説明

ジベンゾチアゼピン誘導体の製造法

【課題】抗精神病薬として有用な11−〔4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)〕−1−ピペラジニルジベンゾチアゼピン誘導体を製造するための出発原料として有用なジベンゾチアゼピン誘導体の新規製造法の提供。
【解決手段】特定のニトロベンゼン誘導体と特定のチオサリチル酸誘導体とを反応させた後、得られた2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を還元し、得られた2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を更に脱水縮合することにより次式(5)


で示される化合物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の中間体として有用なジベンゾチアゼピン誘導体の製法に関する。本発明は特に、抗精神病薬として有用な11−〔4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル〕−1−ピペラジニルジベンゾチアゼピンおよびその誘導体を製造するための中間体として有用な下記一般式(5)で表わされるジベンゾチアゼピン誘導体の製法に関する。
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は、同一または互いに異なっていてもよく、水素原子、または置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基もしくはアリールカルボニル基を表わす)。
【背景技術】
【0004】
上記一般式(5)のジベンゾチアゼピン誘導体については、特許文献1に記載があり、このジベンゾチアゼピン誘導体を原料として、抗精神病薬として有用な11−〔4−(2
−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル〕−1−ピペラジニルジベンゾチアゼピン誘導体に導くことができることが示されている。即ち、一般式(5)のジベンゾチアゼピン誘導体の代表化合物である、ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンをオキシ塩化燐と反応させて11−クロロ−ジベンゾチアゼピン誘導体を得て、次にこの11−クロロ−ジベンゾチアゼピン誘導体にピペラジンを付加させて11−ピペラジニル−ジベンゾチアゼピン誘導体を得て、最後にこの11−ピペラジニル−ジベンゾチアゼピン誘導体と2−クロロエトキシエタノールを、塩基性条件下で反応させて、上記の11−〔4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル〕−1−ピペラジニルジベンゾチアゼピン誘導体に導くことができることが示されている。
【0005】
上記の特許文献1にはまた、ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンの製法として、2−(フェニルチオ)フェニルカルバミン酸フェニルあるいはその類似化合物の環化反応(ポリリン酸存在下)を利用する方法が記載されている。
【0006】
非特許文献1には、チオサリチル酸メチル誘導体と2−ハロゲン化−ニトロベンゼン誘導体とを、ナトリウム存在下にて加熱反応させて、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を合成し、これをラネ−ニッケルを用いて還元して2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体とし、最後に高温下で反応させることで、ジベンゾチアゼピン誘導体を製造する方法が記載されている。
【0007】
非特許文献2には、チオサリチル酸エステル誘導体と2−ヨード−ニトロベンゼン誘導体とをナトリウムメチラ−トと銅との存在下加熱した後、アルカリ及び酸処理を行って2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を合成し、これを硫酸第1鉄のアンモニア水溶液を用いて還元して2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体とし、最後に加熱減圧下で反応させることで、ジベンゾチアゼピン誘導体を製造する方法が記載されている。
【0008】
特許文献2には、2−アミノチオフェノールと2ーフルオロベンゾニトリルとを反応させて、2−(2−アミノフェニルチオ)ベンゾニトリルを得たのち、この化合物を加水分解して、2−(2−カルボキシフェニルチオ)アニリンとし、最後にこの化合物を環化反応に付して、一般式(5)のジベンゾチアゼピン誘導体を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP−0282236−A1公報
【特許文献2】WO92/19607号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Helv.Chim.Acta.42巻,1263頁(1959年)
【非特許文献2】Org.Prep.Proced.Int.,287頁(1974年)
【0011】
上記のように、一般式(5)のジベンゾチアゼピン誘導体の製法として、既にいくつかの方法が知られているが、これらの方法は、収率が低い、反応に高温が必要である、特殊な原料を用いる必要がある、あるいは工業的に後処理が面倒な化合物を用いるなどの、工業的な製法として改良を必要とする問題がいくつか存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明は、前記一般式(5)のジベンゾチアゼピン誘導体を工業的に有利に製造する方法、すなわち、容易に入手可能な原料化合物を用いて、煩雑な後処理を行うことなく、かつ目的のジベンゾチアゼピン誘導体を高収率で得る製造法を提供することを目的
とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、容易に入手可能なニトロベンゼン誘導体とチオサリチル酸誘導体とを用いて、高収率かつ簡単な操作にて一般式(5)のジベンゾチアゼピン誘導体を製造できる新規な方法を見い出して本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、一般式(1):
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R1、R2、R3、およびR4は、同一または互いに異なっていてもよく、水素原子、または置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基もしくはアリールカルボニル基を表わし、そしてXはハロゲン原子を表わす)
で表わされるニトロベンゼン誘導体と、下記一般式(2):
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R5、R6、R7、およびR8は、同一または互いに異なっていてもよく、水素原子、または置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基もしくはアリールカルボニル基を表わす)
で表わされるチオサリチル酸誘導体とを、水、アミド系溶媒、脂肪族アルコール系溶媒、およびケトン系溶媒からなる群より選ばれる溶媒中、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムおよびナトリウムメチラートからなる群より選ばれる塩基の存在下にて反応させて、下記一般式(3):
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は前記と同じ意味を表わす)
で表わされる2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を生成させた後、該2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を還元して、下記一般式(4):
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は前記と同じ意味を表わす)
で表わされる2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を生成させた後、該2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を脱水縮合することを特徴とする、下記一般式(5):
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は前記と同じ意味を表わす)
で表わされるジベンゾチアゼピン誘導体の製造法にある。
【0025】
本発明はまた、一般式(1)のニトロベンゼン誘導体と一般式(2)のチオサリチル酸誘導体とを、水、アミド系溶媒、脂肪族アルコール系溶媒、およびケトン系溶媒からなる群より選ばれる溶媒中、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムおよびナトリウムメチラートからなる群より選ばれる塩基の存在下にて反応させることからなる一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の製造法にもある。
【0026】
本発明の一般式(5)のジベンゾチアゼピン誘導体の製造法の各工程は、下記の反応スキームによって表わすことができる。
【0027】
【化7】

【発明の効果】
【0028】
本発明のジベンゾチアゼピンの製造法に従って、ニトロベンゼン誘導体とチオサリチル酸誘導体とを反応させて、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を生成させた後、その生成物を還元して2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を生成させ、次いでその生成物を脱水縮合を行なうことにより、医薬品の中間体として有用性の高い一般式(5)で表わされるジベンゾチアゼピン誘導体を、高収率かつ簡単な操作で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のジベンゾチアゼピン誘導体の製法に関与する各々の一般式において、R1乃至
8が表わす「置換基を有してもいてもよいアルキル基」とは、置換基を有していない炭
素原子数1〜10個の直鎖状または分岐状のアルキル基が、または置換基を有している炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐状のアルキル基を意味する。
【0030】
上記の「置換基を有しない炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐状のアルキル基」としては、炭素原子数1〜8個(特に炭素原子数1〜5個)の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基(異性体を含む)、ブチル基(異性体を含む)、ペンチル基(異性体を含む)、ヘキシル基(異性体を含む)、ヘプチル基(異性体を含む)、オクチル基(異性体を含む)、ノニル基(異性体を含む)、デシル基(異性体を含む)等を挙げることができ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基(異性体を含む)、ブチル基(異性体を含む)、ペンチル基(異性体を含む)、ヘキシル基(異性体を含む)、ヘプチル基(異性体を含む)、オクチル基(異性体を含む)であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基(異性体を含む)、ブチル基(異性体を含む)、ペンチル基(異性体を含む)である。
【0031】
また、「置換基を有している炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐状のアルキル基」のアルキル部分としては、前記の(1)で述べたアルキル基を挙げることができる。
【0032】
上記の「置換基を有している炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐状のアルキル基」の置換基は、アルキル部分の任意の位置に付いていてもよい。その置換基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(異性体を含む)、ブトキシ基(異性体を含む)、ペンチルオキシ基(異性体を含む)、ヘキシルオキシ基(異性体を含む)、ヘプチルオキシ基(異性体を含む)、オクチルオキシ基(異性体を含む)、ノニルオキシ基(異性体を含む)、デシルオキシ基(異性体を含む)のような炭素原子数が1〜10個の直鎖状または分岐状のアルコキシ基、アセチル基、プロピオニル基(異性体を含む)、ブタノイル基(異性体を含む)、ペンタノイル基のような炭素原子数が1〜5個の直鎖状または分岐状のアルキル基部分を持つ炭素原子数が2〜6個のアルキルカルボニル基、置換されていてもよいフェニルカルボニル基、または置換されていてもよいフェニル基を挙げることができる。
【0033】
上記の「置換されていてもよいフェニルカルボニル基」とは、置換基を有していないフェニルカルボニル基が、または置換基を有しているフェニルカルボニル基を意味する。「置換されていてもよいフェニル基」とは、置換基を有していないフェニル基か、または置換基を有しているフェニル基を意味する。「置換基を有しているフェニルカルボニル基」または「置換を有しているフェニル基」の各置換基としては、フェニル基、フェニルカルボニル基、前記のアルキル基、前記のアルコシキ基、又は前記のアルキルカルボニル基を挙げることができる。
【0034】
本発明において、前記一般式(2)、(3)、(4)そして(5)のR1乃至R8が表わす「置換基を有していてもよいアルコキシ基」は、置換基を有していない炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐状のアルキル部分を持つ炭素原子数1〜10個のアルコキシ基か、または置換基を有する炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐状のアルキル基部分を持つ炭素原子数1〜10個のアルコキシ基を意味する。
【0035】
上記の「置換基を有していない炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐状のアルキル基部分を持つ炭素原子数1〜10個のアルコキシ基」としては、前記ので述べたアルコキシ基を挙げることができる。また「置換基を有している炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐状のアルキル部分を持つ炭素原子数1〜10個のアルコキシ基」の置換基の例としては、前記のアルキル基、炭素原子数2〜6個のアルキルカルボニル基、置換されていてもよいフェニルカルボニル基、そして置換されていてもよいフェニル基を挙げることが
できる。
【0036】
本発明のジベンゾチアゼピン誘導体の製法に関与する各々の一般式において、R1乃至
8が表わす「置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基」は、置換基を有してい
ない炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐状のアルキル部分を持つ炭素原子数2〜11個のアルキルカルボニル基、あるいは置換基を有している炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐状のアルキル基部分を持つ炭素原子数2〜11個のアルキルカルボニル基を意味する。
【0037】
上記の「置換基を有していない炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐状のアルキル基部分を持つ炭素原子数2〜11個のアルキルカルボニル基」のアルキル部分としては、前記アルキル基を挙げることがでる。「置換基を有している炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐状のアルキル部分を持つ炭素原子数2〜11個のアルキルカルボニル基」の置換基としては、前記のアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0038】
本発明のジベンゾチアゼピン誘導体の製法に関与する各々の一般式において、R1乃至
8が表わす「置換基を有していてもよいアリール基」とは、置換基を有していないアリ
ール基か、又は置換基を有しているアリール基を意味する。
【0039】
上記の「置換基を有していないアリール基」としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基等を挙げることができ、好ましくはフェニル基、ナフチル基、特に好ましくはフェニル基である。「置換基を有しているアリール基」の置換基としては、前記のアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0040】
本発明のジベンゾチアゼピン誘導体の製法に関与する各々の一般式において、R1乃至
8が表わす「置換基を有していてもよいアリールオキシ基」とは、置換基を有していな
いアリール部分を持つアリールオキシ基か、または置換基を有しているアリール基部分を持つアリールオキシ基を意味する。
【0041】
上記の「置換基を有していないアリール基部分を持つアリールオキシ基」のアリール基としては、前記のアリール基を挙げることができる。そして「置換基を有しているアリール基部分を持つアリールオキシ基」の置換基としては、前記のアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0042】
本発明のジベンゾチアゼピン誘導体の製法に関与する各々の一般式において、R1乃至
8が表わす「置換基を有していてもよいアリールカルボニル基」とは、置換基を有して
いないアリール基部分を持つアリールカルボニル基か、または置換基を有しているアリール基部分を持つアリールカルボニル基を意味する。
【0043】
上記の「置換基を有していないアリール基部分を持つアリールカルボニル基」のアリール基としては、前記のアリール基を挙げることができる。「置換基を有しているアリール基部分を持つアリールカルボニル基」の置換基としては、前記のアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0044】
1乃至R8は、同一または互いに異なっていてよく、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基又はアリールカルボニル基であり、特に好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はアルキルカルボニル基である。
【0045】
一般式(1)のXが表わすハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、
またはヨウ素原子を挙げることができ、好ましくはフッ素原子、塩素原子、または臭素原子である。
【0046】
次に、本発明のジベンゾチアゼピン誘導体の製造法の各工程について、詳しく説明する。
【0047】
本発明のジベンゾチアゼピン誘導体の製造法の第1工程では、一般式(1)で表わされるニトロベンゼン誘導体と一般式(2)で表わされるチオサリチル酸誘導体とを、好ましくは塩基の存在下にて溶媒中で反応させて、一般式(3)で表わされる2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を製造する。
【0048】
上記の第1工程で使用される一般式(1)のニトロベンゼン誘導体の具体例としては、2−クロロニトロベンゼン、2−ブロモニトロベンゼン、2−フルオロニトロベンゼン、2−ヨードニトロベンゼン、2−クロロ−5−メトキシ−ニトロベンゼン、2−ブロモ−5−メトキシ−ニトロベンゼン、2−フルオロ−5−メトキシ−ニトロベンゼン、2−ヨード−5−メトキシ−ニトロベンゼン、2−クロロ−5−メチル−ニトロベンゼン、2−ブロモ−5−メチル−ニトロベンゼン、2−フルオロ−5−メチル−ニトロベンゼン、2−ヨード−5−メチル−ニトロベンゼン、2−クロロ−5−フェニル−ニトロベンゼン、2−ブロモ−5−フェニル−ニトロベンゼン、2−フルオロ−5−フェニル−ニトロベンゼン、2−ヨード−5−フェニル−ニトロベンゼン、2−クロロ−5−アセチル−ニトロベンゼン、2−ブロモ−5−アセチル−ニトロベンゼン、2−フルオロ−5−アセチル−ニトロベンゼン、そして2−ヨード−5−アセチル−ニトロベンゼンを挙げることができ、好ましいのは2−クロロニトロベンゼン、そして2−ブロモニトロベンゼンである。
【0049】
上記の第1工程で使用される一般式(2)のチオサリチル酸誘導体の具体例としては、チオサリチル酸、5−メトキシ−チオサリチル酸、5−メチル−チオサリチル酸、5−フェニル−チオサリチル酸、そして5−アセチル−チオサリチル酸を挙げることができ、好ましいのは、チオサリチル酸、そして5−メトキシチオサリチル酸である。
【0050】
一般式(1)のニトロベンゼン誘導体は、一般式(2)のチオサリチル酸誘導体1モルに対して通常0.7〜10モルの範囲の量で用いるが、特に1.0〜5倍モルの割合になる使用量で用いることが好ましい。
【0051】
上記の第1工程は通常、溶媒の存在下で実施される。この第1工程で使用される溶媒については、例えば、水、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリドン等のアミド系有機溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン系有機溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリル系有機溶媒を用いることができる。好ましいのは水、アミド系有機溶媒、そして脂肪族アルコール系有機溶媒である。
【0052】
第1工程の溶媒は、溶媒の重量に対する一般式(1)のニトロベンゼン誘導体の重量の比[ニトロベンゼン誘導体重量/溶媒重量]が、0.05〜1.0の範囲の比となる量で用いることが好ましく、特に0.1〜0.8の範囲の比となる量で用いることが好ましい。
【0053】
第1工程における反応温度は、通常使用する溶媒の沸点までの温度であればよいが、好ましくは0〜150℃の範囲であり、特に好ましくは20〜100℃の範囲である。第1工程の反応時間は、反応温度によって著しく影響を受けるが、通常は20時間以内に反応
は完結する。
【0054】
第1工程の反応は通常、塩基の存在下に実施される。この第1工程において好ましく使用される塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、そしてナトリウムメチラートを挙げることができ、特に好ましいのは炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、そしてナトリウムメチラートである。これら塩基は、出発原料化合物の合計量に対して1〜10倍モルの範囲の割合になる量で用いることが好ましく、特に1.5〜5倍モルの割合になる量が用いることが好ましい。
【0055】
第1工程の反応の実施に際しては、塩基以外に、反応を促進させる添加物を更に加えてもよく、そのような添加物としては、ヨウ化カリウム、N,N−ジメチルアミノピリジン等を挙げることができる。この時の添加物の使用量としては、一般式(1)のニトロベンゼン誘導体に対して、モル比で、0.0005〜0.5(添加物のモル数/ニトロベンゼン誘導体のモル数)の範囲の割合となる量が好ましく、特に0.001〜0.1(同)の範囲の割合になる量が好ましい。
【0056】
本発明の製法の第1工程で得られる一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の化学構造は、一般式(1)のニトロベンゼン誘導体の化学構造と、一般式(2)のチオサリチル酸誘導体の化学構造とによって規定されるが、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体としては、例えば2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−ニトロ−4−メトキシ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−ニトロ−4−メチル−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−ニトロ−4−フェニル−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−ニトロ−4−アセチル−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、および2−ニトロ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドを挙げることができる。好ましいのは、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、そして2−ニトロ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドである。
【0057】
第1工程で生成した一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を回収するには、通常の洗浄操作と分離操作とを組み合わせて、例えば反応混合物に酸を添加して酸性とし、析出した結晶を濾別して粗生成物として得る方法や、反応液に水と抽出溶媒(有機溶媒)を添加し、これに酸を添加して水層のpHを酸性とする方法が利用できる。また、有機層を減圧濃縮することでも粗生成物が得られる。通常はこれらの状態で次工程に用いても問題ないが、更に精製するには、カラムクロマトグラフィーや再結晶操作によって精製すればよい。具体的な精製法については各化合物について適宣選択すればよい。上記の処理において用いる酸として好ましいのは、塩酸、硫酸、燐酸、そして酢酸である。
【0058】
本発明の製造法における第2工程は、一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を還元することにより、一般式(4)の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を製造する方法である。
【0059】
第2工程において使用される還元操作は、ニトロ基の一般的な還元に用いられるものであれば、特に限定はされないが、好ましいのは、ラネ−ニッケル法(以下、反応(A)という)、第一鉄塩法(以下、反応(B)という)、またはパラジウムもしくは白金、あるいはそれらの化合物を用いる方法(以下、反応(C)という)により行なうことである。還元反応における水素の供給源としては一般に水素ガスが用いられる。
【0060】
反応(A):ラネーニッケル法
この方法に使用するラネ−ニッケルの使用量としては、ニッケル量として一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体に対して、通常1.0〜80重量%であり、好ましくは5.0〜40重量%である。利用できるラネーニッケルの種類としては、10〜60%Ni−Al合金を挙げることができる。また、それに添加物としてCrおよびMoを加えたものを用いてもよい。安定化ニッケルの使用も可能である。ラネーニッケルの展開方法を変えても収率にさほど影響を与えないが、公知のW−6の方法(久保 松照夫、小松 信一郎、”ラネ−触媒”、(川研ファインケミカル株式会社、昭和46年5月10日、55頁参照)が最も良い結果を与えた。もちろん、他の展開方法を利用しても十分な活性を示す。ラネーニッケル法で反応を行なう場合には、通常は水素加圧下で行なうため、オートクレーブ中で反応を行なう。水素圧力は高いほど良好な結果を与えるが、通常5〜100気圧で行なう。常圧で反応を行うこともでき、この時は水素を流通させながら反応を行う。
【0061】
反応(A)で使用される溶媒については、反応に関与しないものであれば特に限定されないが、例えばメタノ−ル、エタノ−ル、n−プロパノ−ル、イソプロパノ−ル又はn−ブタノ−ルのような脂肪族アルコール系有機溶媒が好ましい。これらの溶媒は、一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の溶媒に対する割合が0.05〜0.6倍量(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体重量/溶媒の容量)の範囲になる量が好ましく、特に0.1〜0.6倍量(同)の範囲の割合になる量が好ましい。
【0062】
反応(A)における反応温度としては、通常使用する溶媒の沸点までの温度であればよいが、好ましくは20〜200℃の範囲の温度であり、特に好ましくは25〜150℃の範囲の温度である。反応時間は、反応温度や水素圧力によって著しく影響を受けるが、通常は20時間以内に反応は完結する。
【0063】
反応(A)による還元処理の後、生成する一般式(4)の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の回収は、通常の洗浄操作、分離操作を組み合わせて、例えば反応混合物を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮することで粗生成物として得られる。通常はこの状態で次工程に用いても問題ないが、更に精製するには、カラムクロマトグラフィーや再結晶操作によって精製すればよいが、精製法については各化合物について適宜選択すればよい。
【0064】
反応(B):第一鉄塩法
この方法に使用される第一鉄塩としては、例えば硫酸第一鉄類又は塩化第一鉄を挙げることができ、これらは水和物もしくは無水物のいずれの状態でも用いられる。好ましいのは、硫酸第一鉄・7水和物、無水塩化第一鉄、塩化第一鉄・4水和物、そして塩化第一鉄・n水和物である。これらの化合物の使用量は、鉄原子の量として一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体に対して0.1〜30倍重量の範囲内の量であり、好ましくは0.5〜10倍重量の範囲内の量である。
【0065】
反応(B)で使用される溶媒としては通常、水とアンモニア水の混合溶媒を用いる。用いるアンモニア水は通常、濃アンモニア水(アンモニア濃度25〜28重量%)を用いて行なうが、含有しているアンモニア量さえ十分であれば、より低濃度のアンモニア水を用いたり、水にアンモニアガスを吹き込んだものを用いたりしてもよい。水については、一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の水に対する量が、0.01〜0.4倍当量(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体重量/水の容量)の範囲の割合になる量であることが好ましく、特に0.02〜0.2倍当量(同)の範囲の割合になる量が好ましい。アンモニアは、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体のアンモニアに対する使用量が、0.005〜
0.5倍当量(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体重量/アンモニアの重量)の範囲の割合になる量となるように用いることが好ましく、特に0.01〜0.5倍当量(同)の割合になる量が好ましい。
【0066】
反応(B)における反応温度は、通常使用する溶媒の沸点までの温度であればよいが、好ましくは20〜100℃の範囲の温度であり、特に好ましくは40〜90℃の範囲の温度である。反応時間は、反応温度によって著しく影響を受けるが、通常は2時間以内に反応は完結する。
【0067】
反応(B)による還元処理の後、生成する一般式(4)の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の回収は、通常の洗浄操作、分離操作を組み合わせて、例えば反応混合物を濾過し、濾液に酸(例、塩酸、硫酸、りん酸、酢酸)を添加してpHを酸性側にする方法などを利用して行なうことができる。また得られた濾液を減圧濃縮することによって、目的化合物が粗生成物として得られる。通常はこの粗生成物を次工程に用いても問題ないが、更に精製するには、カラムクロマトグラフィーや再結晶操作によって精製すればよく、精製法については各化合物について適宣選択すればよい。
【0068】
反応(C):パラジウムもしくは白金(またはそれらの化合物)を用いる方法
この方法では、パラジウム(Pd)もしくは白金(Pt)が還元触媒(水素添加触媒)として用いられる。用いられるパラジウムもしくは白金は、パラジウムもしくは白金の単体であってもよく、あるいはそれらの化合物であってもよい。また、パラジウムもしくは白金の単体もしくは化合物は通常、炭素(C)あるいは硫酸バリウムなどの担体の表面に担持した状態で用いる。好ましいのは、Pd/C、Pd/硫酸バリウム、そして酸化白金であり、特に好ましいのはPd/Cである。
【0069】
パラジウムもしくは白金を含有する触媒の使用量は、一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジスルフィド誘導体の使用量に対して、パラジウムもしくは白金単体の重量換算で0.01〜30重量%となる範囲の量であることが好ましいが、0.05〜10重量%となる範囲の量であることが特に好ましい。また、触媒担体に対するパラジウムもしくは白金の担持量(パラジウムもしくは白金の化合物である場合には、各金属の単体重量換算)は、1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。なお、Pd/Cを用いる場合には、一般にドライ品と呼ばれる水分含量が5%以下の乾燥品も、あるいは水分含量がそれ以上のウエット品と呼ばれる含水品も用いることができる。含水品の例としては、水分含量が10〜70重量%(触媒全体の量に対する水分量の割合)のものを挙げることができる。
【0070】
反応(C)において、還元触媒として酸化白金を用いる場合には、酸化白金を一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジスルフィド誘導体の使用量に対して、0.1〜50重量%となる範囲の量であることが好ましいが、1〜30重量%となる範囲の量であることが特に好ましい。
【0071】
反応(C)は通常、水素加圧条件にて行なう。このため、反応は通常、オートクレーブ中で行なう。水素圧力は高いほど良好な結果をもたらすが、通常は2〜100気圧の水素加圧条件が利用される。反応は常圧で行なうこともできるが、この場合には水素ガスを流通させながら還元反応(水素添加反応)を行なう。
【0072】
反応(C)は通常、溶媒の存在下で実施する。反応(C)で使用される溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノ−ル、n−プロパノ−ル、イソプロパノ−ル、またはn−ブタノ−ルのような脂肪族アルコール系有機溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチ
ルピロリドン、またはジメチルイミダゾリドンのようなアミド系有機溶媒を用いることができる。なかでも、脂肪族アルコール系有機溶媒が好ましい。これらの溶媒は、一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体に対して、2〜70重量%の範囲の量で用いることが好ましく、5〜50重量%の範囲の量で用いることが特に好ましい。
【0073】
反応(C)は通常、10〜200℃の温度範囲の反応温度で実施されるが、特に20〜150℃の温度範囲の反応温度を利用することが好ましい。また、反応時間は、反応温度や水素圧力により大きく影響されるが、通常は30時間以内の反応時間が利用される。
【0074】
反応(C)による還元処理(水素添加処理)の後、生成する一般式(4)の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の回収は、通常の洗浄操作、分離操作を組み合わせて、例えば反応混合物を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮することで粗生成物として得る方法を利用して行なわれる。通常はこの状態で次工程に用いても問題ないが、更に精製するには、カラムクロマトグラフィーや再結晶操作によって精製すればよいが、精製法については各化合物について適宜選択すればよい。
【0075】
本発明の製法の第2工程(還元工程)で得られる一般式(4)の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の化学構造は、第2工程において反応原料として用いた一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の化学構造によって規定される。一般式(4)の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の例としては、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−アミノ−4−メトキシ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−アミノ−4−メチル−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−アミノ−4−フェニル−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−アミノ−4−アセチル−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、および2−アミノ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドを挙げることができる。好ましいのは、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、そして2−アミノ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドである。
【0076】
本発明の製法における第3工程は、一般式(4)の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を脱水縮合して、一般式(5)で表わされるジベンゾチアゼピン誘導体を製造する方法である。
【0077】
第3工程の反応は無溶媒で行なってもよいが、疎水性で、かつ反応に不活性な有機溶媒を用いて行なうことが好ましい。このような有機溶媒の例としては、トルエン、キシレン、クメン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、1,2−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジブロモベンゼン等の芳香族ハロゲン化物系溶媒、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶媒又は酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル等の脂肪族エステル系溶媒等を挙げることができる。特に好ましいのは、トルエン、キシレン、クメン、そして1,2−ジクロロベンゼンである。
【0078】
第3工程で使用される溶媒の使用量について特に限定はないが、一般式(4)の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の重量に対する溶媒の体積比(W/V%)が、3%以上であることが好ましく、特に好ましいのは4〜40%の範囲の量である。また第3工程での反応速度や転化率を高めるために、Dean−Stark装置を用いて共沸脱水操作(生成する水を除去しながら還流をする操作)を行なってもよい。第3工程での反応温度は、使用する有機溶媒の沸点以下であれば特に限定はないが、好まし
いのは100℃〜200℃の範囲の温度である。
【0079】
第3工程で得られる一般式(5)のジベンゾチアゼピン誘導体の化学構造は、一般式(4)の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の化学構造によって規定される。一般式(5)のジベンゾチアゼピン誘導体としては、例えば、ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−オン、8−メチル−ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−オン、8−フェニル−ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−オン、8−メトキシ−ジベンゾ〔b,f〕〔1,4〕チアゼピン−11−オン、および2−メトキシ−ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンを挙げることができる。好ましいのは、ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オン、そして2−メトキシ−ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンである。
【0080】
第3工程で生成した一般式(5)のジベンゾチアゼピン誘導体の回収は、反応混合物を冷却してジベンゾチアゼピン誘導体の結晶を析出させる方法を利用して容易に実施できる。従って、この結晶を濾取することで高純度のジベンゾチアゼピン誘導体を得ることができる。更に精製が必要な場合には、再結晶を行うか、カラムクロマトグラフィーを用いればよい。または、反応混合物を晶析させる前に、アルカリ性水溶液を添加し、水層を分離した後に冷却を行なって、ジベンゾジチアゼピン誘導体を結晶化させる方法を利用してもよい。この操作で用いるアルカリ性水溶液の調製に用い得るアルカリ化合物の例としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、そして水酸化カリウムを挙げることができる。アルカリ性水溶液中のアルカリ化合物の濃度は、0.5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。また、アルカリ性水溶液の使用量については特に限定はないが、第3工程の生成物(一般式(5)のジベンゾチアゼピン誘導体)に対して0.05〜0.4重量倍程度の量で用いることが好ましい。
【0081】
本発明の好ましい態様は、以下のとおりである。
(1)一般式(1)のニトロベンゼン誘導体が、2−クロロニトロベンゼンまたは2−ブロモニトロベンゼンである。
(2)一般式(2)のチオサリチル酸誘導体が、チオサリチル酸または5−メトキシチオサリチル酸である。
(3)本発明のジベンゾチアゼピン誘導体の製法の第1工程において、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、及びナトリウムメチラートからなる群より選ばれる塩基を用いる。
(4)一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体が、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドまたは2−ニトロ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドである。
(5)本発明のジベンゾチアゼピン誘導体の製法の第1工程で、N,N−ジメチルホルムアミドまたはメタノールを反応溶媒として用いる。
【0082】
(6)本発明のジベンゾチアゼピン誘導体の製法の第2工程の還元反応において、還元剤としてラネ−ニッケルを用い、溶媒としてメタノ−ルまたはn−ブタノ−ルを用いる。
(7)本発明のジベンゾチアゼピン誘導体の製法の第2工程の還元反応において、還元剤として硫酸第一鉄・7水和物を用い、溶媒としてアンモニア水溶液を用いる。
(8)本発明のジベンゾチアゼピン誘導体の製法の第2工程における還元反応を、Pd/C、Pd/硫酸バリウム、もしくは酸化白金のいずれかである還元触媒の存在下にて、メタノールもしくはエタノールを溶媒として用いて行なう。
(9)一般式(4)の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体が、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−アミノ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィド、または2−メトキシ−ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンである。
(10)一般式(5)により表わされるジベンゾチアゼピン誘導体が、ジベンゾ〔b,
f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オン、または2−メトキシ−ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンである。
【0083】
(11)第1工程の反応原料の一般式(1)のニトロベンゼン誘導体として、2−クロロニトロベンゼンもしくは2−ブロモニトロベンゼンを用い、また一般式(2)のチオサリチル酸誘導体として、チオサリチル酸もしくは5−メトキシチオサリチル酸を用い、塩基として炭酸カリウムを用い、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用いて、一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体として、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、もしくは2−ニトロ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドを製造する。
(12)第2工程の反応原料として、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドもしくは2−ニトロ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドを用い、これを白金、パラジウム、もしくはそれらの化合物の存在下、水素ガスにより還元して、一般式(4)の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体として、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドもしくは2−アミノ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドを製造する。
(13)第3工程の反応原料として、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドもしくは2−アミノ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドを用いて、一般式(5)のジベンゾチアゼピン誘導体として、ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンもしくは2−メトキシ−ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンを製造する。
【0084】
次に、本発明の実施例及び比較例を示し、本発明の製法をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0085】
[実施例1]
2−クロロニトロベンゼン94.5g(0.60モル)と炭酸カリウム159.0g(1.15モル)とを、N,N−ジメチルホルムアミド120mLに溶解させた。得られたN,N−ジメチルホルムアミド溶液に、チオサリチル酸77.1g(0.50モル)をN,N−ジメチルホルムアミド120mLに溶解した溶液を滴下し、70℃で6時間攪拌して反応させた。得られた反応溶液に、水800mLと酢酸エチル700mLとを加えた。分離した水層に、氷400gと濃塩酸194mLとを加えて水層のpHを酸性とした後、この溶液を室温で1時間攪拌した。析出した結晶を濾過、乾燥して、黄色粉末の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド134.0g(0.49モル)を得た。(チオサリチル酸に対する収率:98%)
1H−NMR(DMSO−d6):δ
7.1〜8.3(m,8H)、13.1〜13.5(br,1H)
【0086】
[実施例2]
2−クロロニトロベンゼン94.5g(0.60モル)と炭酸カリウム159.0g(1.15モル)とをN,N−ジメチルホルムアミド120mLに溶解させた。得られたN,N−ジメチルホルムアミド溶液に、チオサリチル酸77.1g(0.50モル)をN,N−ジメチルホルムアミド120mLに溶解した溶液を滴下し、70℃で6時間攪拌して反応させた。得られた反応溶液に、水200mLと濃塩酸194mLとを加えて水層のpHを酸性とした後、この溶液を室温で1時間攪拌した。析出した結晶を濾過、乾燥して、黄色粉末の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド123.0g(0.45モル)を得た。(チオサリチル酸に対する収率:90%)
【0087】
[実施例3]
2−クロロニトロベンゼンの代わりに2−ブロモニトロベンゼンを使用し、その使用量を121.2g(0.60モル)とした他は全て実施例1と同じ操作を行なって、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド134.0g(0.49モル)を得た。(チオサリチル酸に対する収率:98%)
【0088】
[実施例4]
チオサリチル酸の代わりに5−メトキシチオサリチル酸を使用し、その使用量を93.8g(0.50モル)とした他は全て実施例1と同じ操作を行なって、2−ニトロ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィド137.3g(0.45モル)を得た。(5−メトキシチオサリチル酸に対する収率:90%)。融点:185〜187℃
【0089】
[実施例5]
溶媒をN,N−ジメチルホルムアミドからメタノールに変え、かつ反応温度と時間を64℃と2時間に変えた他は実施例1と同じ操作を行なって、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド131.3g(0.48モル)を得た。(チオサリチル酸に対する収率:96%)
【0090】
[実施例6]
炭酸カリウムを水酸化ナトリウムに変え、その使用量を46.0g(1.15モル)に変えた他は実施例5と同じ操作を行なって、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド130.0g(0.47モル)を得た。(チオサリチル酸に対する収率:94%)
【0091】
[実施例7]
炭酸カリウムをナトリウムメチラートに変え、その使用量を62.1g(1.15モル)に変え、さらに反応時間を5時間に変えた他は実施例5と同じ操作を行なって、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド131.8g(0.48モル)を得た。(チオサリチル酸に対する収率:96%)
【0092】
[実施例8]
反応溶液に予めヨウ化カリウム3.9g(0.02モル)を添加した他は実施例7と同じ操作を行なって、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド133.8g(0.49モル)を得た。(チオサリチル酸に対する収率:97%)
【0093】
[実施例9]
300mLのオートクレーブ内に、ラネーニッケル(50%合金としてNi量4g)、実施例1の方法で得た2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド13.8g(0.05モル)とメタノール100mLとを加え、水素圧20気圧とした後、室温で5時間攪拌して反応させた。得られた反応溶液を濾過し、濾液を減圧濃縮して、無色粉末の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド11.3g(0.046モル)を得た。(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:92%)
1H−NMR(DMSO−d6):δ
5.0〜5.9(br,2H)、6.5〜8.1(m,8H)、12.8〜13.5(br,1H)
【0094】
[実施例10]
ラネーニッケル(50%合金としてNi量1g)と実施例1の方法で得た2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド4.0g(14.5ミリモル)とを、n−ブタノール50mLに懸濁した。得られたn−ブタノール懸濁液に、水素吹き込みながら100℃で15時間攪拌して反応させた。得られた反応懸濁液を濾過し、濾液を減圧濃縮して
無色粉末の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド3.24g(13.2ミリモル)を得た。(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:91%)
【0095】
[実施例11]
実施例1の方法で得た2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド2.75g(10.0ミリモル)を濃アンモニア水溶液(アンモニア濃度=28重量%)40mLに溶解させた。得られたアンモニア混合液に、硫酸第1鉄7水和物21.6g(77.8ミリモル)を水70mLに溶かした溶液を滴下し、80℃で10分間加熱して反応させた。得られた反応溶液を室温まで冷却した後、濾過し、濾液を30mLまで減圧濃縮し、酢酸エチル70mLと酢酸2mLとを加えた。分離した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤を濾別後、濾液を減圧濃縮して無色粉末の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド2.33g(9.50ミリモル)を得た。(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:95%)
【0096】
[実施例12]
実施例4の方法で得られた2−ニトロ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィド15.2g(0.05モル)を使用した他は実施例10と同じ操作を行なって、無色粉末の2−アミノ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィド12.7g(0.046モル)を得た。(2−ニトロ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:92%)
融点:150〜151℃
【0097】
[実施例13]
300mLのオートクレーブに、1.37gのPd(5wt%)/C、実施例1の方法で得られた2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド13.7g(0.05モル)及びメタノール95mLを充填し、水素圧を10気圧とした後、25℃で6時間攪拌して水素添加反応を行なった。反応混合物を濾過し、濾液を減圧濃縮して、無色粉末の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド11.7g(0.048モル)を得た。(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:95%)
融点:150〜151℃
【0098】
[実施例14]
反応温度を50℃に変え、反応時間を4時間とした他は実施例13と同じ操作を行なって、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド12.0g(0.049モル)を得た。(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:98%)
【0099】
[実施例15]
1.37gのPd(5wt%)/Cを2.91gのPd(5wt%)/C(含水率:52.9wt%)に変えた他は実施例14と同じ操作を行なって、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド11.9g(0.049モル)を得た。(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:97%)
【0100】
[実施例16]
メタノールの使用量を50mLに変え、さらに反応時間を6時間とした他は実施例14と同じ操作を行なって、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド11.9g(0.049モル)を得た。(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:97%)
【0101】
[実施例17]
メタノールの使用量を180mLに変え、さらに反応時間を6時間とした他は実施例14と同じ操作を行なって、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド11.2g(0.046モル)を得た。(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:91%)
【0102】
[実施例18]
メタノールをエタノールに変えた他は実施例14と同じ操作を行なって、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド11.2g(0.046モル)を得た。(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:92%)
【0103】
[実施例19]
1.37gのPd(5wt%)/Cを640mgの酸化白金(PtO2)に変えた他は
実施例14と同じ操作を行なって、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド10.8g(0.044モル)を得た。(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:88%)
【0104】
[実施例20]
実施例4の方法で得られた2−ニトロ−2’−カルボンキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィド15.2g(0.05モル)を用いた他は実施例14と同じ操作を行なって、2−アミノ−2’−カルボキシ−4’−ジメトキシ−ジフェニルスルフィド12.7g(0.046モル)を得た。(2−ニトロ−2’−カルボキシ−4’−ジメトキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:92%)
【0105】
[実施例21]
実施例9の方法で得られた2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド24.5g(0.10モル)をトルエン300mLに溶解させた。得られたトルエン溶液を20時間還流して反応させた。得られた反応溶液を室温まで冷却した後、析出した結晶濾過した。得られた濾取物を乾燥させて、ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンを無色針状結晶として15.7g(0.069モル)を得た。(2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:69%)。融点:259〜260℃
1H−NMR(DMSO−d6):δ
7.05〜7.80(m,8H)、10.7(s,1H)
【0106】
[実施例22]
実施例9の方法で得られた2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド24.5g(0.10モル)をトルエン300mLに溶解させた。得られたトルエン溶液を20時間共沸脱水(Dean−Stark装置を用いる)しながら還流を行なって反応させた。得られた反応溶液を室温まで冷却した後、析出した結晶を濾取した。次に、濾取物を乾燥させて、ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンを無色針状結晶として18.2g(0.080モル)を得た。(2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:80%)
【0107】
[実施例23]
反応溶媒をキシレンに変え、反応時間を15時間とした他は実施例22と同様に反応を行ない、ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンを無色針状結晶として22.3g(0.098モル)を得た。(2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:98%)
【0108】
[実施例24]
反応溶媒をクメンに変え、反応時間を10時間とした他は実施例22と同様に反応を行ない、ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンを無色針状結晶として22.3g(0.098モル)を得た。(2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:98%)
【0109】
[実施例25]
実施例14の方法で得られた2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド24.5g(0.10モル)をキシレン300mLに溶解させた。得られたキシレン溶液を15時間共沸脱水(Dean−Stark装置を用いる)しながら還流を行なって反応させた。得られた反応溶液を75℃にまで冷却した後、これに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液240mLを加え、さらに75℃で30分間攪拌した。次に、析出した結晶濾取した。得られた濾取物を乾燥させて、ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンを無色針状結晶として21.5g(0.095モル)を得た。(2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:95%)
【0110】
[実施例26]
飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を1規定水酸化ナトリウム水溶液に変え、その使用量を200mLに変えた他は実施例25と同様に反応を行ない、ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンを無色針状結晶として21.1g(0.093モル)を得た。(2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:93%)
【0111】
[実施例27]
反応溶媒をクメンに変え、反応時間を10時間に変えた他は実施例25と同様に反応を行ない、ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンを無色針状結晶として22.0g(0.097モル)を得た。(2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:97%)
【0112】
[実施例28]
実施例12の方法で得られた2−アミノ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィド27.5g(0.10モル)を用いて実施例23と同様に反応を行ない、2−メトキシ−ジベンゾ〔b,f〕〔1、4〕チアゼピン−11−オンを無色針状結晶として23.6g(0.092モル)を得た。(2−アミノ−4−メトキシ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドに対する収率:92%)
融点:220〜223℃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式中、R1、R2、R3、およびR4は、同一または互いに異なっていてもよく、水素原子、または置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基もしくはアリールカルボニル基を表わし、そしてXはハロゲン原子を表わす)
で表わされるニトロベンゼン誘導体と、下記一般式(2):
【化2】

(式中、R5、R6、R7、およびR8は、同一または互いに異なっていてもよく、水素原子
、または置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基もしくはアリールカルボニル基を表わす)
で表わされるチオサリチル酸誘導体とを、水、アミド系溶媒、脂肪族アルコール系溶媒、およびケトン系溶媒からなる群より選ばれる溶媒中、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムおよびナトリウムメチラートからなる群より選ばれる塩基の存在下にて反応させて、下記一般式(3):
【化3】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は前記と同じ意味を表わす)
で表わされる2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を生成させた後、該2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を還元して、下記一般式(4):
【化4】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は前記と同じ意味を表わす)
で表わされる2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を生成させた後、該2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を脱水縮合することを特徴とする、下記一般式(5):
【化5】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は前記と同じ意味を表わす)
で表わされるジベンゾチアゼピン誘導体の製造法。
【請求項2】
塩基が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびナトリウムメチラートからなる群より選ばれる塩基である請求項1に記載のジベンゾチアゼピン誘導体の製造法。
【請求項3】
一般式(3)の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の還元を、ラネーニッケル、第一鉄塩、パラジウム、白金、パラジウム化合物及び白金化合物からなる群より選ばれる化合物の存在下で行なうことを特徴とする請求項1に記載のジベンゾチアゼピン誘導体の製造法。
【請求項4】
一般式(4)の2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の脱水縮合を有機溶媒中にて行なうことを特徴とする請求項1に記載のジベンゾチアゼピン誘導体の製造法。
【請求項5】
一般式(1):
【化6】

(式中、R1、R2、R3、およびR4は、同一または互いに異なっていてもよく、水素原子、または置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基もしくはアリールカルボニル基を表わし、そしてXはハロゲン原子を表わす)
で表わされるニトロベンゼン誘導体と、下記一般式(2):
【化7】

(式中、R5、R6、R7、およびR8は、同一または互いに異なっていてもよく、水素原子、または置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基もしくはアリールカルボニル基を表わす)
で表わされるチオサリチル酸誘導体とを、水、アミド系溶媒、脂肪族アルコール系溶媒、およびケトン系溶媒からなる群より選ばれる溶媒中、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムおよびナトリウムメチラートからなる群より選ばれる塩基の存在下にて反応させることからなる、下記一般式(3):
【化8】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は前記と同じ意味を表わす)
で表わされる2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の製造法。
【請求項6】
塩基が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびナトリウムメチラートからなる群より選ばれる塩基である請求項5に記載の2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の製造法。

【公開番号】特開2011−126887(P2011−126887A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2831(P2011−2831)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【分割の表示】特願2001−509716(P2001−509716)の分割
【原出願日】平成11年7月9日(1999.7.9)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【出願人】(300022113)アストラゼネカ・ユーケイ・リミテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】AstraZeneca UK Limited
【住所又は居所原語表記】15 Stanhope Gate, London W1K 1LN, United Kingdom
【Fターム(参考)】