説明

ジメルカプトジアリールスルホン化合物の製造方法

【課題】高屈折率、高硬度および高透明性を有する光学材料用樹脂を与えるための単量体成分の原料として有用なジメルカプトジアリールスルホン化合物の環境負荷が少なく経済的な製法の提供。
【解決手段】式(1):


(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表されるジメチルチオジアリールスルホン化合物をハロゲン化剤と反応させた後、加水分解してジメルカプトジアリールスルホン化合物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率、高硬度および高透明性を有する光学材料用樹脂を与えるための単量体成分の原料として有用なジメルカプトジアリールスルホン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂よりなる光学材料は、ガラス等の無機材料と比較して軽量であり、成形加工性等にも優れており、取扱いが簡単であることから、近年、各種用途に広く用いられている。このような有機光学材料用樹脂として、従来から、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ジエチレングリコールジアリルカーボナート樹脂等が用いられている。
【0003】
しかしながら、従来の有機光学材料用樹脂は、低い屈折率、大きな複屈折、高い分散性等の欠点を有し、耐熱性や耐衝撃性にも劣るため、必ずしも満足できるものではなかった。このため、有機光学材料用樹脂用の材料について、屈折率を向上させる試みがなされており、各種の置換基を有するジアリールスルフィド化合物が高屈折率で透明性に優れた樹脂を与える単量体として有用であることが報告されている。
【0004】
これらのジアリールスルフィド化合物を製造する方法ための原料として、下記一般式:
【0005】
【化1】

【0006】
で表されるジメルカプトジアリールスルフィド化合物が用いられている。そして、該ジメルカプトジアリールスルフィド化合物の製造方法としては、下記一般式:
【0007】
【化2】

【0008】
で表される4,4’−ジスルホニルクロライドジアリールスルフィド化合物を経由して、金属/鉱酸還元によって上記ジメルカプトジアリールスルフィド化合物とする方法が報告されている(特許文献1、2参照)。
【0009】
しかしながら、上記した方法は、過剰の還元剤を必要とするため、亜鉛等の金属を含有する酸廃水が大量に排出され、工業的規模で実施するのに適当な方法とは言い難く、環境負荷が非常に大きいという問題点がある。そのため、上記方法で得られたジメルカプトジアリールスルフィド化合物は非常に高価である。
【0010】
一方、上記したジメルカプトジアリール化合物に代わり得る材料として、各種の置換基を有するジアリールスルホン化合物についての検討が進められており、その原料として、下記一般式:
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表される4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物が使用されている。
【0013】
該4,4’−ジメルカプトジアリールスルホン化合物の製造方法としても、上記したジメルカプトジアリールスルフィド化合物と同様に、下記一般式:
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は上記に同じ。)で表されるジスルホニルクロライドジアリールスルホン化合物の金属/鉱酸還元による方法が知られている。
【0016】
しかしながら、この方法についても、亜鉛等の金属を含有する酸廃水が大量に排出され、工業的規模で実施するのに適当な方法とは言い難く、上記方法で得られたジメルカプトジアリールスルホン合物は非常に高価である。
【0017】
また、ジメルカプトジアリールスルホン化合物のその他の合成法として、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンに硫化ソーダと硫黄を反応させた後、亜硫酸ナトリウムで処理する方法も報告されている(特許文献3参照)。
【0018】
【化5】

【0019】
しかしながら、この方法は、容積効率が悪い上に、反応を4サイクル実施した合計収率が70%と非常に効率が悪く、工業的に利用するのは非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】ソ連特許499261号明細書
【特許文献2】日本特許2785876号明細書
【特許文献3】米国特許2949002号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、高屈折率、高硬度および高透明性を有する光学材料用樹脂を与えるための単量体成分の原料として有用なジメルカプトジアリールスルホン化合物を、環境負荷が少なく経済的に有利な条件で製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、特定の一般式で表されるジメチルチオジアリールスルホン化合物を原料として、これをハロゲン化剤と反応させた後、加水分解する方法によれば、目的とするジメルカプトジアリールスルホン化合物を、簡便にかつ安価な工程で製造できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0023】
即ち、本発明は、下記のジメルカプトジアリールスルホン化合物の製造方法を提供するものである。
項1. 一般式(1):
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表されるジメチルチオジアリールスルホン化合物をハロゲン化剤と反応させて、一般式(2):
【0026】
【化7】

【0027】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は上記に同じであり、Xはハロゲン原子を示し、m及びnは、それぞれ1から3の整数を示す。)で表されるジアリールスルホン化合物とした後、加水分解させることを特徴とする、一般式(3):
【0028】
【化8】

【0029】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は上記に同じ。)で表されるジメルカプトジアリールスルホン化合物の製造方法。
項2. R〜R及びR1’〜R4’が、いずれも水素原子である上記項1に記載の方法。
項3. ハロゲン化剤が、塩素、塩化スルフリル、五塩化リン、三塩化リン、次亜塩素酸、及び臭素からなる群から選ばれた少なくとも一種である上記項1又は2に記載のジアリールスルホン化合物の製造方法。
【0030】
以下、本発明のジメルカプトジアリールスルホン化合物の製造方法について具体的に説明する。
【0031】
(1)ジメチルチオジアリールスルホン化合物とハロゲン化剤との反応工程
本発明方法では、まず、第一工程として、下記一般式(1):
【0032】
【化9】

【0033】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表されるジメチルチオジアリールスルホン化合物をハロゲン化剤と反応させて、下記一般式(2):
【0034】
【化10】

【0035】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は上記に同じであり、Xはハロゲン原子を示し、m及びnは、それぞれ1から3の整数を示す。)で表されるジアリールスルホン化合物とする。
【0036】
一般式(1)で表されるジメチルチオジアリールスルホン化合物において、R〜R及びR1’〜R4’で示される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。ハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは塩素原子である。ただし、経済的な観点からR〜R及びR1’〜R4’としては、水素原子がより好ましい。
【0037】
ハロゲン化剤としては、塩素、塩化スルフリル、五塩化リン、三塩化リン、次亜塩素酸、臭素等を例示できる。
【0038】
ハロゲン化剤の使用量は、一般式(1)で表される4,4’−ジメチルチオジアリールスルホン化合物1モルに対して、2〜12モル程度とすることが好ましく、2〜4モル程度とすることがより好ましい。
【0039】
4,4’−ジメチルチオジアリールスルホン化合物とハロゲン化剤との反応では、反応溶媒として、例えば、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の極性溶媒、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類等を用いることが好ましい。経済的な観点から、トルエンがより好ましい。
【0040】
反応溶媒の使用量は、4,4’−ジメチルチオジアリールスルホン化合物100重量部に対して10〜5000重量部程度とすることが好ましく、100〜1000重量部程度とすることがより好ましい。
【0041】
反応温度は、30〜120℃程度とすることが好ましく、40〜70℃程度とすることがより好ましい。反応時間は、通常、1〜30時間程度である。
【0042】
上記した方法によって、一般式(2):
【0043】
【化11】

【0044】
(式中、R〜R、R1’〜R4’、X、m、及びnは上記に同じ。)で表されるジアリールスルホン化合物を得ることができる。
【0045】
上記一般式(2)で表されるジアリールスルホン化合物において、Xで表されるハロゲン原子は、使用したハロゲン化剤に対応するものであり、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を例示できる。
【0046】
mの値とnの値は、それぞれ1〜3の範囲で変わり得るが、通常、ハロゲン化剤の使用量に応じた値となる。例えば、ハロゲン化剤の量が一般式(1)で表されるジメチルチオジアリールスルホン化合物の2倍モルの場合には、一般式(2)において、m及びnの値がいずれも1であるジアリールスルホン化合物が主要な生成物となり、ハロゲン化剤の量が一般式(1)で表されるジメチルチオジアリールスルホン化合物の4倍モルの場合には、一般式(2)において、m及びnの値がいずれも2であるジアリールスルホン化合物が主要な生成物となる。
【0047】
かくして得られる、ジアリールスルホン化合物は、必要に応じて水洗、分液して取得できる。また、溶媒留去後、再結晶することにより純度を高めて単離することができる。
【0048】
(2)加水分解工程
次いで、上記工程で得られた一般式(2):
【0049】
【化12】

【0050】
(式中、R〜R、R1’〜R4’、X、m、及びnは上記に同じ。)で表されるジアリールスルホン化合物を加水分解することによって、一般式(3):
【0051】
【化13】

【0052】
(式中、R〜R、及びR1’〜R4’は上記に同じ。)で表されるジメルカプトジアリールスルホン化合物を得ることができる。
【0053】
反応溶媒としては、上記ハロゲン化反応に使用した有機溶媒に水を加えた溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の極性溶媒と水との混合溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類等と水との混合溶媒などを用いることができる。この場合、極性溶媒と水との混合溶媒は均一溶媒となり、ハロゲン化炭化水素類や炭化水素類と水との混合溶媒は二相系溶媒となる。特に、経済的な観点からトルエンと水との二相系溶媒が好ましい。
【0054】
加水分解に使用する水の量は、ジアリールスルホン化合物1モルに対して、2〜200モル程度とすることが好ましく、10〜50モル程度とすることがより好ましい。
【0055】
反応温度は、30〜150℃程度であることが好ましく、70〜120℃程度であることがより好ましい。反応時間は、通常、1〜30時間程度である。
【0056】
上記した方法によれば、一般式(3)で表されるジメルカプトジアリールスルホン化合物を得ることができる。
【0057】
かくして得られるジメルカプトジアリールスルホン化合物は、二相系溶媒を用いた場合には、有機相と水相を分液し、有機相を水洗した後、溶媒を留去することにより取得できる。また、均一溶媒を用いた場合には、濾過などの方法で容易に取得できる。
【0058】
本発明で得られるジアリールスルホン化合物の具体例としては、例えば4,4’−ジメルカプトジフェニルスルホンを挙げることができる。
【0059】
ジメチルチオジアリールスルホン化合物の製造方法
上記したジメチルチオジアリールスルホン化合物とハロゲン化剤との反応工程で用いる、一般式(1):
【0060】
【化14】

【0061】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表されるジメチルチオジアリールスルホン化合物は新規化合物であり、例えば、下記の方法で得ることができる。
【0062】
例えば、下記一般式(4):
【0063】
【化15】

【0064】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表される4,4’−ジハロジアリールスルホン化合物と、一般式(5):MSCH(式中、Mはアルカリ金属を示す。)で表されるチオール塩化合物とを反応させることにより一般式(1)で表されるジメチルチオジアリールスルホン化合物を得ることができる。
【0065】
原料として用いる一般式(4)の4,4’−ジハロジアリールスルホン化合物は、公知化合物であり、比較的安価な物質である。一般式(4)において、Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を例示でき、特に、塩素原子が好ましい。
【0066】
〜R及びR1’〜R4’で表される各基の具体例は、上記一般式(1)と同様である。
【0067】
上記一般式(5)のチオール塩化合物において、Mで表されるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどを例示できる。
【0068】
一般式(5)のチオール塩化合物の具体例としては、ナトリウムメタンチオラート等が挙げられる。
【0069】
一般式(5)のチオール塩化合物は、アルカリ金属塩として反応溶媒に直接添加する他、一般式:HSCHで表されるチオールと、アルカリ金属水素化物(MH)又はアルカリ金属水酸化物(MOH)を溶媒中に添加して、溶媒中で塩を形成してもよい。
【0070】
一般式(5)のチオール塩化合物の使用量は、一般式(4)の4,4’−ジハロジアリールスルホン化合物1モルに対して、2〜6モル程度とすることが好ましく、2〜3モル程度とすることがより好ましい。
【0071】
一般式(4)で表される4,4’−ジハロジアリールスルホン化合物と、一般式(5)で表されるチオール塩化合物との反応は、例えば、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の極性溶媒中で行うか、或いは、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類等の有機溶媒と水との二相系溶媒中で行うことが好ましい。特に、経済的な観点から、N−メチルピロリドンを単独で用いるか、或いは、トルエンと水との二相系溶媒を用いることが好ましい。
【0072】
反応溶媒の使用量は、極性溶媒を用いる場合には、一般式(4)で表される4,4’−ジハロジアリールスルホン化合物100重量部に対して10〜5000重量部程度とすることが好ましく、100〜1000重量部程度とすることがより好ましい。
【0073】
二相系溶媒を用いる場合には、一般式(4)で表される4,4’−ジハロジアリールスルホン化合物100重量部に対して、有機溶媒、水ともに10〜5000重量部程度とすることが好ましく、100〜1000重量部程度とすることがより好ましい。
【0074】
二相系溶媒中で反応を行う場合は、相間移動触媒を用いることが好ましい。相間移動触媒としては、例えば、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミドおよびトリオクチルメチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩;ヘキサドデシルトリエチルホスホニウムブロミド、ヘキサドデシルトリブチルホスホニウムクロリドおよびテトラ−n−ブチルホスホニウムクロリド等の4級ホスホニウム塩等を用いることができる。特に、収率向上および経済性の観点から、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドが好ましい。
【0075】
相間移動触媒の使用量は、一般式(4)の4,4’−ジハロジアリールスルホン化合物100重量部に対して、0.1〜100重量部程度とすることが好ましく、0.1〜10重量部程度とすることがより好ましい。
【0076】
反応温度は、30〜150℃程度とすることが好ましく、60〜150℃程度とすることがより好ましい。反応時間は、通常、1〜30時間程度である。
【0077】
具体的な反応方法については、特に限定はなく、上記した溶媒中において、必要に応じて触媒を加えて、一般式(4)で表される4,4’−ジハロジアリールスルホン化合物と、一般式(5)で表されるチオール塩化合物とを均一に混合すればよい。各成分の添加順序については特に限定はなく、任意の方法を採用できる。
【0078】
上記した方法によれば、一般式(1):
【0079】
【化16】

【0080】
(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、上記に同じ)で表されるジアリールスルホン化合物を得ることができる。
【0081】
かくして得られるジアリールスルホン化合物は、必要に応じて水洗、分液して取得できる。また、溶媒留去後、再結晶することにより純度を高めて単離することができる。
【発明の効果】
【0082】
本発明の製造方法によれば、高屈折率、高硬度および高透明性を有する光学材料用樹脂を与えるための単量体成分の原料として有用なジメルカプトジアリールスルホン化合物を、簡便に、かつ安価な工程で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下、実施例及び製造例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0084】
実施例1 4, 4’−ジメルカプトジフェニルスルホンの製造
攪拌機、温度計、冷却管およびガス導入管を備えた内容積100mlのフラスコに、4,4’−ジメチルチオジフェニルスルホン8.4g(27mmol)およびトルエン50.0gを加え、昇温して、液温を75℃に保ちながら、塩素ガス4.8g(68mmol)を吹き込み、攪拌しながら1時間反応させた。その結果、系内でビス(4−クロロメチルスルファニルフェニル)スルホンが生成した。
【0085】
その後、水20.0gを加え、攪拌しながら液温を110℃に昇温し、12時間加水分解反応を進行させた。反応終了後、冷却し、析出した結晶を濾過することにより、4,4’−ジメルカプトジフェニルスルホン6.9gを得た。4,4’−ジメチルチオジフェニルスルホンに対する収率は90%であった。
【0086】
製造例1 4,4’−ジ(メチルチオ)ジフェニルスルホンの製造
攪拌機、温度計、冷却管およびガス導入管を備えた内容積300mlのフラスコに、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン61.0g(212mmol)、トルエン75.0gおよび50重量%テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド水溶液1.0gを加え、昇温し、液温を60℃に保ちながら、32重量%ナトリウムメタンチオラート水溶液97.5g(445mmol)を滴下し、攪拌しながら5時間反応させた。
【0087】
反応終了後、液温を25℃に冷却し、濾過することにより4,4’−ジ(メチルチオ)ジフェニルスルホンを得た。
【0088】
次いで、攪拌機、温度計、冷却管およびガス導入管を備えた内容積300mlのフラスコに、得られた粗4,4’−ジ(メチルチオ)ジフェニルスルホンとアセトニトリル150.0gを加え、液温を80℃に昇温して溶解させた。溶解後、液温10℃に冷却し、濾過することにより、4,4’−ジ(メチルチオ)ジフェニルスルホン62.5gを得た。4,4’−ジクロロジフェニルスルホンに対する収率は95%であった。
H NMR d 2.48(s,6H)、7.27(d,J=8.4Hz,4H)、7.79(d,J=8.8Hz,4H);
元素分析(C1414として) ;
計算値 C:54.16%、H:4.55%、O:10.31%、S:30.99%
実測値 C:54.19%、H:4.61%、O:10.27%、S:30.94%
屈折率 ;1.644

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式中、R〜R及びR1’〜R4’は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)で表されるジメチルチオジアリールスルホン化合物をハロゲン化剤と反応させて、一般式(2):
【化2】

(式中、R〜R及びR1’〜R4’は上記に同じであり、Xはハロゲン原子を示し、m及びnは、それぞれ1から3の整数を示す。)で表されるジアリールスルホン化合物とした後、加水分解させることを特徴とする、一般式(3):
【化3】

(式中、R〜R及びR1’〜R4’は上記に同じ。)で表されるジメルカプトジアリールスルホン化合物の製造方法。
【請求項2】
〜R及びR1’〜R4’が、いずれも水素原子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハロゲン化剤が、塩素、塩化スルフリル、五塩化リン、三塩化リン、次亜塩素酸、及び臭素からなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項1又は2に記載のジアリールスルホン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−213711(P2011−213711A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50045(P2011−50045)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】