説明

ジャッキアップボックス及びそれを使用した傾斜建物のジャッキアップ方法

【課題】本発明は、工期が短く、コストを抑え、地震や地盤沈下で度重なる建物等の傾斜に対しても同様に修復することができるジャッキアップボックス及びそれを使用した建物等のジャッキアップ方法を提供する。
【解決手段】本発明は、傾いた建物等を持ち上げて建物等の水平を保つためのジャッキアップボックスであって、傾いた建物等の基礎下に水平に設置される土台部と、土台部に上下にスライド可能に被せ合わされ、基礎の底面に接して設置される上枠体部と、土台部及び上枠体部で形成される箱内に設置され、上枠体部を内側から押し上げるジャッキ部とからなり、傾いた建物等の元の基礎位置より下がった基礎部分の下に設置され、ジャッキを操作して上枠体部を押し上げるとともに建物の基礎を押し上げることにより傾いた建物を水平に戻すことを特徴とするジャッキアップボックスの構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震や地盤沈下等などにより地盤が変形し、それにより傾斜した建物を水平に戻し、維持するためのジャッキアップボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の変形により建物等が傾斜した場合、建物を水平に戻すには、アンダーピニング工法などの修正方法があった。
【0003】
前記アンダーピニング工法は、建物の基礎下に支持層からの支持力を得られるまで杭を打ち込んでゆき、ジャッキで微調整をした後、スペーサーを設置して埋め戻しを行う工法であるが、複数本の杭を支持層まで圧入しなければならず、また、工事が複雑なため工期が長く、コストがかかり過ぎるという問題があった。
【0004】
また、上記の工法以外にも建物等の傾斜を修復する方法があるが、いずれの工法も工期やコストの面で、容易に利用できるものではなく、地震の多い地域などでは傾斜を修正した後に再度建物が傾くということもあり、何度も利用できるほど低廉なものではなく、二度目、三度目となると費用を工面するのも難しく、傾斜したまま住み続けるか、転居、立て直しなどを行うこともあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−347661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、工期が短く、コストを抑え、地震や地盤沈下で度重なる建物等の傾斜に対しても同様に修復することができるジャッキアップボックス及びそれを使用した建物等のジャッキアップ方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、傾いた建物等を持ち上げて建物等の水平を保つためのジャッキアップボックスであって、前記傾いた建物等の基礎下に水平に設置される土台部と、前記土台部に上下にスライド可能に被せ合わされ、前記基礎の底面に接して設置される上枠体部と、前記土台部及び上枠体部で形成される箱内に設置され、前記上枠体部を内側から押し上げるジャッキ部とからなり、前記傾いた建物等の元の基礎位置より下がった基礎部分の下に設置され、前記ジャッキを操作して上枠体部を押し上げるとともに建物の基礎を押し上げることにより前記傾いた建物を水平に戻すことを特徴とするジャッキアップボックスの構成とした。
【0008】
また、前記土台部を、略四角形の平板状をした前記ジャッキを載置するための底板2aと、前記底板2aの三辺の縁付近に各辺に垂設され前記上枠体部を被せる際のガイドとなる三枚の板(2b、2c、2d)と、前記底板2aの前記板を垂設していない残りの一辺の両端に垂設され、前記ジャッキが土台部からはみ出さないように保持するガイド棒2e、2eからなる土台部とし、前記上枠体部を、前記土台部に被せ合わせる内部が中空で側面の一辺に開口を形成した角柱状の枠体3bと、前記枠体3bの上面に設置され前記基礎の直下で基礎に接し基礎を押し上げる上面板3aとからなる上枠体部としたことを特徴とするジャッキアップボックスの構成とした。
【0009】
また、前記ジャッキ部を、前記土台部の各板2b、2c、2d及びガイド棒2e、2e内に嵌め込まれる平板状のジャッキ土台5eと、前記ジャッキ土台5e上に垂設されるジャッキ5aと、前記ジャッキ5aから上方に向かって出入りするスライド部5bと、前記スライド部5bの上端に設置され前記枠体3bの上面を内側から押し上げる押上板5cと、前記スライド部5bの上下動を制御する操作部5dとからなるジャッキ部としたことを特徴とするジャッキアップボックスの構成とした。
【0010】
また、前記各板2b、2c、2d及びガイド棒2eで囲まれた底板2aに嵌入される下板4bと、前記下板4b上に重ね合わせて固定され、上面に四辺に突条4cを設けて、更に前記突条4cのうち前記ガイド棒2e、2eに最も近い辺の突条の一部にジャッキ部5を出し入れするための間隙4dを設けた上板4aからなり、前記ジャッキ部5を前記土台部2に固定するための取付台4を設けたことを特徴とするジャッキアップボックスの構成とした。
【0011】
更に、傾いた建物7の基礎7a下に前記何れかのジャッキアップボックス1を設置するための設置穴8aを設けて、前記設置穴8aに前記ジャッキアップボックスを設置し、 前記ジャッキアップボックスのジャッキ部を操作して前記建物7を持ち上げて水平とし、前記建物7の基礎下に建物の水平を保つための第一モルタル9を施工し、前記第一モルタル9が硬化した後、前記ジャッキアップボックスを取り出して、前記設置穴に元に戻したジャッキアップボックスを挿入可能な高さを残して第二モルタル9aを施工し、前記第二モルタル9aが硬化した後、前記第二モルタル9a上にシート10を敷設し、ジャッキ部5を取り出して元の高さに戻し開口3cを板で塞ぎ溶接したジャッキアップボックスを設置し、第三モルタル9bで前記設置穴8aの残空間を埋め硬化させてなり、前記建物の傾きを解消し、水平を維持することを特徴とする傾斜建物のジャッキアップ方法の構成とした。
【0012】
加えて、前記傾斜建物のジャッキアップ方法により水平とした建物が、再度傾斜した場合の再ジャッキアップ方法であって、前記ジャッキアップボックス下の第二モルタル9a及び前記シート10並びに前記土台部2を取り除いて上枠体部3のみを残し、前記上枠体部3の下に設置穴を設けて前記いずれかの構成の新たなジャッキアップボックスを重ねて設置し、前記新たなジャッキアップボックスのジャッキ部を操作して傾斜建物の基礎を押し上げて前記傾斜建物を水平にし、前記第一モルタル9の下に建物の水平を保つための第四モルタル12を施工し、前記第四モルタル12が硬化した後、前記新たなジャッキアップボックスを取り出して、前記新たな設置穴に元に戻したジャッキアップボックスを挿入可能な高さを残して第五モルタル12aを施工し、前記第五モルタル12aが硬化した後、前記第五モルタル12a上にシート10を敷設し、ジャッキ部5を取り出して元の高さに戻した新たなジャッキアップボックスを設置し、最初に設置されていて残された上枠体部3及び蓋3dの下辺と新たなジャッキアップボックス1の上面板3aを溶接連結し、更に前記開口を塞ぐ前記蓋に注入孔を設けて最初に設置していたジャッキアップボックスの上枠体部3の中にもモルタルを注入して硬化させ、全ての設置穴を第六モルタル12bで埋め硬化させてなり、建物の傾きを解消し、水平を維持することを特徴とするジャッキアップ方法の構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記のような構成であるため、従来よりも短い工期でコストを抑えて傾斜建物を修復することができる。
【0014】
また、本発明で傾斜建物の傾斜を解消した後、更なる地震や地盤沈下で建物が傾斜した場合であっても、初回の作業と同様に短い工期でコストを抑えて傾斜建物を修復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明であるジャッキアップボックスの斜視分解図である。
【図2】本発明であるジャッキアップボックスの土台部の斜視図である。
【図3】本発明であるジャッキアップボックスの上枠体部の斜視図である。
【図4】本発明であるジャッキアップボックスの取付台の斜視図である。
【図5】本発明であるジャッキアップボックスのジャッキ部の斜視図である。
【図6】本発明であるジャッキアップボックスを使用した傾斜建物のジャッキアップ手順を示す図である。
【図7】本発明であるジャッキアップボックスを使用した傾斜建物のジャッキアップ手順を示す図である。
【図8】本発明であるジャッキアップボックスを使用した傾斜建物のジャッキアップ手順を示す図である。
【図9】本発明であるジャッキアップボックスを使用した傾斜建物のジャッキアップ手順を示す図である。
【図10】本発明であるジャッキアップボックスを使用した傾斜建物のジャッキアップ手順を示す図である。
【図11】本発明であるジャッキアップボックスを使用して傾斜建物をジャッキアップした後、地盤沈下等で再度傾斜した建物をジャッキアップする手順を示す図である。
【図12】本発明であるジャッキアップボックスを使用して傾斜建物をジャッキアップした後、地盤沈下等で再度傾斜した建物をジャッキアップする手順を示す図である。
【図13】本発明であるジャッキアップボックスを使用して傾斜建物をジャッキアップした後、地盤沈下等で再度傾斜した建物をジャッキアップする手順を示す図である。
【図14】本発明であるジャッキアップボックスを使用して傾斜建物をジャッキアップした後、地盤沈下等で再度傾斜した建物をジャッキアップする手順を示す図である。
【図15】本発明であるジャッキアップボックスを二段以上重ねて使用する際の手順を示した図である。
【図16】本発明であるジャッキアップボックスを二段以上重ねて使用する際の手順を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明であるジャッキアップボックスの斜視分解図、図2はジャッキアップボックスの土台部の斜視図、図3はジャッキアップボックスの上枠体部の斜視図、図4はジャッキアップボックスの取付台の斜視図、図5はジャッキアップボックスのジャッキ部の斜視図である。
【0018】
図1に示すように、本発明であるジャッキアップボックス1は、傾いた建物等を持ち上げて建物等の水平を保つためのジャッキアップボックスであって、前記傾いた建物等の基礎下に水平に設置される土台部2と、前記土台部2に上下にスライド可能に被せ合わされ、前記基礎の底面に接して設置される上枠体部3と、前記土台部2及び上枠体部3で形成される箱内に設置され、前記上枠体部3を内側から押し上げるジャッキ部5とからなり、前記傾いた建物等の元の基礎位置より下がった基礎部分の下に設置され、前記ジャッキ部5を操作して上枠体部3を押し上げるとともに建物の基礎を押し上げることにより前記傾いた建物を水平に戻すことを特徴とする。

【0019】
図2に示すように、前記土台部2は、略四角形の平板状をした前記ジャッキ部5を載置するための底板2aと、前記底板2aの三辺の縁付近に各辺に垂設され前記上枠体部3を被せる際のガイドとなる三枚の板(左板2b、右板2c、背面板2d)と、前記底板2aの前記板(2b、2c、2d)を垂設していない残りの一辺の両端に垂設され、前記ジャッキ部5が土台部2からはみ出さないように保持するガイド棒2e、2eからなる。前記板(2b、2c、2d)はそれぞれ独立しており、被せ合わされる前記上枠体部3と土台部2の底板2aが平行ではない状態、即ち、建物の基礎の底面と本発明を設置する地面が平行ではない場合であっても、前記上枠体部3の上面板3aが上面板3a全面を使用して基礎の底面をしっかり支えることが出来るよう、上枠体部3をガイドする役割をしている。
【0020】
図3に示すように、前記上枠体部3は、前記土台部2に被せ合わせる内部が中空で側面の一辺に開口3cを形成した角柱状の枠体3bと、前記枠体3bの上面に設置され前記基礎の直下で基礎に接し基礎を押し上げる上面板3aとからなる。
【0021】
図1及び図4に示すように、前記ジャッキ部5を土台部2に設置するには取付台4を設けてもよい。前記取付台4は、前記各板2b、2c、2d及びガイド棒2eで囲まれた底板2aに嵌入される下板4bと、前記下板4b上に重ね合わせて固定され、上面に四辺に突条4cを設けて、更に前記突条4cのうち前記ガイド棒2e、2eに最も近い辺の突条の一部にジャッキ部5を出し入れするための間隙4dを設けた上板4aからなる。
【0022】
図5に示すように、前記ジャッキ部5を、前記土台部2の各板2b、2c、2d及びガイド棒2e、2e内に嵌め込まれる平板状のジャッキ土台5eと、前記ジャッキ土台5e上に垂設されるジャッキ5aと、前記ジャッキ5aから上方に向かって出入りするスライド部5bと、前記スライド部5bの上端に設置され前記枠体3bの上面を内側から押し上げる押上板5cと、前記スライド部5bの上下動を制御する操作部5dとからなる。前記操作部5dには操作棒5fを挿通し、操作棒5fを上下に動かすことにより前記スライド部5bが上昇する。
【0023】
図1に示すように、前記土台部2と上枠体部3を重ね合わせる際には、土台部2のガイド棒2e、2eを形成した面と上枠体部3の開口3cを形成した面の位置を合わせてかぶせ合わせる。このように合わせることにより、前記開口3cから前記ジャッキ部5を出し入れすることができる。
【0024】
従って、ジャッキ部5の押上板5cの幅及びジャッキ土台5eの幅は開口3cの幅よりも小さく、ジャッキ5aを最も縮めた状態の高さは前記開口3cの高さよりも小さい。
【0025】
尚、実際に本発明であるジャッキアップボックス1を使用する際には、図1に示すように土台部2の下に四角形状の板6を設置することが好ましい。但し、前記板6は必須のものではなく、必ずしも使用しなければならないものではない。
【実施例2】
【0026】
図6から図10は本発明であるジャッキアップボックスを使用した傾斜建物のジャッキアップ手順を示す図である。
【0027】
図6から図10に示すように、本発明であるジャッキアップボックス1を使用した傾斜建物をジャッキアップするには、まず、傾いた建物7の基礎7a下に前記のいずれかのジャッキアップボックス1を設置するための設置穴8aを設けて、前記設置穴8aに前記ジャッキアップボックスを設置する。尚、建物7の脇に設けた穴は作業穴8bである。
【0028】
尚、ジャッキアップボックス1を設置する位置については、建物7の基礎のうち、基の基礎位置から下がった箇所、若しくは建物周囲の地面よりも下がった箇所に設けるが、この位置については、建物の傾斜状況や周囲の地形等により様々である。
【0029】
次に、図7に示すように、前記ジャッキアップボックス1のジャッキ部5を操作して前記建物7を持ち上げて水平とし、前記建物7の基礎7a下に建物7の水平を保つための第一モルタル9を施工する。
【0030】
前記第一モルタル9が硬化すると、前記建物7の水平が一時的に保たれるので、前記ジャッキアップボックス1を取り出して、図8に示すように、前記設置穴8aに元に戻したジャッキアップボックスを挿入可能な高さを残して第二モルタル9aを施工する。
【0031】
そして、前記第二モルタル9aが硬化した後、前記第二モルタル9a上にシート10を敷設し、ジャッキ部5を取り出して元の高さに戻し開口3cを蓋3dで塞ぎ溶接3eしたジャッキアップボックス(前記箱)を設置し、図9に示すように、第三モルタル9bで前記設置穴8aの残空間を埋め硬化させる。
【0032】
最後に図10に示すように、建物の周囲に設けていた作業穴8bを埋め戻し、作業が完了する。
【実施例3】
【0033】
次に、図11から図14を使用して、建物等が再度傾斜した場合の本発明を使用した修復方法を説明する。
【0034】
図11から図14は本発明であるジャッキアップボックスを使用して傾斜建物をジャッキアップした後、地盤沈下等で再度傾斜した建物をジャッキアップする手順を示す図である。
【0035】
図11に示すように、本発明であるジャッキアップボックス1を使用して、以前に建物の傾斜を修正していたが、その後の地震や地盤沈下等により再度建物が傾いている。
【0036】
先ず、図12に示すように、前記ジャッキアップボックス1下の第二モルタル9a及び前記シート10並びに前記土台部2を取り除いて上枠体部3のみを残し、前記上枠体部3の下に設置穴を設けて新たなジャッキアップボックスを重ねて設置する。
【0037】
そして、前記新たなジャッキアップボックス1のジャッキ部5を操作して傾斜建物7の基礎7aを押し上げて前記傾斜建物7を水平にし、前記第一モルタル9の下に建物7の水平を保つための第四モルタル12を施工する。
【0038】
次に、図13に示すように、
前記第四モルタル12が硬化した後、前記新たなジャッキアップボックス1を取り出して、前記新たな設置穴8aに元に戻したジャッキアップボックス1を挿入可能な高さを残して第五モルタル12aを施工する。
【0039】
前記第五モルタル12aが硬化した後、前記第五モルタル12a上にシート10を敷設し、ジャッキ部5を取り出して元の高さに戻した新たなジャッキアップボックス1(箱)を設置し、最初に設置されていて残された上枠体部3及び蓋3dの下辺と新たなジャッキアップボックス1の上面板3aを溶接連結し、更に前記開口を塞ぐ前記蓋に注入孔を設けて最初に設置していたジャッキアップボックスの上枠体部3の中にもモルタルを注入して硬化させ、図14に示すように全ての設置穴を第六モルタル12bで埋め硬化させる。
【0040】
最後に、図14に示すように、作業穴を埋め戻し8c、作業が完了する。
【実施例4】
【0041】
図15及び図16は本発明であるジャッキアップボックスを二段以上重ねて使用する際の手順を示した図である。
【0042】
図15に示すように、実施例3のように既にジャッキアップボックス1で建物の傾斜を修復しており、地震等により再度建物が傾いた場合、以前のジャッキアップボックス1が基礎下に存在している。
【0043】
まず、図15の(A)に示すように、以前のジャッキアップボックス1(箱)から、土台部2を抜き去り、上枠体部3のみを残す。
【0044】
次に、図15(B)に示すように、残された前記上枠体部3の下に新たな上枠体部3を設置し、残された上枠体部3及び蓋3dの下辺と新たな上枠体部3の上面板3aをしっかりと隙間無く溶接3gする。
【0045】
そして、新たな上枠体部3の下方から先ほど抜き去った土台部2を挿入し、ジャッキアップボックス1(箱)を形成する。
【0046】
次に、図16(A)に示すように、新たに形成されたジャッキアップボックス1(箱)内に、ジャッキ部5を設置して操作し、以前の上枠体部3及び基礎7aを押上げ、建物7の傾斜を解消し、前述のモルタル等の施工を行う。
【0047】
以前の上枠体部3及びジャッキ部5を取り去った新たなジャッキアップボックス1(箱)をモルタルで埋める前に、以前の上枠体部3に注入孔3fを形成し、以前の上枠体部3内にモルタルを注入し、最後に以前の上枠体部3及び新たなジャッキアップボックス1(箱)ごと設置穴8aをモルタルで埋める。
【0048】
以上のように、本発明であるジャッキアップボックス1を一段で埋める場合には、土台部2と上枠体部3で箱を形成した状態で埋めるが、ジャッキアップボックス1を二段以上とする場合は、上側のジャッキアップボックス1(箱)は、上枠体部3のみを残して、下に重ねられる上枠体部3と溶接接続し、最も下となる上枠体部3にのみ土台部2が嵌入される。
【0049】
従って、上枠体部3が他の上枠体部3の上側に位置する場合は、内部にモルタルが充填されて、建物を支えるモルタルの一部となる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明であるジャッキアップボックス及びそれを使用した建物等のジャッキアップ方法は、工期が短く、コストも抑えることができ、傾斜の修復後にも重ねて同様の修復作業をすることができるため、地震の多い地域や従来の方法を利用することができなかった人々に多大な貢献をもたらす。
【符号の説明】
【0051】
1 ジャッキアップボックス
2 土台部
2a 底板
2b 左板
2c 右板
2d 背面板
2e ガイド棒
3 上枠体部
3a 上面板
3b 枠体
3c 開口
3d 蓋
3e 溶接
3f 注入孔
3g 溶接
4 取付台
4a 上板
4b 下板
4c 突条
4d 間隙
5 ジャッキ部
5a ジャッキ
5b スライド部
5c 押上板
5d 操作部
5e ジャッキ土台
5f 操作棒
6 板
7 建物
7a 基礎
8 地面
8a 設置穴
8b 作業穴
8c 埋め戻し
9 第一モルタル
9a 第二モルタル
9b 第三モルタル
10 シート
11 枠
12 第四モルタル
12a 第五モルタル
12b 第六モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾いた建物等を持ち上げて建物等の水平を保つためのジャッキアップボックスであって、
前記傾いた建物等の基礎下に水平に設置される土台部と、
前記土台部に上下にスライド可能に被せ合わされ、前記基礎の底面に接して設置される上枠体部と、
前記土台部及び上枠体部で形成される箱内に設置され、前記上枠体部を内側から押し上げるジャッキ部とからなり、
前記傾いた建物等の元の基礎位置より下がった基礎部分の下に設置され、
前記ジャッキを操作して上枠体部を押し上げるとともに建物の基礎を押し上げることにより前記傾いた建物を水平に戻すことを特徴とするジャッキアップボックス。
【請求項2】
前記土台部を、略四角形の平板状をした前記ジャッキを載置するための底板と、前記底板の三辺の縁付近に各辺に垂設され前記上枠体部を被せる際のガイドとなる三枚の板と、前記底板の前記板を垂設していない残りの一辺の両端に垂設され、前記ジャッキが土台部からはみ出さないように保持するガイド棒からなる土台部とし、
前記上枠体部を、前記土台部に被せ合わせる内部が中空で側面の一辺に開口を形成した角柱状の枠体と、前記枠体の上面に設置され前記基礎の直下で基礎に接し基礎を押し上げる上面板とからなる上枠体部としたことを特徴とする請求項1に記載のジャッキアップボックス。
【請求項3】
前記ジャッキ部を、前記土台部の各板及びガイド棒内に嵌め込まれる平板状のジャッキ土台と、前記ジャッキ土台上に垂設されるジャッキと、前記ジャッキから上方に向かって出入りするスライド部と、前記スライド部の上端に設置され前記枠体の上面を内側から押し上げる押上板と、前記スライド部の上下動を制御する操作部とからなるジャッキ部としたことを特徴とする請求項2に記載のジャッキアップボックス。
【請求項4】
前記各板及びガイド棒で囲まれた底板に嵌入される下板と、前記下板上に重ね合わせて固定され、上面に四辺に突条を設けて、更に前記突条のうち前記ガイド棒に最も近い辺の突条の一部にジャッキ部を出し入れするための間隙を設けた上板からなり、前記ジャッキ部を前記土台部に固定するための取付台を設けたことを特徴とする請求項3に記載のジャッキアップボックス。
【請求項5】
傾いた建物の基礎下に請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のジャッキアップボックスを設置するための設置穴を設けて、前記設置穴に前記ジャッキアップボックスを設置し、前記ジャッキアップボックスのジャッキ部を操作して前記建物を持ち上げて水平とし、前記建物の基礎下に建物の水平を保つための第一モルタルを施工し、前記第一モルタルが硬化した後、前記ジャッキアップボックスを取り出して、前記設置穴に元に戻したジャッキアップボックスを挿入可能な高さを残して第二モルタルを施工し、前記第二モルタルが硬化した後、前記第二モルタル上にシートを敷設し、ジャッキ部を取り出して元の高さに戻し開口を蓋で塞ぎ溶接したジャッキアップボックスを設置し、第三モルタルで前記設置穴の残空間を埋め硬化させてなり、前記建物の傾きを解消し、水平を維持することを特徴とする傾斜建物のジャッキアップ方法。
【請求項6】
請求項5に記載の傾斜建物のジャッキアップ方法により水平とした建物が、再度傾斜した場合の再ジャッキアップ方法であって、
前記ジャッキアップボックス下の第二モルタル及び前記シート並びに前記土台部を取り除いて上枠体部のみを残し、前記上枠体部の下に設置穴を設けて請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の新たなジャッキアップボックスを重ねて設置し、前記新たなジャッキアップボックスのジャッキ部を操作して傾斜建物の基礎を押し上げて前記傾斜建物を水平にし、前記第一モルタルの下に建物の水平を保つための第四モルタルを施工し、前記第四モルタルが硬化した後、前記新たなジャッキアップボックスを取り出して、前記新たな設置穴に元に戻したジャッキアップボックスを挿入可能な高さを残して第五モルタルを施工し、前記第五モルタルが硬化した後、前記第五モルタル上にシートを敷設し、ジャッキ部を取り出して元の高さに戻した新たなジャッキアップボックスを設置し、最初に設置されていて残された上枠体部及び蓋の下辺と新たなジャッキアップボックスの上面板を溶接連結し、更に前記開口を塞ぐ前記蓋に注入孔を設けて最初に設置していたジャッキアップボックスの上枠体部の中にもモルタルを注入して硬化させ、全ての設置穴を第六モルタルで埋め硬化させてなり、建物の傾きを解消し、水平を維持することを特徴とするジャッキアップ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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