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ジペプチドの製造法
説明

ジペプチドの製造法

本発明によれば、41℃以上65℃以下で30秒間〜1時間の熱処理を施したジペプチドを生産する能力を有する微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源として用い、該酵素源、並びにアミノ酸アミド、アミノ酸エステルおよびアミノ酸からなる群より選ばれる1種以上の物質を水性媒体中に共存せしめ、該水性媒体中にジペプチドを生成、蓄積させ、該水性媒体から該ジペプチドを採取することを特徴とするジペプチドの製造法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ジペプチドを生産する微生物を用いたジペプチドの製造法に関する。
【背景技術】
ジペプチドは、食品、医薬品、化粧品等として重要な化合物である。
ジペプチドの製造法として、アミノ酸エステルおよびアミノ酸に、ある種の微生物またはプロリンイミノペプチダーゼを作用させるジペプチドの製造法(国際公開特許第03−010189号パンフレットおよび国際公開特許第03−010307号パンフレット参照)、およびアミノ酸アミドとアミノ酸にL−アミノ酸アミドハイドロラーゼを作用させるジペプチドの製造法(国際公開特許第03−010187号パンフレット参照)が知られている。
上記製造法においては、単離されたL−アミノ酸アミドハイドロラーゼもしくはプロリンイミノペプチダーゼを用いるより、L−アミノ酸アミドハイドロラーゼまたはプロリンイミノペプチダーゼを生産する微生物の菌体を酵素源に用いる方が生産コスト、効率ともよいが、微生物の菌体を酵素源に用いる場合、該微生物が有するペプチダーゼにより生成物であるジペプチドが分解されるという問題がある。例えば、日本DNAデータバンク(DDBJ)のデータベースには、代表的な微生物であるエシェリヒア・コリのペプチダーゼと推定されている遺伝子は20以上も登録されているように、微生物は多様なジペプチド分解活性を有している。
従って、ジペプチドを生産する能力を有する微生物の培養物またはその処理物を酵素源に用いてジペプチドを製造する場合、ジペプチドの生成反応と同時に分解反応も起こってしまいジペプチドの収率が著しく悪くなると考えられる。国際公開特許第03−010307号パンフレットでは金属酵素阻害剤の添加によってこの問題を解決しようと試みているが、ジペプチドの生産性は十分なものとはいえない。
【発明の開示】
本発明の目的は、ジペプチドを生産する微生物を用いたジペプチド製造法を提供することにある。
本発明は、以下の(1)〜(16)に関する。
(1)41℃以上65℃以下で30秒間〜1時間の熱処理を施したジペプチドを生産する能力を有する微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源として用い、該酵素源、並びにアミノ酸アミド、アミノ酸エステルおよびアミノ酸からなる群より選ばれる1種以上の物質を水性媒体中に共存せしめ、該水性媒体中にジペプチドを生成、蓄積させ、該水性媒体から該ジペプチドを採取することを特徴とするジペプチドの製造法。
(2)ジペプチドを生産する能力を有する微生物が、アクロモバクター属、アシネトバクター属、アエロモナス属、アグロバクテリウム属、アルカリゲネス属、アースロバクター属、ベイジェリンキア属、ブレビバクテリウム属、クラビバクター属、クリセオバクテリウム属、エシェリヒア属、エンテロバクター属、エルビニア属、フラボバクテリウム属、クルイヘラ属、ミクロバクテリウム属、ミクロコッカス属、ミコプラナ属、パントテア属、プロピオニバクテリウム属、リストネラ属、リゾビウム属、ロドコッカス属、サルモネラ属、ザルチナ属、セラチア属、スタフィロコッカス属、ステノトロホモナス属、ストレプトマイセス属、ビブリオ属、キサントモナス属、ブレラ属、キャンディダ属、クリプトコッカス属、フィロバシディウム属、ジオトリクム属、パキソレン属、ロドスポリジウム属、ロドトルラ属、サッカロマイセス属、スポロボロマイセス属、トレメラ属、トルラスポーラ属、トルロプシス属、グルコンアセトバクター属、アセトバクター属、グルコノバクター属、アサイア属、ズッカリバクター属、アクチノマデュラ属、キタサトスポリア属、ミクロモノスポーラ属、ノカルディア属、エルスコフィア属、サッカロスリクス属、ストレプトバーティシリウム属、ハフニア属、ラクトバチルス属、ナイセリア属、サーモプラズマ属、コリネバクテリウム属、シュードモナス属、バチルス属、トリコスポロン属またはステリグマトマイセス属に属する微生物である上記(1)の製造法。
(3)ジペプチドを生産する能力を有する微生物が、以下の[1]〜[4]のいずれかに記載の蛋白質を生産する能力を有する微生物である上記(1)または(2)の製造法。
[1]配列番号1〜7および35のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[2]配列番号1〜7および35のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつジペプチドの合成活性を有する蛋白質
[3]配列番号1〜7および35のいずれかで表されるアミノ酸配列と少なくとも65%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつジペプチドの合成活性を有する蛋白質
[4]配列番号15で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつジペプチドの合成活性を有する蛋白質
(4)ジペプチドを生産する能力を有する微生物が、以下の[1]〜[4]のいずれかに記載のDNAを有する微生物である上記(1)または(2)の製造法。
[1]上記(3)の[1]〜[4]のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNA
[2]配列番号8〜14、29および30のいずれかで表される塩基配列を有するDNA
[3]配列番号8〜14、29および30のいずれかで表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつジペプチド合成活性を有する蛋白質をコードするDNA
[4]配列番号16で表される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有する塩基配列を含み、かつジペプチド合成活性を有する蛋白質をコードするDNA
(5)ジペプチドを生産する能力を有する微生物が、プロリンイミノペプチダーゼ(EC3.4.11.5)活性を有する蛋白質またはL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質を生産する微生物である上記(1)または(2)の製造法。
(6)プロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質が、以下の[1]〜[3]のいずれかに記載の蛋白質である上記(5)の製造法。
[1]配列番号17〜19のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[2]配列番号17〜19のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつプロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質
[3]配列番号17〜19のいずれかで表されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつプロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質
(7)プロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質を生産する微生物が、以下の[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAを有する微生物である上記(5)の製造法。
[1]上記(6)の[1]〜[3]のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNA
[2]配列番号20〜22のいずれかで表される塩基配列を有するDNA
[3]配列番号20〜22のいずれかで表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
(8)L−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質が、以下の[1]〜[3]のいずれかに記載の蛋白質である上記(5)の製造法。
[1]配列番号23で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[2]配列番号23で表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質
[3]配列番号23で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質
(9)L−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質を生産する微生物が、以下の[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAを有する微生物である上記(5)の製造法。
[1]上記(8)の[1]〜[3]のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNA
[2]配列番号24で表される塩基配列を有するDNA
[3]配列番号24で表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
(10)ジペプチドを生産する能力を有する微生物が、上記(4)の[1]〜[4]、上記(7)の[1]〜[3]、および上記(9)の[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAとベクターDNAが連結した組換え体DNAを有する微生物である上記(1)の製造法。
(11)組換え体DNAを有する微生物が、エシェリヒア属、バチルス属、シュードモナス属、コリネバクテリウム属またはサッカロマイセス属に属する微生物である上記(10)の製造法。
(12)アミノ酸がL−アミノ酸、グリシンおよびβ−アラニンから選ばれるアミノ酸である、上記(1)〜(11)のいずれか1つの製造法。
(13)L−アミノ酸が、L−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸、L−アザセリン、L−テアニン、L−4−ヒドロキシプロリン、L−3−ヒドロキシプロリン、L−オルニチンおよびL−6−ジアゾ−5−オキソノルロイシンから選ばれる1種以上のL−アミノ酸である上記(12)の製造法。
(14)アミノ酸エステルが、L−アラニンエステル、グリシンエステル、L−バリンエステル、L−イソロイシンエステル、L−メチオニンエステル、L−フェニルアラニンエステル、L−セリンエステル、L−スレオニンエステル、L−グルタミンエステル、L−チロシンエステル、L−アルギニンエステル、L−アスパラギン酸−α−エステル、L−アスパラギン酸−β−エステル、L−ロイシンエステル、L−アスパラギンエステル、L−リジンエステル、L−アスパラギン酸−α、β−ジメチルエステルおよびL−グルタミン−γ−エステルからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸エステルであり、かつアミノ酸が、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−アスパラギン、グリシン、L−アラニン、L−ロイシン、L−メチオニン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−セリン、L−スレオニン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニンおよびL−ヒスチジンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸である上記(1)、(2)、(5)〜(7)、(10)および(11)のいずれか1つの製造法。
(15)アミノ酸アミドが、L−アラニンアミド、グリシンアミドおよびL−アスパラギン酸−α−アミドからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸アミドであり、かつアミノ酸が、L−グルタミン酸、L−アスパラギン、L−グルタミン、L−アスパラギン、グリシン、L−アラニン、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−メチオニン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−セリン、L−スレオニン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニンおよびL−ヒスチジンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸である上記(1)、(2)、(5)および(8)〜(11)のいずれか1つの製造法。
(16)培養物の処理物が、培養物の濃縮物、培養物の乾燥物、培養物を遠心分離して得られる菌体、該菌体の乾燥物、該菌体の凍結乾燥物、該菌体の界面活性剤処理物、該菌体の溶媒処理物、該菌体の酵素処理物、または該菌体の固定化物である上記(1)〜(15)のいずれか1つの製造法。
1.本発明のジペプチドの製造法に用いられる微生物
本発明のジペプチドの製造法で用いられる微生物としては、アミノ酸アミド、アミノ酸エステルおよびアミノ酸からなる群より選ばれる1種以上の物質からジペプチドを生産する能力を有する微生物であれば特に限定されない。
該微生物としては、具体的には、例えばアクロモバクター(Achromobacter)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、アエロモナス(Aeromonas)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アースロバクター(Arthrobacter)属、ベイジェリンキア(Beijerinckia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、クラビバクター(Clavibacter)属、クリセオバクテリウム(Chryseobacterium)属、エシェリヒア(Escherichia)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エルビニア(Erwinia)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、クルイヘラ(Kluyvera)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ミコプラナ(Mycoplana)属、パントテア属(Pantoea)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、リストネラ(Listonella)属、リゾビウム(Rhizobium)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、サルモネラ(Salmonella)属、ザルチナ(Sarcina)属、セラチア(Serratia)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、ビブリオ(Vibrio)属、キサントモナス(Xanthomonas)属、ブレラ(Bullera)属、キャンディダ(Candida)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、フィロバシディウム(Filobasidium)属、ジオトリクム(Geotrichum)属、パキソレン(Pachysolen)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)属、トレメラ(Tremella)属、トルラスポーラ(Torulaspora)属、トルロプシス(Torulopsis)属、グルコンアセトバクター(Gluconacetobacter)属、アセトバクター(Acetobacter)属、グルコノバクター(Gluconobacter)属、アサイア(Asaia)属、ズッカリバクター(Zucharibacter)属、アクチノマデュラ(Actinomadura)属、キタサトスポリア(Kitasatosporia)属、ミクロモノスポーラ(Micromonospora)属、ノカルディア(Nocardia)属、エルスコフィア(OerSkovia)属、サッカロスリクス(Saccharothrix)属、ストレプトバーティシリウム(Streptoverticillium)属、ハフニア(Hafnia)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ナイセリア(Neisseria)属、サーモプラズマ(Thermoplasma)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属、トリコスポロン(Trichosporon)属またはステリグマトマイセス(Sterigmatomyces)属に属する微生物などをあげることができる。
アミノ酸アミド、アミノ酸エステルおよびアミノ酸からなる群より選ばれる1種以上の物質としては、1種以上のアミノ酸、1種以上のアミノ酸エステルおよび1種以上のアミノ酸、または1種以上のアミノ酸アミドおよび1種以上のアミノ酸をあげることができる。
(1)1種以上のアミノ酸からジペプチドを生産する能力を有する微生物
1種以上のアミノ酸からジペプチドを生産する能力を有する微生物としては、該能力を有する微生物であればいずれでもよく、例えば非リボゾームペプチドシンセターゼ(以下、NRPSと称す)、D−アラニル−D−アラニン(D−Ala−D−Ala)リガーゼ、およびバシリシン合成酵素からなる群より選ばれる蛋白質を生産する微生物をあげることができ、NRPSを生産する微生物としては、例えばバチルス属をはじめとする原核生物、BacA、BacBおよびBacC(GenBank AF007865)を生産する微生物、TycA、TycBおよびTycC(GenBank AF004835)を生産する微生物、PcbAB(GenBank M57425)を生産する微生物、およびBacA、BacB、BacC、TycA、TycB、TycC、PcbABから選ばれるいずれかの蛋白質のアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有し、かつNRPSの活性を有する蛋白質を生産する微生物などをあげることができる。
D−Ala−D−Alaリガーゼを生産する微生物としては、例えばペプチドグリカンを形成する原核微生物、DdlA(GenBank accession no.M58467)を生産する微生物、DdlB(GenBank accession no.AE000118)を生産する微生物、DdlC(GenBank accession no.D88151)を生産する微生物、およびDdlA、DdlB、DdlCから選ばれるいずれかの蛋白質のアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつD−Ala−D−Alaリガーゼ活性を有する蛋白質を生産する微生物などをあげることができる。
バシリシン合成酵素を生産する微生物としては、バチルス(Bacillus)属に属する微生物、好ましくはバチルス・サチルス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・コグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、より好ましくはバチルス・サチリス(Bacillus subtilis)168株(ATCC 23857)、バチルス・サチリスATCC15245、バチルス・サチリスATCC6633、バチルス・サチリスIAM1213、バチルス・サチリスIAM1107、バチルス・サチリスIAM1214、バチルス・サチリスATCC9466、バチルス・サチリスIAM1033、バチルス・サチリスATCC21555、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)IFO3022および以下の[1]〜[4]、
[1]配列番号1〜7および35のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[2]配列番号1〜7および35のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつジペプチドの合成活性を有する蛋白質、
[3]配列番号1〜7および35のいずれかで表されるアミノ酸配列と少なくとも65%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%、最も好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつジペプチドの合成活性を有する蛋白質、および
[4]配列番号15で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつジペプチドの合成活性を有する蛋白質、
から選ばれる蛋白質を生産する微生物をあげることができる。
配列番号15で表されるアミノ酸配列は、配列番号1〜7で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質の間で保存されている領域であり、かつ各種微生物のAla−Alaリガーゼ活性を有する蛋白質のコンセンサス配列に対応する領域である。
よって、配列番号15で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつジペプチド合成活性を有する蛋白質を生産する微生物もまたジペプチドを生産する微生物である。
配列番号15で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む蛋白質が、ジペプチド合成活性を有する蛋白質であるためには、該蛋白質のアミノ酸配列と配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列との相同性は、少なくとも65%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有していることが望ましい。
(2)1種以上のアミノ酸エステルと1種以上のアミノ酸からジペプチドを生産する能力を有する微生物
1種以上のアミノ酸エステルと1種以上のアミノ酸からジペプチドを生産する能力を有する微生物としては、該能力を有する微生物であればいずれでもよく、例えばアクロモバクター属、アシネトバクター属、アエロモナス属、アグロバクテリウム属、アルカリゲネス属、アースロバクター属、ベイジェリンキア属、ブレビバクテリウム属、クラビバクター属、クリセオバクテリウム属、エシェリヒア属、エンテロバクター属、エルビニア属、フラボバクテリウム属、クルイヘラ属、ミクロバクテリウム属、ミクロコッカス属、ミコプラナ属、パントエア属、プロピオニバクテリウム属、リストネラ属、リゾビウム属、ロドコッカス属、サルモネラ属、ザルチナ属、セラチア属、スタフィロコッカス属、ステノトロホモナス属、ストレプトマイセス属、ビブリオ属、キサントモナス属、ブレラ属、キャンディダ属、クリプトコッカス属、フィロバシディウム属、ジオトリクム属、パキソレン属、ロドスポリジウム属、ロドトルラ属、サッカロマイセス属、スポロボロマイセス属、トレメラ属、トルラスポーラ属、トルロプシス属、グルコンアセトバクター属、アセトバクター属、グルコノバクター属、アサイア属、ズッカリバクター属、アクチノマデュラ属、キタサトスポリア属、ミクロモノスポーラ属、ノカルディア属、エルスコフィア属、サッカロスリクス属、ストレプトバーティシリウム属、ハフニア属、ラクトバチルス属、ナイセリア属、サーモプラズマ属、コリネバクテリウム属、シュードモナス属またはバチルス属に属する微生物などをあげることができる。
上記微生物として、具体的にはアクロモバクター・デルマーベ(Achromobacter delmarvae)(FERM BP−6988)、アシネトバクター・ジョンソニイ(Acinetobacter johnsonii)(ATCC 9036)、アエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)(ATCC 14174)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(IFO 3058)、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)(ATCC 8750)、アースロバクター・シトレウス(Arthrobacter citreus)(ATCC 11624)、ベイジェリンキア・インディカ(Beijerinckia indica)(ATCC 9037)、ブレビバクテリウム・ローゼウム(Brevibacterium roseum)(ATCC 13825)、クラビバクター・ミシガネンス(Clavibacter michiganense)(ATCC 7429)、クリセオバクテリウム・メニンゴセプティカム(Chryseobacterium meningosepticum)(ATCC 13253)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)(ATCC 13071)、エンテロバクター・エアロゲネス(Enterobacter aerogenes)(ATCC 13048)、エルビニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)(IFO 12687)、フラボバクテリウム・レジノポーラム(Flavobacterium resinovorum)(ATCC 12524)、クルイヘラ・シトロフィラ(Kluyvera citrophila)(FERM BP−6564)、ミクロバクテリウ厶・インペリアエ(Microbacterium imperiale)(ATCC 8365)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)(ATCC 11880)、ミコプラナ・ブラータ(Mycoplana bullata)(ATCC 4278)、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)(ATCC 23822)、プロピオニバクテリウム・シェルマーニ(Propionibacterium shermanii)(FERM BP−8100)、リストネラ・アングイラーラム(Listonella anguillarum)(ATCC 19264)、リゾビウム・ラジオバクター(Rhizobium radiobacter)(ATCC 4720)、ロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodochrous)(ATCC 21198)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)(FERM BP−6566)、ザルチナ・ルテア(Sarcina lutea)(FERM BP−6562)、セラチア・グリメシイ(Serratia grimesii)(ATCC 14460)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(ATCC 12600)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)(ATCC 13270)、ストレプトマイセス・ラベンデュラエ(Streptomyces lavendulae)(ATCC 11924)、ビブリオ・チロゲネス(Vibrio tyrogenes)(FERM BP−5848)、キサントモナス・マルトフィリア(Xanthomonas maltophilia)(FERM BP−5568)、ブレラ・アルバ(Bullera alba)(FERM BP−8099)、キャンディダ・クルゼイ(Candida krusei)(IFO 0011)、クリプトコッカス・テレウス(Cryptococcus terreus)(IFO 0727)、フィロバシディウム・カプスリゲナム(Filobasidium capsuligenum)(IFO 1119)、ジオトリクム・アミセリウム(Geotrichum amycelicum)(ATCC 56046)、パキソレン・タンノフィラス(Pachysolen tannophilus)(IFO 1007)、ロドスポリジウム・ディオボバータム(Rhodosporidium diobovatum)(IFO 1829)、ロドトルラ・ミヌタ(Rhodotorula minuta)(IFO 0879)、サッカロマイセス・ユニスポーラス(Saccharomyces unisporus)(IFO 0724)、スポロボロミセス・サルモニカラー(Sporobolomyces salmonicolor)(IFO 1038)、トレメラ・フォリアセ(Tremella foliacea)(IFO 9297)、トルラスポーラ・デルブルッキT(orulasporadelbrueckii)(IFO 1083)、トルロプシス・インゲニオーサ(Torulopsis ingeniosa)(FERM BP−8098)、グルコンアセトバクター・リクエファシエンス(Gluconacetobacter liquefaciens)(IFO 12388)、アセトバクター・オルレアネンシス(Acetobacter orleanensis)(IFO 3223)、アセトバクター・パスツーリアヌス(Acetobaeter pasteurianus)(ATCC 9325)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)(ATCC 621)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)(IFO 3171)、グルコンアセトバクター・ハンゼニイ(Gluconacetobaeter hansenii)(JCM 7643)、アサイア・エタノリファシエンス(Asaia ethanolifaciens)(FERM BP−6751)、ズッカリバクター・フロリコーラ(Zucharibacter floricola)(FERM BP−6752)、アクチノマデュラ・マデュラエ(Actinomadura madurae)(ATCC 19425)、キタサトスポリア・グリセオラ(Kitasatosporia griseola)(IFO14371)、ミクロモノスポーラ・チェルシナ(Micromonospora chersina)(ATCC 53710)、ノカルディア・グロベルラ(Nocardia globerula)(ATCC 21602)、エルスコフィア・ツルバータ(Oerskovia turbata)(FERM BP−8122)、サッカロスリクス・オーストラリエンシス(Saccharothrix australiensis)(IFO 14444)、ストレプトバーティシリウム・モバラエンシス(Streptoverticilliummobaraensis)(IFO 13819)、ストレプトマイセス・プリカタス(Streptomyces plicatus)[Biochem.Biophys.Res.Commun.,184,1250(1992)]、コリネバクテリウム・バリアビリス(Corynebacterium variabilis)[J.Appl.Microbiol.,90,449(2001)]、アースロバクター・ニコチアナ(Arthrobacter nicotianae)[FEMS Microbiol.Lett.,78,191(1999)]、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)(特開平2−113887)、フラボバクテリウム・メニンゴセプチティカム(Flavobacterium meningosepticum)[Arch.Biochem.Biophys.,336,35(1996)]、ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)[J.Biochem.,119,468(1996)]、ラクトバチルス・デブルキー(Lactobacillus delbrueckii)[Microbiology,140,527(1994)]、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)[J.Bacteriol.,174,7919(1994)]、アエロモナス・ソブリア(Aeromonas sobria)(J.Biochem.,116,818(1994))、キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)(特開平9−121860)、ナイセリア・ゴノレーヤー(Neisseria gonorrhoeae)[Mol.Microbiol.,,1203(1993)]、プロピオニバクテリウム・フリュデンリチー(Propionibacterium freudenreichii)[Appl.Environ.Microbiol.,64,4736(1998)]、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)[J.Biochem.,122,601(1997)]、サーモプラズマ・アシドフィラム(Thermoplasmaacidophilum)[FEBS Lett.,398,101(1996)]、シュードモナス・アルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)[Nature,406,959(2000)]、バチルス・サチルス(Bacillus subtilis)(ATCC6633)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulas)EK01[J.Bacteriol.,174,7919(1992)]、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)(ATCC 13286)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)(FERM BP−8101)、シュードモチス・プチダ(Pseudomonas putida)(ATCC 12633)およびシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)(FERM BP−8123)などをあげることができる。
また、1種以上のアミノ酸エステルと1種以上のアミノ酸からジペプチドを生産する能力を有する微生物としては、プロリンイミノペプチダーゼを生産する能力を有する微生物をあげることができ、該微生物としては、例えばストレプトマイセス属、アースロバクター属、エシェリヒア属、フラボバクテリウム属、ハフニア属、ラクトバチルス属、アエロモナス属、キサントモナス属、ナイセリア属、プロピオニバクテリウム属、セラチア属、サーモプラズマ属、コリネバクテリウム属、シュードモナス属またはバチルス属に属する微生物などをあげることができる。
該微生物としては、具体的には、ストレプトマイセス・プリカタス[Biochem.Biophys.Res.Commun.,184,1250(1992)]、アースロバクター・ニコチアナ[FEMS Microbiol.Lett.,78,191(1999)]、エシェリヒア・コリ(特開平2−113887)、フラボバクテリウム・メニコンゴセプチティカム[Arch.Biochem.Biophys.,336,35(1996)]、ハフニア・アルベイ[J.Biochem.,119,468(1996)]、ラクトバチルス・デブルキー[Microbiology,140,527(1994)]、バチルス・コアギュランス[J.Bacteriol.,174,7919(1994)]、アエロモナス・ソブリア(J.Biochem.,116,818(1994))、キサントモナス・キャンペストリス(特開平9−121860)、ナイセリア・ゴノレーヤー[Mol.Microbiol.,,1203(1993)]、プロピオニバクテリウム・フリュデンリチー[Appl.Environ.Microbiol.,64,4736(1998)]、セラチア・マルエッセンス[J.Biochem.,122,601(1997)]、サーモプラズマ・アシドフィラム[FEBS Lett.,398,101(1996)]、シュードモナス・アルギノーサ[Nature,406,959(2000)]、バチルス・サチルス(ATCC6633)、バチルス・コアギュランスEK01[J.Bacteriol.,174,7919(1992)]、コリネバクテリウム・バリアビリス[J.Appl.Microbiol.,90,449(2001)]、コリネバクテリウム・グルタミカム(ATCC 13286)、シュードモナス・プチダ(FERM BP−8101)、シュードモナス・プチダ(ATCC 12633)、シュードモナス・プチダ(FERM BP−8123)、および配列番号17〜19のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質を生産する能力を有する微生物などをあげることができる。
さらに、プロリンイミノペプチダーゼを生産する能力を有する微生物としては、以下の[1]または[2]記載の蛋白質、
[1]ストレプトマイセス・プリカタス[Biochem.Biophs.Res.Commun.,184,1250(1992)]、アースロバクター・ニコチアナ[FEMS Microbiol.Lett.,78,191(1999)]、エシェリヒア・コリ(特開平2−113887)、フラボバクテリウム・メニンゴセプチティカム[Arch.Biochem.Biophys.,336,35(1996)]、ハフニア・アルベイ[J.Biochem.,119,468(1996)]、ラクトバチルス・デブルキー[Microbiology,140,527(1994)]、バチルス・コアギュランス[J.Bacteriol.,174,7919(1994)]、アエロモナス・ソブリア(J.Biochem.,116,818(1994))、キサントモナス・キャンペストリス(特開平9−121860)、ナイセリア・ゴノレーヤー[Mol.Microbiol.,,1203(1993)]、プロピオニバクテリウム・フリュデンリチー[Appl.Environ.Microbiol.,64,4736(1998)]、セラチア・マルセッセンス[J.Biochem.,122,601(1997)]、サーモプラズマ・アシドフィラム[FEBS Lett.,398,101(1996)]、シュードモナス・アルギノーサ[Nature,406,959(2000)]由来のプロリンイミノペプチダーゼ、および配列番号17〜19のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつプロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質、および
[2]上記[1]のプロリンイミノペプチダーゼおよび蛋白質のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有し、かつプロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質、
を生産する能力を有する微生物などをあげることができる。
(3)1種以上のアミノ酸アミドと1種以上のアミノ酸からジペプチドを生産する能力を有する微生物
1種以上のアミノ酸アミドと1種以上のアミノ酸からジペプチドを生産する能力を有する微生物としては、該能力を有する微生物であればいずれでもよく、例えばバチルス属、コリネバクテリウム属、エルビニア属、ロドコッカス属、クリセオバクテリウム属、ミクロコッカス属、シュードモナス属、クリプトコッカス属、トリコスポロン属、ロドスポリジウム属、スポロボロマイセス属、トレメラ属、トルラスポーラ属、ステリグマトマイセス属またはロドトルラ属に属する微生物などをあげることができる。
該微生物としてより具体的には、バチルス・メガテリウム(FERM BP−8090)、コリネバクテリウム・グルタミカム(ATCC 13286)、エルビニア・カロトボーラ(FERM BP−8089)、ロドコッカス・ロドクロス(ATCC 19149)、クリセオバクテリウム・メニンゴセプチカム(ATCC 13253)、ミクロコッカス・ルテウス(ATCC 9341)、シュードモナス・サッカロフィラ(ATCC 15946)、クリプトコッカス・アルビドゥス(IFO 0378)、トリコスポロン・グラシル(ATCC 24660)、ロドスポリジウム・ジオボヴァツム(ATCC 22264)、スポロボロマイセス・サーモニカラー(IFO 1038)、トレメラ・フォリアセア(IFO 9297)、トルラスポーラ・デルブレッキイ(IFO 1083)、ステリグマトマイセス・エルヴィアエ(IFO 1843)、ロドトルラ・インゲニオサ(ATCC 22993)などをあげることができる。
また、1種以上のアミノ酸アミドと1種以上のアミノ酸からジペプチドを生産する能力を有する微生物としては、L−アミノ酸アミドハイドロラーゼを生産する能力を有する微生物をあげることができ、該微生物としては、コリネバクテリウム・グルタミカム(ATCC 13286)、および配列番号23で表される蛋白質を生産する能力を有する微生物などをあげることができる。
さらに、L−アミノ酸アミドハイドロラーゼを生産する能力を有する微生物としては、以下の[1]または[2]記載の蛋白質、
[1]配列番号23で表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換、または付加されたアミノ酸配列からなり、かつL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質、
[2]配列番号23で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸からなり、かつL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質、
を生産する能力を有する微生物などをあげることができる。
上記において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、ジペプチドの合成活性を有する蛋白質は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)(以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley& Sons(1987−1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,488(1985)等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば配列番号1〜7および35で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質、配列番号17〜19で表されるアミノ酸配列からなるプロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質および配列番号23で表されるアミノ酸配列からなるL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質のいずれかの蛋白質をコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより、取得することができる。
欠失、置換または付加されるアミノ酸の数は、上記の部位特異的変異法等の周知の方法により欠失、置換または付加できる程度の数であれば特に限定されないが、通常は1個から数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
配列番号1〜7および35で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質、配列番号17〜19で表されるアミノ酸配列からなるプロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質および配列番号23で表されるアミノ酸配列からなるL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質のいずれかにおいて1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたとは、同一配列中の任意の位置において、1個または複数のアミノ酸の欠失、置換または付加があってもよい。
欠失、置換または付加は同時に生じてもよく、置換または付加されるアミノ酸は天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸としては、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−システインなどがあげられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、
シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
また、上記した1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加が導入される位置は、該変異が導入されたアミノ酸配列を有する蛋白質がジペプチドの合成活性を有する限り、特に限定されず、例えば配列番号1〜7および35で表されるアミノ酸配列を公知のアライメントソフトウェアを用いて比較したときに、すべてのアミノ酸配列において保存されていないアミノ酸をあげることができる。公知のアライメントソフトウェアとしては、例えば遺伝子解析ソフトウェアGenetyx(ソフトウェア開発株式会社)に含まれるアライメント解析ソフトをあげることができる。該解析ソフトの解析パラメータとしては、デフォルト値を用いることができる。
また、上記した1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質であり、かつジペプチド合成活性を有する蛋白質としては、例えば配列番号1〜7および35のいずれかで表されるアミノ酸配列との相同性、配列番号17〜19のいずれかで表されるアミノ酸配列との相同性、または配列番号23で表されるアミノ酸配列との相同性が、少なくとも65%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有する蛋白質をあげることができる。
上記において、アミノ酸配列や塩基配列の相同性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90,5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol.,183,63(1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている[J.Mol.Biol.,215,403(1990)]。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメータは例えばScore=100、wordlength=12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメータを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
(4)ジペプチドの合成活性を有する蛋白質をコードするDNAで形質転換された微生物
ジペプチドを合成する活性を有する蛋白質をコードするDNAで形質転換された微生物としては、該DNAとベクターDNAを連結して得られる組換え体DNAを有する微生物をあげることができる。
該微生物としては、1種以上のアミノ酸からジペプチドを合成する活性を有する蛋白質をコードするDNA、プロリンイミノペプチダーゼ活性有する蛋白質をコードするDNA、またはL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAとベクターDNAとを連結して得られる組換え体DNAを有する微生物などをあげることができる。
該微生物としては、エシェリヒア属、バチルス属、コリネバクテリウム属、シュードモナス属またはサッカロマイセス属に属する微生物をあげることができる。
1種以上のアミノ酸からジペプチドを合成する活性を有する蛋白質をコードするDNAとしては、NRPS、D−Ala−D−Alaリガーゼまたはバシリシン合成酵素をコードするDNAなどをあげることができる。
NRPSをコードするDNAとしてはBacA、BacB、BacC、TycA、TycB、TycCおよびPcbABからなる群より選ばれる蛋白質をコードするDNAをあげることができる。
D−Ala−D−AlaリガーゼをコードするDNAとしてはDdlA、DdlBおよびDdlCからなる群より選ばれる蛋白質をコードするDNAをあげることができる。
バシリシン合成酵素をコードするDNAとしては、以下の[1]〜[4]記載の蛋白質をコードするDNA、
[1]配列番号1〜7および35で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[2]配列番号1〜7および35のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつジペプチドの合成活性を有する蛋白質、および
[3]配列番号1〜7および35のいずれかで表されるアミノ酸配列と少なくとも65%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつジペプチドの合成活性を有する蛋白質、
[4]配列番号15で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつジペプチドの合成活性を有する蛋白質、
並びに、以下の[5]〜[7]記載のDNA、
[5]配列番号8〜14、29および30のいずれかで表される塩基配列を有するDNA、
[6]配列番号8〜14、29および30のいずれかで表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつジペプチド合成活性を有する蛋白質をコードするDNA、
[7]配列番号16で表される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有する塩基配列を含み、かつジペプチド合成活性を有する蛋白質をコードするDNA、
をあげることができる。
プロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAとしては、以下の[1]〜[3]のいずれかに記載のプロリンイミノペプチダーゼまたは蛋白質をコードするDNA、
[1]Biochem.Biophys.Res.Commun.,184,1250(1992)、FEMS Microbiol.Lett.,78,191(1999)、特開平2−113887、Arch.Biochem.Biophys.,336,35(1996)、J.Biochem.,119,468(1996)、Microbiology,140,527(1994)、J.Bacteriol.,174,7919(1994)、J.Biochem.,116,818(1994)、特開平9−121860、Mol.Microbiol.,,1203(1993)、Appl.Environ.Microbiol.,64,4736(1998)、J.Biochem.,122,601(1997)、FEBS Lett.,398,101(1996)、Nature,406,959(2000)に記載のプロリンイミノペプチダーゼ、および配列番号17〜19で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[2]上記[1]のいずれかのプロリンイミノペプチダーゼまたは蛋白質のアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつプロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質、および
[3]上記[1]のいずれかのプロリンイミノペプチダーゼまたは蛋白質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつプロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質、
並びに以下の[4]または[5]記載のDNA、
[4]Biochem.Biophys.Res.Commun.,184,1250(1992)、FEMS Microbiol.Lett.,78,191(1999)、特開平2−113887、Arch.Biochem.Biophys.,336,35(1996)、J.Biochem.,119,468(1996)、Microbiology,140,527(1994)、J.Bacteriol.,174,7919(1994)、J.Biochem.,116,818(1994)、特開平9−121860、Mol.Microbiol.,,1203(1993)、Appl.Environ.Microbiol.,64,4736(1998)、J.Biochem.,122,601(1997)、FEBS Lett.,398,101(1996)、Nature,406,959(2000)に記載のプロリンイミノペプチダーゼをコードするDNA、および配列番号20〜22で表される塩基配列を有するDNA、および
[5]上記[4]のいずれかのDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA、
をあげることができる。
L−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAとしては、以下の[1]〜[3]のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNA、
[1]配列番号23で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[2]配列番号23で表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質、
[3]配列番号23で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質、
および以下の[4]または[5]記載のDNA、
[4]配列番号24で表される塩基配列を有するL−アミノ酸アミドハイドロラーゼをコードするDNA、
[5]配列番号24で表される塩基配列からなるL−アミノ酸アミドハイドロラーゼをコードするDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつL−アミノ酸アミドハイドラー活性を有する蛋白質をコードするDNA、
をあげることができる。
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、特定の塩基配列を有するDNAまたは該DNAの一部にDNAがハイブリダイズする工程である。したがって、該特定の塩基配列を有するDNAまたは該DNAの一部の塩基配列は、ノーザンまたはサザンブロット解析のプローブとして有用であるか、またはPCR解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用できる長さのDNAであってもよい。プローブとして用いるDNAとしては、少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上のDNAをあげることができるが、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上のDNAであってもよい。
DNAのハイブリダイゼーション実験の方法はよく知られており、例えば当業者であれば本願明細書に従い、ハイブリダイゼーションの条件を決定することができる。該ハイブリダイゼーションの条件は、モレキュラー・クローニング第2版、第3版(2001年)、Methods for General and Molecular Bacteriolgy,ASM Press(1994)、Immunology methods manual,Academic press(Molecular)に記載の他、多数の他の標準的な教科書に従っておこなうことができる。
上記のストリンジェントな条件とは、例えばDNAを固定化したフィルターとプローブDNAとを50%ホルムアミド、5×SSC(750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、および20μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩、インキュベートした後、例えば約65℃の0.2×SSC溶液中で該フィルターを洗浄する条件をあげることができるが、より低いストリンジェント条件を用いるにともできる。ストリンジェンな条件の変更は、ホルムアミドの濃度調整(ホルムアミドの濃度を下げるほど低ストリンジェントになる)、塩濃度および温度条件の変更により可能である。低ストリンジェント条件としては、例えば6×SSCE(20×SSCEは、3mol/lの塩化ナトリウム、0.2mol/lのリン酸二水素ナトリウム、0.02mol/lのEDTA、pH7.4)、0.5%のSDS、30%のホルムアミド、100μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベートした後、50℃の1×SSC、0.1%SDS溶液を用いて洗浄する条件をあげることができる。また、さらに低いストリンジェントな条件としては、上記した低ストリンジェント条件において、高塩濃度(例えば5×SSC)の溶液を用いてハイブリダイゼーションを行った後、洗浄する条件をあげることができる。
上記した様々な条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを抑えるために用いるブロッキング試薬を添加、または変更することにより設定することもできる。上記したブロッキング試薬の添加は、条件を適合させるために、ハイブリダイゼーション条件の変更を伴ってもよい。
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えば上記したBLASTおよびFASTA等のプログラムを用いて、上記パラメータに基づいて計算したときに、上記したいずれかのDNAの塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。
塩基配列の相同性は、上記したBLASTまたはFASTA等のプログラムを用いて決定することができる。
上記したDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが、ジペプチドの合成活性を有する蛋白質をコードするDNAであることは、該DNAを発現する組換えDNAを作製し、該組換えDNAを宿主細胞に導入して得られる微生物を酵素源に用い、1)該酵素源および1種以上のアミノ酸を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジペプチドが生成、蓄積するか否かをHPLC等により分析する方法、2)該酵素源、1種以上のアミノ酸エステルおよび1種以上のアミノ酸を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジペプチドが生成、蓄積するか否かをHPLC等により分析する方法、3)該酵素源、1種以上のアミノ酸アミドおよび1種以上のアミノ酸を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジペプチドが生成、蓄積するか否かをHPLC等により分析する方法、によって確認することができる。
2.本発明のジペプチドの製造法に用いられる微生物の製造法
本発明のジペプチドの製造法に用いられる微生物としては、上記した各公的機関等から入手できる菌株、および該菌株に公知の変異手法を施して得られる微生物であり、かつジペプチドを生産する能力を有する微生物、および微生物のジペプチドを生成する能力を増強するため、遺伝子操作などの遺伝学的手法により該能力を増強した組換え株等をあげることができる。該組換え株としては、バシリシン合成酵素活性、プロリンイミノペプチダーゼ活性、またはL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性が増強された微生物をあげることができ、該組換え微生物としては、例えば、エシェリヒア・コリNM522/pQE60ywfE、エシェリヒア・コリJM109/pUCAAH(WO03/010187)、エシェリヒア・コリJM109/pQEAAH(WO03/010187)、エシェリヒア・コリJM109/pUCPPPEPI(WO03/010307)、エシェリヒア・コリJM109/pUCPGPEPI(WO03/010307)などをあげることができる。
(1)組換え株の製造法
(a)ジペプチドを合成する活性を有する蛋白質をコードするDNAの取得
上記したジペプチドを合成する活性を有する蛋白質をコードするDNAは、該DNAの塩基配列情報を利用し、例えば以下に記載する方法により取得することができる。
以下、バシリシン合成酵素をコードするDNAを取得する方法を例示する。バシリシン合成酵素をコードするDNAとしては、配列番号8〜14、29および30で表される塩基配列に基づき設計することができるプローブを用いた、バチルス属に属する微生物の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション法、または配列番号8〜14、29および30で表される塩基配列に基づき設計することができるプライマーDNAを用いた、バチルス属に属する微生物の染色体DNAを鋳型としたPCR法[PCR Protocols,Academic Press(1990)]等により取得されるDNAをあげることができる。
また、各種の遺伝子データベースに対して配列番号1〜7、15および35のいずれかで表されるアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列と少なくとも65%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有する配列を検索し、該検索によって得られた塩基配列に基づき、該塩基配列を有する生物の染色体DNA、cDNAライブラリー等から上記した方法によりバシリシン合成酵素をコードするDNAを取得することもできる。
取得したDNAをそのまま、あるいは適当な制限酵素などで切断後、常法によりベクターに組み込み、組換え体DNAを取得し、該組換え体DNAをエシェリヒア・コリに導入して得られる形質転換体からプラスミドDNAを抽出して、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばジデオキシ法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,74,5463(1977)]あるいは373A・DNAシークエンサー(パーキン・エルマー社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、該DNAの塩基配列を決定することができる。
塩基配列を決定した結果、取得されたDNAが部分長であった場合は、該部分長DNAをプローブに用いた、染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション法により、全長DNAを取得することができる。
更に、決定されたDNAの塩基配列に基づいて、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成装置等を用いて化学合成することにより目的とするDNAを調製することもできる。
上記のようにして取得されるDNAとして、例えば、配列番号8〜14、29および30で表される塩基配列を有するDNAをあげることができる。
該DNAを組み込むベクターとしては、pBluescript II KS(+)(ストラタジーン社製)、pDIRECT[Nucleic Acids Res.,18,6069(1990)]、pCR−Script Amp SK(+)(ストラタジーン社製)、pT7Blue(ノバジェン社製)、pCRII(インビトロジェン社製)およびpCR−TRAP(ジーンハンター社製)などをあげることができる。
エシェリヒア・コリとしては、例えば、エシェリヒア・コリXL1−Blue、エシェリヒア・コリXL2−Blue、エシェリヒア・コリDH1、エシェリヒア・コリMC1000、エシェリヒア・コリKY3276、エシェリヒア・コリW1485、エシェリヒア・コリJM101、エシェリヒア・コリJM109、エシェリヒア・コリHB101、エシェリヒア・コリNo.49、エシェリヒア・コリW3110、エシェリヒア・コリNY49、エシェリヒア・コリMP347、エシェリヒア・コリNM522、エシェリヒア・コリME8415等をあげることができる。
組換え体DNAの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法(特開昭63−248394)、エレクトロポレーション法[Nucleic Acids Res.,16,6127(1988)]等をあげることができる。
上記方法によって得られるジペプチド合成活性を有する蛋白質をコードするDNAを保有する微生物としては、前述した配列番号8で表される塩基配列を有するDNAを含有する組換え体DNAを保有する微生物であるエシェリヒア・コリNM522/pQE60ywfEをあげることができる。
(b)ジペプチド合成活性を有する蛋白質を生産する微生物の取得
ジペプチド合成活性を有する蛋白質を生産する微生物は、モレキュラー・クローニング第2版または第3版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された方法等を用い、例えば以下の方法により、上記(a)の方法により取得したDNAを宿主細胞に導入して取得することができる。
上記(a)の方法により取得したDNAをもとにして、必要に応じて、ジペプチド合成活性を有する蛋白質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製する。また、該蛋白質をコードする部分の塩基配列を、宿主の発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換することにより、該蛋白質の生産率を向上させることができる。
該DNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換え体DNAを作製する。
該組換え体DNAを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、ジペプチド合成活性を有する蛋白質を生産する形質転換体を得ることができる。
宿主細胞としては、目的とする遺伝子を発現できる微生物であればいずれも用いることができる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能または染色体中への組込みが可能で、ジペプチド合成活性を有する蛋白質をコードするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合は、ジペプチド合成活性を有する蛋白質をコードするDNAを有する組換え体DNAは、原核生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、ジペプチド合成活性を有する蛋白質をコードするDNA、転写終結配列より構成された組換え体DNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
発現ベクターとしては、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもベーリンガーマンハイム社製)、pHelix1(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)、pKK233−2(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX−1(プロメガ社製)、pQE−8(キアゲン社製)、pET−3(ノバジェン社製)、pKYP10(特開昭58−110600)、pKYP200[Agric.Biol.Chem.,48,669(1984)]、pLSA1[Agric.Biol.Chem.,53,277(1989)]、pGEL1[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,82,4306(1985)]、pBluescript II SK(+)、pBluescript II KS(−)(ストラタジーン社製)、pTrS30[エシェリヒア・コリJM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製]、pTrS32[エシェリヒア・コリJM109/pTrS32(FERM BP−5408)より調製]、pPAC31(WO98/12343)、pUC19[Gene,33,103(1985)]、pSTV28(タカラバイオ社製)、pUC118(タカラバイオ社製)、pPA1(特開昭63−233798)等を例示することができる。
プロモーターとしては、エシェリヒア・コリ等の宿主細胞中で機能するものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、Pプロモーター、Pプロモーター、PSEプロモーター等の、エシェリヒア・コリやファージ等に由来するプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、letIプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
プロモーターとしては、バチルス属細菌中で発現させるためのxylAプロモーター[Appl.Microbiol.Biotechnol.,35,594−599(1991)]やコリネバクテリウム属細菌中で発現させるためのP54−6プロモーター[Appl.Microbiol.Biotechnol.,53,674−679(2000)]なども用いることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18核酸)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
ジペプチド合成活性を有する蛋白質をコードするDNAを発現ベクターに結合させた組換え体DNAにおいては、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
このような組換え体DNAとしては、例えば後述するpPE43をあげることができる。
宿主細胞として用いる原核生物としては、エシェリヒア属、バチルス属、シュードモナス属、コリネバクテリウム属などに属する微生物が好適に用いられる。エシェリヒア属、バチルス属、シュードモナス属またはコリネバクテリウム属に属する微生物としては、例えば、エシェリヒア・コリXL1−Blue、エシェリヒア・コリXL2−Blue、エシェリヒア・コリDH1、エシェリヒア・コリDH5α、エシェリヒア・コリMC1000、エシェリヒア・コリKY3276、エシェリヒア・コリW1485、エシェリヒア・コリJM101、エシェリヒア・コリJM109、エシェリヒア・コリHB101、エシェリヒア・コリNo.49、エシェリヒア・コリW3110、エシェリヒア・コリNY49、エシェリヒア・コリMP347、エシェリヒア・コリNM522、バチルス・サチリス(ATCC33712)、バチルス・メガテリウム、バチルス・エスピー(FERM BP−6030)、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・コアギュランス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス、シュードモナス・プチダ、コリネバクテリウム・グルタミカム(ATCC13032)、コリネバクテリウム・グルタミカム(ATCC14297)等をあげることができる。
組換え体DNAの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法(特開昭63−248394)、エレクトロポレーション法[Nucleic Acids Res.,16,6127(1988)]等をあげることができる。
サッカロマイセス属に属する菌株を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、pHS19、pHS15等を用いることができる。
プロモーターとしては、サッカロマイセス属に属する菌株中で機能するものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、PH05プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal 1プロモーター、gal 10プロモーター、ヒートショックポリペプチドプロモーター、MFα1プロモーター、CUP 1プロモーター等のプロモーターをあげることができる。
宿主細胞としては、サッカロマイセス属等に属する菌株をあげることができ、具体的には、サッカロマイセス・セレビシエ等をあげることができる。
組換え体DNAの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Methods Enzymol.,194,182(1990)]、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,4889(1984)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]等をあげることができる。
3.本発明のジペプチドの製造法で用いられる酵素源の製造
本発明のジペプチドの製造法で用いられる酵素源は、上記2で得られる微生物を該微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、該微生物の培養を効率的に行える培地である天然培地、合成培地等を用いて培養することで該微生物の培養物、または該培養物の処理物を取得した後、該培養物または該培養物の処理物を41℃以上65℃以下で30秒間〜1時間処理(以下、単に熱処理ともいう)することにより取得できる。
上記の炭素源としては、該微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類等を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体、およびその消化物等を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
培養は、通常振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。
また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
本発明のジペプチドの製造法に、誘導性のプロモーターを有する発現ベクターで形質転換した微生物を用いる場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
上記で得られる微生物の培養物または該培養物の処理物を、41℃以上65℃以下で30秒間〜1時間、熱処理することで本発明の製造法で用いられる酵素源を製造することができる。該熱処理は、酵素源として用いる微生物が有するジペプチドを生産する活性を喪失させず、かつ該微生物のジペプチド分解活性を減少させることができる条件であれば、41℃以上65℃以下で30秒間〜1時間の範囲内であればいずれの条件でもよく、好ましくは45℃以上65℃以下で1分間〜30分間、より好ましくは50℃以上65℃以下で5分間〜20分間、さらに好ましくは50℃以上65℃以下で10分間〜15分間の条件をあげることができる。当該業者であれば簡単な実験により、本発明のジペプチドの製造法に用いる微生物に合わせて、該熱処理条件を容易に選択することができる。
また、該微生物の培養物または該培養物の処理物の熱処理は、該培養物または該培養物の処理物を水性媒体中に存在せしめた状態で行うことができ、該水性媒体としては後述するジペプチド生成反応時に用いる水性媒体などをあげることができる。また該熱処理を行う時期は、アミノ酸などの基質と酵素源とを接触させる前であれば、特に制限されず、例えば微生物の培養物の処理物を酵素源に用いる場合、培養物を熱処理した後に該培養物の処理物を製造してもよいし、培養物の処理物を製造した後に該処理物を熱処理してもよい。
4.本発明のジペプチドの製造法
本発明の製造法は、上記3で得られる熱処理を施した微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、並びにアミノ酸アミド、アミノ酸エステルおよびアミノ酸からなる群より選ばれる1種以上、好ましくは1種または2種の物質を水性媒体中に共存せしめ、該水性媒体中にジペプチドを生成、蓄積させ、該水性媒体から該ジペプチドを採取するジペプチドの製造法である。
上記本発明の製造法としては、以下の(i)〜(iii)、
(i)上記3で得られる熱処理を施した微生物の培養物または培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、および1種以上、好ましくは1種または2種のアミノ酸を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中にジペプチドを生成、蓄積させ、該媒体から該ジペプチドを採取するジペプチドの製造法、
(ii)上記3で得られる熱処理を施した微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、1種以上、好ましくは1種のアミノ酸エステルおよび1種以上、好ましくは1種のアミノ酸を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジペプチドを生成、蓄積させ、該媒体から該ジペプチドを採取するジペプチドの製造法、および、
(iii)上記3で得られる熱処理を施した微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源、1種以上、好ましくは1種のアミノ酸アミドおよび1種以上、好ましくは1種のアミノ酸を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジペプチドを生成、蓄積させ、該媒体から該ジペプチドを採取するジペプチドの製造法、
をあげることができる。
上記(i)の製造法において、基質に用いられる1種以上のアミノ酸、好ましくは1種または2種のアミノ酸としては、アミノ酸、好ましくはL−アミノ酸、グリシン(Gly)およびβ−アラニン(βAla)からなる群より選ばれるアミノ酸であれば、いずれのアミノ酸をいずれの組み合わせで用いてもよい。L−アミノ酸としては、例えばL−アラニン(L−Ala)、L−グルタミン(L−Gln)、L−グルタミン酸(L−Glu)、L−バリン(L−Val)、L−ロイシン(L−Leu)、L−イソロイシン(L−Ile)、L−プロリン(L−Pro)、L−フェニルアラニン(L−Phe)、L−トリプトファン(L−Trp)、L−メチオニン(L−Met)、L−セリン(L−Ser)、L−スレオニン(L−Thr)、L−システイン(L−Cys)、L−アスパラギン(L−Asn)、L−チロシン(L−Tyr)、L−リジン(L−Lys)、L−アルギニン(L−Arg)、L−ヒスチジン(L−His)、L−アスパラギン酸(L−Asp)、L−α−アミノ酪酸(L−α−AB)、L−アザセリン(L−Azaserine)、L−テアニン(L−theanine)、L−4−ヒドロキシプロリン(L−4−HYP)、L−3−ヒドロキシプロリン(L−3−HYP)、L−オルニチン(L−Orn)、L−シトルリン(L−Cit)およびL−6−ジアゾ−5−オキシノルロイジン(L−6−diazo−5−oxo−norleucine)などをあげることができる。
上記(i)の製造法に用いられる、より好ましいアミノ酸としては、L−Ala、Gly、L−Met、L−Ser、L−Thrおよびβ−Alaから選ばれる1種のアミノ酸とL−Ala、L−Gln、L−Glu、Gly、L−Val、L−Leu、L−Ile、L−Pro、L−Phe、L−Trp、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Asn、L−Tyr、L−Lys、L−Arg、L−His、L−Asp、L−α−AB、β−Ala、L−Azaserine、L−theanine、L−4−HYP、L−3−HYP、L−Orn、L−CitおよびL−6−diazo−5−oxo−norleucineから選ばれる1種のアミノ酸の組み合わせ、L−GlnとL−Pheの組み合わせ、およびL−α−ABとL−Gin、L−ArgまたはL−α−ABの組み合わせ、さらに好ましくはL−AlaとL−Ala、L−Gln、Gly、L−Val、L−Leu、L−Ile、L−Phe、L−Trp、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Asn、L−Tyr、L−Lys、L−Arg、L−His、L−α−AB、L−Azaserine、L−CitおよびL−theanineから選ばれる1種のアミノ酸の組み合わせ、GlyとL−Gln、Gly、L−Phe、L−Trp、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Tyr、L−Lys、L−Arg、L−α−ABおよびL−Citから選ばれる1種のアミノ酸の組み合わせ、L−MetとL−Phe、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Tyr、L−LysおよびL−Hisから選ばれる1種のアミノ酸の組み合わせ、L−SerとL−Gln、L−Phe、L−Ser、L−Thr、L−Tyr、L−HisおよびL−α−ABから選ばれる1種のアミノ酸の組み合わせ、L−ThrとL−Gln、L−Phe、L−Leu、L−ThrおよびL−α−ABから選ばれる1種のアミノ酸の組み合わせ、L−GlnとL−Pheの組み合わせ、β−AlaとL−Phe、L−Met、L−HisおよびL−Citから選ばれる1種のアミノ酸の組み合わせ、およびL−α−ABとL−Gln、L−ArgまたはL−α−ABの組み合わせをあげることができる。
上記(i)の製造法において、基質として用いるアミノ酸は、0.1〜500g/L、好ましくは0.2〜200g/Lの濃度になるように水性媒体中に初発または反応途中に添加する。
上記(i)の製造法で製造されるジペプチドとしては、下式(I)
−R (I)
(式中、RおよびRは、同一または異なってアミノ酸を表す)
で表されるジペプチドをあげることができ、好ましくは、上記式(I)においてRおよびRが同時にまたは異なって、L−Ala、L−Gln、L−Glu、Gly、L−Val、L−Leu、L−Ile、L−Pro、L−Phe、L−Trp、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Asn、L−Tyr、L−Lys、L−Arg、L−His、L−Asp、L−α−AB、β−Ala、L−Azaserine、L−theanine、L−4−HYP、L−3−HYP、L−OrnおよびL−6−diazo−5−oxo−norleucineから選ばれるアミノ酸であるジペプチドをあげることができ、より好ましくはRがL−Ala、Gly、L−Met、L−Ser、L−Thrまたはβ−Alaの場合は、RがL−Ala、L−Gln、L−Glu、Gly、L−Val、L−Leu、L−Ile、L−Pro、L−Phe、L−Trp、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Asn、L−Tyr、L−Lys、L−Arg、L−His、L−Asp、L−α−AB、β−Ala、L−Azaserine、L−theanine、L−4−HYP、L−3−HYP、L−OrnまたはL−6−diazo−5−oxo−norleucineであるジペプチドをあげることができ、さらに好ましくは、RがL−Alaの場合は、RはL−Ala、L−Gln、Gly、L−Val、L−Leu、L−Ile、L−Phe、L−Trp、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Asn、L−Tyr、L−Lys、L−Arg、L−His、L−α−AB、L−AzaserineまたはL−theanineであるジペプチド、RがGlyの場合は、RはL−Gln、Gly、L−Trp、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Tyr、L−Lys、L−ArgまたはL−α−ABであるジペプチド、RがL−Metの場合は、RはL−Phe、L−Met、L−Cys、L−Tyr、L−LysまたはL−Hisであるジペプチド、RがL−Serの場合は、RはL−Gln、Gly、L−Phe、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Tyr、L−HisまたはL−α−ABであるジペプチド、RがL−Thrの場合は、RはL−Gln、L−Gly、L−Phe、L−Met、L−Ser、L−ThrまたはL−α−ABであるジペプチド、RがL−Glnの場合は、RはL−PheまたはL−α−ABであるジペプチド、RがL−Pheの場合は、RはL−Glnであるジペプチド、RがL−Trpの場合は、RはGlyであるジペプチド、RがL−Cysの場合は、RはL−Ala、L−Gln、Gly、またはL−Metであるジペプチド、RがL−Lysの場合は、RはL−Ala、GlyまたはL−Metであるジペプチド、RがL−Argの場合は、RはL−α−ABであるジペプチド、RがL−Hisである場合は、RはL−Metであるジペプチド、およびRがL−α−ABの場合は、RはL−Ala、L−Gln、Gly、L−Ser、L−Thr、L−ArgまたはL−α−ABであるジペプチドをあげることができる。
また上記製造法においては、必要に応じて、ATPの供給源として、本発明の微生物が代謝してATPを生産し得る化合物、例えばグルコースのような糖類、エタノールのようなアルコール類、酢酸のような有機酸類などを水性媒体中に加えることができる。
上記(ii)の製造法において、基質に用いられる1種以上のアミノ酸エステルおよび1種以上のアミノ酸としては、本発明の製造法の酵素源として用いられる微生物が基質に用いてジペプチドを生成することができるアミノ酸エステルおよびアミノ酸であれば、いずれのアミノ酸エステルとアミノ酸をいずれの組み合わせで用いてもよく、好ましくは1種のアミノ酸エステルおよび1種のアミノ酸の組み合わせで用いられ、アミノ酸としてはL−アミノ酸およびグリシンが好ましい。より好ましい1種のアミノ酸エステルおよび1種のアミノ酸の組み合わせとしては、例えばアミノ酸エステルが、L−アラニンエステル、グリシンエステル、L−バリンエステル、L−イソロイシンエステル、L−メチオニンエステル、L−フェニルアラニンエステル、L−セリンエステル、L−スレオニンエステル、L−グルタミンエステル、L−チロシンエステル、L−アルギニンエステル、L−アスパラギン酸−α−エステル、L−アスパラギン酸−β−エステル、L−ロイシンエステル、L−アスパラギンエステル、L−リジンエステル、L−アスパラギン酸−α,β−ジメチルエステルおよびL−グルタミン−γ−エステルからなる群より選ばれる1種のアミノ酸エステルであり、アミノ酸がL−Gln、L−Asn、Gly、L−Ala、L−Leu、L−Met、L−Pro、L−Phe、L−Trp、L−Ser、L−Thr、L−Tyr、L−Lys、L−Arg、L−HisおよびL−Gluからなる群より選ばれる1種のアミノ酸である組み合わせをあげることができる。
上記(ii)の製造法において、基質として用いるアミノ酸エステルおよびアミノ酸は、それぞれ0.1〜500g/L、好ましくは0.2〜200g/Lの濃度になるように水性媒体中に初発または反応途中に添加する。
上記(iii)の製造法において、基質に用いられる1種以上のアミノ酸アミドおよび1種以上のアミノ酸としては、本発明の製造法の酵素源として用いられる微生物が基質に用いてジペプチドを生成することができるアミノ酸アミドおよびアミノ酸であれば、いずれのアミノ酸アミドとアミノ酸をいずれの組み合わせで用いてもよく、好ましくは1種のアミノ酸アミドおよび1種のアミノ酸の組み合わせで用いられ、アミノ酸としてはL−アミノ酸およびグリシンが好ましい。1種のアミノ酸アミドおよび1種のアミノ酸の組み合わせとしては、例えばアミノ酸アミドが、L−アラニンアミド、グリシンアミドおよびL−アスパラギン酸アミドからなる群より選ばれる1種のアミノ酸アミドであり、アミノ酸がL−Gln、L−Asn、Gly、L−Ala、L−Val、L−Leu、L−Ile、L−Met、L−Pro、L−Phe、L−Trp、L−Ser、L−Thr、L−Tyr、L−Lys、L−Arg、L−HisおよびL−Gluからなる群より選ばれる1種のアミノ酸の組み合わせをあげることができる。
上記(iii)の製造法において、基質として用いるアミノ酸アミドおよびアミノ酸は、それぞれ0.1〜500g/L、好ましくは0.2〜200g/Lの濃度になるように水性媒体中に初発または反応途中に添加する。
本発明の製造法で用いられる水性媒体としては、ジペプチドの生成反応を阻害しない限り、いかなる成分、組成の水性媒体であってもよく、例えば、水、りん酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ほう酸塩、クエン酸塩、トリスなどの緩衝液などをあげることができる。また、メタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、アセトアミドなどのアミド類を含有していてもよい。
ジペプチドの生成反応は水性媒体中、pH5〜11、好ましくはpH6〜10、20〜60℃、好ましくは25〜45℃の条件で2〜150時間、好ましくは6〜120時間行う。
さらに必要に応じて、水性媒体中に界面活性剤あるいは有機溶媒を添加してもよい。
界面活性剤としては、ポリオキシエチレン・オクタデシルアミン(例えばナイミーンS−215、日本油脂社製)などの非イオン界面活性剤、セチルトリメチルアンモニウム・ブロマイドやアルキルジメチル・ベンジルアンモニウムクロライド(例えばカチオンF2−40E、日本油脂社製)などのカチオン系界面活性剤、ラウロイル・ザルコシネートなどのアニオン系界面活性剤、アルキルジメチルアミン(例えば三級アミンFB、日本油脂社製)などの三級アミン類など、ジペプチドの生成を促進するものであればいずれでもよく、1種または数種を混合して使用することもできる。界面活性剤は、通常0.1〜50g/lの濃度で用いられる。有機溶剤としては、キシレン、トルエン、脂肪族アルコール、アセトン、酢酸エチルなどがあげられ、通常0.1〜50ml/lの濃度で用いられる。
培養物の処理物としては、培養物の濃縮物、培養物の乾燥物、培養物を遠心分離して得られる菌体、該菌体の乾燥物、該菌体の凍結乾燥物、該菌体の界面活性剤処理物、該菌体の超音波処理物、該菌体の機械的摩砕処理物、該菌体の溶媒処理物、該菌体の酵素処理物、および該菌体の固定化物などの生菌体を含有する処理物をあげることができる。また、本発明の培養物の処理物には、上記菌体を界面活性剤処理、超音波処理、機械的摩砕処理、溶媒処理または酵素処理等して得られる処理物から、不溶物等を除いて得られる蛋白質の粗抽出物も含まれる。
酵素源として用いる培養物または該培養物の処理物の量は、当該酵素源の比活性等により異なるが、例えば、基質であるアミノ酸、アミノ酸メチルエステルまたはアミノ酸アミド1mgあたり5〜1000mg、好ましくは10〜400mg添加する。
水性媒体中に生成、蓄積したジペプチドの採取は、活性炭やイオン交換樹脂などを用いる通常の方法あるいは、有機溶媒による抽出、結晶化、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等により行うことができる。
その他、上記(ii)および(iii)の製造法は、WO03/010189またはWO03/010187の記載に準じて行うことができる。
5.1種以上のアミノ酸からジペプチドを生産する微生物の製造法の実験例
以下に、1種以上のアミノ酸からジペプチドを生産する微生物の製造法の実験例を示す。
実験例1 バチルス・サチリス由来のywfE遺伝子発現プラスミドの造成
バチルス・サチリスのywfE遺伝子断片を以下のようにして取得した。
パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、配列番号25および配列番号26で表される塩基配列を有するDNA(以下、それぞれプライマーA、プライマーBと呼ぶ)を合成した。プライマーAは、ywfE遺伝子の開始コドン(atg)をNcoI認識配列(ccatgg)に置換した領域を含む塩基配列である。プライマーBは、ywfEの終止コドンをBamHI(ggatcc)認識配列に置換した領域を含む塩基配列である。
バチルス・サチリスの染色体DNAを鋳型とし、上記プライマーAおよびプライマーBをプライマーセットとして用いたPCRを行った。PCRは、0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間の工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、ywfE遺伝子断片に相当する約1.4kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離しDNAの沈殿を得た。該DNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
該溶解液5μLを用い、増幅したDNAを制限酵素NcoIおよびBamHIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキット(Bio101社製)により、ywfE遺伝子を含む1.4kbのDNA断片を回収した。
C末端Hisタグ付加型組換え体発現ベクターpQE60(キアゲン社製)0.2μgを制限酵素NcoIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により3.4kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたywfE遺伝子を含む1.4kbのDNA断片と3.4kbのDNA断片をライゲーションキット(宝酒造社製)を用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該連結反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株(ストラタジーン社製)をカルシウムイオンを用いる方法〔Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110(1972)〕によって形質転換し、該形質転換体を50μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布後、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、C末Hisタグ付加型ywfE遺伝子発現ベクターであるpQE60ywfEを得た。該ベクターの構造を制限酵素消化により確認した(図1)。
実験例2 ywfE遺伝子産物の取得
pQE60ywfEを保有するエシェリヒア・コリNM522/pQE60ywfE株を50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った太型試験管に接種し28℃で17時間培養した。該培養液を50μg/mlのアンピシリンを含む50mlのLB培地の入った250ml容三角フラスコに接種し30℃で3時間培養した後、終濃度が1mmol/Lになるようにイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し、さらに30℃で4時間培養した。該培養液を遠心分離し湿菌体を取得した。該湿菌体から、HisTrap(Hisタグ付加タンパク精製キット、Amersham Pharmasia Biotech社製)を用いて、説明書に従いHisタグ付加組換え型酵素を精製した。
実験例3 Hisタグ付加組換え型酵素を用いたジペプチドの生産(1)
(i)実験例2で取得した精製したHisタグ付加組換え型酵素0.04mg、100mmol/LのTris−HCl(pH8.0)、60mmol/Lの塩化マグネシウム、60mmol/LのATP、30mmol/LのL−Ala、30mmol/LのL−Glnからなる0.1mlの反応液を調製し、37℃で16時間反応を行った。
反応終了後、反応生成物をジニトロフェノール化法で誘導体化した後にHPLC法により分析した。HPLC法による分析は、分離カラムに関東化学社製のLichrosorb−RP−18カラムを用い、溶離液として1%(v/v)リン酸、25%(v/v)アセトニトリルを用い、0.7ml/分の流動速度で行った。反応液中に3.7g/LのL−Ala−L−Glnと0.3g/LのL−アラニル−L−アラニン(L−Ala−L−Ala)が生成蓄積していることを確認した。
(ii)酵素を0.01mg、L−Glnの代わりにL−Phe、L−Met、L−LeuまたはL−Valを含有する以外は、上記(i)の反応液の組成と同じ反応液を調製し、上記(i)の反応条件で反応させた。
反応終了後、上記(i)と同様の方法により反応生成物を分析し、反応液中にそれぞれ、7.0g/LのL−アラニル−L−フェニルアラニン(L−Ala−L−Phe)のみ、7.0g/LのL−アラニル−L−メチオニン(L−Ala−L−Met)および0.03g/LのL−Ala−L−Ala、5.0g/LのL−アラニル−L−ロイシン(L−Ala−L−Leu)および0.2g/LのL−Ala−L−Ala、または1.6g/LのL−アラニル−L−バリン(L−Ala−L−Val)および0.3g/LのL−Ala−L−Alaが生成蓄積していることを確認した。
(iii)酵素を0.01mg、L−Alaの代わりにGly、L−Glnの代わりにL−PheまたはL−Metを含有する以外は、上記(i)の反応液の組成と同じ反応液を調製し、上記(i)の反応条件で反応させた。
反応終了後、上記(i)と同様の方法により反応生成物を分析し、反応液中にそれぞれ5.2g/Lのグリシル−L−フェニルアラニン(Gly−L−Phe)または1.1g/Lのグリシル−L−メチオニン(Gly−L−Met)が生成蓄積していることを確認した。
上記反応液組成からATPを除くとジペプチドは全く生成されなかった。
以上の結果から、ywfE遺伝子産物は、ATP存在下において、L−AlaとL−Gln、L−Phe、L−Met、L−LeuまたはL−Valとから、L−Ala−L−GlnおよびL−Ala−L−Ala、L−Ala−L−Phe、L−Ala−L−MetおよびL−Ala−L−Ala、L−Ala−L−LeuおよびL−Ala−L−Ala、またはL−Ala−L−ValおよびL−Ala−L−Alaを生成する活性、GlyとL−PheまたはL−MetとからGly−L−PheまたはGly−L−Metを生成する活性を有することが明らかになった。
実験例4 Hisタグ付加組換え型酵素を用いたジペプチドの生産(2)
実験例2で得られた精製したHisタグ付加組換え型酵素0.04mg、100mmol/LのTris−HCl(pH8.0)、60mmol/Lの塩化マグネシウム、60mmol/LのATPからなる0.1mlの反応液を調製し、第1表の第1行目と最左列のアミノ酸の組み合わせからなる各種L−アミノ酸、Glyまたはβ−Alaをそれぞれ30mmol/Lずつになるように反応液に添加し、37℃で16時間反応を行った。反応終了後、反応生成物をHPLC分析したところ、第1表に示すジペプチドが生成していることが確認された。



第1表の第1行目と最左列に記載の2種類(もしくは1種類)のL−アミノ酸、Glyまたはβ−Alaを基質として反応した場合に生成したジペプチドを枠内に記載した。○は配列は未確定だがジペプチドが生成したこと、×はジペプチドの生成が確認されなかったこと、および空欄は未実施を示す。
実験例5 Hisタグ付加組換え型酵素発現株を用いたジペプチドの生産
実験例1で得られたエシェリヒア・コリNM522/pQE60ywfE株を50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を50μg/mlのアンピシリンを含む50mlのLB培地の入った250ml容三角フラスコに接種し30℃で3時間培養した後、終濃度が1mmol/LになるようにIPTGを添加し、さらに30℃で4時間培養した。該培養液を遠心分離し湿菌体を取得した。
200g/Lの湿菌体、50g/Lのグルコース、5g/Lのフィチン酸(33%の濃水酸化ナトリウム溶液を用いて中性になるよう希釈)、15g/Lのリン酸二水素カリウム、5g/Lの硫酸マグネシウム・7水和物、4g/LのナイミーンS−215、10ml/Lのキシレン、200mmol/LのL−Ala、200mmol/LのL−Glnからなる20mlの反応液(pH7.2)を50ml容量のビーカーに入れ、32℃、900rpmの条件下で2時間反応を行った。反応中は2mol/Lの水酸化カリウムを用いて反応液のpHを7.2に保った。
反応生成物を実験例3記載の方法と同様の方法で分析したところ、25mg/LのL−Ala−L−Glnの蓄積が確認された。
実験例6 バチルス属に属する各種微生物からのywfE遺伝子に相当する遺伝子のクローニングとその解析
配列番号8で表される塩基配列に基づき、バチルス・サチリスATCC15245、ATCC6633、IAM1213、IAM1107、IAM1214、ATCC9466、IAM1033、ATCC21555、バチルス・アミロリケファシエンスIFO3022、およびバチルス・プミルスNRRL B−12025に存在するywfE遺伝子に相当する遺伝子を以下のようにして取得した。
まず、バチルス・サチルスATCC15245、ATCC6633、IAM1213、IAM1107、IAM1214、ATCC9466、IAM1033、ATCC21555、バチルス・アミロリケファシエンスIFO3022、およびバチルス・プミルスNRRL B−12025をそれぞれLB培地に植菌し30℃で一晩静置培養した。培養後、カレンド・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーに記載の飽和フェノールを用いる方法により、該微生物の染色体DNAをそれぞれ単離精製した。
パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、配列番号27および28で表される塩基配列を有するDNA(以下、それぞれプライマーC、プライマーDと呼ぶ)を合成した。プライマーCは、バチルス・サチリス168株の染色体DNAのywfE遺伝子の開始コドンより上流を含む領域の配列である。プライマーDは、ywfE遺伝子の終止コドンより下流を含む配列と相補的な配列である。
バチルス・サチルスATCC15245、ATCC6633、IAM1213、IAM1107、IAM1214、ATCC9466、IAM1033、ATCC21555、またはバチルス・アミロリケファシエンスIFO3022の染色体DNAを鋳型とし、上記プライマーCおよびプライマーDをプライマーセットとして用いてPCRを行った。PCRは、0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間の工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、ywfE遺伝子断片に相当する約1.4kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該溶液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
上記で得られた各菌株染色体DNA由来の1.4kb断片とpCR−blunt(インビトロジェン社製)を、ライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応を行い連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてそれぞれの構造を解析することにより、ywfE遺伝子に相当する遺伝子を含むプラスミドであるpYWFE1(ATCC15245株由来、配列番号30で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE2(ATCC6633株由来、配列番号9で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE3(IAM1213株由来、配列番号10で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE4(IAM1107株由来、配列番号11で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE5(IAM1214株由来、配列番号12で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE6(ATCC9466株由来、配列番号8で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE7(IAM1033株由来、配列番号30で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE8(ATCC21555株由来、配列番号13で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE9(IFO3022株由来、配列番号14で表される塩基配列を有するDNA)が取得されていることを確認した。
一方、バチルス・プミルスNRRL B−12025由来のywfE遺伝子に相当する遺伝子(配列番号29で表される塩基配列を有するDNA)は以下のように取得した。
上記で調製したNRRL B−12025株の染色体DNAを鋳型にし、配列番号31および32で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いて、PCRを行った。PCRは、0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのZ−taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)、5μLのZ−taqポリメラーゼ用×10緩衝液(タカラバイオ社製)、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液50μLを調製し、98℃で5秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間の工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、約0.8kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該混合液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
上記で得られた各菌株染色体DNA由来の0.8kb断片とpGEM T−easy(プロメガ社製)を、ライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応を行い連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリDH5α株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
上記で得られた形質転換体からプラスミドを抽出して、約0.8kbの挿入DNA断片の塩基配列を決定したところ、配列番号29で表される塩基配列中の塩基番号358〜1160番からなる塩基配列が確認された。
次に該プラスミドをEcoRIで切断した後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した。該DNA断片をジーンクリーンIIキットを用いて精製した。約0.5μgの該精製DNA断片を、DIG−ハイプライムDNAラベリング&デテクションスターターキットI(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いて、DIGラベル化した。DIGラベル化は、該キット添付の説明書に従って行った。
上記で得られたDIGラベル化DNAを用いて、NRRL B−12025株の染色体DNAのサザン解析を行った。
NRRL B−12025株の染色体DNAをBamHI、EcoRI、HindIII、KpnI、PstI、SacI、SalIおよびSphIを用いてそれぞれ完全消化し、アガロース電気泳動によりDNA断片を分離した後、常法に従いナイロンメンブレンプラスチャージ(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)に転移させた。
UVを照射することにより、該ナイロン膜にDNA断片を固定した後、上記プローブDNAおよび該ナイロン膜を用いてサザンハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーションは、該プローブDNAと該ナイロン膜を65℃で16時間接触させ、その後該ナイロン膜を、0.1%SDSおよび2×SSCからなる溶液を用い、室温で5分間、2回洗浄し、さらに0.1%SDSおよび0.5×SSCからなる溶液を用い、65℃で15分間、2回洗浄することで行い、その他の操作、条件およびハイブリダイズしたDNAの検出は、上記したDIG−ハイプライムDNAラベリング&デテクション スターターキットIに添付されている説明書に準じて行った。
その結果、HindIIIおよびPstIの完全消化断片の3.5kbp付近に発色が見られた。
次に、NRRL B−12025株の染色体DNAをHindIIIおよびPstIを用いてそれぞれ完全消化し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した。それぞれの制限酵素消化DNAから3−4kbpの断片をジーンクリーンIIキットを用いて精製し、ライゲーションキットを用いて自己環化させた。
上記で決定した0.8kbのDNA断片の塩基配列に基づき、配列番号33および34で表される塩基配列を設計、合成し、上記で取得した環化DNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、10ngの環化DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのpyrobestポリメラーゼ(タカラバイオ社製)、5μLのpyrobestポリメラーゼ用×10緩衝液(タカラバイオ社製)、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液50μLを調製し、98℃で5秒間、55℃で30秒間、72℃で3分30秒間の工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、約3.0kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該混合液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
上記で得られたDNA断片とZero Blunt PCR Cloning Kit(インビトロジェン社製)とをライゲーションキットを用いて連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてその構造を解析することにより、ywfE遺伝子に相当する遺伝子を含むプラスミドであるpYWFE10(NRRL B−12025株由来、配列番号29で表される塩基配列を有するDNA)が得られていることを確認した。
上記で得られたpYWFE1〜pYWFE10に含まれるywfE遺伝子に相当する各遺伝子の塩基配列を塩基配列分析装置373A・DNAシークエンサーを用いて決定した。
pYWFE1、pYWFE6およびpYWFE7に含まれる遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列は、ywfE遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列と同一であったが、pYWFE2、pYWFE3、pYWFE4、pYWFE5、pYWFE8、pYWFE9およびpYWFE10に含まれる遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列は、ywfE遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列と異なっていた。
pYWFE2、pYWFE3、pYWFE4、pYWFE5、pYWFE8、pYWFE9、pYWFE10およびpYWFE1とpYWFE7に含まれるywfE遺伝子に相当する遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列を配列番号2〜7、35および1に、該遺伝子の塩基配列を配列番号9〜14、29、8および30にそれぞれ示した。
実験例7 C末端Hisタグ付加型組換え型ジペプチド合成酵素の精製
バチルス・サチルスATCC15245、ATCC6633、IAM1213、IAM1107、IAM1214、ATCC9466、IAM1033、ATCC21555、またはバチルス・アミノリケファシエンスIFO3022の染色体DNAを鋳型とし、実験例1記載のプライマーAおよびプライマーBをプライマーセットとして用いてPCRを行った。PCRは、0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間の工程を30回繰り返すことにより行った。
バチルス・プミルスNRRL B−12025の染色体DNAを鋳型とした場合は、配列番号36および37で表される塩基配列を有するDNAをプライマーセットとして用い、上記と同様の条件でPCRを行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、ywfE遺伝子断片に相当する約1.4kbのDNA断片がそれぞれ増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該混合液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
該溶解液のそれぞれ5μLを用い、増幅したDNAを制限酵素NcoIおよびBamHIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットを用いて、ywfE遺伝子に相当する遺伝子を含む1.4kbのDNA断片を回収した。
次にC末端Hisタグ付加型組換え体発現ベクターpQE60 0.2μgを制限酵素NcoIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により3.4kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたバチルス・サチルス168株のywfE遺伝子に相当する遺伝子を含む1.4kbのDNA断片、および3.4kbのDNA断片をライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応を行いそれぞれ連結した。該反応液を用いて大腸菌NM522株をカルシウムイオンを用いる方法により形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてそれらの構造を解析することにより、C末Hisタグ付加型遺伝子発現ベクターであるpQE60ywfE1(ATCC15245由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE2(ATCC6633由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE3(IAM1213由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE4(IAM1107由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE5(IAM1214由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE6(ATCC9466由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE7(IAM1033由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE8(ATCC21555由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE9(IFO3022由来の遺伝子を含有するベクター)、およびpQE60ywfE10(NRRL B−12025由来の遺伝子を含有するベクター)が取得されていることを確認した。
上記で得られたエシェリヒア・コリNM522/pQE60ywfE1〜NM522/pQE60ywfE10株を、それぞれ50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った太型試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を50μg/mlのアンピシリンを含む50mlのLB培地の入った250ml容の三角フラスコに接種し30℃で3時間培養した後、終濃度が1mmol/LになるようにIPTGを添加し、さらに30℃で4時間培養した。該培養液を遠心分離して得られた湿菌体から、HisTrapをその使用説明書に従って用いて、Hisタグ付加組換え型酵素を精製した。
実験例8 精製酵素を用いたジペプチドの生産
実験例7で得られた組換え型酵素0.04mg、100mmol/LのTris−HCl(pH8.0)、60mmol/Lの塩化マグネシウム、60mmol/LのATP、30mmol/LのL−Alaおよび30mmol/LのL−Glnからなる0.1mlの反応液を調製し、37℃で16時間反応を行った。
反応終了後、実験例3記載の方法により反応液を分析した結果、それぞれ、3.0〜3.5g/LのL−Ala−L−Glnおよび0.25〜0.3g/LのL−Ala−L−Alaが生成蓄積していることが確認された。
また、上記反応液組成からATPを除くとL−Ala−L−GlnおよびL−Ala−L−Alaは全く生成されなかった。
以上の結果から、実験例7で得られた遺伝子の産物は、いずれもATP存在下でL−AlaとL−GlnとからL−Ala−L−GlnおよびL−Ala−L−Alaを生成する活性を有することが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
第1図は、Hisタグ付加型ywfE遺伝子発現ベクターであるpQE60ywfEの構築過程を示す図である。図中のPT5はT5プロモーターを表す。
以下に本発明の実施例を示すが、下記実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
L−アラニル−L−グルタミン(L−Ala−L−Gln)の製造
1L中に5gのグルコース、5gの硫酸アンモニウム、1gのリン酸一カリウム、3gのリン酸二カリウム、0.5gの硫酸マグネシウム、10gの酵母エキス、および10gのペプトンを含む液体培地(pH7.0)30mlを300ml容三角フラスコに入れ、115℃で15分間殺菌した。該液体培地と同じ組成からなる斜面寒天培地(20g/lの寒天を含む。pH7.0)を用いて30℃で24時間培養したコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13286株を、該液体培地に1白金耳植菌し、30℃、120往復/分で17時間振とう培養した。培養後、培地を遠心分離して得られた湿菌体に、100g/Lになるように100mmol/lのホウ酸緩衝液(pH9.0)を加えて懸濁した。該菌体懸濁液を1mlずつ分取し、1)熱処理を行わない、2)50℃で10分間の熱処理、または3)55℃で10分間の熱処理を行った。これらの菌体懸濁液を、それぞれ1mlの反応液[20mmol/l EDTA、200mmol/l L−アラニンエチルエステル塩酸塩、400mmol/l L−グルタミン、100mmol/lホウ酸緩衝液、pH9.0]に添加し、全量を2mlとした後、30℃にて30分間インキュベートした。反応液を90℃で15分間加熱後遠心分離して得られた上清のL−Ala−L−Gln量をHPLCにて定量した。
HPLCによる分析は、反応生成物をジニトフェノール化法で誘導体化した後に、分離カラムに関東化学社製のLichrosorb−RP−18カラムを用い、溶離液として1%(v/v)リン酸、25%(v/v)アセトニトリルからなる溶液を用いて、0.7ml/分の流動速度で行った。結果を第2表に示す。

熱処理を行うことにより、L−Ala−L−Glnの生成量は3倍以上に増加した。
【実施例2】
ジペプチド生産菌株のL−Ala−L−Glnの分解活性
実施例1と同様にコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13286株を培養し、菌体懸濁液を取得した。該菌体懸濁液を1mlずつ分取し、1)熱処理を行わない、2)50℃で15分間の熱処理、または3)65℃で15分間の熱処理を行った。これらの菌体懸濁液をそれぞれ1mlの反応液[20mmol/l EDTA、2g/l L−Ala−L−Gln、100mmol/lホウ酸緩衝液、pH9.0]に添加し、全量を2mlとした後、30℃で30分間インキュベートした。反応液を90℃で15分間加熱後遠心分離して得られた上清のL−Ala−L−Gln量を、実施例1と同様にHPLCを用いて定量した。
その結果、30分間の反応で分解したL−Ala−L−Glnの量は、熱処理なしを100した場合、55℃で15分間の熱処理で84、65℃で15分間の熱処理で50であった。
上記結果は、熱処理によってL−Ala−L−Glnの分解活性が抑制されため、L−Ala−L−Glnの生成量が増加したことを示している。
【実施例3】
ジペプチド非生産菌株のL−Ala−L−Glnの分解活性
実施例1と同様にエシェリヒア・コリJM109株を培養し、菌体懸濁液を取得した。該菌体懸濁液を1mLずつ分取し、1)熱処理なし、2)55℃で15分間の熱処理、または3)65℃で15分間の熱処理を行った。これらの菌体懸濁液をそれぞれ1mlの反応液[20mmol/l EDTA、2g/l L−Ala−L−Gln、100mmol/lホウ酸緩衝液、pH9.0]に添加し、全量を2mlとした後、30℃にて30分間インキュベートした。反応液を90℃で15分間加熱後遠心分離して得られた上清のL−Ala−L−Gln量を、実施例1と同様にHPLCを用いて定量した。
その結果、30分間の反応で分解したL−Ala−L−Glnの量は、熱処理なしを100とした場合、55℃で15分間の熱処理で0、65℃で15分間の熱処理で7であった。
実施例1、2および上記結果から、ジペプチドの生成に関与する蛋白質をコードするDNA、例えば、配列番号1〜7、17〜19、または23で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAで形質転換され、ジペプチドを生産する能力を付与された微生物の培養物または培養物の処理物の熱処理物を酵素源に用いることにより、ジペプチドの生成量が著しく向上することがわかった。
【産業上の利用可能性】
本発明により、微生物の培養物またはその処理物を用いたジペプチドの製造法を提供することができる。
【配列表フリーテキスト】
配列番号25−人工配列の説明:合成DNA
配列番号26−人工配列の説明:合成DNA
配列番号27−人工配列の説明:合成DNA
配列番号28−人工配列の説明:合成DNA
配列番号31−人工配列の説明:合成DNA
配列番号32−人工配列の説明:合成DNA
配列番号33−人工配列の説明:合成DNA
配列番号34−人工配列の説明:合成DNA
配列番号36−人工配列の説明:合成DNA
配列番号37−人工配列の説明:合成DNA
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
41℃以上65℃以下で30秒間〜1時間の熱処理を施したジペプチドを生産する能力を有する微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源として用い、該酵素源、並びにアミノ酸アミド、アミノ酸エステルおよびアミノ酸からなる群より選ばれる1種以上の物質を水性媒体中に共存せしめ、該水性媒体中にジペプチドを生成、蓄積させ、該水性媒体から該ジペプチドを採取することを特徴とするジペプチドの製造法。
【請求項2】
ジペプチドを生産する能力を有する微生物が、アクロモバクター属、アシネトバクター属、アエロモナス属、アグロバクテリウム属、アルカリゲネス属、アースロバクター属、ベイジェリンキア属、ブレビバクテリウム属、クラビバクター属、クリセオバクテリウム属、エシェリヒア属、エンテロバクター属、エルビニア属、フラボバクテリウム属、クルイヘラ属、ミクロバクテリウム属、ミクロコッカス属、ミコプラナ属、パントテア属、プロピオニバクテリウム属、リストネラ属、リゾビウム属、ロドコッカス属、サルモネラ属、ザルチナ属、セラチア属、スタフィロコッカス属、ステノトロホモナス属、ストレプトマイセス属、ビブリオ属、キサントモナス属、ブレラ属、キャンディダ属、クリプトコッカス属、フィロバシディウム属、ジオトリクム属、パキソレン属、ロドスポリジウム属、ロドトルラ属、サッカロマイセス属、スポロボロマイセス属、トレメラ属、トルラスポーラ属、トルロプシス属、グルコンアセトバクター属、アセトバクター属、グルコノバクター属、アサイア属、ズッカリバクター属、アクチノマデュラ属、キタサトスポリア属、ミクロモノスポーラ属、ノカルディア属、エルスコフィア属、サッカロスリクス属、ストレプトバーティシリウム属、ハフニア属、ラクトバチルス属、ナイセリア属、サーモプラズマ属、コリネバクテリウム属、シュードモナス属、バチルス属、トリコスポロン属またはステリグマトマイセス属に属する微生物である請求項1記載の製造法。
【請求項3】
ジペプチドを生産する能力を有する微生物が、以下の[1]〜[4]のいずれかに記載の蛋白質を生産する能力を有する微生物である請求項1または2記載の製造法。
[1]配列番号1〜7および35のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[2]配列番号1〜7および35のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつジペプチドの合成活性を有する蛋白質
[3]配列番号1〜7および35のいずれかで表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつジペプチドの合成活性を有する蛋白質
[4]配列番号15で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつジペプチドの合成活性を有する蛋白質
【請求項4】
ジペプチドを生産する能力を有する微生物が、以下の[1]〜「4]のいずれかに記載のDNAを有する微生物である請求項1または2記載の製造法。
[1]請求項3の[1]〜[4]のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNA
[2]配列番号8〜14、29および30のいずれかで表される塩基配列を有するDNA
[3]配列番号8〜14、29および30のいずれかで表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつジペプチド合成活性を有する蛋白質をコードするDNA
[4]配列番号16で表される塩基配列と80%以上の相同性を有する塩基配列を含み、かつジペプチド合成活性を有する蛋白質をコードするDNA
【請求項5】
ジペプチドを生産する能力を有する微生物が、プロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質またはL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質を生産する微生物である請求項1または2記載の製造法。
【請求項6】
プロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質が、以下の[1]〜[3]のいずれかに記載の蛋白質である請求項5記載の製造法。
[1]配列番号17〜19のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[2]配列番号17〜19のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつプロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質
[3]配列番号17〜19のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつプロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質
【請求項7】
プロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質を生産する微生物が、以下の[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAを有する微生物である請求項5記載の製造法。
[1]請求項6の[1]〜[3]のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNA
[2]配列番号20〜22のいずれかで表される塩基配列を有するDNA
[3]配列番号20〜22のいずれかで表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロリンイミノペプチダーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
【請求項8】
L−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質が、以下の[1]〜[3]のいずれかに記載の蛋白質である請求項5記載の製造法。
[1]配列番号23で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[2]配列番号23で表されるアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質
[3]配列番号23で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質
【請求項9】
L−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質を生産する微生物が、以下の[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAを有する微生物である請求項5記載の製造法。
[1]請求項8の[1]〜[3]のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNA
[2]配列番号24で表される塩基配列を有するDNA
[3]配列番号24で表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつL−アミノ酸アミドハイドロラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
【請求項10】
ジペプチドを生産する能力を有する微生物が、請求項4の[1]〜[4]、請求項7の[1]〜[3]、および請求項9の[1]〜[3]のいずれかに記載のDNAとベクターDNAが連結した組換え体DNAを有する微生物である請求項1記載の製造法。
【請求項11】
組換え体DNAを有する微生物が、エシェリヒア属、バチルス属、シュードモナス属、コリネバクテリウム属またはサッカロマイセス属に属する微生物である請求項10記載の製造法。
【請求項12】
アミノ酸がL−アミノ酸、グリシンおよびβ−アラニンから選ばれるアミノ酸である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項13】
L−アミノ酸が、L−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸、L−アザセリン、L−テアニン、L−4−ヒドロキシプロリン、L−3−ヒドロキシプロリン、L−オルニチンおよびL−6−ジアゾ−5−オキソノルロイシンから選ばれる1種以上のL−アミノ酸である請求項12に記載の製造法。
【請求項14】
アミノ酸エステルが、L−アラニンエステル、グリシンエステル、L−バリンエステル、L−イソロイシンエステル、L−メチオニンエステル、L−フェニルアラニンエステル、L−セリンエステル、L−スレオニンエステル、L−グルタミンエステル、L−チロシンエステル、L−アルギニンエステル、L−アスパラギン酸−α−エステル、L−アスパラギン酸−β−エステル、L−ロイシンエステル、L−アスパラギンエステル、L−リジンエステル、L−アスパラギン酸−α、β−ジメチルエステルおよびL−グルタミン−γ−エステルからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸エステルであり、かつアミノ酸が、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−アスパラギン、グリシン、L−アラニン、L−ロイシン、L−メチオニン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−セリン、L−スレオニン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニンおよびL−ヒスチジンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸である請求項1、2、5〜7、10および11のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項15】
アミノ酸アミドが、L−アラニンアミド、グリシンアミドおよびL−アスパラギン酸−α−アミドからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸アミドであり、かつアミノ酸が、L−グルタミン酸、L−アスパラギン、L−グルタミン、グリシン、L−アラニン、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−メチオニン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−セリン、L−スレオニン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニンおよびL−ヒスチジンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸である請求項1、2、5および8〜11のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項16】
培養物の処理物が、培養物の濃縮物、培養物の乾燥物、培養物を遠心分離して得られる菌体、該菌体の乾燥物、該菌体の凍結乾燥物、該菌体の界面活性剤処理物、該菌体の溶媒処理物、該菌体の酵素処理物、または該菌体の固定化物である請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造法。

【国際公開番号】WO2005/052153
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【発行日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515852(P2005−515852)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017991
【国際出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】