説明

ジョイント部材

【課題】2つの被連結管状体の抜け止めを図りつつ、これらの被連結管状体の連結部分におけるより高い密封性の確保を可能とするジョイント部材を提供する。
【解決手段】エンジン50とキャブレター70の連結部52、72の双方に外嵌可能な弾性体製の円筒状をなし、内周部には、複数の条部22,24および複数のシール部26,28が全周に亘って連続して凸状に、かつこれらが被連結管状体の開口部52a,72aを挟んで双方側にそれぞれ少なくとも1つずつ突設され、各条部は、被連結管状体の双方の外周部の複数の溝部54,74のいずれかと係合可能に配されており、各シール部は、被連結管状体のいずれか一方の外周部と当接可能に、開口部を挟んで自身と同一側の条部のいずれかの近傍に配し、締付部材92,94による締付状態で弾性変形により潰れ、当接する被連結管状体のいずれか一方の外周部と密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの被連結管状体(例えば、自動車やオートバイなどにおいて、エンジンとキャブレターを連結するための双方の連結部など)を連結するためのジョイント部材に関し、特に当該ジョイント部材の密封性の改良構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車やオートバイなどに搭載されたエンジンとキャブレターは、所定の連結部材(ジョイント部材)を用いて互いに連結されている。例えば、特許文献1には、このようなジョイント部材の一構成が例示されており、図2および図3にはその構成例を示す。この場合、かかるジョイント部材30は、エンジン50側の連結部52およびキャブレター70側の連結部72の双方に外嵌可能なゴム製の略円筒状をなしており、その内周部のエンジン側(図3においては、左側)およびキャブレター側(同、右側)にそれぞれ1つずつ、連結部52,72の抜け止め用の条部(抜け止め用凸部)32,34が全周に亘って連続して突設されている。そして、これらの凸部32,34をエンジン50側の連結部52およびキャブレター70側の連結部72の外周部を全周に亘って連続して窪ませた溝部(抜け止め用凹部)54,74に係合させ、この状態でジョイント部材30の外周部を締付部材(クランプバンド)92,94で締め付けている。
これにより、ジョイント部材30に対するエンジン50側の連結部52およびキャブレター70側の連結部72の抜け止めを図りつつ、当該ジョイント部材30をこれら連結部52,72に対して強固に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−44394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した図2および図3に示す構成においては、ジョイント部材30が条部(抜け止め用凸部)32,34を溝部(抜け止め用凹部)54,74に係合させた状態で、連結部52,72に対して締付部材(クランプバンド)92,94で締め付け固定されているため、ジョイント部材30と連結部52,72との抜け止め防止効果は確実に高められている。
その際、溝部(抜け止め用凹部)54,74に係合した条部(抜け止め用凸部)32,34は、これらの溝部54,74と密着した状態となるため、ある程度のシール効果を得ることは可能である。しかしながら、条部32,34は、連結部52,72がジョイント部材30から抜けてしまう(換言すれば、ジョイント部材30が連結部52,72から抜けてしまう)ことを防止するための部材であって、外部からの異物(泥水や塵埃など)の侵入や、キャブレターからエンジンへ給気される混合気の外部への漏洩などを確実に防止するためのシール部材(密封シール)とはなっていない。したがって、条部(抜け止め用凸部)32,34を溝部(抜け止め用凹部)54,74に係合させただけでは、連結部52,72の連結部分における十分な密封性能が得られる訳ではない。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、2つの被連結管状体(一例として、エンジン側の連結部およびキャブレター側の連結部)の抜け止めを図りつつ、これらの被連結管状体の連結部分におけるより高い密封性の確保を可能とするジョイント部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明に係るジョイント部材は、開口部を対向させた2つの被連結管状体を、締付部材により締め付けられた状態で相互に連結しており、前記2つの被連結管状体の一方もしくは双方に外嵌可能な弾性体製の円筒状をなし、内周部には、複数の条部および複数のシール部が全周に亘って連続して凸状に、かつこれらの条部およびシール部が前記2つの被連結管状体の開口部を挟んで双方側にそれぞれ少なくとも1つずつ突設され、各条部は、前記2つの被連結管状体の双方の外周部をそれぞれ全周に亘って連続して凹状に窪ませてなる複数の溝部のいずれかと係合可能に配されている。そして、各シール部は、前記2つの被連結管状体のいずれか一方の外周部と当接可能に、前記開口部を挟んで自身と同一側の条部のいずれかの近傍に配され、外周部から前記締付部材により締め付けられた状態で弾性変形して潰れ、当接する前記2つの被連結管状体のいずれか一方の外周部と密着することにより、当該2つの被連結管状体の連結部分を密封状態に保つことを特徴とする。
例えば、内周部に対し、前記2つの被連結管状体の外周部にそれぞれ1つずつ形成された2つの溝部のいずれか一方と係合可能な2つの条部を全周に亘って連続して凸状に1つずつ突設するとともに、前記2つの被連結管状体のいずれか一方の外周部とそれぞれ当接可能な2つのシール部を前記2つの条部のいずれか一方の近傍に全周に亘って連続して凸状に1つずつ突設したジョイント部材の構成を想定することが可能である。
これにより、2つの被連結管状体(一例として、エンジン側の連結部およびキャブレター側の連結部)の確実な抜け止めが可能で、これらの被連結管状体の連結部分における一段と高い密封性を確保可能なジョイント部材を実現することができる。
【0007】
この場合、前記2つのシール部は、前記2つの条部に挟まれるようにこれらの内方へそれぞれ配すればよい。これにより、2つの被連結管状体の内部から外部への気体や液体などの漏洩をより一層確実に防止することができる。
【0008】
また、ジョイント部材の外周部には、前記締付部材を配するための2つの取付部を全周に亘って連続して凹状に形成し、前記2つの取付部の一方を、前記2つの被連結管状体のいずれか一方の外周部と当接するシール部に対応して位置付け、前記2つの取付部の他方を、前記2つの被連結管状体の他方の外周部と当接するシール部に対応して位置付ければよい。これにより、締付部材による押圧力(2つの被連結管状体の外周部からの反力)をより確実に作用させ、シール部を弾性変形させて潰し、当該2つの被連結管状体の外周部と強く密着させることができる。
その際、前記2つの取付部の一方を、前記いずれか一方の外周部と当接するシール部の近傍に配された条部に対応して位置付け、前記2つの取付部の他方を、前記他方の外周部と当接するシール部の近傍に配された条部に対応して位置付けた構成としてもよい。これにより、締付部材による押圧力を受けた条部を溝部と強く係合させ、ジョイント部材と2つの被連結管状体を相対的により強固に係止させることができ、これらのより確実な抜け止めを図ることができる。
【0009】
さらに、ジョイント部材の内周部に対し、前記2つのシール部に挟まれるようにこれらの内方へ拡径部を設け、当該拡径部を、前記2つの被連結管状体の開口部の双方と当接可能となるように、全周に亘って連続して凸状に突設させた構成としてもよい。これにより、2つの被連結管状体の開口部を隔たりや隙間なく連通させることができるとともに、拡径部の端面とこれら開口部(具体的には、これらの開口周縁)を隙間なく確実に当接(密着)させることができる。
【0010】
なお、上記ジョイント部材は、開口部を対向させたエンジンとキャブレターを、相互に連結するための連結部材として適用可能である。この場合には、エンジンとキャブレターの連結部分を密封状態に保つことができ、外部からの異物(泥水や塵埃など)の侵入や、キャブレターからエンジンへ給気される混合気の外部への漏洩などを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るジョイント部材によれば、2つの被連結管状体(一例として、エンジン側の連結部およびキャブレター側の連結部)の抜け止めを確実に図ることができるとともに、これらの被連結管状体の連結部分における一段と高い密封性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るジョイント部材の構成を示す図であって、(a)は、2つの被連結管状体(一例として、エンジン側の連結部およびキャブレター側の連結部)を連結する前の状態を示す要部断面図、(b)は、2つの被連結管状体を連結した後の状態を示す要部断面図である。
【図2】従来のジョイント部材を2つの被連結管状体(一例として、エンジン側の連結部およびキャブレター側の連結部)と連結させた状態を示す全体概略図である。
【図3】2つの被連結管状体を連結した後の従来のジョイント部材の状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のジョイント部材について、添付図面を参照して説明する。なお、本発明に係るジョイント部材は、2つの被連結管状体を連結するための部材であって、開口部を対向させた2つの被連結管状体を、締付部材により締め付けられた状態で相互に連結する。以下の説明においては、一例として、自動車やオートバイなどの各種車両に搭載されたエンジンとキャブレター(具体的には、これらの管状連結部)を連結するための連結部材として使用される場合を想定するが、その他の用途を特段排除するものではない。また、エンジンおよびキャブレターは、互いの開口部を対向させて配置可能な構成をなしているが、開口部周り以外の基本的な構成については特段限定されない。したがって、これらの構成は、上述した図2および図3に示すエンジン50およびキャブレター70の構成と同様である場合を一例として想定し、以下、かかる構成を前提としてジョイント部材の構成について説明する。その際、同一もしくは類似する部材については、図面上で同一符号を付する。
【0014】
図1には、本発明の一実施形態に係るジョイント部材2の構成が示されている。かかるジョイント部材2は、2つの被連結管状体(エンジン50およびキャブレター70)の双方に外嵌可能な弾性体製(一例として、ゴム製)の円筒状をなしている。なお、本実施形態においては、ジョイント部材2がエンジン50およびキャブレター70とは別体をなし、これらのエンジン50およびキャブレター70の双方に対して外嵌可能な構成としているが、ジョイント部材をエンジンおよびキャブレターのいずれか一方(例えば、キャブレター)と一体化させ、他方(同、エンジン)とのみ外嵌可能な構成とすることも想定可能である。また、以下の説明においては、図1における左方(左側)をエンジン側、右方(右側)をキャブレター側という。
エンジン50およびキャブレター70は、ジョイント部材2によって相互に連結される管状の連結部52,72を備えており、これら連結部52,72の開口部52a,72aを互いに対向させて配置されている。エンジン側の連結部52は、エンジン50のキャブレター70との対向部50aを縮径させつつ、当該対向部50aからキャブレター側へ管状に突出しており、キャブレター側の連結部72は、キャブレター70のエンジン50との対向部70aを縮径させつつ、当該対向部70aからエンジン側へ管状に突出している。
【0015】
ジョイント部材2は、そのエンジン側の内径寸法がエンジン50の連結部52の外径寸法と略同寸に設定されているとともに、そのキャブレター側の内径寸法がキャブレター70の連結部72の外径寸法と略同寸に設定されている。これにより、ジョイント部材2は、そのエンジン側とエンジン50の連結部52が圧入により嵌合(外嵌)されるとともに、そのキャブレター側とキャブレター70の連結部72が圧入により嵌合(外嵌)されることで、これらエンジン50とキャブレター70を連結している。この結果、ジョイント部材2を介してエンジン側の開口部52aとキャブレター側の開口部72aが連通され、連結部52,72が一連の給気路(混合気をキャブレターからエンジンへ給気するための供給路)として構成される。なお、ジョイント部材2のエンジン側の内径寸法はエンジン50の連結部52の外径寸法、キャブレター側の内径寸法はキャブレター70の連結部72の外径寸法にそれぞれ対応して設定されており、同一径、異径のいずれにも設定可能である。
【0016】
ジョイント部材2の内周部には、複数の条部および複数のシール部が全周に亘って連続して凸状に、かつこれらの条部およびシール部がエンジン50(連結部52)の開口部52aおよびキャブレター70(連結部72)の開口部72aを挟んで双方側(エンジン側とキャブレター側)にそれぞれ少なくとも1つずつ突設されている。
各条部は、2つの連結部52,72の双方の外周部をそれぞれ全周に亘って連続して凹状に窪ませてなる複数の溝部のいずれかと係合可能に配されている。これに対し、各シール部は、2つの連結部52,72のいずれか一方の外周部と当接可能に、前記開口部52a,72aを挟んで自身と同一側(エンジン側もしくはキャブレター側)の条部のいずれかの近傍に配され、外周部から締付部材(一例として、図1(b)に示すクランプバンド92,94)により締め付けられた状態で弾性変形して潰れ、当接する2つの連結部52,72のいずれか一方の外周部と密着することにより、当該2つの連結部52,72の連結部分を密封状態に保っている。
【0017】
これらの条部およびシール部は、2つの開口部52a,72aを挟んでエンジン側とキャブレター側にそれぞれ少なくとも1つずつ突設されていれば、その突設数は任意に設定することが可能である。
一例として、図1(a)には、内周部に対し、エンジン50の連結部52およびキャブレター70の連結部72の外周部にそれぞれ1つずつ形成された2つの溝部(抜け止め用凹部)54,74のいずれか一方と係合可能な2つの条部(抜け止め用凸部)22,24が全周に亘って連続して凸状に1つずつ突設されるとともに、エンジン50の連結部52およびキャブレター70の連結部72のいずれか一方の外周部とそれぞれ当接可能な2つのシール部26,28が2つの条部22,24のいずれか一方の近傍に全周に亘って連続して凸状に1つずつ突設されたジョイント部材2の構成を示している。
【0018】
かかる構成においては、ジョイント部材2のエンジン側にエンジン50(連結部52)の溝部54と係合可能な条部22が突設されるとともに、当該エンジン50(連結部52)の外周部と当接可能なシール部26が当該条部22の近傍に突設されている。また、ジョイント部材2のキャブレター側には、キャブレター70(連結部72)の溝部74と係合可能な条部24が突設されるとともに、当該キャブレター70(連結部72)の外周部と当接可能なシール部28が当該条部24の近傍に突設されている。この場合、これら2つのシール部26,28は、2つの条部22,24に挟まれるようにこれらの内方(円筒の延出方向に対して内方)へそれぞれ配されている。つまり、エンジン側のシール部26は、条部22のキャブレター側近傍に配され、キャブレター側のシール部28は、条部24のエンジン側近傍に配されている。
【0019】
なお、これらのシール部26,28に加えて、あるいは代えて、エンジン側のシール部を条部22のエンジン側近傍に配し、キャブレター側のシール部を条部24のキャブレター側近傍に配した構成とすることも想定可能である。シール部26,28に加えてさらに別のシール部を配した場合、ジョイント部材のエンジン側の圧入内周部およびキャブレター側の圧入内周部にそれぞれ複数(例えば、2つ)ずつシール部が配される構成となる。また、エンジン側のシール部26に加えてさらに、条部22のキャブレター側近傍にシール部を配した構成(条部22のキャブレター側近傍に複数のシール部を配した構成)や、キャブレター側のシール部28に加えてさらに、条部24のエンジン側近傍にシール部を配した構成(条部24のエンジン側近傍に複数のシール部を配した構成)なども想定可能である。
あるいは、条部を2つの開口部を挟んでエンジン側とキャブレター側(ジョイント部材のエンジン側の圧入内周部およびキャブレター側の圧入内周部)にそれぞれ複数ずつ突設させた構成も想定可能である。
【0020】
このような構成とすることで、ジョイント部材2のエンジン側とエンジン50の連結部52を圧入により嵌合(外嵌)させるとともに、当該ジョイント部材2のキャブレター側とキャブレター70の連結部72を圧入により嵌合(外嵌)させた際、条部22,24を溝部54,74とそれぞれ係合させることができる。これにより、ジョイント部材2とエンジン50(具体的には、連結部52)およびキャブレター70(同、連結部72)が相対的に係止され、エンジン側およびキャブレター側の双方で、これらの抜け止めを図ること(別の捉え方をすれば、ジョイント部材2のエンジン50(連結部52)およびキャブレター70(連結部72)に対する位置決めを図ること)ができる。つまり、ジョイント部材2の条部22,24は抜け止め用の凸部となっており、エンジン50(連結部52)およびキャブレター70(連結部72)の溝部54,74は抜け止め用の凹部となっている。なお、これとは逆に、ジョイント部材に対して抜け止め用の凹部(溝部54,74に相当)を形成し、エンジン50(連結部52)およびキャブレター70(連結部72)に対して当該凹部と係合可能な抜け止め用の凸部(条部22,24に相当)を設けた係止構造とすることも想定可能である。
【0021】
本実施形態において、ジョイント部材2には、その内周部に対し、2つのシール部に挟まれるようにこれらの内方(円筒の延出方向に対して内方)へ拡径部2cが設けられており、当該拡径部2cは、エンジン50(連結部52)およびキャブレター70(連結部72)の開口部52a,72a(具体的には、開口周縁)の双方と当接可能となるように、全周に亘って連続して凸状に突設されている。この場合、拡径部2cは、エンジン側の連結部52の内周部およびキャブレター側の連結部72の内周部よりもいずれも突出することも窪むこともなく、これらとほぼ面一となるように突設させることが好ましい。これにより、エンジン側の開口部52aとキャブレター側の開口部72aを隔たりや隙間なく連通させることができる。
また、拡径部2cの幅(肉厚)は、当該拡径部2cのエンジン側の端面22cにエンジン50(連結部52)の開口部52a(具体的には、開口周縁)を当接させた状態で、ジョイント部材2のエンジン側の端面2dがエンジン50の対向部50aと所定隙間を空けて非接触となるとともに、当該拡径部2cのキャブレター側の端面24cにキャブレター70(連結部72)の開口部72a(具体的には、開口周縁)を当接させた状態で、ジョイント部材2のキャブレター側の端面2eがキャブレター70の対向部70aと所定隙間を空けて非接触となるように設定すればよい。これにより、ジョイント部材2と連結部52,72を圧入により嵌合させた際、拡径部2cの端面2d,2eとエンジン50およびキャブレター70の対向部50a,70aとの隙間が逃げとなって、当該拡径部2cの端面22c,24cと開口部52a,72a(具体的には、これらの開口周縁)を隙間なく確実に当接(密着)させることができる。したがって、拡径部2cの幅(肉厚)を含め、ジョイント部材2の長さ(円筒の延出寸法(図1(a)においては、左右方向に対する距離))は、エンジン50の連結部52のキャブレター側への突出寸法(対向部50aからの突出寸法)とキャブレター70の連結部72のエンジン側への突出寸法(対向部70aからの突出寸法)を加えた寸法よりも若干大寸に設定されている。
なお、拡径部2cの各端面22c,24cに開口部52a,72a(具体的には、これらの開口周縁)を隙間なく当接(密着)させた状態において、エンジン側の条部22と溝部54が係合されるとともに、キャブレター側の条部24と溝部74が係合されるように、これらの条部22,24および溝部54,74を相互に配すればよい。これにより、条部22,24を溝部54,74とそれぞれ係合させることで、ジョイント部材2をエンジン50(連結部52)およびキャブレター70(連結部72)に対して位置決めすることができる。
【0022】
また、ジョイント部材2は、エンジン50(連結部52)とキャブレター70(連結部72)を締付部材(一例として、図1(b)に示すクランプバンド92,94)により締め付けた状態で相互に連結しており、外周部には、当該クランプバンド92,94を配するための2つの取付部2a,2bが全周に亘って連続して凹状に形成されている。
これら2つの取付部2a,2bのうち、一方(一例として、エンジン側の取付部2a)は、エンジン50(連結部52)の外周部と当接するシール部26に対応して(当該シール部26とは径方向に対して反対側に)位置付けられているとともに、当該シール部26の近傍に配された条部22に対応して(当該条部22とは径方向に対して反対側に)位置付けられている。また、他方(一例として、キャブレター側の取付部2b)は、キャブレター70(連結部72)の外周部と当接するシール部28に対応して(当該シール部28とは径方向に対して反対側に)位置付けられているとともに、当該シール部28の近傍に配された条部24に対応して(当該条部24とは径方向に対して反対側に)位置付けられている。
【0023】
これにより、2つのクランプバンド92,94を1つずつ取付部2a,2bに配することで、各クランプバンド92,94を1つずつ、エンジン側のシール部26と条部22、およびキャブレター側のシール部28と条部24にそれぞれ対応して(シール部26,28および条部22,24とはいずれも径方向に対して反対側に)位置付けることができる。すなわち、取付部2aは、ジョイント部材2の内周部においてエンジン側のシール部26から条部22までを含む周域の裏側に相当する外周部の周域に位置付けられており、取付部2bは、ジョイント部材2の内周部においてキャブレター側のシール部28から条部24までを含む周域の裏側に相当する外周部の周域に位置付けられている。
【0024】
なお、取付部2a,2bの深さ(ジョイント部材2の外周部の縮径寸法)、幅などは、クランプバンド92,94の厚さ、幅などに応じて、例えば、当該クランプバンド92,94が位置ずれすることなく、適正な姿勢を保つことが可能となるように設定すればよい。 ただし、取付部2a,2bの深さは、当該取付部2a,2bに配した(具体的には、当該取付部2a,2bを締め付けた状態の)クランプバンド92,94が突出しないように、当該クランプバンド92,94の厚さよりも大寸に設定することが好ましい。また、取付部2aの幅は、エンジン側のシール部26から条部22までを含む周域の幅よりも若干大寸に、取付部2bの幅は、キャブレター側のシール部28から条部24までを含む周域の幅よりも若干大寸にそれぞれ設定し、各周域全体を個別にカバーできる幅寸法のクランプバンド92,94を配設可能とする。
【0025】
クランプバンド92,94を取付部2a,2bに配し、取付部2a,2bをクランプバンド92,94で締め付けることで、取付部2a,2bの径方向反対側に位置するシール部26,28および条部22,24がクランプバンド92,94によって押圧される。
クランプバンド92,94の締め付けによる押圧力を受けたシール部26,28は、連結部52,72の外周部に強く当て付けられ、当該外周部からの反力を受ける。この結果、シール部26,28を弾性変形させて潰すことができ、当接する2つの連結部52,72のいずれか一方の外周部(エンジン側のシール部26はエンジン50の連結部52の外周部、キャブレター側のシール部28はキャブレター70の連結部72の外周部)と強く密着させることができる(図1(b)に示す状態)。これにより、2つの連結部52,72の連結部分を密封状態に保つことができ、外部からの異物(泥水や塵埃など)の侵入や、キャブレター70からエンジン50へ給気される混合気の外部への漏洩などを確実に防止することができる。特に、本実施形態においては、エンジン側のシール部26を条部22のキャブレター側(つまり、連結部52の開口部52a側)近傍に配し、キャブレター側のシール部28を条部24のエンジン側(同、連結部72の開口部72a側)近傍に配しているため、キャブレター70からエンジン50へ給気される混合気の外部への漏洩などをより一層確実に防止することができる。
【0026】
このような密封性能を考慮し、シール部26,28のジョイント部材2の内周部からの突出高さ(換言すれば、内周部の縮径寸法)、その幅や大きさなどは、クランプバンド92,94の締め付けによる押圧力(同、連結部52,72からの反力)を受けて弾性変形させた際、当該シール部26,28をほぼ完全に潰し、連結部52,72の外周部とより強く密着させることが可能となるように、シール部26,28(同、ジョイント部材2)の材質、クランプバンド92,94の締付力などに応じて設定する。図1(a)には、ジョイント部材2の内周部から最も突出した部位に対してエンジン側およびキャブレター側の両側へ、ほぼ対称となるように徐々に突出高さを小さくしたなだらかな凸曲状をなすシール部26,28の構成を一例として示している。このような構成とすることで、シール部26,28をスムーズかつエンジン側およびキャブレター側の両側へ均一に潰すことが可能となる。なお、密封性能をより高めるべく、シール部を連結部52,72の開口部52a,72aへ近接する方向(エンジン側のシール部はキャブレター側、キャブレター側のシール部はエンジン側)へ斜めに突出させた構成(いわゆるリップ状)とすることも想定可能である。
【0027】
また、クランプバンド92,94の締め付けによる押圧力を受けた条部(抜け止め用凸部)22,24は、溝部(抜け止め用凹部)54,74と強く係合される。この結果、ジョイント部材2とエンジン50(具体的には、連結部52)およびキャブレター70(同、連結部72)を相対的により強固に係止させることができ、エンジン側およびキャブレター側の双方で、これらのより確実な抜け止めを図ることができる。同時に、条部(抜け止め用凸部)22,24と溝部(抜け止め用凹部)54,74が強く係合(密着)されることで、2つの連結部52,72の連結部分に対する密封効果(この場合、特に外部からの異物(泥水や塵埃など)の侵入防止効果)も得ることができる。
なお、ジョイント部材2の内周部からの条部(抜け止め用凸部)22,24の突出高さ(換言すれば、内周部の縮径寸法)、その幅や大きさ、あるいは連結部52,72の外周部に対する溝部(抜け止め用凹部)54,74の深さ(換言すれば、外周部の縮径寸法)、その幅や大きさなどは、クランプバンド92,94の締め付けによる押圧力を受けた状態でこれらをより強く係合させることが可能となるように、条部22,24(同、ジョイント部材2)および連結部52,72の材質、クランプバンド92,94の締付力などに応じて相互に設定すればよい。図1(a)には、圧入による嵌合(外嵌)をよりスムーズに行うために、ジョイント部材2の内周部から最も突出した部位に対して当該ジョイント部材2の圧入方向側がその反対側よりもなだらかな凸曲状をなす、つまりエンジン側の条部2はエンジン側がキャブレター側よりもなだらかな凸曲状、キャブレター側の条部24はキャブレター側がエンジン側よりもなだらかな凸曲状をなす条部22,24の構成を一例として示している。
【0028】
以上、本実施形態にかかるジョイント部材2によれば、エンジン50の連結部52およびキャブレター70の連結部72の抜け止めを確実に図ることができるとともに、これらの連結部52,72の連結部分における一段と高い密封性を確保することができる。
【符号の説明】
【0029】
2 ジョイント部材
22,24 条部
26,28 シール部
50 エンジン
52 エンジン連結部
52a エンジン開口部
54 エンジン溝部
70 キャブレター
72 キャブレター連結部
72a キャブレター開口部
74 キャブレター溝部
92,94 締付部材(クランプバンド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を対向させた2つの被連結管状体を、締付部材により締め付けられた状態で相互に連結するためのジョイント部材であって、
前記2つの被連結管状体の一方もしくは双方に外嵌可能な弾性体製の円筒状をなし、
内周部には、複数の条部および複数のシール部が全周に亘って連続して凸状に、かつこれらの条部およびシール部が前記2つの被連結管状体の開口部を挟んで双方側にそれぞれ少なくとも1つずつ突設され、
各条部は、前記2つの被連結管状体の双方の外周部をそれぞれ全周に亘って連続して凹状に窪ませてなる複数の溝部のいずれかと係合可能に配されており、
各シール部は、前記2つの被連結管状体のいずれか一方の外周部と当接可能に、前記開口部を挟んで自身と同一側の条部のいずれかの近傍に配され、外周部から前記締付部材により締め付けられた状態で弾性変形して潰れ、当接する前記2つの被連結管状体のいずれか一方の外周部と密着することにより、当該2つの被連結管状体の連結部分を密封状態に保つことを特徴とするジョイント部材。
【請求項2】
内周部には、前記2つの被連結管状体の外周部にそれぞれ1つずつ形成された2つの溝部のいずれか一方と係合可能な2つの条部が全周に亘って連続して凸状に1つずつ突設されるとともに、前記2つの被連結管状体のいずれか一方の外周部とそれぞれ当接可能な2つのシール部が前記2つの条部のいずれか一方の近傍に全周に亘って連続して凸状に1つずつ突設されていることを特徴とする請求項1に記載のジョイント部材。
【請求項3】
前記2つのシール部は、前記2つの条部に挟まれるようにこれらの内方へそれぞれ配されていることを特徴とする請求項2に記載のジョイント部材。
【請求項4】
外周部には、前記締付部材を配するための2つの取付部が全周に亘って連続して凹状に形成されており、
前記2つの取付部の一方は、前記2つの被連結管状体のいずれか一方の外周部と当接するシール部に対応して位置付けられ、
前記2つの取付部の他方は、前記2つの被連結管状体の他方の外周部と当接するシール部に対応して位置付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のジョイント部材。
【請求項5】
前記2つの取付部の一方は、前記いずれか一方の外周部と当接するシール部の近傍に配された条部に対応して位置付けられ、
前記2つの取付部の他方は、前記他方の外周部と当接するシール部の近傍に配された条部に対応して位置付けられていることを特徴とする請求項4に記載のジョイント部材。
【請求項6】
内周部には、前記2つのシール部に挟まれるようにこれらの内方へ拡径部が設けられており、
当該拡径部は、前記2つの被連結管状体の開口部の双方と当接可能となるように、全周に亘って連続して凸状に突設されていることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載のジョイント部材。
【請求項7】
開口部を対向させたエンジンとキャブレターを、相互に連結することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のジョイント部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−44262(P2013−44262A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181653(P2011−181653)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000143307)株式会社荒井製作所 (100)