説明

ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の製造方法

【課題】高収率、簡便かつ低コストでジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、ハロゲン化へテロアリール化合物とα−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物とを金属ハロゲン化物の存在下で反応させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の製造方法、すなわちジフルオロメチル基を導入したヘテロ芳香族化合物の製造方法に関する。また、本発明は、ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物を製造する際に用いるへテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の製造方法としては、一般的には、ヘテロアリールカルボニル化合物に対し、DAST(ジエチルアミノサルファートリフルオリド(EtN−SF))等の求核的フッ素化剤を作用させて得る手法が知られている(特許文献1、非特許文献1)。
しかしながら、この従来の手法は、上記求核的フッ素化剤の熱的不安定さや、基質の官能基許容性の乏しさ等の欠点があり、反応効率が非常に低いものであった。また、上記の熱的不安定さや、さらには高価である点で、取り扱いが煩雑となり高コストとなる等の問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2007/095229号
【特許文献2】国際公開2005/009479号
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0094761号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】P. Bannwarth et al., Journal of Organic Chemistry, vol. 74, 2009, p. 4646-4649.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況下において、従来の手法に比べて反応効率(収率)が高く、簡便で、さらにコストが低減できるジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の製造方法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記状況を考慮してなされたものであり、以下に示す製造方法等、すなわち、基質としてのハロゲン化ヘテロアリール化合物にα−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物を金属ハロゲン化物(特に銅触媒)の存在下で反応させて(クロスカップリング反応)、へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物を得、このエステル化合物に対して加水分解及び脱炭酸の反応を(好ましくは同一反応系内で)行うことによる、ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の製造方法を提供するものである。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[発明1]任意の置換基により置換されていてもよいハロゲン化へテロアリール化合物と、α−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物とを金属ハロゲン化物の存在下で反応させることによる、へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の製造方法。
発明1において、α−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物の具体例としては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0008】
【化1】

〔一般式(2)中、Rは一価の有機基を表し、Rはそれぞれ独立して置換されていてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。〕
【0009】
[発明2]前記ハロゲン化へテロアリール化合物1当量に対して、前記金属ハロゲン化物をモル換算で0.1〜4当量用いることを特徴とする、発明1に記載の方法。
[発明3]前記ハロゲン化へテロアリール化合物1当量に対して、前記一般式(2)で表される化合物をモル換算で1〜2当量反応させることを特徴とする、発明1又は2に記載の方法。
[発明4]前記ハロゲン化へテロアリール化合物が、ヨウ素化へテロアリール化合物である、発明1〜3のいずれか1つに記載の方法。
[発明5]前記金属ハロゲン化物が、ヨウ化銅及び/又はフッ化カリウムである、発明1〜4のいずれか1つに記載の方法。
[発明6]発明1〜5のいずれか1つに記載の方法により得られるへテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物を加水分解するとともに、金属ハロゲン化物の存在下で脱炭酸反応させることによる、ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の製造方法。
【0010】
[発明7]前記金属ハロゲン化物がフッ化カリウムである、発明6に記載の方法。
[発明8]前記ハロゲン化へテロアリール化合物、前記へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物及び前記ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物が、窒素原子又は硫黄原子を含むへテロアリール骨格を有するものである、発明1〜7のいずれか1つに記載の方法
[発明9]前記へテロアリール骨格が、ピリジン骨格、ピラジン骨格、ピリミジン骨格、キノリン骨格、イソキノリン骨格又はチオフェン骨格である、発明8に記載の方法。
[発明10]前記ハロゲン化へテロアリール化合物、前記へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物及び前記ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物が、電子求引基及び/又は一価の有機基により置換されているものである、発明1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反応効率(収率)が高く、簡便で、かつ低コストであるジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、当該製造方法に用いる、中間生成物としてのへテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物を効率的に製造する方法も提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
【0013】

1.本発明の概要
本発明者は、前述した従来手法の問題に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、基質となるハロゲン化へテロアリール化合物(ヘテロ芳香族ハロゲン化物)に、2−トリアルキルシリル−2,2−ジフルオロ酢酸エステル等のα−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物を銅触媒(CuI)等の金属ハロゲン化物の存在下で反応させる(クロスカップリング反応を行う)ことにより、効率的に、中間生成物としてのへテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物を製造できることを見出した。さらに、この得られたエステル化合物を(好ましくは同一反応系内で)加水分解及び脱炭酸することにより、高効率(高収率)で簡便に、かつ低コストで、目的生成物としてのジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】

2.本発明の製造方法
本発明に係るジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の製造方法(以下、本発明の製造方法ということがある。)は、前述した通り、(i)ハロゲン化へテロアリール化合物とα−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物とを金属ハロゲン化物の存在下で反応させることによりへテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物を得、次いで、(ii)当該エステル化合物を加水分解及び脱炭酸することによりジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物を得る方法である。
【0015】
(i)へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の製造方法
当該エステル化合物の製造方法は、任意の置換基により置換されていてもよいハロゲン化へテロアリール化合物とα−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物とを、金属ハロゲン化物の存在下で反応させることを特徴とする。
ここで、当該反応の反応基質となる上記ハロゲン化へテロアリール化合物において、へテロアリールのハロゲン化に用いられるハロゲン原子としては、限定はされないが、例えば、ヨウ素原子(I)、臭素原子(Br)及び塩素原子(Cl)が好ましく、より好ましくはヨウ素原子(I)である。すなわち、ハロゲン化へテロアリール化合物としては、ヨウ素化(ヨード化)へテロアリール化合物がより好ましい。へテロアリール環に結合するハロゲン原子の数(ハロゲン原子による置換数)は、限定はされないが、1であることが好ましい。
【0016】
また、上記ハロゲン化へテロアリール化合物は、限定はされないが、例えば、窒素原子(N)又は硫黄原子(S)を含むへテロアリール骨格を有するものであることが好ましく、より好ましくは窒素原子(N)を含むへテロアリール骨格を有するものである。当該へテロアリール骨格としては、例えば、ピリジン骨格、ピラジン骨格、ピリミジン骨格、キノリン骨格、イソキノリン骨格及びチオフェン骨格等が好ましく、より好ましくはピリジン骨格、ピラジン骨格、キノリン骨格及びイソキノリン骨格である。
上記ハロゲン化へテロアリール化合物は、へテロアリール環上の水素原子等が、任意の置換基により置換されていてもよいが、当該置換基としては、例えば、電子求引基及び/又は一価の有機基等が好ましく挙げられる。
ここで、電子求引基としては、限定はされないが、例えば、−CN、−NO、−C(O)OC、COCH、−Br及び−Cl等が好ましく挙げられ、中でも、−CN基及び−C(O)OCがより好ましい。へテロアリール環に結合する電子求引基の数(m)は、限定はされないが、1〜3の整数であることが好ましく、より好ましくは1である。なお、当該電子求引基は、限定はされないが、ハロゲン化へテロアリール環のオルト位及び/又はメタ位(すなわち、ハロゲン原子が結合している炭素原子からみてオルト位及び/又はメタ位)の炭素原子に結合している基であることが好ましい。
【0017】
一価の有機基としては、限定はされないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基及びアルキニル基等が好ましく挙げられ、中でもアルキル基がより好ましい。当該アルキル基は、限定はされないが、炭素数1〜16の直鎖又は分枝のアルキル基であることが好ましく、その任意の炭素原子上に、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、シアノ基、アミノカルボニル基(CONH2)及びアリール基が任意の数かつ任意の組み合わせで置換されたものであってもよい。へテロアリール環に結合する一価の有機基の数(n)は、限定はされないが、0〜2の整数又は0若しくは1であることが好ましい。
【0018】
本発明において、任意の置換基により置換されていてもよいハロゲン化へテロアリール化合物の具体例としては、下記一般式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)、(1e)、(1f)、(1g)、(1h)及び(1i)等が好ましく挙げられる。
【0019】
【化2】

【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
【化6】

【0024】
【化7】

【0025】
【化8】

【0026】
【化9】

【0027】
【化10】

【0028】
一般式(1a)〜(1i)中、Xはハロゲン原子を表し、Rは、それぞれ独立して、電子求引基を表し、Rは、それぞれ独立して、一価の有機基を表す。当該ハロゲン原子、電子求引基及び一価の有機基の具体例は、前述したものと同様である。なお、Rは、限定はされないが、ハロゲン化へテロアリール環のオルト位及び/又はメタ位(すなわち、ハロゲン原子が結合している炭素原子からみてオルト位及び/又はメタ位)の炭素原子に結合している基であることが好ましい。
【0029】
一般式(1a)〜(1i)中、Rの数(m)及びRの数(n)は、限定はされないが、例えば以下の通りである。すなわち、一般式(1a)〜(1c)においては、mは0〜3の整数であることが好ましく、より好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1であり、nは0〜(4−m)の整数であることが好ましく、より好ましくは0又は1である。一般式(1d)においては、mは0〜3の整数であることが好ましく、より好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1であり、nは0〜(3−m)の整数であることが好ましく、より好ましくは0又は1である。一般式(1e)及び(1f)においては、mは0〜2の整数であることが好ましく、より好ましくは1〜2の整数、さらに好ましくは1であり、nは0〜(2−m)の整数であることが好ましく、より好ましくは0又は1である。一般式(1g)及び(1i)においては、mは0〜3の整数であることが好ましく、より好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1であり、nは0〜(3−m)の整数であることが好ましく、より好ましくは0又は1である。
本発明に用いるハロゲン化へテロアリール化合物は、例えば一般式(1a)〜(1i)で表される化合物においてm及びnがいずれも0である場合のように、任意の置換基を有さないもの(無置換のもの)であってもよく、当該置換基を有しているか否かに関わらず、いずれも基質化合物として本発明の製造方法に好適に用いることができる。
【0030】
また、α−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物としては、具体的には、下記一般式(2)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【0031】
【化11】

【0032】
一般式(2)中、Rは、一価の有機基を表し、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基及びアルキニル基等が好ましく挙げられ、中でもアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。Rとしてのアルキル基は、限定はされないが、炭素数1〜16の直鎖又は分枝のアルキル基であることが好ましく、当該アルキル基はその任意の炭素原子上に、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、シアノ基、アミノカルボニル基(CONH2)及びアリール基が任意の数かつ任意の組み合わせで置換されたものであってもよい。
【0033】
一般式(2)中、Rは、それぞれ独立して、置換されていてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びフェニル基等が好ましく挙げられ、中でもメチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。なお、当該置換の態様は、限定はされず、任意の数かつ任意の組み合わせによる置換であってもよい。
【0034】
ここで、一般式(2)で表される化合物は、例えば、下記一般式(5)で表される化合物と一般式(6)で表される化合物との反応により得ることができる。
【0035】
【化12】

【0036】
【化13】

【0037】
一般式(5)で表される化合物中、Rは一価の有機基を表し、具体的には、上記一般式(2)について説明した内容が同様に適用できる。また、一般式(5)中、Xはハロゲン基を表し、例えば、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)等が好ましく、より好ましくは塩素原子(Cl)である。
一般式(6)で表される化合物中、R及びXの具体例は、上記一般式(2)及び(5)について述べたものと同様である。
【0038】
一般式(5)で表される化合物と一般式(6)で表される化合物との反応は、例えば、窒素及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下、当該反応条件下で不活性な溶媒中で混合すればよく、限定はされない。上記溶媒としては、本発明の製造方法に用い得る溶媒として後述するものが好ましく例示できる。また当該反応においては、反応温度は、20〜50℃であることが好ましく、混合時間(攪拌時間)は、1〜2時間であることが好ましく、反応圧力は、常圧付近でよい。さらに当該反応は、限定はされないが、反応を促進させ得る点で、マグネシウムの存在下で行われることが好ましい。当該反応系からの生成化合物(一般式(2)で表される化合物)の抽出及び精製等の方法は、特に限定はされず、従来公知の抽出及び精製等の方法が適宜採用できる。
【0039】
本発明の製造方法において、ハロゲン化へテロアリール化合物とα−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物との反応に用いられる金属ハロゲン化物としては、限定はされないが、例えば、ヨウ化銅(CuI)及びフッ化カリウム(KF)等が好ましく挙げられる。ヨウ化銅は、ヨウ化銅は、ヘテロ芳香族ヨウ化物を活性して炭素−炭素結合形成の触媒として働くことができ、フッ化カリウムは、α−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物を効率良く活性化し、反応生成物の収率を一層高めることができる。金属ハロゲン化物の使用量は、限定はされないが、例えば、原料化合物であるハロゲン化へテロアリール化合物1当量に対して、モル換算で0.1〜4当量用いることが好ましく、より好ましくは0.2〜4当量である。詳しくは、ヨウ化銅を使用する場合は、0.2〜1.2当量であることが好ましく、フッ化カリウムを使用する場合は、1〜1.2当量であることが好ましい。本発明の製造方法は、従来の手法に比べて、触媒としての金属ハロゲン化物の使用量を低減することができ、コスト面からみても生産性に優れたものである。
【0040】
本発明の製造方法において用い得る溶媒は、ハロゲン化へテロアリール化合物とα−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物との反応の反応条件下で不活性なものであればよく、限定はされないが、例えば、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、フェニルアセトニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル等)、酸アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルピロリドン(NMP)等)、低級エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−エポキシエタン、1、4−ジオキサン、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、置換テトラヒドロフラン等)が好ましく使用され、中でも、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランがより好ましい。本発明の製造方法においては、これら溶媒を組み合わせて使用することもできる。溶媒の量は、出発原料の1重量部に対して1〜100重量部程度、好ましくは1〜10重量部である。使用する溶媒はでき得る限り水分を除去したものが好ましいが、必ずしも完全に除去したものである必要はない。工業的に入手可能な溶媒に通常混入している程度の水分は、本発明の製造方法の実施において特に問題にならず、そのため水分を除去することなくそのまま使用することができる。
【0041】
本発明の製造方法において、原料化合物であるハロゲン化へテロアリール化合物とα−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物との使用量は、限定はされないが、ハロゲン化へテロアリール化合物1当量に対して、モル換算で1〜2当量用いることが好ましく、より好ましくは1.2〜1.5当量である。
【0042】
ハロゲン化へテロアリール化合物とα−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物との混合及び反応は、例えば、窒素及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、反応温度は、40〜80℃であることが好ましく、混合時間(攪拌時間)は、5〜20時間であることが好ましく、反応圧力は、常圧付近でよい。当該反応においては、必要に応じ、反応を促進する目的で、グリニャール反応で一般的に行われている各種の反応促進法を適用することもできる。そのような方法として、例えば、臭素またはヨウ素などのハロゲン、グリニャール試薬、臭化エチル、ヨウ化メチル、ヨウ化メチレン、ヨウ化エチル及びβ−ブロムエチルエーテル等の有機ハロゲン化物、あるいはオルト珪酸エチル等を反応系に添加する方法や、攪拌又は超音波を照射する方法等を挙げることができる。
【0043】
上述したハロゲン化へテロアリール化合物とα−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物との反応により、へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物が得られる。
ここで、得られたへテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物におけるジフルオロ酢酸エステル基は、限定はされないが、例えば、一価の有機基とエステル結合したものであることが好ましい。一価の有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基及びアルキニル基等が好ましく挙げられ、中でもアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。当該アルキル基は、限定はされないが、炭素数1〜16の直鎖又は分枝のアルキル基であることが好ましく、当該アルキル基はその任意の炭素原子上に、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、シアノ基、アミノカルボニル基(CONH2)及びアリール基が任意の数かつ任意の組み合わせで置換されたものであってもよい。へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物において、へテロアリール環に結合するジフルオロ酢酸エステル基の数は、限定はされないが、原料化合物として用いたハロゲン化へテロアリール化合物におけるへテロアリール環に結合していたハロゲン原子の数と同じであればよく、1であることが好ましい。
【0044】
また、へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物は、原料化合物として用いたハロゲン化へテロアリール化合物と同様に、例えば、窒素原子(N)又は硫黄原子(S)を含むへテロアリール骨格を有するものであることが好ましく、より好ましくは窒素原子(N)を含むへテロアリール骨格を有するものである。当該へテロアリール骨格としては、例えば、ピリジン骨格、ピラジン骨格、ピリミジン骨格、キノリン骨格、イソキノリン骨格及びチオフェン骨格等が好ましく、より好ましくはピリジン骨格、ピラジン骨格、キノリン骨格及びイソキノリン骨格である。
へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物は、へテロアリール環上の水素原子等が、任意の置換基により置換されていてもよいが、当該置換基としては、例えば、電子求引基及び/又は一価の有機基等が好ましく挙げられる。当該電子求引基及び一価の有機基等についても、原料化合物として用いたハロゲン化へテロアリール化合物と同様である。
【0045】
へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の具体例としては、下記一般式(3a)、(3b)、(3c)、(3d)、(3e)、(3f)、(3g)、(3h)及び(3i)等が好ましく挙げられる。
【0046】
【化14】

【0047】
【化15】

【0048】
【化16】

【0049】
【化17】

【0050】
【化18】

【0051】
【化19】

【0052】
【化20】

【0053】
【化21】

【0054】
【化22】

【0055】
一般式(3a)〜(3i)中、R、R及びR、並びにm及びnについては、前記一般式(1a)〜(1i)及び一般式(2)について説明した内容が同様に適用できる。
本発明の製造方法において、生成化合物であるへテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の反応系からの抽出及び精製等の方法は、特に限定はされず、従来公知の抽出及び精製等の方法が適宜採用できる。
【0056】
(ii)ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の製造方法
本発明においては、前述の通り、前記(i)の製造方法で得られたへテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物を加水分解し且つ脱炭酸することにより、最終生成物としてのジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物を得ることができる。
本発明においては、へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物のジフルオロ酢酸エステル基をジフルオロ酢酸基(-CF2CO2H)に変換する上記加水分解反応と、当該ジフルオロ酢酸基をジフルオロメチル基(-CF2H)に変換する上記脱炭酸反応という2つの反応工程を、同一反応系において一度に行うことができる点で、生産効率、簡便性及びコスト面において優れたものである。
【0057】
上記加水分解反応及び脱炭酸反応は、上述の通り、同一反応系において一度に行うことができ、例えば、窒素及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下、水、及び当該反応条件下で不活性な溶媒中で行えばよい。上記溶媒としては、前記(i)の製造方法に用い得る溶媒として列挙したものが好ましく例示できる。反応温度は、20〜200℃であることが好ましく、反応時間(攪拌時間)は、1〜40時間であることが好ましく、反応圧力は、常圧付近でよい。
【0058】
上記加水分解及び脱炭酸反応により得られるジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物は、原料化合物として用いたハロゲン化へテロアリール化合物や中間生成物であるへテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物と同様に、例えば、窒素原子(N)又は硫黄原子(S)を含むへテロアリール骨格を有するものであることが好ましく、より好ましくは窒素原子(N)を含むへテロアリール骨格を有するものである。当該へテロアリール骨格としては、例えば、ピリジン骨格、ピラジン骨格、ピリミジン骨格、キノリン骨格、イソキノリン骨格及びチオフェン骨格等が好ましく、より好ましくはピリジン骨格、ピラジン骨格、キノリン骨格及びイソキノリン骨格である。
ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物は、へテロアリール環上の水素原子等が、任意の置換基により置換されていてもよいが、当該置換基としては、例えば、電子求引基及び/又は一価の有機基等が好ましく挙げられる。当該電子求引基及び一価の有機基等についても、原料化合物として用いたハロゲン化へテロアリール化合物や中間生成物であるへテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物と同様である。
【0059】
ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の具体例としては、下記一般式(4a)、(4b)、(4c)、(4d)、(4e)、(4f)、(4g)、(4h)及び(4i)等が好ましく挙げられる。
【0060】
【化23】

【0061】
【化24】

【0062】
【化25】

【0063】
【化26】

【0064】
【化27】

【0065】
【化28】

【0066】
【化29】

【0067】
【化30】

【0068】
【化31】

【0069】
一般式(4a)〜(4i)中、R及びR、並びにm及びnについては、前記一般式(1a)〜(1i)について説明した内容が同様に適用できる。
本発明の製造方法において、生成化合物であるジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の反応系からの抽出及び精製等の方法は、特に限定はされず、従来公知の抽出及び精製等の方法が適宜採用できる。

以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0070】
<α−シリルジフルオロ酢酸エステルの調製>
【0071】
【化32】

【0072】
下記の手順に従って、α-(トリメチルシリル)ジフルオロ酢酸エチルエステル(またはジフルオロトリメチルシラニル酢酸エチルエステルともいう)(化合物2a)を調製した。
2口反応管に窒素雰囲気下、マグネシウム (972.4 mg, 40.0 mmol), クロロトリメチルシラン (8.691 g, 80.0 mmol), DMF (60 mL)を注入した。そこにクロロジフルオロ酢酸エチル (793 mg, 20.0 mmol)を加えた後、室温で1.5時間攪拌した。反応混合物をジエチルエーテルで抽出し、水で洗浄して、DMFを完全に取り除き、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をクーゲル蒸留(91 mmHg, 110℃)により精製することで、α-(トリメチルシリル)ジフルオロ酢酸エチルエステル(Me3Si-CF2CO2Et;化合物2a) (2.729g, 収率:70%)を得た。
なお、他の実施例において、α-(トリメチルシリル)ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物2a)については本実施例で得られたものを用いた。
【0073】
生成物(化合物2a)の機器分析結果を、以下に示した。

H-NMR(CDCl3, TMS) δ4.32 (2H, q, J = 7.0 Hz), 1.35 (3H, t, J = 7.0 Hz),
0.237 (9H, s)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 38.5 (2F, s)
Mass m/e: (m/z) (%) 181 (6), 153 (10), 125 (6), 103 (8), 77 (26), 73 (100)

【0074】
<へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の調製>
【0075】
【化33】

【0076】
下記の手順に従って、2-(5-ブロモピリジン-2-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3a)を調製した。
シュレンク管に、5-ブロモ-2-ヨードピリジン(141.9 mg, 0.5 mmol), ヨウ化銅(I) (95.2 mg, 0.5 mmol), フッ化カリウム (34.9 mg, 0.6 mmol), DMSO (1.0 mL)を入れた。最後にα-(トリメチルシリル)ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物2a) (117.8 mg, 0.6 mmol)を加え、窒素雰囲気下、60 ℃で15時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (50.0 mg, 0.5 mmol)を内部標準として加え、19F-NMRで測定したところ目的物である2-(5-ブロモピリジン-2-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3a) が50%の収率で生成していることがわかった。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: EtOAc = 100: 1, 50: 1)で精製することにより、2-(5-ブロモピリジン-2-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3a) (61.0 mg, 0.22 mmol, 収率:44%)が得られた。
【0077】
生成物(化合物3a)の機器分析結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 8.70 (1H, d, J = 2.2 Hz), 8.00 (1H, dd, J = 8.3 Hz, 2.2Hz), 7.64 (1H, d, J = 8.4 Hz), 4.33 (2H, q, J = 7.1 Hz), 1.33 (3H, t, J = 7.1 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 56.4 (2F, s)
Mass m/e: (m/z) (%) 281 (M+2, 4), 279 (M+, 5), 209 (50), 208 (93), 207 (58), 206 (100), 159 (7), 158 (24), 157 (24), 156 (25), 127 (3)

【0078】
また上記とは別に、下記手順に従って、2-(5-ブロモピリジン-2-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3a)を調製した。
【0079】
【化34】

【0080】
シュレンク管に、5-ブロモ-2-ヨードピリジン(141.9 mg, 0.5 mmol), ヨウ化銅(I) (190.5 mg, 1.0 mmol), フッ化カリウム (58.1 mg, 1.0 mmol), DMSO (2.0 mL)を入れた。最後にα-(トリメチルシリル)ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物2a) (196.3 mg, 1.0 mmol)を加え、窒素雰囲気下、60 ℃で15時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (50.0 mg, 0.5 mmol)を内部標準として加え、19F-NMRで測定したところ目的物である2-(5-ブロモピリジン-2-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3a) が74%の収率で生成していることがわかった。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: EtOAc = 100: 1, 50: 1)で精製することにより、2-(5-ブロモピリジン-2-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3a) (100.6 mg, 0.36 mmol, 収率:72%)が得られた。
【0081】
生成物(化合物3a)の機器分析結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 8.70 (1H, d, J = 2.2 Hz), 8.00 (1H, dd, J = 8.3 Hz, 2.2Hz), 7.64 (1H, d, J = 8.4 Hz), 4.33 (2H, q, J = 7.1 Hz), 1.33 (3H, t, J = 7.1 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 56.4 (2F, s)
Mass m/e: (m/z) (%) 281 (M+2, 4), 279 (M+, 5), 209 (50), 208 (93), 207 (58), 206 (100), 159 (7), 158 (24), 157 (24), 156 (25), 127 (3)

【0082】
<ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の調製>
【0083】
【化35】

【0084】
下記の手順に従って、5-ブロモ-2-ジフルオロメチルピリジン(化合物4a)を調製した。
シュレンク管に、上記で得られた2-(5-ブロモピリジン-2-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3a) (224.1 mg, 0.8 mmol)、フッ化カリウム (232.4 mg, 4.0 mmol)、水 (72.1 mg, 4.0 mmol)を加え、窒素雰囲気下、DMF溶媒 (3.2 mL)中、170℃で24時間撹拌した。反応後、2,2,2-トリフルオロエタノールを内標として加え、19F-NMR測定を行ったところ、5-ブロモ-2-ジフルオロメチルピリジン(化合物4a) が89%の収率で生成していることが分かった。その後、ジエチルエーテルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: diethylether = 20: 1)で精製することにより、5-ブロモ-2-ジフルオロメチルピリジン(化合物4a) (66.8 mg, 0.32 mmol, 収率:40%)が得られた。
【0085】
生成物(化合物4a)の機器分析結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3,TMS) δ 8.73 (1H, d, J = 2.0 Hz), 7.99 (1H, dd, J = 8.3 Hz, 2.2 Hz), 7.56(1H, d, J = 8.3 Hz), 6.61 (1H, t, JHF = 55.3 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 46.0 (2F, d, JHF = 55.7 Hz)
Mass m/e: (m/z) (%) 210 (M+3, 7), 209 (M+2, 98), 208 (M+1, 15) 207 (M+, 100), 206 (8), 159 (23), 158 (26), 157 (25), 156 (28), 128 (19)

【実施例2】
【0086】
<へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の調製>
【0087】
【化36】

【0088】
下記の手順に従って、2-(6-クロロピリジン-3-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3b)を調製した。
シュレンク管に、2-クロロ-5-ヨードピリジン(119.7 mg, 0.5 mmol), ヨウ化銅(I) (190.5 mg, 1.0 mmol), フッ化カリウム (58.1 mg, 1.0 mmol), DMSO (2.0 mL)を入れる。最後にα-(トリメチルシリル)ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物2a) (196.3 mg, 1.0 mmol)を加え、窒素雰囲気下、60 ℃で15時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (50.0 mg, 0.5 mmol)を内部標準として加え、19F-NMRで測定したところ目的物である2-(6-クロロピリジン-3-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3b) が80%の収率で生成していることがわかった。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: EtOAc = 50: 1, 20: 1)で精製することにより、2-(6-クロロピリジン-3-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3b) (85.3 mg, 0.36 mmol, 収率:72%)が得られた。
【0089】
生成物(化合物3b)の機器分析結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 8.65 (1H, d, J = 2.4 Hz), 7.89 (1H, dd, J = 8.4 Hz, 2.6Hz), 7.45 (1H, d, J = 8.4 Hz), 4.37 (2H, q, J = 7.1 Hz), 1.33 (3H, t, J = 7.1 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 58.3 (2F, s)
EI-MS m/z (%) 237 (M+2, 2), 236 (M+1, 5), 235 (M+, 8), 191 (2), 165 (5),
164 (31), 163 (19), 162 (100), 158 (24), 157 (24), 156 (25), 127 (3)

【0090】
<ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の調製>
【0091】
【化37】

【0092】
下記の手順に従って、2-クロロ-5-ジフルオロメチルピリジン(化合物4b)を調製した。
シュレンク管に、上記で得られた2-(6-クロロピリジン-3-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3b) (188.5 mg, 0.8 mmol)、フッ化カリウム (232.4 mg, 4.0 mmol)、水 (72.1 mg, 4.0 mmol)を加え、窒素雰囲気下、NMP溶媒 (3.2 mL)中、200℃で4時間撹拌する。反応後、2,2,2-トリフルオロエタノールを内標として加え、19F-NMR測定を行ったところ、2-クロロ-5-ジフルオロメチルピリジン(化合物4b) が45%の収率で生成していることが分かった。その後、ジエチルエーテルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: diethylether = 5: 1)で精製することにより、2-クロロ-5-ジフルオロメチルピリジン(化合物4b) (35.7 mg, 0.22 mmol, 収率:27%)が得られた。
【0093】
生成物(化合物4b)の機器分析結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3,TMS) δ 8.54 (1H, d, J = 1.4 Hz), 7.82 (1H, dd, J = 8.3 Hz, 2.1 Hz), 7.46(1H, d, J = 8.3 Hz), 6.72 (1H, t, JHF = 55.6 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 49.3 (2F, d, JHF= 55.6 Hz)
EI-MS m/z (%) 165 (M+2, 33), 164 (M+1, 14), 163 (M+, 100), 162 (26), 128
(50), 113 (15), 78 (19)

【実施例3】
【0094】
<へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の調製>
【0095】
【化38】

【0096】
下記の手順に従って、2-(3-クロロピリジン-4-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3c)を調製した。
シュレンク管に、3-クロロ-4-ヨードピリジン(119.7 mg, 0.5 mmol), ヨウ化銅(I) (190.5 mg, 1.0 mmol), フッ化カリウム (58.1 mg, 1.0 mmol), DMSO (2.0 mL)を入れる。最後にα-(トリメチルシリル)ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物2a) (196.3 mg, 1.0 mmol)を加え、窒素雰囲気下、60 ℃で15時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (50.0 mg, 0.5 mmol)を内部標準として加え、19F-NMRで測定したところ目的物である2-(3-クロロピリジン-4-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3c) が72%の収率で生成していることがわかった。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: EtOAc = 30: 1, 20: 1, 20: 1)で精製することにより、2-(3-クロロピリジン-4-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3c) (70.8 mg, 0.30 mmol, 収率:60%)が得られた。
【0097】
生成物(化合物3c)の機器分析結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 8.69 (1H, s) 8.67 (1H, d, J = 5.0 Hz), 7.63 (1H, d, J = 5.0 Hz), 4.37 (2H, q, J = 7.1 Hz), 1.32 (3H, t, J = 7.1 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 56.6 (2F, s)
Mass m/e: (m/z) (%) 237 (M+2, 6), 235 (M+, 14), 165 (9), 164 (32), 163 (30), 162 (100)

【0098】
<ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の調製>
【0099】
【化39】

【0100】
下記の手順に従って、3-クロロ-4-ジフルオロメチルピリジン(化合物4c)を調製した。
シュレンク管に、上記で得られた2-(3-クロロピリジン-4-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物3c) (188.5 mg, 0.8 mmol)、フッ化カリウム (232.4 mg, 4.0 mmol)、水 (72.1 mg, 4.0 mmol)を加え、窒素雰囲気下、DMF溶媒 (3.2 mL)中、170℃で3時間撹拌する。反応後、酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: EtOAc = 10: 1)で精製することにより、3-クロロ-4-ジフルオロメチルピリジン(化合物4c) (60.9 mg, 0.37 mmol, 収率:47%)が得られた。
【0101】
生成物(化合物4c)の機器分析結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3,TMS) δ 8.69 (1H, s), 8.65 (1H, d, J = 5.0 Hz), 7.56(1H, d, J = 5.0 Hz), 6.90 (1H, t, JHF = 54.1 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 42.7 (2F, d, JHF = 54.1 Hz)
Mass m/e: (m/z) (%) 165(M+2, 34), 163(M+, 100), 128 (45), 126 (48), 115 (8), 113 (23)

【実施例4】
【0102】
<へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の調製>
【0103】
【化40】

【0104】
下記の手順に従って、2,2-ジフルオロ-2-(ピリジン-2-イル)酢酸エチルエステルを調製した。
シュレンク管に、2-ブロモピリジン(79.0 mg, 0.5 mmol), ヨウ化銅 (190.5 mg,1.0 mmol), フッ化カリウム (58.1 mg, 1.0 mmol), DMSO (2.0 mL)を注入した。最後にα-(トリメチルシリル)ジフルオロ酢酸エチルエステル(2a) (196.3 mg,1.0 mmol)を加え、窒素雰囲気下、60 ℃で15時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (50.0 mg, 0.5 mmol)を内部標準として加え、19F-NMRを用いて分析したところ目的物である2,2-ジフルオロ-2-(ピリジン-2-イル)酢酸エチルエステルが63%の収率で生成していることがわかった。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: EtOAc = 50: 1, 30: 1, 20: 1, 10: 1)で精製することにより、2,2-ジフルオロ-2-(ピリジン-2-イル)酢酸エチルエステル (53.2 mg, 0.26mmol, 収率:53%)が得られた。
【0105】
生成物(2,2-ジフルオロ-2-(ピリジン-2-イル)酢酸エチルエステル)の機器分析結果を、以下に示した。

1H NMR (CDCl3, TMS) δ 8.66 (1H, d, J= 4.8 Hz), 7.86 (1H, t, J = 7.8Hz), 7.74 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.43 (1H, t, J = 7.8 Hz), 4.38 (2H, q, J= 7.1 Hz), 1.33 (3H, t, J = 7.1 Hz)
19F-NMR (CDCl3, C6F6) δ 56.2 (2F, s)
EI-MS m/z (%) 201 (M+, 1), 172 (4), 156 (3), 129 (68), 128 (100), 79 (20), 78 (68)

【実施例5】
【0106】
<へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の調製>
【0107】
【化41】

【0108】
下記の手順に従って、2,2-ジフルオロ-2-(ピラジン-2-イル)酢酸エチルエステル(化合物3d)を調製した。
シュレンク管に、ヨードピラジン (103.0 mg, 0.5 mmol), ヨウ化銅(I) (190.5 mg, 1.0 mmol), フッ化カリウム (58.1 mg, 1.0 mmol), DMSO (2.0 mL)を入れる。最後にα-(トリメチルシリル)ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物2a) (196.3 mg, 1.0 mmol)を加え、窒素雰囲気下、60 ℃で15時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (50.0 mg, 0.5 mmol)を内部標準として加え、19F-NMRで測定したところ目的物である2,2-ジフルオロ-2-(ピラジン-2-イル)酢酸エチルエステル(化合物3d) が70%の収率で生成していることがわかった。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: EtOAc = 20: 1, 10: 1, 5: 1))で精製することにより、2,2-ジフルオロ-2-(ピラジン-2-イル)酢酸エチルエステル(化合物3d) (58.4 mg, 0.29 mmol, 収率:58%)が得られた。
【0109】
生成物(化合物3d)の機器分析結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 9.03 (1H, d, J = 1.2 Hz), 8.76 (1H, d, J = 2.2 Hz), 8.64 (1H, dd, J = 2.2 Hz, 1.2 Hz), 4.39 (2H, q, J = 7.1 Hz), 1.34 (3H, t, J = 7.1 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 55.3 (2F, s)
EI-MS m/z (%) 202 (M+, 24), 173 (6), 157 (4), 130 (90), 129 (100), 80
(7), 79 (12)

【実施例6】
【0110】
<へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の調製>
【0111】
【化42】

【0112】
下記の手順に従って、2,2-ジフルオロ-2-(キノリン-2-イル)酢酸エチルエステル(化合物3e)を調製した。
シュレンク管に、2-ヨードキノリン (76.5 mg, 0.3 mmol), ヨウ化銅(I) (57.1 mg, 0.3 mmol), フッ化カリウム (20.9 mg, 0.36 mmol), DMSO (0.6 mL)を入れる。最後にα-(トリメチルシリル)ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物2a) (70.7 mg, 0.36 mmol)を加え、窒素雰囲気下、60 ℃で15時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (30.0 mg, 0.3 mmol)を内部標準として加え、19F-NMRで測定したところ目的物である2,2-ジフルオロ-2-(キノリン-2-イル)酢酸エチルエステル(化合物3e) が88%の収率で生成していることがわかった。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: EtOAc = 50: 1)で精製することにより、2,2-ジフルオロ-2-(キノリン-2-イル)酢酸エチルエステル(化合物3e) (56.8 mg, 0.23 mmol, 収率:75%)が得られた。
【0113】
生成物(化合物3e)の機器分析結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 8.37 (1H, d, J = 8.5 Hz) 8.17 (1H, d, J = 8.6 Hz), 7.93-7.64 (4H, m), 4.46 (2H, q, J = 7.2 Hz), 1.39 (3H, t, J = 7.1 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 57.4 (2F, s)
EI-MS m/z (%) 252 (M+1, 3), 251 (M+, 24), 206 (5), 179 (54), 178 (100),
128 (48)

【0114】
<ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の調製>
【0115】
【化43】

下記の手順に従って、2-ジフルオロメチルキノリン(化合物4e)を調製した。
シュレンク管に、上記で得られた2,2-ジフルオロ-2-(キノリン-2-イル)酢酸エチルエステル(化合物3e) (502.5 mg, 2.0 mmol)、フッ化カリウム (581.0 mg, 10.0 mmol)、水 (180.2 mg, 10.0 mmol)を加え、窒素雰囲気下、DMF溶媒 (8.0 mL)中、170℃で3時間撹拌する。反応後、酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: EtOAc = 50: 1)で精製することにより、2-ジフルオロメチルキノリン(化合物4e) (317.7 mg, 1.77 mmol, 収率:89%)が得られた。
【0116】
生成物(化合物4e)の機器分析結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3,TMS) δ 8.33 (1H, d, J = 8.6 Hz), 8.15 (1H, d, J = 8.6 Hz), 7.89 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.79 (1H, dt, J = 7.7 Hz, 1.5 Hz), 7.74 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.64 (1H, dt, J = 7.6 Hz, 1.4 Hz), 6.98 (1H, t, JHF = 54.3 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 51.7 (2F, d, JHF = 54.9 Hz)
EI-MS m/z (%) 180 (M+1, 11), 179 (M+, 100), 129 (26), 128 (58), 101 (17)

【実施例7】
【0117】
<へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の調製>
【0118】
【化44】

【0119】
下記の手順に従って、2,2-ジフルオロ-2-(イソキノリン-1-イル)酢酸エチルエステル(化合物3f)を調製した。
シュレンク管に、1-ヨードイソキノリン (127.5 mg, 0.5 mmol), ヨウ化銅(I) (190.5 mg, 1.0 mmol), フッ化カリウム (58.1 mg, 1.0 mmol), DMSO (2.0 mL)を入れる。最後にα-(トリメチルシリル)ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物2a) (196.3 mg, 1.0 mmol)を加え、窒素雰囲気下、60 ℃で15時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (50.0 mg, 0.5 mmol)を内部標準として加え、19F-NMRで測定したところ目的物である2,2-ジフルオロ-2-(イソキノリン-1-イル)酢酸エチルエステル(化合物3f) が82%の収率で生成していることがわかった。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: EtOAc = 30: 1, 20: 1)で精製することにより、2,2-ジフルオロ-2-(イソキノリン-1-イル)酢酸エチルエステル(化合物3f) (96.7 mg, 0.38 mmol, 収率:77%)が得られた。
【0120】
生成物(化合物3f)の機器分析結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 8.51-8.46 (2H, m), 8.17 (1H, d, J= 7.4 Hz), 7.79-7.7.67 (3H, m), 4.50 (2H, q, J = 7.2 Hz), 1.40 (3H, t, J= 7.2 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 64.3 (2F, s)
Mass m/e: (m/z) (%) 251 (M+, 11), 179 (52), 178 (100), 129 (17), 128 (66)

【0121】
<ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の調製>
【0122】
【化45】

【0123】
下記の手順に従って、2-ジフルオロメチルイソキノリン(化合物4f)を調製した。
シュレンク管に、上記で得られた2,2-ジフルオロ-2-(イソキノリン-1-イル)酢酸エチルエステル(化合物3f) (376.8 mg, 1.5 mmol)、フッ化カリウム (435.8 mg, 7.5 mmol)、水 (135.2 mg, 7.5 mmol)を加え、窒素雰囲気下、DMF溶媒(6.0 mL)中、170℃で5時間撹拌する。反応後、酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: EtOAc = 20: 1)で精製することにより、2-ジフルオロメチルイソキノリン(化合物4f) (245.7 mg, 1.37 mmol, 収率:91%)が得られた。
【0124】
生成物(化合物4f)の機器分析結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3,TMS) δ 8.52-8.47 (2H, m), 7.91 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.79-7.67 (3H, m,), 6.79 (1H, t, JHF= 54.3 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 52.2 (2F, d, JHF= 54.9 Hz)
EI-MS m/z (%) 180 (M+1, 11), 179 (M+, 100), 129 (50), 128 (80), 101 (26)

【実施例8】
【0125】
<へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の調製>
【0126】
【化46】

【0127】
下記の手順に従って、2,2-ジフルオロ-2-(チオフェン-2-イル)酢酸エチルエステル(化合物3g)を調製した。
シュレンク管に、2-ヨードチオフェン(105.2 mg, 0.5 mmol), ヨウ化銅(I) (190.5 mg, 1.0 mmol), フッ化カリウム (58.1 mg, 1.0 mmol), DMSO (2.0 mL)を入れる。最後にα-(トリメチルシリル)ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物2a) (196.3 mg, 1.0 mmol)を加え、窒素雰囲気下、60 ℃で15時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (50.0 mg, 0.5 mmol)を内部標準として加え、19F-NMRで測定したところ目的物である2,2-ジフルオロ-2-(チオフェン-2-イル)酢酸エチルエステル(化合物3g) が49%の収率で生成していることがわかった。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: EtOAc = 50: 1, 30: 1, 20: 1))で精製することにより、2,2-ジフルオロ-2-(チオフェン-2-イル)酢酸エチルエステル(化合物3g) (40.8 mg, 0.20 mmol, 収率:40%)が得られた。
【0128】
生成物(化合物3g)の機器分析結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 7.48 (1H, dd, J = 5.1 Hz, 1.3 Hz), 7.41-7.38 (1H, m), 7.09-7.05 (1H, m), 4.37 (2H, q, J = 7.2 Hz), 1.36 (3H, t, J = 7.1 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 68.7 (2F, s)
Mass m/e: (m/z) (%) 206 (M+, 9), 134 (7), 133 (100)

【実施例9】
【0129】
<へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の調製>
【0130】
【化47】

【0131】
下記の手順に従って、2,2-ジフルオロ-2-(チオフェン-3-イル)酢酸エチルエステル(化合物3h)を調製した。
シュレンク管に、3-ヨードチオフェン(105.2 mg, 0.5 mmol), ヨウ化銅(I) (190.5 mg, 1.0 mmol), フッ化カリウム (58.1 mg, 1.0 mmol), DMSO (2.0 mL)を入れる。最後にα-(トリメチルシリル)ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物2a) (196.3 mg, 1.0 mmol)を加え、窒素雰囲気下、60 ℃で15時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (50.0 mg, 0.5 mmol)を内部標準として加え、19F-NMRで測定したところ目的物である2,2-ジフルオロ-2-(チオフェン-3-イル)酢酸エチルエステル(化合物3h) が77%の収率で生成していることがわかった。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane: EtOAc = 50: 1)で精製することにより、2,2-ジフルオロ-2-(チオフェン-3-イル)酢酸エチルエステル(化合物3h) (76.5 mg, 0.37 mmol, 収率:74%)が得られた。
【0132】
生成物(化合物3h)の機器分析結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 7.68-7.66 (1H, m), 7.40-7.36 (1H, m), 7.25 (1H, dd, J = 5.1 Hz, 1.3 Hz ), 4.33 (2H, q, J = 7.2 Hz), 1.34 (3H, t, J = 7.2 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 62.9 (2F, s)
Mass m/e: (m/z) (%) 206 (M+, 12), 134 (8), 133 (100)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の置換基により置換されていてもよいハロゲン化へテロアリール化合物と、α−シリルジフルオロ酢酸エステル化合物とを金属ハロゲン化物の存在下で反応させることによる、へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物の製造方法。
【請求項2】
前記ハロゲン化へテロアリール化合物1当量に対して、前記金属ハロゲン化物をモル換算で0.1〜4当量用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化へテロアリール化合物1当量に対して、前記一般式(2)で表される化合物をモル換算で1〜2当量反応させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ハロゲン化へテロアリール化合物が、ヨウ素化へテロアリール化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属ハロゲン化物が、ヨウ化銅及び/又はフッ化カリウムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法により得られるへテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物を加水分解するとともに、金属ハロゲン化物の存在下で脱炭酸反応させることによる、ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物の製造方法。
【請求項7】
前記金属ハロゲン化物がフッ化カリウムである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ハロゲン化へテロアリール化合物、前記へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物及び前記ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物が、窒素原子又は硫黄原子を含むへテロアリール骨格を有するものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法
【請求項9】
前記へテロアリール骨格が、ピリジン骨格、ピラジン骨格、ピリミジン骨格、キノリン骨格、イソキノリン骨格又はチオフェン骨格である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ハロゲン化へテロアリール化合物、前記へテロアリールジフルオロ酢酸エステル化合物及び前記ジフルオロメチル化ヘテロアリール化合物が、電子求引基及び/又は一価の有機基により置換されているものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2012−167047(P2012−167047A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28545(P2011−28545)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】