説明

ジルコニア質焼結体からなるベアリング

【課題】 すぐれた熱安定性、耐腐食性を有し、耐摩耗性を有するジルコニア質焼結体からなるベアリングの提供。
【解決手段】 (a)主として正方晶からなるY系ジルコニア質焼結体であって、(b)Y/ZrOモル比が1.5/98.5〜4/96の範囲にあり、(c)SiOを0.05〜2.5重量%含有し、(d)Alを0.05〜3.0重量%含有し、(e)平均結晶粒径が0.7μm以下であり、(f)SiO(重量%)×平均結晶粒径(μm)が0.03〜0.5の範囲にあり、(g)SiO/(NaO、KO、CaO、Fe合計)の重量比が5以上であり、(h)かさ密度が5.70g/cm以上であることを特徴とする耐久性にすぐれたジルコニア質焼結体からなるベアリング。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐久性に優れたジルコニア質焼結体からなるベアリングに関する。
【0002】
【従来の技術】セラミックスは金属に比べて優れた耐摩耗性と耐腐食性を有し、軽量であることから、従来の金属製ベアリングボール(転動体)に代わって使用されるようになってきている。これらのセラミックス製ベアリングボールを用いたベアリングは、近年はハードディスクの回転速度を高速化することにより記録の高密度化を図るべく、金属製に比べて安定した回転が得られることからハードディスク駆動用のスピンドルモータに使用されるようになってきており、高速、高温下における潤滑寿命を向上させるために窒化けい素製ベアリングボールが使用されるようになってきている。しかしながら、スピンドルモータでは、高回転精度を得るために玉軸受に予圧をかけて使用されるが、窒化けい素製ベアリングボールは線膨張係数が玉軸受に使用されている玉軸鋼に比較して小さいために高速回転による温度上昇によって予圧が大きく変動し、高速回転での回転精度が得られず、読み書きエラーの発生につながるという問題があった。
【0003】特開2000−74069号公報にはジルコニアの線膨張係数が玉軸鋼に近いため、ジルコニア製ベアリングボールを使用することにより温度変化による予圧の変動が少なくなり、高速回転での回転精度の向上ができることを開示している。しかしながら、同公報に開示されているジルコニア製ベアリングボールは、ただ単に線膨張係数を規定しているだけで、ベアリングとしてすぐれたものとするための焼結体としての機械的特性等については一切規定していない。さらに、ジルコニア質焼結体は、後述するような劣化が起こることが指摘されており、ベアリングとして多岐に渡る環境下で安定して使用することができない問題があった。
【0004】ジルコニア質焼結体はすぐれた機械的性質を有しているが、200〜300℃の特定温度域において正方晶系ジルコニアから単斜晶系ジルコニアへ転移し、強度低下につながる熱劣化を起こし、特公昭61−21184号公報などにはその防止法について多く記載されているが、ベアリングとしての実用範囲である60℃〜150℃程度の高温において高湿度雰囲気中で長時間使用すると強度や耐摩耗性などの機械的性質が低下したり、微小な寸法変動が生じたりする問題点が明らかとなっている。しかし、200〜300℃での熱劣化の防止法によってはこの問題を解決することができないことが分かってきた。20℃程度の比較的低温での負荷のかかった状態での耐摩耗性等の耐久性は、結晶構造を微細化するほど向上するが、その反面、水分などの腐食成分に対する抵抗性は低下するため、60℃〜150℃程度の高温において高湿度雰囲気中で負荷のかかる状態では耐摩耗性などの機械的性質が低下するため、負荷状態で高速回転をし、温度上昇が発生するようなベアリングとしては十分満足して使用することができなかった。
【0005】特開2000−302548号公報に、熱安定性にすぐれた焼結体とするため、結晶粒径をある範囲内に限定し、Al、SiO、TiOよりなる第3成分を特定量添加する方法が提案されている。しかし、Al、SiO、TiOよりなる第3成分を添加しても、アルカリ金属、アルカリ土類金属酸化物などの不純物で、ガラス相が形成され、耐久性の低下につながる危険性があり、Al、SiO、TiOの第3成分の添加だけでは充分な改善は得られない。上記公報記載における防御法では、200℃付近での温水または高湿度雰囲気中に曝された場合の熱劣化は防ぐことは可能であるが、60℃〜150℃程度の温度の実用的な範囲で、特に負荷のかかった場合における耐久性低下を完全に防止するまでには至っていない。また、60℃〜150℃程度の温度で全く水分あるいは水蒸気が存在しない環境下でも長時間負荷がかかった場合に結晶粒界が脆弱化し、その結果、結晶粒子の脱粒による急激な摩耗が発生する問題も有している。このようなことから60℃〜150℃程度の高温において、かつ、高湿度雰囲気中で長期間安定してすぐれた熱安定性、耐腐食性、機械的特性および耐久性を有し、同時に高湿度雰囲気下の有無によらずすぐれた耐摩耗性を有するベアリング用材料が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、60℃〜150℃程度の高温において、かつ、高湿度雰囲気中でもすぐれた熱安定性、耐腐食性を示し、長時間安定し、すぐれた機械的特性、特に耐摩耗性を有する耐久性にすぐれ、高湿度雰囲気の有無によらず、ベアリングとしてすぐれた耐摩耗性を有するジルコニア製ベアリングを提供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は前記のような現状を鑑みて鋭意研究を重ねてきた結果、60℃〜150℃程度の高温において、かつ、高湿度雰囲気中におけるベアリングボール及び軸受としての機械的性質の低下は、200〜300℃における熱安定性によるものとは異なる原因であることを見出した。すなわち、200〜300℃における熱劣化は、準安定の正方晶系ジルコニアが安定な単斜晶系ジルコニアに転移することに起因するとされており、YやCeO等の安定化剤を増量することにより熱劣化が抑制されることが知られている。一方、60℃〜150℃程度の高温において、かつ、高湿度雰囲気中に曝された場合の強度や機械的特性の低下は、粒界または粒界面に不均質に偏在する非晶質相、ガラス相、Yなどが水によって応力腐食することに起因すると推考される。
【0008】SiOはZrO結晶粒界近傍に偏析し、熱劣化を抑制する効果があるが、同時にアルカリ金属、アルカリ土類金属酸化物などの不純物が共存するとZrO結晶粒界にガラス相を形成し、応力腐食に対する抵抗性が低下及び結晶粒界強度が低下するという問題点を有していることが明確となった。このことから、SiOの添加量だけでなく、SiO量に対するアルカリ金属、アルカリ土類金属酸化物などの不純物量を制御することが重要であることを見い出した。また、ZrO結晶粒界におけるSiOの偏析が均質かつ適切な量であることが重要で、結晶粒径によって粒界表面積が異なるため、すぐれた耐久性を有するには結晶粒径に応じたSiO添加量の制御が重要であることも見い出した。
【0009】本発明者等はジルコニア質焼結体において、Y/ZrOモル比、AlおよびSiOの第3成分量、結晶粒径、かさ密度、さらには、SiO量と平均結晶粒径の関係、SiO量とNaO、KO、CaO、Feのアルカリ金属、アルカリ土類金属酸化物などの不純物量との関係をある特定の範囲内に制御することにより、60℃〜150℃程度の高温において高湿度雰囲気中における粒界腐食を抑制し、結晶粒界強度を向上させ、さらには高湿度雰囲気の有無によらずベアリングとして耐摩耗性等にすぐれた耐久性を有することを見いだし本発明を完成するに至った。また、同時に高温でかつ水などの腐食成分にさらされ、高速で粉砕・分散メディアを撹拌する粉砕機用部材としてすぐれた摩耗特性を有するジルコニア質焼結体はベアリングとしても耐摩耗性等にすぐれた耐久性を有することも見出し本発明を完成するに至った。
【0010】即ち、本発明の第1は、(a)主として正方晶からなるY系ジルコニア質焼結体で、(b)Y/ZrOモル比が1.5/98.5〜4/96の範囲にあり、(c)SiOを0.05〜2.5重量%含有し、(d)Alを0.05〜3.0重量%含有し、(e)平均結晶粒径が0.7μm以下であり、(f)SiO(重量%)×平均結晶粒径(μm)が0.03〜0.5の範囲にあり、(g)SiO/(NaO、KO、CaO、Fe合計)の重量比が5以上であり、(h)かさ密度が5.70g/cm以上であることを特徴とする耐久性にすぐれたジルコニア質焼結体からなるベアリングに関する。本発明の第2は、TiOの含有量が0.3重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載した耐久性にすぐれたジルコニア質焼結体からなるベアリングに関する。
【0011】以下に本発明の耐久性にすぐれたジルコニア質焼結体からなる軸受が充足すべき各要件について詳細に説明する。
(a) ZrOの結晶相が主として正方晶からなるY系ジルコニア質焼結体である点について。ジルコニア質焼結体に単斜晶系ジルコニアが含有していると、その結晶周辺に微細なクラックが生じ、応力が負荷されるとこの微細なクラックを起点として微小破壊が起こり、摩擦、衝撃、圧壊等に対する抵抗性が低下し、転がり軸受としての寿命低下につながるので好ましくない。一方、立方晶系ジルコニアを含有していると結晶粒径が大きくなり、機械的特性の低下が起こるだけでなく、結晶粒界付近にYが偏在しやすくなって耐久性の低下をきたすので好ましくない。
【0012】なお、本発明では、ジルコニアの結晶相である単斜晶系ジルコニア(M)の存在の有無及び含有量、正方晶系ジルコニア(T)及び立方晶系ジルコニア(C)の量については以下の方法でX線回折により求める。即ち、焼結体及び加工した焼結体製品の表面は応力誘起相変態により正方晶系ジルコニアから単斜晶系ジルコニアに変態しており、真の結晶相を同定することができないので、焼結体表面を鏡面にまで研磨し、X線回折により、回折角27〜34度の範囲で測定し、単斜晶系ジルコニアの有無及び含有量を下記で示した式から求める。
【数1】


【0013】また、正方晶系ジルコニア及び立方晶系ジルコニアは、単斜晶系ジルコニアの有無を確認した方法と同様にして、X線回折により、回折角70〜77度の範囲で測定し、次式により求める。
【数2】


なお、本発明において、主として正方晶系ジルコニアとは、上記X線回折から求まる立方晶系ジルコニアを10容量%、単斜晶系ジルコニアを5容量%まで許容することができることを意味する。
【0014】(b)本発明のジルコニア質焼結体におけるY/ZrOモル比を1.5/98.5〜4/96の範囲とする点について。本発明のジルコニア質焼結体におけるY/ZrOモル比は1.5/98.5〜4/96、より好ましくは2.0/98.0〜3.5/96.5の範囲内にあることが必要である。通常ZrO原料中に少量含有することのあるHfOが混入していても良く、このHfO量を含めたZrOとHfOの合量をZrO量とする。Y/ZrOモル比が1.5/98.5未満の場合には焼結体中の単斜晶系ZrO量が増加し、焼結体内部にクラックが発生して、ベアリングの使用条件である長時間負荷のかかる状態ではクラックが進展し、割れや欠けが発生し、結果的に耐久性の低下をきたすので好ましくない。一方、Y/ZrOモル比が4/96を越えると正方晶系ZrO量が低下し、立方晶系ZrO量が増加し、機械的特性が低下するので好ましくない。なお、Y添加量の30モル%まで他の稀土類酸化物の1種または2種以上で置換したものも用いることができる。このような稀土類酸化物としては、CeO、Nd、Yb、Dy等が安価な点で好ましい。
【0015】(c)本発明のジルコニア質焼結体におけるSiOの含有量を0.05〜2.5重量%とする点について。本発明のジルコニア質焼結体におけるSiOは0.05〜2.5重量%、好ましくは0.05〜2.0重量%含有していることが必要である。SiOはZrO結晶粒界近傍に偏析しており、SiOがZrO結晶粒界に存在することにより応力腐食を抑制し、さらに、ZrO結晶粒界結合を強化する効果があるため、耐久性向上に効果がある。SiOが2.5重量%を越える場合には、ZrO結晶粒界に非晶質相およびガラス相が多く形成され、ZrO結晶粒界結合を低下させ、応力腐食が進みやすくなると同時に、正方晶から単斜晶への応力誘起相変態の効果が低下し、その結果、機械的性質および耐久性の低下を招くので好ましくない。SiO量が0.05重量%未満であると、ZrO結晶粒界にSiOが存在しない部分ができるため、応力腐食を抑制できなくなり耐久性に対する効果がなく好ましくない。
【0016】(d)本発明のジルコニア質焼結体におけるAlの含有量を0.05〜3.0重量%とする点について。本発明のジルコニア質焼結体におけるAlは0.05〜3.0重量%、好ましくは0.05〜2.0重量%含有していることが必要である。AlはZrO結晶粒界にAl結晶粒子として存在するだけでなく、ZrO結晶粒界及び粒界極近傍に偏析している。Alの添加は焼結性の向上、微構造の均一化に効果があるだけでなく、60℃〜150℃程度の高温において高湿度雰囲気中における特性低下を抑制する効果がある。さらに、ZrO結晶粒界の強化効果があるので耐衝撃性及び耐摩耗性等の機械的特性はすぐれたものとなる。Al含有量が0.05重量%未満の場合は、Al添加の効果がなく、3.0重量%を越える場合は、ZrO結晶粒界にAl結晶粒子が多く存在することになり耐久性の低下が起こるので好ましくない。
【0017】(e)本発明のジルコニア質焼結体における平均結晶粒径を0.7μm以下とする点について。本発明のジルコニア質焼結体における平均結晶粒径は0.7μm以下、より好ましくは0.5μm以下であることが必要である。平均結晶粒径が0.7μmを越える場合には耐摩耗性、耐久性が低下するだけでなく、耐摩耗性等の機械的性質が低下するので好ましくない。なお、平均結晶粒径は焼結体表面を鏡面まで研磨し、次いで熱エッチングもしくは化学エッチングを施した後、走査電子顕微鏡で観察してインターセプト法により10点測定した平均値とする。算出式は下記の通りである。
【数3】D=1.5×L/n〔式中、D:平均結晶粒径(μm)、n:長さL当たりの結晶粒子数、L:測定長さ(μm)
を示す。〕
【0018】(f)本発明のジルコニア質焼結体は、SiO(重量%)×平均結晶粒径(μm)が0.03〜0.5の範囲にあるとする点について。本発明のジルコニア質焼結体は、SiO(重量%)×平均結晶粒径(μm)が0.03〜0.5、好ましくは0.03〜0.3の範囲にあることが必要である。SiOはZrO結晶粒界近傍に偏析して応力腐食を抑制し、耐久性が向上するが、結晶粒径によって粒界表面積が異なるため、結晶粒界に均質にSiOを存在させるには、結晶粒径に対するSiO量をある範囲内に調整することが必要である。SiO(重量%)×平均結晶粒径(μm)が0.5を超えると、ZrO結晶粒界近傍に存在するSiOが余剰となり、粒界に非晶質相やガラス相が多く形成されたり、ZrO結晶粒界結合を低下させ、応力腐食が進みやすくなると同時に、正方晶から単斜晶への応力誘起相変態の効果が低下し、その結果、機械的性質、耐摩耗性、耐久性の低下を招くので好ましくない。SiO(重量%)×平均結晶粒径(μm)が0.03未満であると、ZrO結晶粒界にSiOが存在しないところができるため応力腐食を抑制できなくなり、耐久性に対する効果がなく好ましくない。
【0019】(g)本発明のジルコニア質焼結体において、SiO/(NaO、KO、CaO、Fe合計)重量比が5以上とする点について。本発明のジルコニア質焼結体においては、SiO/(NaO、KO、CaO、Fe合計)重量比が5以上、好ましくは10以上であることが必要である。SiO/(NaO、KO、CaO、Fe合計)重量比が5未満であると、SiOとNaO、KO、CaO、Feとがガラス相を粒界に多く形成するため、腐食が起こり、その結果、ZrO結晶粒界結合が低下し、正方晶から単斜晶への応力誘起相変態の効果が低下し、その結果、機械的特性及び耐久性の低下を招くので好ましくない。
【0020】(h)本発明のジルコニア質焼結体におけるかさ密度が5.70g/cm以上であるとする点について。本発明のジルコニア質焼結体におけるかさ密度は、5.70g/cm以上、好ましくは5.80g/cm以上であることが必要である。かさ密度が5.70g/cm未満の場合には摩擦、衝撃などの外部応力に対する抵抗性が劣ると同時に、60℃〜150℃程度の高温において高湿度雰囲気中における腐食に対する抵抗性が低下するので好ましくない。
【0021】(i)本発明のジルコニア質焼結体におけるTiOを0.3重量%以下とする点について。本発明のジルコニア質焼結体におけるTiOは0.3重量%以下、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下とする。TiO量が0.3重量%を超えると、TiOがZrOに固溶し、結晶粒径の成長を促進させ、結晶粒径が大きくなり、その結果、耐摩耗性、耐久性の低下を招くので好ましくない。TiOは不純物であり、少ない方が好ましいが、今の技術ではTiO不純物の最低値は0.004重量%程度である。
【0022】本発明の耐久性にすぐれるジルコニア質焼結体からなるベアリングは種々の方法で作製できる。下記にその一例を示すが、この方法に限定されるものでない。本発明では、液相法により精製したジルコニア粉体を使用することが必要である。即ち、ZrOとYの含有量が所定のモル比となるようにジルコニウム化合物(例えばオキシ塩化ジルコニウム)の水溶液とイットリウム化合物(例えば塩化イットリウム)の水溶液を均一に混合し、加水分解し、水和物を得、脱水し、乾燥後、400〜1250℃で仮焼し、Y、Al、SiO以外の不純物の少ないジルコニア粉体を得る方法が採用される。Y以外の成分の添加はジルコニウム化合物とイットリウム化合物の水溶液の混合物に塩の水溶液として所定量添加しても良いし、後記する仮焼粉体の粉砕・分散時に水酸化物、炭酸化物、酸化物等の形態で添加しても良い。
【0023】得られた仮焼粉体を湿式により粉砕、分散し、必要により公知の成形助剤(ワックスエマルジョン、PVA、アクリル系樹脂等)を加え、スプレードライヤー等の公知の方法で乾燥させて成形粉体を得る。得られた成形粉体粒度は平均粒子径0.5μm以下が好ましい。得られた成形粉体は、公知の成形方法、例えばプレス成形、ラバープレス成形等の方法による成形方法でも十分に本発明の焼結体を得ることができ、さらには水を含有させた有機溶媒、可溶性高分子または水などを成形助剤として湿式または液中にて成形する方法も可能である。次いで得られた成形体を1150〜1550℃、好ましくは1150〜1400℃で焼成することによって焼結体を得、所望の形状に加工してベアリングが得られる。さらに、必要に応じてHIP処理を施すことにより摩擦、衝撃、圧壊等に対する抵抗性を高くすることができ、機械的性質の向上、さらには耐久性の向上ができる。HIP処理は常圧焼結後、Arなどの不活性雰囲気、またはNもしくはO雰囲気下で1100〜1400℃で行うことが好ましい。
【0024】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0025】実施例1〜17、比較例1〜20純度99.6%のオキシ塩化ジルコニウムと純度99.9%の硝酸イットリウムを表1〜2の組成となるように水溶液にして混合した。次に、この水溶液を加熱環流下で加水分解し、Yが固溶した水和ジルコニウムの沈殿物を生成させ、脱水、乾燥し、400〜1000℃で1時間仮焼し、得られたジルコニア粉体を湿式にて粉砕した。なお、Y以外の成分については、酸化物もしくは塩の形態で粉砕時に所定量添加混合した。次いで、得られたスラリーを乾燥、整粒し、成形用粉体とした。この成形用粉体を転動造粒成形法により球状に成形した。得られた成形体を1000〜1600℃で焼成して、直径1mmの球状の焼結体を得た。直径1mmの球状の焼結体はバレル研磨によって仕上げて試料を作製した。これらの試料の特性を表1〜2に示す。実施例1〜17は本発明のジルコニア質焼結体であり、比較例1〜20は本発明の要件の少なくとも1つを満たしていない比較品である。
【0026】次いで、60℃において長時間負荷がかかった場合の耐久性についてテストを行った。上記で得た直径1mmの球状試料1200ccを内容量1400ccのダイノーミル(シンマルエンタープライゼス社製:タイプKDL−PILOT)に入れ、共立窯業製BaTiO粉体(平均粒子径1.5μm、比表面積1.2m/g)を600gと水2400ccを混合した20重量%濃度のBaTiOスラリーを60℃に保持し、300cc/minで60〜65℃の範囲に温度調整をしながら循環させ、ディスク周速8m/secで24時間を1サイクルとし、10サイクル運転するテストを行い各サイクル毎の単位時間あたりの摩耗率を測定した。摩耗率はテスト前後の時間あたりの重量変化率として算出した。サイクル毎の各試料の摩耗率の最大値を表に示す。比較例15及び19については焼結体のかさ密度が充分でなかったため、摩耗率の測定は行わなかった。さらに、60℃〜150℃程度の高温において高湿度雰囲気中で負荷のかかった場合の耐久性と200〜300℃での熱劣化との違いを明確にするため、上記直径1mmの球状試料を、内容積50ccのオートクレーブに入れ、純水を20cc添加し、200℃の条件下で50時間保持後、冷却し、取り出した試料のクラック有無の確認を行った。クラックの確認できなかったものについては、試料断面の顕微鏡観察を行い、劣化層の深さの測定を行った。
【0027】実施例18〜20、比較例21〜23また、実施例3、6、13及び比較例8、14、16で作製した試料を用いて、水もしくは水蒸気が存在しない状態での耐久性テストとして、イソパラフィンを60〜65℃の範囲に温度調整しながら循環させ、ディスク周速8m/secで24時間を1サイクルとし、10サイクル運転するテストを行い、各サイクル毎の単位時間あたりの摩耗率を測定した。運転するテストを行い、摩耗率はテスト前後の時間あたりの重量変化率として算出した。サイクル毎の各試料について摩耗率の最大値を表3に示す。なお表3中、実施例18は、実施例3で作製した試料についてのテスト結果であり、実施例19は、実施例6で作製した試料についてのテスト結果であり、実施例20は、実施例13で作製した試料についてのテスト結果である。また、比較例21は、比較例8で作製した試料についてのテスト結果であり、比較例22は、比較例14で作製した試料についてのテスト結果であり、比較例23は、比較例16で作製した試料についてのテスト結果である。表に示す結果から、60℃〜150℃程度の高温における高湿度雰囲気中と、200℃〜300℃での熱劣化とは異なり、本発明の耐久性にすぐれたジルコニア質焼結体は、60℃〜150℃程度の高温における高湿度雰囲気中の有無にかかわらずすぐれた耐久性を示すことが明らかであり、ベアリングとしてすぐれた特性を有することが明らかであり、本発明の要件を一つでも満たさない場合は耐久性に欠けるものとなる。
【0028】
【表1】


【表2】


【表3】


【0029】
【発明の効果】本発明により、すぐれた熱安定性、耐腐食性を有し、耐摩耗性を有するジルコニア質焼結体からなるベアリングを提供することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)主として正方晶からなるY系ジルコニア質焼結体であって、(b)Y/ZrOモル比が1.5/98.5〜4/96の範囲にあり、(c)SiOを0.05〜2.5重量%含有し、(d)Alを0.05〜3.0重量%含有し、(e)平均結晶粒径が0.7μm以下であり、(f)SiO(重量%)×平均結晶粒径(μm)が0.03〜0.5の範囲にあり、(g)SiO/(NaO、KO、CaO、Fe合計)の重量比が5以上であり、(h)かさ密度が5.70g/cm以上であることを特徴とする耐久性にすぐれたジルコニア質焼結体からなるベアリング。
【請求項2】 TiOの含有量が0.3重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載した耐久性にすぐれたジルコニア質焼結体からなるベアリング。

【公開番号】特開2003−314556(P2003−314556A)
【公開日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−113975(P2002−113975)
【出願日】平成14年4月16日(2002.4.16)
【出願人】(000230629)株式会社ニッカトー (30)
【Fターム(参考)】