説明

ジフェンヒドラミン含有溶液充填カプセル剤

【課題】服用に際してコンプライアンス上良好で、かつ、カプセル皮膜の軟化や割れが起こりにくい、カプセル充填用のジフェンヒドラミン又はその塩を含有する溶液、及び該溶液を充填したカプセル剤の提供。
【解決手段】ジフェンヒドラミン又はその塩、及び有機酸を含有し、pHが3〜6である溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフェンヒドラミン又はその塩を含有する溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
ジフェンヒドラミンはアミノアルキルエーテル系の抗ヒスタミン剤であり、経口剤として蕁麻疹、皮膚疾患に伴うアレルギー性鼻炎、そう痒、急性鼻炎等に用いられるほか、近年では、睡眠改善薬として広く用いられている。
しかし、ジフェンヒドラミンをアレルギー性鼻炎等に用いる場合は、1回あたりの服用量が10mgであるのに対し、睡眠改善薬として用いる場合は、1回あたりの服用量が50mgであり、服用する製剤数を減らすためには、製剤そのものを大きくするほか無く、ジフェンヒドラミン含有製剤についてのコンプライアンス上の問題が生じた。
【0003】
一方、医薬の経口剤の態様として、フィルムコーティング錠、糖衣錠などの錠剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤などのカプセル剤が知られている。
しかし、錠剤は、胃内の環境によって溶出性に差異が生じることが懸念され、また、速やかな薬効発現の点で必ずしも好ましい剤形ではない、という問題がある。
【0004】
また、カプセル剤については、以下のような技術が既に知られている。
(1)水を含む液体をカプセルに充填すると、カプセル皮膜が軟化するため、軟化を避けるためには充填液の水の質量を20質量%未満にする必要があることが知られている(特許文献1)。
(2)ジフェンヒドラミン塩酸塩を、マクロゴール400と水との混液に溶解した状態で充填液400mg中12.5mg(ジフェンヒドラミン塩酸塩濃度:3%)配合したカプセル剤が既に知られている(特許文献1)。しかしながら、この濃度で1回あたりの服用量を50mgとすると、カプセルが大きくなるか(000号のカプセル)又は服用カプセル数が多くなる(4カプセル)ので、コンプライアンス上問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3553562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、服用に際してコンプライアンス上良好で、かつ、カプセル皮膜の軟化や割れが起こりにくい、カプセル充填用のジフェンヒドラミン又はその塩を含有する溶液、及び該溶液を充填したカプセル剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ジフェンヒドラミン含有カプセル剤のコンプライアンス上の問題を解決するため、ジフェンヒドラミン又はその塩を高濃度に含有する溶液をカプセルに充填することを試みた。
まず、カプセルの軟化を抑制すべく、従来技術のように水の量を20質量%未満にして充填を試みたが、水の量を減少させただけではゼラチンカプセルに割れが生じた。
一方、ジフェンヒドラミン又はその塩を含まない充填液をゼラチンカプセルに充填した場合には、カプセルの割れは生じなかった。従って、ジフェンヒドラミン又はその塩は、ゼラチンカプセルに対して何らかの悪影響を及ぼしていることを見出した。
そこで、さらに検討を進めた結果、ジフェンヒドラミン又はその塩を含有する溶液に、有機酸を配合し、pHを3〜6にすることにより、ジフェンヒドラミン又はその塩の含有率を高めても、カプセルの軟化や割れを生じさせないことを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、ジフェンヒドラミン又はその塩、及び有機酸を含有し、pHが3〜6である溶液を提供するものである。
また、本発明は、ジフェンヒドラミン又はその塩、及び有機酸を含有し、pHが3〜6である溶液を、カプセルに充填したカプセル剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、服用しやすく、安定性に優れた、商品価値の高いジフェンヒドラミン又はその塩を含有するカプセル剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いられるジフェンヒドラミン又はその塩は、公知の化合物であり、公知の方法により製造してもよいし、また市販品を用いることができる。
ジフェンヒドラミンの塩としては、例えば、塩酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、サリチル酸塩、ジフェニルジスルホン酸塩、酒石酸塩、タンニン酸塩、ラウリル硫酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩等の酸付加塩が挙げられ、塩酸塩が好ましい。
【0011】
本発明に用いられるジフェンヒドラミン又はその塩の含有量は、睡眠改善薬として服用する場合のコンプライアンス向上の点から、1カプセル中に50mg又は25mg含有するように調整することが好ましい。すなわち、ジフェンヒドラミン又はその塩の溶液中の含有量は、溶液中4〜40質量%が好ましく、5〜25質量%が特に好ましい。
【0012】
なお、ジフェンヒドラミン又はその塩は、その一部又は全部を他の抗ヒスタミン剤に代替することも可能である。代替可能な抗ヒスタミン剤としては、例えば、ドキシラミン、クレマスチン、ジフェニルピラリン、カルビノキサミン、プロメタジン、メキタジン、アリメマジン、イソチペンジル、ヒドロキシジン、ホモクロルシクリジン、シプロヘプタジン、クロルフェニラミン、トリプロリジン、ブロムフェニラミン、エメダスチン等及びこれらの塩が挙げられる。このうち、ドキシラミンコハク酸塩、クレマスチンフマル酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩が好ましい。
【0013】
本発明において、有機酸としては、酸そのもの又は酸の水溶液として、ジフェンヒドラミン又はその塩を溶解し、かつ、カプセルに充填した際に、カプセルの軟化や割れを生じさせないようなものであれば、特に限定されるべきものではないが、例えば、アジピン酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、クエン酸、グルタミン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸等が挙げられる。このうち、酢酸、乳酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。なお、これら有機酸は1種又は2種以上用いてもよい。
【0014】
本発明において、有機酸の含有量としては、溶液全量に対して、5〜50質量%が好ましく、8〜40質量%がより好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。
ジフェンヒドラミン又はその塩と有機酸との含有比率は、ジフェンヒドラミン又はその塩1質量部に対して有機酸が0.2〜3質量部が好ましく、0.3〜2.7質量部が特に好ましい。
【0015】
また、本発明においては、液体をカプセルに充填する際に用いられる通常の溶媒を加えることができる。
上記通常の溶媒としては、ジフェンヒドラミン又はその塩を溶解するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、(1)水、(2)水と混和しない又は水に溶解しない揮発性又は非揮発性の液体(植物油、脂肪族及び芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、エーテル類、エステル類、高級アルコール類等)、(3)水と混和する非揮発性の液体、(4)その他(グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール;ケトン、アミン、エステル類等)が挙げられる。これらのうち、コンプライアンス向上及びカプセル皮膜の軟化抑制等の点で、多価アルコール、水と多価アルコールとの混液が好ましい。なお、これら通常の溶媒は、1種だけ用いても、複数の混合物を用いてもよい。
【0016】
上記多価アルコールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、マクロゴール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられ、マクロゴール、グリセリンがより好ましく、マクロゴールがさらに好ましい。
【0017】
また、マクロゴールの平均分子量としては、特に限定されないが、100〜800が好ましく、150〜700がより好ましく、190〜630がさらに好ましい。このうち、マクロゴール200、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600が好ましく、マクロゴール400が特に好ましい。
【0018】
また、カプセル充填用の溶液に多価アルコールを含有せしめる場合、溶液における多価アルコールの含有量は、溶液全量に対して、10〜90質量%が好ましく、15〜85質量%がより好ましく、20〜80質量%が特に好ましい。
有機酸と多価アルコールとの含有比率は、有機酸1質量部に対して多価アルコールが1.5〜40質量部が好ましく、3〜30質量部が特に好ましい。
【0019】
また、本発明の溶液のpHは3〜6であるが、カプセルの軟化や割れ抑制作用の点で、3.3〜5.8が好ましく、3.6〜5.6がより好ましい。当該範囲にpHを調整するには、pH調節剤等を添加すればよい。また、pH調節剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム等の塩基が挙げられる。
【0020】
本発明のカプセルに用いられる、カプセル皮膜の基剤としては、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCと略される)、プルラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体(好ましくは、ポリビニルアルコールとメチルメタクリレートとアクリル酸又はその塩の共重合体)、マクロゴール等が挙げられ、ポリビニルアルコール共重合体、マクロゴール、ゼラチンが好ましい。これらは1種だけでも、複数の混合物としてもよい。
【0021】
カプセル皮膜には、基剤の他に、アラビアガム、アルギン酸、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、グァーガム、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンドガム、ファーセレラン、ペクチン、ローカストビーンガム等のゲル化剤を含有させてもよく、また必要に応じて、塩化アンモニウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸カリウム等のゲル化助剤を含有させることができる。
また、本発明に用いられるカプセル皮膜には、例えば、法定色素等の色素、酸化チタン等の顔料、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、防腐剤、芳香剤、崩壊剤、グリセリン等の可塑剤、マンニトールやソルビトール等の糖アルコール等を、本発明の効果を損なわない範囲内で、含有させてもよい。
【0022】
すなわち、本発明のカプセル皮膜としては、マクロゴール及びゼラチンを含有する皮膜、必要に応じてカラギーナン及び塩化カリウムを含有せしめたポリビニルアルコール共重合体を含有する皮膜が好ましい。
【0023】
本発明において、カプセル皮膜としてマクロゴール及びゼラチンを含有する皮膜を用いる場合、マクロゴールの含有量は、カプセルの機械的強度や成形時の皮膜の均一性を考慮して適宜検討すればよいが、カプセル皮膜全量に対して、0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
【0024】
本発明に用いられるカプセル皮膜中にマクロゴールを含む場合、マクロゴールの平均分子量は、950〜25000が好ましく、2500〜4000がより好ましく、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000がさらに好ましく、マクロゴール4000が特に好ましい。なお、マクロゴールは1種だけ用いても、複数の混合物を用いてもよい。
【0025】
本発明に用いられるカプセル皮膜中にゼラチンを含む場合、ゼラチンとしては、例えば、熱変化に伴いゾルゲル変化するもので、牛、豚、鳥、魚等を原料とするゼラチンやコハク化ゼラチン等のアシル化ゼラチンなどが挙げられる。
上記ゼラチンの含有量は、カプセルの機械的強度や成形時の皮膜の均一性を考慮して適宜検討すればよいが、カプセル皮膜全量に対して、50〜99.5質量%が好ましく、65〜99質量%がより好ましい。
【0026】
本発明に用いられるカプセル皮膜中にポリビニルアルコール共重合体(ポリビニルアルコールとメチルメタクリレートとアクリル酸又はその塩の共重合体)を含む場合、ポリビニルアルコール共重合体は、ポリビニルアルコール、メチルメタクリレート及びアクリル酸とを共重合すれば得ることができる。ポリビニルアルコールは、けん化度が78mol%以上であればよく、また、部分けん化物(けん化度:78〜96mol%)でも、完全けん化物(けん化度:97mol%以上)でもよい。本発明においては、平均重合度300〜3000のポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルメタクリレート及びアクリル酸とを質量比60〜90:7〜38:0.5〜12の割合で共重合させて得られるものが好ましく、25℃における該共重合体の5質量%水溶液の粘度が5〜40mPa・sであるものがより好ましい。ポリビニルアルコール共重合体は、国際公開WO02/017848パンフレットや特開2007−91670号公報等の記載にしたがって、製造することができる。
【0027】
本発明のカプセル剤には、硬カプセル剤及び軟カプセル剤のいずれもが含まれるが、速やかな薬効発現の点から、硬カプセル剤が好ましい。
【0028】
また、本発明に用いられるカプセル皮膜の色は、特に限定されるものではないが、カプセル剤の商品性の点から、充填された内溶液を目視可能な透明又は半透明が好ましい。
【0029】
本発明のカプセル剤は、常法に従って製することができる。
例えば、マクロゴール及びゼラチンを含有するカプセル皮膜を用いたカプセル剤を製造する場合、ゼラチンを吸水膨潤させた後、加熱溶解し、次いでカプセル皮膜中に含ませるべきマクロゴールを適当量加え、所望により色素や防腐剤等を添加し、適宜粘度を調整した後、脱泡処理してカプセル成形用ジェリーを得る。得られたジェリーを、カプセル成形装置を用いて本発明にかかるカプセルに成形し、これに本発明の溶液を充填することで、本発明のカプセル剤(硬カプセル剤)を製することができる。さらに、常法に従って、バンド方式や熱着方式等によりカプセルにシールを施すこともできる。
【0030】
また、ゼラチンを吸水膨潤させた後、加熱溶解し、次いでカプセル皮膜中に含ませるべきマクロゴールを適当量加え、所望により、グリセリン等の多価アルコールやソルビトール等の糖アルコール等の可塑剤、色素や防腐剤等を添加して、適宜粘度を調整した後、脱泡処理してカプセル成形用ジェリーを得る。得られたジェリー及び本発明の溶液を用いて、ロータリー・ダイ法や滴下法等に基づくことにより、本発明のカプセル剤(軟カプセル剤)を製することができる。
【0031】
また、カプセル皮膜としてポリビニルアルコール共重合体を含有する皮膜を用いる場合、ポリビニルアルコール共重合体を水に溶解し、所望によりゲル化助剤、色素や防腐剤等を添加し、加温溶解する。これと別途ゲル化剤を水に加温溶解したものとを合わせ、ディッピング液を調製する。これを用いてディッピング成形を行い、本発明にかかるカプセルに成形し、これに本発明の溶液を充填することがで、本発明のカプセル剤(硬カプセル剤)を製することができる。さらに、常法にしたがって、バンド方式や熱着方式等によりカプセルにシールを施すこともできる。
【0032】
また、本発明のカプセル剤に用いられるカプセルは、上記常法に従って製造することもできるが、市販の硬カプセルを用いることもできる。市販品としては、例えば、PEG(マクロゴール)を配合した日本薬局方ゼラチンカプセル(クオリカプス株式会社)ポリビニルアルコール共重合体を基剤とするPONDAC(登録商標)カプセル(日新化成株式会社)、HPMCを基剤とするクオリーV(クオリカプス株式会社)、プルランを基剤とするNPcaps(登録商標)(カプスゲル・ジャパン株式会社)等が挙げられる。
これら市販の硬カプセルを用いて、本発明の溶液を充填することで、本発明のカプセル剤を製することができ、さらに常法にしたがって、バンド方式や熱着方式等によりカプセルにシールを施すこともできる。当該シールを施すことにより、カプセルからの充填液の液漏れや充填液の安定性に寄与する。
【0033】
本発明のカプセル剤の包装形態は特に限定されるものではなく、例えば、ビンやPTP包装等の通常のカプセル剤の包装形態で包装することができる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
参考例1:硬カプセルの製造
ゼラチン10.0kgに精製水18.0リットルを加え、約1〜2時間程度自然放置して吸水膨潤させた。ゼラチンが十分に膨潤した後、60℃に加温し、撹拌してゼラチンを均一に溶解させ、更にこのゼラチン溶液中にマクロゴール4000の50質量%水溶液を1.0kg(5質量%濃度)加えて撹拌し、その粘度を調整した後、脱泡処理してカプセル成形用ジェリーを得た。このジェリーをカプセル成形装置に仕込み、サイズ3号のカプセルを成形した。
【0036】
参考例2:硬カプセルの製造
マクロゴール4000の50質量%水溶液を0.5kg(2.5質量%濃度)加える以外は参考例1と同様にして、カプセルを成形した。
【0037】
参考例3:硬カプセル剤
マクロゴール400を414g及び精製水36gを混合後、約60℃に加温し、これにジフェンヒドラミン塩酸塩50gを加え撹拌し、溶解後、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH6に調整し、充填液とした。この充填液を、参考例1に記載のカプセルに250mgずつ充填し、ジフェンヒドラミン塩酸塩濃度が10質量%の硬カプセル剤を製造した。
【0038】
参考例4:硬カプセル剤
参考例2に記載のカプセルを用いる以外は参考例3と同様にして、硬カプセル剤を製造した。
【0039】
比較例1:硬カプセル剤
マクロゴール400を414g及び精製水36gを混合後、約60℃に加温し、これにジフェンヒドラミン塩酸塩15gを加え撹拌し、溶解後、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH6に調整し、充填液とした。この充填液を通常のサイズ3号のゼラチンハードカプセルに250mgずつ充填し、ジフェンヒドラミン塩酸塩濃度が3質量%の硬カプセル剤を製造した。
【0040】
比較例2:硬カプセル剤
ジフェンヒドラミン塩酸塩を50g用いる以外は比較例1と同様にして、ジフェンヒドラミン塩酸塩濃度が10質量%の硬カプセル剤を製造した。
【0041】
試験例1:硬カプセル剤の評価
参考例3、4及び比較例1、2の硬カプセル剤についてカプセル割れの評価を行った。評価は充填後、カプセル同士が重ならないようにトレイに広げ、室温にて1日放置後及び40℃1ヵ月保存後及び40℃4ヵ月保存後の割れやひびの有無を目視で検査することにより行った。結果を表1及び表2に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
表1から明らかなように、参考例3及び4の硬カプセル剤は、製造直後及び40℃1ヵ月保存後、40℃4ヵ月保存後いずれにおいても、カプセル割れは観察されなかった。
【0044】
【表2】

【0045】
表2から明らかなように、比較例1の硬カプセル剤では製造直後及び40℃1ヵ月保存後においても、カプセル割れは観察されなかったが、40℃4ヵ月保存後においては、カプセルの軟化が観察された。また、比較例2の硬カプセル剤では製造直後からカプセル割れが認められた。
【0046】
従って、試験例1より、通常のゼラチンカプセルを用いてジフェンヒドラミン塩酸塩を溶解した充填液を充填した製品として供給可能なカプセル剤は、ジフェンヒドラミン塩酸塩の濃度が3%までであることがわかった。しかしながら、3%の濃度では、1回服用量を50mgとすると、カプセルを大きくするか、服用カプセル数を多くする必要があり、コンプライアンス上好ましいものではない。
一方、参考例3及び4の硬カプセル剤は、製造直後、40℃1ヵ月保存後、40℃4ヵ月保存後のいずれにおいても、カプセル割れは観察されず、服用カプセルの大きさや数(1カプセルあたりジフェンヒドラミン塩酸塩25mg含有)を必要最小限に抑えることができ、コンプライアンスを向上することができることが判明した。
【0047】
参考例5:硬カプセル剤
300gのマクロゴール400と酢酸40gを約60℃に加温し、これにジフェンヒドラミン塩酸塩50gを加え撹拌し、溶解し、充填液とした。この充填液390mgを参考例2に記載の方法と同様に製した1号カプセルに充填し、ジフェンヒドラミン塩酸塩濃度が12.8質量%の硬カプセル剤を製造した。
【0048】
参考例6:硬カプセル剤
PONDAC(登録商標)カプセル(日新化成株式会社)を用いる以外は参考例5と同様にして、硬カプセル剤を製造した。
【0049】
試験例2:硬カプセル剤の評価
参考例5及び6の硬カプセル剤についてカプセル割れの評価を行った。評価は充填後、カプセル同士が重ならないようにトレイに広げ、製造直後及び50℃1日保存後の割れやひびの有無を目視で検査することにより行った。結果を表3に示した。
【0050】
【表3】

【0051】
表3から明らかなように、参考例5及び6の硬カプセル剤は、ジフェンヒドラミン塩酸塩を比較例1及び2の製剤より高濃度含有するにも関らず、製造直後及び50℃1日保存後のいずれにおいても、カプセル割れは観察されず、服用カプセルの大きさや数(1カプセルあたりジフェンヒドラミン塩酸塩50mg含有)を最小限に抑えることができ、コンプライアンスを向上することができることが判明した。
【0052】
参考例7:軟カプセル剤
ゼラチン9.0kgに精製水10.0リットルを加え、約1〜2時間程度自然放置して吸水膨潤させた。ゼラチンが十分に膨潤した後、60℃に加温し、撹拌してゼラチンを均一に溶解させ、更にこのゼラチン溶液中に濃グリセリン1kg及びマクロゴール4000の50質量%水溶液を1.0kg(5質量%濃度)又は0.5kg(2.5質量%濃度)加えて撹拌し、その粘度を調整した後、脱泡処理してカプセル成形用ジェリーを得た。このジェリーを用いてロータリー式カプセル充填機にて、参考例5で製した充填液を充填し、軟カプセル剤を製造した。
【0053】
参考例8:軟カプセル剤
マクロゴール4000の50質量%水溶液を0.5kg(2.5質量%濃度)加える以外は参考例7と同様にして、軟カプセル剤を製造した。
【0054】
実施例1:硬カプセル剤
160gのマクロゴール400と酢酸40gを約60℃に加温し、これにジフェンヒドラミン塩酸塩50gを加え撹拌し、溶解後、10%水酸化ナトリウム水溶液10.4gを加えて、pHを約5に調整し、充填液とした。この充填液260.4mgを、参考例2で製したサイズ3号のカプセルに充填し、ジフェンヒドラミン塩酸塩濃度が19.2質量%の硬カプセル剤を製造した。
【0055】
試験例3:硬カプセル剤の評価
実施例1の硬カプセル剤についてカプセル割れの評価を行った。評価は充填後、カプセル同士が重ならないようにトレイに広げ、製造直後、50℃1日保存後及び50℃1週間保存後の割れやひびの有無を目視で検査することにより行った。結果を表4に示した。
【0056】
【表4】

【0057】
表4から明らかなように、実施例1の硬カプセル剤は、製造直後、50℃1日及び50℃1週間保存後のいずれにおいても、カプセル割れは観察されず、服用カプセルの大きさや数(1カプセルあたりジフェンヒドラミン塩酸塩50mg含有)を最小限に抑えることができ、コンプライアンスを向上することができることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフェンヒドラミン又はその塩、及び有機酸を含有し、pHが3〜6である溶液。
【請求項2】
有機酸が、酢酸及び乳酸から選ばれる1種以上である請求項1記載の溶液。
【請求項3】
さらに、多価アルコールを含有する請求項1又は2記載の溶液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の溶液を、カプセルに充填したカプセル剤。
【請求項5】
ジフェンヒドラミン又はその塩の含有量が、1カプセル当たり25mg又は50mgである請求項4記載のカプセル剤。
【請求項6】
カプセルの皮膜が、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体及びマクロゴールからなる群より選ばれる1種以上の基剤を含有するものである請求項4又は5記載のカプセル剤。
【請求項7】
カプセルの皮膜が、マクロゴール及びゼラチン、又はポリビニルアルコール共重合体を含有するカプセル皮膜を有するものである請求項4〜6のいずれか1項記載のカプセル剤。

【公開番号】特開2010−168378(P2010−168378A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297117(P2009−297117)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】