説明

ジョイントシート

【課題】耐熱性だけでなく耐薬品性にも優れるジョイントシートを提供する。
【解決手段】(a)芳香族ポリアミド繊維を含有する補強繊維、(b)ゴム、(c)ゴム薬品、(d)黒鉛を含有する充填材、及び(e)イミド樹脂を含有する組成物を加熱圧縮して得られるジョイントシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性及び耐薬品性に優れ、ガスケット材料として有用なジョイントシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ジョイントシートは、鉄鋼・金属プラント、石油化学プラント、各種工業用機械装置、自動車、船舶、家電などに使用されるガスケットとして用いられている。従来、ジョイントシートは、補強繊維、ゴム、充填材及びゴム薬品を含有する組成物を加熱圧縮することにより製造されている。そして、この補強繊維として優れた耐熱性を有するアスベストが広く使用されてきた。しかし、アスベストは、安全性の点から使用が制限されたことから、アスベストに代わる補強繊維が種々検討され、アラミド繊維、ロックウール等の繊維が使用されてきた(特許文献1等)。また、耐濡れ性その他の特性を改善すべく、繊維以外の成分、例えばゴム、充填材等についても種々検討されている(特許文献2〜4)。
さらに、耐熱性を向上させたジョイントシートとして、芳香族ポリアミド繊維を15重量%を超え30重量%以下の多量用い、かつ黒鉛のみを充填材とするジョイントシート(特許文献5)、廃糖蜜、オリゴ糖、リグナン類及びイミド樹脂から選ばれる成分を配合したジョイントシート(特許文献6)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−29761号公報
【特許文献2】特開平10−273645号公報
【特許文献3】特開平9−53062号公報
【特許文献4】特開2002−201459号公報
【特許文献5】特許第4746879号公報
【特許文献6】特開2008−239766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ジョイントシートが使用される場面は、種々の化学薬品や化学反応が生じることが多く、耐熱性に加えて耐薬品性にも優れていることが望まれる。
従って、本発明の課題は、耐熱性だけでなく耐薬品性にも優れるジョイントシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、充填材の種類、補強繊維の種類及びその他の成分について種々検討した結果、補強繊維中に芳香族ポリアミド繊維を含有させ、充填材として黒鉛及び無機充填材を組み合わせて用い、これにイミド樹脂を組み合わせて配合した組成物を加熱圧縮すれば、耐熱性と耐薬品性のいずれにも優れるジョイントシートが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
【0007】
[1](a)芳香族ポリアミド繊維を含有する補強繊維、(b)ゴム、(c)ゴム薬品、(d)黒鉛を含有する充填材、及び(e)イミド樹脂を含有する組成物を加熱圧縮して得られるジョイントシート。
[2]前記組成物が、さらに(f)ビスマレイミドを含有するものである[1]記載のジョイントシート。
[3]芳香族ポリアミド繊維の含有量が前記組成物中に5〜15質量%である[1]又は[2]記載のジョイントシート。
[4]前記組成物の(e)イミド樹脂及び(f)ビスマレイミドの含有質量比が1:10〜10:1である[2]又は[3]記載のジョイントシート。
[5](d)充填材が、少なくとも黒鉛とタルクとを含むものである[1]〜[4]のいずれかに記載のジョイントシート。
【発明の効果】
【0008】
本発明のジョイントシートは、250℃を超える温度においても強度低下が小さく、かつ優れた耐薬品性を有し、鉄鋼・金属プラント、石油化学プラント、家電、自動車・船舶等のガスケットとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のジョイントシートは、(a)芳香族ポリアミド繊維を含有する補強繊維、(b)ゴム、(c)ゴム薬品、(d)黒鉛を含有する充填材、及び(e)イミド樹脂を含有する組成物を加熱圧縮することにより得られる。
【0010】
本発明のジョイントシートに用いられる(a)補強繊維は、芳香族ポリアミド繊維を含む。芳香族ポリアミド繊維を含有させることによりジョイントシートの耐熱性が向上する。補強繊維には、芳香族ポリアミド繊維以外に、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ尿素系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリフルオロカーボン系繊維、フェノール系繊維、セルロース系繊維等の有機繊維;カーボン繊維、ガラス繊維、セピオライト、セラミック繊維、溶融石英繊維、化学処理高シリカ繊維、溶融珪酸アルミナ繊維、アルミナ連続繊維、安定化ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、チタン酸アルカリ繊維、ウィスカー、ボロン繊維、金属繊維、ロックウール等の無機繊維を用いることができる。このうち、強度、耐熱性及び耐薬品性の観点から、芳香族ポリアミド繊維と、カーボン繊維、セピオライト、セラミック繊維、ロックウール、ガラス繊維から選ばれる1種以上とを組み合わせるのが好ましい。
【0011】
(a)補強繊維は、原料組成物中に、強度、耐熱性、耐薬品性、耐食性の点から、合計で10〜50質量%、さらに10〜30質量%配合するのが好ましい。また、芳香族ポリアミド繊維は、耐熱性、耐薬品性の点から原料組成物中に5〜15質量%、さらに5〜14質量%配合するのが好ましい。
【0012】
本発明のジョイントシートに用いる(b)ゴムとしては、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エチレン酢ビゴム、塩化ポリエチレン、塩化ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルイソプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴムを用いることができる。このうち、強度、耐熱性、耐食性の点から、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム等が好ましい。これらのゴムは単独又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0013】
(b)ゴムは、原料組成物中に、強度、耐熱性、シート加工性の点から、5〜30質量%、さらに5〜20質量%配合するのが好ましい。
【0014】
本発明のジョイントシートに用いられる(c)ゴム薬品は、(b)ゴムの加硫促進等を目的として配合されるものであり、例えば硫黄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、過酸化物、ジニトロソベンゼン等の加硫剤、ポリアミン系化合物、アルデヒドアミン系化合物、チウラム系化合物、ジチオカルバミン酸塩系化合物、スルフェンアミド系化合物、チアゾール系化合物、グアニジン系化合物、チオウレア系化合物、キサントゲン酸塩系化合物等の加硫促進剤や、老化防止剤、スコーチ防止剤、可塑剤、着色剤等従来ジョイントシート形成用ゴム薬品として公知のものが広く用いられる。これらのゴム薬品は、原料組成物中に0.5〜10質量%、さらに1〜10質量%配合するのが好ましい。
【0015】
本発明のジョイントシートに用いられる(d)充填材は、黒鉛を含む。充填材として黒鉛を使用すると、強度が向上するだけでなく、耐薬品性が向上する。黒鉛としては、鱗片状黒鉛、膨張黒鉛、土状黒鉛が挙げられるが、鱗片状黒鉛を用いるのが耐薬品性の点で特に好ましい。黒鉛以外の充填材としては、タルク、カーボンブラック、マイカ、バーミキュライト、セリサイト等が用いられる。すなわち、(d)充填材としては、黒鉛と、タルク、カーボンブラック、マイカ、バーミキュライト及びセリサイトから選ばれる1種以上とを組み合わせて用いるのが、強度及び耐薬品性の点から好ましく、少なくとも黒鉛とタルクとを含む充填材を用いるのがさらに好ましい。
【0016】
これらの充填材は、合計で原料組成物中に40〜80質量%、さらに50〜80質量%配合するのが好ましい。このうち、黒鉛は、原料組成物中に30〜70質量%、さらに40〜70質量%配合するのが好ましい。
【0017】
本発明のジョイントシートに用いられる(e)イミド樹脂は、耐熱性の向上に寄与する。イミド樹脂としては、熱硬化性ポリイミド、特にビスアリルナジイミドが好ましい。当該イミド樹脂は、原料組成物中にに0.2〜5質量%、さらに0.2〜3質量%配合するのが好ましい。
【0018】
本発明のジョイントシートにおいては、イミド樹脂に加えて(f)ビスマレイミドを配合することにより、さらに耐熱性が向上する。このようなビスマレイミドは、原料組成物中に1〜8質量%、さらに1〜6質量%配合するのが好ましい。また、(e)イミド樹脂と(f)ビスマレイミドとの含有質量比[(e):(f)]は耐熱性向上効果の点で10:1〜1:10が好ましく、さらに1:10〜1:1が好ましい。
【0019】
本発明のジョイントシートには、さらに(g)シリカ、アルミナ及びフッ素樹脂から選ばれる1種又は2種以上を配合することができる。ここでシリカ及びアルミナは、コロイド状シリカ(シリカゾル)、コロイド状アルミナ(アルミナゾル)の形態で用いるのが好ましい。また、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニルデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。これらの(e)成分は1種でも2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0020】
これらの(g)成分は、原料組成物中に、ジョイントシートに耐熱性を向上させる点から、0〜30質量%、さらに1〜20質量%配合するのが好ましい。
【0021】
本発明のジョイントシートは、成分(a)〜(e)、及び必要に応じて成分(f)〜(g)を混合し、得られた組成物を加熱圧縮することにより製造することができる。なお、上記成分の混合にあたって、必要に応じて、水、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)等の溶剤を用いることもできる。加熱圧縮は、例えば、熱ロールと冷ロールからなる一対のロール間に投入し、熱ロール側へ所定厚さまで積層させた後、熱ロールから剥離することにより行なわれる。ここで、熱ロールの温度は120〜160℃が好ましく、冷ロールの温度は10〜30℃が好ましい。ジョイントシートの厚さは、用途によって異なるが、0.3〜3mmが好ましい。また得られたシートは、切断して、円状、穴あき円状等所望の形状にすることができる。
【0022】
本発明により得られるジョイントシートは、アスベストを配合していないにもかかわらず、250℃程度の高温下においても強度低下が小さく、耐熱性に優れており、さらに耐薬品性にも優れている。従って、高温となる高圧気体管、高圧蒸気、排気管、化学プラント配管等におけるガスケットとして特に有用である。
【実施例】
【0023】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0024】
実施例1〜5及び比較例
表1に示す配合の組成物をヘンシェルミキサーにて混合し、その後得られた混練物をミンチ機にて造粒した。得られた組成物を150℃に加熱された熱ロールと20℃に保たれた冷ロール間に投入し、熱ロール側に積層しながら加圧加硫成形して、厚さ0.5mmのジョイントシートを製造した。表1中に示す数値は質量%である。
【0025】
得られたジョイントシートの耐熱性及び耐薬品性を評価した。常態の引張強さの測定は、JIS R3453ジョイントシートの試験規格に準拠して行った。
【0026】
(1)耐熱性の評価
耐熱性の評価は、250℃の熱風循環炉に5時間熱劣化させた後の引張強度を測定した。
【0027】
(2)耐薬品性の評価
耐薬品性の評価は、5質量%塩酸、5質量%水酸化ナトリウム、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)に100時間浸漬した後の引張強度を測定した。
【0028】
得られた結果を表2に示す。表2中の数値単位はMPaである。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
表2から明らかように、実施例1〜3は熱劣化後および各溶液に浸漬後の強度ともバランスがとれている。実施例4は耐薬品性が若干悪い。比較例1は耐薬品性のバランスが悪い。また、黒鉛、芳香族ポリアミド繊維を使用していない比較例2は、耐熱性は良いが耐薬品性に劣る結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)芳香族ポリアミド繊維を含有する補強繊維、(b)ゴム、(c)ゴム薬品、(d)黒鉛を含有する充填材、及び(e)イミド樹脂を含有する組成物を加熱圧縮して得られるジョイントシート。
【請求項2】
前記組成物が、さらに(f)ビスマレイミドを含有するものである請求項1記載のジョイントシート。
【請求項3】
芳香族ポリアミド繊維の含有量が前記組成物中に5〜15質量%である請求項1又は2記載のジョイントシート。
【請求項4】
前記組成物の(e)イミド樹脂及び(f)ビスマレイミドの含有質量比が1:10〜10:1である請求項2又は3記載のジョイントシート。
【請求項5】
(d)充填材が、少なくとも黒鉛とタルクとを含むものである請求項1〜4のいずれか1項記載のジョイントシート。

【公開番号】特開2013−100420(P2013−100420A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245466(P2011−245466)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(592245812)株式会社アスクテクニカ (6)
【Fターム(参考)】