説明

ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛、その製造方法、そのシリコーンオイルスラリーおよびそれらを配合した化粧料

【課題】 分散性が優れ、化粧料やシリコーンオイルスラリーの調製にあたって、高配合しても粘度の上昇が少ない微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の表面処理品を提供する。
【解決手段】 平均粒子径5〜100nmの微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛を基材とし、該基材に対してジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの質量比10:1〜10:5の混合物を添加して、基材の微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の表面にジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物を該基材に対して10〜30質量%で被覆することによって、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛を構成し、それをシリコーンオイルに分散させてシリコーンオイルスラリーを構成し、また、それを配合して化粧料を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマー被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛、その製造方法、そのシリコーンオイルスラリーおよびそれらを配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
最大粒子径が0.1μm(100nm)以下の微粒子酸化チタンは、人体に対する安全性が高く、かつ可視部での透明性が優れ、また、紫外部での遮蔽能を有することから、それらの特性を生かして、日焼け止め化粧料などに配合されているが(特許文献1)、この微粒子酸化チタンは、分散性が悪く、SPF(Sun Protection Factor)を高めるため(つまり、紫外線遮蔽能を高めて皮膚を太陽光中の紫外線から保護するため)、微粒子酸化チタンを高配合しようとしたときに、化粧料の粘度が高くなって高配合ができないという問題があった。
【0003】
また、微粒子酸化亜鉛も、微粒子酸化チタンと同様に、人体に対する安全性が高く、可視部での透明性が優れ、しかも、紫外線遮蔽能を有することから、日焼け止め化粧料などに配合され(特許文献2)ていて、特に、微粒子酸化亜鉛は、微粒子酸化チタンよりも、屈折率が小さいので、透明性が高く、また、紫外部A領域の紫外線の吸収率が高いことから、最近は高配合される傾向があるが、この微粒子酸化亜鉛も、分散性が悪く、微粒子酸化チタンと同様の問題を有していた。
【0004】
また、これら微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛は、化粧料メーカーでの化粧料の調製にあたっての配合をしやすくするために、あらかじめ、シリコーンオイルに分散させてシリコーンオイルスラリーとして供給されることが多いが、そのシリコーンオイルスラリーの調製にあたっても、それらをシリコーンオイル中に高濃度に分散させようとすると、粘度が高くなって、シリコーンオイルスラリーの調製ができないという問題があった。そのため、微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛を高濃度に分散させたシリコーンオイルスラリーを調製する際には、PEG−10ジメチコンなどのポリエーテル変性シリコーン系の分散剤を多量に配合する必要があり、その分散剤のべとべとした感触が化粧料にした場合でも残って、化粧料の品質を低下させるという問題があった。
【0005】
そのため、微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛の表面をジメチコンやジメチコン/メチコンコポリマーで表面処理することによって、分散性を向上させることが提案されている(特許文献3〜4)。
【0006】
しかしながら、ジメチコンによる微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛への表面処理は、ジメチコンの微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛の粒子表面への吸着性を利用して、ジメチコンを微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の粒子表面に被覆するものであるため、その被覆量に限界があり、ジメチコンの被覆量を10質量%以上に高めることはできなかった。これに対して、ジメチコン/メチコンコポリマーによる微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛の表面処理は、ジメチコン/メチコンコポリマーがその構造中にSi−H基を有していて、これが微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛の粒子表面の活性点(−OH基)との脱水素反応によって化学的結合することにより、微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛の粒子表面を被覆するものであるから、その被覆量を高くすることは可能であるが、未反応のSi−H基が必ず残り、これが空気中のOやHOと反応して水素ガスを発生し、その発生した水素ガスが化粧料の容器を膨らませ、容器の形状を変形させて、化粧料の商品価値を低下させるので、その被覆量を10質量%以上にすることは実質上できなかった。
【0007】
【特許文献1】特公平3−39017号公報
【特許文献2】特公平7−23294号公報
【特許文献3】特開昭62−228006号公報
【特許文献4】特開2003−95839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛に関する問題点を解消し、分散性が優れ、化粧料やシリコーンオイルスラリーの調製にあたって、高配合しても粘度の上昇が少ない微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の表面処理品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、基材となる微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の表面をジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの質量比10:1〜10:5の混合物で特定量被覆することによって、上記課題を解決できることを見出し、それに基づいて、本発明を完成するにいたった。
【0010】
すなわち、本発明は、平均粒子径5〜100nmの微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛を基材とし、該基材の表面をジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物で被覆してなり、上記ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの比率が質量比で10:1〜10:5であり、かつ上記ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物の被覆量が基材に対して10〜30質量%であることを特徴とするジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛を第一の要旨とするものである。
【0011】
また、本発明は、平均粒子径5〜100nmの微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛を基材とし、該基材に対してジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの質量比10:1〜10:5の混合物を添加して、基材の微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の表面にジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物を該基材に対して10〜30質量%で被覆することを特徴とするジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の製造方法を第二の要旨とするものである。
【0012】
さらに、本発明は、上記特定のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛をシリコーンオイルに分散してなるシリコーンオイルスラリーを第三の要旨とするものである。
【0013】
さらに、本発明は、上記特定のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛を配合するか、または、そのシリコーンオイルスラリーを配合してなる化粧料を第四の要旨とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛は、分散性が優れていて、化粧料に多量に配合した場合でも、化粧料の粘度の上昇が少ないので、化粧料への高配合を実現でき、それによって、微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の有する紫外線遮蔽能を高度に発揮させることができる化粧料を提供することができる。
【0015】
また、本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛は、シリコーンオイルへの分散性も優れていて、シリコーンオイル中に高濃度に分散させた場合でも、シリコーンオイルスラリーの粘度の上昇が少ないので、それによって、高濃度のシリコーンオイルスラリーを調製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛は、前記のように、微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛からなる基材の表面に、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの質量比10:1〜10:5の混合物を添加し、基材の微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛に対してジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物を10〜30質量%被覆することによって製造される。この製造にあたっては、乾式法、湿式法のいずれも採用することができるが、乾式法での製造方法の一例を例示すると、以下のステップ1〜ステップ3に示す通りである。ただし、このステップ1〜ステップ3で示す条件は、好ましい一例を示すものであって、本発明はそれに限られることなく、後記の範囲で示す条件を採用し得る。
【0017】
ステップ1
微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の粉体1000gをスーパーミキサーに仕込んだのち、スーパーミキサーを400rpmで回転させる。回転エネルギーによって粉体温度が40℃になった時点で、回転速度を200rpmに低下させる。
ステップ2
上記スーパーミキサーの投入口から、所定量のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの質量比10:1〜10:5の混合物を投入する。このとき、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーを別々に投入した場合には、本発明で目標としているような分散性の優れたものは得られないので、必ず前もって混合しておく。
ステップ3
スーパーミキサーの回転を800rpmに上げ、粉体温度が150℃になった時点で、運転を停め、粉体を取り出す。
【0018】
本発明においては、上記ステップ1〜ステップ3で示されるような工程を経由し、基材の微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の粒子表面にジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの質量比10:1〜10:5の混合物からなる被膜を基材の微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛に対して10〜30質量%(基材の微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛100質量部に対してジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物10〜30質量部)の被覆量となるように形成することによって、微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の粒子表面をジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物で被覆する。
【0019】
そして、その際、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物におけるジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの比率を質量比で10:1〜10:5にしているが、本発明では、このジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの比率を上記特定比率にしたことと、前記のように、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとを前もって混合物にしておいて同時に添加したことにより、基材に対して10〜30質量%という高い被覆量の実現と、分散性の向上を達成し、それによって、分散性が優れ、シリコーンオイルに分散させてシリコーンオイルスラリーを調製したときや化粧料に配合したときに、シリコーンオイルスラリーの粘度や化粧料の粘度の上昇が少ないジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛を提供することを可能にしたのである。
【0020】
本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛を製造するにあたって、その基材となる微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛としては、平均粒子径が5〜100nmのものが用いられる。これは、基材となる微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の平均粒子径が5nmより小さい場合は、粒子同士の凝集力が非常に強くなって、それぞれの粒子に均一な表面処理をすることが難しくなり、また、基材となる微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の平均粒子径が100nmより大きい場合は、可視光域の光の散乱力が無視できなくなって、透明性が損なわれてしまい、例えば、日焼け止め化粧料などに配合した場合、その商品価値を低下させてしまうからである。そして、この基材の微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛としては、平均粒子径が10nm以上のものが好ましく、また、50nm以下のものが好ましい。なお、本発明において、微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛などの平均粒子径は、それら微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛を透過型電子顕微鏡で撮影し(撮影個数はそれぞれ1,000個以上)、撮影された個々の粒子の定方向径(粒子の面積を2分する水平線の長さ)をプロットし、それらを平均することによって求めたものである。
【0021】
また、本発明において、基材となる微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛は、その粒子表面へのジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物による被覆前に、耐光性や耐薬品性などの付与の目的で、あらかじめ、Si、Al、Ti、Zrの水酸化物または酸化物の少なくとも1種で表面処理したものであってもよい。
【0022】
本発明において、基材の粒子表面を被覆する被覆材の一方の成分として用いるジメチコンは、化粧品業界で取り決めている「表示名称」で表現したものであって、その化学名は「ジメチルポリシロキサン」であり、その基本化学構造は、次の一般式(I)
【化1】

で表され、その25℃で測定した粘度で、100〜5,000cs(cs:センチストークス)程度のものが好ましい。なお、上記粘度の単位を示す「cs(センチストークス)」とは、動粘度を表す単位であって、絶対粘度(Centipoise:センチポイズ)を比重で除したものであり、流体の毛細管を落下する時間が粘度に比例するという原理に基づいて測定されるものである。
【0023】
また、被覆材の他方の成分となるジメチコン/メチコンコポリマーも、化粧品業界で取り決めている「表示名称」によって表現したものであり、その化学名は「メチルハイドロジエンシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体」であり、その基本化学構造は、次の一般式(II)
【化2】

で表され、本発明においては、上記一般式(II)におけるm、nが、m=7〜14、n=3〜8であり、m+nが、m+n=10〜22のものが好ましい。
【0024】
そして、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物におけるジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの比率は、前記のように、質量比で10:1〜10:5にするが、上記ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物におけるジメチコンの比率が上記範囲より多い場合は、被覆処理後の微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛がべたつき、また、分散性が悪くなって、シリコーンオイルスラリーなどの粘度を高め、ジメチコンの比率が上記範囲より少ない場合も、分散性が悪くなって、シリコーンオイルスラリーなどの粘度を高め、また、ジメチコン/メチコンコポリマーが多くなることによって、Si−H基由来の水素(H)ガスの発生量が無視できないほどに多くなる。そして、このジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物におけるジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの比率としては、質量比で10:2〜10:4程度が好ましい。
【0025】
本発明においては、上記ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物の被覆量を、基材の微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛に対して10〜30質量%にすることが必要であるが、これは、次の理由に基づいている。すなわち、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物の被覆量が基材の微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛に対して10質量%より少ない場合は、分散性が充分に向上せず、そのため、シリコーンオイルに分散させてシリコーンオイルスラリーを調製しようとしたときや化粧料に配合しようとしたときに、シリコーンオイルスラリーや化粧料の粘度を高め、高濃度に分散させたシリコーンオイルスラリーの調製や化粧料への高濃度配合ができなくなり、また、30質量%より多い場合は、被覆処理後の微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛にべたつきを生じ、感触を悪くさせたり、また、相対的に基材の微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛が減少することによって、それら本来の機能である紫外線遮蔽能などが充分に発揮できなくなるからであり、このジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物の被覆量は基材の微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛に対して13質量%以上が好ましく、また、25質量%以下が好ましい。
【0026】
本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛を製造するにあたり、前記ステップ1ではスーパーミキサーの回転速度を400rpmにしたが、これは好ましい一例を示したものにすぎず、100〜800rpmの回転速度で実施することができるし、また、回転エネルギーによって粉体温度が40℃になった時点で回転速度を200rpmに低下させたが、その回転速度を低下させる際の粉体温度を40℃にしたのは、投入するジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物と粉体(微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の粉末)とが接触する温度を一定にして、ジメチコン/メチコンコポリマーの重合の進行をこの時点では起こさせないようにするという理由によるものであるが、この温度は上記のように、40℃に限定されるものではなく、5〜80℃程度であればよく、20℃以上が好ましく、また、60℃以下が好ましい。また、回転速度を低下させるときの回転速度を200rpmにしたが、これも、それに限られることなく、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物が安全に投入可能な回転速度、つまり、50〜300rpm程度であればよい。
【0027】
また、ステップ3で回転速度を800rpmに上げたが、これも、それに限られることなく、500〜800rpm程度であればよい。また、スーパーミキサーの運転を停止するときの粉体温度を150℃としたが、これは、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物が粉体表面に固定するのに充分な温度であるという理由に基づくものであるが、この温度も、上記のように150℃に限られるものではなく、130〜180℃程度であればよい。また、その乾式法での製造にあたり、スーパーミキサーを用いたが、これも、それに拘束されることなく、他のものを用いてもよい。
【0028】
従来のジメチコン被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛、ジメチコン/メチコンコポリマー被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛、あるいはジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛では、それらの被覆量が少ないこともあって、ポリエーテル変性シリコーン系分散剤を使用することなく、高濃度のシリコーンオイルスラリーを得ることはできなかったが、上記のようにして得られる本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛は、分散性が優れているので、分散剤の使用をしなくても、シリコーンオイルスラリーを調製することができ、また、少量の分散剤の使用で高濃度のシリコーンオイルスラリーを容易に調製することができる。例えば、シリコーンオイルとしてD5オイルと呼ばれるデカメチルシクロペンタシロキサンを用い、分散剤としてポリエーテル変性シリコーンに属するPEG−10ジメチコンをシリコーンオイルスラリー全体中で5質量%になるように用いた系では、本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンの場合、高濃度化の要望に応え得る濃度が35〜60質量%のシリコーンオイルスラリーを容易に調製することができ、本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛の場合は、上記と同様に高濃度化の要望に応え得る濃度が45〜70質量%のシリコーンオイルスラリーを容易に調製することができる。つまり、本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンでは、35〜60質量%という高濃度で分散させ、その粘度が実用に供し得る程度に低粘度のシリコーンオイルスラリーを得ることができ、また、本発明ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛では、45〜70質量%という高濃度で分散させ、その粘度が実用に供し得る程度に低粘度のシリコーンオイルスラリーを得ることができる。
【0029】
それらのシリコーンオイルスラリーの粘度を具体的に例示すると、本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンを、下記の条件下でその濃度が40質量%になるように調製したシリコーンオイルスラリーの粘度を下記の条件下で測定したときの粘度は500mPa・s以下であり、例えば、後記の実施例1に示すように、380mPa・s程度にまで低粘度化できる。
シリコーンオイルスラリーの調製条件:
上記ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタン40gとデカメチルシクロペンタシロキサン59gとPEG−10ジメチコン(信越化学工業社製、KF−6017P)10gの割合で混合し、容器に入れ、高速分散機〔ディスパー(特殊機化工業社製の高速分散機、J.K.ロボミックス J.K.ホモディスパー2.5)など〕を用い、3,000rpmで5分間分散してジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンのシリコーンオイルスラリーを調製する。
粘度の測定条件:
上記ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンのシリコーンオイルスラリーをB型粘度計(例えば、BROOKFIELD社製、DIGITAL VISCOMETER MODEL DV−1+)を用いて回転速度6rpm、液温25℃の条件下で粘度を測定する。
【0030】
また、本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛を、下記の条件下でその濃度が50質量%になるように、調製したシリコーンオイルスラリーの粘度を下記の条件下で測定したときの粘度は500mPa・s以下であり、また、例えば、後記の実施例2に示すように、100mPa・s程度にまで低粘度化できる。
シリコーンオイルスラリーの調製条件:
上記ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛50gとデカメチルシクロペンタシロキサン49gとPEG−10ジメチコン(前出)5gの割合で混合し、容器に入れ、高速分散機を用い、3,000rpmで5分間分散してジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛のシリコーンオイルスラリーを調製する。
【0031】
粘度の測定条件:
上記ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛のシリコーンオイルスラリーをB型粘度計を用いて回転速度6rpm、液温25℃の条件下で粘度を測定する。
【0032】
なお、上記では、シリコーンオイルスラリーの調製に際して、高濃度化の要望に応え得る濃度にする場合の濃度に関して説明したが、本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛は、上記で例示した濃度より低い濃度でシリコーンオイルスラリーを調製できることはもちろんである。
【0033】
本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛は、各種の化粧料に配合することができるが、例えば、日焼け止め剤、サンスクリーン剤、化粧下地料、ファンデーションなどの化粧料に配合すると、その紫外線遮蔽効果をより向上させることができる。
【0034】
本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛を化粧料に配合する場合、その配合量は化粧料全体中の0.5〜30質量%にすることが好ましい。すなわち、その配合量が0.5質量%より少ない場合は、紫外線遮蔽効果が充分に発現しなくなるおそれがあり、また、配合量を30質量%より多くしても、それに伴う効果の増加がなく、経済的な損失が多くなる。また、シリコーンオイルスラリーにして化粧料に配合する場合も、本発明のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛が上記と同様に化粧料全体中で0.5〜30質量%となるようにすることが好ましい。
【実施例】
【0035】
つぎに、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0036】
実施例1
平均粒子径10nmの含水ケイ酸と水酸化アルミニウム表面処理微粒子酸化チタン(テイカ社製、MT−05)を基材とし、以下に示すステップ1〜ステップ3を経て、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンを製造した。
ステップ1
上記微粒子酸化チタンの粉体1,000gをスーパーミキサーに仕込んだのち、スーパーミキサーを400rpmで回転させた。回転エネルギーによって粉体温度が40℃になった時点で、回転速度を200rpmに低下させた。
ステップ2
ジメチコン(信越化学工業社製、KF96、粘度1,000cs)とジメチコン/メチコンコポリマー〔信越化学工業社製、X21−5754P、前記一般式(II)におけるm=10、n=5、m+n=15のもの、ただし、m、nはある程度分布をもった数値なので、m、n、m+nは平均値である〕とを質量比10:3で混合し、上記スーパーミキサーの投入口から、上記のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物200gを投入した。
ステップ3
スーパーミキサーの回転を800rpmに上げ、粉体温度が150℃になった時点で、運転を停め、粉体を取り出した。
【0037】
このようにして、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物の被覆量が基材の微粒子酸化チタンに対して20質量%のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンを得た。
【0038】
比較例1
上記実施例1のステップ2で、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物を添加せず、それに代えて、前記実施例1で用いたものと同様のジメチコン200gを添加した以外は、実施例1と同様に処理して、ジメチコン被覆微粒子酸化チタンを得た。
【0039】
比較例2
上記実施例1のステップ2で、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物を添加せず、それに代えて、前記実施例1で用いたものと同様のジメチコン/メチコンコポリマー200gを添加した以外は、実施例1と同様に処理して、ジメチコン/メチコンコポリマー被覆微粒子酸化チタンを得た。
【0040】
比較例3
上記実施例1のステップ2でのジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物の添加量を60gに変えた以外は、実施例1と同様に処理して、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物の被覆量が基材の微粒子酸化チタンに対して6質量%のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンを得た。
【0041】
試験例:
紫外線遮蔽能と透明性:
実施例1で得たジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタン、比較例1で得たジメチコン被覆微粒子酸化チタン、比較例2で得たジメチコン/メチコンコポリマー被覆微粒子酸化チタンおよび比較例3で得たジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆粒子酸化チタンのそれぞれ7gずつと、D5オイル(デカメチルシクロペンタシロキサン)93gとの割合で混合し、200mL(Lはリットルを表す、以下同様)ビーカーに投入し、ディスパー〔特殊機化工業社製の高速分散機、T.K.ロボミックス T.K.ホモディスパー2.5型〕を用い、3,000rpmで5分間分散した。この分散液をポリプロピレン製フィルム(厚み40μm)上に12μmの膜厚になるようにバーコータで塗布し、分光光度計〔日立製作所社製、U−3300〕を用いて波長300nmと500nmの透過率を測定した。300nmの透過率が低いほど紫外線遮蔽能が優れていることを示し、500nmの透過率が高いほど透明性が優れていることを示す。
【0042】
シリコーンオイルへの分散性:
実施例1で得たジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタン、比較例1で得たジメチコン被覆微粒子酸化チタン、比較例2で得たジメチコン/メチコンコポリマー被覆微粒子酸化チタンおよび比較例3で得たジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆粒子酸化チタンのそれぞれ40gと、デカメチルシクロペンタシロキサン59gと、PEG−10ジメチコン(信越化学工業社製、KF−6017P)1gとを混合して、200mLビーカーに投入し、ディスパー〔特殊機化工業社製の高速分散機、T.K.ロボミックス T.K.ホモディスパー2.5型〕を用い、3,000rpmで5分間分散してシリコーンオイルスラリーを調製した。このシリコーンオイルスラリーの粘度をB型粘度計(BROOKFIELD社製、DIGITAL VISCOMETER MODEL DV−1+)を用い、回転速度6rpm、液温25℃の条件下で測定した。この粘度値が低いほど、シリコーンオイルへの分散性が優れていることを示し、また、高濃度でも粘度の低いシリコーンオイルスラリーが得られることを示している。
【0043】
上記紫外線遮蔽能、透明性およびシリコーンオイルへの分散性の評価結果を次の表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示すように、実施例1のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンは、比較例1のジメチコン被覆微粒子酸化チタン、比較例2のジメチコン/メチコンコポリマー被覆微粒子酸化チタンや比較例3のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンに比べて、シリコーンオイルへの分散性を示す粘度が低く、シリコーンオイルへの分散性が優れていた。
【0046】
また、実施例1のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンは、表1に示すように、300nmの透過率が低く、紫外線遮蔽能が優れていた。
【0047】
実施例2
平均粒子径25nmの微粒子酸化亜鉛(テイカ社製、MZ−500)を基材とし、以下に示すステップ1〜ステップ3を経て、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛を製造した。
ステップ1
上記微粒子酸化亜鉛の粉体1,000gをスーパーミキサーに仕込んだのち、スーパーミキサーを400rpmで回転させた。回転エネルギーによって粉体温度が40℃になった時点で、回転速度を200rpmに低下させた。
ステップ2
前記実施例1で用いたものと同様のジメチコンと前記実施例1で用いたものと同様のジメチコン/メチコンコポリマーとを質量比10:3で混合し、上記スーパーミキサーの投入口から、上記のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物130gを投入した。
ステップ3
スーパーミキサーの回転を800rpmに上げ、粉体温度が150℃になった時点で、運転を停め、粉体を取り出した。
【0048】
このようにして、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物の被覆量が基材の微粒子酸化亜鉛に対して13質量%のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛を得た。
【0049】
比較例4
上記実施例2のステップ2で、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物を添加せず、それに代えて、前記実施例2で用いたものと同様のジメチコン130gを添加した以外は、実施例2と同様に処理して、ジメチコン被覆微粒子酸化亜鉛を得た。
【0050】
比較例5
上記実施例2のステップ2で、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物を添加せず、それに代えて、前記実施例2で用いたものと同様のジメチコン/メチコンコポリマー130gを添加した以外は、実施例2と同様に処理して、ジメチコン被覆微粒子酸化亜鉛を得た。
【0051】
比較例6
上記実施例2のステップ2でのジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物の添加量を50gに変えた以外は、実施例2と同様に処理して、ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物の被覆量が基材の微粒子酸化亜鉛に対して、5質量%のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛を得た。
【0052】
上記のようにして得られた実施例2のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛、比較例4のジメチコン被覆微粒子酸化亜鉛、比較例5のジメチコン/メチコンコポリマー被覆微粒子酸化亜鉛および比較例6のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆粒子酸化亜鉛の紫外線遮蔽能、透明性およびシリコーンオイルへの分散性を調べた。その結果を表2に示す。なお、紫外線遮蔽能と透明性を調べるにあたっては、実施例2で得たジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛、比較例4で得たジメチコン被覆微粒子酸化亜鉛、比較例5で得たジメチコン/メチコンコポリマー被覆微粒子酸化亜鉛および比較例6で得たジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛のそれぞれ15gずつと、D5オイル85gとの割合で混合する以外は、実施例1などと同様の方法を採用し、また、シリコーンオイルへの分散性を調べるにあたっては、実施例2で得たジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛、比較例4で得たジメチコン被覆微粒子酸化亜鉛、比較例5で得たジメチコン/メチコンコポリマー被覆微粒子酸化亜鉛および比較例6で得たジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛のそれぞれ50gずつと、D5オイル49gと、PEG−10ジメチコン1gとの割合で混合する以外は、実施例1などと同様の方法を採用した。
【0053】
【表2】

【0054】
表2に示すように、実施例2のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛は、比較例4のジメチコン被覆微粒子酸化亜鉛、比較例5のジメチコン/メチコンコポリマー被覆微粒子酸化亜鉛や比較例6のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛に比べて、シリコーンオイルへの分散性を示す粘度が低く、シリコーンオイルへの分散性が優れていた。
【0055】
また、実施例2のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛は、表2に示すように、300nmの透過率が低く、紫外線遮蔽能が優れていた。
【0056】
実施例3および比較例7
つぎに、実施例1で製造したジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンと実施例2で製造したジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛を用い、表3に示す組成で実施例3の日焼け止め乳液を調製し、また、比較例1で製造したジメチコン被覆微粒子酸化チタンと比較例4で製造したジメチコン被覆微粒子酸化亜鉛を用い、表3に示す組成で比較例7の日焼け止め乳液を調製した。なお、各配合成分の配合量は質量%によるものであるが、表3では配合量を示す数値のみを表示し、その単位の表示を省略している。また、実施例3の日焼け止め乳液の調製にあたって用いた実施例1のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンと実施例2のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛および比較例7の日焼け止め乳液の調製にあたって用いた比較例1のジメチコン被覆微粒子酸化チタンと比較例4のジメチコン被覆微粒子酸化亜鉛以外の配合成分については、その製造業者名、商品名、その役割ないし機能を、表3の後に示す。
【0057】
【表3】

【0058】
油相Aの成分として用いたポリメチルシルセスキオキサンはGE東芝シリコーン社製のトスパール120Aであって感触改良剤としての役割を果たすものであり、油相Bの成分として用いたジメチコンは信越化学工業社製のKF96−10csであって油分としての役割を果たすものであり、PEG−10ジメチコンは信越化学工業社製のKF−6017Pであって乳化剤としての役割を果たすものであり、デカメチルシクロペンタシロキサンは信越化学工業社製のKF−995であって油分としての役割を果たすものであり、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールは日清オイリオグループ社製のエステモールN01であって油分としての役割を果たすものであり、プロピルパラベンは上野製薬社製のメッキンス−Pであって油相の防腐剤としての役割を果たすものであり、ジメチコンとトリメチルシロキシケイ酸との混合物は信越化学工業社製のKF−7312Jであって皮膜形成剤としての役割を果たすものである。また、水相Cの成分として用いた1,3−ブチレングリコールは協和発酵工業社製の1,3BGであって保湿成分としての役割を果たすものであり、メチルパラベンは上野製薬社製のメッキンス−Mであって水相の防腐剤としての役割を果たすものであり、塩化ナトリウムは片山化学工業社製のもので収斂剤および系安定化剤としての役割を果たすものである。
【0059】
上記表3に示す日焼け止め乳液の調製は、以下に示す(1)〜(5)のステップを経由して行われる。
(1)まず、油相Bの成分を容器に入れディスパーで混合する。
(2)上記(1)で混合して調製した油相Bに、油相Aの成分を添加する。
(3)ディスパーを3,000rpmで10分間作動させて油相Aの成分を油相B中に分散させる。
(4)水相Cの成分を添加する。
(5)ホモミキサーを2,500rpmで5分間作動させて乳化する。
【0060】
実施例1のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンおよび実施例2のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛を用い、上記(1)〜(5)のステップを経て調製した実施例3の日焼け止め乳液は、該乳液中に未分散の粉末がなく、また、粘度が低く〔B型粘度計(BROOKFIELD製、DIGITAL VISCOMETER MODEL DV−1+)を用い、回転速度6ppm、液温25℃の条件下で測定した粘度が2,000mPa・s以下〕、皮膚に塗布したときの感触も良好であった。これに対して、従来品に相当する比較例1のジメチコン被覆微粒子酸化チタンおよび比較例4のジメチコン被覆微粒子酸化亜鉛を用いた場合、油相Bに油相Aの成分を分散させようとした時点で粘度が高く、あえてステップ(1)〜(5)を経て調製した比較例7の日焼け止め乳液は、前記と同条件下で測定した粘度が10,000mPa・s以上と非常に高いものとなり、また、調製後の日焼け止め乳液中にも未分散の大きな凝集体が目立ち、皮膚に塗布した時の感触もざらついて悪いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径5〜100nmの微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛を基材とし、該基材の表面をジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物で被覆してなり、上記ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの比率が質量比で10:1〜10:5であり、かつ上記ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物の被覆量が基材に対して10〜30質量%であることを特徴とするジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛。
【請求項2】
シリコーンオイルへの分散性を、下記の条件下で調製したシリコーンオイルスラリーの粘度を下記の条件下で測定した粘度で表したときに、該粘度が500mPa・s以下である請求項1記載のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタン。
シリコーンオイルスラリーの調製条件:
上記ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタン40gとデカメチルシクロペンタシロキサン59gとPEG−10ジメチコン1gの割合で混合し、容器に入れ、高速分散機を用い、3,000rpmで5分間分散してジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンのシリコーンオイルスラリーを調製する。
粘度の測定条件:
上記ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンのシリコーンオイルスラリーの粘度をB型粘度計を用いて、回転速度6rpm、液温25℃の条件下で測定する。
【請求項3】
シリコーンオイルへの分散性を、下記の条件下で調製したシリコーンオイルスラリーの粘度を下記の条件下で測定した粘度で表したときに、該粘度が500mPa・s以下であることを特徴とする請求項1記載のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛。
シリコーンオイルスラリーの調製条件:
上記ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛50gとデカメチルシクロペンタシロキサン49gとPEG−10ジメチコン1gの割合で混合し、容器に入れ、高速分散機を用い、3,000rpmで5分間分散してジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛のシリコーンオイルスラリーを調製する。
粘度の測定条件:
上記ジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化亜鉛のシリコーンオイルスラリーの粘度をB型粘度計を用いて、回転速度6rpm、液温25℃の条件下で測定する。
【請求項4】
平均粒子径5〜100nmの微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛を基材とし、該基材に対してジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの質量比10:1〜10:5の混合物を添加して、基材の微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の表面にジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物を該基材に対して10〜30質量%で被覆することを特徴とするジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛をシリコーンオイルに分散してなるシリコーンオイルスラリー。
【請求項6】
請求項1記載のジメチコンとジメチコン/メチコンコポリマーとの混合物被覆微粒子酸化チタンまたは微粒子酸化亜鉛を配合してなる化粧料。
【請求項7】
請求項5記載のシリコーンオイルスラリーを配合してなる化粧料。

【公開番号】特開2007−56082(P2007−56082A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240515(P2005−240515)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000215800)テイカ株式会社 (108)
【Fターム(参考)】