説明

ジペプチジルペプチダーゼIV阻害物質

【課題】天然物由来の素材から得られ、安全性が高いジペプチジルペプチダーゼIV阻害物質含有組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】バラ科バラ属、バラ科サクラ属、バラ科アルケミラ属、キク科ベニバナ属、キク科キク属、シソ科ハナハッカ属、キョウチクトウ科バシクルモン属、マメ科シャクジソウ属、マメ科アスパラトゥス属、セリ科クミン属、トクサ科トクサ属、シロキクラゲ科シロキクラゲ属、フトモモ科フトモモ属、トウダイグサ科フィランサス属及びリンドウ科リンドウ属からなる群より選択される属に属する1種以上の植物由来のジペプチジルペプチダーゼIV阻害活性を有する物質を含む組成物、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来のペプチジルペプチダーゼIV阻害活性を有する物質を含む組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジペプチジルペプチダーゼIV(EC.3.4.14.5;以下、「DPP−IV」という)は、ポリペプチド及びタンパク質のアミノ末端(N−末端)から、X−Proジペプチド(Xは任意のアミノ酸残基である)を除去する非古典的なセリンアミノジペプチダーゼである。
【0003】
DPP―IVは、極めて広範囲に及ぶ動物組織(例えば腸、肝臓、肺、腎臓及び胎盤)の上皮及び内皮細胞上で、本質的に発現され、また体液中にも見出されている。DPP−IVはまた、循環されているTリンパ球細胞上でも発現されており、細胞表面抗原CD−26と同義であることが示されている。DPP−IVは、後述する様に多くの疾患状態に関連していることが報告されている(非特許文献1参照)。
【0004】
近年、DPP−IVがグルカゴン様ペプチド(以下、「GLP−1」という)の代謝に働いていることが明らかにされた。GLP−1は小腸内のプログルカゴンの翻訳後の処理により誘導される、29アミノ酸を持つペプチドである。GLP−1は、インスリン分泌の促進、グルカゴン分泌の阻害、摂食抑制作用、満腹感の増進、及び胃排泄速度の低下などの多くの作用を生体内で有する(非特許文献1参照)。
【0005】
DPP−IVはGLP−1のアミノ末端のジペプチドを加水分解することによって不活化する。そのためGLP−1の生体内での半減期は1.5分ほどである事が明らかにされている。また、その不活化体がGLP−1受容体のアンタゴニストとして作用する事が知られている。
【0006】
従って、DPP−IVを阻害することはGLP−1の作用を高め、インスリン分泌を促進して糖代謝を改善し、ひいては2型糖尿病、肥満、及びインスリン抵抗性等の治療及び予防に有用であると期待されている。実際、DPP−IV欠損ラットでは、対照動物と比較して有意な血中GLP−1の増加や良好な耐糖能が認められ、さらに高脂肪食付加による肥満及びインスリン抵抗性の進展抑制が認められている(非特許文献2、3参照)。
【0007】
加えて、DPP−IV阻害活性を有する物質を糖尿病自然発症モデルラットに投与することによりインスリン感受性の改善や血糖値の低下が認められている(非特許文献4参照)。
【0008】
また、DPP−IVは神経ペプチドであるニューロペプチドYの代謝、免疫担当細胞であるT細胞の活性化、癌細胞の内皮への接着、HIVウィルスのリンパ球への進入に関与していることが知られている(非特許文献5参照)。したがって、DPP−IVを阻害することは、これらに関連する免疫疾患等の治療及び予防にも有用であると考えられる。
【0009】
加えて、良性の前立腺肥大、乾癬、慢性関節リウマチ、及び偏平苔癬患者の皮膚の繊維芽細胞においてDPP−IVの高発現が見出されており、DPP−IVの阻害は、良性の前立腺肥大を始めとするこれらの疾患の治療及び予防にも有用であると考えられる。
【0010】
これまで、DPP−IV阻害化合物としては、フロオロピロリジン、プロリン誘導体、ピラジン類などがあり、既に実用化されているものもある(特許文献1、2、3参照)。しかしながらこれらの公知の化合物は化学合成品であり、安全性の点で十分とは言えない。
【0011】
また、天然物由来では、チーズに含まれるペプチドや、パプリカ、ローズレッドペタル、キャッツクロー抽出物がDPP−IV阻害活性を有すると報告されている(特許文献4、5参照)。
【0012】
【特許文献1】特開2007−063286号公報
【特許文献2】特表2007−537231号公報
【特許文献3】特表2004−536115号公報
【特許文献4】特開2007−039424号公報
【特許文献5】特開2007−277163号公報
【非特許文献1】日本薬理学雑誌 2005 125 379−84
【非特許文献2】Biochem Biophys Res Commun.2001 Jun 8;284(2):501−6
【非特許文献3】Life Sci. 2002 May 31;71(2):227−38
【非特許文献4】Diabetes. 2002 Apr;51 943−50
【非特許文献5】Crit Rev Clin Lab Sci. 2003 Jun;40(3):209−94
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、天然物由来の素材から得られ、安全性が高いことが予想されるDPP−IV阻害物質を含む組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、日常容易に入手又は食用とし得る天然物由来の素材である特定の植物がDPP−IV阻害活性を有する物質を含有していることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明は以下の特徴を包含する。
(1) バラ科バラ属、バラ科サクラ属、バラ科アルケミラ属、キク科ベニバナ属、キク科キク属、シソ科ハナハッカ属、キョウチクトウ科バシクルモン属、マメ科シャクジソウ属、マメ科アスパラトゥス属、セリ科クミン属、トクサ科トクサ属、シロキクラゲ科シロキクラゲ属、フトモモ科フトモモ属、トウダイグサ科フィランサス属及びリンドウ科リンドウ属からなる群より選択される属に属する1種以上の植物由来のペプチジルペプチダーゼIV阻害活性を有する物質を含む組成物。
【0016】
(2) 前記植物は、ロサ・ムルティフロラ(Rosa multiflora)、ロサ・ガリカ(Rosa gallica)、カルサムス・チンクトリウス(Carthamus tinctorius)、プルヌス・ドメスティカ(Prunus domestica)、プルヌス・アルメニアカ(Prunus armeniaca)、アルケミア・モリス(Alchemilla mollis)、オリガヌム・マジョラナ(Origanum majorana)、アポシヌム・ベネツム(Apocynum venetum)、トリフォリウム・プラテンセ(Trifolium pratense)、クリサンテムム・モリフォリウム(Chrysanthemum morifolium)、クミヌム・キミヌム(Cuminum cyminum)、エクイセツム・アルベンセ(Equisetum arvense)、アスパラサス・リネアリス(Aspalathus linearis)、トレメラ・フシフォルミス(Tremella fuciformis)、シジギウム・アラマチキュム(Syzygium aramaticum)、フィランサス・ニルリ(Phyllanthus niruri)又はゲンティアネラ・アルボロセア(Gentianella alborosea)の1種以上である、上記(1)記載の組成物。
【0017】
(3) ロサ・ムルティフロラ(Rosa multiflora)、ロサ・ガリカ(Rosa gallica)、又はシジギウム・アラマチキュム(Syzygium aramaticum)のつぼみ由来のペプチジルペプチダーゼIV阻害活性を有する物質を含む、上記(2)記載の組成物。
【0018】
(4) 前記ペプチジルペプチダーゼIV阻害活性を有する物質は、前記植物又はその一部からの抽出物である上記(1)〜(3)のいずれか記載の組成物。
【0019】
(5) 前記抽出物は有機溶媒抽出物である上記(4)記載の組成物。
(6) 飲食品である上記(1)〜(5)のいずれか記載の組成物。
(7) 医薬品である上記(1)〜(5)のいずれか記載の組成物。
【0020】
(8) バラ科バラ属、バラ科サクラ属、バラ科アルケミラ属、キク科ベニバナ属、キク科キク属、シソ科ハナハッカ属、キョウチクトウ科バシクルモン属、マメ科シャクジソウ属、マメ科アスパラトゥス属、セリ科クミン属、トクサ科トクサ属、シロキクラゲ科シロキクラゲ属、フトモモ科フトモモ属、トウダイグサ科フィランサス属及びリンドウ科リンドウ属からなる群より選択される属に属する1種以上の植物又はその一部を溶媒抽出に供し、抽出画分からジペプチジルペプチダーゼIV阻害活性を有する物質を回収することを含む、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害物質含有組成物の製造方法。
【0021】
(9) 前記植物は、ロサ・ムルティフロラ(Rosa multiflora)、ロサ・ガリカ(Rosa gallica)、カルサムス・チンクトリウス(Carthamus tinctorius)、プルヌス・ドメスティカ(Prunus domestica)、プルヌス・アルメニアカ(Prunus armeniaca)、アルケミア・モリス(Alchemilla mollis)、オリガヌム・マジョラナ(Origanum majorana)、アポシヌム・ベネツム(Apocynum venetum)、トリフォリウム・プラテンセ(Trifolium pratense)、クリサンテムム・モリフォリウム(Chrysanthemum morifolium)、クミヌム・キミヌム(Cuminum cyminum)、エクイセツム・アルベンセ(Equisetum arvense)、アスパラサス・リネアリス(Aspalathus linearis)、トレメラ・フシフォルミス(Tremella fuciformis)、シジギウム・アラマチキュム(Syzygium aramaticum)、フィランサス・ニルリ(Phyllanthus niruri)又はゲンティアネラ・アルボロセア(Gentianella alborosea)の1種以上である、上記(8)記載の方法。
【0022】
(10) 溶媒はエタノール、メタノール、酢酸エチル及びアセトンからなる群より選択される1種以上である、上記(8)又は(9)記載の方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の組成物は、DPP−IVの活性を有意に阻害することができる。
また本発明の組成物は、長い間の食経験に基づいた天然物由来の組成物であるため、副作用等の心配が少なく、安価に、長期間にわたって継続的に摂取することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るDPP−IV阻害物質含有組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう)及びその製造方法について説明する。
【0025】
本発明の組成物は、バラ科バラ属、バラ科サクラ属、バラ科アルケミラ属、キク科ベニバナ属、キク科キク属、シソ科ハナハッカ属、キョウチクトウ科バシクルモン属、マメ科シャクジソウ属、マメ科アスパラトゥス属、セリ科クミン属、トクサ科トクサ属、シロキクラゲ科シロキクラゲ属、フトモモ科フトモモ属、トウダイグサ科フィランサス属及びリンドウ科リンドウ属からなる群より選択される属に属する1種又は複数種由来のDPP−IV阻害活性を有する物質を含むことを特徴とする。
【0026】
本発明に使用することができるバラ科バラ属の植物としては、これに限定されるものではないが、ロサ・ムルティフロラ(Rosa multiflora)、ロサ・ガリカ(Rosa gallica)、ロサ・ウクライアナ(Rosa wichuraiana)、ロサ・キネンシス(Rosa chinensis)、ロサ・ダマスケナ(Rosa damasccna)などを挙げることができる。特に、ロサ・ムルティフロラ又はロサ・ガリカを使用することが好ましい。
【0027】
本発明に使用することができるバラ科サクラ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、プルヌス・ドメスティカ(Prunus domestica)、プルヌス・アルメニアカ(Prunus armeniaca)、プルヌス・ペルシカ(Prunus persica)、プルヌス・ダルシス(Prunus dulcis)、プルヌス・ヌメ(Prunus mume)、プルヌス・ケラスス(Prunus cerasus)などを挙げることができる。特にプルヌス・ドメスティカ又はプルヌス・アルメニアカを使用することが好ましい。
【0028】
本発明に使用することができるバラ科アルケミラ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、アルケミア・モリス(Alchemilla mollis)、アルケミア・キサントクロラ(Alchemilla xanthoclora)、アルケミア・ウルガリス(Alchemilla vulgaris)などを挙げることができる。特に、アルケミア・モリスを使用することが好ましい。
【0029】
本発明に使用することができるキク科ベニバナ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、カルサムス・チンクトリウス(Carthamus tinctorius)、カルサムス・ラナタス(Carthamus lanatus)、カルサムス・アボレセンス(Carthamus arborescens)などを挙げることができる。特にカルサムス・チンクトリウスを使用することが好ましい。
【0030】
本発明に使用することができるキク科キク属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、クリサンテムム・モリフォリウム(Chrysanthemum morifolium)、クリサンテムム・コロナリウム(Chrysanthemum coronarium)、クリサンテムム・パシフィクム(Chrysanthemum pacificum)などを挙げることができる。特にクリサンテムム・モリフォリウムを使用することが好ましい。
【0031】
本発明に使用することができるシソ科ハナハッカ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、オリガヌム・マジョラナ(Origanum majorana)、オリガヌム・ディクタムヌス(Origanum dictamnus)、オリガヌム・ブルガレ(Origanum vulgare)などを挙げることができる。特にオリガヌム・マジョラナを使用することが好ましい。
【0032】
本発明に使用することができるキョウチクトウ科バシクルモン属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、アポシヌム・ベネツム(Apocynum venetum)、アポシヌム・アンドロサミフォリウム(Apocynum androsaemifolium)、アポシヌム・カナピヌム(Apocynum cannabinum)などを挙げることができる。特にアポシヌム・ベネツムを使用することが好ましい。
【0033】
本発明に使用することができるマメ科シャクジソウ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、トリフォリウム・プラテンセ(Trifolium pratense)、トリフォリウム・レペンス(Trifolium repens)、トリフォリウム・アルベンセ(Trifolium arvense)などを挙げることができる。特にトリフォリウム・プラテンセ(Trifolium pratense)を使用することが好ましい。
【0034】
本発明に使用することができるマメ科アスパラトゥス属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、アスパラサス・リネアリス(Aspalathus linearis)、アスパラサス・セダルベルゲンシス(Aspalathus cedarbergensis)などを挙げることができる。特にアスパラサス・リネアリスを使用することが好ましい。
【0035】
本発明に使用することができるセリ科クミン属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、クミヌム・キミヌム(Cuminum cyminum)を挙げることができる。
【0036】
本発明に使用することができるトクサ科トクサ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、エクイセツム・アルベンセ(Equisetum arvense)、エクイセツム・ボゴテンセ(Equisetum bogotense)、エクイセツム・ギガンテウム(Equisetum giganteum)などを挙げることができる。特にエクイセツム・アルベンセを使用することが好ましい。
【0037】
本発明に使用することができるシロキクラゲ科シロキクラゲ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、トレメラ・フシフォルミス(Tremella fuciformis)、トレメラ・メセンテリカ(Tremella mesenterica)などを挙げることができる。特にトレメラ・フシフォルミスを使用することが好ましい。
【0038】
本発明に使用することができるフトモモ科フトモモ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、シジギウム・アラマチキュム(Syzygium aramaticum)、シジギウム・オレオサム(Syzygium oleosum)、シジギウム・アクエウム(Syzygium aqueum)、シジギウム・フォルテ(Syzygium forte)などを挙げることができる。シジギウム・アラマチキュム(チョウジとも称する)を使用することが特に好ましい。
【0039】
本発明に使用することができるトウダイグサ科フィランサス属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、フィランサス・ニルリ(Phyllanthus niruri)、フィランサス・エンブリカ(Phyllanthus emblica)、フィランサス・アシダス(Phyllanthus acidus)などを挙げることができる。特にフィランサス・ニルリを使用することが好ましい。
【0040】
本発明に使用することができるリンドウ科リンドウ属に属する植物としては、これに限定されるものではないが、ゲンティアネラ・アルボロセア(Gentianella alborosea)、ゲンティアネラ・アングリカ(Gentianella anglica)、ゲンティアネラ・ジャーマニカ(Gentianella germanica)などを挙げることができる。特にゲンティアネラ・アルボロセアを使用することが好ましい。
【0041】
本発明の組成物の素材となる上記植物は、その植物体全体を使用してもよいし、植物体の一部を使用してもよい。植物体の一部として、これに限定されるものではないが、つぼみ、葉、根、茎、花、果実、種子などを挙げることができ、本発明においてその1種以上を使用することもできる。本発明において、植物体の一部としてつぼみを使用することが好ましい場合があり、そのようなものの例として、ロサ・ムルティフロラ、ロサ・ガリカ、シジギウム・アラマチキュムのつぼみなどを挙げることができる。また、上記植物又はその一部の保存状態や形態も特に制限されず、例えば植物体全体又はその一部を乾燥させたものを用いてもよい。そのようなものの例としては、アスパラサス・リネアリスの葉の乾燥物であるルイボスティー、シジギウム・アラマチキュムのつぼみの乾燥物であるチョウジ、クミヌム・キミヌムの種子乾燥物であるクミンなどを挙げることができる。
【0042】
本発明において、上記植物は、品種及び産地は特に制限されず、野生種であってもよいし、交配により得られる栽培品種、園芸品種などであってもよい。
【0043】
上記「DPP−IV阻害活性を有する物質」(以下、「DPP−IV阻害物質」ともいう)とは、上記植物の植物体又はその一部に由来するDPP−IV阻害活性を有する任意の物質を指す。DPP−IV阻害物質は、精製品又は粗精製品のいずれかであってもよい。粗精製品には、これに限定されるものではないが、例えば、植物自体若しくはその乾燥物又はこれらの破砕物、該破砕物の懸濁液若しくは懸濁物、或いは植物体若しくはその一部又はそれらの乾燥物若しくは乾燥破砕物からの抽出物などを挙げることができる。
【0044】
本発明において、DPP−IV阻害物質は、好ましくは上記植物又はその一部由来の抽出物である。このような抽出物は、当業者に公知の抽出方法によって得ることができ、例えば抽出方法として、溶媒抽出、超臨界流体抽出法、加温加圧抽出法などを挙げることができる。上記抽出方法は、それぞれを単独で用いてもよいし、複数の抽出方法を組合せて用いてもよい。
【0045】
本発明において、好ましい抽出方法は溶媒抽出である。溶媒抽出は当業者に知られる一般的な手法を用いて行えばよく、特別な方法を用いる必要はない。
【0046】
例えば、溶媒抽出として熱水抽出を用いる場合には、上記植物又はその一部の破砕物又は乾燥破砕物を適当な水中に分散し(例えば1:1〜1:100重量比)、ホモジナイザー、スターラー、振とう器等を使用して均一化し、中性付近のpHにて調整した後に加熱することによって抽出を行うことができる。熱水抽出時の温度は、通常は70℃〜100℃、好ましくは80℃〜100℃、例えば90℃とすることができる。抽出時間は、5分〜24時間、好ましくは30分〜3時間、例えば約1時間である。
【0047】
本発明において特に好ましい溶媒抽出は有機溶媒抽出である。この場合には、各植物素材の粉砕物又は乾燥破砕物に水と有機溶媒とを添加して、室温又は加温(例えば60〜90℃)にて抽出する。水と有機溶媒の比に特に制限はなく、当業者は適宜適切な比を採用することができるが、有機溶媒濃度がより高い方が抽出効率の面から好ましい点に留意すべきである。有機溶媒として、これに限定されるものではないが、例えばエタノール、メタノール、酢酸エチル、アセトンなどを使用することができる。これらの有機溶媒は2種類以上を混合して用いてもよい。添加する溶媒の量は、植物素材の重量の1〜100倍、好ましくは5〜50倍、例えば10倍とすることができる。なお、抽出時間は、熱水抽出について上記で述べたのと同様である。本発明のDPP−IV阻害物質は、有機溶媒抽出物であることが特に好ましい。なお、有機溶媒抽出は上記熱水抽出と組合せて使用してもよい。
【0048】
上記のようにして溶媒抽出を行った後、ろ過や遠心分離などにより素材残渣を含む不溶性画分を取り除き、例えば減圧蒸発により可溶性画分又は有機溶媒画分(すなわち、抽出画分)を濃縮し、流体又は乾燥形態でDPP−IV阻害物質含有抽出物を得ることができる。
【0049】
場合により、溶媒抽出後の不溶性画分について熱水抽出又は有機溶媒による抽出を繰り返すことにより、溶媒抽出後の沈殿から本発明のDPP−IV阻害物質をさらに取得することもできる。抽出画分に存在する本発明のDPP−IV阻害物質をさらに精製してもよく、この場合、公知の分離、精製法を適当に組み合わせて行うことができる。例えば、液−液分配、有機溶媒沈澱、各種カラムクロマトグラフィー(例えばHPLC、シリカゲルクロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなど)、結晶化などを使用することができる。
【0050】
本発明のDPP−IV阻害物質は、上記のようにして各植物素材から取得することができるが、本発明の組成物は、既に製品化されている各植物素材のエキス製剤などをDPP−IV阻害物質として含むものであってもよい。そのようなエキス製剤としては、様々な製造業者から市販されているローズオイル、ローズエキス、ベニバナエキス、チョウジエキスなどを挙げることができる。
【0051】
本発明の組成物は、上記のようにして得られた本発明のDPP−IV阻害物質を常法により顆粒化、カプセル化、錠剤化若しくはペースト化したものであってもよい。
【0052】
Eur J Pharmacol. 2005 Jul l25;518(1):63-70及びJ Med Chem. 2005 Jan 13;48(1):141-51は、DPP−IV阻害活性に関して、in vitro評価がin vivo評価と相関することを報告している。具体的に、上記文献では、in vitro評価として合成基質を用いた酵素反応試験を行うことによりDPP−IV阻害活性を確認し、in vivo評価としてマウスに経口投与し、血中DPP−IV活性低下、活性型GLP−1濃度上昇、インスリン濃度上昇、グルコース耐性試験に対する改善効果を確認している。生体内のDPP−IVを阻害することが、2型糖尿病、肥満、及びインスリン抵抗性等の治療及び予防に有用となる作用機序は前述したとおりであるが、上記文献のin vitro評価はその作用機序のうちDPP−IV阻害の部分に着目し、これを反映したものである。このようにin vitroでDPP−IV阻害活性をもつ成分が、生体内においてもDPP−IVを阻害し、その結果、2型糖尿病、肥満、及びインスリン抵抗性等の治療及び予防に有用であるということが知られている。
【0053】
上記のようにして取得される本発明のDPP−IV阻害物質は、上記文献と同様にしてin vitro評価を行った結果、下記実施例で示すように、in vitroでDPP−IV阻害活性を示したものである。したがって、本発明の組成物は、2型糖尿病、肥満、インスリン抵抗性など、DPP−IVが関与する疾患の治療及び予防するための飲食品及び医薬品として提供することができる。
【0054】
本発明の組成物を飲食品として提供する場合には、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、疾病リスク低減表示を付した食品とすることができる。
【0055】
本発明の飲食品の形態は、特に制限されず、各種飲料、食品に加工することができる。かかる飲料、食品の例として、これに限定されるものではないが、茶、酒類などの飲料、ドライフルーツ、ヨーグルトなどの乳製品、クッキーなどの焼き菓子類、ジャムなどの加工食品、調味料、香辛料などの各種食品に加工、添加又は配合してもよいし、サラダなどとしてそのまま食することもできる。
【0056】
また、本発明の飲食品は、DPP−IV阻害効果を抑制しない限りにおいて、本発明のDPP−IV阻害物質の他、栄養補助成分などの他の成分を含むことができる。かかる成分には、ビタミン類(例えばビタミンA、ビタミンB群、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンK、ナイアシン、パントテン酸、葉酸等)、カロチノイド(例えばβカロチン、リコピン、フコキサンチン等)、ミネラル類(例えば海藻成分、CCM、ヘム鉄、鉄塩系、乳清カルシウム、発酵乳酸カルシウム、牛骨カルシウム、珊瑚カルシウム、卵殻カルシウム等)、各種植物体並びにその抽出物、精製物及び分画物(例えばオオバコ、クロレラ、スピルリナ、にんにく、いちょう葉、ギムネマ、杜仲の葉、しその葉、ハトムギ、大豆グロブリン、ルチン、緑茶抽出物、テアニン、ポリフェノール類、甘草、ユッカ、大豆サポニン、カフェイン、ホワトルベリーエキス、シャンピニオンエキス、ガルシニア・カンボジアエキス等)、微生物並びにその増殖因子及び微生物生産物(例えば乳酸菌、酵母、乳酸菌増殖因子等)、食物繊維及びその酵素分解物(例えばアップルファイバー、コーンファイバー、澱粉由来の食物繊維、難消化性デキストリン、グアガム酵素分解物、サツマイモ繊維、大豆繊維、海藻繊維、きのこ繊維、茶繊維、酸性多糖類、植物粘質物、小麦フスマ等)、動物体並びにその抽出物、精製物、分解物及び生産物(例えばローヤルゼリー、プロポリス、牡蠣エキス、キチン、キトサン、タウリン、コラーゲン、ゼラチン等)、各種オリゴ糖(例えばガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖等)、脂質(例えば不飽和脂肪酸(DHA、EPA等)、リン脂質、サラトリム等)、各種蛋白質及び蛋白分解物(例えばとうもろこし蛋白、大豆蛋白、TMP(トータルミルクプロテイン)、ラクトアルブミン、カゼイン、ホエー、グルタチオン、大豆ペプチド、卵白ペプチド、グルタミンペプチド等)、脱脂胚芽等の小麦胚芽などが挙げられる。
【0057】
本発明の組成物を飲食品として摂取する場合には、飲食品中の有効成分としての本発明のDPP−IV阻害物質の含有量は、通常、0.01〜50重量%、好ましくは1〜30重量%程度であり、成人1人につき、1日当たり1〜500mg、好ましくは1〜200mgの摂取量となるように摂取すればよい。
【0058】
本発明の組成物を医薬として提供する場合には、本発明のDPP−IV阻害物質は、経口又は非経口(例えば静注、筋注、皮下投与、腹腔内投与、直腸投与、経皮投与など)のいずれかの投与経路用に製剤化することができる。また、投与経路に応じて適当な剤形とすることができる。具体的には静注、筋注などの注射剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、細粒剤、トローチ錠などの経口剤、直腸投与剤、油脂性坐剤、水性坐剤などの各種製剤形態に調製することができる。本発明の医薬品は、経口剤として提供することが特に好ましい。
【0059】
これらの各種製剤は、通常用いられている賦形剤、増量剤、結合剤、浸潤剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、着色剤、香味剤、及び安定化剤などを用いて、当業者に知られる公知の方法により製造することができる。
【0060】
賦形剤としては、例えば、乳糖、果糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ソルビット及び結晶セルロースなどが、崩壊剤としては、例えば澱粉、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、炭酸マグネシウム及び合成ケイ酸マグネシウムなどが、結合剤としては、例えばメチルセルロース又はその塩、エチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリビニルピロリドンなどが、滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール及び硬化植物油などが、その他の添加剤としては、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硝酸ソーダ及びリン酸ナトリウムなどがそれぞれ挙げられる。
【0061】
本発明の医薬品における有効成分としての本発明の組成物の投与量又は摂取量は、所与の症状や用法について治療効果を与え得る量であり、その量は、動物を用いた試験、臨床試験の実施により当業者によって適宜決定されるが、投与対象の年齢、性別、体重、適用疾患及びその症状、剤形、投与方法などが考慮されるべきである。本発明の医薬品が経口剤である場合には、上記投与量又は摂取量は、0.01〜20mg/Kg/日、好ましくは0.01〜8mg/Kg/日とすることができる。
【0062】
上記本発明の飲食品及び医薬品は、上記の通り、長い間の食経験に基づいた天然物由来の成分を有効成分として含むため、副作用等の心配が少なく、安価にかつ長期間にわたって継続的に摂取することができる。
【0063】
以下、本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0064】
[実施例1]
バラ(Rosa gallica)のつぼみ乾燥粉末300mgに10倍量の80%アセトンを加え、室温で1時間攪拌した。遠心後に上清を回収し、減圧下乾固させて110mgを得た。これを80%メタノールに溶解し、ヘキサンで3度分配した。得られた80%メタノール層を減圧下乾固させ、水に溶解、酢酸エチルで3度分配した。酢酸エチル層を減圧下乾固させて29mgの抽出物を得た。これをエタノールに溶解し、DPP−IV阻害活性評価を行なった。
【0065】
DPP−IV阻害活性評価は以下の様に行なった。40mMのTris−HClバッファー(pH7.4)50μl、DPP−IV粗酵素液50μl、エタノール若しくはバラのつぼみ抽出液5μlを混合した。酵素反応開始は10%DMSOに溶解したGlycyl−L−proline 4−methylcoumaryl−7−amide(Gly−Pro−MCA)を25μl添加して行なった。室温下10分間反応後、130μlのアセトニトリルを加えて反応を停止させた。
【0066】
ここで、DPP−IV粗酵素液はヒト結腸ガン由来細胞株Caco−2細胞に10mM Tris−HClバッファー(0.15M NaCl、0.5% Nonidet−P40、pH8.0)を加えて遠心上清を回収し、タンパク質濃度を0.4mg/mlに調製したものを用いた。また、反応液中のDPP−IVの活性は、基質の切断によって生じた7−Amino−4−methylcoumarin(AMC)の生成量を測定することで評価した。
【0067】
反応液中に含まれるAMC生成量は以下に示す条件で高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した。
【0068】
カラム:DiscoveryC18(スペルコ社製)、流速:1.25ml/分、オーブン温度:40度、注入量:10μl、検出:蛍光検出器(励起波長380nm 放出波長460nm)、溶媒:A)0.1%ギ酸−水 B)0.1%ギ酸−アセトニトリル、溶出条件:B)22−35%(0−7分)。
【0069】
エタノール添加反時のAMC生成量を100とし、そこからバラのつぼみ添加時のAMC生成量を引いた値を阻害率(%)として相対的に表した。バラのつぼみ抽出液の添加濃度を数段階設定し測定した結果、添加濃度依存的な阻害率の上昇が認められた(図1を参照)。
【0070】
[実施例2]
ベニバナ(Carthamus tinctorius)乾燥粉末300mgから、実施例1と同様に抽出を行い、7.5mgの抽出物を得た。実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図1を参照)。
【0071】
[実施例3]
プルーン(Prunus domestic)乾燥粉末300mgから、実施例1と同様に抽出を行い、5.4mgの抽出物を得た。実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図1を参照)。
【0072】
[実施例4]
アンズ(Prunus armeniaca)乾燥粉末300mgから、実施例1と同様に抽出を行い、13.9mgの抽出物を得た。実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図2を参照)。
【0073】
[実施例5]
レディスマントル(Alchemilla mollis)乾燥粉末300mgから、実施例1と同様に抽出を行い、9.3mgの抽出物を得た。実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図2を参照)。
【0074】
[実施例6]
マジョラム(Origanum majorana)乾燥粉末300mgから、実施例1と同様に抽出を行い、14.5mgの抽出物を得た。実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図2を参照)。
【0075】
[実施例7]
ラフマ(Apocynum venetum)乾燥粉末300mgから、実施例1と同様に抽出を行い、11.1mgの抽出物を得た。実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図3を参照)。
【0076】
[実施例8]
レッドクローバー(Trifolium pratense)乾燥粉末300mgから、実施例1と同様に抽出を行い、9.0mgの抽出物を得た。実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図3を参照)。
【0077】
[実施例9]
食用菊(Chrysanthemum morifolium)乾燥粉末300mgから、実施例1と同様に抽出を行い、15.0mgの抽出物を得た。実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図3を参照)。
【0078】
[実施例10]
クミン(Cuminum cyminum)乾燥粉末300mgから、実施例1と同様に抽出を行い、7.3mgの抽出物を得た。実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図4を参照)。
【0079】
[実施例11]
スギナ(Equisetum arvense)乾燥粉末300mgから、実施例1と同様に抽出を行い、8.9mgの抽出物を得た。実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図4を参照)。
【0080】
[実施例12]
ルイボスティー(Aspalathus linearis)乾燥粉末300mgから、実施例1と同様に抽出を行い、9.0mgの抽出物を得た。実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図4を参照)。
【0081】
[実施例13]
白きくらげ(Tremella fuciformis)乾燥粉末1gから、実施例1と同様に抽出を行い、0.6mgの抽出物を得た。実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図5を参照)。
【0082】
[実施例14]
チョウジ(Syzygium aramaticum)乾燥粉末5gに10倍量の水を加え、攪拌しつつ10分間加熱して抽出を行った。遠心上清を回収し、減圧下乾固させて632mgを得た。これを10%メタノールに溶解し、実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図5を参照)。
【0083】
[実施例15]
チャンカピエドラ(Phyllanthus niruri)乾燥粉末5gから、実施例14と同様に抽出を行い、990mgを得た。これを10%メタノールに溶解し、実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図5を参照)。
【0084】
[実施例16]
エルカンプーレ(Gentianella alborosea)乾燥粉末5gに、10倍量の70%アセトンを加え、室温で1時間攪拌した。遠心上清を回収し、減圧下乾固させて1272mgを得た。これを再度70%アセトンに溶解し、実施例1と同様に阻害率を測定した結果、添加濃度依存的な阻害率が認められた(図6を参照)。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、実施例1,2,3において、抽出液の添加濃度を変えて阻害率を測定した結果である。横軸は反応液中の抽出液の濃度であり、縦軸は、抽出液添加によって減少したAMC生成量を阻害率(%)として相対的に表したものである。
【図2】図2は、実施例4,5,6において、抽出液の添加濃度を変えて阻害率を測定した結果である。横軸は反応液中の抽出液の濃度であり、縦軸は、抽出液添加によって減少したAMC生成量を阻害率(%)として相対的に表したものである。
【図3】図3は、実施例7,8,9において、抽出液の添加濃度を変えて阻害率を測定した結果である。横軸は反応液中の抽出液の濃度であり、縦軸は、抽出液添加によって減少したAMC生成量を阻害率(%)として相対的に表したものである。
【図4】図4は、実施例10,11、12において、抽出液の添加濃度を変えて阻害率を測定した結果である。横軸は反応液中の抽出液の濃度であり、縦軸は、抽出液添加によって減少したAMC生成量を阻害率(%)として相対的に表したものである。
【図5】図5は、実施例13,14,15において、抽出液の添加濃度を変えて阻害率を測定した結果である。横軸は反応液中の抽出液の濃度であり、縦軸は、抽出液添加によって減少したAMC生成量を阻害率(%)として相対的に表したものである。
【図6】図6は、実施例16において、抽出液の添加濃度を変えて阻害率を測定した結果である。横軸は反応液中の抽出液の濃度であり、縦軸は、抽出液添加によって減少したAMC生成量を阻害率(%)として相対的に表したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラ科バラ属、バラ科サクラ属、バラ科アルケミラ属、キク科ベニバナ属、キク科キク属、シソ科ハナハッカ属、キョウチクトウ科バシクルモン属、マメ科シャクジソウ属、マメ科アスパラトゥス属、セリ科クミン属、トクサ科トクサ属、シロキクラゲ科シロキクラゲ属、フトモモ科フトモモ属、トウダイグサ科フィランサス属及びリンドウ科リンドウ属からなる群より選択される属に属する1種以上の植物由来のペプチジルペプチダーゼIV阻害活性を有する物質を含む組成物。
【請求項2】
前記植物は、ロサ・ムルティフロラ(Rosa multiflora)、ロサ・ガリカ(Rosa gallica)、カルサムス・チンクトリウス(Carthamus tinctorius)、プルヌス・ドメスティカ(Prunus domestica)、プルヌス・アルメニアカ(Prunus armeniaca)、アルケミア・モリス(Alchemilla mollis)、オリガヌム・マジョラナ(Origanum majorana)、アポシヌム・ベネツム(Apocynum venetum)、トリフォリウム・プラテンセ(Trifolium pratense)、クリサンテムム・モリフォリウム(Chrysanthemum morifolium)、クミヌム・キミヌム(Cuminum cyminum)、エクイセツム・アルベンセ(Equisetum arvense)、アスパラサス・リネアリス(Aspalathus linearis)、トレメラ・フシフォルミス(Tremella fuciformis)、シジギウム・アラマチキュム(Syzygium aramaticum)、フィランサス・ニルリ(Phyllanthus niruri)又はゲンティアネラ・アルボロセア(Gentianella alborosea)の1種以上である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ロサ・ムルティフロラ(Rosa multiflora)、ロサ・ガリカ(Rosa gallica)、又はシジギウム・アラマチキュム(Syzygium aramaticum)のつぼみ由来のペプチジルペプチダーゼIV阻害活性を有する物質を含む、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記ペプチジルペプチダーゼIV阻害活性を有する物質は、前記植物又はその一部からの抽出物である請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記抽出物は有機溶媒抽出物である請求項4記載の組成物。
【請求項6】
飲食品である請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
医薬品である請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
バラ科バラ属、バラ科サクラ属、バラ科アルケミラ属、キク科ベニバナ属、キク科キク属、シソ科ハナハッカ属、キョウチクトウ科バシクルモン属、マメ科シャクジソウ属、マメ科アスパラトゥス属、セリ科クミン属、トクサ科トクサ属、シロキクラゲ科シロキクラゲ属、フトモモ科フトモモ属、トウダイグサ科フィランサス属及びリンドウ科リンドウ属からなる群より選択される属に属する1種以上の植物又はその一部を溶媒抽出に供し、抽出画分からジペプチジルペプチダーゼIV阻害活性を有する物質を回収することを含む、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害物質含有組成物の製造方法。
【請求項9】
前記植物は、ロサ・ムルティフロラ(Rosa multiflora)、ロサ・ガリカ(Rosa gallica)、カルサムス・チンクトリウス(Carthamus tinctorius)、プルヌス・ドメスティカ(Prunus domestica)、プルヌス・アルメニアカ(Prunus armeniaca)、アルケミア・モリス(Alchemilla mollis)、オリガヌム・マジョラナ(Origanum majorana)、アポシヌム・ベネツム(Apocynum venetum)、トリフォリウム・プラテンセ(Trifolium pratense)、クリサンテムム・モリフォリウム(Chrysanthemum morifolium)、クミヌム・キミヌム(Cuminum cyminum)、エクイセツム・アルベンセ(Equisetum arvense)、アスパラサス・リネアリス(Aspalathus linearis)、トレメラ・フシフォルミス(Tremella fuciformis)、シジギウム・アラマチキュム(Syzygium aramaticum)、フィランサス・ニルリ(Phyllanthus niruri)又はゲンティアネラ・アルボロセア(Gentianella alborosea)の1種以上である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
溶媒はエタノール、メタノール、酢酸エチル及びアセトンからなる群より選択される1種以上である、請求項8又は9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−6748(P2010−6748A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168427(P2008−168427)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【Fターム(参考)】