説明

ジョイントシート

【課題】耐熱性に優れたガスケット材料として有用なジョイントシートに関する。
【解決手段】(a)アスベストを除く補強繊維、(b)ゴム、(c)ゴム薬品、並びに(d)廃糖蜜、オリゴ糖、リグニン類及びイミド樹脂から選ばれる1種又は2種以上の成分を含有する組成物を加熱圧縮して得られるジョイントシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れたガスケット材料として有用なジョイントシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ジョイントシートは、鉄鋼・金属プラント、石油化学プラント、各種工業用機械装置、自動車、船舶、家電などに使用されるガスケットとして用いられている。従来、ジョイントシートは、補強繊維、ゴム、充填材及びゴム薬品を含有する組成物を加熱圧縮することにより製造されている。そして、この補強繊維として優れた耐熱性を有するアスベストが広く使用されてきた。しかし、アスベストは、安全性の点から使用が制限されたことから、アスベストに代わる補強繊維が種々検討され、アラミド繊維、ロックウール等の繊維が使用されてきた(特許文献1等)。また、耐濡れ性その他の特性を改善すべく、繊維以外の成分、例えばゴム、充填材等についても種々検討されている(特許文献2〜4)。
【特許文献1】特開平11−29761号公報
【特許文献2】特開平10−273645号公報
【特許文献3】特開平9−53062号公報
【特許文献4】特開2002−201459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、アラミド繊維等の補強繊維を使用したジョイントシートの耐熱性は未だ十分とは言えず、300℃を超える高温下でも優れた強度を維持するものは開発されていない。
従って、本発明の課題はアスベスト以外の補強繊維を使用し、優れた耐熱性を有するジョイントシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明者は、種々の添加物を添加してジョイントシートを製造し、その耐熱性を検討してきたところ、全く意外にも廃糖蜜、オリゴ糖、リグニン類又はイミド樹脂を配合すれば、アスベスト以外の補強繊維を配合した場合であっても、優れた耐熱性を有するジョイントシートが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、(a)アスベストを除く補強繊維、(b)ゴム、(c)ゴム薬品、並びに(d)廃糖蜜、オリゴ糖、リグニン類及びイミド樹脂から選ばれる1種又は2種以上の成分を含有する組成物を加熱圧縮して得られるジョイントシートを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のジョイントシートは、300℃を超える温度においても強度が低下せず、鉄鋼・金属プラント、石油化学プラント、家電、自動車・船舶等のガスケットとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のジョイントシートは、(a)アスベストを除く補強繊維、(b)ゴム、(c)ゴム薬品、並びに(d)廃糖蜜、オリゴ糖、リグニン類及びイミド樹脂から選ばれる1種又は2種以上の成分を含有する組成物を加熱圧縮することにより得られる。
【0008】
本発明のジョイントシートに用いられる(a)補強繊維としては、アスベスト以外の有機繊維、無機繊維が用いられる。例えば、芳香族ポリアミド繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ尿素系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリフルオロカーボン系繊維、フェノール系繊維、セルロース系繊維等の有機繊維、カーボン繊維、ガラス繊維、セピオライト、セラミック繊維、溶融石英繊維、化学処理高シリカ繊維、溶融珪酸アルミナ繊維、アルミナ連続繊維、安定化ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、チタン酸アルカリ繊維、ウィスカー、ボロン繊維、金属繊維、ロックウール等の無機繊維を用いることができる。このうち、強度、耐熱性の観点から、カーボン繊維、セピオライト、セラミック繊維、ロックウール等が好ましい。これらの繊維は単独又は2種類以上を併用してもよい。
【0009】
(a)補強繊維は、原料組成物中に、強度、耐熱性、耐食性の点から、30〜80重量%、さらに50〜80重量%配合するのが好ましい。
【0010】
本発明のジョイントシートに用いる(b)ゴムとしては、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エチレン酢ビゴム、塩化ポリエチレン、塩化ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルイソプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴムを用いることができる。このうち、強度、耐熱性耐食性の点から、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム等が好ましい。これらのゴムは単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0011】
(b)ゴムは、原料組成物中に、強度、耐熱性、シート加工性の点から、5〜30重量%、さらに5〜20重量%配合するのが好ましい。
【0012】
本発明のジョイントシートに用いられる(c)ゴム薬品は、(b)の加硫促進等を目的として配合されるものであり、例えば硫黄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、過酸化物、ジニトロソベンゼン等の加硫剤、ポリアミン系化合物、アルデヒドアミン系化合物、チウラム系化合物、ジチオカルバミン酸塩系化合物、スルフェンアミド系化合物、チアゾール系化合物、グアニジン系化合物、チオウレア系化合物、キサントゲン酸塩系化合物等の加硫促進剤や、老化防止剤、スコーチ防止剤、可塑剤、着色剤等従来ジョイントシート形成用ゴム薬品として公知のものが広く用いられる。これらのゴム薬品は、原料組成物中に0.5〜10重量%、さらに1〜10重量%配合するのが好ましい。
【0013】
本発明のジョイントシートにおいては、上記(a)〜(c)成分に加えて、(d)廃糖蜜、オリゴ糖及びイミド樹脂から選ばれる1種又は2種以上を配合することにより、耐熱性が飛躍的に向上する。ここで廃糖蜜とは、砂糖を精製する時に発生する、糖分以外の成分も含んだ粘状の黒褐色の液体である。当該廃糖蜜には、サトウキビ由来、テンサイ由来、精製糖廃糖蜜(精糖をくり返した後の残分)等が挙げられる。
【0014】
オリゴ糖としては、2糖類〜10糖類が挙げられ、具体的にはショ糖、果糖、ラフィノース、パノース、メレジトース、ゲンチアース、スタキオース等が挙げられる。またリグニン類には、各種木材由来のリグニン、及び廃糖蜜由来のリグニン等が挙げられる。
【0015】
イミド樹脂としては、ポリイミド系樹脂であれば限定されないが、耐熱性及び強度の向上の点から、熱硬化性ポリイミド、特にビスアリルナジイミドが好ましい。
【0016】
これらの(d)成分のうち、ジョイントシートへの耐熱性付与の点から、廃糖蜜、リグニン及び/又はイミド樹脂が好ましく、特に廃糖蜜、リグニン及び/又はビスアリルナジイミドが好ましい。これらの(e)成分は1種でも2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0017】
これらの(d)成分は、ジョイントシートへの耐熱性付与の点から、原料組成物中に、1〜30重量%、さらに2〜20重量%配合するのが好ましい。
【0018】
本発明のジョイントシートには、前記(d)成分に加えて、(e)シリカ、アルミナ及びフッ素樹脂から選ばれる1種又は2種以上を配合するのが、耐熱性向上効果の点から好ましい。ここでシリカ及びアルミナは、コロイド状シリカ(シリカゾル)、コロイド状アルミナ(アルミナゾル)の形態で用いるのが好ましい。また、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニルデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。これらの(e)成分は1種でも2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0019】
これらの(e)成分は、原料組成物中に、ジョイントシートに耐熱性を向上させる点から、1〜30重量%、さらに2〜20重量%配合するのが好ましい。
【0020】
また、本発明のジョイントシートには、前記(d)及び(e)成分以外に、シリカ、カオリン等の充填材を添加してもよい。
【0021】
本発明のジョイントシートは、成分(a)〜(d)、及び必要に応じて成分(e)を混合し、得られた組成物を加熱圧縮することにより製造することができる。なお、上記成分の混合にあたって、必要に応じて、水、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)等の溶剤を用いることもできる。加熱圧縮は、例えば、熱ロールと冷ロールからなる一対のロール間に投入し、熱ロール側へ所定厚さまで積層させた後、熱ロールから剥離することにより行なわれる。ここで、熱ロールの温度は120〜160℃が好ましく、冷ロールの温度は10〜30℃が好ましい。ジョイントシートの厚さは、用途によって異なるが、0.5〜3mm、特に1〜2mmが好ましい。また得られたシートは、切断して、円状、穴あき円状等所望の形状にすることができる。
【0022】
本発明により得られるジョイントシートは、アスベストを配合していないにもかかわらず、300℃程度の高温下においても強度が低下せず、耐熱性に優れている。従って、高温となる高圧気体管、高圧蒸気、排気管等におけるガスケットとして特に有用である。
【実施例】
【0023】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0024】
実施例1〜5及び比較例
表1に示す配合の組成物をヘンシェルミキサーにて混合し、その後得られた混練物をミンチ機にて造粒した。得られた組成物を150℃に加熱された熱ロールと20℃に保たれた冷ロール間に投入し、熱ロール側に積層しながら加圧加硫成形して、厚さ1.5mmのジョイントシートを製造した。
得られたジョイントシート(実施例1〜3及び比較例1)の100℃、200℃、及び300℃で引張り強度(JIS R3453による)を測定した。その結果を図1に示す。図1の結果から明らかなように、廃糖蜜又はフッ素樹脂を配合しない比較例1に比べて、これらを配合したジョイントシートは300℃における引張り強度が極めて優れていた。従って本発明のジョイントシートは高温条件となる配管等のガスケットとして有用である。
【0025】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】各種ジョイントシートの各温度条件下での引張り強度を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アスベストを除く補強繊維、(b)ゴム、(c)ゴム薬品、並びに(d)廃糖蜜、オリゴ糖、リグニン類及びイミド樹脂から選ばれる1種又は2種以上の成分を含有する組成物を加熱圧縮して得られるジョイントシート。
【請求項2】
前記組成物が、さらに、シリカ、アルミナ及びフッ素樹脂から選ばれる1種又は2種以上を含有するものである請求項1記載のジョイントシート。
【請求項3】
(e)廃糖蜜、オリゴ糖、リグニン類及びイミド樹脂から選ばれる1種又は2種以上の成分の配合量が、前記組成物中に5〜30重量%である請求項1又は2記載のジョイントシート。

【図1】
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【公開番号】特開2008−239766(P2008−239766A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81367(P2007−81367)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(592245812)株式会社アスクテクニカ (6)
【Fターム(参考)】