説明

ジャッキアップブラケット

【課題】ジャッキアップブラケットの部品点数を増加させることなく、ジャッキアップブラケットの使用時の変形を抑制することができるようにする。
【解決手段】ジャッキアップブラケット5は、ジャッキ101の押上げ部103を受ける底板部9と、底板部9から上方へ折り曲げ形成された縦板部11,13と、底板部9よりも上方に設けられ、縦板部11,13同士を接続しこれら縦板部11,13とともに上下方向を軸方向とする筒部19を形成している一対の側板部15と、底板部9が押上げ部103によって上方へ押圧された状態で底板部9および側板部15間に介在する突っ張り部17と、を備える。底板部9、縦板部11,13、側板部15および突っ張り部17は、単一の板材から成形された本体7を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体に固定されるジャッキアップブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車体に固定されて、ジャッキの押上げ部を受けるジャッキアップブラケットがある。
【0003】
特許文献1は、U字状のU形前後材とU字状のU形左右材とからなるジャッキブラケットを開示している。このジャッキアップブラケットは、U形前後材の側面の開口をU形左右材で埋めてジャッキアップブラケットの剛性を確保している。これにより、ジャッキアップブラケットの使用時に、ジャッキの押上げ部を受けたジャッキアップブラケットの変形を抑制している。
【特許文献1】特開2006−219069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1が開示しているジャッキアップブラケットは、U形前後材とU形左右材との2部品構成であるため、部品点数が多いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、ジャッキアップブラケットの部品点数を増加させることなく、ジャッキアップブラケットの使用時の変形を抑制することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のジャッキアップブラケットは、ジャッキの押上げ部を受ける底板部と、前記底板部から上方へ折り曲げ形成され相対向している一対の縦板部と、前記底板部よりも上方に設けられ、前記縦板部同士を接続しこれら縦板部とともに上下方向を軸方向とする筒部を形成している一対の側板部と、前記底板部が前記押上げ部によって上方へ押圧された状態で前記底板部および前記側板部の間に介在する突っ張り部と、を備え、前記底板部、前記縦板部、前記側板部および前記突っ張り部は、単一の板材から形成された本体を構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、突っ張り部を含む本体が単一の板材から形成されているのでジャッキアップブラケットの部品点数を増加させることなく、突っ張り部によってジャッキアップブラケットの使用時の変形を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、車両として自動車を適用した例である。図1は、本明実施形態にかかるジャッキアップブラケットを備える自動車を概略的に示す側面図、図2は、本実施形態にかかるジャッキアップブラケットおよびその周囲を示す縦断側面図、図3は、図2のII部におけるジャッキアップブラケットを斜め後方の下方から見て示す斜視図、図4は、図3のIII−III線に沿った断面図、図5は、本実施形態にかかるジャッキアップブラケットの下部を示す背面図である。
【0009】
図1に示すように、自動車1は、その車体3の後部における下部にジャッキアップブラケット5を備えている。このジャッキアップブラケット5は、左右対称形状である。
【0010】
図2に示すように、ジャッキアップブラケット5は、本体7を備えている。本体7は、単一の板材から成形されている。本体7は、車体3の後面に固定手段としての例えば溶接などによって固定してあり、本体7の下端部は、車体3から下方へ突出している。
【0011】
図3および図4に示すように、本体7は、底板部9と、前後一対の縦板部11,13と、左右一対の側板部15と、左右一対の突っ張り部17とによって構成してある。また、本体7には、詳しくは後述するがビード部11a,13a,15c,21を形成してある。ここで、ビード部21が第1のビード部21、ビード部15cが第2のビード部15cである。
【0012】
底板部9は、略水平な板状に形成してある。図2に示すように、底板部9は、その下面9aがジャッキ101の押上げ部103と当接し、押上げ部103を受けるようになっている。図3に示すように、底板部9は、相互に離間している前後一対の第1の縁部9bおよびこれら第1の縁部9b同士を接続している左右一対の第2の縁部9cを有している。
【0013】
縦板部11,13は、底板部9の各第1の縁部9bに設けてあり、当該第1の縁部9bから上方へ折り曲げ形成してある。詳しくは、後側の縦板部11は、底板部9の後側の第1の縁部9bから上方へ立ち上がっている一方、前側の縦板部13は、底板部9の前側の第1の縁部9bから上方へ立ち上がっており、これら縦板部11,13は、底板部9の上方の空間を間にして前後方向で相対向している。後側の縦板部11は、本体7の上端から下端まで延在している一方、前側の縦板部13は、本体7の下部にのみに存在している。
【0014】
図3および図4に示すように、縦板部11,13には、上下方向に延在するビード部11a,13aを形成してある。ビード部11a,13aは、底板部9の第1の縁部9bまで延在している。ビード部11a,13aは、断面略コ字状に形成してある。
【0015】
側板部15は、底板部9よりも上方の位置に設けてある。側板部15には、後側の縦板部11の側縁部から前方へ向けて折り曲げ形成した第1の板部15aと、この第1の板部15aの前縁部から折り曲げ形成したフランジ状の第2の板部15bと、を設けてある。第2の板部15bは、右側の側板部15にあっては右方に折り曲がっている一方、左側の側板部15にあっては左方に折り曲がっていて、それぞれ前側の縦板部13の後面に当接している。この第2の板部2bは、前側の縦板部13の後面に溶接などによって固定してある。このような形状の一対の側板部15は、底板部9の上方の空間を間にして左右方向で相対向している。そして、一対の側板部15は、一対の縦板部11,13同士を接続しこれら縦板部11,13とともに上下方向を軸方向とする筒部19を形成している。また、これら一対の側板部15は、一対の縦板部11,13および底板部9とともに、本体7の下端部に、左右方向に開口した左右一対の開口部7aを形成している。
【0016】
また、各側板部15には、第2のビード部15cを後側の縦板部11に隣接して形成してある。第2のビード部15cは、断面略く字状であって上下方向に延在している。
【0017】
図3および図5に示すように、突っ張り部17は、底板部9の第2の縁部9cから、側板部15の下縁部15dに向けて折り曲げ形成してある。突っ張り部17は、側板部15は固定しておらず、底板部9の第2の縁部9cによって片持ち支持されている。突っ張り部17は、底板部9がジャッキ101の押上げ部103から押圧されていない状態では、側板部15の下縁部15dに対して離間した状態で上下方向で対向している。詳しくは、突っ張り部17は、側板部15の下縁部15dのうち第2のビード部15cの下縁部15dと離間した状態で上下方向で対向しており、突っ張り部17と第2のビード部15cの下縁部15dとは、立体交差している(図4参照)。
【0018】
また、突っ張り部17と、この突っ張り部17が折り曲げ形成されている底板部9の第2の縁部9cとに亘って、第1のビード部21を形成してある。第1のビード部21は、断面略V字状に形成してある。
【0019】
このような構成において、ジャッキアップブラケット5における底板部9の下面9aがジャッキ101の押上げ部103によって押圧されて押し上げられた場合、その押圧荷重によって、底板部9近傍の縦板部11,13が変形して底板部9が側板部15に対して近づく方向に移動し、これとともに突っ張り部17が側板部15の下縁部15dに近接する方向へ移動する。そして、最終的に突っ張り部17が側板部15の下縁部15d(詳しくは、第2のビード部15cの下縁部15d)に当接し、突っ張り部17が底板部9および側板部15(詳しくは、第2のビード部15c)間に介在する。このとき、突っ張り部17と側板部15の下縁部15dとが交差する。この状態で突っ張り部17が突っ張るので、それ以上の縦板部11,13の変形を抑制することができ、したがって、底板部9の移動を抑制することができる。
【0020】
以上説明したように、本実施形態のジャッキアップブラケット5は、単一の板材から成形されていて、車体3に固定される本体7と、本体7を構成し、ジャッキ101の押上げ部103を受ける底板部9と、本体7を構成し、底板部9から上方へ折り曲げ形成され相対向している一対の縦板部11,13と、本体7を構成し、底板部9よりも上方に設けられ、縦板部11,13同士を接続しこれら縦板部11,13とともに上下方向を軸方向とする筒部19を形成している一対の側板部15と、本体7を構成し、底板部9が押上げ部103によって上方へ押圧された状態で底板部9および側板部15の間に介在する突っ張り部17と、を備える。したがって、突っ張り部17を含む本体7が単一の板材から成形されているので、ジャッキアップブラケット5の部品点数を増加させることなく、突っ張り部17によってジャッキアップブラケット5の使用時の変形を抑制することができる。
【0021】
このように、ジャッキアップブラケット5では、突っ張り部17によってジャッキアップブラケット5の使用時の変形を抑制することができるので、ジャッキアップブラケット5の使用時の変形を抑制するために高剛性な材質の素材を用いなくて済み、ジャッキアップブラケット5の低コスト化を図ることができる。また、ジャッキアップブラケット5の使用時の変形を抑制するためにジャッキアップブラケット5全体の板厚を厚くする必要がないので、ジャッキアップブラケット5の質量増加を抑制することができる。
【0022】
また、本実施形態のジャッキアップブラケット5にあっては、突っ張り部17は、底板部9から側板部15に向けて折り曲げ形成されている。したがって、突っ張り部17が、底板部9の補強部材として機能して底板部9の剛性を補強するので、底板部9の変形を抑制することができる。
【0023】
また、本実施形態のジャッキアップブラケット5あっては、突っ張り部17は、底板部9によって片持ち支持されていることにより、突っ張り部17の先端縁部17aを本体7の他の部分に溶接などで固定する場合に比べて、本体7を容易に製造することができる。また、このとき、底板部9が押上げ部103によって上方へ押圧された状態では、突っ張り部17と側板部15とが交差するので、突っ張り部17の位置がずれた場合であっても、底板部9と側板部15との間に突っ張り部17が介在している状態を維持することができる。
【0024】
また、本実施形態のジャッキアップブラケット5にあっては、突っ張り部17は、底板部9が押上げ部103から押圧されていない状態では、側板部15に対して離間した状態で上下方向で対向している。したがって、底板部9が押上げ部103から押圧されていない状態でも突っ張り部17を側板部15に当接させる場合に比べて、突っ張り部17の形状精度を高くしなくて済むので、突っ張り部17を容易に成形することができる。
【0025】
また、本実施形態のジャッキアップブラケット5は、本体7を構成し、底板部9と突っ張り部17とに亘って形成されている第1のビード部21を備える。したがって、第1のビード部21によって突っ張り部17の剛性が高くなっているので、ジャッキアップブラケット5の使用時に、突っ張り部17の変形を抑制することができる。
【0026】
また、本実施形態のジャッキアップブラケット5は、側板部15は、上下に延在している第2のビード部15cを有し、突っ張り部17は、底板部9が押上げ部103によって押圧された状態で底板部9および第2のビード部15c間に介在する。したがって、第2のビード部15cによって側板部15の剛性が高くなっているので、ジャッキアップブラケット5の使用時の変形を抑制することができる。
【0027】
なお、本発明は、本実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【0028】
例えば、底板部9が押上げ部103から押圧されていない状態で、突っ張り部17の先端縁部17aが側板部15に当接していて、突っ張り部17が底板部9と側板部15との間に介在していても良く、この場合、突っ張り部17の先端縁部17aを側板部15に溶接しても良い。
【0029】
また、突っ張り部17を、側板部15の下縁部15dから底板部9の第2の縁部9cに向けて折り曲げ形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態にかかるジャッキアップブラケットを備える自動車を概略的に示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるジャッキアップブラケットおよびその周囲を示す縦断側面図である。
【図3】図2のII部におけるジャッキアップブラケットを斜め後方の下方から見て示す斜視図である。
【図4】図3のIII−III線に沿った断面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるジャッキアップブラケットの下部を示す背面図である。
【符号の説明】
【0031】
3 車体
5 ジャッキアップブラケット
7 本体
9 底板部
11,13 縦板部
15 側板部
15c 第2のビード部
17 突っ張り部
19 筒部
21 第1のビード部
101 ジャッキ
103 押上げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の板材から形成され、車体に固定される本体と、
前記本体を構成し、ジャッキの押上げ部を受ける底板部と、
前記本体を構成し、前記底板部から上方へ折り曲げ形成され相対向している一対の縦板部と、
前記本体を構成し、前記底板部よりも上方に設けられ、前記縦板部同士を接続しこれら縦板部とともに上下方向を軸方向とする筒部を形成している一対の側板部と、
前記本体を構成し、前記底板部が前記押上げ部によって上方へ押圧された状態で前記底板部および前記側板部の間に介在する突っ張り部と、
を備えるジャッキアップブラケット。
【請求項2】
前記突っ張り部は、前記底板部から前記側板部に向けて折り曲げ形成されている請求項1に記載のジャッキアップブラケット。
【請求項3】
前記突っ張り部は、前記底板部によって片持ち支持され、
前記底板部が前記押上げ部によって上方へ押圧された状態では、前記突っ張り部と前記側板部とが交差する請求項2に記載のジャッキアップブラケット。
【請求項4】
前記突っ張り部は、前記底板部が前記押上げ部から押圧されていない状態では、前記側板部に対して離間した状態で上下方向で対向している請求項2または3に記載のジャッキアップブラケット。
【請求項5】
前記本体を構成し、前記底板部と前記突っ張り部とに亘って形成されている第1のビード部を備える請求項2ないし4のいずれか一項に記載のジャッキアップブラケット。
【請求項6】
前記側板部は、上下に延在している第2のビード部を有し、
前記突っ張り部は、前記底板部が前記押上げ部によって押圧された状態で前記底板部および前記第2のビード部の間に介在する請求項1ないし5のいずれか一項に記載のジャッキアップブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−29336(P2009−29336A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197267(P2007−197267)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】