェニルホスフィンおよびDEAD、DIADなどの活性化剤の存在下に33型のアルコールと反応させることでさらに修飾することができる。その反応は、ベンゼン、トルエン、THFまたはそれらの混合物などの好適な有機溶媒中、代表的には室温で行い、その反応は通常0.5〜3時間で完了する。この反応の生成物は、34型のジアルキルスルホンアミドであり、それは塩化メチレンなどの溶媒中にてn−プロピルアミンなどの求核性アミンで処理することで、あるいは塩化メチレン中にてメルカプト酢酸およびトリエチルアミンで処理することで脱スルホニル化することができる。いずれの場合もその反応は、代表的には室温で、5分間〜1時間にわたって行う。2−または4−ニトロベンゼンスルホニル誘導体を用いる場合、スルホンアミドの開裂を、DMFのような溶媒中にてチオフェノールおよび炭酸カリウムの組合せを用いて、あるいはDMF中にてメルカプト酢酸および水酸化リチウムを用いて行う。いずれの場合も、反応は室温で1〜3時間にわたって行う。構造式35の2級アミン生成物を、有機合成で公知の各種方法を用いてさらに修飾して、本発明の他の化合物を得ることができる。例えば、反応図式Lの下部分に記載の条件を用いて、35について36型のアルデヒドまたはケトンとの還元的アミノ化反応を行って、37型の化合物を得ることができる。
【0124】
【化44】

【0125】
図式Mに、二環式環系が対称面を持たない構造式38の化合物の好ましい分割方法を示した。一般に、後者またはその製造の途中の中間体を、キラル固定相液体クロマトグラフィー技術その他の有機合成で公知の好適な方法によって分割して、39および40などのエナンチオマー的に純粋な化合物を得ることができる。
【0126】
【化45】

【0127】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供されるものであり、いかなる形態でも本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0128】
中間体の製造
【0129】
【化46】

【0130】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−オン(I−1a)を、ガスマンの報告(Gassman, P. G. J. Org. Chem. 1964, 29,160-163)およびそこに引用の文献に従って製造した。
【0131】
【化47】

【0132】
(±)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)ベンゼン−1,4−ジオール(I−2b)の製造
段階A:(±)−2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール(I−2a)の製造
ノルカンファー(60.0g、0.54mol)のTHF(1リットル)溶液に−65℃で、フェニルマグネシウムブロマイド(3Mエーテル溶液200mL、0.60mol)を加えた。添加中、温度を−65℃〜−20℃に維持した。添加完了後、混合物を徐々に昇温させて室温とし、終夜攪拌した。混合物を冷却して0℃とし、飽和塩化アンモニウム水溶液(200mL)を注意深く加えた。残留する塩が溶解するまで、1N塩酸溶液を加えた。混合物をエーテルで2回抽出し、合わせた有機相を水およびブラインの順に洗浄した。有機層を脱水し(MgSO)、濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc9:1)によって、I−2aを白色固体として得た(95.0g)。
【0133】
段階Bv1:(±)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)ベンゼン−1,4−ジオール(I−2b)の製造
ディーン−スターク装置を用いて水を共沸脱水しながら15分間にわたり、ハイドロキノン(100g、0.91mol)およびp−TSA・1水和物(9.00g、47.0mmol)のトルエン(1.5リットル)溶液を加熱還流した。I−2a(85.0g、0.45mol)のトルエン(100mL)溶液を、滴下漏斗を用いて上記溶液に加え、得られた混合物を3時間還流攪拌した。冷却して室温とした後、反応混合物をEtOAc(1リットル)で希釈し、水、ブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、溶媒留去した。有機相の溶媒留去中に、沈殿したハイドロキノンを濾過によって除去した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc3:1)によって、I−2bをピンク固体(34.0g)、融点179〜181℃として得た。C1920の元素分析、計算値:C、81.40;H、7.19;実測値:C、81.07;H、7.17。
【0134】
段階Bv2:(±)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)ベンゼン−1,4−ジオール(I−2b)の製造
ハイドロキノン(2当量)のジオキサン溶液を室温で予め攪拌していたものに、塩化アルミニウム(III)(1当量)を加えた。I−2aのジオキサン溶液を、均一電動注射器添加によって約30分間かけて加えた。2回目の塩化アルミニウム(III)(1当量)を加え、得られた混合物を室温で約15時間攪拌した。反応混合物を氷/2N HCl(1:1)の高攪拌混合物に投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、濃縮した。粗残留物は、上記の方法に従って精製することができる(段階Bv1)。
【0135】
中間体I−2bについて前述したものと同様の手順に従って、下記の別の中間体を製造することができる。
【0136】
表I−1
【0137】
【表2】


【0138】
【化48】

【0139】
ニコチニルアジド(I−3a)の製造
ニコチン酸(1.23g、10.0mmol)のDMF(15mL)懸濁液に、ジフェニルホスホリルアジド(2.60mL、12.0mmol)と次にトリエチルアミン(1.67mL、12.0mmol)を加えた。得られた混合物を室温で2.5時間攪拌し、水(50mL)で希釈した。混合物をEtOAcで3回抽出し、合わせた有機抽出液を水で3回洗浄し、脱水し(MgSO)、濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc7:3)によって、I−3aを白色固体(1.13g)として得た。
【実施例】
【0140】
実施例化合物の製造(表1〜9における質量スペクトラムデータを有する化合物を合成的に製造した)
【0141】
【化49】

【0142】
(実施例1a、1bおよび1c)
段階Av1:(±)−2−{[2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)フェノキシ]メチル}キノリン(1a)および(±)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イル−メトキシ)フェノール(1b)の製造
I−2b(6.48g、23.1mmol)のDMF(130mL)溶液に、室温で、カリウムtert−ブトキシド(1M THF溶液23.1mL、23.1mmol)を滴下した。滴下中に、反応混合物は不均一系から均一系に変わった。得られた溶液を室温で20分間熟成させた。2−(クロロメチル)キノリン(3.90g、22.0mmol)のDMF(5mL)溶液を加え、得られた混合物を室温で18時間攪拌した。反応混合物を0℃で水/1N塩酸(300mL:25mL)に投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水で3回洗浄し、脱水し(MgSO)、濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc/トリエチルアミン48:1:1)によって、溶出順に下記のものを得た。
【0143】
固体としてのビス付加物1a(2.20g)、融点176〜177℃、C3934の元素分析、計算値:C、83.25;H、6.09;N、4.98;実測値:C、82.91;H、6.07;N、4.86。
【0144】
固体としてのモノ付加物1b(3.12g)、融点221〜224℃。
【0145】
段階Av2:(±)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)フェノール(1b)の製造
I−2b(8.60g、0.03mol)および2−(クロロメチル)キノリン(7.41g、0.04mol)のDMF(50mL)溶液を攪拌しながら、ヨウ化カリウム(6.95g、0.04mol)および炭酸カリウム(5.52g、0.04mmol)をその順序で加えた。約16時間後、反応混合物を1N塩酸でpH6の酸性とした。沈殿した固体を濾過して、標題化合物1bを得た。水相をEtOAcで2回抽出し、合わせた有機抽出液を水で3回、ブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として2%から25%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、追加量の標題化合物1bを得た。
【0146】
段階B:(±)−2−{[4−メトキシ−3−(2−フェニルビシクロ]2.2.1]ヘプト−2−イル)フェノキシ]メチル}キノリン(Ic)の製造
1b(200mg、0.47mmol)のDMF(4mL)溶液に、炭酸セシウム(186mg、0.57mmol)と次にヨウ化メチル(35.0μL、0.57mmol)を加えた。混合物を室温で18時間攪拌し、水(20mL)で希釈し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水で3回洗浄し、脱水し(MgSO)、濃縮した。残留物(210mg)をヘキサン/エーテルの1:1混合物で磨砕して、1cを固体として得た(113mg)。融点138〜139℃。
【0147】
実施例1a〜cについて前述したものと同様の手順に従って、下記の化合物を製造した。
【0148】
表1
【0149】
【表3】


【0150】
【化50】

【0151】
(実施例2a、2b、2cおよび2d)
段階A:トリフルオロメタンスルホン酸(±)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)フェニル(2a)の製造
1b(500mg、1.19mmol)のピリジン(5mL)溶液をトルエン(5mL)で希釈し、冷却して0℃とした。その混合物に、無水トリフルオロメタンスルホン酸(0.20mL、1.19mmol)を滴下した。得られた混合物を室温で18時間攪拌した。2回目の無水トリフルオロメタンスルホン酸(0.06mL、0.36mmol)を加え、約4時間後に反応混合物を水で希釈し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水で洗浄し、脱水し(MgSO)、濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc9:1)によって固体(533mg)を得た。それをヘキサンで磨砕して、2aを固体として得た(402mg)。融点131〜132℃。
【0152】
段階B:(±)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)安息香酸メチル(2b)の製造
2a(280mg、0.50mmol)のDMF(4.8mL)およびメタノール(4.8mL)溶液に、酢酸パラジウム(II)(12.0mg、0.05mmol)、dppf(54.0mg、0.10mmol)およびトリエチルアミン(0.15mL、1.10mmol)をこの順序で加えた。反応混合物を一酸化炭素で飽和させ、一酸化炭素雰囲気下に(風船)18時間にわたって80℃で加熱した。室温まで冷却した後、反応混合物を水(20mL)に投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水で3回洗浄し、脱水し(MgSO)、濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc9:1)によって固体(122mg)を得て、それをエーテル/ヘキサンで磨砕して、2bを固体(62mg)として得た。融点106〜107℃。
【0153】
段階C:(±)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)安息香酸(2c)の製造
2b(67.0mg、0.14mmol)のTHF(3mL)および1,2−プロパンジオール(3mL)溶液に、水酸化カリウム水溶液(8M水溶液0.40mL、3.20mmol)を加えた。混合物を110℃で18時間攪拌し、冷却して室温とした。反応混合物を水で希釈し、1N塩酸で酸性とし、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水で洗浄し、脱水し(MgSO)、濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル;塩化メチレン/メタノール/濃水酸化アンモニウム(85:15:1))によって固体(48.0mg)を得て、それをエーテル/ヘキサンで磨砕して、2cを固体として得た(38mg)。融点205〜210℃(分解)。
【0154】
H NMR(300MHz、アセトン−d):δ0.80〜0.90(m、1H)、1.15〜1.50(m、4H)、1.70(d、1H)、1.90〜2.00(m、1H)、2.25(brs、1H)、2.75(dd、1H)、2.90(brs、1H)、5.55(s、2H)、6.95(dd、1H)、7.00〜7.15(m、5H)、7.60〜7.65(m、3H)、7.75〜7.85(m、2H)、8.00(d、1H)、8.08(d、1H)、8.40(d、1H)。
【0155】
段階D:(±)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−N−(ピリジン−3−イルメチル)−4(キノリン−2−イルメトキシ)ベンズアミド(2d)の製造
2c(1.0当量)、3−(アミノメチル)ピリジン(1.0当量)およびHATU(1.5当量)のDMF溶液を室温で攪拌しながら、それにDIPEA(3.0当量)を加える。反応完了後、反応混合物を水に投入し、EtOAcで3回抽出する。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮する。粗残留物を、段階Eに記載の方法に従って精製することができる。
【0156】
段階E:(±)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−N−(ピリジン−3−イルメチル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)ベンズアミド(2d)の製造
2a(200mg、0.38mmol)のDMF(3.4mL)溶液に、酢酸パラジウム(II)(8.40mg、0.04mmol)、dppf(42.0mg、0.08mmol)および3−(アミノメチル)ピリジン(0.15mL、1.50mmol)をその順序で加えた。反応混合物を一酸化炭素で飽和させ、一酸化炭素雰囲気下(風船)で18時間にわたり80℃で加熱した。冷却して室温とした後、反応混合物を水(20mL)に投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水で3回洗浄し、脱水し(MgSO)、濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル;EtOAc)によって固体(23.0mg)を得て、それをエーテルで磨砕して、2dを固体として得た(15.0mg)。融点179〜181℃。
【0157】
実施例2a〜dについて前述したものと同様の手順に従って、下記の化合物を製造することができる。
【0158】
表2
【0159】
【表4】



【0160】
【化51】

【0161】
(実施例3a、3b、3c、3dおよび3e)
段階A:(±)−2−{[4−(1,3−ベンゾチアゾリル−2−イルメトキシ)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェノキシ]メチル}−1,3−ベンゾチアゾール(3a)(±)−4−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルメトキシ)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェノール(3b)の製造
室温で、I−2b(1.40g、5.00mmol)のDMF(30mL)溶液に、カリウムtert−ブトキシド(1.0M THF溶液5.00mL、5.00mmol)を滴下した。滴下中に、反応混合物は不均一系から均一系に変わった。25分後、2−(クロロメチル)−1,3−ベンゾチアゾール[(920mg、5.00mmol)、ミラリらの報告(Mylari, B. L. et al. Synth. Commun. 1989, 19, 2921-24)に従って製造]のDMF(2mL)溶液を加え、得られた混合物を室温で18時間攪拌した。反応混合物を25%酢酸アンモニウム水溶液(100mL)に投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水で3回洗浄し、脱水し(MgSO)、濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン/EtOAc19:1)によって、ビス付加物3aをベージュ固体として得た(280mg)。融点165〜167℃。C3530Sの元素分析、計算値:C、77.46;H、5.57;N、5.16;実測値:C、77.59;H、5.70;N、5.40。
【0162】
ヘキサン/EtOAc/トリエチルアミン(70:30:4)でさらに溶離することで、モノ付加物3bを泡状物として得た(503mg)。
【0163】
H NMR(500MHz、アセトン−d):δ0.90〜1.00(m、1H)、1.20〜1.28(m、1H)、1.28〜1.40(m、2H)、1.40〜1.52(m、1H)、1.72(d、1H)、1.98〜2.05(m、1H)、2.30(brs、1H)、2.60(dd、1H)、3.10(d、1H)、3.80(brs、1H)、5.55(s、2H)、6.60(d、1H)、6.75(dd、1H)、7.05(t、1H)、7.05〜7.15(m、2H)、7.15〜7.60(m、2H)、7.40(s、1H)、7.48(t、1H)、7.55(t、1H)、8.05(d、1H)、8.10(d、1H)。
【0164】
段階Bv1:(±)−4−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルメトキシ)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェニルピリジン−3−イルカーバメート(3c)の製造
ニコチニルアジド(89.0mg、0.60mmol)のトルエン(3mL)溶液を30分間加熱還流して、相当するイソシアネート誘導体をin situで形成した。その溶液に、固体の3b(170mg、0.40mmol)と次にDIPEA(104μL、0.60mmol)を加えた。得られた混合物を3時間還流させ、冷却して室温とし、溶媒留去した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル;EtOAc/酢酸1:0から39:1)によって、3cを泡状物として得た(138mg)。C3329Sの元素分析、計算値:C、72.37;H、5.34;N、7.67;実測値:C、71.98;H、5.45;N、7.79。
【0165】
H NMR(500MHz、アセトン−d):δ0.80〜0.90(m、1H)、1.20〜1.40(m、2H)、1.40〜1.52(m、2H)、1.75(d、1H)、1.88(dt、1H)、2.32(brs、1H)、2.75(d、1H)、3.05(brs、1H)、5.68(s、2H)、6.95〜7.08(m、6H)、7.22〜7.30(m、2H)、7.50(t、1H)、7.55〜7.60(m、2H)、7.80(d、1H)、8.05(d、1H)、8.12(d、1H)、8.25(d、1H)、8.60(s、1H)、8.95(brs、1H)。
【0166】
段階Bv2:(±)−4−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルメトキシ)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェニルピリジン−3−イルカーバメート(3c)の製造
3bの塩化メチレン溶液を約0℃で攪拌しながら、それにトリホスゲン(0.4当量)、次にピリジン(1.5当量)をその順序で加えた。約45分後、3−アミノピリジン(4当量)と次にトリエチルアミン(5当量)を加えた。約15分後、反応混合物を昇温させて室温とし、2時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液で反応停止し、水に投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物を、上記(段階Bv1)の方法に従って精製することができる。
【0167】
段階C:(+)4−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルメトキシ)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェニルピリジン−3−イルカーバメート(3d)および(−)4−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルメトキシ)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェニルピリジン−3−イルカーバメート(3e)の製造
下記の分割手順によって、エナンチオマー3dおよび3eを得た。3c(90.0mg)のヘキサン/2−プロパノール(16mL、4:1)溶液を、キラルパック(Chiralpak(登録商標))AD(Chiral Technologies, Inc., Exton, Pa.から入手可能)半分取(250×20mm)HPLCカラム(ヘキサン/2−プロパノール4:1で溶離、流量10mL/分、270nmでのUV検出)に注入した(8mLで2回)。それらのエナンチオマーを分離し、先に溶出したエナンチオマー3dは約33分の保持時間を有しており、遅れて溶出したエナンチオマー3eは約45分の保持時間を有していた。溶出液を濃縮して、エナンチオマー3d(泡状物、28.0mg、α+139.6°(c=1、クロロホルム))および3e(泡状物、29.0mg、α−137.2°(c=1、クロロホルム))を得た。
【0168】
実施例3a〜eについて前述したものと同様の手順に従って、下記の化合物を単一のエナンチオマーまたはラセミ混合物として製造することができる。
【0169】
表3
【0170】
【表5】


【0171】
【化52】


【0172】
(実施例4a、4b、4c、4dおよび4e)
段階A:(+)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)安息香酸メチル(ent−4a)および(−)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)安息香酸メチル(4a)の製造
2b(約0.5g)のヘプタン/2−プロパノール(20mL、4:1)溶液を、キラルパック(登録商標)AD(Chiral Technologies, Inc., Exton, Pa.から入手可能)分取HPLCカラム(250×100mm、溶離液として20%2−プロパノール/イソオクタン、流量250mL/分、300nmでのUV検出)に注入した。これらのエナンチオマーを分離し、先に溶出したエナンチオマー4aは11.26分の保持時間を有し、遅く溶出したエナンチオマーは14.75分の保持時間を有していた。分離した分画を濃縮して、先に溶出するエナンチオマー4a(泡状物、(−)CD偏向)および遅く溶出するエナンチオマーent−4a(泡状物、(+)CD偏向)を得た。
【0173】
段階B:(−)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)安息香酸(4b)の製造
4a(1.70g、3.67mmol)のTHF(30mL)および1,2−プロパンジオール(30mL)溶液を攪拌しながら、それに水酸化カリウム水溶液(8M水溶液10.5mL、84.3mmol)を加えた。混合物を110℃で18時間加熱し、冷却して室温とした。反応混合物を水で希釈し、1N塩酸でpH6の酸性とし、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮して4bを得た。それを精製せずに次の反応で用いた。
【0174】
段階C:(−)−2−[2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)ベンゾイル]ヒドラジンカルボン酸tert−ブチル(4c)の製造
4b(1.76mmol)、カルバジド酸t−ブチル(1.16g、8.78mmol)およびHATU(1.34g、3.52mmol)のDMF(20mL)溶液を室温で攪拌しながら、それにDIPEA(1.53mL、8.78mmol)を加えた。約18時間後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から35%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、標題化合物4cを得た。m/z(ES)564(MH)
【0175】
段階D:(−)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)ベンゾヒドラジド(4d)の製造
4c(0.99g、1.76mmol)の塩化メチレン(5mL)溶液を室温で攪拌しながら、それに冷塩化水素/EtOAc(10mL;飽和溶液)を加えた。約1時間後、反応混合物を減圧下に濃縮し、粗残留物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液と塩化メチレンとの間で分配した。有機相を分離し、水相を塩化メチレンで再抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮して、4dを白色粉末として得た(m/z(ES)464(MH))。それを以上精製せずに、次の段階で用いた。
【0176】
段階E:(−)−5−[2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)フェニル]−1,3,4−オキサジアゾール−2(3H)−オン(4e)の製造
4d(365mg、0.79mmol)の塩化メチレン(20mL)溶液を−78℃で攪拌しながら、それに注射器でホスゲン(約20重量/体積%のトルエン溶液751μL、1.42mmol)を滴下した。約45分後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に投入し、塩化メチレンで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物を、YMCパックプロ(YMC Pack Pro)C18固定相(勾配溶離;溶離液として0%から75%アセトニトリル/水、調節剤として0.1%TFA)での分取逆相HPLCによって精製した。精製分画の凍結乾燥によって、標題化合物4eを得た。m/z(ES)490(MH)
【0177】
段階F:トリフルオロメタンスルホン酸4−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルメトキシ)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェニル(4f)の製造
実施例2aについて記載の方法(段階A、図式2)に従って行った。
【0178】
段階G:(±)−4−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルメトキシ)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)安息香酸メチル(4g)の製造
緩やかなアルゴン流を15分間通すことで脱気しておいた4fのDMF(3.5mL)溶液を攪拌しながら、それに、トランス−ジ−μ−アセトビス[2−(ジ−o−トリルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II)(328mg、0.35mmol)およびrac−2,2′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1′−ビナフチル(500mg、0.80mmol)を加えた。その混合物について、排気およびアルゴンパージを3回行った。メタノール(3.5mL)およびトリエチルアミン(0.24mL、1.80mmol)を加え、得られた混合物について排気と一酸化炭素パージを3回行った。室温で30分間攪拌した後、反応混合物を加熱して80〜85℃とした。16時間後、反応混合物を冷却して室温とし、水(5mL)に投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離、溶離液として0%から6%EtOAc/ヘキサン)によって粗残留物を精製することで、標題化合物4gを白色泡状物として得た。R:0.30(4:1ヘキサン:EtOAc)。m/z(ES)470(MH)
【0179】
実施例4a〜gについて前述したものと同様の手順に従って、下記化合物を単一エナンチオマーまたはラセミ混合物として製造することができる。
【0180】
表4
【0181】
【表6】


【0182】
【化53】

【0183】
(実施例5a、5b、5c、5dおよび5e)
段階A:5−[2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)フェニル]−1,3、4−オキサジアゾール−2(3H)−チオン(5a)の製造
4d(0.11mmol)のTHF(900μL)溶液を−78℃で攪拌しながら、それにチオホスゲン(10.0μL、0.13mmol)を加えた。約45分後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に投入し、塩化メチレンで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物を、YMCパックプロC18固定相での分取逆相HPLC(勾配溶離;溶離液として0%から75%アセトニトリル/水、調節剤として0.1%TFA)によって精製した。精製した分画の凍結乾燥によって、標題化合物5aを得た。m/z(ES)506(MH)
【0184】
段階B:5−[2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)フェニル]−1,3,4−オキサジアゾール−2−アミン(5b)の製造
4d(0.108mmol)のジオキサン(1.0mL)溶液を室温で攪拌しながら、それに重炭酸ナトリウム(10.0mg、0.12mmol)の水溶液(水267μL)を滴下した。臭化シアン(13.0mg、0.12mmol)のジオキサン(120μL)懸濁液を、4等量ずつに分けて1分間隔で加えた。約45分後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に投入し、塩化メチレンで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物を、YMCパックプロC18固定相での分取逆相HPLC(勾配溶離;溶離液として0%から75%アセトニトリル/水、調節剤として0.1%TFA)によって精製した。精製分画の凍結乾燥によって、標題化合物5bを得た。m/z(ES)489(MH)
【0185】
段階C:2−{[4−(1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−3−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェノキシ]メチル}キノリン(5c)の製造
4d・HCl塩(54.6mg、0.10mmol)のオルトギ酸トリエチル(600μL)懸濁液を室温で攪拌しながら、それに触媒量のp−TSA(約3mg)を加えた。30分後、1N塩酸(600μL)を加え、得られた溶液をさらに45分間熟成した。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物を、YMCパックプロC18固定相での分取逆相HPLC(勾配溶離;溶離液として0%から75%アセトニトリル/水、調節剤として0.1%TFA)によって精製した。精製分画の凍結乾燥によって、標題化合物5cを得た。m/z(ES)474(MH)
【0186】
段階D:2−{[4−(5−メチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−3−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェノキシ]メチル}キノリン(5d)の製造
4d(50.0mg、0.11mmol)およびトリエチルアミン(38.0μL、0.27mmol)のTHF(900μL)溶液を室温で攪拌しながら、それにアセチルクロライド(10.0μL、0.14mmol)を加えた。約18時間後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に投入し、塩化メチレンで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。粗中間アシルヒドラジドを、塩化チオニル(約1mL、過剰量)で処理し、得られた混合物を約18時間熟成させた。反応混合物を冷飽和重炭酸ナトリウム水溶液に注意深く投入し、塩化メチレンで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物を、YMCパックプロC18固定相での分取逆相HPLC(勾配溶離;溶離液として20%から100%アセトニトリル/水、調節剤として0.1%TFA)によって精製した。精製分画の凍結乾燥によって、標題化合物5dを得た。m/z(ES)488(MH)。
【0187】
段階E:2−({3−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−[5−(トリフルオロメチル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]フェノキシ}メチル)キノリン(5e)の製造
4d(50.0mg、0.11mmol)およびトリエチルアミン(38.0μL、0.27mmol)の塩化メチレン(1.8mL)溶液を室温で攪拌しながら、それに無水トリフルオロ酢酸(22.0μL、0.16mmol)を加えた。約18時間後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液に投入し、塩化メチレンで3回抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。粗中間アシルヒドラジドを、塩化チオニル(約1.5mL、過剰量)で処理し、得られた混合物を約18時間熟成させた。反応混合物を冷飽和重炭酸ナトリウム水溶液に注意深く投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から25%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、標題化合物5eを得た。m/z(ES)542(MH)
【0188】
実施例5a〜eについて前述したものと同様の手順に従って、下記化合物を単一エナンチオマーまたはラセミ混合物として製造することができる。
【0189】
表5
【0190】
【表7】



【0191】
【化54】

【0192】
(実施例6a、6b、6cおよび6d)
段階A:(±)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)ベンゾニトリル(6a)の製造
2a(913mg、1.65mmol)のNMP(8.5mL)溶液を攪拌しながら、それにシアン化亜鉛(155mg、1.32mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(302mg、0.33mmol)およびdppf(457mg、0.83mmol)をその順序で加えた。得られた混合物を緩やかな乾燥窒素気流で90分間にわたり脱気した後、反応混合物を加熱して140℃とした。20時間後、反応混合物を冷却して室温とし、EtOAcで溶離を行うシリカゲルの短いカラムで濾過した。濾液を水、ブラインで2回洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離;溶離液として0%から20%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、標題化合物を白色泡状物として得た。R:0.35(4:1ヘキサン:EtOAc)。m/z(ES)431(MH)H NMR(500MHz、CDCl):δ0.93〜0.98(m、1H)、1.28〜1.34(m、2H)、1.34〜1.40(m、1H)、1.48〜1.58(m、1H)、1.61(brd、1H)、2.06〜2.14(m、1H)、2.44(brt、1H)、2.86(dd、J=2.3、13.3Hz、1H)、3.01(brd、1H)、5.53(s、2H)、6.85(dd、J=2.3、8.4Hz、1H)、7.12〜7.18(m、2H)、7.18〜7.30(m、3H)、7.45(d、J=8.4Hz、1H)、7.53(d、J=2.5Hz、1H)、7.63(m、1H)、7.72(d、J=8.4Hz、1H)、7.81(m、1H)、7.90(d、J=8.3Hz、1H)、8.16(d、J=8.5Hz、1H)、8.29(d、J=8.5Hz、1H)。
【0193】
段階B:(±)−2−{[3−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(1H−テトラゾール−5−イル)フェノキシ]メチル}キノリン(6b)の製造
6a(40.0mg、0.09mmol)のトルエン(0.6mL)溶液を室温で攪拌しながら、それにアジドトリメチルスズ(82.0mg、0.40mmol)を加え、得られた混合物を加熱して140℃とした。72時間後、反応混合物を冷却して室温とし、揮発分を減圧下に除去した。残留物を冷塩化水素/MeOH(1mL;飽和溶液)に取り、室温で20分間攪拌した。反応混合物を減圧下に濃縮し、粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離、溶離液として0%から10%メタノール/塩化メチレン)によって精製して、標題化合物をオフホワイト泡状物として得た。R:0.15(1:2ヘキサン:EtOAc)。m/z(ES)474(MH)H NMR(500MHz、CDCl):δ0.89〜0.93(m、1H)、1.19〜1.26(m、1H)、1.26〜1.40(m、2H)、1.46〜1.55(m、1H)、1.72(brd、1H)、1.88(td、J=2.8、13.6Hz、1H)、2.03(dd、J=2.3、13.7Hz、1H)、2.34(brs、1H)、3.01(brd、J=3.6Hz、1H)、5.55(s、2H)、6.94(dd、J=2.3、8.4Hz、1H)、7.0〜7.22(m、3H)、7.22〜7.32(m、3H)、7.62〜7.68(m、2H)、7.78〜7.86(m、2H)、7.90〜7.96(m、1H)、8.20(m、1H)、8.37(m、1H)。
【0194】
段階C:(±)−2−{[4−(1−メチル−1H−テトラゾール−5−イル)−3−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェノキシ]メチル}キノリン(6c)および2−{[4−(2−メチル−2H−テトラゾール−5−イル)−3−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェノキシ]メチル}キノリン(6d)の製造
6b(31.0mg、0.07mmol)のDMF(1.0mL)溶液を室温で攪拌しながら、それに粉砕したばかりの無水炭酸カリウム(14.0mg、0.10mmol)を加えた。1時間後、ヨウ化メチル(6.20μL、0.10mmol)を注射器を用いて加えた。3時間後、反応混合物を水に投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで繰り返し洗浄し、脱水し(MgSO)、濃縮した。粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して(勾配溶離;溶離液として0%から20%アセトン/ヘキサン)、溶出順に、
オフホワイト泡状物としての標題化合物6d[R:0.50(2:1ヘキサン:EtOAc)。m/z(ES)488(MH)H NMR(500MHz、CDCl):δ0.72〜0.79(m、1H)、1.13〜1.30(m、2H)、1.42〜1.50(m、2H)、1.96(brd、1H)、2.17(td、J=3.5、16Hz、1H)、2.4(brs、1H)、2.44(dd、J=2.5、14Hz、1H)、2.87(d、7=3.9Hz、1H)、4.11(s、3H)、5.49〜5.56(m、2H)、6.71〜6.79(m、2H)、6.88(dd、J=2.7、8.5Hz、1H)、6.94〜7.04(m、3H)、7.15(d、J=8.2Hz、1H)、7.58〜7.61(m、1H)、7.62(d、J=2.5Hz、1H)、7.76〜7.81(m、2H)、7.88(d、J=8.0Hz、1H)、8.13(d、J=8.5Hz、1H)、8.27(d、J=8.5Hz、1H)。]および
オフホワイト泡状物としての標題化合物6c[R:0.45(2:1ヘキサン:EtOAc)。m/z(ES)488(MH)H NMR(500MHz、CDCl):δ0.57〜0.61(m、1H)、1.01〜1.05(m、1H)、1.18〜1.30(m、1H)、1.37〜1.44(m、2H)、1.81(brd、1H)、2.29(td、J=2.9、14Hz、1H)、2.34〜2.42(m、2H)、2.68(s、3H)、2.98(brs、1H)、5.50〜5.56(m、2H)、6.56〜6.80(m、2H)、6.85(d、J=8.4Hz、1H)、6.92(dd、J=2.5、8.2Hz、1H)、7.02〜7.12(m、3H)、7.61(m、1H)、7.66(d、J=2.3Hz、1H)、7.75〜7.82(m、2H)、7.89(d、J=8.0Hz、1H)、8.13(d、J=8.4Hz、1H)、8.29(d、J=8.1Hz、1H)。]を得た。
【0195】
6cを、30%IPA/ヘプタンを用いるキラルパックADカラムによって、それのエナンチオマーに分離した(流量=0.5mL/分、λ=254nM、保持時間:13.4、14.1分)。
【0196】
6dを、10%IPA/ヘプタンを用いるキラルパックADカラムによって、それのエナンチオマーに分離した(流量=0.5mL/分、λ=254nM、保持時間:28.9、39.9分)。
【0197】
実施例6a〜dについて前述したものと同様の手順に従って、下記の化合物を単一のエナンチオマーまたはラセミ混合物として製造することができる。
【0198】
表6
【0199】
【表8】


【0200】
【化55】

(実施例7a、7b、7cおよび7d)
段階A:(−)−N(シアノメチル)−2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)ベンズアミド(7a)の製造
4b(75.0mg、0.17mmol)の塩化メチレン/DMF(9:1;1.0mL)溶液を室温で攪拌しながら、それにアミノアセトニトリル塩酸塩(17.0mg、0.18mmol)、トリエチルアミン(42.0mg、0.42mmol)、HATU(70.0mg、0.18mmol)およびDMAP(5.10mg、0.04mmol)を、この順序で加えた。約15時間後、反応混合物を水に投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を5%クエン酸で2回、水で3回、ブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して(勾配溶離;溶離液として0%から5%メタノール/塩化メチレン)、標題化合物7aを白色泡状物として得た。R:0.20(49:1塩化メチレン:メタノール)。m/z(ES)488(MH)H NMR(500MHz、CDCl):δ0.84〜0.92(m、1H)、1.25〜1.36(m、2H)、1.37〜1.39(m、1H)、1.46〜1.56(m、1H)、1.74(brd、1H)、2.05(dt、J=3.5,13.2Hz、1H)、2.38(brs、1H)、2.48(dd、J=2.3、13.9Hz、1H)、2.86(d、J=2.5Hz、1H)、3.51(dd、J=5.1,17.4Hz、1H)、3.91(dd、J=6.2、17.4Hz)、4.68(t、J=5.5Hz、1H)、5.53(m、2H)、6.83(dd、J=2.3、8.3Hz、1H)、7.11〜7.18(m、3H)、7.18〜7.32(m、3H)、7.52(d、J=2.3Hz、1H)、7.59(t、J=7Hz、1H)、7.72(d、J=8.5Hz、1H)、7.75〜7.79(m、1H)、7.87(d、J=8.2Hz、1H)、8.11(d、J=8.4Hz、1H)、8.25(d、J=8.4Hz、1H)。
【0201】
段階B:(−)−2−{{4−(4−クロロ−1H−イミダゾール−2−イル)−3−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェノキシ]メチル}キノリン(7b)の製造
7a(150mg、0.31mmol)のアセトニトリル(1.0mL)溶液を室温で攪拌しながら、それにトリフェニルホスフィン(197mg、0.75mmol)を加えた。溶解した後、四塩化炭素(116mg、0.75mmol)を注射器から滴下した。得られた混合物を加熱して約50℃とし、2時間攪拌したところ、その間に反応混合物の色が無色から明褐色に変わった。冷却して室温とした後、揮発分を減圧下に除去した。残留物を塩化メチレン(1mL)に取り、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(1mL)を加え、得られた二相混合物を室温で15分間高攪拌した。有機相を分離し、水相をEtOAcで2回抽出した。合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して(勾配溶離、溶離液として0%から40%EtOAc/ヘキサン、標題化合物7bをオフホワイト泡状物として得た。R:0.70(1:2ヘキサン:EtOAc)。m/z(ES)506(MH)H NMR(500MHz、CDCl):δ0.91〜1.02(m、1H)、1.22〜1.38(m、3H)、1.40〜1.55(m、1H)、1.62〜1.68(brd、1H)、1.88〜2.04(m、2H)、2.28〜2.36(brs、1H)、2.89(brs、1H)、5.61(s、2H)、6.54(s、1H)、6.80〜6.96(m、2H)、6.96〜7.16(m、2H)、7.16〜7.36(m、4H)、7.56〜7.60(m、1H)、7.60〜7.68(m、1H)、7.78〜7.86(m、2H)、7.90〜7.96(m、1H)、8.18〜8.32(m、1H)、8.32〜8.38(m、1H)。
【0202】
段階C:(7d):(−)−2−{[4−(4−クロロ−1−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)−3−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェノキシ]メチル}キノリン(7c)および(−)−2−[4−(5−クロロ−1−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)−3−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェノキシ]メチル}キノリンの製造
7b(13.0mg、0.026mmol)のDMF(1.0mL)溶液を室温で攪拌しながら、それに粉砕したばかりの無水炭酸カリウム(5.30mg、0.04mmol)を加えた。1時間後、ヨウ化メチル(2.40μL、0.04mmol)を注射器から加え、得られた混合物を室温で3時間攪拌した。反応混合物を水に投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水で3回、ブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して(勾配溶離、溶離液として0%から20%EtOAc/ヘキサン)、溶出順に、
標題化合物7c[R:0.40(2:1ヘキサン:EtOAc)。m/z(ES)520(MH)H NMR(500MHz、CDCl):δ0.60〜0.68(m、1H)、1.02〜1.09(m、1H)、1.20〜1.44(m、3H)、1.80〜1.85(brd、1H)、2.17(s、3H)、2.28〜2.46(m、3H)、3.0(brs、1H)、5.55(m、2H)、6.41(s、1H)、6.76〜6.96(m、4H)、6.98〜7.16(m、3H)、7.59〜7.70(m、2H)、7.76〜7.98(m、3H)、8.14〜8.26(m、1H)、8.28〜8.36(m、1H)]および
標題化合物7d[R:0.35(2:1ヘキサン:EtOAc)。m/z(ES)520(MH)H NMR(500MHz、CDCl):δ0.58〜0.66(m、1H)、0.98〜1.06(m、1H)、1.20〜1.44(m、3H)、1.80〜1.85(brd、1H)、2.11(s、3H)、2.28〜2.42(m、3H)、3.0(brs、1H)、5.51(m、2H)、6.74〜6.84(m、2H)、6.84〜6.96(m、2H)、7.00〜7.10(m、3H)、7.07(s、1H)、7.56〜7.62(m、2H)、7.76〜7.82(m、2H)、7.90(d、J=8.2Hz、1H)、8.13(d、J=8.5Hz、1H)、8.29(d、J=8.5Hz、1H)。]を得た。
【0203】
実施例7a〜dについて前述したものと同様の手順に従って、下記の化合物を単一のエナンチオマーまたはラセミ混合物として製造することができる。
【0204】
表7
【0205】
【表9】


【0206】
【化56】

【0207】
(実施例8a、8bおよび8e)
段階A:(±)−2−{[4−アリル−3−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)フェノキシ]メチル}キノリン(8a)の製造
2a(500mg、0.90mmol)のNMP(1.5mL)溶液をマイクロ波管中にて室温で攪拌しながら、それにdppf(111mg、0.15mmol)、塩化リチウム(60.0mg、1.42mmol)およびアリルトリブチルスズ(0.44mL、1.42mmol)をその順序で加えた。反応混合物をマイクロ波装置(最大パワー300W)で120℃にて60分間照射した。揮発分を減圧下に除去した後、残留物を飽和フッ化カリウム水溶液(33mL)で処理し、得られた混合物を35℃で2日間高攪拌した。EtOAcで3回抽出した後、合わせた有機抽出液を水、ブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して(勾配溶離;溶離液として0%から20%EtOAc/ヘキサン)、標題化合物8aを得た。R:0.60(4:1ヘキサン:EtOAc)、m/z(ES)446(MH)
【0208】
段階B:(±)−[2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)フェニル]酢酸(8b)、(±)−[2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)フェニル]アセトアルデヒド(8c)および(±)−1−ヒドロキシ−3−[2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)フェニル]アセトン(8d)の製造
8a(100mg、0.22mmol)のアセトニトリル/四塩化炭素/水(0.8mL:0.8mL:2mL)溶液を高攪拌しながら、それに過ヨウ素酸(230mg、1.01mmol)を加えた。10分後、三塩化ルテニウム・水和物(5.60mg、0.03mmol)を加えた。45分後、反応混合物を塩化メチレンで3回抽出し、合わせた有機抽出液を保管しておいた。水相を10%クエン酸水溶液で酸性とし、塩化メチレンで3回抽出した。前記と同様にして、合わせた有機抽出液を保管しておいた。最後に、水相を固体炭酸ナトリウムで中和し、塩化メチレンで3回抽出した。全ての抽出液からの合わせた有機相を脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して(勾配溶離;溶離液として0%から15%メタノール/塩化メチレン)、溶出順に
α−ヒドロキシケトン中間体8d[R:0.85(1:9メタノール:塩化メチレン)。m/z(ES)478(MH)];
アルデヒド中間体8c[R:0.80(1:9メタノール:塩化メチレン)。m/z(ES)448(MH)];および
標題化合物8b[R:0.15(1:9メタノール:塩化メチレン)。m/z(ES)464(MH)]を得た。
【0209】
8c(下記参照、90.0mg、0.201mmol)の2−メチル−2−ブテン(2M THF溶液2.5mL)溶液を室温で攪拌しながら、それに塩化ナトリウム(0.50g、12.5mmol)およびリン酸二水素ナトリウム(0.40g、3.40mmol)の水溶液(水2mL)を加えた。2時間後、反応混合物をEtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を水、10重量/体積%チオ硫酸ナトリウム、ブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して(勾配溶離;溶離液として0%から10%メタノール/塩化メチレン)、8bを得た。それは上記で得たサンプルと同一であった。
【0210】
段階C:(±)−2−[2−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(キノリン−2−イルメトキシ)フェニル]−N−ピリジン−4−イルアセトアミド(8e)の製造
8b(24.0mg、0.05mmol)の塩化メチレン(0.4mL)溶液を攪拌しながら、それに4−アミノピリジン(29.0mg、0.31mmol)、DIPEA(54.0μL、0.31mmol)およびPyBOP(57.0mg、0.11mmol)をその順序で加えた。約15時間後、反応混合物を水に投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を5%重炭酸ナトリウム水溶液で5回、ブラインで洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して(勾配溶離;溶離液として0%から5%メタノール/塩化メチレン)、標題化合物8eを得た。R:0.60(9:1塩化メチレン:メタノール)、m/z(ES)540(MH)
【0211】
実施例4a〜e、5a〜e、8a〜bおよび8eについて前述したものと同様の手順に従って、下記化合物を製造することができる(表8にある化合物はいずれも、ラセミ混合物として製造された)。
【0212】
表8
【0213】
【表10】




【0214】
【化57】

【0215】
(実施例9a)
段階A:(±)−2−{[3−(2−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−4−(2−ピロリジン−1−メチル)フェノキシ]メチルキノリン(9a)の製造
8c(35.0mg、0.08mmol)およびピロリジン(6.50μL、0.08mmol)の1,2−ジクロロエタン(0.27mL)溶液に室温で、水素化ホウ素トリアセトキシナトリウム(23.1mg、0.11mmol)を加えた。1時間後、反応混合物を5%重炭酸ナトリウム水溶液に投入し、EtOAcで3回抽出した。合わせた有機抽出液を脱水し(NaSO)、減圧下に濃縮した。粗残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して(溶離液として5%から20%メタノール/塩化メチレン)、標題化合物9aを得た。R:0.10(1:1ヘキサン:EtOAc)。m/z(ES)503(MH)
【0216】
実施例9aについて前述したものと同様の手順に従って、下記化合物を製造することができる(表9にある化合物はいずれも、ラセミ混合物として製造された)。
【0217】
表9
【0218】
【表11】

【0219】
FLAP結合アッセイ
【0220】
【化58】

【0221】
ヒト白血球10000×g上清からの100000×gペレット(1)をFLAP源とする。100000×gペレット膜を、Tris−Tweenアッセイ緩衝液(100mM TrisHClpH7.4、140mM NaCl、2mM EDTA、0.5mMジチオトレイトール、5%グリセリン、0.05%Tween20)中に再懸濁させて、50μg〜150μg/mLの最終タンパク質濃度を得た。膜懸濁液の少量サンプル(100μLずつ)を、100μL Tris−Tweenアッセイ緩衝液、30000cpmの化合物AのMeOH:アッセイ緩衝液(1:1)(5μL)溶液、ならびにジメチルスルホキシドまたは競合剤(すなわち、被験化合物)のジメチルスルホキシド溶液2μLの入った12mm×75mmポリプロピレン管に加えた。化合物B(最終濃度10μM)を用いて、非特異的結合を測定した。室温で20分間のインキュベーション後、管の内容物を冷0.1 Tris・HClpH7.4、0.05%Tween20洗浄緩衝液で希釈して4mLとし、洗浄緩衝液に予め浸漬しておいたGFBフィルターの濾過によって膜を回収した。管およびフィルターを冷洗浄緩衝液4mLずつで2回洗った。フィルターを、γ−シンチレーションカウンティングによる放射能測定用の12mm×3.5mmポリスチレン管に移し入れた。
【0222】
特異的結合は、総結合から非特異的結合を引いたものと定義される。総結合は、競合剤の非存在下に膜に結合した化合物Aとした。非特異的結合は、10μMの化合物B存在下に結合した化合物Aとした。化合物Aの製造については、下記の参考文献に記載されている。実験データのコンピュータ解析(下記の参考文献2を参照)によって得られるIC50値から、本発明の特定の化合物が、約1nM〜約10μMという高値までの範囲のIC50を示すことが明らかである。
【0223】
【表12】


【0224】
以上、本発明のある種の特定の実施形態を参照しながら本発明について説明したが、本明細書に記載の内容から、多くの別の実施形態が当業者には明らかであろう。本明細書に引用されている全ての特許、特許出願および刊行物は、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式Iによって表される化合物ならびに該化合物の製薬上許容される塩、エステルおよび溶媒和物。
【化1】

[式中、
「a」は、1、2および3から選択される整数であり;
bおよびcはそれぞれ、0、1および2から独立に選択される整数であり;
「A」は、メチレンまたはエチレン基を表し;
各R1aは独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−C1−6アルキル、−CN、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−N(R、−C1−6アルキルN(R、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択され;
各R1bは独立に、−H、−F、−C1−6アルキル、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−N(Rおよび−C1−6アルキルN(R)からなる群から選択され、
あるいは一方のR1b基がオキソを表すことができ、他方は前記で定義の通りであり;
は、−Hを表すか、あるいは
a)ハロ、−OH、−COR、−C(O)NR、−C(O)−Hetcy、−N(R、−S(O)NR、−NO、−SONRC(O)R、−NRSO、−NRC(O)R、−C(O)SONR、−NRC(O)NR、−NRCO、−OC(O)NR、−C(O)NRNR、−CN、−S(O)および−OSO
b)−C1−10アルキル、−C2−10アルケニル、−C2−10アルキニル、−OC1−10アルキル、−OC3−10アルケニルおよび−OC3−10アルキニル[これらの基は、−OH、−CO、−C(O)NR、−C(O)N(R)C1−6アルケニル、−C(O)N(R)C1−6アルキニル、−C(O)−Hetcy、−N(R、−S(O)NR、−SONRC(O)R、−NRSO、−NRC(O)R、−C(O)SONR、−NRC(O)NR、−NRCO、−OC(O)NR、−C(O)NRNR、−S(O)、アリール、HAR、−Hetcyおよび5個以下のフッ素基で置換されていても良く;Hetcyは、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルおよびγ−ラクタムから選択される。];
c)−F、−Cl、−Br、−C1−6アルキル、−CN、−OH、−C1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−C1−6アルキルNH、−C1−6アルキル−NHC1−4アルキル、−C1−6アルキルN(C1−4アルキル)、−C1−6アルキル−CN、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択される1〜2個の構成員で置換されていても良いアリールまたはHAR
からなる群から選択され;
「d」および「e」はそれぞれ、0、1、2および3から独立に選択されて、d+eの合計が1〜6となるようになっている整数であり;
各pは独立に、0、1および2から選択される整数を表し;
Xは、結合を表すか、あるいは−O−、−S(O)−および−NR−からなる群から選択され;
、R、RおよびRはそれぞれ独立に、−H、−C1−6アルキル、−OC1−6アルキル、−OH、−フッ素、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−N(Rからなる群から選択され、
0〜1個のCRおよび0〜1個のCRが、カルボニル、チオカルボニル、C=NRおよび3〜7員シクロアルキル環から選択される基を表すことができ、
ただし、Xが−S(O)−を表し、pが1または2である場合、Xに隣接する前記CRおよびCR基は、カルボニル、チオカルボニルおよびC=NR以外の部分を表し、
さらにはXが−O−または−NR−である場合、Xに隣接するCRおよびCRのうちの少なくとも一つがカルボニル、チオカルボニルおよびC=NR以外の部分を表し;
Yは、アリール、HARおよびHetcyからなる群から選択され、それぞれがR1aでモノ置換またはジ−置換されていても良く;
各Rは独立に、−Hならびに
(a)1〜3個のフッ素基または−OH、−OC1−6アルキル、−CN、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)からなる群から選択される1〜2個の構成員で置換されていても良い−C1−10アルキル、−C3−10アルケニルまたは−C3−10アルキニル、;
(b)アリールまたはAr−C1−6アルキル−[前記アリール部分は、1〜2個の−C1−6アルキル、−CN、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−C1−6アルキルNH、−C1−6アルキルNHC1−4アルキル、−C1−6アルキルN(C1−4アルキル)、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキル、−C(O)N(C1−4アルキル)、−COHおよび−CO1−6アルキル基および1〜3個のF、−Clもしくは−Br基で置換されていても良いく;Ar−C1−6アルキル−の前記アルキル部分は、−OH、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)および1〜3個のフッ素基で置換されていても良い。];
(c)HetcyまたはHetcy−C1−6アルキル−[それぞれ、炭素上で、−F、−OH、−COH、−C1−6アルキル、−CO1−6アルキル、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NHC(O)C1−4アルキル、オキソ、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択される1〜2個の構成員で置換されていても良く;−C1−6アルキルまたは−C1−6アシルが存在する場合には窒素上で置換されていても良く;Hetcy−C1−6アルキル−の前記アルキル部分は、1〜2個の−F、−OH、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)で置換されていても良い。];
(d)HARまたはHAR−C1−6アルキル−[前記HARおよびHAR−C1−6アルキル−のHAR部分は、−F、−Cl、−Br、−C1−6アルキル、−CN、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシNH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキル、−C(O)N(C1−4アルキル)、−COH、−CO1−6アルキルからなる群から選択される1〜2個の構成員で置換されており;HAR−C1−6アルキル−の前記アルキル部分は、1〜2個の−F、−OH、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)で置換されていても良い。]
からなる群から選択され;
各Rは独立に、−H、−NHおよび(1〜3個のフッ素基および1〜2個の−OH、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)からなる群から選択される構成員で置換されていても良い)−C1−10アルキルからなる群から選択され;
同一部分に存在する場合、(a)RおよびR、(b)2個のR基または(c)2個のR基がそれらが結合している原子および介在原子と一体となって、O、S(O)およびNから選択される0〜3個のヘテロ原子を有する4〜7員環を表すことができ;前記4〜7員環は、−C1−6アルキル、−C2−6アシルおよびオキソからなる群から選択される構成員で置換されていても良い。]
【請求項2】
下記構造式Iaを有する請求項1に記載の化合物ならびに該化合物の製薬上許容される塩、エステルおよび溶媒和物。
【化2】

[式中、「a」は1、2および3から選択される整数であり;bおよびcはそれぞれ、0、1および2から独立に選択される整数であり;ただし、「a」+b+cの合計が1〜5である。]
【請求項3】
「a」が1および2から選択される整数であり;bおよびcのうちの一方が0(ゼロ)であって他方が1である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
下記式Ibを有する請求項1に記載の化合物ならびに該化合物の製薬上許容される塩、エステルおよび溶媒和物。
【化3】

[式中、「a」は2および3から選択される整数であり;bおよびcは、0および1から独立に選択される整数であり;ただし、「a」+b+cの合計が2〜4である。]
【請求項5】
「a」が2であり;bおよびcが0および1から選択される整数である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
「a」が2であり;bが1であり;cが0または1である請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記式Iの一般的構造図で示した3個のR1a基が−Hを表し、1個のR1a基が−F、−Cl、−C1−6アルキル、−CN、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−N(R、−C1−6アルキルN(R、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
一方のR1bが−Hを表し、他方のR1bが−H、−F、−C1−6アルキル、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−N(Rおよび−C1−6アルキルN(Rおよびオキソからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
両方のR1b基が−Hを表す請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
が、
a)−C(O)NR、−C(O)−Hetcy、−N(R、−S(O)NR、−SONRC(O)R、−NRSO、−NRC(O)R、−CN、−S(O)および−OSO
b)−C1−10アルキル、−C3−6アルケニル、−C3−6アルキニル、−OC1−10アルキル、−OC3−6アルケニルおよび−OC3−10アルキニル[これらの基は、−CO、−C(O)NR、−C(O)N(R)C1−6アルケニル、−C(O)N(R)C1−6アルキニル、−C(O)−Hetcy、−N(R、−S(O)NR、−SONRC(O)R、−NRSO、NRC(O)R、−S(O)、アリール、HAR、−Hetcyおよび5以下のフッ素基からなる群から選択される構成員で置換されていても良い。];および
c)−F、−Cl、−Br、−C1−6アルキル、−CN、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−C1−6アルキルNH、−C1−6アルキル−NHC1−4アルキル、−C1−6アルキルN(C1−4アルキル)、−C1−6アルキル−CN、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択される1〜2個の構成員で置換されていても良いHAR
からなる群から選択される構成員を表す請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
dおよびeが、0、1、2および3から独立に選択される整数であり;ただし、d+eの合計が1〜3である請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
Xが結合、−Oまたは−S(O)−を表す請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
、R、RおよびRが独立に、−H、−C1−6アルキル、−OC1−6アルキル、−OH、−フッ素、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシおよび−N(Rからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
−(CR−X−C(R−が−O−CH−または−CHCH−からなる群から選択される構成員を表す請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
YがHARを表す請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
Yが、
【化4】

からなる群から選択されるHARを表し;
ZがO、SまたはNHを表し;ZがOまたはSを表す請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
Yが、
【化5】

からなる群から選択されるHARである請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
各Rが独立に、−Hならびに
(a)−C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル、C3−6アルケニル、C3−6アルキニル[それぞれ、1〜3個のフッ素基または−OC1−6アルキル、−CN、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)からなる群から選択される構成員で置換されていても良い。];
(b)アリールまたはAr−C1−6アルキル−[前記アリール部分は、−F、−Cl、−C1−4アルキル、−CN、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−4アルキル、−フルオロC1−4アルコキシ、−C1−4アルキルNH、−C1−4アルキルNHC1−4アルキル、−C1−4アルキルN(C1−4アルキル)、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキル、−C(O)N(C1−4アルキル)、−COHおよび−CO1−6アルキルから選択される構成員で置換されていても良く;Ar−C1−6アルキル−のアルキル部分は、−F、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)で置換されていても良い。];
(c)HetcyまたはHetcy−C1−6アルキル−[それぞれ、−F、−COH、−C1−6アルキル、−CO1−6アルキル、−OC1−6アルキル、−NH、NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NHC(O)C1−4アルキル、オキソ、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択される1〜2個の構成員によって炭素上で置換されていても良く;窒素が存在する場合には窒素上で、−C1−6アルキルまたは−C1−6アシルで置換されていても良く;Hetcy−C1−6アルキル−のアルキル部分は、−F、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)で置換されていても良い。];
(d)HARまたはHAR−C1−6アルキル−[前記HARおよびHAR−C1−6アルキル−のHAR部分は、−F、−Cl、−Br、−C1−6アルキル、−CN、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシNH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキル、−C(O)N(C1−4アルキル)、−COH、−CO1−6アルキルで置換されていても良く;HAR−C1−6アルキル−のアルキル部分は、−F、−OC1−6アルキル、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)で置換されていても良い。]
からなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
各Rが、−Hおよび1〜3個のフッ素基で置換されていても良い−C1−10アルキルからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
【化6】

が、
【化7】

からなる群から選択され;
−(CR−X−(CR−Y−(R1aが、
【化8】

からなる群から選択され;Rが、
【化9】

からなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
下記構造式Icを有する請求項1に記載の化合物。
【化10】

[式中、
dは、0(ゼロ)であり;eは1であり;Xは−O−であり;RおよびRはいずれも−Hであり;Yは、
【化11】

からなる群から選択され;ZはO、SまたはNHを表し;ZはOまたはSを表し;
は、
a)−OC(O)NRおよび−C(O)NR
b)−C(O)−NRおよび−C(O)−Hetcyから選択される構成員で置換されたC1−3アルキル;
およびc)−F、−Cl、−C1−6アルキル、−CN、−OH、−OC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルキル、−フルオロC1−6アルコキシ、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−C1−6アルキルNH、−C1−6アルキル−NHC1−4アルキル、−C1−6アルキルN(C1−4アルキル)、−C1−6アルキル−CN、−NHC(O)C1−4アルキル、−C(O)NHC1−4アルキルおよび−C(O)N(C1−4アルキル)からなる群から選択される1〜2個の構成員で置換されていても良いHAR
からなる群から選択される。]
【請求項22】
Yが、
【化12】

からなる群から選択され;
がHARである場合、HARが、
【化13】

から選択され;
が、−H、−C1−3アルキル、−C3−6シクロアルキル、−Fおよび−Clから選択され;
が、(a)−C1−4−アルキルおよびC3−6シクロアルキル[それぞれ、1〜3個のフッ素基または−OC1−6アルキル、−CN、−NH、−NHC1−4アルキルおよび−N(C1−4アルキル)からなる群から選択される構成で置換されていても良い。]、(b)Hetcyおよび(c)ピリジニルから選択され;Rが−Hである請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
下記のもの:
【表1】



からなる群から選択される請求項1に記載の化合物ならびに該化合物の製薬上許容される塩および溶媒和物。
【請求項24】
治療上有効量の請求項1に記載の化合物および製薬上許容される担体からなる医薬組成物。
【請求項25】
患者におけるロイコトリエン類の合成、作用または放出を予防する方法であって、該患者に対して、有効量の請求項1に記載の化合物を投与する段階を有する方法。
【請求項26】
ロイコトリエンが介在する医学的状態の治療方法であって、そのような処置を必要とする患者に対して、治療上有効量の請求項1に記載の化合物を投与する段階を有する方法。
【請求項27】
炎症状態の治療方法であって、そのような処置を必要とする患者に対して、治療上有効量の請求項1に記載の化合物を投与する段階を有する方法。
【請求項28】
アテローム性動脈硬化の治療方法であって、そのような処置を必要とする患者に対して、治療上有効量の請求項1に記載の化合物を投与する段階を有する方法。
【請求項29】
アテローム性動脈硬化性プラーク進行を停止または遅延させる請求項28に記載の方法。
【請求項30】
アテローム性動脈硬化性プラークの退行を行う請求項28に記載の方法。
【請求項31】
アテローム性動脈硬化性プラークを有する患者におけるアテローム性動脈硬化性プラークの破裂を予防またはリスク低下させる請求項28に記載の方法。
【請求項32】
ロイコトリエンが介在する医学的状態の予防またはリスク低下方法であって、そのような処置を必要とする患者に対して、予防上有効量の請求項1に記載の化合物を投与する段階を有する方法。
【請求項33】
アテローム性動脈硬化発症の予防またはリスク低下方法であって、アテローム性動脈硬化発症の危険性がある患者に対して、予防上有効量の請求項1に記載の化合物を投与する段階を有する方法。
【請求項34】
アテローム性動脈硬化疾患事象の予防またはリスク低下方法であって、アテローム性動脈硬化疾患事象を生じる危険性がある患者に対して、予防上有効量の請求項1に記載の化合物を投与する段階を有する方法。
【請求項35】
前記患者に対して、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬、コレステロール吸収阻害薬、CETP阻害薬、PPARγ作働薬、PPARα作働薬、PPAR二重α/γ作働薬およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物を投与する段階をさらに有する請求項28に記載のアテローム性動脈硬化の治療方法。

【公表番号】特表2006−528630(P2006−528630A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521192(P2006−521192)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/023334
【国際公開番号】WO2005/009951
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【出願人】(305042057)メルク フロスト カナダ リミテツド (99)
【Fターム(参考)】