ジメチルエーテル製造用触媒とその製造方法およびこれを用いたジメチルエーテルの製造方法
【課題】 高いメタノール反応率および高いジメチルエーテル選択率を達成でき、メタノールから高収率でジメチルエーテルを製造することができるジメチルエーテル製造用触媒を提供する。
【解決手段】 SiO2/Al2O3モル比が10〜1000のゼオライトと、焼成したときにNa2O含有量0.01重量%以下およびBET比表面積100〜300m2/gを示すベーマイト結晶水酸化アルミニウムとを、アルミナ換算で100重量部のベーマイト結晶水酸化アルミニウムに対しゼオライト0.1〜20重量部の割合で混合して成形した後、焼成することにより、アルミナ100重量部に対して0.1〜20重量部のゼオライトが含有された成形体であり、SiO2/Al2O3モル比が0.018〜0.3であり、Na2O含有量が0.01重量%以下であり、BET比表面積が100〜300m2/gである本発明のジメチルエーテル製造用触媒を得る。
【解決手段】 SiO2/Al2O3モル比が10〜1000のゼオライトと、焼成したときにNa2O含有量0.01重量%以下およびBET比表面積100〜300m2/gを示すベーマイト結晶水酸化アルミニウムとを、アルミナ換算で100重量部のベーマイト結晶水酸化アルミニウムに対しゼオライト0.1〜20重量部の割合で混合して成形した後、焼成することにより、アルミナ100重量部に対して0.1〜20重量部のゼオライトが含有された成形体であり、SiO2/Al2O3モル比が0.018〜0.3であり、Na2O含有量が0.01重量%以下であり、BET比表面積が100〜300m2/gである本発明のジメチルエーテル製造用触媒を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジメチルエーテル製造用触媒とその製造方法およびこれを用いたジメチルエーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジメチルエーテルは、次世代合成クリーン燃料として需要が大いに期待されており、特にディーゼルエンジン用燃料として大量に利用されることが見込まれている。また、ジメチルエーテルは、燃料電池への応用も検討されており、水素へ転換する改質原料としても期待されている。そのため、ジメチルエーテルを効率的に製造する方法が求められている。
【0003】
ジメチルエーテルの製造方法としては、下式(1)
2CH3OH → CH3OCH3 + H2O (1)
に示すように、メタノールをアルミナ触媒存在下、脱水反応させる方法が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
さらに、ジメチルエーテルの収率向上を目指し、触媒として疎水性ゼオライトを用いて未精製メタノールからジメチルエーテルを製造する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭59−16845号公報
【特許文献2】特開2004−189719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、充分なメタノール反応率が得られず、満足しうるレベルの収率には達していないのが現状であった。また、特許文献2の方法では、原料とするメタノールの水分量が少ないと、メタノール反応率は高いもののジメチルエーテル選択率が非常に低くなり、収率が下がるという欠点があり、原料の選択や反応条件等が制限されることがあった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、高いメタノール反応率および高いジメチルエーテル選択率を達成でき、メタノールから高収率でジメチルエーテルを製造することができるジメチルエーテル製造用触媒とその製造方法および該触媒を用いたジメチルエーテルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、メタノールの脱水反応に用いる触媒として、特定のゼオライトと特定のアルミナとを特定比率で混合し焼成してなる複合触媒が、高活性でメタノール反応率およびジメチルエーテル選択率が高く、極めて優れた性能を発揮することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、アルミナ100重量部に対して0.1〜20重量部のゼオライトが含有された成形体であり、SiO2/Al2O3モル比が0.018〜0.3であり、Na2O含有量が0.01重量%以下であり、BET比表面積が100〜300m2/gである、ことを特徴とする。
【0009】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法は、SiO2/Al2O3モル比が10〜1000のゼオライトと、焼成したときにNa2O含有量0.01重量%以下およびBET比表面積100〜300m2/gを示すベーマイト結晶水酸化アルミニウムとを、アルミナ換算で100重量部のベーマイト結晶水酸化アルミニウムに対しゼオライト0.1〜20重量部の割合で混合して成形した後、焼成する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明のジメチルエーテルの製造方法は、前記本発明のジメチルエーテル製造用触媒の存在下にメタノールを脱水反応させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高いメタノール反応率および高いジメチルエーテル選択率を達成でき、メタノールから高収率でジメチルエーテルを製造することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(ジメチルエーテル製造用触媒)
本発明のジメチルエーテル製造用触媒(以下、「本発明の触媒」と称することもある)は、アルミナとゼオライトとを主成分として含有する成形体である。具体的には、本発明の触媒では、アルミナ100重量部に対して0.1〜20重量部のゼオライトが含有されている。ゼオライトの含有量は、好ましくは、アルミナ100重量部に対して0.5〜15重量部であるのがよい。ゼオライトの含有量が前記範囲よりも少ないと、ゼオライトを含有させることによる直接的効果および相乗的効果が不充分で高活性が得られないこととなり、一方、多すぎると、活性は向上するものの、ジメチルエーテル選択率が低下し、結果として収率が下がることとなる。
【0013】
本発明の触媒においては、SiO2/Al2O3モル比が0.018〜0.3であることが重要である。好ましくは、触媒のSiO2/Al2O3モル比は0.020〜.025であるのがよい。触媒のSiO2/Al2O3モル比が前記範囲よりも小さいと、活性が低くなり、ジメチルエーテル選択率が極端に低下することとなり、一方、大きすぎても、活性が低下することになる。
【0014】
本発明の触媒においては、Na2O含有量が0.01重量%以下である。好ましくは、触媒中のNa2O含有量は0.005重量%以下であるのがよい。触媒中のNa2O含有量が少ないほど、メタノールの脱水反応の反応率が向上する。
【0015】
なお、本発明の触媒においては、ナトリウム以外のアルカリ金属の含有量についても少ない方が好ましく、通常、K2O含有量は0.01重量%以下、Li2O含有量は0.01重量%以下であるのがよい。また、本発明の触媒は、イオウ、塩素、フッ素のような元素も少ない方が好ましく、その含有量はいずれも、通常0.5重量%以下であるのがよい。
【0016】
本発明の触媒においては、BET比表面積が100〜300m2/gである。触媒のBET比表面積が前記範囲よりも大きすぎると、メタノールの脱水反応で使用中に熱劣化を起こし易くなり、一方、小さすぎると、充分な活性が得られない。
【0017】
本発明の触媒は、通常、細孔を有するものであり、その細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積容積が0.03cm3/g以上、好ましくは0.05cm3/g以上であるのがよい。細孔半径100nm〜100μmの細孔容積が大きいほど、脱水反応率が向上するからである。
【0018】
本発明の触媒に含まれるアルミナは、Al2O3・nH2O〔0≦n≦0.5〕で示されるものであればよく、例えば、通常、χ、η、γのような結晶相をもつ活性アルミナである。
なお、本発明の触媒に含まれるアルミナは、どのような方法で生じたものであってもよい。例えば、水酸化アルミニウムを仮焼してアルミナ粉末を得たのちに洗浄する方法、アルミニウムアルコシドの加水分解で得られた水酸化アルミニウムを仮焼する方法、アルミニウム塩を熱分解する方法などでアルミナを生じさせることができる。また、市販のアルミナをそのまま、もしくはBLT比表面積やNa2O濃度が所望の値になるように焼成処理や洗浄処理等を施して、原料としてもよい。
【0019】
本発明の触媒に含まれるゼオライトは、通常のアルミノ珪酸塩系ゼオライトであればよく、例えば、通常、Mordenaite型、β型、Ferrierite型、L型、Y型、ZSM系ゼオライトなどである。なお、ゼオライトは、水素型でもよいし、アンモニウム型でもよいが、通常は焼成に付された際に水素型に変化する。
【0020】
本発明の触媒は、脱水触媒性能を損なわない範囲で、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化セリウム(CeO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)などの無機化合物、特に金属酸化物を含むものであってもよい。また、活性に影響を与えない範囲で、ゼオライトとアルミナ混合物の成形に用いられるシリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル等の無機バインダー由来の酸化物を含んでいてもよい。
【0021】
本発明の触媒は、後述する本発明のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法によって容易に得られるものであるが、これに限定されるものではない。例えば、本発明の触媒に含まれるアルミナは、最終的に触媒として使用する段階でアルミナの形態になっていればよいのであり、後述する本発明のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法のほか、アルミニウム塩とゼオライトと混合し、成形後アルミニウム塩を熱分解させるなどの方法によっても、本発明の触媒を得ることができる。
【0022】
(ジメチルエーテル製造用触媒の製造方法)
本発明のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法(以下「本発明の触媒の製造方法」と称することもある)は、特定のゼオライトと、特定のベーマイト結晶水酸化アルミニウムとを混合して成形した後、焼成するものである。
【0023】
前記特定のゼオライトとは、SiO2/Al2O3モル比が10〜1000であるゼオライトである。原料としてこのようなゼオライトを用いることにより、(ジメチルエーテル製造用触媒)の項で前述したようなSiO2/Al2O3モル比を有する触媒が得られる。原料として用いるゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が前記範囲よりも小さいと、活性が低く、選択率が悪い触媒が得られることになり、一方、大きすぎると、ゼオライトの疎水性が高くなるので、脱水反応が起こりにくくなり、得られる触媒の活性が低くなる。
【0024】
また、前記特定のゼオライトは、そのNa2O含有量が1重量%以下であることが好ましい。Na2O含有量が少ないほど、脱水反応の反応率が高くなるからである。また、前記特定のゼオライトは、ナトリウム以外のアルカリ金属の含有量も少ないことが好ましい。
【0025】
本発明の触媒の製造に用いるゼオライトとしては、(ジメチルエーテル製造用触媒の製造方法)の項で前述したように種々の型のゼオライトを用いることができる。また、ゼオライトは、水素型でもよいし、アンモニウム型でもよい。なお、本発明の触媒の製造に用いるゼオライトは、前述した条件を満たす市販品を用いてもよいし、合成したものを用いてもよい。
【0026】
前記特定のベーマイト結晶水酸化アルミニウムとは、焼成したときに(具体的には、例えば、焼成温度500〜800℃で焼成したときに)Na2O含有量0.01重量%以下およびBET比表面積100〜300m2/gを示すベーマイト結晶水酸化アルミニウムである。原料としてこのようなベーマイト結晶水酸化アルミニウムを用いることにより、(ジメチルエーテル製造用触媒)の項で前述したような触媒のNa2O含有量およびBET比表面積を有する触媒が得られる。原料として用いるベーマイト結晶水酸化アルミニウムを焼成したときのNa2O含有量が前記範囲よりも大きいと、得られる触媒の脱水反応における反応率が低下することになる。また、原料として用いるベーマイト結晶水酸化アルミニウムを焼成したときのBET比表面積が前記範囲よりも大きいと、得られる触媒が脱水反応で使用中に熱劣化を起こし易いものとなり、一方、小さすぎると、充分な活性を有する触媒が得られない。
【0027】
前記ゼオライトと前記ベーマイト結晶水酸化アルミニウムは、アルミナ換算で100重量部のベーマイト結晶水酸化アルミニウムに対しゼオライト0.1〜20重量部の割合で混合する。ゼオライトの使用割合が前記範囲であれば、(ジメチルエーテル製造用触媒)の項で前述したようなゼオライト含有量を有する触媒が得られる。
混合に用いる装置は、特に制限されるものではなく、例えば、V型混合機、ナフターミキサー、ヘンシェルミキサー、オムニミキサー、スーパーミキサー、レディゲミキサー、二重円錐混合機、エアードミキサー等の公知の装置を使用することができる。
【0028】
成形方法は、特に制限されるものではなく、例えば、押出し成形、打錠成形、転動造粒等の公知の方法を採用することができる。
焼成方法は、特に制限されるものではないが、ドライ焼成で行なうと、アルミナ表面の水酸基が低減し、ルイス酸点が増加するので、好ましい。
【0029】
焼成温度は、特に制限されないが、通常100〜600℃の範囲とするのがよい。焼成時間は、焼成温度等に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、通常、10時間〜100時間とするのが好ましい。
焼成に用いる装置は、加熱できる装置であれば特に限定されないが、例えば、熱風循環式焼成炉、静置式焼成炉、トンネル炉、ロータリーキルン、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉等を使用することができる。
【0030】
(ジメチルエーテルの製造方法)
本発明のジメチルエーテルの製造方法は、前述した本発明の触媒の存在下にメタノールを脱水反応させるものである。
【0031】
本発明のジメチルエーテルの製造方法において用いる原料は、メタノールを主成分として含むものであればよく、例えば、メタノール単独、メタノールと水蒸気の混合物、メタノールとメタノール以外のアルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等)との混合物、メタノールと不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等)との混合物、メタノールと前記メタノール以外のアルコールと前記不活性ガスとの混合物などが挙げられる。メタノールと水蒸気の混合物またはメタノールとメタノール以外のアルコールとの混合物を用いる場合、これらの混合物中に占めるメタノールの割合は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上であるのがよい。また、メタノールと不活性ガスとの混合物またはメタノールとメタノール以外のアルコールと不活性ガスとの混合物の場合、これら混合物のうち不活性ガスを除いたものに占めるメタノールの割合は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上であるのがよい。メタノールの脱水反応は一般に気相で行われるので、原料は、通常、気体の状態で供給されることが好ましく、例えば、液体の状態で貯蔵しておき、反応前に、熱交換器などを使用して気化させて供給することができる。
【0032】
メタノールの脱水反応を行う際には、反応温度は、通常、250〜450℃、好ましくは270〜400℃とするのがよい。また、反応圧力は、反応温度に応じて適宜設定すればよいが、下限は、通常1×105Pa以上とするのがよく、上限は、通常30×105Pa以下、好ましくは20×105Pa以下とするのがよい。
メタノールの脱水反応は、通常、多管式反応器のような固定床反応器で行うことが好ましく、そのときの空間速度は、通常、500h-1以上、150000h-1以下とするのがよい。
【0033】
本発明のジメチルエーテルの製造方法において得られたジメチルエーテルは、そのまま、または必要に応じて蒸留などにより精製して、使用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本文中において示した物性値は次の方法により測定した。
【0035】
<結晶相>
試料をX線回折装置(理学電機製「RAD−RB RU−200」)を用いて分析し、得られたX線回折スペクトルのピークデータから結晶相を同定し、そのうち相対ピーク強度の最も高いものを主結晶相とした。
【0036】
<Na2O含有量(重量%)>
JIS−R9301に従って求めた。
【0037】
<SiO2/Al2O3モル比>
試料をアルカリ溶融させた後に酸に溶解させ、ICP発光分光装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「SPS4000」)を用いて分析し、試料中のSiO2量を求めた。他方、試料をフッ化水素酸で処理し、その後アルカリ溶解させ後に酸に溶解させ、上記ICP発光分光装置を用いて分析し、試料中のAl2O3量を求めた。そして、SiO2量とAl2O3量よりSiO2/Al2O3モル比を算出した。
【0038】
<BET比表面積(m2/g)>
比表面積測定装置(マウンテック製「Macsorb Model−1201」)を用いて窒素吸着法により求めた。
【0039】
<細孔容積(cm3/g)>
細孔分布測定装置(カンタクローム製「オートスキャン33型」)を用いて水銀圧入法により試料の細孔分布を測定した。そして、横軸を細孔半径とし、縦軸を細孔半径の大きいものから小さいものへ順次その容積を累積していった累積細孔容積とする累積細孔分布曲線より、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積容積を求めた。
【0040】
(実施例1−1)
ベーマイト結晶水酸化アルミニウム(アルマティス社製「HiQ−40」)を振動ミルで中心粒径7.5μmまで粉砕して粉砕品を得た。この粉砕品を700℃で2時間焼成したところ、得られたアルミナの結晶形はγアルミナで、Na2O量は0.001重量%以下、BET比表面積は165m2/gであった。
次に、上記粉砕品100重量部とMordenite型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−640HOA」:水素型、SiO2/Al2O3モル比は19(X線回折スペクトルのピークデータを図1に示す))1重量部とを混合し、得られた混合粉にベーマイト型アルミナゾル(日産化学製「アルミナゾル520」;ゾル中のアルミナ当たりのNa2O量は0.001重量%以下)7.6重量部を10倍に希釈した液をスプレーして加えながら、直径24cmの皿型造粒機を用いて造粒して、直径1〜3mmの球状の成形体を得た。この成形体を電気炉により700℃で2時間焼成して、触媒(1)を得た。
【0041】
触媒(1)は、主結晶相がγアルミナとMordenite型ゼオライトの混合物であり(X線回折スペクトルのピークデータを図2に示す)、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.056cm3/g、BET比表面積は111m2/g、Na2O量は0.0032重量%、SiO2/Al2O3モル比は0.021であった。
【0042】
(実施例1−2)
実施例1−1において用いたMordenite型ゼオライト1重量部を、β型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−930NHA」:NH4型、SiO2/Al2O3モル比は28(X線回折スペクトルのピークデータを図3に示す))16重量部に変更した以外は実施例1−1と同じ操作を行って、触媒(2)を得た。
【0043】
触媒(2)は、主結晶相がγアルミナとβ型ゼオライトの混合物であり(X線回折スペクトルのピークデータを図4に示す)、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.069cm3/g、BET比表面積は237m2/g、Na2O量は0.0067重量%、SiO2/Al2O3モル比は0.247であった。
【0044】
(実施例1−3)
実施例1−1において用いたMordenite型ゼオライト1重量部を、β型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−980HOA」:水素型、SiO2/Al2O3モル比は414(X線回折スペクトルのピークデータを図5に示す))1重量部に変更した以外は実施例1−1と同じ操作を行って、触媒(3)を得た。
【0045】
触媒(3)は、主結晶相がγアルミナとβ型ゼオライトの混合物であり(X線回折スペクトルのピークデータを図6に示す)、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.028cm3/g、BET比表面積は142m2/g、Na2O量は0.0036重量%、SiO2/Al2O3モル比は0.023であった。
【0046】
(実施例1−4)
実施例1−1において用いたMordenite型ゼオライト1重量部を、β型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−940NHA」:NH4型、SiO2/Al2O3モル比は42(X線回折スペクトルのピークデータを図7に示す))1重量部に変更した以外は実施例1−1と同じ操作を行って、触媒(4)を得た。
【0047】
触媒(4)は、主結晶相がγアルミナとβ型ゼオライトの混合物であり(X線回折スペクトルのピークデータを図8に示す)、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.035cm3/g、BET比表面積は122m2/g、Na2O量は0.0055重量%、SiO2/Al2O3モル比は0.018であった。
【0048】
(比較例1−1)
実施例1−1において用いたMordenite型ゼオライト1重量部を、Y型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−320HOA」:水素型、SiO2/Al2O3モル比は5.4(X線回折スペクトルのピークデータを図9に示す))1重量部に変更した以外は実施例1−1と同じ操作を行って、触媒(C1)を得た。
【0049】
触媒(C1)は、主結晶相がγアルミナとY型ゼオライトの混合物であり(X線回折スペクトルのピークデータを図10に示す)、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.052cm3/g、BET比表面積は154m2/g、Na2O量は0.0032重量%、SiO2/Al2O3モル比は0.016であった。
【0050】
(比較例1−2)
β型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−930NHA」:NH4型、SiO2/Al2O3モル比は28)を2cmφのシリンダ-状金型に2g仕込み、1軸プレス機にて1000kg/cm2で30秒間保持して成形した後、破砕して粒径1〜3mmの成形体を得、これを触媒(C2)とした。
【0051】
触媒(C2)は、主結晶相がβ型ゼオライトであり(X線回折スペクトルのピークデータを図11に示す)、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.062cm3/g、BET比表面積は197m2/g、Na2O量は0.055重量%、SiO2/Al2O3モル比は25.9であった。
【0052】
(比較例1−3)
ベーマイト結晶水酸化アルミニウム(アルマティス社製「HiQ−40」)を振動ミルで中心粒径7.5μmまで粉砕して粉砕品を得た。この粉砕品を700℃で2時間焼成したところ、得られたアルミナの結晶形はγアルミナで、Na2O量は0.001重量%以下、BET比表面積は165m2/gであった。
上記粉砕品にベーマイト型アルミナゾル(日産化学製「アルミナゾル520」;ゾル中のアルミナ当たりのNa2O量は0.001重量%以下)7.6重量部を10倍に希釈した液をスプレーして加えながら、直径24cmの皿型造粒機を用いて造粒して、直径1〜3mmの球状の成形体を得た。この成形体を電気炉により700℃で2時間焼成して、触媒(C3)を得た。
【0053】
触媒(C3)は、主結晶相がγアルミナであり(X線回折スペクトルのピークデータを図12に示す)、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.236cm3/g、BET比表面積は148m2/g、Na2O量は0.0042重量%、SiO2/Al2O3モル比は0.001以下であった。
【0054】
(実施例2−1〜2−4および比較例2−1〜2−3)
上記触媒(1)〜(4)、(C1)〜(C3)をそれぞれ使用してメタノールの脱水反応を行い、ジメチルエーテルを製造した。すなわち、固定床流通式の反応装置を用い、そのなかに触媒0.5cm3を充填し、温度300℃、圧力1×105Pa(1気圧)の条件で、メタノールを500ppm含み残部が窒素からなる原料ガスを空間速度(SV)108000h-1で供給してメタノールの脱水反応を行い、ジメチルエーテルを製造した。反応開始から30分後、反応装置の入口ガスおよび反応装置の出口ガスを採取し、入口ガスのメタノール濃度IMeOHと、出口ガスのメタノール濃度OMeOHおよびジメチルエーテル濃度ODMEとをガスクロマトグラフを用いて測定した(いずれもモル濃度)。得られたメタノール濃度、ジメチルエーテル濃度から、下式(2)、(3)、(4)に基づき、メタノール反応率、ジメチルエーテル選択率、ジメチルエーテル収率を求めた。結果を表1に示す。
メタノール反応率(%)=100×(IMeOH−OMeOH)/IMeOH (2)
ジメチルエーテル選択率(%)=100×(2×ODME)/(IMeOH−OMeOH) (3)
ジメチルエーテル収率(%)=100×(2×ODME)/IMeOH (4)
【0055】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1−1で用いたゼオライトのX線回折スペクトルのピークデータである。
【図2】触媒(1)のX線回折スペクトルのピークデータである。
【図3】実施例1−2で用いたゼオライトのX線回折スペクトルのピークデータである。
【図4】触媒(2)のX線回折スペクトルのピークデータである。
【図5】実施例1−3で用いたゼオライトのX線回折スペクトルのピークデータである。
【図6】触媒(3)のX線回折スペクトルのピークデータである。
【図7】実施例1−4で用いたゼオライトのX線回折スペクトルのピークデータである。
【図8】触媒(4)のX線回折スペクトルのピークデータである。
【図9】比較例1−1で用いたゼオライトのX線回折スペクトルのピークデータである。
【図10】触媒(C1)のX線回折スペクトルのピークデータである。
【図11】触媒(C2)のX線回折スペクトルのピークデータである。
【図12】触媒(C3)のX線回折スペクトルのピークデータである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジメチルエーテル製造用触媒とその製造方法およびこれを用いたジメチルエーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジメチルエーテルは、次世代合成クリーン燃料として需要が大いに期待されており、特にディーゼルエンジン用燃料として大量に利用されることが見込まれている。また、ジメチルエーテルは、燃料電池への応用も検討されており、水素へ転換する改質原料としても期待されている。そのため、ジメチルエーテルを効率的に製造する方法が求められている。
【0003】
ジメチルエーテルの製造方法としては、下式(1)
2CH3OH → CH3OCH3 + H2O (1)
に示すように、メタノールをアルミナ触媒存在下、脱水反応させる方法が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
さらに、ジメチルエーテルの収率向上を目指し、触媒として疎水性ゼオライトを用いて未精製メタノールからジメチルエーテルを製造する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭59−16845号公報
【特許文献2】特開2004−189719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、充分なメタノール反応率が得られず、満足しうるレベルの収率には達していないのが現状であった。また、特許文献2の方法では、原料とするメタノールの水分量が少ないと、メタノール反応率は高いもののジメチルエーテル選択率が非常に低くなり、収率が下がるという欠点があり、原料の選択や反応条件等が制限されることがあった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、高いメタノール反応率および高いジメチルエーテル選択率を達成でき、メタノールから高収率でジメチルエーテルを製造することができるジメチルエーテル製造用触媒とその製造方法および該触媒を用いたジメチルエーテルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、メタノールの脱水反応に用いる触媒として、特定のゼオライトと特定のアルミナとを特定比率で混合し焼成してなる複合触媒が、高活性でメタノール反応率およびジメチルエーテル選択率が高く、極めて優れた性能を発揮することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、アルミナ100重量部に対して0.1〜20重量部のゼオライトが含有された成形体であり、SiO2/Al2O3モル比が0.018〜0.3であり、Na2O含有量が0.01重量%以下であり、BET比表面積が100〜300m2/gである、ことを特徴とする。
【0009】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法は、SiO2/Al2O3モル比が10〜1000のゼオライトと、焼成したときにNa2O含有量0.01重量%以下およびBET比表面積100〜300m2/gを示すベーマイト結晶水酸化アルミニウムとを、アルミナ換算で100重量部のベーマイト結晶水酸化アルミニウムに対しゼオライト0.1〜20重量部の割合で混合して成形した後、焼成する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明のジメチルエーテルの製造方法は、前記本発明のジメチルエーテル製造用触媒の存在下にメタノールを脱水反応させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高いメタノール反応率および高いジメチルエーテル選択率を達成でき、メタノールから高収率でジメチルエーテルを製造することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(ジメチルエーテル製造用触媒)
本発明のジメチルエーテル製造用触媒(以下、「本発明の触媒」と称することもある)は、アルミナとゼオライトとを主成分として含有する成形体である。具体的には、本発明の触媒では、アルミナ100重量部に対して0.1〜20重量部のゼオライトが含有されている。ゼオライトの含有量は、好ましくは、アルミナ100重量部に対して0.5〜15重量部であるのがよい。ゼオライトの含有量が前記範囲よりも少ないと、ゼオライトを含有させることによる直接的効果および相乗的効果が不充分で高活性が得られないこととなり、一方、多すぎると、活性は向上するものの、ジメチルエーテル選択率が低下し、結果として収率が下がることとなる。
【0013】
本発明の触媒においては、SiO2/Al2O3モル比が0.018〜0.3であることが重要である。好ましくは、触媒のSiO2/Al2O3モル比は0.020〜.025であるのがよい。触媒のSiO2/Al2O3モル比が前記範囲よりも小さいと、活性が低くなり、ジメチルエーテル選択率が極端に低下することとなり、一方、大きすぎても、活性が低下することになる。
【0014】
本発明の触媒においては、Na2O含有量が0.01重量%以下である。好ましくは、触媒中のNa2O含有量は0.005重量%以下であるのがよい。触媒中のNa2O含有量が少ないほど、メタノールの脱水反応の反応率が向上する。
【0015】
なお、本発明の触媒においては、ナトリウム以外のアルカリ金属の含有量についても少ない方が好ましく、通常、K2O含有量は0.01重量%以下、Li2O含有量は0.01重量%以下であるのがよい。また、本発明の触媒は、イオウ、塩素、フッ素のような元素も少ない方が好ましく、その含有量はいずれも、通常0.5重量%以下であるのがよい。
【0016】
本発明の触媒においては、BET比表面積が100〜300m2/gである。触媒のBET比表面積が前記範囲よりも大きすぎると、メタノールの脱水反応で使用中に熱劣化を起こし易くなり、一方、小さすぎると、充分な活性が得られない。
【0017】
本発明の触媒は、通常、細孔を有するものであり、その細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積容積が0.03cm3/g以上、好ましくは0.05cm3/g以上であるのがよい。細孔半径100nm〜100μmの細孔容積が大きいほど、脱水反応率が向上するからである。
【0018】
本発明の触媒に含まれるアルミナは、Al2O3・nH2O〔0≦n≦0.5〕で示されるものであればよく、例えば、通常、χ、η、γのような結晶相をもつ活性アルミナである。
なお、本発明の触媒に含まれるアルミナは、どのような方法で生じたものであってもよい。例えば、水酸化アルミニウムを仮焼してアルミナ粉末を得たのちに洗浄する方法、アルミニウムアルコシドの加水分解で得られた水酸化アルミニウムを仮焼する方法、アルミニウム塩を熱分解する方法などでアルミナを生じさせることができる。また、市販のアルミナをそのまま、もしくはBLT比表面積やNa2O濃度が所望の値になるように焼成処理や洗浄処理等を施して、原料としてもよい。
【0019】
本発明の触媒に含まれるゼオライトは、通常のアルミノ珪酸塩系ゼオライトであればよく、例えば、通常、Mordenaite型、β型、Ferrierite型、L型、Y型、ZSM系ゼオライトなどである。なお、ゼオライトは、水素型でもよいし、アンモニウム型でもよいが、通常は焼成に付された際に水素型に変化する。
【0020】
本発明の触媒は、脱水触媒性能を損なわない範囲で、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化セリウム(CeO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)などの無機化合物、特に金属酸化物を含むものであってもよい。また、活性に影響を与えない範囲で、ゼオライトとアルミナ混合物の成形に用いられるシリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル等の無機バインダー由来の酸化物を含んでいてもよい。
【0021】
本発明の触媒は、後述する本発明のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法によって容易に得られるものであるが、これに限定されるものではない。例えば、本発明の触媒に含まれるアルミナは、最終的に触媒として使用する段階でアルミナの形態になっていればよいのであり、後述する本発明のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法のほか、アルミニウム塩とゼオライトと混合し、成形後アルミニウム塩を熱分解させるなどの方法によっても、本発明の触媒を得ることができる。
【0022】
(ジメチルエーテル製造用触媒の製造方法)
本発明のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法(以下「本発明の触媒の製造方法」と称することもある)は、特定のゼオライトと、特定のベーマイト結晶水酸化アルミニウムとを混合して成形した後、焼成するものである。
【0023】
前記特定のゼオライトとは、SiO2/Al2O3モル比が10〜1000であるゼオライトである。原料としてこのようなゼオライトを用いることにより、(ジメチルエーテル製造用触媒)の項で前述したようなSiO2/Al2O3モル比を有する触媒が得られる。原料として用いるゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が前記範囲よりも小さいと、活性が低く、選択率が悪い触媒が得られることになり、一方、大きすぎると、ゼオライトの疎水性が高くなるので、脱水反応が起こりにくくなり、得られる触媒の活性が低くなる。
【0024】
また、前記特定のゼオライトは、そのNa2O含有量が1重量%以下であることが好ましい。Na2O含有量が少ないほど、脱水反応の反応率が高くなるからである。また、前記特定のゼオライトは、ナトリウム以外のアルカリ金属の含有量も少ないことが好ましい。
【0025】
本発明の触媒の製造に用いるゼオライトとしては、(ジメチルエーテル製造用触媒の製造方法)の項で前述したように種々の型のゼオライトを用いることができる。また、ゼオライトは、水素型でもよいし、アンモニウム型でもよい。なお、本発明の触媒の製造に用いるゼオライトは、前述した条件を満たす市販品を用いてもよいし、合成したものを用いてもよい。
【0026】
前記特定のベーマイト結晶水酸化アルミニウムとは、焼成したときに(具体的には、例えば、焼成温度500〜800℃で焼成したときに)Na2O含有量0.01重量%以下およびBET比表面積100〜300m2/gを示すベーマイト結晶水酸化アルミニウムである。原料としてこのようなベーマイト結晶水酸化アルミニウムを用いることにより、(ジメチルエーテル製造用触媒)の項で前述したような触媒のNa2O含有量およびBET比表面積を有する触媒が得られる。原料として用いるベーマイト結晶水酸化アルミニウムを焼成したときのNa2O含有量が前記範囲よりも大きいと、得られる触媒の脱水反応における反応率が低下することになる。また、原料として用いるベーマイト結晶水酸化アルミニウムを焼成したときのBET比表面積が前記範囲よりも大きいと、得られる触媒が脱水反応で使用中に熱劣化を起こし易いものとなり、一方、小さすぎると、充分な活性を有する触媒が得られない。
【0027】
前記ゼオライトと前記ベーマイト結晶水酸化アルミニウムは、アルミナ換算で100重量部のベーマイト結晶水酸化アルミニウムに対しゼオライト0.1〜20重量部の割合で混合する。ゼオライトの使用割合が前記範囲であれば、(ジメチルエーテル製造用触媒)の項で前述したようなゼオライト含有量を有する触媒が得られる。
混合に用いる装置は、特に制限されるものではなく、例えば、V型混合機、ナフターミキサー、ヘンシェルミキサー、オムニミキサー、スーパーミキサー、レディゲミキサー、二重円錐混合機、エアードミキサー等の公知の装置を使用することができる。
【0028】
成形方法は、特に制限されるものではなく、例えば、押出し成形、打錠成形、転動造粒等の公知の方法を採用することができる。
焼成方法は、特に制限されるものではないが、ドライ焼成で行なうと、アルミナ表面の水酸基が低減し、ルイス酸点が増加するので、好ましい。
【0029】
焼成温度は、特に制限されないが、通常100〜600℃の範囲とするのがよい。焼成時間は、焼成温度等に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、通常、10時間〜100時間とするのが好ましい。
焼成に用いる装置は、加熱できる装置であれば特に限定されないが、例えば、熱風循環式焼成炉、静置式焼成炉、トンネル炉、ロータリーキルン、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉等を使用することができる。
【0030】
(ジメチルエーテルの製造方法)
本発明のジメチルエーテルの製造方法は、前述した本発明の触媒の存在下にメタノールを脱水反応させるものである。
【0031】
本発明のジメチルエーテルの製造方法において用いる原料は、メタノールを主成分として含むものであればよく、例えば、メタノール単独、メタノールと水蒸気の混合物、メタノールとメタノール以外のアルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等)との混合物、メタノールと不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等)との混合物、メタノールと前記メタノール以外のアルコールと前記不活性ガスとの混合物などが挙げられる。メタノールと水蒸気の混合物またはメタノールとメタノール以外のアルコールとの混合物を用いる場合、これらの混合物中に占めるメタノールの割合は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上であるのがよい。また、メタノールと不活性ガスとの混合物またはメタノールとメタノール以外のアルコールと不活性ガスとの混合物の場合、これら混合物のうち不活性ガスを除いたものに占めるメタノールの割合は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上であるのがよい。メタノールの脱水反応は一般に気相で行われるので、原料は、通常、気体の状態で供給されることが好ましく、例えば、液体の状態で貯蔵しておき、反応前に、熱交換器などを使用して気化させて供給することができる。
【0032】
メタノールの脱水反応を行う際には、反応温度は、通常、250〜450℃、好ましくは270〜400℃とするのがよい。また、反応圧力は、反応温度に応じて適宜設定すればよいが、下限は、通常1×105Pa以上とするのがよく、上限は、通常30×105Pa以下、好ましくは20×105Pa以下とするのがよい。
メタノールの脱水反応は、通常、多管式反応器のような固定床反応器で行うことが好ましく、そのときの空間速度は、通常、500h-1以上、150000h-1以下とするのがよい。
【0033】
本発明のジメチルエーテルの製造方法において得られたジメチルエーテルは、そのまま、または必要に応じて蒸留などにより精製して、使用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本文中において示した物性値は次の方法により測定した。
【0035】
<結晶相>
試料をX線回折装置(理学電機製「RAD−RB RU−200」)を用いて分析し、得られたX線回折スペクトルのピークデータから結晶相を同定し、そのうち相対ピーク強度の最も高いものを主結晶相とした。
【0036】
<Na2O含有量(重量%)>
JIS−R9301に従って求めた。
【0037】
<SiO2/Al2O3モル比>
試料をアルカリ溶融させた後に酸に溶解させ、ICP発光分光装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「SPS4000」)を用いて分析し、試料中のSiO2量を求めた。他方、試料をフッ化水素酸で処理し、その後アルカリ溶解させ後に酸に溶解させ、上記ICP発光分光装置を用いて分析し、試料中のAl2O3量を求めた。そして、SiO2量とAl2O3量よりSiO2/Al2O3モル比を算出した。
【0038】
<BET比表面積(m2/g)>
比表面積測定装置(マウンテック製「Macsorb Model−1201」)を用いて窒素吸着法により求めた。
【0039】
<細孔容積(cm3/g)>
細孔分布測定装置(カンタクローム製「オートスキャン33型」)を用いて水銀圧入法により試料の細孔分布を測定した。そして、横軸を細孔半径とし、縦軸を細孔半径の大きいものから小さいものへ順次その容積を累積していった累積細孔容積とする累積細孔分布曲線より、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積容積を求めた。
【0040】
(実施例1−1)
ベーマイト結晶水酸化アルミニウム(アルマティス社製「HiQ−40」)を振動ミルで中心粒径7.5μmまで粉砕して粉砕品を得た。この粉砕品を700℃で2時間焼成したところ、得られたアルミナの結晶形はγアルミナで、Na2O量は0.001重量%以下、BET比表面積は165m2/gであった。
次に、上記粉砕品100重量部とMordenite型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−640HOA」:水素型、SiO2/Al2O3モル比は19(X線回折スペクトルのピークデータを図1に示す))1重量部とを混合し、得られた混合粉にベーマイト型アルミナゾル(日産化学製「アルミナゾル520」;ゾル中のアルミナ当たりのNa2O量は0.001重量%以下)7.6重量部を10倍に希釈した液をスプレーして加えながら、直径24cmの皿型造粒機を用いて造粒して、直径1〜3mmの球状の成形体を得た。この成形体を電気炉により700℃で2時間焼成して、触媒(1)を得た。
【0041】
触媒(1)は、主結晶相がγアルミナとMordenite型ゼオライトの混合物であり(X線回折スペクトルのピークデータを図2に示す)、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.056cm3/g、BET比表面積は111m2/g、Na2O量は0.0032重量%、SiO2/Al2O3モル比は0.021であった。
【0042】
(実施例1−2)
実施例1−1において用いたMordenite型ゼオライト1重量部を、β型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−930NHA」:NH4型、SiO2/Al2O3モル比は28(X線回折スペクトルのピークデータを図3に示す))16重量部に変更した以外は実施例1−1と同じ操作を行って、触媒(2)を得た。
【0043】
触媒(2)は、主結晶相がγアルミナとβ型ゼオライトの混合物であり(X線回折スペクトルのピークデータを図4に示す)、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.069cm3/g、BET比表面積は237m2/g、Na2O量は0.0067重量%、SiO2/Al2O3モル比は0.247であった。
【0044】
(実施例1−3)
実施例1−1において用いたMordenite型ゼオライト1重量部を、β型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−980HOA」:水素型、SiO2/Al2O3モル比は414(X線回折スペクトルのピークデータを図5に示す))1重量部に変更した以外は実施例1−1と同じ操作を行って、触媒(3)を得た。
【0045】
触媒(3)は、主結晶相がγアルミナとβ型ゼオライトの混合物であり(X線回折スペクトルのピークデータを図6に示す)、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.028cm3/g、BET比表面積は142m2/g、Na2O量は0.0036重量%、SiO2/Al2O3モル比は0.023であった。
【0046】
(実施例1−4)
実施例1−1において用いたMordenite型ゼオライト1重量部を、β型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−940NHA」:NH4型、SiO2/Al2O3モル比は42(X線回折スペクトルのピークデータを図7に示す))1重量部に変更した以外は実施例1−1と同じ操作を行って、触媒(4)を得た。
【0047】
触媒(4)は、主結晶相がγアルミナとβ型ゼオライトの混合物であり(X線回折スペクトルのピークデータを図8に示す)、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.035cm3/g、BET比表面積は122m2/g、Na2O量は0.0055重量%、SiO2/Al2O3モル比は0.018であった。
【0048】
(比較例1−1)
実施例1−1において用いたMordenite型ゼオライト1重量部を、Y型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−320HOA」:水素型、SiO2/Al2O3モル比は5.4(X線回折スペクトルのピークデータを図9に示す))1重量部に変更した以外は実施例1−1と同じ操作を行って、触媒(C1)を得た。
【0049】
触媒(C1)は、主結晶相がγアルミナとY型ゼオライトの混合物であり(X線回折スペクトルのピークデータを図10に示す)、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.052cm3/g、BET比表面積は154m2/g、Na2O量は0.0032重量%、SiO2/Al2O3モル比は0.016であった。
【0050】
(比較例1−2)
β型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−930NHA」:NH4型、SiO2/Al2O3モル比は28)を2cmφのシリンダ-状金型に2g仕込み、1軸プレス機にて1000kg/cm2で30秒間保持して成形した後、破砕して粒径1〜3mmの成形体を得、これを触媒(C2)とした。
【0051】
触媒(C2)は、主結晶相がβ型ゼオライトであり(X線回折スペクトルのピークデータを図11に示す)、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.062cm3/g、BET比表面積は197m2/g、Na2O量は0.055重量%、SiO2/Al2O3モル比は25.9であった。
【0052】
(比較例1−3)
ベーマイト結晶水酸化アルミニウム(アルマティス社製「HiQ−40」)を振動ミルで中心粒径7.5μmまで粉砕して粉砕品を得た。この粉砕品を700℃で2時間焼成したところ、得られたアルミナの結晶形はγアルミナで、Na2O量は0.001重量%以下、BET比表面積は165m2/gであった。
上記粉砕品にベーマイト型アルミナゾル(日産化学製「アルミナゾル520」;ゾル中のアルミナ当たりのNa2O量は0.001重量%以下)7.6重量部を10倍に希釈した液をスプレーして加えながら、直径24cmの皿型造粒機を用いて造粒して、直径1〜3mmの球状の成形体を得た。この成形体を電気炉により700℃で2時間焼成して、触媒(C3)を得た。
【0053】
触媒(C3)は、主結晶相がγアルミナであり(X線回折スペクトルのピークデータを図12に示す)、細孔半径100nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.236cm3/g、BET比表面積は148m2/g、Na2O量は0.0042重量%、SiO2/Al2O3モル比は0.001以下であった。
【0054】
(実施例2−1〜2−4および比較例2−1〜2−3)
上記触媒(1)〜(4)、(C1)〜(C3)をそれぞれ使用してメタノールの脱水反応を行い、ジメチルエーテルを製造した。すなわち、固定床流通式の反応装置を用い、そのなかに触媒0.5cm3を充填し、温度300℃、圧力1×105Pa(1気圧)の条件で、メタノールを500ppm含み残部が窒素からなる原料ガスを空間速度(SV)108000h-1で供給してメタノールの脱水反応を行い、ジメチルエーテルを製造した。反応開始から30分後、反応装置の入口ガスおよび反応装置の出口ガスを採取し、入口ガスのメタノール濃度IMeOHと、出口ガスのメタノール濃度OMeOHおよびジメチルエーテル濃度ODMEとをガスクロマトグラフを用いて測定した(いずれもモル濃度)。得られたメタノール濃度、ジメチルエーテル濃度から、下式(2)、(3)、(4)に基づき、メタノール反応率、ジメチルエーテル選択率、ジメチルエーテル収率を求めた。結果を表1に示す。
メタノール反応率(%)=100×(IMeOH−OMeOH)/IMeOH (2)
ジメチルエーテル選択率(%)=100×(2×ODME)/(IMeOH−OMeOH) (3)
ジメチルエーテル収率(%)=100×(2×ODME)/IMeOH (4)
【0055】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1−1で用いたゼオライトのX線回折スペクトルのピークデータである。
【図2】触媒(1)のX線回折スペクトルのピークデータである。
【図3】実施例1−2で用いたゼオライトのX線回折スペクトルのピークデータである。
【図4】触媒(2)のX線回折スペクトルのピークデータである。
【図5】実施例1−3で用いたゼオライトのX線回折スペクトルのピークデータである。
【図6】触媒(3)のX線回折スペクトルのピークデータである。
【図7】実施例1−4で用いたゼオライトのX線回折スペクトルのピークデータである。
【図8】触媒(4)のX線回折スペクトルのピークデータである。
【図9】比較例1−1で用いたゼオライトのX線回折スペクトルのピークデータである。
【図10】触媒(C1)のX線回折スペクトルのピークデータである。
【図11】触媒(C2)のX線回折スペクトルのピークデータである。
【図12】触媒(C3)のX線回折スペクトルのピークデータである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ100重量部に対して0.1〜20重量部のゼオライトが含有された成形体であり、SiO2/Al2O3モル比が0.018〜0.3であり、Na2O含有量が0.01重量%以下であり、BET比表面積が100〜300m2/gである、ことを特徴とするジメチルエーテル製造用触媒。
【請求項2】
SiO2/Al2O3モル比が10〜1000のゼオライトと、焼成したときにNa2O含有量0.01重量%以下およびBET比表面積100〜300m2/gを示すベーマイト結晶水酸化アルミニウムとを、アルミナ換算で100重量部のベーマイト結晶水酸化アルミニウムに対しゼオライト0.1〜20重量部の割合で混合して成形した後、焼成する、ことを特徴とするジメチルエーテル製造用触媒の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のジメチルエーテル製造用触媒の存在下にメタノールを脱水反応させる、ことを特徴とするジメチルエーテルの製造方法。
【請求項1】
アルミナ100重量部に対して0.1〜20重量部のゼオライトが含有された成形体であり、SiO2/Al2O3モル比が0.018〜0.3であり、Na2O含有量が0.01重量%以下であり、BET比表面積が100〜300m2/gである、ことを特徴とするジメチルエーテル製造用触媒。
【請求項2】
SiO2/Al2O3モル比が10〜1000のゼオライトと、焼成したときにNa2O含有量0.01重量%以下およびBET比表面積100〜300m2/gを示すベーマイト結晶水酸化アルミニウムとを、アルミナ換算で100重量部のベーマイト結晶水酸化アルミニウムに対しゼオライト0.1〜20重量部の割合で混合して成形した後、焼成する、ことを特徴とするジメチルエーテル製造用触媒の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のジメチルエーテル製造用触媒の存在下にメタノールを脱水反応させる、ことを特徴とするジメチルエーテルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−29988(P2008−29988A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208303(P2006−208303)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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