説明

ジャガイモの萌芽抑制方法

【課題】収穫後から消費者の手に渡るまでの間に、ジャガイモの萌芽を抑制する方法を提供する。
【解決手段】ジャガイモを、2〜15℃の温度下に0.1ppm以上のエチレン濃度雰囲気下で、3〜12ヶ月間貯蔵する保管工程と、保管工程で貯蔵したジャガイモを、エチレン発生包装体と共にエチレン透過度が1ml/(m・D・atm)以上、3000ml/(m・D・atm)以下の流通容器内に収納後密封して、該容器内のエチレン濃度を0.1〜300ppmとし、これを2〜30℃の温度下にて1〜20日間流通させる流通工程を有することを特徴とするジャガイモの萌芽抑制方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャガイモの萌芽を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジャガイモは、内生休眠の終了とともに萌芽がはじまり、芽が成長する。萌芽したジャガイモは、歩留りの低下や萌芽部の除去作業を引き起こし、更には萌芽部に毒性の高いソラニンを誘導し、商品価値を低下させる。生産地の集荷場では、ジャガイモの品種にもよるが、1〜3℃の低温でジャガイモを貯蔵することにより萌芽が抑制される傾向にはあるものの完全ではなく、また、低温貯蔵すると還元糖の増加による風味の変化や加工時の褐変等、品質低下が起こる。一方15℃以上で貯蔵すると、貯蔵中の芽の成長が顕著となり、黴も発生して品質低下が加速される。また、ジャガイモを貯蔵庫から段ボール箱やプラスチック袋等の流通容器に収納して卸業者や量販店等へ輸送し、更にプラスチック製の小袋に収納して店頭で販売に供する流通の過程では、温度の上昇を伴う変化に曝されるため、萌芽は一層加速される。このため、保冷車の起用や保冷庫の設置が望まれるが、経済性、設備設置面で制約がある。
【0003】
ジャガイモの萌芽抑制の為に、マレイン酸ヒドラジドやクロロプロファム等の農薬による発芽抑制法が使用されたり、コバルトの放射線照射も利用されてきたが、残留農薬の問題や安全性に対する不安から使用が中止されたり、制限されている。このため安全性の高いエチレンを供給して、冷暗下で発芽を抑制する貯蔵方法が提案されている(特許文献1)。植物ホルモンの一種であるエチレンは、発芽や萌芽の抑制効果のあることが知られており(非特許文献1)、ジャガイモの貯蔵においても一定の萌芽抑制効果が期待できる。しかし、エチレンはジャガイモの萌芽速度を遅延させることは可能であるが、停止させることはできない。このため貯蔵庫から出庫後に流通過程になると、急速に萌芽が進行する欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−23740号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「今月の農業 50(7)」,株式会社 化学工業日報,2006年,p.55
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記した従来の問題を解決し、安全かつ経済的に、長期にわたってジャガイモの萌芽や黴の発生を抑制して、その鮮度を保持する保管・流通方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ジャガイモを収穫した後の貯蔵段階から流通段階にわたる各段階において、ジャガイモの萌芽を抑制する方法について鋭意研究を重ねた結果、長期にわたる貯蔵段階において、特定のエチレン濃度雰囲気下にてジャガイモを保管し、更にこれに引き続く流通段階においても、エチレン発生包装体と特定の流通容器によってもたらされる特定のエチレン濃度雰囲気下においてジャガイモを流通させることにより、これらの相乗的な効果によって、貯蔵段階から流通段階の各段階においてジャガイモの萌芽を抑制することが可能であることを見い出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、ジャガイモを、2〜15℃の温度下にて0.1ppm以上のエチレン濃度雰囲気下で、3〜12ヶ月間貯蔵する保管工程と、保管工程で貯蔵したジャガイモを、エチレン発生包装体と共に、エチレン透過度が1ml/(m・D・atm)以上、3000ml/(m・D・atm)以下の流通容器内に収納後密封して、該流通容器内のエチレン濃度を0.1〜300ppmとし、これを2〜30℃の温度下にて1〜20日間流通させる流通工程を有することを特徴とするジャガイモの萌芽抑制方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ジャガイモの収穫後になされる長期にわたる貯蔵段階から、貯蔵段階後の流通段階においてジャガイモの萌芽を遅らせ、ジャガイモの発芽や黴の発生などの現象を抑制して、ジャガイモの鮮度を安全かつ経済的に長期間保持するジャガイモの保管・流通方法を提供出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ジャガイモは通常、収穫後直ちに消費される場合を除いて、貯蔵庫等に長期間貯蔵され(貯蔵段階)、需要が生じた際に当該貯蔵庫等から出庫され、流通経路を経て(流通段階)消費者の手に渡る。本発明は、収穫後、長期にわたってジャガイモの鮮度を保持する方法を提供するものであり、特に、貯蔵段階及び流通段階において従来問題となっていたジャガイモの萌芽及び黴の発生を抑制する保管・流通方法として好適に利用することが出来る。
【0011】
本発明の萌芽抑制方法は、ジャガイモを、2〜15℃の温度下にて0.1ppm以上のエチレン濃度雰囲気下で、3〜12ヶ月間貯蔵する保管工程と、保管工程で貯蔵したジャガイモを、エチレン発生包装体と共に、エチレン透過度が1ml/(m・D・atm)以上、3000ml/(m・D・atm)以下の流通容器内に収納後密封して、該流通容器内のエチレン濃度を0.1〜300ppmとし、これを2〜30℃の温度下にて1〜20日間流通させる流通工程を有することを特徴とするが、貯蔵段階においては保管工程を、流通段階においては流通工程を採用する事が好適である。なお、本明細書におけるエチレン濃度は、エチレン及びエチレン以外の気体の体積を基に算出される値である。
【0012】
本発明に適用することが出来るジャガイモには特に制限は無く、「メークイン」、「男爵」、「北海こがね」、「レッドアンデス」、「インカのめざめ」等の生食用のジャガイモや「きたひめ」、「トヨシロ」等のポテトチップ等の加工用のジャガイモ等が例示できる。本発明は特に、長期にわたる貯蔵段階後の流通段階で、萌芽しやすい生食用のジャガイモの保管・流通に好適に適用できる。また、ジャガイモは、収穫後に泥付のまま、貯蔵し、流通に供してもよく、水洗したり、洗浄、殺菌後に乾燥したりして流通させて付加価値を高めることもできる。これらのジャガイモは萌芽抑制の観点から、収穫後直ちに保管工程に供することが好ましい。
【0013】
[保管工程]
保管工程においては、ジャガイモを2〜15℃の温度下にて0.1ppm以上のエチレン濃度雰囲気下で、3〜12ヶ月間貯蔵する。ジャガイモを貯蔵する場所には特に制限がなく、上記の温度範囲及びエチレン濃度範囲を保つことが出来る場所であれば、任意の貯蔵場所が選択できるが、温度制御やエチレン濃度制御が容易な閉鎖空間、例えば貯蔵庫内、保冷庫内、コンテナ内などを貯蔵場所とすることが好ましい。中でも、エチレンガスボンベから圧力調節バルブ及びガス流量計を介して貯蔵庫内のエチレン濃度を上記の範囲内に保つようにエチレンガスを供給するエチレンガス発生装置をセットした貯蔵庫内を貯蔵場所とすると、エチレン濃度の管理が容易になるため好ましい。さらに、ガスクロマトグラフィーによる貯蔵庫内のエチレン濃度を検出しながら、調圧定量バルブの開閉を自動的に制御する濃度制御システムを当該エチレンガス発生装置に採用すると、エチレン濃度の管理が容易かつ確実になるためより好ましい。なお、貯蔵場所においては、ジャガイモを任意の貯蔵容器内に貯蔵しても良い。ジャガイモの貯蔵容器には特に制限はなく、金属、プラスチック、木製のコンテナや、紙、プラスチック、布製の袋、籠等が貯蔵庫の容量に応じて用いられるが、通気性の良い格子状鋼網製コンテナが好ましい。
【0014】
保管工程においてジャガイモを貯蔵する際の温度は、2〜15℃が好ましく、3〜10℃がより好ましい。貯蔵する温度が2℃より低くなると、還元糖の増加によるジャガイモの風味の変化や加工時の褐変等、品質低下が起こる虞が生じるため好ましくなく、15℃より高くなると貯蔵中の萌芽が顕著となり、黴も発生して品質低下が加速されるので好ましくない。
【0015】
保管工程においてジャガイモを貯蔵する際のエチレン濃度は、0.1ppm以上が好ましく、1ppm以上がより好ましいが、なかでも、3〜100ppmの範囲とすることが経済面・安全面からも好ましい。エチレン濃度が0.1ppmを下回ると萌芽抑制効果や黴の発生を抑制する効果が見られなくなるため好ましくなく、30000ppm以上ではエチレンの爆発限界に入るため好ましくない。また、エチレン濃度を制御する方法には特に制限はないが、エチレン濃度を管理しつつ、エチレンガスボンベからエチレンガスを供給する方法が濃度管理の容易性・確実性の観点から好ましい。
【0016】
保管工程においてジャガイモを貯蔵する期間は、貯蔵開始から3ヶ月以上が必要であり、この間連続してエチレン雰囲気下に貯蔵する必要がある。3ヶ月未満の短期間、もしくは断続的にジャガイモをエチレン雰囲気下に貯蔵した場合には、エチレンの処理によって、逆に萌芽を促進する場合がある。また、12ヶ月以上貯蔵すると翌年に新たに収穫されたジャガイモが出荷され始めるため、長期間貯蔵する利益を失い、好ましくない。故に、保管工程でジャガイモを貯蔵する期間は3〜12ヶ月間が好ましく、ジャガイモの鮮度などを考慮すれば3〜9ヶ月間がより好ましい。
【0017】
[流通工程]
流通工程においては、保管工程で貯蔵したジャガイモを、エチレン発生包装体と共に、エチレン透過度が1ml/(m・D・atm)以上、3000ml/(m・D・atm)以下の流通容器内に収納後密封して、該流通容器内のエチレン濃度を0.1〜300ppmとし、これを2〜30℃の温度下にて1〜20日間流通させる。本工程においては、保管工程終了後のジャガイモを、直ちに使用すると、萌芽や黴の発生をより確実に抑制できるため好ましい。
【0018】
流通工程においては、エチレンを吸着させた吸着性担体を通気性包材で包装したエチレン発生包装体が用いられる。吸着性担体には、ゼオライト、シリカゲル、活性炭等が用いられるが、吸着能や経済性の観点からゼオライトが好ましい。また、エチレン発生包装体には、予め0.5〜30mg/g、好ましくは1〜10mg/gのエチレンを吸着させた吸着性担体を用いることが、エチレン濃度調整の観点から好ましい。なお、該吸着性担体は、ジャガイモ1kg重量当り1〜100gを使用すると、効果的に萌芽や黴の発生を抑制することができるため好ましい。
【0019】
通気性包材としては、エチレン透過量が5000〜10000ml/(m・D・atm)(23℃、100%RH)である包材を使用することができ、例えば、開孔を有するか、またはそれ自体が上記の透過量を有する樹脂フィルム、微多孔性膜、不織布、紙及びこれらを組み合わせたラミネート包材を例示することが出来、透湿度が1〜40g/(m・D)(40℃、90%RH)である通気性包材や、厚みが20〜100μmの通気性包材が好ましく用いられる。本発明において、エチレンを吸着させた吸着性担体を通気性包材で包装する方法には特に制限がなく、その方法として、例えば3方シール包装、4方シール包装、スティック包装等が例示できる。
【0020】
流通工程においては、保管工程にて貯蔵したジャガイモを、1〜数個のエチレン発生包装体と共にエチレン透過度が1ml/(m・D・atm)以上、3000ml/(m・D・atm)以下の流通容器内に収納後密封して流通させる。このとき、プラスティックフィルムや紙、不織布、網製等の袋にジャガイモと1〜数個のエチレン発生包装体とを小口包装し、この袋を前記容器内に収納後密封して流通させることが取り扱い上好ましい。また、プラスティックフィルムや紙、不織布、網製等の袋にジャガイモを小口包装し、この袋内に1〜数個のエチレン発生包装体を貼付して前記容器内に収納後密封して流通させることも同様の理由から好ましい。なお、前記プラスティックフィルムとしては、厚みが30〜50μmのポリオレフィンやスチロール等が同様の理由から好ましく用いられ、流通容器内のエチレン濃度や湿度の制御のために必要であれば開孔等を施しても良い。
【0021】
流通工程においてジャガイモを流通させる際の、流通容器内のエチレン濃度は、0.1〜300ppmが好ましく、0.3〜50ppmがより好ましい。エチレン濃度が0.1ppmを下回ると萌芽の発生を抑制する効果が見られなくなるため好ましくない。
【0022】
流通工程において、ジャガイモ及びエチレン発生包装体を収納した流通容器を流通させる際の温度は、2〜30℃が好ましく、5〜20℃がより好ましい。温度が2℃より低くなると、ジャガイモに含まれる還元糖が増加して風味の低下や加工時の褐変等、品質低下が起こる虞が生じるため好ましくなく、30℃より高くなると流通中の萌芽の進行が顕著となり、黴も発生して品質低下が加速されるので好ましくない。なお、流通工程の期間は、エチレン発生包装体のエチレン発生能とジャガイモの鮮度との兼ね合いから、1〜20日とする事が好ましく、より好ましくは、1〜10日である。流通期間が20日を越えると、萌芽が進行しやすくなるため好ましくなく、1日未満であると萌芽が進行する以前にジャガイモが消費者の手に渡る可能性が高くなるため、本発明を実施する利益が乏しくなる。
【0023】
流通工程において用いられる流通容器は、エチレン透過度が1ml/(m・D・atm)以上、3000ml/(m・D・atm)以下の容器であれば特に制限なく用いることが出来るが、取り扱い性の容易さや経済性を考慮すると段ボール箱を用いることが好ましい。また、段ボール箱としては、その厚みが1〜5mmのものが、強度や経済性の観点から、特に好ましく用いられる。流通容器のエチレン透過度が3000ml/(m・D・atm)を上回ると、エチレンの容器外への蒸散量が過大となり、結果として流通容器内のエチレン濃度を所望の濃度範囲内に制御することが困難となるため好ましくない。また、流通容器のエチレン透過度が3000ml/(m・D・atm)を上回る場合はさらに、容器内から容器外に蒸散したエチレンが周囲の環境に影響を与える虞もある。当該影響が生じうる状況としては、ジャガイモ及びエチレン発生包装体が収納された流通容器と共に、エチレンにより追熟が進行する青果物を流通させる場合などが例示できる。
【0024】
本発明においてジャガイモは、保管工程でエチレンの供給を受け、更に流通工程でエチレン発生包装体からのエチレンの供給を受けることにより、各々単独での萌芽抑制効果よりも相乗的な萌芽抑制効果を発揮することができる。このように本発明は、植物ホルモンであるエチレンを使用してジャガイモの萌芽を抑制する方法に関するものであり、マレイン酸ヒドラジドやクロロプロファム等の農薬やコバルトの放射線照射を使用する従来の萌芽抑制方法と比較して、安全性が極めて高いという特徴を有する。さらに、萌芽抑制のために2℃未満の低温で保管・流通させる必要がないため、低温障害による品質低下の問題も回避でき、経済的効果も大きい。
【実施例】
【0025】
次に本発明を、実施例によってさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
(エチレン濃度の測定方法)
測定機器 (株)島津製作所製・品名「ガスクロマトグラフィー・型番GC−2014」
測定条件 60〜80メッシュの活性アルミナを3Φ1.5mのカラムに充填、Nキャリヤーガス、FID200℃(注入100℃)でエチレン濃度を測定した。
【0027】
(エチレン透過度の測定方法)
測定条件 市販エチレンガスを流通容器内に注入し、該容器内のエチレン濃度を100ppmとした後、密封し、23℃における該容器内のエチレン濃度の経時変化を測定して、流通容器のエチレン透過度を算定した。
【0028】
(エチレン透過量の測定方法)
測定条件 0.06gのエチレンを吸着させた10gのゼオライトを通気性包材(縦70mm×横80mm)で包装した包装体と、水を含む脱脂綿を、シリカゲルを蒸着したナイロン製の気密性袋内に1Lの空気と共に密封し、100%RH、23℃における気密性袋内のエチレン濃度の経時変化を測定して、通気性包材のエチレン透過量を算定した。
【0029】
(エチレン発生包装体Aの作製)
10gのゼオライトに0.06gのエチレンを吸着させ、これを紙とポリエチレン、ポリエチレン繊維状補強材及びポリエチレンをこの順にラミネートした厚さ170μm、エチレン透過量8700mL/(m・D・atm)(23℃、100%RH)、透湿度19g/(m・D)(40℃、90%RH)の通気性包材(縦70mm×横80mm)で、ポリエチレン側を内側にして包装して、エチレン発生包装体Aを得た。
【0030】
(実施例1)
収穫直後の「メークイン」及び「男爵」のジャガイモ(各20kg)をそれぞれポリエチレン製の籠容器に収納した後、直ちに内容積704Lの保冷庫内に貯蔵した。保冷庫には、10kgエチレンガスボンベから一次及び二次圧力調節バルブを経て各々4kg/cm及び0.04〜0.05kg/cmの圧力でエチレンガスを5mm径のステンレス製配管より注入し、庫内のエチレン濃度を5〜10ppmに制御した。
【0031】
保冷庫内の温度を7〜8℃とし、3ヶ月間貯蔵した後、保冷庫より各ジャガイモを10kgずつ取り出し、それぞれを直径5mmの円形孔を4個有する厚み35μmの有孔ポリエチレン製袋に装填した。この有孔ポリエチレン製袋に、エチレン発生包装体Aを各々2個ずつ挿入し、ポリエチレン製収納袋をバンドテープでシールした。
このジャガイモとエチレン発生包装体を封入した有孔ポリエチレン製袋を、厚み2mmのエチレン透過度が2200ml/(m・D・atm)の段ボール箱(縦25.5cm×横36cm×高さ18.5cm)に収納後、ガムテープでシールして密封し、流通工程を想定して、室内にて18〜21℃で保存した。2週間後に段ボール箱内のエチレン濃度をガスクロマトグラフィーで測定した後、段ボール箱を開封して、ジャガイモ10個分の萌芽の状態を目視観察すると共に萌芽部を切取り重量を測定して評価した。その結果を表1に記載した。
【0032】
(比較例1)
有孔ポリエチレン製袋にエチレン発生包装体Aを挿入しなかった以外は実施例1と同様にして、保冷庫内での3ヶ月間の貯蔵の後、室内での保存を行い、2週間後に段ボール箱内のエチレン濃度を測定した後、開封し、ジャガイモの萌芽の状態を評価した。その結果を表1に記載した。
【0033】
(比較例2)
保冷庫内にエチレンガスを注入しなかった以外は実施例1と同様にして、保冷庫内での3ヶ月間の貯蔵の後、室内での保存を行い、2週間後に段ボール箱内のエチレン濃度を測定した後、開封し、ジャガイモの萌芽の状態を評価した。その結果を、表1に記載した。
【0034】
(比較例3)
保冷庫内にエチレンガスを注入せず、また、有孔ポリエチレン製袋にエチレン発生包装体Aを挿入しなかった以外は実施例1と同様にして、保冷庫内での3ヶ月間の貯蔵の後、室内での保存を行い、2週間後に段ボール箱内のエチレン濃度を測定した後、開封し、ジャガイモの萌芽の状態を評価した。その結果を、表1に記載した。
【0035】
【表1】

【0036】
流通工程を想定した保存試験においてエチレン発生包装体を使用しなかった比較例1、保管工程を実施しなかった比較例2、保管工程を実施せず、流通工程を想定した保存試験においてエチレン発生包装体を使用しなかった比較例3のいずれにおいてもジャガイモの萌芽が確認されたのに対し、保管工程及び流通工程を実施した実施例1では萌芽は一切確認されなかった。これより、保管工程と流通工程の相乗効果によってジャガイモの萌芽を安全かつ経済的に抑制できることが確かめられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャガイモを、2〜15℃の温度下にて0.1ppm以上のエチレン濃度雰囲気下で、3〜12ヶ月間貯蔵する保管工程と、
保管工程で貯蔵したジャガイモを、エチレン発生包装体と共にエチレン透過度が1ml/(m・D・atm)以上、3000ml/(m・D・atm)以下の流通容器内に収納後密封して、該流通容器内のエチレン濃度を0.1〜300ppmとし、これを2〜30℃の温度下にて1〜20日間流通させる流通工程
を有することを特徴とするジャガイモの萌芽抑制方法。