説明

ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤

【課題】DDP−IV阻害作用が強く、しかも、カロリーが低く、日常的に摂取して安全な飲食用素材由来の調製物を有効成分とするジペプチジルベプチダーゼ−IV阻害剤を提供する。
【解決手段】本発明にかかるジペプチジルベプチダーゼ−IV阻害剤は、固形分濃度3.5mg/mL以下でのジペプチジルペプチダーゼIV阻害率が60%以上の飲食用素材由来の調製物を有効成分として含有することを特徴とする。前記飲食用素材由来の調製物は、蛋白質含有食品素材由来のピーク分子量が2000以下のペプチドであるか、海藻、茶類、クルミ、ザクロ、ブドウ種子、黄杞葉、カカオ、ブドウ新芽、グアバ、生コーヒー豆、コタラヒムブツ、タマリンドの各抽出物から選ばれる少なくとも一種である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン分泌増強作用などを有するグルカゴン様ペプチド−1を不活性化するジペプチジルペプチダーゼ−IV(以下、DDP−IVと記す場合もある)を阻害するジペプチジルベプチダーゼ−IV阻害剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
代謝異常症候群いわゆるメタボリックシンドロームは国民の40歳代以上の男性の3人に一人は予備群であると、厚生労働省より発表されている。この代謝異常症候群の上流にある症状は肥満であり、特に内臓脂肪から生ずるアディポサイトカインによって高血圧、高脂血症、糖尿病を引き起こす。この中でも糖尿病は冠状心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経障害、アルツハイマー症及び網膜症を含めた大血管及び微小血管合併症を併発する危険性が高い。したがって、糖尿病を臨床的に管理、治療することが重要となる。
【0003】
経口糖尿病治療薬は、その歴史を振り返ると、1950年代の第1世代スルホニル尿素(SU)剤、1960年代のビグアナイド剤、1970年代の第二世代SU剤というように、10年に1種ずつの割合で導入されてきた。そして、1990年代では、α−グルコシダーゼ阻害剤、グリニド剤、第3世代SU剤、グリタゾン剤という4種類の血糖降下剤が実用化された。その後も、メカニズムが異なり、より性能の高い、副作用の低い経口糖尿病薬の開発に鎬が削られているのが現状である。このような状況の中、従来の市販薬にない作用メカニズムを持つ糖尿病治療薬として注目されているのが、「ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPP−IV)阻害剤」である。
【0004】
通常、食物の摂取後に消化管から膵臓からのインスリン分泌を促進するホルモンであるインクレチンが放出されている。このインクレチンを分解する酵素がDPP−IVであり、このDPP−IVを阻害することで血糖値の上昇を押さえる治療薬が、上記ジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP−IV)阻害剤である。
【0005】
このようなメカニズムを持つ食品成分として報告されているのは、熟成ナチュラルチーズ成分中のペプチド(特許文献1)、(非特許文献1)や食肉の乳酸菌発酵物(非特許文献2)のみである。これらの成分を、糖尿病を治療する目的で摂取しようとした場合、チーズや食肉の乳酸菌発酵物のカロリーが高いため、糖尿病患者あるいは糖尿病予備群の患者が食品として長期的に摂取することは、却って食事による高血糖状態や肥満を引き起こす原因となりかねない。
【0006】
【特許文献1】特開2007−039424号公報
【非特許文献1】Milk Science Vol.55, No.2,p91-92, 2006
【非特許文献2】日本畜産学会大会要旨 Vol.107, p135, 2007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、その課題は、DDP−IV阻害作用が強く、しかも、カロリーが低く、日常的に摂取して安全な飲食用素材由来の調製物を有効成分とするジペプチジルベプチダーゼ−IV阻害剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明者らは、鋭意、実験、検討したところ、特定の飲食用素材由来の調製物、すなわち、蛋白質含有食品素材由来のピーク分子量が2000以下のペプチド及び特定の植物の抽出物に、固形分濃度3.5mg/mL以下で60%以上の高いDDP−IV阻害作用があることを知見するにいった。本発明は、係る知見に基づいてなされたものである。
【0009】
すなわち、本発明に係るジペプチジルベプチダーゼ−IV阻害剤は、固形分濃度3.5mg/mL以下でのジペプチジルペプチダーゼIV阻害率が60%以上の飲食用素材由来の調製物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤は、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害のIC50(50%阻害濃度)が固形分濃度で3.5mg/mL以下である飲食用素材由来の調製物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0011】
前記構成において、前記飲食用素材由来の調製物は、蛋白質含有食品素材由来のピーク分子量が2000以下のペプチドであるか、海藻、茶類、クルミ、ザクロ、ブドウ種子、黄杞葉、カカオ、ブドウ新芽、グアバ、生コーヒー豆、コタラヒムブツ、タマリンドの各抽出物から選ばれる少なくとも一種である。
【0012】
前記蛋白質含有食品素材としては、乳、魚、豆類、小麦、豚から選ばれた少なくとも一種であることが、好ましい。
【0013】
または、前記ペプチドは、カゼインペプチド、コラーゲンペプチド、大豆ペプチド、緑豆ペプチド、小麦グルテンから選ばれた少なくとも一種であることが、好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るジペプチジルベプチダーゼ−IV阻害剤は、DDP−IV阻害作用が強く、しかも、カロリーが低く、飲食用素材由来であるために、日常的に摂取して安全であり、各種医薬品、特定用保健食品、機能性食品、飲用物などへの利用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係るジペプチジルベプチダーゼ−IV阻害剤は、前述のように、固形分濃度3.5mg/mL以下でのジペプチジルペプチダーゼIV阻害率が60%以上の飲食用素材由来の調製物を有効成分として含有する。あるいは、本発明に係るジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤は、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害のIC50(50%阻害濃度)が固形分濃度で3.5mg/mL以下である飲食用素材由来の調製物を有効成分として含有する。前記飲食用素材由来の調製物は、蛋白質含有食品素材由来のピーク分子量が2000以下のペプチドであるか、海藻、茶類、クルミ、ザクロ、ブドウ種子、黄杞葉、カカオ、ブドウ新芽、グアバ、生コーヒー豆、コタラヒムブツ、タマリンドの各抽出物から選ばれる少なくとも一種である。
【0016】
本発明に係るジペプチジルベプチダーゼ−IV阻害剤は、経口的に投与して、生体におけるDDP−IVを阻害することにより血糖値を低下させることができる。経口投与に用いる本発明のDDP−IV阻害剤の剤形は、錠剤、カプセル剤、細粒剤、散剤、タブレット剤、トローチ剤、舌下剤、液剤などが可能である。また、各種食品、各種飲料に添加して用いることもできる。
【0017】
本発明に係るジペプチジルベプチダーゼ−IV阻害剤の経口投与量としては、治療や予防の目的、投与対象の症状、体重、年齢、性別などの諸条件を考慮して、適宜に決定されるが、通常、成人を対象とした場合、一日あたり、有効成分量として、5mg〜5000mgとすれば、有効である。
【実施例】
【0018】
以下に、本発明にかかるジペプチジルベプチダーゼ−IV阻害剤の実施例を詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
この実施例1では、飲食用素材由来の調製物として、蛋白質含有食品素材由来のペプチドについて、検討した。
【0020】
蛋白質含有食品素材由来のペプチドとして、(表1)に示す15種のペプチドを用意した。これら15種のペプチドサンプルに対して、ピーク分子量の測定と、DDP−IV阻害率を測定した。
【0021】
(蛋白質食品素材からのペプチドの調製方法)
ペプチド素材の調製方法としては、慣用の方法が多種あるが、蛋白質の分解には酵素を用いた方法あるいは加水分解を用いた方法が一般的である。蛋白質の分解の後、酵素の失活や中和、濾過の後、凍結乾燥やスプレードライを用いて粉末化する。しかし、どのような調製方法を用いた場合でも、原料となる食品素材と分子量により、DPP−IV阻害活性が依存する。したがって、ペプチド素材の調製方法は、特に限定されない。
【0022】
(分子量ピークの測定)
ペプチドの分子量ピークを測定する方法については、種々の測定方法があるが、ゲル濾過法を用いた測定が迅速で、正確な値が得られる。すなわち、分子篩機能をもった充填剤を充填したカラムを用いてた高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography:以下、HPLCと記す場合もある)にて、280μmの吸収を測定することによりペプチドサンプルの分子量分布カーブを求め、その中で最も高いピークの頂点の分子量を分子量ピークの値とする。
【0023】
(阻害活性測定用サンプルの調製)
(表1)に示した15種のペプチドサンプル(粉末状固形物)を50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に10mg/mLの濃度で溶解し、0.45μmのメンブランフィルター処理を行った後、DPP−IV阻害活性測定に供した。DDP−IV阻害活性は、以下の測定方法Aにより測定した。
【0024】
(ジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP−IV)阻害活性測定方法A)
各ペプチドサンプルについて、DDP−IV阻害活性測定キット(バイオモル社製、商品名「DPPIV Drug Discovery Kit-AK-499」)を用いて、DPP−IV阻害活性の測定を行った。ペプチドサンプル基質として、H−Gly−Plo−7−アミノ−4−メチルクマリン(バイオモル社製、商品名「P189−9090 AMC基質」)を用い、酵素はDPP−IV(バイオモル社製、商品名「E434−9090 DDPIV酵素;ヒト組み替え体」)を用いた。また、対照阻害剤としてP32/98((バイオモル社製、商品名「PI142−9090」)を使用した。
【0025】
具体的には、100μL、96穴白色マイクロプレートに、阻害率測定用サンプル35μL、1/50希釈DPP−IV酵素15μL、1/50希釈のAMC基質溶液50μLを添加した。得られたサンプルの固形分濃度は3.5mg/mLとなった。このサンプルのDDP−IV阻害活性を、励起波長380nm、測定波長460nmにて、1分間置きに60分まで測定し、値が直線性を維持する範囲での傾きの値を、サンプル無添加の値を100%として、各サンプルの相対的な活性を算出した。各サンプルについてDPP−IV阻害率を2回測定して平均値を求めた。その結果を(表1)に併記した。
【0026】
【表1】

*1:ナガセケムテックス株式会社製、商品名「緑豆ペプチド」
*2:森永乳業株式会社製、商品名「ペプチドCU2500」
*3:森永乳業株式会社製、商品名「ペプチドCPOP」
*4:不二製油株式会社製、商品名「ハイニュートAM」
*5:DMV社製、商品名「WGE80GPA」
*6:DMV社製、商品名「WGE80GPN」
*7:ゼライス株式会社製、商品名「HACP−01」
*8:ゼライス株式会社製、商品名「HACO−U2」
*9:DMV社製、商品名「C12ASE」
*10:DMV社製、商品名「C12PEPTIONB」
*11:株式会社ニチロ製、商品名「マリンコラーゲンペプチドOM」
*12:森永乳業株式会社製、商品名「エマルアップ」
*13:協和発酵株式会社製、商品名「水溶性コラーゲンペプチドPA」
*14:協和発酵株式会社製、商品名「水溶性コラーゲンペプチドPA」
*15:協和発酵株式会社製、商品名「水溶性フィッシュコラーゲンペプチド」
【0027】
対照としたDDP−IV阻害薬である「P32/98」の10μM品の阻害率が93%、1μM品の阻害率が67%であり、阻害率が60%以上あれば、実用上の効果があると考え得る。
【0028】
サンプル1の緑豆ペプチドのピーク分子量は150〜500であり、サンプル2のカゼインペプチドのピーク分子量は91であり、順次、最後のサンプル15までピーク分子量が大きくなっていっており、最後のサンプル15のピーク分子量は5000であった。このピーク分子量の増加に比例して、各サンプルのDDP−IV阻害率は低下している。サンプル1の阻害率は95%であり、医薬品である「P32/98」の10μMと同等の高い阻害率を有する。実用上有効であると見なすことのできる阻害率60%までの阻害率を有するサンプルのうちの最も阻害率が低いものは、サンプル11の68%であり、サンプル10〜サンプル1までは、60%以上の高い阻害率を有している。
【0029】
したがって、蛋白質含有食品素材由来のペプチドのうち、ピーク分子量が2000以下のペプチドは、医薬品と同等の高いDDP−IV阻害作用があり、しかもカロリーが低く、日常的に摂取して安全であるので、日常的に常用可能な優れたDDP−IV阻害剤の有効成分として用いて好適であることが確認できた。
【0030】
(実施例2)
実施例1でDDP−IV阻害活性を測定したペプチドサンプルのうち、サンプル1,2,6,8,10の5種について、50%阻害濃度(IC50)を求めた。
具体的には、各サンプルを50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に溶解し、更にその溶液を段階希釈して各々のDPP−IV阻害活性を求めた。DPP−IV阻害活性は、下記測定方法Bにより測定した。
【0031】
(ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DDP−IV)阻害活性測定方法B)
サンプルについて、DPPIV Glo Protease Assay(プロメガ社製)を用いて、DDP−IV阻害活性の測定を行った。基質として、DPPIV Glo Reagent (Cat.#G8350:プロメガ社製)を用い、酵素はDDP−IV(Cat.No.31763、ヒト組み替え体:カルビオケム社)を用いた。対照阻害剤としてP32/98(バイオモル社製、商品名「PI142−9090」)を使用した。
具体的操作としては、まず、100μL、96穴白色マイクロプレートに、阻害率測定用サンプル35μL、DDP−IV酵素(2ng/mL)50μL、基質溶液50μLを添加し、混合した。30分後に発光量を測定し、サンプル無添加の値を100%として各サンプルの相対的な活性を算出した。
【0032】
上記阻害活性とサンプル濃度(固形分濃度)の対数の関係式から逆算して、各サンプルのIC50を求めた。その結果、各サンプル1,2,6,8,10のIC50値は、それぞれ、サンプル1(大豆ペプチド)0.7mg/mL、サンプル2(カゼインペプチド)0.6mg/mL、サンプル6(グルタミンペプチド)2.2mg/mL、サンプル8(コラーゲンペプチド)0.9mg/mL、サンプル10(カゼインペプチド)1.6mg/mLであった。
【0033】
測定したサンプル1,2,6,8,10は、すべてピーク分子量が2000以下のペプチドであり、しかも、上述のように、IC50の値が0.6〜2.2mg/mLの範囲に入っており、良好なDDP−IV阻害活性を有していることが分かる。特にサンプル1のIC50は0.7mg/mL、サンプル2のIC50は0.6mg/mLであり、しかも、これらの阻害率は、前述のように、90%を超える高い値を示している。したがって、サンプル1,2は、DDP−IV阻害剤の有効成分として、特に好ましい。
【0034】
(実施例3)
この実施例3では、飲食用素材由来の調製物として、特定の植物(海藻を含む)の抽出物について検討した。
【0035】
植物の抽出物として、(表2)に示す27種の植物(海藻を含む)の抽出物を用意した。これら27種の抽出物(サンプル16〜42)に対して、DDP−IV阻害率を測定した。
【0036】
(植物あるいは海藻抽出物の調製方法)
植物あるいは海藻素材の調製方法は、慣用の多種の方法があるが、通常は素材を粉砕し、水あるいはエタノール、含水エタノール、その他の食品に用いることのできる有機溶媒で抽出することが一般的である。抽出の後、濾過、凍結乾燥やスプレードライを用いて粉末化する。しかし、どのような調製方法を用いた場合でも、DDP−IV阻害活性は、原料となる食品素材の種類に依存する。したがって、植物抽出物の調製方法は、特に限定されない。
【0037】
(阻害活性測定用サンプルの調製)
(表2)に示した植物または海藻由来のサンプル(粉末状固形物)は、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に1mg/mLの濃度で溶解し、0.45μmのメンブランフィルター処理を行った後、DDP−IV阻害活性測定に供した。DDP−IV阻害活性は、以下の測定方法Cにより測定した。
【0038】
(ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DDP−IV)阻害活性測定方法C)
植物抽出物サンプルについて、DDP−IV阻害活性測定キット(バイオモル社製、商品名「DPPIV Drug Discovery Kit-AK-499」)を用いて、DDP−IV阻害活性の測定を行った。基質として、H−Gly−Plo−7−アミノ−4−メチルクマリン(バイオモル社製、商品名「P189−9090 AMC基質」)を用い、酵素はDPP−IV(バイオモル社製、商品名「E434−9090 DDPIV酵素;ヒト組み替え体」)を用いた。また、対照阻害剤としてP32/98((バイオモル社製、商品名「PI142−9090」)を使用した。
【0039】
具体的には、100μL、96穴白色マイクロプレートに、阻害率測定用サンプル35μL、1/50希釈DPP−IV酵素15μL、1/50希釈のAMC基質溶液50μLを添加した。得られたサンプルの固形分濃度は3.5mg/mLとなった。このサンプルのDDP−IV阻害活性を、励起波長380nm、測定波長460nmにて、1分間置きに60分まで測定し、値が直線性を維持する範囲での傾きの値を、サンプル無添加の値を100%として、各サンプルの相対的な活性を算出した。各サンプルについてDPP−IV阻害率を2回測定して平均値を求めた。その結果を(表2)に併記した。
【0040】
【表2】

*16:理研ビタミン社製、商品名「海藻ホ゜リフェノール」
*17:常盤植物化学研究所社製、商品名「ティアカロン90S」
*18:オリザ油化社製、商品名「クルミホ゜リフェノールP30」
*19:常盤植物化学研究所社製、商品名「ティアカロン30」
*20:丸善製薬社製、商品名「甜茶エキスM粉末」
*21:キッコーマン社製、商品名「サ゛クロエラク゛酸」
*22:キッコーマン社製、商品名「ク゛ラウ゛ィノールSL」
*23:丸善製薬社製、商品名「黄杞葉エイキスハ゜ウタ゛ーMF」
*24:オリザ油化社製、商品名「カカオエキスP」
*25:サンブライト社製、商品名「VINEATROL20M」
*26:キッコーマン社製、商品名「ク゛ラウ゛ィノール」
*27:サウスプロダクト社製、商品名「ク゛アハ゛エキス末」
*28:丸善製薬社製、商品名「ウーロン茶エキスM粉末」
*29:オリザ油化社製、商品名「クルミホ゜リフェノールP10」
*30:オリザ油化社製、商品名「生コーヒー豆エキスPS1」
*31:AOAコーポレーション社製、商品名「スーハ゜ーコタラヒム」
*32:オリザ油化社製、商品名「生コーヒー豆エキスP」
*33:丸善製薬社製、商品名「インテ゛ィアンテ゛ーツエキスハ゜ウタ゛ーMF」
*34:TSトレーディング社製、商品名「XANTHIGEN-5」
*35:常盤植物化学研究所社製、商品名「朝鮮アサ゛ミ乾燥エキス」
*36:丸善製薬社製、商品名「ヒハツエキスME」
*37:丸善製薬社製、商品名「純ク゛リチミンY」
*38:サウスプロダクト社製、商品名「フコイタ゛ン」
*39:オリザ油化社製、商品名「温州みかんエキスP」
*40:サウスプロダクト社製、商品名「シークワーサーエキス末」
*41:常盤植物化学研究所社製、商品名「アイソマックス-80」
*42:サウスプロダクト社製、商品名「コ゛ーヤーエキス末」
【0041】
対照としたDDP−IV阻害薬である「P32/98」の10μM品の阻害率が93%、1μM品の阻害率が67%であり、阻害率が60%以上あれば、実用上の効果があると考え得る。
【0042】
サンプル16の海藻(アスコフィラム)抽出物の阻害率は98%であり、医薬品である「P32/98」の10μMと同等以上の高い阻害率を有する。実用上有効であると見なすことのできる阻害率60%までの阻害率を有するサンプルのうちの最も阻害率が低いものは、サンプル34の海藻(ワカメ)抽出物の62%であり、サンプル34〜サンプル16までは、60%以上の高い阻害率を有している。
【0043】
したがって、飲食用素材である植物抽出物のうち、サンプル16〜34の特定の植物(海藻を含む)の抽出物は、医薬品と同等もしくは同等以上の高いDDP−IV阻害作用があり、しかもカロリーが低く、日常的に摂取して安全であるので、日常的に常用可能な優れたDDP−IV阻害剤の有効成分として用いて好適であることが確認できた。
【0044】
(実施例4)
実施例3でDDP−IV阻害活性を測定した植物抽出物サンプルのうち、サンプル16,18,34の3種について、50%阻害濃度(IC50)を求めた。
具体的には、各サンプルを50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に溶解し、更にその溶液を段階希釈して各々のDPP−IV阻害活性を求めた。DPP−IV阻害活性は、下記測定方法Cにより測定した。
【0045】
(ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DDP−IV)阻害活性測定方法C)
植物抽出物サンプルについて、DPPIV Glo Protease Assay(プロメガ社製)を用いて、DDP−IV阻害活性の測定を行った。基質として、DPPIV Glo Reagent (Cat.#G8350:プロメガ社製)を用い、酵素はDDP−IV(Cat.No.31763、ヒト組み替え体:カルビオケム社)を用いた。対照阻害剤としてP32/98(バイオモル社製、商品名「PI142−9090」)を使用した。
具体的操作としては、まず、100μL、96穴白色マイクロプレートに、阻害率測定用サンプル35μL、DDP−IV酵素(2ng/mL)50μL、基質溶液50μLを添加し、混合した。30分後に発光量を測定し、サンプル無添加の値を100%として各サンプルの相対的な活性を算出した。
【0046】
上記阻害活性とサンプル濃度(固形分濃度)の対数の関係式から逆算して、各サンプルのIC50を求めた。その結果、各サンプル16,18,34のIC50値は、それぞれ、サンプル1(大豆ペプチド)0.7mg/mL、サンプル16(海藻(アスコフィラム)抽出物)0.6mg/mL、サンプル18(クルミ抽出物)0.7mg/mL、サンプル34(海藻(ワカメ)抽出物)0.6mg/mLであった。
【0047】
測定したサンプル16,18,34は、IC50の値が0.6〜0.7mg/mLの範囲に入っており、良好なDDP−IV阻害活性を有していることが分かる。特に、サンプル16,18の阻害率は、前述のように、90%を超える高い値を示している。したがって、サンプル16,18は、DDP−IV阻害剤の有効成分として、特に好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかるジペプチジルベプチダーゼ−IV阻害剤は、DDP−IV阻害作用が強く、しかも、カロリーが低く、飲食用素材由来であるために、日常的に摂取して安全であり、各種医薬品、特定用保健食品、機能性食品、飲用物などへの利用に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分濃度3.5mg/mL以下でのジペプチジルペプチダーゼIV阻害率が60%以上の飲食用素材由来の調製物を有効成分として含有するジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤。
【請求項2】
ジペプチジルペプチダーゼIV阻害のIC50(50%阻害濃度)が固形分濃度で3.5mg/mL以下である飲食用素材由来の調製物を有効成分として含有するジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤。
【請求項3】
前記飲食用素材由来の調製物が、蛋白質含有食品素材由来のピーク分子量が2000以下のペプチドである請求項1または2に記載のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤。
【請求項4】
前記蛋白質含有食品素材が乳、魚、豆類、小麦、豚から選ばれた少なくとも一種である請求項3に記載のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤。
【請求項5】
前記ペプチドがカゼインペプチド、コラーゲンペプチド、大豆ペプチド、緑豆ペプチド、小麦グルテンから選ばれた少なくとも一種である請求項3に記載のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤。
【請求項6】
前記飲食用素材由来の調製物が、海藻、茶類、クルミ、ザクロ、ブドウ種子、黄杞葉、カカオ、ブドウ新芽、グアバ、生コーヒー豆、コタラヒムブツ、タマリンドの各抽出物から選ばれる少なくとも一種である請求項1または2に記載のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤。

【公開番号】特開2010−13423(P2010−13423A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177138(P2008−177138)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】