説明

ジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子及びその製造方法

【課題】高温下でもメソ構造体が安定に保持され、高い比表面積を有し、耐熱性に優れるとともに、反応溶液のpH及び湿度制御が不要で、反応温度の制御が容易であり、しかもメソ構造体の結晶子の構造とその結晶子サイズを厳密に制御することが可能なジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)、Zr1-xMex2‥(1)(式中、Meは多価金属元素を示し、xは0≦x≦0.6で示す。)で表される金属複合酸化物とシリカ成分を有するジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ジルコニウム(以下、ジルコニアということもある。)は、セラミックスの中では最も破壊靱性や断熱性が大きく、耐食性、耐磨耗性に優れている。このため、酸化ジルコニウムは、耐火物原料、遮熱コーティング、顔料や歯科材料等生体材料等として利用されている。また、圧電性、誘電性、及びイオン伝導性に優れることから圧電材料、セラミックコンデンサー、及び酸素センサーとしても利用されている。
【0003】
一方において、ジルコニアは、温度領域により3種類の結晶構造を持つことが知られている。室温では単斜晶系に属し、高温(1170〜2370℃)では正方晶、さらに高温(2370℃〜)では立方晶に相転移する。この相転移に起因する体積変化が大きいため、焼結時の冷却工程において材料に亀裂が生じ、材料としての応用に限界があるという問題がある。
【0004】
しかしながら、ジルコニアに、イットリア(Y23)、マグネシア(MgO)、カルシア(CaO)、セリア(CeO2)等を添加し、固溶体を形成させることで、室温領域において、高温安定相である立方晶並びに正方晶が保持され、セラミックス材料としてさらに広い用途に利用されるようになった。このような固溶体である複合酸化物は、酸素の空格子を多く含み、酸素イオン伝導特性を活かし、燃料電池や酸素濃度計の固体電解質分野において活発な研究開発が行われている。
【0005】
一方、ジルコニアはその特徴的な酸塩基両機能性を利用した種々の触媒として活用されている。またジルコニア系複合酸化物は、例えばセリア−ジルコニア複合酸化物は自動車排ガス浄化助触媒として実用化されている。これは、酸素吸蔵放出能(OSC)と比較的大きな比表面積を有する正方晶等高温結晶型の耐熱性固溶体の創製がキーポイントであった。
【0006】
例えば、特許文献1には、高温下でも高比表面積を維持する高耐熱性を示し、更に、均一な固溶体結晶相を有するジルコニア−セリア複合酸化物を、簡易なプロセスで工業的に製造する方法が提案されている。また、特許文献2には、酸化ジルコニウムのZrを、Ceをはじめ種々の希土類金属元素で置換した、比表面積の耐熱性とセリアの酸化還元能を向上させた、ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法が提案されている。
【0007】
非特許文献1には、ジルコニアの合成方法、高比表面積を賦与する方法、メソ構造体等の結晶構造、セラミックス材料、及び触媒等への応用について提案されている。また、非特許文献2には、ジルコニアの結晶構造、高温型結晶相を安定化するための金属元素による同形置換等の観点からの、セラミックス材料としての特質等について提案されている。さらに、非特許文献3には、セリア−ジルコニア固溶体の結晶構造、局所構造とOSCとの関係、及び粒子構造が比表面積に与える効果等について提案されている。
【0008】
高い比表面積を有するジルコニア系複合酸化物粒子の合成は、メソポーラスシリカの発見以来、陽イオン型及び陰イオン型界面活性剤、あるいは非イオン性界面活性剤の秩序形成能を利用して数多く試みられている(非特許文献1)。
【0009】
しかし、合成されたジルコニア粒子等は、粒子内部の細孔に起因する多孔性を有するものの、多くは非晶質であり、熱的安定性も低いのが現状である。
【0010】
例えば、界面活性剤として非イオン性両親媒性ポリアルキレンオキシド等のブロック共重合体を用い、厚い非晶質酸化物細孔壁中に微小な酸化物結晶が均一に分散したメソ金属酸化物多孔体の合成を可能とする普遍的な方法が報告され(非特許文献4)、その後応用展開が図られているが耐熱性の観点で満足なジルコニア系メソ複合酸化物粒子は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−247585号公報
【特許文献2】特開2008−24581号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Jaenicke, S.; Chuah, G.K.; Raju, V.; Nie, Y.T. Catal. Surv. Asia 12, 153(2008)
【非特許文献2】Graeve, O.A. Zirconia, in Ceramic and Glass Materials: Structure, Properties and Processing; J.F. Shackelford, J.F.; Doremus, R.H. Ed.; Springer Science; New York, pp.169-197(2008)
【非特許文献3】Di Monte, R.; Kaspar, J.J. Mater. Chem., 15, 633(2005)
【非特許文献4】Yang, P.; Zhao, D.; Margolese, D. I.; Chmelka, B. F.; Stucky, G. D., Nature, 396,152.(1998) 及び同著者 Chem. Mater, 11, 2813.(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来提案されているジルコニア系複合酸化物粒子の製造方法では、耐熱性の向上、高温下での比表面積が小さく、安定性に欠けるという問題がある。
【0014】
具体的には、ジルコニア系複合酸化物粒子の触媒能、化学的、電気的、機械的な特性は、比表面積、結晶子サイズ、結晶性、結晶相(結晶構造)、さらには同形置換する金属元素の種類とその量等に大きく依存するため、所望の各特性を発現させるには、それらの値を精緻に制御することが必要である。従来の製造方法では、得られる粒子の多くは非晶質であるため、通常は、結晶化させるために高温処理を施す必要がある。
【0015】
しかしながら、この高温処理によってジルコニア系複合酸化物は、粒子成長や相転移を生じ、所望の結晶子サイズや結晶構造を有するジルコニア系複合酸化物粒子を得ることは困難である。特に、多孔性を必要とする用途開発の場合、非晶質、結晶質を問わず、1次あるいは2次粒子の粒子間隙に起因する細孔を利用することになる。比表面積は小さく、600℃での比表面積は100m2/g以下であり、さらに650℃以上の高温では焼結による粒子成長に伴い比表面積が低減し、また高温型の正方晶及び立方晶が保持できない。
【0016】
さらに、純粋な高温型の正方晶あるいは立方晶ジルコニア系複合酸化物粒子で耐熱性を有するメソ構造体は極めて稀であり、ジルコニウムの一部を他金属、特にYで置換することで耐熱性は向上するが、700℃まで正方晶あるいは立方晶を保持したままでメソ構造を保持した多孔性ジルコニア系複合酸化物粒子に関する報告例はほとんどない。また、メソ構造が高温まで維持できるシリカ多孔体をホストとした場合、細孔表面を均一に高分散状態の金属酸化物で修飾することは難しく、金属酸化物自体はメソ構造を有していないことになる。
【0017】
一方、SiO2分の添加は、耐熱性に優れたメソ金属酸化物多孔体の直接的な製造に有効な方法と考えられる。しかしながら、これまで殆ど報告例が無く、反応工程に酸の使用、湿度制御が不可欠であり、反応条件が複雑で、反応時間が長くなるといった多くの問題がある。
【0018】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、高温下でもメソ構造体が安定に保持され、高い比表面積を有し、耐熱性に優れるとともに、反応溶液のpH及び湿度制御が不要で、反応温度の制御が容易であり、しかもメソ構造体の結晶子の構造とその結晶子サイズを厳密に制御することが可能なジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、無毒性で、生分解性且つ親疎水性バランスの異なる非イオン性界面活性剤が、溶液相において、ジルコニウム・シリコン溶存種又はジルコニウム・シリコン及び他金属元素複合溶存種と、メソ構造体を形成することに着目し検討を行った結果、高温下でもメソ構造体が安定に保持され、高比表面積を有し耐熱性に優れるジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子及びその製造方法を見出し、本発明を完成させた。
【0020】
上記課題を解決するための本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子は、回折角10度(2θ CuKα)以上にジルコニア系複合酸化物に帰属できるX線回折ピークを有し、下記式(1)
Zr1-xMex2 ‥(1)
(式中、Meは多価金属元素を示し、xは0≦x≦0.6で示す。)で表される金属複合酸化物と、シリカ成分を有することを特徴とする。
【0021】
本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物は、700℃の加熱処理による比表面積が200〜500m2/gであり、且つ、900℃の加熱処理による比表面積が90〜300m2/gであることが好ましい。
【0022】
本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物は、SiO2を3〜50wt%含有することが好ましい。
【0023】
本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物は、ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子サイズが1〜8nmのナノ結晶子を含有するメソ構造体を有することが好ましい。
【0024】
本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物は、回折角0.5乃至3度(2θ CuKα)に細孔の規則配列構造を示す1本以上のX線回折ピークを有することが好ましい。
【0025】
本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物は、前記多価金属元素が、Ce、Y、Ca、Mg、Ti、Alから選択される1種又は2種以上の金属元素含有することが好ましい。
【0026】
本発明に係る触媒は、上記のジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子を含有してなることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る機能性セラミックス合成用原料粉体は、上記のジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子を含有してなることを特徴とする。
【0028】
上記課題を解決するための本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子の製造方法は、有機溶媒に非イオン性界面活性剤を溶解し、ジルコニウム塩単独、又はジルコニウム塩と金属塩を添加した後、シリコンアルコキシドを混合して懸濁溶液を作製し、揮発成分と有機成分を除去することを特徴とする。
【0029】
本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子の製造方法は、前記金属塩の金属元素がCe、Y、Ca、Mg、Ti、Alから選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子によれば、高温下でもメソ構造体が安定に保持され、高い比表面積を有し、耐熱性に優れる。
【0031】
本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子の製造方法によれば、反応溶液のpH及び湿度制御が不要で、反応温度の制御が容易であり、しかもメソ構造体の結晶子の構造とその結晶子サイズを厳密に制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子で、Zr1-xMex2中xが0のZrO2とSiO2からなる多孔性ジルコニア粒子において、(a)メソ細孔の規則性を表す低角のXRD図と、(b)ZrO2の結晶化を表す広角のXRD図である。
【図2】(a)(b)本発明に係る多孔性ジルコニア粒子のメソ構造の特徴を表すwormhole型細孔配列を示す実施例1-2のTEM像であり、(c)(d)極めて規則性の高いメソ孔配列を示す比較例のTEM像である。
【図3】(a)実施例2の加熱処理に伴う、多孔性ジルコニア粒子の結晶化過程を示す低角の粉末XRD図であり、(b)広角の粉末XRD図である。
【図4】実施例2の多孔性ジルコニア粒子のメソ構造を示すTEM像である。
【図5】(a)実施例2の多孔性ジルコニア粒子の窒素吸着等温線であり、(b)細孔直径分布曲線である。
【図6】(a)実施例3のZr1-xCex2とSiO2からなるジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子(ジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子)及び参照例の低角の粉末XRD図であり、(b)広角の粉末XRD図である。
【図7】実施例3のジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子、及び比較例3−1、参照例3−1、参照例3−2及び参照例3−3の生成物の結晶子サイズに及ぼす組成比の影響を示す図である。
【図8】実施例3-9のジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子のTEM像である。
【図9】比較例3-1のTEM像である。
【図10】比較例3-1のEDXスペクトルである。
【図11】実施例3のジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子、及び参照例3−1と参照例3−2のラマンスペクトルである。
【図12】(a)実施例4のジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子の、低角の粉末XRD図であり、(b)広角の粉末XRD図である。
【図13】(a)実施例5のMg、Ca、YでZrの一部を置換した、ジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子の、低角の粉末XRD図であり、(b)広角の粉末XRD図である。
【図14】(a)実施例6の多孔性ジルコニア粒子のメソ構造等に及ぼすSiO添加量の影響を示す低角の粉末XRD図であり、(b)広角の粉末XRD図である。
【図15】(a)実施例7の多孔性ジルコニア粒子のメソ構造等に及ぼす界面活性剤添加量の影響を示す低角の粉末XRD図であり、(b)広角の粉末XRD図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子について詳細に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0034】
従来のジルコニア系複合酸化物粒子は、比表面積は100m2/g以下であり、大部分は50m2/g以下である。また、これまで、ジルコニア又はZrを一部他金属元素で置換した複合酸化物とシリカ分とをナノレベルで複合化した、一様なメソ構造を有し、比表面積が700℃で200m2/g、さらに900℃で90m2/g以上の高耐熱性ジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子に関する研究は報告されていない。
【0035】
本願明細書においては、「ジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子」は、ナノサイズの複合酸化物Zr1-xMex2(0≦x≦0.6)と非晶質シリカで構成される一様なメソ構造体である。
【0036】
本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子は、回折角10度(2θ CuKα)以上に回折ピークを有し、700℃の加熱処理による比表面積が200〜500m2/gであり、且つ、900℃の加熱処理による比表面積が90〜300m2/gである。
【0037】
700℃の加熱処理による比表面積が200〜500m2/gの範囲にあると、例えば触媒とした場合反応に寄与する活性点が増大するという効果がある。また、900℃の加熱処理による比表面積が90〜300m2/gの範囲にあると、従来使用できなかった高温下での触媒反応に活用できるという効果がある。
【0038】
さらに、本願発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子は、回折角0.5乃至3度(2θ CuKα)に細孔の規則配列構造を示す1本以上の回折ピークを有する。このことからナノサイズの複合酸化物Zr1-xMex2(0≦x≦0.6)と非晶質シリカから成る粒子中に形成されるメソ孔は規則性の低い配列構造しているといえる。
【0039】
ジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子は、Zr純粋系の場合(Zr1-xMex2中、x=0)、前駆体である有機無機メソ構造体中では、ZrとSiが原子レベルでナノ複合化してZr−O−Si結合が形成される。低温では非晶質の複合酸化物であり、600℃で加熱した場合、正方晶のジルコニアが結晶化し始め、より高温で処理するに伴い、メソ構造を保持したまま、非晶質相からSiO2相と分離してZrO2の結晶化が促進される。1000℃において、ZrO2結晶子の平均の大きさは、約5nmであり、結晶子の成長は抑制され、正方晶系のまま保持される。
【0040】
ジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子は、ZrとCeの2成分系の場合、Zr−O−Ce−O−Si結合(酸化物ネットワーク)が形成され、加熱処理に伴い、複酸化物(固溶体)であるZr1-xCex2結晶子と非晶質シリカ相から成るメソ構造体が形成される。
【0041】
この時、Ceの割合が高いと、CeO2が結晶化し易く、相分離を生じ、一様な組成と構造を持つメソ構造体を合成することはできないことになる。この大きな要因は、Si−O−Ce結合が形成し難いことにある。さらに、ZrとCeのイオン半径が異なるため、Ceの割合が高いと、100℃以下の低温の反応系では前駆体である有機無機メソ構造体中で均一な酸化物ネットワーク構造が形成されず、均一組成を持つ固溶体組成範囲は限定されることになる。
【0042】
Zr1-xCex2複合酸化物から成るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子は、0≦x≦0.6の範囲にあると、当該物質の特長である酸素吸蔵放出能(OSC)を組成によって制御できることになり、均一組成のZr1-xCex2複合酸化物を製造できることは、触媒、セラミックス材料等の用途開発に大きな効果がある。xが大きいほど、Zr1-xCex2結晶子の結晶化速度が速く、比表面積も小さくなる傾向が認められるが、比表面積は700℃で200〜500m2/g、900℃で90〜300m2/gと極めて大きい値を示す。Zr1-xCex2結晶子は正方晶系であるが、Ceの割合が高いほど準安定相の正方晶系に分類される。
【0043】
一方、他の2成分系および多成分系のジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子においても、均質な組成を持つ複合酸化物結晶子と非晶質シリカ相から成るメソ構造体が得られる組成範囲は限定される。一般には、混合する金属原子のイオン半径の差が小さく、物理化学的性質が類似しているほど、理想的混合状態が実現でき、連続固溶体を形成する組成範囲が広くなる。
【0044】
また、同一金属成分系において、均一組成のメソ構造体が形成される場合、SiO2および界面活性剤の添加量によって、構成成分である複合酸化物結晶子の固溶体形成範囲及び比表面積等細孔特性が変化する傾向がある。
【0045】
SiO2添加量が過剰(例えば、50wt%を超える場合)であると、非晶質相から複合酸化物結晶子が結晶化する速度が遅くなり、結晶化量も相対的に少なくなり、非晶質シリカ内に埋没してしまう可能性がある。一方、SiO2添加量が少ない(例えば、3wt%未満の場合)と、複合酸化物結晶子の結晶化速度が速くなり、より低温でメソ構造体が形成される。過少量ではメソ構造体の規則性が失われ比表面積の低下を引き起こすことになる。
【0046】
ジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子は、主に正方晶系の酸化物結晶子からなるが、正方晶系、立方晶系単独、又は両結晶相の混合相であってもよい。しかし、SiO2添加量が過少の場合には、相分離が生じ易くなると同時に、低温型の単斜晶系等の結晶化等、相転移を誘起することになる。
【0047】
また、界面活性剤の添加量についても、上記のSiO2添加量の過不足と全く同様な傾向が認められる。
【0048】
特に、SiO2及び界面活性剤の添加量の低減は、メソ構造を保持したまま、細孔径を減少することから、メソ細孔の大きさを制御できる効果的な方法であると言える。
【0049】
ジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子は、10nm以下の1次粒子が、低角にXRD回折線を1本以上有する程度に規則集合したメソ構造を有し、複合酸化物粒子の平均結晶子サイズ1〜8nm、好ましくは1.5〜8nmの細孔が配列している。平均結晶子サイズがこの範囲にあると、高温下でも複合酸化物の高温型結晶構造が保持され、且つ高比表面積を保持することが可能である。なお、平均結晶子サイズはXRD回折ピーク幅から算出するか、あるいはTEM像より直接観察できる。
【0050】
酸化物結晶であるナノサイズの1次結晶性粒子は、主に正方晶のジルコニアもしくは他金属元素と固溶体を形成したジルコニア系複合酸化物からなる。
【0051】
本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子の製造方法は、原料として、アルコール、該アルコールに溶解する金属塩、非イオン性界面活性剤を使用し、製造過程で無機塩類に含まれる水和水以外は水分をほとんど添加せず、中間体として有機無機メソ構造体を経由して製造する。
【0052】
具体的には、有機溶媒としてアルコールを使用し、アルコールに非イオン性界面活性剤を溶解し、攪拌下でジルコニウム塩単独、又はジルコニウム塩と有機溶媒に溶解する他金属塩を一定時間混合後、シリコンアルコキシドを添加する。さらに撹拌・混合して得られる懸濁溶液を、一定温度に静置して溶媒を揮発することにより生成するゲル状物質から、有機成分等を除去する。
【0053】
上記の製造方法は、湿度及びpHの制御が不要であり、金属元素とシリコンアルコキシド由来のシリコン元素、及び非イオン性界面活性剤との協調的秩序形成能と溶媒揮発法との組合せにより、高温までメソ構造を保持する熱的安定性に優れた高比表面積多孔性を有するものである。さらに、高温安定性が増し、触媒能発現の要因である固体酸性発現サイトが規則性ナノ空間に賦与されることになる。
【0054】
ジルコニウム塩は、アルコールに溶解するジルコニウム塩であれば特に限定されるものではない。具体的には、オキシ塩化ジルコニウム(塩化ジルコニル)、塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム(硝酸ジルコニル)、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0055】
金属元素としては、ジルコニウム、ハフニウム、希土類元素(特に、セリウム、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、ガドリウム、イッテルビウム、サマリウム、スカンジウム)、アルカリ土類元素(特に、マグネシウム、カルシウム、バリウム)、アルミニウム、ビスマス、ニッケル、マンガン、ホウ素、チタニウム等の1種又は2種以上を挙げることができる。
【0056】
金属塩は、アルコールに溶解すれば特に限定されるものではない。中でも、加熱処理により固溶体(複合酸化物粒子)を形成する金属塩であることが好ましい。
【0057】
金属塩は、上記の金属元素を用いた塩である。塩は、塩化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩等、特に限定されるものではないが、セリウム塩、イットリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、チタニウム塩、アルミニウム塩等が好ましい。
【0058】
非イオン性界面活性剤は、ポリエチレンオキシド(PEO)含む高分子界面活性剤であれば特に限定されるものではない。具体的には、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシド(PEO−PPO−PEO)、ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド(PPO−PEO−PPO)からなるトリブロック共重合体の他、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を挙げることができる。
【0059】
このブロック共重合体の重合比や各種ポリマーの平均分子量は、特に限定されるものではない。トリブロック共重合体(PEO−PPO−PEO)は、重量平均分子量が2000〜13000であることが好ましい。具体的には、Pluronic P123(商品名、PEO含有量:30wt%)、F127(商品名、PEO含有量:70wt%)、P105(商品名、PEO含有量:50wt%)、P104(商品名、PEO含有量:40wt%)、P103(商品名、PEO含有量:30wt%)、F88(商品名、PEO含有量:80wt%)、F108(商品名、PEO含有量:80wt%)等を使用することができる。
【0060】
このポリオキシエチレンアルキルエーテルは、式[Cm2m+1(PEO)n(OH)]で表される。式中、mは12〜18の整数であり、nは2〜23の整数であるであることが好ましい。特に、mは18、nは10〜23であることが好ましい。
【0061】
非イオン性界面活性剤は、シリコン分を除いた、ジルコニウムを含む全金属元素に対してモル比0.01〜0.1であることが好ましい。非イオン性界面活性剤の添加量がモル比0.01より低いと、メソ構造の規則性が低く満足な比表面積を有するジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子を製造することは困難である。一方、モル比0.1より高いと、溶解に必要なアルコール量が増え、生産効率の上で支障をきたすとともに、ゲル化時間の増加とメソ構造の規則性の生成速度の低下を招くことになる。
【0062】
アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等を挙げることができるが特に限定されるものではない。中でも、エタノールが好ましい。
【0063】
本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子は、SiO2(シリカ)を3〜50wt%含有する。シリカの含有量が3wt%より少ないとメソ構造体の規則性が失われ比表面積の低下を引き起こすことになり、50wt%より多いと、非晶質相から複合酸化物結晶子が結晶化する速度が遅くなり、結晶化量も相対的に少なくなり、非晶質シリカ内に埋没してしまう可能性がある。
【0064】
シリカ原料のケイ酸エステルとしては、Si−アルコキシドを好適に用いることができ、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトライソプロピルオルトシリケート、テトラ−n−ブチルオルトシリケート等を挙げることができる。特に、テトラエチルオルトシリケート(以下、TEOSと略すことがある。)が好ましい。
【0065】
ジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子の製造方法において、出発原料の混合モル比は、全金属元素:非イオン性界面活性剤:アルコール:シリコンアルコキシド=1:0.01〜0.1:10〜50:0.5〜2.5であることが好ましい。混合割合がこの範囲にあると、均質組成を有する中間体である有機無機メソ構造体を形成する上で好ましい。なお、生成物質のそれぞれの酸化物成分の割合は、原料反応物質中の割合と等価であり、このことは化学定量分析の結果からも明らかであった。
【0066】
反応条件については、アルコールによる非イオン性界面活性剤の溶解温度は15〜50℃の範囲が好ましい。この範囲にあると均一組成を有する溶液相を生成する上で好ましい。
【0067】
また、ゲル化を促進する反応温度は、40〜80℃の範囲が好ましい。反応温度は、ゲル化速度を左右し、80℃よりも高いと、メソ構造の規則性が悪化する傾向があり、これは、温度の上昇により非イオン性系面活性剤中の親水基部分の脱水和が起こりやすくなる結果、メソ構造体の規則性が失われる。一方、40℃よりも低いと、ゲル化に要する反応時間が長すぎ、満足なメソ構造を持ったジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子を製造することが困難となる。
【0068】
さらに、中間体であるゲル状物質が粘調なまま加熱処理を施しても、メソ構造の規則性が損なわれるため、固化体となるまでゲル化を充分行う必要がある。過度なゲル化時間が生成物に与える影響は小さいが、生産効率の問題から経済的に不利になる。
【0069】
最終的に、中間体としてのゲル状物質から有機成分を除去してジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子を製造する方法は、空気中又は空気を流通させながら、室温又は所定温度からより高温度まで一定温度で昇温し、500℃以上、好ましくは600℃以上で一定時間加熱処理するか、あるいは、ゲル状物質物から有機成分をエタノール等の溶媒を使用して抽出した後に、400℃以上、好ましくは、500℃以上で加熱処理する。この加熱処理とは最終的に有機成分を除去して細孔構造を形成させる工程をいう。
【0070】
本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子は、上記したように、アルコール溶液中において、ポリエチレンオキシド(PEO)を含む非イオン性界面活性剤と金属溶存種、及びシリカ溶存種から生成するゾル状物質から、揮発成分を徐々に反応系から取り除くことで、ゲル状の有機無機メソ構造体が形成される。揮発成分とはアルコールや水分をいい、有機成分とは界面活性剤をいう。
【0071】
すなわち、疎水性ブロック(ポリプロピレンオキシド;PPO)を核として球状ミセルを形成するトリブロック共重合体(PEO−PPO−PEO)の秩序形成能を利用して、その周りを取り囲んだ親水性ブロック(PEO)と、Si及び金属元素溶存種との相互作用によってメソ構造体が誘導できる。この反応は、好ましくは15〜50℃で行われ、積極的に水分は添加しないものの、原料の金属塩に含まれる水和水によってシリコンアルコキシドの加水分解が進行し、生成する金属溶存種及びSi溶存種と、PEOブロックとの相互作用によって有機無機メソ構造体が形成される。
【0072】
次いで、溶媒であるアルコール及び上記の有機無機メソ構造体の形成に伴う揮発性副生成物を一定温度に保持して揮発除去しながら熟成させることにより、透明なゲル状の有機無機メソ構造体が生成する。さらに、有機成分を加熱処理等によって除去することで、メソ構造を有するジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子が合成される。
【0073】
本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子は、ナノサイズの複合酸化物結晶子と非晶質シリカの規則配列した集合体に取り囲まれたナノ空間を持つメソ構造体である。このメソ構造体は、加熱処理温度の上昇に伴い、複合酸化物粒子が結晶化し、連続的に粒成長するが、非晶質シリカ相によって個々の結晶子の接触が抑制され、構造変化の原因となる結晶子の急激な成長が抑制され、高耐熱性を発揮することになる。
【0074】
また、非晶質シリカによって10nm以下のナノサイズに保持されることで複合酸化物結晶子の構造変化が起こらず、高温型の正方晶系あるいは立方晶系の複合酸化物結晶子から成るメソ構造体が形成される。ただし、本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子は、メソ構造体の構成成分である複合酸化物ナノ結晶子が、ナノ空間の表面に存在するように材料設計することで、メソ構造の規則性の程度は、X線回折(XRD)ピークとして低角に少なくとも1本は認められる。
【0075】
本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子は、高比表面積、高耐熱性、細孔径の均一性、並びに正方晶結晶子と非晶質シリカを主構成成分とする全く新規なメソ構造体である。このため、形状選択能を発揮して効率的に種々の有用あるいは有害な分子、イオンを吸着・吸蔵することが可能であり、工業および環境保全の両面で有用な吸着・分離・貯蔵剤、脱臭剤、調湿剤、触媒担体、触媒、及び固体電解質用途や構造材用途等の機能性セラミックス合成用原料粉体として応用できる。
【0076】
特に、従来の低比表面積・低耐熱性ジルコニア及びジルコニア系複合酸化物粒子と異なる新規メソ構造を有することから、単なる従来品の代替ばかりでなく、特異な微細構造を活用して新たな化学プロセス用触媒・触媒担体や吸着分離剤、また光学材料、生体材料、電子材料等の幅広い技術分野で使用されるセラミックス材料等の製造に応用される。
【0077】
ジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子を含有してなる触媒は、最終生成物である複合酸化物の前駆体である、中間体(有機無機メソ構造体)をゲル化するための透明溶液に直接、担体物質、ハニカム成型体等を浸漬し、加熱処理して製造することができる。
【0078】
ジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子の製造方法は、アルコールに溶解するジルコニウム単独、又はジルコニウムと他金属元素の無機塩との金属元素と、細孔構造の制御剤としてポリエチレンオキシド(PEO)を含む非イオン性界面活性剤を使用する。これらアルコールとの混合溶液に、シリコンアルコキシドを加えた、反応溶液から単に溶媒を蒸発させるだけの極めて単純な反応系において、反応物質の混合割合、また種々のPEOを含む界面活性剤から、常圧下、極めて低温で多孔性ジルコニア結晶性粒子の前駆体となる有機無機メソ構造体が短時間で作製できる。
【0079】
また、溶媒を取除くだけで、所望とするジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子を簡便に得ることができるので、工業的に極めて有利な製造方法ということができる。さらに、ナノサイズの結晶片の集合組織に基づく細孔を有する本発明に係るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子は、今後の酸化物系メソ構造体の新たなモデルとしての価値を有すると考えられる。すなわち、本発明に係る製造方法は、他の金属塩として2種類以上を使用することも可能であり、ナノサイズの多成分系結晶性金属酸化物粒子よってメソ構造が形成された多孔性金属酸化物結晶性粒子及びその製造が期待できる。
【実施例】
【0080】
以下の実験例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実験例の記載に限定されるものではない。
【0081】
[測定法]
以下、各試験方法を説明する。
(1)X線回折:リガク社製SmartLab、CuKα線源、加速電圧40kV、30mAで測定した。結晶子の大きさは、正方晶系では(101)面、立方晶系は(111)面の回折ピークにScherrerの式を適用して算出した。
【0082】
(2)高分解能電子顕微鏡像と元素分析:FEI社製電界放射型透過型電子顕微鏡Tecnai G2 F20を使用し、加速電圧200kVで、透過電子(TEM)像観察を行った。元素分析は同装置に取り付けたエネルギー分散型X線(EDX)検出器により、観察時に試料より発生する特性X線を検出し、得られるエネルギー分布から試料の構成元素に関する情報を得た。
【0083】
(3)比表面積・細孔径分布:日本ベル社製BELSORP Miniを使用し、液体窒素温度で測定した窒素吸着等温線からBET比表面積を求め、細孔径分布はBJH法により解析し、メソ細孔容積はt−プロット法により算出した。
【0084】
(4)ラマンスペクトル測定:日本分光社製NRS5100を使用し、励起波長532cm-1で測定した。
【0085】
(実施例1)
トリブロック共重合体(Pluronic F127:商品名、分子量12600)をエタノールに30℃で溶解後、Zrを添加し1時間攪拌後、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を加え、さらに1時間撹拌して得られた透明ゾル溶液を、予め50℃にセットした乾燥機中で4日間静置して、前駆体である透明なゲル状の有機無機メソ構造体を得た。このゲル状物質を、電気炉中10℃/minで昇温し、700℃に到達後1時間焼成を行うことで有機成分を除去し、ZrO2とSiO2から成るジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子(以下、本実施例及び実施例2、6、7では多孔性ジルコニア粒子と記載する)を得た。
【0086】
なお、本実施例では、表1の実施例1−1、実施例1−2、及び比較例1に示す、SiO2/ZrO2比の異なる3種類を作製し、ナノ構造に与える影響を検討した。得られた多孔性ジルコニア粒子の細孔特性を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表1は、界面活性剤(F127:商品名)を使用して作製した多孔性ジルコニア粒子の合成原料組成と生成物の物理化学的特性を示している。表中、反応溶液組成は、全金属元素に対するモル比である。SBETは比表面積、Vmesoはt−plot解析から求めたメソ細孔容積、DmesoはBJH法で得られたメソ孔直径である。
【0089】
図1(a)に本発明に係る多孔性ジルコニア粒子のメソ細孔の規則性を示す低角のXRD図を示し、(b)にZrO2の結晶化を示すXRD図を示す。図2(a)(b)に本発明に係る多孔性ジルコニア粒子のメソ構造の特徴を示すwormhole型細孔配列を表す実施例1-2のTEM像を示し、(c)(d)に極めて規則性の高いメソ孔配列を表す比較例のTEM像を示す。
【0090】
図1及び図2より、SiO2/ZrO2比が大きいと低角にはXRDピークが2本認められ(図1:比較例1)、TEM像により細孔径8nmのメソ孔が2次元六方晶に規則配列していることが確認できる(図2(c)(d))。一方、ZrO2の割合が増加すると、メソ細孔が存在するものの規則性は低く(図2(a):worm−hole like pore)、XRD図の低角にはブロード化した1本のピークが認められる(図1:実施例1−2)。
【0091】
しかし、比較例1ではZrO2結晶子を確認することはできず(図1(b))、目的とするメソ構造を持ったジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子(多孔性ジルコニア粒子)ということはできない。一方、実施例1−2では、正方晶系のZrO2(図1(b))が、3〜5nmのZrO2結晶子として存在し(図2(b))、非晶質シリカとの集合体であるメソ構造が確認できる。
【0092】
図1から、SiO2割合が大きい比較例1の多孔性ジルコニア粒子は、比表面積も大きく、低角に2本の鋭いピークを有することがわかる。このことは、細孔配列の高い規則性に起因し、図2(c)(d)のTEM像に反映していることが確認できる。
【0093】
しかし、ZrO2結晶子を確認することは、900℃においてもできなかった。一方、表1よりZrO2割合が高いほど比表面積は減少するが、図1(b)よりZrO2の結晶化が促進されることが明らかである。図2(a)に示す低倍のTEM像より、実施例1−2は、細孔配列の規則性の程度は低く、低角のXRD回折ピークがブロード化し1本となることに対応している。
【0094】
図2(b)に示す高倍のTEM像によって、本発明に係るZrO2結晶子(3〜5nm)と、確認は難しいが非晶質シリカとの集合組織によって形成されるメソ構造がはっきりと確認できる。表1に、本実施例の窒素吸着等温線の解析によって得られた細孔特性パラメータを示す。
【0095】
(実施例2)
トリブロック共重合体(Pluronic P123:商品名、分子量5800)をエタノールに30℃で溶解後、ZrOCl2・8H2Oを添加し1時間攪拌後、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を加え、さらに1時間撹拌して得られた透明ゾル溶液を、予め50℃にセットした乾燥機中で4日間静置して、前駆体である透明なゲル状の有機無機メソ構造体を得た。反応原料組成は、ZrOCl2・8H2O/P123/SiO2/ethanol(モル比)=1/0.06/1.33/13.9である。
【0096】
このゲル状物質を、電気炉中100℃/hで空気を流通させながら昇温し、300℃〜700℃の所定温度に到達後1時間30分焼成を行うことで有機成分を除去し、多孔性ジルコニア粒子を得た。より高温の加熱処理生成物は、700℃で加熱したサンプルを使用して、予め600℃に調整した電気炉中5℃/minで空気を流通させながら昇温し、所定温度で1時間30分間加熱保持して作製した。
【0097】
図3に前駆体である有機無機メソ構造体の加熱処理に伴う、多孔性ジルコニア粒子の結晶化過程を示す、(a)低角の粉末XRD図、(b)広角のXRD図を示す。前駆体には低角のピークが認められることから、熟成中にメソ構造が形成されていることがわかった。図3(b)の広角パターンは、Zr−O−Siネットワークを持つ非晶質の複合酸化物から、メソ構造を保持したまま、600℃でジルコニアの結晶化が認められた。高温で処理するに伴い、ZrO2相がSiO2相と分離しながら結晶化することが明瞭になり、1000℃においてもZrO2結晶子と非晶質シリカ相から成るメソ構造が失われないことを示している。
【0098】
図4に実施例2の多孔性ジルコニア粒子のメソ構造を示すTEM像を示す。図4(a)(b)(c)より、加熱処理温度によらずwormhole型細孔配列をもつことが観察され、(d)より、高温になるほどZrO2結晶子の数が多く観察された。
【0099】
図4より、低倍像は、700℃(実施例2−2)、900℃(実施例2−4)、1000℃加熱生成物(実施例2−5)がいずれも規則性は低いものの、図1に示す実施例1−2と同様に、一様な近距離秩序構造の細孔配列をしていることがわかった。図4(d)の高倍TEM像から、1000℃においても、ZrO2結晶子(白枠で囲んだ部分)の大きさは約5nmで、格子面間隔0.28nmが正方晶系ZrO2(JCPDSカードno.80−0784)の(101)面に対応していることがわかった。なお、同回折面のXRDピークにシェラーの式を適用して算出したZrO2結晶子の平均の大きさは、5nmであり、TEM像観察結果とよく一致していた。
【0100】
図5(a)に実施例2の多孔性ジルコニア粒子の窒素吸着等温泉を示し、(b)に細孔直径分布曲線を示す。図中、挿入図は実施例2−5の吸着等温線の形状を明瞭となるようスケールを変えている。△、▲、□、○、●、◇、及び▽はそれぞれ加熱処理温度300、500、600、700、800、900、及び1000℃の多孔性ジルコニア粒子である。
【0101】
図5(a)は、窒素吸着等温線であり、メソ孔に起因する毛管凝縮による吸着等温線のステップが相対圧0.4〜0.65に認められ、メソ孔の大きさが均一であることが、図5(b)の細孔分布曲線より明瞭である。また、図5の挿入図は、実施例2−5の吸着等温線であり、1000℃では窒素吸着量は激減するが、小さいメソ細孔に特有の吸着等温線形状が認められ、TEM像(図4(c)(d))を考慮すると、メソ構造は保持されることがわかる。
【0102】
本実施例の多孔性ジルコニア粒子の物理化学的特性に及ぼす加熱温度の影響を表2に示す。表中、結晶子サイズは(101)面のX線回折ピークにシェラーの式を適用して求めた。
【0103】
【表2】

【0104】
(実施例3)
トリブロック共重合体(Pluronic P123:商品名、分子量5800)をエタノールに30℃で溶解後、ZrOCl2・8H2OとCeCl3・7H2Oを添加し2時間攪拌後、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を加え、さらに2時間撹拌して得られた透明ゾル溶液を、予め50℃にセットした乾燥機中で4日間静置して、異なるZr/Ce比を有する前駆体である、透明なゲル状の有機無機メソ構造体を得た。反応原料組成は(ZrOCl2・8H2O+CeCl3・7H2O)/P123/SiO2/ethanol(モル比)=1/0.06/1.33/13.9である。このゲル状物質を、電気炉中100℃/hで空気を流通させながら昇温し、700℃到達後1時間30分焼成を行うことで有機成分を除去し、異なるZr/Ce比を有するジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子(以下、本実施例及び実施例4ではジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子と記載する)を作製した(実施例3−1〜3−6)。
【0105】
さらに、700℃の加熱処理生成物を、予め600℃に調整した電気炉中5℃/minで空気を流通させながら昇温し、900℃で1時間30分間加熱保持し、ジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子を作製した(実施例3−7〜3−12)。
【0106】
図6(a)に実施例3のジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子の低角の粉末XRD図を示し、(b)に広角のXRD図を示す。図6は、種々の組成を持つZr1-xCex2結晶子とシリカ分から成るメソ構造体である、900℃で加熱処理して得られたジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子と参照例のXRD図である。Ce量の増加に伴い、x=0.6で図6(b)のX線回折ピークが急激に鋭くなることから、Zr1-xCex2結晶子の粒成長が明らかであり、同時に低角ピークの消失傾向が認められることから、メソ構造が損なわれていることが示唆される。
【0107】
図7に実施例3のジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子と参照例のZr1-xCex2結晶子サイズに及ぼす組成比(x)の影響を示す。図中、○は700℃、□は900℃を示している。図7は加熱温度をパラメータとして、組成と結晶子の大きさとの関係を示している。いずれの加熱温度でも、Ce割合が増加しても、結晶子の成長は抑制されるが、x=0.6で結晶子サイズが急激に増大する。この結晶子サイズの変化は、生成物のメソ構造に極めて敏感である。
【0108】
X≦0.6のジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子のTEM像は、図2(a)(b)、及び図4と全く同様で、均一なメソ構造が観察された。例えば、図8はZr1-xCex2(x=0.22)結晶子とシリカ分からなる900℃で加熱処理して得られたジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子のTEM像であり、大きさ約5nmのZr1-xCex2(x=0.22)結晶子が一様に存在するメソ構造を持つことがわかった。(101)面の格子面間隔は実施例2(図4)よりやや大きく約0.3nmであり、Zrの一部がCeによって置換されていることに対応している。
【0109】
しかし、x=0.72の生成物は、図9のTEM像(a)と(b)に代表される、2種類の粒子の混合物であり、構造の不均一性、すなわち相分離現象が明らかである。図9(b)で黒く見える部分は、図9(a)に相当する。これより、図10(a)のEDXスペクトルによって、CeO2相であり、SiO2相と共存しないことが分かる。また、図9(b)で薄い色の領域は、図9(c)に相当する構造と図10(c)のEDXスペクトルを示すことから、図8(b)と同様なメソ構造が、Zr1-xCex2結晶子とSiO2分によって形成されていることが明らかである。
【0110】
図6のx=0.72のX線回折ピークは、CeO2の回折位置と重なる主要ピークと、その高角側に広がるブロード部分は種々の組成を持つZr1-xCex2結晶子に起因すると考えられる。したがって、x=0.72の多孔性結晶性粒子は、CeO2と、Zr1-xCex2とSiO2とのメソ構造体に相分離した不均一な粒子構造を持っている。なお、x=1の場合は、CeO2とSiO2相に分離し、図8(b)や図9(c)の様な均一なメソ構造体は全く認められなかった。
【0111】
以上の結果から、本発明に係るZr1-xCex2結晶子とシリカ分でから成るジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子は、実施例2を考慮すると、0≦x≦0.6でZr1-xCex2結晶子は連続固溶体すなわち複合酸化物を形成し、非晶質シリカ相とのナノレベルの集合体を形成し、均一なメソ構造を有することが明らかである。
【0112】
図11は、図6に対応するジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子と参照例のラマンスペクトルである。XRD図は0≦x≦0.6の範囲で類似し、またTEM像観察から正方晶系であると推定できる。一方、ラマンスペクトルは格子中の酸素欠損に起因する内部構造に敏感で、x=0、0.2、0.6のZr1-xCex2結晶は、それぞれt、t’及びt”相の正方晶系に分類できる。なお、参照例3−2のx=1のラマンスペクトルは、立方晶CeO2に典型的なパターンである。
【0113】
本実施例のジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子の比表面積等物理化学的特性パラメータを表3に示す。表中、実施例の結晶子サイズは(101)面、比較例及び参照例については(111)面のX線回折ピークにシェラーの式を適用して求めた。
【0114】
【表3】

【0115】
(実施例4)
トリブロック共重合体(Pluronic F127:商品名、分子量12600)をエタノールに30℃で溶解後、ZrOCl2・8H2OとCeCl3・7H2Oを添加し2時間攪拌後、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を加え、さらに2時間撹拌して得られた透明ゾル溶液を、予め50℃にセットした乾燥機中で4日間静置して、透明なゲル状の有機無機メソ構造体を得た。
【0116】
反応原料組成は表4に示す通り3種類であり、それぞれのゲル状物質を、電気炉中100℃/hで空気を流通させながら昇温し、700℃到達後1時間30分焼成を行うことで有機成分を除去し、異なるZr/Ce比を有するジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子を作製した(実施例4−1、4−3、4−5)。
【0117】
さらに、700℃の加熱処理生成物を、予め600℃に調整した電気炉中5℃/minで空気を流通させながら昇温し、900℃で1時間30分間加熱保持し、ジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子を作製した(実施例4−2、4−4、4−6)。反応溶液組成及び対応するジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子の細孔特性等を表4に記す。
【0118】
図12は実施例4−1と実施例4−2のXDR図である。本実施例のジルコニア・セリアメソ複合酸化物粒子の比表面積等物理化学的特性パラメータを表4に示す。
【0119】
【表4】

【0120】
(実施例5)
トリブロック共重合体(Pluronic P123:商品名、分子量5800)をエタノールに30℃で溶解後、ZrOCl2・8H2OとCaCl2・6H2O、MgCl2・6H2O、YCl3・8H2Oを添加し2時間攪拌後、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を加え、さらに2時間撹拌して得られた透明ゾル溶液を、予め50℃にセットした乾燥機中で4日間静置して、前駆体である、透明なゲル状の有機無機メソ構造体を得た。
【0121】
反応原料組成は全金属元素/P123/SiO2/ethanol(モル比)=1/0.05/1.29/13.4であり、含まれる金属元素の種類と割合は表5に示す。表5は、本実施例のジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子の比表面積等物理化学的特性パラメータを示している。
【0122】
【表5】

【0123】
このゲル状物質を、電気炉中100℃/hで空気を流通させながら昇温し、700℃到達後1時間30分焼成を行うことで有機成分を除去し、ジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子を作製した(実施例5−1〜実施例5−5)。さらに、700℃の加熱処理生成物を、予め600℃に調整した電気炉中5℃/minで空気を流通させながら昇温し、900℃で1時間30分間加熱保持し、ジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子を作製した(実施例5−6〜実施例5−8)。なお、Zrに対する割合が高いと、Mg及びCaを含むジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子のメソ構造は900℃で破壊されることが分かった。
【0124】
図13は実施例5のXRD図である。本実施例のジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子の比表面積等物理化学的特性パラメータを表5に示す。
【0125】
(実施例6)
トリブロック共重合体(Pluronic P123:商品名、分子量5800)をエタノールに30℃で溶解後、ZrOCl2・8H2Oを添加し1時間攪拌後、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を加え、さらに1時間撹拌して得られた透明ゾル溶液を、予め50℃にセットした乾燥機中で4日間静置して、前駆体である透明なゲル状の有機無機メソ構造体を得た。
【0126】
反応原料組成をZrOCl2・8H2O/P123/SiO2/ethanol(モル比)=1/0.06/0〜1.99/13.9として、SiO2量が生成物のメソ構造に与える影響を検討した。
【0127】
これらのゲル状物質を、電気炉中100℃/hで空気を流通させながら昇温し、700℃の所定温度に到達後1時間30分焼成を行うことで有機成分を除去し、多孔性ジルコニア粒子を得た。さらに、700℃の加熱処理生成物を、予め600℃に調整した電気炉中5℃/minで空気を流通させながら昇温し、900℃で1時間30分間加熱保持し、多孔性ジルコニア粒子を作製した。
【0128】
図14は、SiO2添加量が、多孔性ジルコニア粒子のメソ構造等に及ぼす影響を示す、700℃加熱生成物のX線回折図である。SiO2量が多いと(実施例6−3)、ZrO2の結晶化が遅く、非晶質物質相のパターン上に、ZrO2に対応する回折位置に僅かな盛り上がりが認められる。しかし、過剰に添加すると、結晶化量も相対的に減少し、非晶質シリカに埋没してしまうことが危惧される。
【0129】
一方、SiO2量が少ない場合には、複合酸化物の結晶化が顕著となる(実施例6−1)。しかし、窒素吸着等温線からは、いずれの場合もメソ構造体の規則性には悪影響を及ぼし、特に過少量(参照例6−1)では比表面積の著しい低下が認められた。
【0130】
SiO2を添加しない場合は、400℃で正方晶ZrO2が結晶化するが、600℃で単斜晶に変化し、両相の混合物となり、メソ構造は形成されない(比較例6−1)。しかし、少量のSiO2添加であっても(参照例6−1)、結晶化するZrO2相は正方晶系であり、SiO2の添加が単斜晶系への相転移の抑制に極めて効果的であることが分かる。本実施例の多孔性ジルコニア粒子の比表面積等物理化学的特性パラメータを表6に示す。
【0131】
【表6】

【0132】
(実施例7)
トリブロック共重合体(Pluronic P123:商品名、分子量5800)をエタノールに30℃で溶解後、ZrOCl2・8H2Oを添加し1時間攪拌後、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を加え、さらに1時間撹拌して得られた透明ゾル溶液を、予め50℃にセットした乾燥機中で4日間静置して、前駆体である透明なゲル状の有機無機メソ構造体を得た。
【0133】
反応原料組成をZrOCl2・8H2O/P123/SiO2/ethanol(モル比)=1/0.07〜0.03/1.33/13.9として、P123量が生成物のメソ構造に与える影響を検討した。これらのゲル状物質を、電気炉中100℃/hで空気を流通させながら昇温し、700℃の所定温度に到達後1時間30分焼成を行うことで有機成分を除去し、多孔性ジルコニア粒子を得た。さらに、700℃の加熱処理生成物を、予め600℃に調整した電気炉中5℃/minで空気を流通させながら昇温し、900℃で1時間30分間加熱保持し、多孔性ジルコニア粒子を作製した。
【0134】
図15は、界面活性剤(Pluronic P123:商品名)添加量が、多孔性ジルコニア粒子のメソ構造等に及ぼす影響を示す、700℃加熱生成物のX線回折パターンである。P123量が多いと(実施例7-1)、ZrO2の結晶化が遅く、非晶質物質相のパターン上に、ZrO2に対応する回折位置に僅かな盛り上がりが認められる。従って、過剰に添加すると、結晶化量も相対的に減少し、非晶質シリカに埋没してしまうことが危惧される。また、P123添加量の減量は、ZrO2結晶子の生成を促進すると同時に、メソ細孔径の減少を伴う。このことから、界面活性剤の添加量の調整によって、細孔径の制御が効果的に行えることを示している。本実施例の多孔性ジルコニア粒子の比表面積等物理化学的特性パラメータを表7に示す。
【0135】
【表7】








【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折角10度(2θ CuKα)以上にジルコニア系複合酸化物に帰属できるX線回折ピークを有し、下記式(1)
Zr1-xMex2‥(1)
(式中、Meは多価金属元素を示し、xは0≦x≦0.6で示す。)で表される金属複合酸化物とシリカ成分を有するジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子。
【請求項2】
700℃の加熱処理による比表面積が200〜500m2/gであり、且つ、900℃の加熱処理による比表面積が90〜300m2/gであることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子。
【請求項3】
SiO2を3〜50wt%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子。
【請求項4】
ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子サイズが1〜8nmのナノ結晶子を含有するメソ構造体を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子。
【請求項5】
回折角0.5乃至3度(2θ CuKα)に細孔の規則配列構造を示す1本以上のX線回折ピークを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子。
【請求項6】
前記多価金属元素が、Ce、Y、Ca、Mg、Ti、Alから選択される1種又は2種以上の金属元素であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子を含有してなることを特徴とする触媒。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子を含有してなることを特徴とする機能性セラミックス合成用原料粉体。
【請求項9】
有機溶媒に非イオン性界面活性剤を溶解し、ジルコニウム塩単独、又はジルコニウム塩と金属塩を添加した後、シリコンアルコキシドを混合して懸濁溶液を作製し、揮発成分と有機成分を除去することを特徴とするジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子の製造方法。
【請求項10】
前記金属塩の金属元素がCe、Y、Ca、Mg、Ti、Alから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項9に記載のジルコニア系メソ多孔性複合酸化物粒子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−14451(P2013−14451A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146940(P2011−146940)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度経済産業省委託研究「外場援用システム触媒による持続発展可能なVOC排出抑制技術に関する研究」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】