説明

ジペプチド誘導体及びその製造方法

【課題】症状や体質にかかわらず、発毛・育毛を促進し、種々の脱毛症に有効な新規ジペプチド及びその製造方法、並びにそれを含有する育毛剤の提供。
【解決手段】次の一般式(1a)


(式中、R1は水素原子又は水酸基、低級アルコキシ基もしくはヒドロキシ低級アルコキシ基で置換されていてもよい低級アルキル基を示し、Aは疎水性アミノ酸残基又は芳香族アミノ酸残基を示す(ただしR1が水素原子のときAはグリシン残基又はアラニン残基ではない))
で表されるジペプチド誘導体又はその塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β−アミノ酸を含有する新規ジペプチド誘導体、その製造方法及びジペプチド誘導体を有効成分とする育毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
男性型脱毛症、円形脱毛症等の脱毛症の多くは、未だその発症機序の詳細が不明である。従来これらの脱毛症の治療には、経験的に、血行促進剤、免疫抑制剤、代謝促進剤、ビタミン剤、抗男性ホルモン剤等の薬剤が用いられている。
しかしながら、これらの薬剤は、症状や体質によっては効果が異なる場合が多く、その効果も未だ満足できるのではない。また、多量に使用すると適応部位に不快な刺激感を与えたり、継続使用により皮膚炎が発生するといった場合もある。
【0003】
一方、ジペプチドは、アミノ酸にはない多様な生理機能が注目され、医薬品を始め様々な分野で利用されている。例えばアラニルグルタミンを含有するジペプチドは毛髪の成長を促進することが知られている(特許文献1)。しかしながら、一般的に、α−アミノ酸とα−アミノ酸とから成るジペプチドの構造は不安定で、分子内環化反応により6員環構造を形成し易いため、保存安定性に欠ける。
【0004】
また、従来、ジペプチドの製造方法としては、抽出法、合成法、酵素法、発酵法の4種類が報告されている。このうち、合成法としては、原料α−アミノ酸の官能基を保護し、縮合剤を用いて2つのα−アミノ酸を縮合させる方法、ホスゲンを利用する方法等が知られている(特許文献2など)。しかしながら、保護アミノ酸は高価であり、ホスゲンは毒性が高く厳密な取り扱いが要求されるため、経済的・効率的な方法とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−32726号公報
【特許文献2】特開昭51−95017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、症状や体質にかかわらず、発毛・育毛を促進し、種々の脱毛症に有効な新規ジペプチド及びその製造方法、並びにそれを含有する育毛剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はペプチド誘導体について研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表されるβ−アミノ酸を含有するジペプチド誘導体が分子内環化反応を起こさずに安定であり、かつ優れた毛再生作用を有することを見出した。またこのジペプチド誘導体を製造するにあたり、原料α−アミノ酸とジケテンとを縮合させてアセトアセチルアミノ酸を得、次いで、当該化合物にアミン化合物を反応させてアミノ化した後、これを還元すれば、簡便かつ安価に目的とするジペプチドを製造できることを見出した。
すなわち、本発明は次の一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は水素原子又は水酸基、低級アルコキシ基もしくはヒドロキシ低級アルコキシ基で置換されていてもよい低級アルキル基を示し、Aはアミノ酸残基を示す。)
で表されるジペプチド誘導体又はその塩を有効成分とする育毛剤を提供するものである。
また、上記一般式(1)中、R1が水素原子であり、Aがグリシン残基、アラニン残基又はメチオニン残基であるジペプチドを除く化合物は新規である。従って、本発明は、次の一般式(1a)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R1は水素原子又は水酸基、低級アルコキシ基もしくはヒドロキシ低級アルコキシ基で置換されていてもよい低級アルキル基を示し、Aはアミノ酸残基を示す(ただしR1が水素原子であり、Aはグリシン残基、アラニン残基又はメチオニン残基ではない))
で表されるジペプチド誘導体又はその塩を提供するものである。
また、本発明は、α−アミノ酸とジケテンとを縮合反応させて一般式(2)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R2はアミノ酸側鎖を示す)
で表されるアセトアセチルアミノ酸を得、次いで当該化合物に一般式(3)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、R1は水素原子又は水酸基、低級アルコキシ基もしくはヒドロキシ低級アルコキシ基で置換されていてもよい低級アルキル基を示す)
で表されるアミン化合物を反応させてアミノ化した後、還元することを特徴とする一般式(1)
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、R1は水素原子又は水酸基、低級アルコキシ基もしくはヒドロキシ低級アルコキシ基で置換されていてもよい低級アルキル基を示し、Aはアミノ酸残基を示す。)
で表されるジペプチド誘導体又はその塩の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、安価で取り扱いのし易い試薬を用いて、簡便かつ高収率にβ−アミノ酸を含有するジペプチド誘導体又はその塩を製造することができる。また、本発明の育毛剤は、発毛・養毛・育毛効果に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一般式(1)及び(1a)中、R1は、水素原子又は水酸基、低級アルコキシ基もしくはヒドロキシ低級アルコキシ基で置換されていてもよい低級アルキル基を示す。
低級アルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。これらのうち、エチル、n−プロピルが特に好ましい。ここで、アルキル基に置換し得る低級アルコキシ基としては、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。これらのうち、メトキシ基が特に好ましい。
また、アルキル基に置換し得るヒドロキシ低級アルコキシ基としては、ヒドロキシ基を有する前記炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が挙げられ、2−ヒドロキシエトキシ基が好ましい。
1としては、水素原子、エチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−メトキシプロピル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基が特に好ましい。
【0020】
一般式(1)及び(1a)中、Aで示されるアミノ酸残基としては、疎水性アミノ酸、芳香族アミノ酸、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、親水性アミノ酸、含硫アミノ酸のいずれの残基でもよい。例えば疎水性アミノ酸残基としては、グリシン残基、アラニン残基、バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、プロリン残基が挙げられ;芳香族アミノ酸残基としては、フェニルアラニン残基、チロシン残基、トリプトファン残基が挙げられ;酸性アミノ酸残基としては、グルタミン酸残基、アスパラギン酸残基が挙げられ;塩基性アミノ酸残基としては、ヒスチジン残基、アルギニン残基、リシン残基挙げられ;親水性アミノ酸残基としては、セリン残基、トレオニン残基、グルタミン残基、アスパラギン残基が挙げられ;含硫アミノ酸残基としては、メチオニン残基、システイン残基が挙げられる。これらのうち、疎水性アミノ酸残基、芳香族アミノ酸残基が好ましく、バリン残基、ロイシン残基、フェニルアラニン残基が特に好ましい。
【0021】
一般式(1)及び(1a)は、1つ以上の不斉炭素を有するが、いずれも、R−体、S−体、ラセミ体のいずれでもよい。
【0022】
ジペプチド誘導体の塩としては、薬学上許容される塩であれば特に制限されないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルギニン、リシン等アミノ酸塩;塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩のような鉱酸の酸付加塩;クエン酸塩、酢酸塩のような有機酸の酸付加塩を挙げることができる。これらのうち、特にアルカリ金属塩、アミノ酸塩が好ましい。また、上記ジペプチド誘導体又はその塩は水和物の形態であってもよい。
【0023】
一般式(1)で表される本発明化合物の具体例としては、例えば、N−(3−アミノブチリル)フェニルアラニン、N−(3−(2−ヒドロキシエチルアミノ)ブチリル)フェニルアラニン、N−(3−(3−メトキシプロピルアミノ)ブチリル)フェニルアラニン、N−(3−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ)ブチリル)フェニルアラニン、N−(3−(3−プロピルアミノ)ブチリル)フェニルアラニン、N−(3−アミノブチリル)ロイシン、N−(3−(2−ヒドロキシエチルアミノ)ブチリル)ロイシン、N−(3−(3−メトキシプロピルアミノ)ブチリル)ロイシン、N−(3−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ)ブチリル)ロイシン、N−(3−(3−プロピルアミノ)ブチリル)ロイシン、N−(3−アミノブチリル)バリン、N−(3−(2−ヒドロキシエチルアミノ)ブチリル)バリン、N−(3−(3−メトキシプロピルアミノ)ブチリル)バリン、N−(3−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ)ブチリル)バリン、N−(3−(3−プロピルアミノ)ブチリル)バリン、N−(3−(2−ヒドロキシエチルアミノ)ブチリル)グリシン、それらの塩及びそれらの水和物から選ばれる化合物が挙げられる。
【0024】
本発明のジペプチド誘導体は、例えば次に示す方法に従って製造することができる。すなわち、α−アミノ酸とジケテンを塩基の存在下又は非存在下に縮合反応させてアセトアセチルアミノ酸(2)を得、これを、アミン化合物(3)によりアミノ化して化合物(4)とした後、水素下に接触還元することにより本発明化合物(1)を得ることができる。
【0025】
【化6】

【0026】
(式中、R2はアミノ酸側鎖を示し、R1及びAは前記と同じ)
以下、上記各反応工程毎に説明する。
【0027】
第1工程は、J.Chem.Soc.(C),350−352(1969)などに記載の方法に従って行うことができる。例えば、原料α−アミノ酸に、水、及び必要量の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基を加えた後、−10℃〜室温付近で、1〜2当量のジケテンを加え、1〜10時間程度攪拌することで達成される。
【0028】
第2工程は、得られた化合物(2)とアミン化合物(3)を、水;メタノール、エタノール等のアルコール系等の溶媒に溶解後、必要量の塩酸、硫酸等の無機酸やギ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸を添加し、室温〜溶媒の沸点付近で、必要に応じて、超音波(使用機器例:アズワン株式会社製超音波洗浄器US)を使用し、1分〜20時間攪拌することにより達成される。アミン化合物(3)としては、アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン等の低級アルキルアミン;2−アミノエタノール、2−アミノプロパノール等のヒドロキシ低級アルキルアミン;3−メトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン等の低級アルコキシアルキルアミン;2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミン等のヒドロキシ低級アルコキシアルキルアミン等の第1級アミンが挙げられる。これらのうち、特にアンモニア、エチルアミン、プロピルアミン、2−アミノエタノール、3−メトキシプロピルアミン、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミンが好ましい。
反応におけるアミン化合物(3)の使用量は、化合物(2)に対して1〜5当量、特に1〜3当量使用するのが好ましい。
【0029】
第3工程は、得られた化合物(4)を水;メタノール、エタノール等のアルコール系等の溶媒に溶解後、パラジウム−炭素、酢酸パラジウム等のパラジウム系触媒、白金−炭素、酸化白金等の白金系触媒、ロジウム−炭素等のロジウム系触媒、酢酸ルテニウム等のルテニウム系触媒などの各種水素化触媒を添加し、必要に応じて、塩酸、硫酸等の無機酸やギ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸、BINAPなどのキラルなリガンドを使用し、1〜100気圧程度の水素下にて、室温〜150℃程度の加熱下で1時間から30時間程度攪拌することにより達成される。
本発明のジペプチド誘導体は、上記の方法によって得られるが、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、溶媒抽出、濾過、再結晶、各種クロマトグラフィー等を用いることにより単離精製が可能である。また必要に応じて、常法によって前記した所望の塩又は水和物にすることもできる。
【0030】
かくして得られる本発明化合物は、後記試験例に示すように、優れた毛再生作用を有することから、発毛・養毛・育毛作用及び脱毛予防効果を奏する医薬部外品、医薬品、毛髪化粧料として使用可能な育毛剤とすることができる。なお、本発明において、育毛には、発毛、養毛及び脱毛予防の概念が包含されるものとする。
【0031】
本発明の育毛剤の投与形態としては、経口剤、非経口剤の何れでもよいが、外用剤が好ましく、軟膏、ローション、トニック、スプレー、懸濁液、乳剤等の塗布剤とするのが好ましい。これらの剤型とするにあたっては、上記化合物以外に、蒸留水、各種油剤、界面活性剤、ゲル化剤、防腐剤、酸化防止剤、溶剤、アルコール類、キレート剤、増粘剤、色素、香料、水等を適宜配合することができる。
【0032】
本発明の育毛剤は、上記化合物の他に、通常用いられる養毛薬効剤、例えば抗炎症剤、細胞賦活剤、皮脂分泌抑制剤、末梢血管拡張剤、アミノ酸類、ビタミン類等を必要に応じて適宜配合し、育毛効果の向上を図ることができる。また、その他医薬品等の成分として一般に使用されている保湿剤、紫外線吸収剤等を任意に組み合わせて配合することができる。
【0033】
本発明の育毛剤におけるジペプチド誘導体又はその塩の含有量は、添加形態や投与形態によっても異なるが、例えば溶媒抽出乾燥物換算で、0.001〜20質量%、特に0.01〜10質量%とするのが好ましい。
【実施例】
【0034】
既知化合物であるアセトアセチルフェニルアラニン、アセトアセチルバリン、アセトアセチルロイシン、アセトアセチルアラニン、アセトアセチルグリシンは、文献J.Chem.Soc.(C),350−352(1969)記載の手法に従って合成した。
【0035】
実施例1 N−(3−(2−ヒドロキシエチルアミノ)ブチリル)フェニルアラニン(化合物1)の合成
【0036】
【化7】

【0037】
30mlナスフラスコに、アセトアセチルフェニルアラニン500mg(2.0mmol)、エタノールアミン267mg(2.2eq)、メタノール250mgを加え、溶解させた後、酢酸14mg(0.1eq)を入れ、15分間超音波を照射した。減圧濃縮後、得られた粗生成物800mgのうち、540mgをメタノール20mlに溶解した後、酸化白金58mgを入れた100mlオートクレーブに入れ、酢酸180mg添加後、水素圧50気圧で15時間水素添加した。ろ過後、減圧濃縮、凍結乾燥して得られた固体を、エタノールで洗浄して表記化合物303mg(収率76%)を得た。
【0038】
性状 無色固体(220℃分解)
MS+:295
IR(U−ATR法,cm-1):3277,1644,1557,1390,1068,719,700.
1H−NMR(D2O,ppm):0.84−0.94(m,3H),2.16−2.46(m,2H),2.59(dd,J=14,10Hz,1H),2.78−2.90(m,2H),2.93(dd,J=14,8Hz,1H),3.12−3.32(m,1H),3.45−3.56(m,2H),4.18−4.28(m,1H),6.95−7.18(m,5H).
【0039】
実施例2 N−(3−アミノブチリル)フェニルアラニン(化合物2)の合成
【0040】
【化8】

【0041】
実施例1と同様の手法により、エタノールアミンを、7N−NH3メタノール溶液に代えて合成した。
【0042】
性状 無色固体
MS+:251
IR(U−ATR法,cm-1):1638,1578,1546,1399,722,696.
1H−NMR(D2O,ppm):0.98−1.21(m,3H),2.36−2.65(m,2H),2.78−2.96(m,1H),3.14−3.34(m,1H),3.40−3.64(m,1H),4.41−4.57(m,1H),7.18−7.45(m,5H).
【0043】
実施例3 N−(3−(3−メトキシプロピルアミノ)ブチリル)フェニルアラニン(化合物3)の合成
【0044】
【化9】

【0045】
実施例1と同様の手法により、エタノールアミンを、3−メトキシプロピルアミンに代えて合成した。
【0046】
性状 無色固体
MS+:323
IR(U−ATR法,cm-1):1642,1563,1380,1302,1117,725,698.
1H−NMR(D2O,ppm):0.82−0.92(m,3H),1.55−1.70(m,2H),2.16−2.44(m,2H),2.59(dd,J=14,10Hz,1H),2.70−2.90(m,2H),3.00(dd,J=14,4Hz,1H),3.06(s,3H),3.16(dd,J=14,7Hz,1H),3.26(t,J=6Hz,2H),4.18−4.30(m,1H),6.98−7.15(m,5H).
【0047】
実施例4 N−(3−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ)ブチリル)フェニルアラニン(化合物4)の合成
【0048】
【化10】

【0049】
実施例1と同様の手法により、エタノールアミンを、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミンに代えて合成した。
【0050】
性状 無色固体
MS+:339
IR(U−ATR法,cm-1):3260,1644,1564,1387,1122,1067,727,698.
1H−NMR(D2O,ppm):0.82−0.92(m,3H),2.14−2.46(m,2H),2.58(dd,J=14,10Hz,1H),2.80−3.04(m,3H),3.14−3.38(m,3H),3.40−3.50(m,4H),4.17−4.28(m,1H),6.98−7.15(m,5H).
【0051】
実施例5 N−(3−(3−プロピルアミノ)ブチリル)フェニルアラニン(化合物5)の合成
【0052】
【化11】

【0053】
実施例1と同様の手法により、エタノールアミンを、プロピルアミンに代えて合成した。
【0054】
性状 無色固体
IR(U−ATR法,cm-1):1650,1561,1388,741.
1H−NMR(D2O,ppm):0.88−1.10(m,9H),1.37(d,J=7Hz,3H),1.60−1.72(m,2H),2.02−2.24(m,1H),2.62−2.85(m,2H),3.00−3.15(m,1H),3.58−3.78(m,1H),4.06(d,J=6Hz,1H).
【0055】
実施例6 N−(3−アミノブチリル)ロイシン(化合物6)の合成
【0056】
【化12】

【0057】
実施例1と同様の手法により、アセトアセチルフェニルアラニンをアセトアセチルロイシンに、エタノールアミンを、7N−NH3メタノール溶液に代えて合成した。
【0058】
性状 無色固体
IR(U−ATR法,cm-1):1645,1560,1398,731.
1H−NMR(D2O,ppm):0.82−1.00(m,6H),1.30−1.42(m,3H),1.52−1.70(m,3H),2.62−2.80(m,2H),3.62−3.88(m,1H),4.10−4.25(m,1H).
【0059】
実施例7 N−(3−(2−ヒドロキシエチルアミノ)ブチリル)ロイシン(化合物7)の合成
【0060】
【化13】

【0061】
実施例1と同様の手法により、アセトアセチルフェニルアラニンをアセトアセチルロイシンに代えて合成した。
【0062】
性状 無色固体
IR(U−ATR法,cm-1):1643,1560,1399,1068,729.
1H−NMR(D2O,ppm):0.85−1.00(m,6H),1.32−1.44(m,3H),1.55−1.70(m,3H),2.60−2.88(m,2H),3.62−3.80(m,1H),3.80−3.92(m,2H),4.15−4.26(m,1H).
【0063】
実施例8 N−(3−(3−メトキシプロピルアミノ)ブチリル)ロイシン(化合物8)の合成
【0064】
【化14】

【0065】
実施例1と同様の手法により、アセトアセチルフェニルアラニンをアセトアセチルロイシンに、エタノールアミンを、3−メトキシプロピルアミンに代えて合成した。
【0066】
性状 無色固体
IR(U−ATR法,cm-1):1639,1564,1384,1292,1122,728.
1H−NMR(D2O,ppm):0.85−1.00(m,6H),1.32−1.42(m,3H),1.52−1.72(m,3H),1.90−2.08(m,2H),2.60−2.88(m,2H),3.08−3.30(m,2H),3.37(s,3H),3.52−3.75(m,3H),4.15−4.26(m,1H).
【0067】
実施例9 N−(3−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ)ブチリル)ロイシン(化合物9)の合成
【0068】
【化15】

【0069】
実施例1と同様の手法により、アセトアセチルフェニルアラニンをアセトアセチルロイシンに、エタノールアミンを、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミンに代えて合成した。
【0070】
性状 無色固体
IR(U−ATR法,cm-1):1644,1563,1387,1122,1066,726.
1H−NMR(D2O,ppm):0.82−0.98(m,6H),1.32−1.44(m,3H),1.52−1.70(m,3H),2.60−2.86(m,2H),3.25−3.40(m,2H),3.60−3.86(m,7H),4.12−4.25(m,1H).
【0071】
実施例10 N−(3−(3−プロピルアミノ)ブチリル)ロイシン(化合物10)の合成
【0072】
【化16】

【0073】
実施例1と同様の手法により、アセトアセチルフェニルアラニンをアセトアセチルロイシンに、エタノールアミンを、プロピルアミンに代えて合成した。
【0074】
性状 無色固体
IR(U−ATR法,cm-1):1640,1566,1382,1290,730.
1H−NMR(D2O,ppm):0.82−1.05(m,6H),1.32−1.42(m,3H),1.54−1.82(m,5H),2.58−2.85(m,2H),2.95−3.20(m,2H),3.58−3.78(m,1H),4.14−4.26(m,1H).
【0075】
実施例11 N−(3−アミノブチリル)バリン(化合物11)の合成
【0076】
【化17】

【0077】
実施例1と同様の手法により、アセトアセチルフェニルアラニンをアセトアセチルバリンに、エタノールアミンを、7N−NH3メタノール溶液に代えて合成した。
【0078】
性状 無色固体
IR(U−ATR法,cm-1):1644,1558,1489,1400,741.1H−NMR(D2O,ppm):0.85−1.08(m,6H),1.30−1.45(m,3H),2.00−2.25(m,1H),2.62−2.84(m,2H),3.55−3.90(m,1H),4.02−4.12(m,1H).
【0079】
実施例12 N−(3−(2−ヒドロキシエチルアミノ)ブチリル)バリン(化合物12)の合成
【0080】
【化18】

【0081】
実施例1と同様の手法により、アセトアセチルフェニルアラニンをアセトアセチルバリンに代えて合成した。
【0082】
性状 無色固体
IR(U−ATR法,cm-1):1642,1558,1401,1071,1032,755.
1H−NMR(D2O,ppm):0.60−0.70(m,6H),1.10(d,J=7Hz,3H),1.75−1.95(m,1H),2.49(d,J=12Hz,2H),2.85−3.10(m,2H),3.40−3.65(m,3H),3.78(d,J=6Hz,1H).
13C−NMR(D2O,ppm):27.0,28.6,30.2,41.4,48.3,48.8,57.7,57.8,63.0,68.1,72.3,182.8,182.9,189.8
【0083】
実施例13 N−(3−(3−メトキシプロピルアミノ)ブチリル)バリン(化合物13)の合成
【0084】
【化19】

【0085】
実施例1と同様の手法により、アセトアセチルフェニルアラニンをアセトアセチルバリンに、エタノールアミンを、3−メトキシプロピルアミンに代えて合成した。
【0086】
性状 無色固体
IR(U−ATR法,cm-1):1640,1566,1390,1123,751,735.
1H−NMR(D2O,ppm):0.88−1.04(m,6H),1.32−1.46(m,3H),1.90−2.25(m,3H),2.72−2.82(m,2H),3.06−3.30(m,2H),3.37(s,3H),3.52−3.76(m,3H),4.05−4.12(m,1H).
【0087】
実施例14 N−(3−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ)ブチリル)バリン(化合物14)の合成
【0088】
【化20】

【0089】
実施例1と同様の手法により、アセトアセチルフェニルアラニンをアセトアセチルバリンに、エタノールアミンを、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミンに代えて合成した。
【0090】
性状 無色固体
IR(U−ATR法,cm-1):1630,1565,1403,1121,1069,745.
1H−NMR(D2O,ppm):0.85−1.04(m,6H),1.34(d,J=7Hz,3H),2.02−2.25(m,1H),2.60−2.85(m,2H),3.16−3.32(m,2H),3.52−3.88(m,7H),4.07(d,J=6Hz,1H).
【0091】
実施例15 N−(3−(3−プロピルアミノ)ブチリル)バリン(化合物15)の合成
【0092】
【化21】

【0093】
実施例1と同様の手法により、アセトアセチルフェニルアラニンをアセトアセチルバリンに、エタノールアミンを、プロピルアミンに代えて合成した。
【0094】
性状 無色固体
IR(U−ATR法,cm-1):1650,1561,1388,741.
1H−NMR(D2O,ppm):0.88−1.10(m,9H),1.37(d,J=7Hz,3H),1.60−1.72(m,2H),2.02−2.24(m,1H),2.62−2.85(m,2H),3.00−3.15(m,1H),3.58−3.78(m,1H),4.06(d,J=6Hz,1H).
【0095】
実施例16 N−(3−(2−ヒドロキシエチルアミノ)ブチリル)グリシン(化合物16)の合成
【0096】
【化22】

【0097】
実施例1と同様の手法により、アセトアセチルフェニルアラニンをアセトアセチルグリシンに代えて合成した。
【0098】
性状 無色固体
IR(U−ATR法,cm-1):1620,1558,1398,1372,1315,1245,1029,726.
1H−NMR(D2O,ppm):1.38−1.42(m,3H),2.70−2.80(m,2H),3.18−3.24(m,1H)3.26−3.32(m,1H),3.70−3.80(m,3H),3.82−3.92(m,2H).
【0099】
試験例1
(評価方法)ヒト表皮細胞とヒト毛乳頭細胞の混合培養系
ヒト頭髪毛乳頭細胞は東洋紡績株式会社より購入し、毛乳頭細胞の継代は以下のように行った。サブコンフルエントに達した細胞をダルベッコ改変PBS(Ca、Mg不含、GIBCO BRL)にて2回洗浄し、0.05%トリプシン−EDTA0.5mL/25cm2(東洋紡績株式会社)を加えて室温にて2分間放置した。細胞がはがれた後に等容量のトリプシン中和液(0.5mL/25cm2)(東洋紡積株式会社)を加えてトリプシン反応を停止させ、ダルベッコ改変PBSにて洗浄して細胞浮遊液を回収した。これを冷却低速遠心機にて1000rpm、10分間遠心し、上清を吸引除去した後、毛乳頭細胞溶液PCGM(東洋紡積株式会社)にて懸濁した。細胞数を血球計算版にて計測し、1.5×103cells/Well(PCGMサプリメントフリー)を96穴プレートに播種した。ヒト表皮細胞は、角化細胞用無血清培地(サプリメント含有GIBCO BRL製)を用い75cm2フラスコで培養した。サブコンフルエントに達した細胞をダルベッコ改変PBS(Ca、Mg不含、GIBCO BRL)にて2回洗浄し、プロナーゼ溶液(KYOKUTO)を加えて37℃にて3分間放置した。細胞がはがれた後に等容量の角化細胞用無血清培地(サプリメント含有GIBCO BRL製)加えて反応を停止させ細胞浮遊液を回収した。これを冷却低速遠心機にて1000rpm、5分間遠心し、上清を吸引除去した後、角化細胞用無血清培地(サプリメント不有GIBCO BRL製)にて懸濁した。細胞数を血球計算版にて計測し、1.5×103cells/Wellを毛乳頭細胞を播種した96穴培養プレート(Falcon製)に播種した。37℃にてCO2インキュベーター中で培養し(CO2濃度0.5%)、翌日、本発明化合物10mMエタノール水溶液を、100〜100000倍に希釈して添加した。さらに1日培養後、Cell proliferation ELISA、BrdU(colorimetic)(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)キットを用いて細胞の増殖能を評価した。
【0100】
[BrdU取り込量測定方法]
各細胞に培養液で希釈した BrdU 標識溶液を10μL/well加え、37℃にて4時間培養後標識溶液を除去し、キットに付属のFix Denatを200μL/well加えて30分間室温にて放置し、細胞の固定とDNAの変性を行った。FixDenatを除去し、キットに付属の抗−BrdU−POD反応液を100μL/well加え、90分間放置した。その後、反応液を除去し、キットに付属の洗浄液を 200μL/well加えてwellを洗浄し、これをさらに2回繰り返した。洗浄液を除去した後、キットに付属の基質液を100μL/well加えて5〜10分間室温にて放置し、370nmの吸光度を測定してDNA合成活性を評価した。コントロールの値を100とし、本発明化合物の値を計算した。その結果を表1に示す。
表1より、本発明化合物には、優れた育毛作用があることが示された。
【0101】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1a)
【化1】

(式中、R1は水素原子又は水酸基、低級アルコキシ基もしくはヒドロキシ低級アルコキシ基で置換されていてもよい低級アルキル基を示し、Aは疎水性アミノ酸残基又は芳香族アミノ酸残基を示す(ただしR1が水素原子のときAはグリシン残基又はアラニン残基ではない))
で表されるジペプチド誘導体又はその塩。
【請求項2】
Aがバリン残基、ロイシン残基又はフェニルアラニン残基である請求項1記載のジペプチド誘導体又はその塩。
【請求項3】
1が、水素原子、2−ヒドロキシエチル基、3−プロピル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基、3−メトキシプロピル基である請求項1又は2記載のジペプチド誘導体又はその塩。
【請求項4】
α−アミノ酸とジケテンとを縮合反応させて一般式(2)
【化2】

(式中、R2はアミノ酸側鎖を示す)
で表されるアセトアセチルアミノ酸を得、次いで、当該化合物に一般式(3)
【化3】

(式中、R1は水素原子又は水酸基、低級アルコキシ基もしくはヒドロキシ低級アルコキシ基で置換されていてもよい低級アルキル基を示す)
で表されるアミン化合物を反応させてアミノ化した後、還元することを特徴とする一般式(1)
【化4】

(式中、R1は水素原子又は水酸基、低級アルコキシ基もしくはヒドロキシ低級アルコキシ基で置換されていてもよい低級アルキル基を示し、Aはアミノ酸残基を示す)
で表されるジペプチド誘導体又はその塩の製造方法。
【請求項5】
アミン化合物が、アンモニア、プロピルアミン、エタノールアミン、3−メトキシプロピルアミン及び2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミンから選ばれる請求項4記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−21013(P2012−21013A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195125(P2011−195125)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【分割の表示】特願2006−177258(P2006−177258)の分割
【原出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】