説明

ジベレリン処理柑橘類及び柑橘類の保存方法

【解決課題】柑橘類を収穫後、出荷、運搬及び店頭陳列の際に、果皮が黄変し難くなる柑橘類の保存方法を提供すること。
【解決手段】果皮がジベレリン処理されている柑橘類であって、果皮のジベレリンの濃度が、0.01〜3ppmであることを特徴とするジベレリン処理柑橘類。果皮のジベレリン濃度が0.01〜3ppmとなるように、柑橘類の果皮をジベレリン処理し、次いで、該ジベレリン処理された柑橘類を保存することを特徴とする柑橘類の保存方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘類を、出荷、運搬、店頭陳列する際の柑橘類の保存方法及びその保存方法の実施に用いられるジベレリン処理柑橘類に関する。
【背景技術】
【0002】
柑橘類では、果皮が緑色の果実を収穫し保存しておくと、時間の経過とともに果皮の色が黄色に変化するのが、一般的である。そのため、緑色で収穫した柑橘類を収穫後、出荷、運搬、店頭陳列する際に、果皮の色が黄色に変化する。そして、最近の消費者の動向としては、果皮の色が緑色の柑橘類の方が新鮮とされ、また見栄えが良いと見られ、特にレモンでは、緑色であることを国産品の特色としてPRする取り組みも行われており、需要が高い傾向にある。よって、市場において、そのような柑橘類の需要が高まりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−500344号公報(段落番号0035及び0036)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、緑色の果皮の色を黄変し難くする柑橘類の保存方法については、先行技術はなかった。
【0005】
特表2008−500344号公報(特許文献1)には、ミカン、レモン及びタンジェリンに、ジベレリンを使用し、外皮の染み、水腐れ、粘り気のある表面若しくは粘着性の表面、腫れた外皮又は圧力下での破裂などの疾患を軽減することが可能であることが開示されているものの、果皮の黄変を防ぐというものではない。
【0006】
従って、本発明の課題は、柑橘類を収穫後、出荷、運搬及び店頭陳列の際に、果皮が黄変し難くなる柑橘類の保存方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、(1)柑橘類をジベレリン処理して、果皮のジベレリン濃度を特定の濃度にすることにより、保存時に果皮が黄変し難くなること、(2)柑橘類をジベレリン処理して、果皮のジベレリン濃度を特定の濃度にし、且つ、酸素透過量を特定の範囲にして保存することにより、果皮が黄変し難くなること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明(1)は、果皮がジベレリン処理されている柑橘類であって、果皮のジベレリンの濃度が0.01〜3ppmであることを特徴とするジベレリン処理柑橘類を提供するものである。
【0009】
また、本発明は(2)は、果皮のジベレリン濃度が0.01ppm〜3ppmとなるように、柑橘類の果皮をジベレリン処理し、次いで、該ジベレリン処理された柑橘類を保存することを特徴とする柑橘類の保存方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、柑橘類を収穫後、出荷、運搬及び店頭陳列の際に、果皮が黄変し難い柑橘類の保存方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の柑橘類の保存方法は、柑橘類の果皮のジベレリン濃度が0.01〜3ppmとなるように、該柑橘類の果皮をジベレリン処理し、次いで、該ジベレリン処理された柑橘類を保存する柑橘類の保存方法である。
【0012】
そして、本発明の柑橘類の保存方法は、収穫した柑橘類を、出荷、運搬、店頭陳列する際の保存方法である。
【0013】
本発明の柑橘類の保存方法では、先ず、該柑橘類の果皮をジベレリン処理する。
【0014】
本発明の柑橘類の保存方法に係る該柑橘類としては、レモン、スダチ、カボス、ライム等が挙げられる。その中で、該柑橘類としては、特にレモン、スダチ、カボスが好ましい。
【0015】
該ジベレリン処理において、該ジベレリン処理後の該柑橘類の果皮のジベレリン濃度が、0.01〜3ppm、好ましくは0.05〜1.5ppm、特に好ましくは0.1〜1ppmとなるように、該柑橘類の果皮にジベレリン処理を行う。該ジベレリン処理後の該柑橘類の果皮のジベレリン濃度が、上記範囲内にあることにより、果皮が黄変し難くなる。
【0016】
該ジベレリン処理を行う方法としては、例えば、
(1)樹上(樹に生ったままの状態)又は収穫後の該柑橘類に、ジベレリン水溶液を散布することにより行う方法(以下、ジベレリン処理方法(1)とも記載する。)、
(2)収穫後の該柑橘類を、ジベレリン水溶液に浸漬することにより行う方法(以下、ジベレリン処理方法(2)とも記載する。)、
が挙げられる。
【0017】
該ジベレリン処理方法(1)の場合、ジベレリン水溶液中のジベレリンの濃度及びジベレリン水溶液の散布量は、該ジベレリン処理後の該柑橘類の果皮のジベレリン濃度が上記範囲内となるように、適宜選択される。例えば、該ジベレリン処理方法(1)の場合、散布されるジベレリン水溶液中のジベレリンの濃度は、好ましくは5〜100ppm、特に好ましくは10〜50ppmであり、また、散布するジベレリン水溶液の散布量は、例えば、該柑橘類からジベレリン水溶液が滴る量であり、該柑橘類100gあたりに付着する水溶液の量が0.1〜2gであることが好ましく、0.2〜1.5gであることが特に好ましい。
【0018】
また、該ジベレリン処理方法(1)で樹上散布の場合、ジベレリン水溶液を散布する時期は、好ましくは該柑橘類の収穫の1〜10日前、特に好ましくは3〜7日前である。該ジベレリン水溶液を散布する時期が、上記範囲内にあることにより、果皮が黄変し難くなるという効果を得易くなる。
【0019】
また、該ジベレリン処理方法(1)の場合、ジベレリン水溶液を散布する方法は、特に制限されず、農薬噴霧器、霧吹き等により行える。また、散布の回数は、1回でも、2回以上でもよい。
【0020】
該ジベレリン処理方法(2)の場合、ジベレリン水溶液中のジベレリンの濃度及びジベレリン水溶液への浸漬時間は、該ジベレリン処理後の該柑橘類の果皮のジベレリン濃度が上記範囲内となるように、適宜選択される。例えば、該ジベレリン処理方法(2)の場合、浸漬用のジベレリン水溶液中のジベレリンの濃度は、好ましくは1〜100ppm、特に好ましくは1〜50ppmであり、また、浸漬時間は、通常1〜60秒、好ましくは1〜10秒である。柑橘類の選果ラインでよく用いられているシャワー式の果実洗浄機を使用しても良い。
【0021】
また、該ジベレリン処理方法(2)の場合、ジベレリン水溶液の温度は、5〜35℃である。
【0022】
該ジベレリン処理方法(1)又は該ジベレリン処理方法(2)により処理された柑橘類の果皮のジベレリン濃度は0.01〜3ppm以下である。該柑橘類の果皮のジベレリン濃度が、上記範囲にあることにより柑橘類の果皮の色が長く緑色の状態で保たれる。該柑橘類の果皮のジベレリン濃度が、0.01ppm未満だと、果皮の緑色を長く保たれない恐れがあり、3ppmを超えてもその効果に顕著な差はなく、薬品の使用量が増えるだけである。該ジベレリン処理後の該柑橘類の果皮のジベレリン濃度は、好ましくは0.05〜1.5ppm、特に好ましくは0.1〜1ppmである。
【0023】
本発明の柑橘類の保存方法では、次いで、該ジベレリン処理をした柑橘類を保存する。
【0024】
該ジベレリン処理した柑橘類の保存は、段ボール箱詰め、袋詰め、棚にそのまま陳列、コンテナ詰め等が挙げられる。
【0025】
該ジベレリン処理をした柑橘類を保存する際の保存温度は、通常、5〜30℃、好ましくは5〜25℃、特に好ましくは8〜20℃である。
【0026】
そして、本発明の柑橘類の保存方法では、該ジベレリン処理を行った後、該ジベレリン処理された柑橘類の保存を、高分子フィルムからなる鮮度保持用包装袋に包装し、且つ、柑橘類保存時の酸素透過量Pを150〜3000cc/100g・day・atmにして行うことが、果皮が黄変し難くなるという効果が高まる点で好ましい。このような形態例を、本発明の第一の形態の柑橘類の保存方法とも記載する。
【0027】
本発明の第一の形態の柑橘類の保存方法では、該鮮度保持用包装袋に該柑橘類を包装するが、その際、包装体1つ当たりの該柑橘類の質量は、好ましくは20〜3000g、特に好ましくは40〜1200gである。また、包装体1つ当たりの該柑橘類の個数は、好ましくは1個である。なお、本発明においては、該包装体とは、該鮮度保持用包装袋で包装された該柑橘類のことを指す。
【0028】
本発明の第一の形態の柑橘類の保存方法に係る該鮮度保持用包装袋は、高分子フィルムからなり、該高分子フィルムの材質としては、特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート等、あるいは、これらの複合材料が挙げられる。
【0029】
該高分子フィルムの厚さは、特に制限されないが、通常、15〜60μmであり、取り扱い及びコストの観点から、20〜40μmが好ましい。
【0030】
本発明の第一の形態の柑橘類の保存方法では、該鮮度保持用包装袋に該柑橘類を包装して、該柑橘類を保存する際、該柑橘類保存時の酸素透過量Pを、好ましくは150〜3000[cc/(100g・day・atm)]、特に好ましくは200〜2000[cc/(100g・day・atm)]、更に好ましくは200〜1000[cc/(100g・day・atm)]、より好ましくは200〜500[cc/(100g・day・atm)]とする。該柑橘類保存時の酸素透過量Pが上記範囲内にあることにより、果皮が黄変し難くなるという効果が高まる。
【0031】
本発明において、該柑橘類保存時の酸素透過量P[cc/(100g・day・atm)]とは、23℃における、包装される柑橘類100g当りの、1日当りの、包装体の内と外との酸素圧力差1気圧当りの酸素透過量である。
【0032】
23℃における単位面積当りの酸素透過量がF[cc/(m・day・atm)]の鮮度保持用包装袋を用いて、該柑橘類を包装する場合、該保存時の酸素透過量P[cc/(100g・day・atm)]は、23℃における該鮮度保持用包装袋の単位面積当りの酸素透過量F[cc/(m・day・atm)]に、該鮮度保持用包装袋の有効表面積S(m)を乗じて得た値を、包装される柑橘類の質量W(g)で除し、100を乗じた値である。例えば、23℃における鮮度保持用包装袋の単位面積当りの酸素透過量がf[cc/(m・day・atm)]、鮮度保持用包装袋の有効表面積がs(m)、包装された柑橘類の質量がw(g)であった場合、保存時の酸素透過量Pは、
P=f×s×(100/w)
となる。なお、該鮮度保持用包装袋の有効表面積とは、該鮮度保持用包装袋のうち、酸素透過に関与できる部分の表面積を指し、密封のために張り合わせられている部分のような、酸素透過に関与できない部分を除く表面積のことである。
【0033】
本発明の第一の形態の柑橘類の保存方法では、該高分子フィルムの材質自体の酸素透過性が低い場合、該高分子フィルムに平均孔径5〜450μm、好ましくは平均孔径20〜300μm、特に好ましくは平均孔径20〜100μmの微孔を開け、該微孔の大きさ及び数により、該保存時の酸素透過量Pを上記範囲内に調整することができる。また、該高分子フィルムの材質によっては、微孔を開けなくても、材質自体での酸素透過により、該保存時の酸素透過量Pを上記範囲内に調整することができるので、このような場合は、該高分子フィルムの材質を選択することによって、該保存時の酸素透過量Pを調整することができる。また、該高分子フィルムの材質及び微孔の大きさ又は数の選択によって、該保存時の酸素透過量Pを調整することもできる。
【0034】
該鮮度保持用包装袋の袋の形状は、特に制限されない。
【0035】
該柑橘類を該鮮度保持用包装袋に包装する際、該柑橘類を、該鮮度保持用包装袋に入れ、密封するが、該鮮度保持用包装袋を密封する方法としては、ヒートシール、結束帯、輪ゴム、かしめ等、特に制限されない。また、該柑橘類を該鮮度保持用包装袋に包装する際、包装形態としては、袋詰めの形態だけではなく、例えば、ダンボール箱と該鮮度保持用包装袋とを一体化させた形態であってもよい。
【0036】
本発明のジベレリン処理柑橘類は、本発明の柑橘類の保存方法の実施に用いられる。
【0037】
本発明のジベレリン処理柑橘類は、果皮がジベレリン処理されている柑橘類であって、該柑橘類の果皮のジベレリン濃度が0.01〜3ppm、好ましくは 0.05〜1.5ppm、特に好ましくは0.1〜1ppmである。該柑橘類の果皮のジベレリンの濃度が、上記範囲内にあることにより、果皮が黄変し難くなる。
【0038】
本発明のジベレリン処理柑橘類は、高分子フィルムからなり、且つ、柑橘類保存時の酸素透過量Pが、上記範囲である鮮度保持用包装袋に包装されていることが好ましい。このことにより、果皮が黄変し難くなるという効果が高まる。
【0039】
本発明のジベレリン処理柑橘類に係る該柑橘類は、本発明の柑橘類の保存方法に係る該柑橘類と同様である。
【0040】
本発明のジベレリン処理柑橘類に係る該高分子フィルムの材質は、本発明の柑橘類の保存方法に係る該高分子フィルムの材質と同様である。
【0041】
本発明のジベレリン処理柑橘類に係る該高分子フィルムの厚さは、特に制限されないが、通常、15〜60μmであり、取り扱い及びコストの観点から、20〜40μmが好ましい。
【0042】
本発明のジベレリン処理柑橘類に係る該鮮度保持用包装袋は、該柑橘類保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量P、又は該高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量Fを調節するために、微孔を有してもよく、この場合、該微孔の平均孔径は、5〜450μm、好ましくは平均孔径20〜300μm、特に好ましくは平均孔径20〜100μmであり、該微孔の開孔面積比率は、5.0×10−6〜1.0×10−4%、好ましくは5.0×10−6〜5.2×10−5%である。なお、該微孔の開孔面積比率とは、該鮮度保持用包装袋の有効表面積に対する該微孔の総面積の比率(%)である({微孔の総面積/鮮度保持用包装袋の有効表面積}×100)。
【0043】
本発明のジベレリン処理柑橘類に係る該鮮度保持用包装袋では、23℃における、該柑橘類保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pは、150〜3000[cc/(100g・day・atm)]であり、好ましくは200〜2000[cc/(100g・day・atm)] 、特に好ましくは200〜1000[cc/(100g・day・atm)]、更に好ましくは200〜500[cc/(100g・day・atm)]である。該柑橘類保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pが上記範囲にあることにより、果皮が黄変し難くなるという効果が高くなる。
【0044】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0045】
(実施例1〜6)
<包装袋の作成>
厚さ25μmの延伸ポリプロピレン製の高分子フィルムの3辺をヒートシールして、長方形の鮮度保持用包装袋を作製し、表1に示す微孔を1袋当たりに表1に示す個数開けて、包装袋を用意した。
【0046】
<ジベレリン処理>
露地栽培されているレモン(品種:ユーリカ)の樹体を区画分けし、各区画のレモンに、所定の濃度及び所定の時期に、ジベレリン水溶液を散布した。散布の際は、ジベレリン水溶液がレモンから滴る程度散布した。次いで、散布から所定日数経過後に、ジベレリン処理されたレモンを樹体から採り、収穫した。収穫日は、2007年9月25日である。なお、ジベレリン水溶液の散布を、実施例1及び実施例2では収穫の30日前に、実施例3、実施例4、実施例5及び実施例6では収穫の7日前に行った。また、散布の際のジベレリン水溶液の濃度を、実施例1では50ppm、実施例2では10ppm、実施例3では50ppm、実施例4では10ppm、実施例5では50ppm、実施例6では50ppmとした。
収穫後のレモンの果皮のジベレリンの濃度は、実施例1では、0.7ppm、実施例2では、0.2ppm、実施例3、実施例5及び実施例6では、0.8ppm、実施例4では、0.3ppmであった。
【0047】
<レモンの果皮のジベレリンの濃度の測定方法>
厚生労働省の「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法」(平成17年1月24日付け食安発第0124001号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)第二章、一斉試験法(通知試験法)のLC/MSによる農薬等の一斉試験法II(農産物)に準じて測定した。抽出は、「果実、野菜、ハーブ、茶及びホップの場合」に準拠した。測定には液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)を用いた。
なお、測定用試料の作成であるが、レモン3個分(3個の質量合計499〜536g)を用い、剥いた皮の合計質量がレモン3個の質量合計の18〜24%になるようレモンの全表皮から1〜3mm程度の厚さにて皮を剥き取り、測定サンプルとした。測定は、各条件でn=1で行った。
【0048】
<包装>
次いで、上記で得た各包装袋毎に、収穫したレモン1個を詰め、表1に示す内寸となるように密封し、該レモンが包装された包装体を得た。なお、各試験毎に50袋の包装体を用意した。なお、表1に示すレモンの質量は、各試験毎の平均値である。このとき、該鮮度保持用包装袋の有効表面積Sは、ヒートシール部を除いた該包装体の内側の表面積であり、保存時の酸素透過量Pは、表1に示す値となる。なお、該保存時の酸素透過量Pは、以下の式で求められる。ただし、実施例5は、無包装とした。
P=F×S×(100/W)
P:保存時の酸素透過量[(cc/(100g・day・atm)]
F:23℃における鮮度保持用包装袋の単位面積当りの酸素透過量[cc/(m・day・atm)]
S:鮮度保持用包装袋の有効表面積(m
W:包装体に詰められているレモンの質量(g)
である。
【0049】
<保存試験>
次いで、該包装体を、表1に示す温度で表1に示す日数保存した。所定日数保存後、包装袋を開封し、レモンの果皮の色を評価した。その結果を表1に示す。なお、レモンの果皮の色の評価であるが、保存試験後の果皮を目視にて確認し、5段階(5:緑色、4:やや薄い緑色、3:薄い緑色、2:ほぼ黄色、1:黄色)の点数を付け、50袋の平均値を算出した。そして、レモンの果皮の色の評価が2.5点以下となった場合を、黄変したと判断した。
【0050】
<鮮度保持用包装袋の単位面積当りの酸素透過量Fの測定>
(1)包装袋の準備
表1に示す開孔面積比率の鮮度保持用包装袋で、4辺がヒートシールで密封された長方形の包装袋を作成する。このとき、ヒートシール後の包装袋の内側の表面積が、鮮度保持用包装袋の有効表面積S(m)であり、Sが0.06m以上となるように包装袋を作成する。なお、以下全ての作業は、大気中で行う。
【0051】
(2)窒素ガスの封入
ヒートシールで包装袋を密封した後、アスピレーターを用いて包装袋を脱気する。脱気は、包装袋の両面が貼りつくまで行う。次に、この包装袋に白硬注射筒を用いて窒素ガス(純窒素ガス)を充填する。窒素ガスの充填量は、袋サイズによるが、包装フィルムにテンションがかからない範囲で極力多く入れ、注射筒の目盛りを用いて、窒素ガスの注入量を測定する。なお、注射針を包装袋に突き刺して、ガスの出し入れを行う。針を刺す際は、鮮度保持用包装袋に両面テープを貼り、この上からポリプロピレンフィルム製の粘着テープ(以下「PPテープ」という)を貼り付ける。また、針を抜いた後は、速やかにPPテープで針穴を塞ぐ。包装袋にはるテープは、4.5cm以下の面積に収まるようにする。また、微孔を開けた鮮度保持用包装袋の場合は、微孔を塞がないように注意する。
【0052】
(3)初期酸素濃度の測定
窒素ガス充填直後に、ガスクロマトグラフィー(TCD)で測定して、包装袋内の酸素量を求め、酸素濃度C(体積%)を算出した。このとき、Cが0.2体積%超えている場合は、上記(1)及び(2)作業をやり直す。なお、酸素濃度測定用のサンプリングガス量は、10cc以下とする。ガスクロマトグラフィーには、1cc程度を注入する。
【0053】
(4)包装袋の保管
初期酸素濃度を測定した包装袋を、23℃のインキュベーター中で保管する。このとき、袋の上に物が載ったり、インキュベーターのファンの風が直撃したりしないように静置する。
【0054】
(5)保管中の包装袋内の酸素濃度の測定及び酸素透過量の計算
少なくとも2点以上経時時間を代えて、包装袋内のガスをサンプリングし、包装袋内の酸素濃度を測定する。このとき、経時時間は、窒素ガス充填直後から3時間以上経過後であり、且つ、包装袋内の酸素濃度が1%以上7%以下の範囲内でなれければならない。そして、経時時間t(時間)と包装袋内の酸素濃度との間に比例関係(相関係数が0.98以上)が成り立つ必要がある。もし、包装袋内の酸素濃度が1%以上7%以下の範囲内からはずれていた場合、あるいは、比例関係が成り立たない場合は再試験を行う。なお、鮮度保持用包装袋の酸素透過量が大きすぎて包装袋内の酸素濃度の上昇が速すぎ、この条件をクリアできない場合は、高分子フィルムの一部を酸素透過量が小さい既知である同じ材質のフィルムと張り合わせて袋を作成して同様に行えばよい。この際、袋の表面積は既知である別のフィルムと張り合わせた部分は除く。
次いで、鮮度保持用包装袋の単位面積当りの酸素透過量Fを、下記式により計算する。
F={1.143×(C−C)×V}/(t×S)
F : 23℃における単位面積当りの酸素透過量[(cc/(m・day・atm)]
: 窒素ガス充填時から経時時間t時間後の包装袋内の酸素濃度(体積%)1)
: 窒素ガス充填直後の包装袋内の酸素濃度(体積%)
V : 充填した窒素ガスの量(cc)
t : 窒素ガス充填直後からの経過時間(時間)1)
S : 包装袋の内側の表面積(鮮度保持用包装袋の有効表面積)(m
1)C及びtとしては、最も長い経時時間の値を用いて計算する。
【0055】
なお、鮮度保持用包装袋の一部を酸素透過量が小さい既知である同じ材質のフィルムと張り合わせて袋を作成した場合は、上記測定により得られる単位面積当りの酸素透過量から、該既知のフィルムの単位面積当りの酸素透過量を減じた値が、対象となる鮮度保持用包装袋の単位面積当りの酸素透過量である。
【0056】
(比較例1)
ジベレリン処理を行わないこと以外、すなわち、ジベレリン水溶液を散布せずに収穫したレモンを用いること以外は、実施例1〜4と同様の方法で行った。その結果を表1に示す。
【0057】
(比較例2)
<包装袋の作成>
厚さ20μmのポリエチレン製の高分子フィルムの3辺をヒートシールして、長方形の鮮度保持用包装袋を作製し、表1に示す微孔を1袋当たりに表1に示す個数開けて、包装袋を用意した。
上記ポリエチレン製の包装袋を用いる以外は、比較例1と同様に行った。すなわち、比較例2では、ジベレリン処理を行っていないレモンを用い、上記ポリエチレン製の包装袋を用いて、包装及び保存試験を行った。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
果皮がジベレリン処理されている柑橘類であって、果皮のジベレリンの濃度が0.01〜3ppmであることを特徴とするジベレリン処理柑橘類。
【請求項2】
高分子フィルムからなり、且つ、柑橘類保存時の酸素透過量Pが150〜3000cc/100g・day・atmである鮮度保持用包装袋に包装されていることを特徴とする請求項1記載のジベレリン処理柑橘類。
【請求項3】
前記柑橘類がレモンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のジベレリン処理柑橘類。
【請求項4】
果皮のジベレリン濃度が0.01ppm〜3ppmとなるように、柑橘類の果皮をジベレリン処理し、次いで、該ジベレリン処理された柑橘類を保存することを特徴とする柑橘類の保存方法。
【請求項5】
前記ジベレリン処理された柑橘類を、高分子フィルムからなる鮮度保持用包装袋に包装し、且つ、柑橘類保存時の酸素透過量Pを150〜3000cc/100g・day・atmにして、前記ジベレリン処理された柑橘類の保存を行うことを特徴とする請求項4記載の柑橘類の保存方法。
【請求項6】
樹上の柑橘類に、ジベレリン水溶液を散布することにより、前記ジベレリン処理を行うことを特徴とする請求項4又は5いずれか1項記載の柑橘類の保存方法。
【請求項7】
収穫後の柑橘類を、ジベレリン水溶液に浸漬することにより前記ジベレリン処理を行うことを特徴とする請求項4又は5いずれか1項記載の柑橘類の保存方法。

【公開番号】特開2010−200709(P2010−200709A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51872(P2009−51872)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【出願人】(592134583)愛媛県 (53)
【Fターム(参考)】