説明

ジュースまたはネクター調合物

本発明は、(長鎖)多価不飽和脂肪酸に特徴的な魚味を有さない、(LC)−PUFAを含んでなる(フルーツ)ジュースおよびネクター調合物に関する。さらに本発明は、PUFAおよびβ−カロテンを含んでなるベース原料と、(フルーツ)ジュースまたは(フルーツ)ネクター調合物を製造するためのこのようなベース原料の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、(長鎖)多価不飽和脂肪酸に特徴的な魚味を有さない(LC)−PUFAを含んでなる(フルーツ)ジュースおよびネクター調合物に関する。さらに本発明は、PUFAおよびβ−カロテンを含んでなるベース原料、および(フルーツ)ジュースまたは(フルーツ)ネクター調合物を製造するためのこのようなベース原料の使用にも関する。
【0002】
ヒトおよび動物の健康に関わる利点のために、食品および飼料製品に(LC)−PUFAを添加することが望ましい。ジュースおよびネクターは非常に健康的な製品と見なされる。それらは健康な食生活に役立つ、ビタミンおよび繊維などのいくつかの成分を含有する。通常、天然原料からの化合物であるPUFAのジュースまたはネクター調合物への添加は、いくつかの追加的な消費者にとって非常に興味深い利点がある調合物をもたらす。しかしジュースまたはネクター調合物への(LC)−PUFAの添加に関する主な不利な問題は、これらの化合物の匂いと味である。結構な量のPUFAがジュースまたはネクターに添加されるはずであり、したがって強い魚味が検知され得る。このような味は、大抵の人にとって許容できるものではない。ジュースまたはネクター調合物が透明ガラスまたはPETボトルにボトル詰めされる場合、この悪影響はさらに大きい。
【0003】
したがって本発明の目標は、(主要構成要素であるジュースまたはネクターの次に)少なくとも1種の(LC)−PUFAを含んでなるが、魚味を有さない(またはほんのわずかだけ有する)(フルーツ)ジュースまたは(フルーツ)ネクター調合物を探すことであった。このジュースまたはネクター調合物は、少なくともこのような調合物に典型的な貯蔵寿命期間にわたり魚の味も匂いもしてはならない。
【0004】
意外にも、調合物にβ−カロテンを添加することで、良い味の(=魚臭のない)PUFAを含んでなる(フルーツ)ジュースまたは(フルーツ)ネクター調合物を生成し得ることが分かった。β−カロテンは、一重項酸素失活剤の役割を果たして光酸化から保護するので、β−カロテンの添加による安定化は、ジュースまたはネクターが透明ガラスまたはPETボトルにボトル詰めされる場合、特に重要である。
【0005】
したがって本発明は、
(i)ジュースまたはネクター、および
(ii)100ppm1000ppmの少なくとも1種のLC−PUFA、および
(iii)0.1ppm〜20ppmのβ−カロテン
を含んでなるジュースまたはネクター調合物に関する。
【0006】
「ジュース調合物」という用語は、組成物の主成分がジュースであり、いくつかのその他の成分が「純粋」ジュースに添加されることを意味する。「ジュース」という用語は、本発明の文脈で果実または野菜組織中に天然に含有される液体を意味する。ジュースは、通常、加熱または溶剤なしに新鮮な果実または野菜を機械的に圧搾しまたは冷浸することで調製される。多数の市販のジュースは濾過されて繊維またはパルプが除去されるが、高パルプフレッシュオレンジジュースは人気の高い飲料である。ジュースは、水を添加して液体をその「元の状態」に戻す必要がある、時に凍結されている濃縮形態であり得る。フルーツジュースの保存および加工の一般的な方法としては、缶詰、低温殺菌、凍結、蒸発、および噴霧乾燥が挙げられる。一般的なジュースとしては、リンゴ、オレンジ、グレープフルーツ、パイナップル、トマト、パッションフルーツ、マンゴー、ニンジン、ブドウ、チェリー、ツルコケモモ、およびザクロが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0007】
ほとんどの国々で、「フルーツジュース」と見なされる飲料のための標準純度が規定されている。この名称は、一般に100%純粋フルーツジュースである飲料のためにだけ使用されている。欧州連合では、ジュースおよびネクターは、理事会指令(2001年12月20日付EU理事会指令2001/112/EC)によって規制されている。
【0008】
ジュースそれ自体は炭酸を含む飲料でないが、例えば実際のフルーツジュースを成分とするOrangina(登録商標)などのいくらかの炭酸を含む飲料が販売されている。
【0009】
「ネクター」という用語は、本発明の文脈でフルーツジュースから製造される非炭酸清涼飲料の一種を意味する。国によっては、飲料産業はネクターを「ジュース」とラベルされる飲料から区別する。米国および英国では、「フルーツジュース」という用語が100%純粋フルーツジュース飲料に限定される一方、「ネクター」は甘味料および保存料をはじめとする、フルーツジュース以外の添加剤を含有してもよい。
【0010】
本発明の好ましい実施態様は、フルーツジュースおよびフルーツネクターである、ジュースおよびネクターである。本発明の非常に好ましい実施態様は、オレンジからできたフルーツジュースまたはフルーツネクターを含んでなる。
【0011】
本発明の文脈で、「PUFA」(多価不飽和脂肪酸)および「LC−PUFA」(長鎖多価不飽和脂肪酸)という用語はそれらの一般に受け入れられている意味で使用される。それは少なくとも2個の炭素−炭素二重結合(好ましくは2〜6個、より好ましくは4または5または6個の炭素−炭素二重結合)を有し、好ましくは16〜24個の炭素原子(好ましくは18〜22個の炭素原子)からなり、n−3、n−6、およびn−9酸を含んでなる、脂肪酸に関する。PUFAという用語は遊離酸を定義するが、それは一般にそれらの塩と、それらの天然エステル形態、すなわち(モノ−、ジ−、およびトリグリセリドをはじめとする)グリセリドとしての、そして例えばエチルエステルなどのそれらがエステル交換によって転換されるエステルの形態としての酸もまた意味するものと理解される。本発明の文脈において好ましい対象のPUFAは、特に海産動物から、好ましくは魚から、植物から、または発酵によって得られる油の構成要素としての、単一化合物としての、または混合物中の、好ましくは例えばトリグリセリドまたはエチルエステルなどのそれらのエステル形態の、好ましくは食品等級の、特にEPA(エイコサペンタ−5,8,11,14,17−エン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサ−4,7,10,13,16,19−エン酸)、GLA(γ−リノレン酸)およびARA(アラキドン酸)などのn−3およびn−6PUFAである。
【0012】
脂肪酸はまた、炭素鎖長に基づいて分類される。短鎖脂肪酸は2〜約6個の炭素を有する。中鎖脂肪酸は約6〜約14個の炭素を有する。長鎖脂肪酸は、16〜24個以上の炭素を有する。本発明では、20個以上の炭素を有する長鎖PUFA(LC−PUFA)が特に興味深い。
【0013】
PUFAは、当該技術分野で知られている方法によって、例えば抗酸化剤、乳化剤、香辛料、またはローズマリーまたはセージ抽出物などのハーブの添加によって、安定化および/または脱臭し得る。本発明の好ましい実施態様では、PUFAという用語は、商標ROPUFA(登録商標)(スイス国カイザーアウグスト(Kaiseraugst,Switzerland)のDSM Nutritional Products Ltd)の下に知られている、市販の精製魚油を指す。本発明のさらなる好ましい実施態様では、所望ならばその他の抗酸化剤および/またはパルミチン酸アスコルビルなどの脱臭剤、および/またはローズマリー抽出物と共に、トコフェロールまたはトコトリエノール(天然混合物または合成的に調製された、好ましくはαトコフェロール)を用いて、ROPUFA(登録商標)が安定化される。
【0014】
多価不飽和脂肪酸の好ましい誘導体は、例えばグリセリド、特にトリグリセリドおよびエチルエステルなどのそれらのエステルである。n−3多価不飽和脂肪酸のトリグリセリドが、特に好ましい。トリグリセリドは、3つの一様な不飽和脂肪酸、または2または3つの異なる不飽和脂肪酸を含有し得る。それはまた、このような化合物の混合物を包含する。さらにそれらはまた、飽和脂肪酸を部分的に含有してもよい。
【0015】
誘導体がトリグリセリドである場合、常態では3つの異なるn−3多価不飽和脂肪酸は、グリセロールでエステル化される。本発明の好ましい一実施態様ではトリグリセリドが使用され、脂肪酸部分の30%はn−3脂肪酸であり、それらの25%は長鎖多価不飽和脂肪酸である。市販のRO−PUFA(登録商標)’30’n−3食用油が好ましくは使用されて、本発明に従ったエマルジョンが調製される。エマルジョンの調製のために、市販のROPUFA(登録商標)’75’n−3EEもまた使用し得る。ROPUFA(登録商標)’75’n−3EEは、最小n−3脂肪酸エチルエステル含有量が72%である、エチルエステルの形態の精製された海産油である。これは混合トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、およびクエン酸によって安定化され、ローズマリー抽出物を含有する。
【0016】
例えば海産油(魚油)および/または植物油など、多価不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含有する天然油(1つ以上の構成要素)を使用することが可能である。多価不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含んでなる油は、オリブ油、ヒマワリ油、月見草オイル、ルリヂサ油、グレープシードオイル、ダイズ油、ラッカセイ油、小麦胚芽油、パンプキンシードオイル、クルミ油、ゴマ油、ナタネ油(カノーラ)、黒カシスシードオイル、キウイシードオイル、特定の真菌からの油、および魚油である。
【0017】
人間および/または動物が摂取し得るジュースまたはネクターを得るためには、PUFA化合物は食品等級でなくてはならない。
【0018】
本発明の好ましい実施態様は、150ppm〜800ppm、より好ましくは150ppm〜600ppm、特に好ましくは200ppm〜400ppmの少なくとも1種のLC−PUFAを含んでなるフルーツジュース調合物である。ppm(百万分の1)は、1,000,000部あたり1部(106中の1部、および1×10−6の値)を意味する。
【0019】
β−カロテンは、植物、果実、および野菜に広汎に見られる、色が橙赤色のカロテンとして知られる天然化学物質ファミリーに属する。β−カロテンのIUPAC名は、3,7,12,16−テトラメチル−1,18−ビス(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニル)−オクタデカ−1,3,5,7,9,11,13,15,17−ノナエン(分子式C40H56)である。
【0020】
本発明の好ましい実施態様は、0.3ppm〜10ppm、より好ましくは0.5ppm〜5ppm、特に好ましくは0.5ppm〜1ppmのβ−カロテンを含んでなるジュースまたはネクター調合物に関する。
【0021】
本発明に従った(フルーツ)ジュースまたは(フルーツ)ネクター調合物はまた、人間または動物のための飲料で一般に使用される、さらなる成分も含んでなり得る。このような成分の例は、水(またはその他の追加的液体)、ビタミン、砂糖(またはあらゆる種類の合成または天然の甘味料)、香料(合成または天然)、着色料(合成または天然)、増粘剤、繊維などである。これらの成分は、飲料製造分野において一般的な量で添加し得る。これらの全成分は食品等級であり、または食品または飼料製品において許容できることが好ましい。
【0022】
本発明に従った(フルーツ)ジュースまたは(フルーツ)ネクター調合物は、「すぐ使用できる」形態であり得る。これは飲料が、(例えば希釈などの)さらなる処理なしに、消費され得ることを意味する。しかし消費前にさらに処理しなくてはならない形態で、(フルーツ)ジュースまたはネクター組成物を提供することもまた可能である。非常に一般的な形態は濃縮形態であり、これは消費直前に消費者によって希釈され、または最終製品の製造者によって容器に充填する前に希釈され得る。
【0023】
本発明のさらなる実施態様は「原料物質」であり、これを(フルーツ)ジュースまたは(フルーツ)ネクターに添加して、上述のような(フルーツ)ジュースまたは(フルーツ)ネクター調合物が得られる。
【0024】
したがって、本発明はまた、
(a)少なくとも1種のPUFA、および
(b)β−カロテン
を含んでなる組成物も提供する。
【0025】
したがって、本発明はまた、
(a)ベース組成物の総重量を基準にして99.9〜99.99重量%の少なくとも1種のPUFA、および
(b)ベース組成物の総重量を基準にして0.01〜0.1重量%のβ−カロテン
を含んでなる:好ましいベース組成物も提供する。
【0026】
本発明のさらなる実施態様は、
ジュースまたはネクターを製造するための
(a)ベース組成物の総重量を基準にして99.9〜99.99重量%の少なくとも1種のPUFA、および
(b)ベース組成物の総重量を基準にして0.01〜0.1重量%のβ−カロテン
を含んでなるベース組成物の使用である。
【0027】
本発明に従ったジュースまたはネクターの製造は、ジュースおよびネクター調合物分野で良く知られている方法に従って実施し得る。ベース調合物は、上で開示されるPUFAおよび/またはβ−カロテン量が得られる程度に、本発明に従って希釈される。通常、原料物質は、少なくとも100倍に希釈される。
【0028】
以下の実施例によって、本発明を例証する。
【0029】
[実施例]
[概説]
本発明のジュースは匂い嗅ぎ試験を使用して試験される。以下の実施例の全てのジュースサンプルは、訓練され熟練した味覚パネルに提供される。感覚分析は、異なる属性に関する間隔尺度を使用して、記述的分析手段によって実施される。間隔尺度は1「検出不能」属性から始まって、7「極めて強力」に至る7つの間隔から構成される。
【0030】
ジュースとしては、以下のオレンジジュースが全実施例で使用された。
【0031】
【表1】



【0032】
表2および3には、オレンジジュース調合物を製造するための原料物質が列挙される。カラム内の値は、重量%(原料物質総重量基準)で表示される。
【0033】
【表2】



【0034】
【表3】



【0035】
[実施例1〜4および6の原料物質の調製]
調製は、窒素雰囲気下で実施する。アカシアガムおよびグリセロールを反応容器内で混合する。水を添加して65℃で撹拌(500rpm)しながらアカシアガムを(30分間)溶解する。次に溶液を40℃に冷却して、水に溶解したアスコルビン酸ナトリウムを混合物に添加する。ROPUFA’30’n−3食用油およびβ−カロテン(実施例1〜4)をミンサーディスク(4800rpm、40℃)で撹拌しながら、水性マトリックス中に乳化する。
【0036】
[実施例5の原料物質の調製]
調製は、窒素雰囲気下で実施する。アカシアガムおよびグリセロールを反応容器内で混合する。水を添加して65℃で撹拌(500rpm)しながら、アカシアガムを(30分間)溶解する。次に溶液を40℃に冷却して、水に溶解したアスコルビン酸ナトリウムを混合物に添加する。ROPUFA’30’n−3食用油およびβ−カロテンをミンサーディスク(4800rpm、40℃)で撹拌しながら、水性マトリックス中に乳化して、その後高圧をかけて(300/150バールで2回)均質化する。
【0037】
全ての原料物質(表2および3)は、β−カロテン含量が各オレンジジュース調合物中で0.9ppmになるように、オレンジジュース(表1)で希釈した。上述の匂い嗅ぎ試験を使用して、これらのオレンジジュース調合物を試験する。全調合物は製造直後(保存なし)、次に(25℃で)1、2、および3ヶ月の保存後に試験する。
【0038】
結果を以下の表4および5に示す。
【0039】
【表4】



【0040】
【表5】



【0041】
β−カロテンを含有しない実施例6の値は、顕著により高いことが分かる(特に保存後)。少量のβ−カロテン添加は、(強い)魚味のない調合物を意外にももたらすことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ジュースまたはネクター、および
(ii)100ppm〜1000ppmの少なくとも1種のPUFA、および
(iii)0.01ppm〜20ppmのβ−カロテン
を含んでなるジュースまたはネクター調合物。
【請求項2】
前記ジュースがフルーツジュースである、請求項1に記載の調合物。
【請求項3】
前記ネクターがフルーツネクターである、請求項1に記載の調合物。
【請求項4】
(ii)150ppm〜800ppmの少なくとも1種のLC−PUFAを含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項5】
(ii)150ppm〜600ppmの少なくとも1種のLC−PUFAを含んでなる、請求項4に記載の調合物。
【請求項6】
(ii)200ppm〜400ppmの少なくとも1種のLC−PUFAを含んでなる、請求項4に記載の調合物。
【請求項7】
(iii)0.3ppm〜10ppmのβ−カロテンを含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項8】
(iii)0.5ppm〜5ppmのβ−カロテンを含んでなる、請求項7に記載の調合物。
【請求項9】
(iii)0.5ppm〜1ppmのβ−カロテンを含んでなる、請求項7に記載の調合物。
【請求項10】
前記LC−PUFAが、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有し、16〜24個の炭素原子からなる脂肪酸からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項11】
前記LC−PUFAが、EPA(エイコサペンタ−5,8,11,14,17?エン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサ−4,7,10,13,16,19−エン酸)、GLA(γ−リノレン酸)、およびARA(アラキドン酸)からなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の調合物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のジュースまたはネクター調合物を製造するための
(a)ベース組成物総重量を基準にして99.9〜99.99重量%の少なくとも1種のPUFAと、
(b)ベース組成物総重量を基準にして0.01〜0.1重量%のβ−カロテン
を含んでなる組成物の使用。

【公表番号】特表2013−503615(P2013−503615A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527338(P2012−527338)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062962
【国際公開番号】WO2011/026941
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】