説明

ジメチルエーテル(DME)を利用した自然エネルギーの液化と貯蔵

【課題】本発明は太陽光発電或いは風力発電等によって得られる変動の大きい自然エネルギーに基づく電力を使いやすい電力に変換する。
【解決手段】自然エネルギー回収手段によって得られた電力を用いて水を電気分解して、水素と酸素を発生させ、発生した前記水素を、触媒を用いて一酸化炭素または二酸化炭素と反応させジメチルエーテル(DME)を合成し、該合成されたDMEを液化して貯蔵する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽光発電或いは風力発電等によって得られる変動の大きい電力を液化することによって電力の貯蔵を行い、変動の少ない使いやすい電力に変換する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電、風力発電等によって得られる電力は変動が大きく、そのままでは通常の電力として利用することが極めて困難である。そのために現在はこの電力を一旦電力会社に供給し、電力会社の大容量の電力に混入して変動を吸収させる方法がとられている。そのために電力会社のバックアップなしには利用は不可能な状況下にある。
【0003】
しかしながら太陽光発電、風力発電等の発電容量が大きくなるにしたがって電力会社の受け入れ容量にも限界があり、受け入れを拒否されことになり、必然的に自己完結型のシステムとせざるを得ない状況になりつつある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力の変動をなくするには、何らかの方法で一旦電力を貯蔵することが最善の方法であり、これが出来れば総てが解決する。しかし小容量の電力であれば二次電池、キャパシター等を利用して電力をそのままのかたちで貯蔵出来るが、大容量の電力となればそのままでの貯蔵は技術的にも経済的にも極めて困難であり、実際問題として不可能なことである。従って電力をそのまま貯蔵するのではなく,元の電力に戻し易い別の物質に一旦替え、しかも多量に貯蔵出来る方法として、電気水分解法等によって水素を発生させ、水素で貯蔵し、その貯蔵した水素から、ふたたび電力を再生させる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
水素そのものはエネルギーと水があれば比較的容易に製造出来る物質である。エネルギーとして太陽光発電あるいは風力発電等自然エネルギーを利用して発電した電力を使用して水を電気分解し、水素と酸素を生成し、水素を利用してエネルギーの貯蔵即ち、かたちを替えた電力の貯蔵を行なう。
【0006】
しかし水素は非常に扱い難い物質であるから、そのままでは利用できないので下記の何れかの方法をとる必要がある。
1、気体のまま高圧ボンベに圧縮し貯蔵する方法。
2、メタルハイドライドとして金属に吸収させる方法。
3、液体水素として貯蔵する方法。
4、ケミカルハイドライドとし、液化して貯蔵する方法。
【0007】
気体のまま高圧ボンベに詰めるとすれば、わが国の安全基準に沿って最高25MPaまで圧縮し、1/250にすることは可能である。しかしガス体のままでの高圧縮は肉厚の高圧縮容器が必要となり、容器の重量が増すので、現在はその対策としてアルミ製タンクの回りをカーボン繊維で補強する等の工夫が施されている。しかしそれでも水素の貯蔵量はタンク重量の数パーセントにしかならない。従って大容量の水素の貯蔵には向かず、せいぜい燃料電池車の燃料タンク程度である。
【0008】
メタルハイドライドとすれば体積は約1/1000に縮小することが出来るが、この場合も金属の重量が増し、水素の含蔵比率を含蔵金属の5.5パーセントとすることが目標であるが、今のところ3.5パーセント止まりであり、また、水素を取り出す事が容易でなく、大容量の水素の貯蔵には適さない。
【0009】
液体水素にすれば高圧縮水素の数倍のエネルギー密度を持たせることが出来るが、マイナス253℃という極低温にする必要があり、さらに液化の工程で水素の有するエネルギーの約30〜40パーセントが消費され、また非常にリークし易いために供給時のロスが10〜20パーセントと大きく、現在はロケット燃料などの特殊用途にしか用いられていない。
【0010】
多量の貯蔵と扱い易さの点からすれば、ケミカルハイドライドとし、液化するのが最も実用的で優れた方法である。即ち、メタノール或いはDME(ジメチールエーテル)を合成し貯蔵する方法である。
【発明の効果】
【0011】
本件発明により、自然エネルギーを有効に回収することによって総合エネルギー効率を飛躍的に向上させることができるとともに、極めて有効なエコロジー対策として活用することが可能となる。さらに、都市分散型発電システムを形成すれば、効率のよい自然エネルギー利用社会を構築することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
水素の貯蔵体として利用するDMEの化学式は次式で示される。
CH3−O−CH3
【0013】
物性については沸点が−25・1℃の無色の気体で化学的に安定しており、25℃に於ける飽和蒸気圧が0.6MPaと低く、加圧すると容易に液化し、LPGに類似している。気体状態の低発熱量は14,200Kcal/Nm3でメタン8600Kcal/Nm3より高く、プロパン21,800Kcal/Nm3より低い。
【0014】
環境に優しい燃料として最近にわかに注目され、脱石油燃料としても期待されている。毒性が極めて低く、最近はフロンの代替品として噴射剤としても使用され、自然界には存在しない人工合成燃料である。
【0015】
DMEの製造法は「メタノール脱水法」と、一酸化炭素から直接合成する「直接合成法」がある。「直接合成法」は水素と炭素があれば合成出来るので天然ガス、石炭から合成する。また触媒を利用して二酸化炭素(CO2)からも合成できるので、現在問題となっているCO2の吸収手段、および有効利用方法として将来おおいに期待されている。
【0016】
またDMEは改質して水素を取り出し易いために、水素の貯蔵体、キャリヤーとして貴重な燃料であり、水素を液化して液体水素とすることに比べれば、はるかにハンドリングし易く、コストもかからない。
【0017】
このように自然エネルギーと水から水素を作り、更にDME等の液体燃料を合成することは、自然エネルギーを液化することであり、これは恰も地球が数千万年、数億年かけて太陽エネルギーを石油等液体燃料に再生した事と同じことである。このように自然エネルギーが液化出来れば,大変なメリットが期待出来る。例えばサハラ砂漠に水素およびDME製造工場を併設した太陽光発電所を建設し、またヒマラヤには水力発電所を建設し、DMEを合成し、石油同様にタンクローリー、タンカーで輸送出来るようになる。
【0018】
自然エネルギー利用発電所はとかく人里離れた砂漠や山岳地帯などの僻地に設置されるケースが多いので、発電電力をDMEに変換することのメリットは計り知れない。送電線が要らないので、消費地から遥かに離れた遠隔地にも設置できる。
【0019】
因みに、世界の砂漠の5パーセントに太陽電池をひき詰めれば、またヒマラヤから流れ出る水を水力発電に有効利用出来たとすれば、いずれの場合も世界の必要とする全エネルギーを賄うことが可能との試算もある。
【0020】
また別の利用法として負荷の変動を嫌う原子力発電所とか、水力発電所に水素およびDME製造工場を併設すれば、負荷変動の調節機構として利用することも可能であり、揚水発電所と同様の効果が期待できる。
【0021】
更にまた、新しいエネルギー社会の構築が見えてくる。即ち分散型コーゼネ発電によるエネルギー対策である。
【0022】
現在の大型火力発電所とか原子力発電所は何れも需要地から遠く離れているために、発電に伴って発生する膨大な量の廃熱が有効利用出来ず、徒に海中に放棄され、海洋の生態系を乱している。しかもこの放棄されている「熱」は低圧とはいえ、蒸気としては最も価値のある「潜熱」であるから、膨大なエネルギーを無駄にしていることになる。そのために人工衛星から赤外線撮影すると発電所周辺の海の色が変化しているのがはつきりと確認出来るほどである。それ故に最新の火力発電所ですら総合エネルギー効率は40パーセントをやっと超えた程度に過ぎない。燃料の有するエネルギーの過半数は、海中にあるいは空中に無為に放棄されているのである。
【0023】
例えば、図1に示すように各家庭の屋根1を太陽電池で葺いて太陽電池で葺いた屋根1を構成し、発電した電力はそのまま、その地区のエネルギーセンターへ送電し、水電気分解水素発生装置2を用いてまとめて水を電気分解することにより水素を生成する。つぎに、この電気分解によって発生した水素を用いて、DME合成装置3内において触媒を用いて一酸化炭素または二酸化酸素と反応させて、DMEを合成する。合成されたDMEはDME貯蔵タンクに貯蔵する。この後、合成されたDMEはパイプラインで各家庭、事業所に再配送され、分解されることによって水素を発生し、該水素は定置型燃料電池6の燃料とされる。なお、再び生成した一酸化炭素または二酸化酸素は次のサイクルにおけるDME合成の原料として再使用に供される。また、生成したDMEはたとえば、タンクローリー(DME輸送用)を用いて生成したDME所定の貯蔵場所に移送し、任意の適当な場所においてマイクロタービン方式でコージェネ発電を行なうことにより、発電にともなって発生する熱の有効利用が可能となる。発生した電力はたとえば、一般の家庭に供給されて、エアコン8、テレビ9、冷蔵庫10等の電気設備を稼働させるのに使用することができる。また、DMEによるコージェネ発電を各家庭において行うように構成すれば、発電に伴って発生する熱はたとえば、家庭の流し11、シャワー12、風呂13等に直接利用することができ、総合エネルギー効率は飛躍的に向上する。なお、図1において、実線ラインは電力ライン、点線は温水ライン、破線はDME移送ライン、二重実線は水素移送ラインを示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】自然エネルギーを液化する工程(DMEの合成)およびDMEから電力を再生するダイヤグラム。
【図2】都市分散型コーゼネ発電システムを図示したものである。
【符号の説明】
【0025】
1、太陽電池で葺いた屋根
2、水電気分解水素発生装置
3、DME 合成装置
4、DME 貯蔵タンク
5、水素改質装置
6、燃料電池
7、タンクローリー(DME 輸送用)
8、エヤコン
9、テレビ
10、冷蔵庫
11、流し
12、シャワー
13、風呂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電及び風力発電の少なくとも1つの発電装置を含む自然エネルギー回収手段によって得られた電力を用いて水を電気分解して、水素と酸素を発生させる段階と、
発生した前記水素を、触媒を用いて一酸化炭素または二酸化炭素と反応させ(DME)を合成する段階と、
該合成されたジメチルエーテルを液化して貯蔵する段階とを有する、
前記電気分解によって発生した水素の貯蔵体としてジメチルエーテルを利用することを特徴とする自然エネルギー貯蔵方法。
【請求項2】
さらに、前記ジメチルエーテルから触媒を利用して水素を取り出し、燃料電池の燃料として前記水素を使用することによって電力を再生する段階を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、前記ジメチルエーテルを直接燃料として用いてジーゼルエンジン及びマイクロタービンの少なくともいずれかを含む駆動手段を駆動することによって前記自然エネルギーを回収する段階とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−62192(P2010−62192A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223452(P2008−223452)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000244028)明産株式会社 (9)
【Fターム(参考)】