説明

ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤

【課題】安全性の高い天然物の中からジペプチジルペプチダーゼIV阻害作用を有するものを見出し、それを有効成分とするジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤を提供する。
【解決手段】本発明のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤の有効成分として、ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物及びボダイジュ抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上の天然物由来成分を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジペプチジルペプチダーゼIV(以下、「DDPIV」ともいう。)は、セリンプロテアーゼの一つであって、N末端から2番目のプロリン又はアラニンを認識し、そのC末端側を切断する酵素活性を有する。DDPIVは、腎臓、肝臓、腸管、胎盤等の組織の上皮及び内皮細胞、並びにT細胞の細胞表面に発現しており、その酵素活性等を介して様々な生理現象に関与すると考えられている。
【0003】
DDPIVの基質として、インクレチンと呼ばれるホルモンが挙げられる。インクレチンは、栄養素の刺激により腸管から分泌され、血糖依存的に膵β細胞からインスリン分泌を促進するホルモンの総称であり、GLP−1やGIP等が知られている。これらインクレチンは、血糖依存的なインスリン分泌の促進だけでなく、α細胞からのグルカゴン分泌の抑制、血圧の低下、胃排出の抑制、さらには視床下部に作用しての摂食抑制等の作用を有している(非特許文献1参照)。
【0004】
しかし、インクレチンはDDPIVにより分解されるため、例えばGLP−1の生体内における半減期は1.5分程度であることが知られている。そのため、DDPIVの酵素活性を阻害することができれば、インクレチンの生体内における半減期を延長することができ、これにより、上述したインクレチンの作用を通じ2型糖尿病、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性等の治療に有用であると期待されている。
【0005】
また、DPPIVはT細胞活性化マーカーの一つであるCD26と同一であり、多くの免疫調節ペプチドを基質とし、その活性を制御することが知られている。そのため、DDPIVの活性を制御することにより、免疫反応を制御し得ると考えられる。実際に、関節リウマチ等の自己免疫疾患や移植による拒絶反応等の動物モデルにおいては、DDPIV阻害剤が免疫抑制剤として機能することが知られており、自己免疫疾患や移植拒絶反応等の治療に有用であると考えられている。
【0006】
さらに、DDPIVは、いくつかの神経ペプチドや成長ホルモンの代謝;癌における浸潤、転移、血管新生等;HIVのリンパ球への感染等への関与が知られている。そのため、DDPIVの活性を阻害することにより、疼痛、神経変性疾患及び神経精神疾患等の神経障害(例えば坐骨神経痛、アルツハイマー病、うつ病等);成長ホルモン欠損症及び成長ホルモンが治療に使用される疾患;癌(例えばT−細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、甲状腺癌、基底細胞癌、乳癌等);HIV感染症(AIDS)等の疾患を治療することができると考えられる。
【0007】
従来、DDPIV阻害作用を有する化合物としては、フルオロピロリジン(特許文献1)やプロリン誘導体(特許文献2)等が提案されているが、これらは合成化合物であるため安全性の面で十分とはいえない。そのため、DDPIV阻害作用を有し、かつ安全性の高い天然物由来の成分の提供が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−63286号公報
【特許文献2】特表2007−537231号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本薬理学会雑誌,2005年,Vol.125,p.379−384
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、安全性の高い天然物の中からジペプチジルペプチダーゼIV阻害作用を有するものを見出し、それを有効成分とするジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物及びボダイジュ抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上の天然物由来成分を有効成分として含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れたジペプチジルペプチダーゼIV阻害作用を有し、かつ安全性の高いジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物及びボダイジュ抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上の天然物由来成分を有効成分として含有するものである。
【0014】
ここで、本実施形態において「抽出物」には、上記植物を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0015】
[ノブドウ抽出物,レモンバーム抽出物,イチョウ抽出物,ヤーコン抽出物,ボダイジュ抽出物の製造]
本実施形態において、ノブドウ抽出物、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物及びボダイジュ抽出物を製造するために使用する抽出原料は、ノブドウ(学名:Ampelopsis brevipedunculata Trautv.)、レモンバーム(学名:Melissa officinalis L.)、イチョウ(学名:Ginkgo biloba L.)、ヤーコン(学名:Smallanthus sonchifolia)、及びボダイジュ(学名:Tilia cordata)である。
【0016】
ノブドウ(Ampelopsis brevipedunculata Trautv.)は別名蛇葡萄とも呼ばれるブドウ科の落葉つる植物であって北海道から沖縄、中国、朝鮮半島の山野に自生しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るノブドウの構成部位としては、例えば、例えば、茎部、蔓部、葉部、果実部、花部等が挙げられ、その中でも特に茎部、蔓部及び葉部の1種又は2種以上を使用することが好ましい。
【0017】
レモンバーム(Melissa officinalis L.)は、ヨーロッパ全土、中央アジア、北アメリカ等に分布するシソ科の多年生草本であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るレモンバームの構成部位としては、例えば、葉部、茎部、花部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部及び/又は茎部である。
【0018】
イチョウ(Ginkgo biloba L.)は、北海道、本州、四国、九州等に自生するイチョウ科の落葉高木であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るイチョウの構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、花部、種子部、果実部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0019】
ヤーコン(Smallanthus sonchifolia)は、南米アンデス高原原産のキク科植物であって世界各地で栽培されており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るヤーコンの構成部位としては、例えば、葉部、茎部、花部等の地上部、塊根部、根部等の地下部又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0020】
ボダイジュ(Tilia cordata)は別名シナノキとも呼ばれるシナノキ科の落葉樹であってヨーロッパに広く分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るボダイジュの構成部位としては、例えば、葉部、枝部、茎部、花部、蕾部、果実部、果皮部等の地上部又はこれらの混合物が挙げられるが、好ましくは花部である。
【0021】
上記植物からの抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、上記植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0022】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用することが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0023】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0024】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
【0025】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90容量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40容量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール10〜90容量部を混合することが好ましい。
【0026】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
【0027】
なお、上述のようにして得られた抽出液はそのままでもジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
【0028】
また、上記植物からの抽出物は特有の匂いを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚化粧料等に配合する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。
【0029】
[ゴマペプチドの製造]
本実施形態におけるゴマペプチドは、ゴマ(学名:Sesamum indicum)を抽出して得られるゴマタンパク質をプロテアーゼ等により酵素処理して得られるものである。
【0030】
ゴマ(Sesamum indicum)は、アフリカ又はインド原産とされるゴマ科の一年草であって世界各地で栽培されており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るゴマの構成部位は、タンパク質を豊富に含有する部位であれば特に限定されないが、好ましくは種子部である。
【0031】
抽出処理は、特に限定されるものではなく、公知の方法により行うことができる。例えば、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機等を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供すればよい。また、搾油等による脱脂やヘキサン等の非極性溶媒を用いた脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。
【0032】
次に、抽出原料を5〜50倍量の抽出溶媒に投入する。抽出溶媒としては、極性溶媒を使用することが好ましく、中でも水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶媒等を用いることが好ましい。アルカリ溶媒を用いることで、ゴマタンパク質を効率的に溶解させることができる。
【0033】
得られたゴマタンパク質を反応溶媒に溶解・懸濁させ、必要に応じて至適pH及び至適温度に調整し、プロテアーゼ等により酵素処理を行う。その後、酸やアルカリの添加、加熱、又はこれらの処理を合わせて行うことにより酵素を失活させる。得られた反応液を濾過・濃縮・乾燥・粉末化することにより、粉末状のゴマペプチドを得ることができる。
【0034】
[ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤]
以上のようにして得られるノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物及びボダイジュ抽出物は、優れたジペプチジルペプチダーゼIV阻害作用を有しているため、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤の有効成分として用いることができる。本実施形態のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品等の幅広い用途に使用することができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物又はボダイジュ抽出物のうちのいずれか一つを上記有効成分として用いてもよいし、これらを混合して上記有効成分として用いてもよい。ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物又はボダイジュ抽出物を混合して上記有効成分として用いる場合、その配合比は、ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物又はボダイジュ抽出物が有するジペプチジルペプチダーゼIV阻害作用の程度等により適宜調整すればよい。
【0036】
本実施形態のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物、ボダイジュ抽出物又はこれらの混合物のみからなるものでもよいし、ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物、ボダイジュ抽出物又はこれらの混合物を製剤化したものでもよい。
【0037】
本実施形態のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、他の組成物(例えば、皮膚外用剤、美容用飲食品等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
【0038】
本実施形態のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤を製剤化した場合、ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物、ボダイジュ抽出物又はこれらの混合物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
【0039】
なお、本実施形態のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、必要に応じて、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害作用を有する他の天然抽出物等を、ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物、ボダイジュ抽出物又はこれらの混合物とともに配合して有効成分として用いることができる。
【0040】
本実施形態のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤の患者に対する投与方法としては、経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。
【0041】
また、本実施形態のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0042】
本実施形態のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物又はボダイジュ抽出物が有するジペプチジルペプチダーゼIV阻害作用を通じて、2型糖尿病、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性等を予防・治療することができるとともに、関節リウマチ等の自己免疫疾患や移植拒絶反応も予防・治療することができる。また、本実施形態のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物又はボダイジュ抽出物が有するジペプチジルペプチダーゼIV阻害作用を通じて、疼痛、神経変性疾患、及び神経精神疾患等の神経障害(例えば坐骨神経痛、アルツハイマー病、うつ病等);成長ホルモン欠損症及び成長ホルモンが治療に使用される疾患;癌(例えばT−細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、甲状腺癌、基底細胞癌、乳癌等);HIV感染症(AIDS)等の疾患を予防・治療することができる。ただし、本実施形態のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、これらの用途以外にもジペプチジルペプチダーゼIV阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0043】
また、本実施形態のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、優れたジペプチジルペプチダーゼIV阻害作用を有するため、例えば、皮膚外用剤又は飲食品に配合するのに好適である。この場合に、ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物、ボダイジュ抽出物又はこれらの混合物をそのまま配合してもよいし、ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物、ボダイジュ抽出物又はこれらの混合物から製剤化したジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤を配合してもよい。
【0044】
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、経皮的に使用される皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものであり、具体的には、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
【0045】
飲食品としては、その区分に制限はなく、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品等を幅広く含むものである。
【0046】
また、本実施形態のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、優れたジペプチジルペプチダーゼIV阻害作用を有するので、ジペプチジルペプチダーゼIVの活性制御機構に関連する研究のための試薬としても好適に利用することができる。
【0047】
なお、本実施形態のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば,マウス,ラット,ハムスター,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,サル等)に対して適用することもできる。
【実施例】
【0048】
以下、製造例及び試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。なお、本試験例においては、試料(試料1〜6)として表1に示す製品の凍結乾燥品を使用した。
【0049】
【表1】

【0050】
〔試験例1〕DPPIV活性阻害作用試験
上記各天然物由来成分(試料1〜6)について、以下のようにしてジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)阻害作用を試験した。
【0051】
96ウェルプレートにて、25mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)にて調製した被験試料(試料1〜6,終濃度は下記表2を参照)の溶液又は試料無添加の同緩衝液25μLと、上記緩衝液にて調製した0.4μg/mL DDPIV(rhCD26,R&Dシステム社製)溶液又は酵素無添加の同緩衝液25μLとを混合し、37℃にて5分間プレインキュベーションした。その後、上記緩衝液にて調製した基質溶液(0.5mM Gly-Pro-p-NA・Tos,ペプチド研究所社製)50μLを添加し、37℃にて90分間反応させた。反応終了後、波長415nmにおける吸光度を測定した。得られた結果から、下記式によりDPPIV阻害率(%)を算出した。
【0052】
DPPIV阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
式中、Aは「試料無添加、酵素添加での波長415nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料無添加、酵素無添加での波長415nmにおける吸光度」を表し、Cは「被験試料添加、酵素添加での波長415nmにおける吸光度」を表し、Dは「被験試料添加、酵素無添加での波長415nmにおける吸光度」を表す。
結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
表2に示すように、試料1〜試料6はいずれも濃度依存的なDPPIV阻害作用を示した。したがって、ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物及びボダイジュ抽出物が優れたDPPIV阻害作用を有することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、2型糖尿病、肥満、高血圧症、インスリン抵抗性等;自己免疫疾患や移植拒絶反応等の疾患の治療に大きく貢献できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノブドウ抽出物、ゴマペプチド、レモンバーム抽出物、イチョウ抽出物、ヤーコン抽出物及びボダイジュ抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上の天然物由来成分を有効成分として含有するジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤。

【公開番号】特開2013−23450(P2013−23450A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157218(P2011−157218)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】