説明

ジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置および方法

【課題】ジルコニウムを含む使用済燃料を、核燃料物質と、ジルコニウムと、他の核分裂生成物に分離することができるジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置および方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ジルコニウムを含む使用済燃料を、核燃料物質と、ジルコニウムと、核分裂生成物に分離するためのジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置において、ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境を前記処理装置内に得るための加熱手段と、ジルコニウム化合物の昇華温度以下の温度環境とされ、揮発したジルコニウム化合物を凝縮して回収するジルコニウム回収部と、ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境で残存した個体を貯留する固体貯留部と、気体を回収する為の通気口とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置および方法に係り、特にジルコニウム被覆管と混じりあった使用済燃料を、ウランとジルコニウムと核分裂生成物に分離するジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本の沸騰水型軽水炉で使用されている核燃料の化学形態は酸化物である。核燃料物質であるウランはペレットに成型され、燃料被覆管に収納された後、燃料集合体として炉心に装荷されて原子力発電に使用される。
【0003】
原子力発電ではウランが核分裂する時に発生するエネルギーを電気に変えて発電しているが、核分裂が起こる過程で核分裂生成物(FP:Fission Products)が発生する。核分裂生成物の多くは放射性物質である。放射性の核分裂生成物から発せられた放射線のエネルギーは吸収されて熱エネルギーに変わるため、原子力発電に使用された核燃料物質(以後使用済燃料と言う)は自己発熱作用を持つ。このため炉心に装荷された燃料集合体は水により冷却されている。
【0004】
一方、発電所での使用を終えた使用済燃料は、使用済燃料プールで冷却された後、最終的には再処理される。再処理では使用済燃料を核燃料物質(ウランとプルトニウム)と、核分裂生成物に分離する。分離された核分裂生成物は高レベル放射性廃棄物であるため、ガラス固化処理後に地層処分することが検討されている。
【0005】
この使用済燃料の再処理方法として、フッ化物揮発法や、六ヶ所再処理プラントで採用されている湿式再処理法(PUREX法)などがある。
【0006】
このうち例えば特許文献1に記載のフッ化物揮発法とは、使用済燃料をフッ素ガスと反応させ、核燃料物質であるウランを気体状の六フッ化ウラン(UF)として回収する方法である。この時、核分裂生成物の多くは、フッ素ガスと反応して不揮発性のフッ化物(以下、不揮発性フッ化核分裂生成物という)となり、気体状の六フッ化ウランUFと分離される。なお、核分裂生成物の一部は、揮発性のフッ化物となり気体状の六フッ化ウランUFに同伴するが、後段工程での凝縮や吸着などの分離操作により、気体状の六フッ化ウランUFと分離できる。
【0007】
以上のフッ化物揮発法における使用済燃料のフッ化方式として、主にフレーム炉方式と流動床方式の2つが検討されている。このうち、フレーム炉方式では、フレーム炉の上部から使用済燃料粉末とフッ素ガスを供給することで反応熱による高温のフレーム(1200〜1600℃)を形成し、高温雰囲気中で使用済燃料をフッ化する。
【0008】
また流動床方式では、使用済燃料と流動材(例えばアルミナ)が充填された反応槽において、使用済燃料と流動材を攪拌している所へフッ素ガスを供給し、使用済燃料をフッ化する。この流動床方式では、反応槽と使用済燃料と流動材は加温されており、その温度は300〜350℃である。
【0009】
さらに使用済燃料のフッ化方式として、上記2つ以外に、単純な方式としてバッチ方式が考えられる。この方式では、使用済燃料が収納された容器にフッ素ガスを供給し、使用済燃料をフッ化する。この時、使用済燃料と容器はフッ化反応を促進するために加温されており、その温度は最大800℃程度であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−257980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上説明した特許文献1などに記載のフッ化物揮発法では、その方式が幾つか知られているが、いずれの場合にも処理装置(炉、槽、又は容器形式のものを含む)内に使用済燃料が配置されあるいは供給される必要がある。
【0012】
これらの方式では、燃料集合体から燃料被覆管を除去して使用済燃料の形態にしたものを処理の対象としている。このことは、原子炉内の燃料集合体から使用済燃料を得る(フレーム炉方式では、さらに使用済燃料を粉末の形態とする)までに多大の処理工程と、時間を要することを意味している。
【0013】
このことから、燃料集合体から使用済燃料のみを抽出してフッ化物揮発法による分離回収を行うのではなく、使用済燃料と燃料被覆管が混合された状態のまま、フッ化物揮発法による分離回収を行えることが望ましい。例えば使用済燃料と燃料被覆管が混合された状態として、裁断した燃料集合体をそのままフッ化物揮発法による分離回収の対象とできるのであれば、前処理工程が簡略化でき、ここに要する時間を大幅に削減することができる。
【0014】
以上の説明は、原子炉内で燃料集合体が予定の発熱を完了した後の処理を想定しているが、原子炉の過酷事故により使用済燃料と燃料被覆管が溶融した場合にも、溶融物の形態のままフッ化物揮発法による分離回収を行えることがより強く望まれる。
【0015】
例えば、過酷事故時に燃料集合体が水により冷却されなかった場合、使用済燃料の自己発熱作用により使用済燃料と燃料被覆管は高温になり、次いで燃料被覆管と水蒸気との反応による発熱でさらに高温になることで使用済燃料と燃料被覆管は溶融すると考えられる。この溶融物はコリウムと呼ばれる。コリウムでは、使用済燃料のみを取り出すことが困難であるので、直接、溶融物の形態のままフッ化物揮発法による分離回収を行えることが望ましい。
【0016】
以上説明したフッ化物揮発法や、湿式再処理法(PUREX法)などは、燃料集合体から取り出した使用済燃料の再処理方法である。これに対し、本発明において再処理の対象とするのは、使用済燃料と燃料被覆管の混合物である。混合物には、原子力発電所の過酷事故で発生したコリウムを含む。
【0017】
本発明では、原子力発電所の過酷事故で発生したコリウム、あるいは裁断した使用済燃料と燃料被覆管などの混合物を、フッ化物揮発法で処理することを検討している。コリウムなどの混合物は、燃料被覆管の材料であるジルコニウムを多量に含むため、ジルコニウムの取扱いが重要となる。フッ化物揮発法を適用する場合における、ジルコニウムの取扱いを以下に纏めてみた。
【0018】
フッ化物揮発法による使用済燃料の再処理では、核分裂生成物の一つであるジルコニウムは、フッ素ガスと反応してフッ化ジルコニウム(ZrF)となる。フッ化ジルコニウムZrFの昇華点は600℃である。
【0019】
このため、フッ化物揮発法におけるフッ化方式がフレーム炉方式とバッチ方式の場合は、フッ化ジルコニウムZrFは一時的に揮発するが、処理装置の配管温度は200℃程度のため凝縮し、最終的に不揮発性フッ化核分裂生成物とともに、固体として回収される。また、フッ化物揮発法におけるフッ化方法が流動床方式の場合、フッ化ジルコニウムZrFは揮発しないので、この場合にも不揮発性フッ化核分裂生成物とともに、固体として回収される。
【0020】
したがって、使用済燃料の処理向けのフッ化物揮発法でコリウムなどの混合物を処理した場合、コリウムなどの混合物は核燃料物質と、ジルコニウムを含む核分裂生成物に大別される。回収されたジルコニウムを含む核分裂生成物のうち、被覆管由来のジルコニウムは非放射性なのでガラス固化処理する必要は無いが、使用済燃料の処理向けのフッ化物揮発法ではジルコニウムと他の核分裂生成物を分離する工程が無いため、ジルコニウムと他の核分裂生成物は同時にガラス固化される。
【0021】
しかし、単位重量のガラス固化体中に溶解できる不純物量(核分裂生成物+ジルコニウム)には上限があるため、非放射性のジルコニウムをガラス固化するとガラス固化体量の増加により処理コストが増加する。よって、フッ化物揮発法でコリウムなどの混合物を処理する場合、コストの低減のためにはジルコニウムと他の核分裂生成物を分離することが有効である。
【0022】
このようなニーズに対し、例えば、金属の対象でウランと金属ジルコニウムから成る金属燃料を塩素ガスと反応させてウランとジルコニウムを分離する塩化法があるが、塩素ガスと酸化ジルコニウムが反応しないため、この塩化法を本発明の酸化物燃料にそのまま適用することはできない。
【0023】
以上のことから本発明においては、ジルコニウムを含む使用済燃料を、核燃料物質と、ジルコニウムと、他の核分裂生成物に分離することができるジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
以上のことから本発明においては、ジルコニウムを含む使用済燃料を、核燃料物質と、ジルコニウムと、核分裂生成物に分離するためのジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置において、ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境を前記処理装置内に得るための加熱手段と、ジルコニウム化合物の昇華温度以下の温度環境とされ、揮発したジルコニウム化合物を凝縮して回収するジルコニウム回収部と、ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境で残存した個体を貯留する固体貯留部と、気体を回収する為の通気口とを備えた。
【0025】
また、加熱手段は、ジルコニウムを含む使用済燃料をフッ素ガスと反応させてフレームを形成させるための第1の加熱手段を含むものとした。
【0026】
また加熱手段は、ジルコニウムを含む使用済燃料をフッ素ガスと反応させてフレームを形成させるための第1の加熱手段と、固体貯留部の固体をジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度に加熱する為の第2の加熱手段とを備える。
【0027】
また加熱手段は、ジルコニウムを含む使用済燃料を載置する台座を備え、台座上でフッ素ガスと反応させるときにジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境を得るための第3の加熱手段を備える。
【0028】
また加熱手段は、ジルコニウムを含む使用済燃料を載置する台座を備え、台座上でフッ素ガスと反応させた後に、塩素ガスと反応させるときにジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境を得るための第4の加熱手段を備える。
【0029】
またジルコニウム化合物は、フッ化ジルコニウムである。
【0030】
またジルコニウム化合物は、塩化ジルコニウムである。
【0031】
以上のことから本発明においては、ジルコニウムを含む使用済燃料を、核燃料物質と、ジルコニウムと、核分裂生成物に分離するためのジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法において、ジルコニウムを含む使用済燃料を、ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境下で処理し、ジルコニウム化合物の昇華温度以下の温度環境下で揮発したジルコニウム化合物を凝縮して回収し、ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境で残存した個体と、気体に分けて回収する。
【0032】
またジルコニウムを含む使用済燃料について、ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境下での第1回目の処理により気体と固体に分離し、第1回目の処理後の個体について、ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境下で第2回目の処理を行い、ジルコニウム化合物の昇華温度以下の温度環境下で揮発したジルコニウム化合物を凝縮して回収し、ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境で残存した個体と、気体に分けて回収する。
【0033】
またジルコニウムを含む使用済燃料について、フッ素ガスと反応させて気体と固体に分離し、分離後の個体について、塩化ジルコニウムの昇華温度以上の温度環境下で塩素ガスと反応させ、塩化ジルコニウムの昇華温度以下の温度環境下で揮発した塩化ジルコニウムを凝縮して回収し、塩化ジルコニウムの昇華温度以上の温度環境で残存した個体と、気体に分けて回収する。
【0034】
以上のことから本発明においては、ジルコニウムを含む使用済燃料を、核燃料物質と、ジルコニウムと、核分裂生成物に分離するためのジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法において、燃料被覆管のジルコニウムと使用済燃料を、フッ素ガスと600℃以上の温度で反応させることでフッ化ジルコニウムガスを生成し、そのフッ化ジルコニウムガスを反応装置内部に設置されたジルコニウム回収部に凝縮して回収する。
【0035】
またジルコニウム回収部に回収したフッ化ジルコニウムと塩化物ガスを反応させて塩化ジルコニウムを生成し、その塩化ジルコニウムを350℃以上で揮発させることでジルコニウム回収部からジルコニウムを分離する。
【0036】
また燃料被覆管のジルコニウムと使用済燃料を、フッ素ガスと300〜600℃の温度で反応させて使用済燃料中のウランをUFとして回収した後、固体として残ったフッ化ジルコニウムを350℃以上で塩化物ガスと反応させて塩化ジルコニウムガスを生成し、その塩化ジルコニウムガスを反応装置内部に設置されたジルコニウム回収部に凝縮して回収する。
【0037】
また、塩化物ガスとして塩化ホウ素と塩化ケイ素ガスを使用する。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、ジルコニウムを含む使用済燃料を、核燃料物質と、ジルコニウムと、他の核分裂生成物に分離することができる
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例1に係る処理装置30の断面の模式図。
【図2】実施例1の処理装置30の各部とその機能、および各種物質の状態を纏めた図。
【図3】本発明の実施例2に係る処理装置31の断面の模式図。
【図4】実施例2の処理装置31の各部とその機能、および各種物質の状態を纏めた図。
【図5】本発明の実施例3に係る処理装置32の断面の模式図。
【図6】実施例3の処理装置32の各部とその機能、および各種物質の状態を纏めた図。
【図7】本発明の実施例4に係る処理装置32の断面の模式図。
【図8】実施例4の処理装置32の各部とその機能、および各種物質の状態を纏めた図。
【図9】混合物3とフッ素ガス4の反応により生成されるフッ化物を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明ではジルコニウムと使用済燃料の混合物を、ウランとジルコニウムと核分裂生成物に分離する方法として、ジルコニウム化合物の昇華温度を利用する。昇華温度以上の温度環境と、昇華温度以下の温度環境を処理装置内に作ることで、ウランとジルコニウムと核分裂生成物を分離する。
【0041】
具体的には、ジルコニウム化合物としてフッ化ジルコニウムの昇華点(600℃)が不揮発性核分裂生成物の沸点に比べて低いことに着目した。この手法について図1、図3、図5の実施例で説明する。
【0042】
2つ目の方法では、ジルコニウム化合物として塩化ジルコニウム(ZrCl)の昇華点(331℃)がZrFの昇華点よりも低いことに着目した。この手法について図7の実施例で説明する。
【0043】
以下、本発明の実施形態の一例を図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0044】
本発明では、燃料被覆管のジルコニウムと混合した使用済燃料を処理する。ここで、本発明で処理の対象とするジルコニウムと混合した使用済燃料とは、例えば裁断された燃料集合体であり、あるいは苛酷事故により溶融した燃料集合体である。
【0045】
この実施例1は、ジルコニウム化合物としてフッ化ジルコニウムの昇華点(600℃)が不揮発性核分裂生成物の沸点に比べて低いことに着目したものである。
【0046】
図1は本発明の実施例1に係る処理装置30の断面の模式図である。処理装置30は、例えばフレーム炉1で形成され、その内部にジルコニウム回収部2が、下部に固体貯留室20が設置された構成となっている。
【0047】
フレーム炉1は円筒の形状をしており、上部からコリウムなどの混合物(燃料被覆管のジルコニウムと混合した使用済燃料)3と、フッ素ガス4を供給する。また、下部に不揮発性フッ化核分裂生成物Cを回収し貯留する固体貯留室20を備える。固体貯留室20には、六フッ化ウランUFガスAと揮発性フッ化核分裂生成物Bを回収する通気口21を有している。
【0048】
フレーム炉1の外周には、フレーム炉1の内面が200℃以上になるように加温できる外部ヒーター22が備え付けられている。ジルコニウム回収部2は例えば筒状の形状をしており、フレーム炉1の内面を覆うように設置されている。また、ジルコニウム回収部2は温度調整が可能な内部ヒーター(図示せず)を有している。
【0049】
次に、ジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法の手順を述べる。フレーム炉1は外部ヒーター22により200℃以上に加温されている。また、ジルコニウム回収部2の温度を図示せぬ内部ヒーターにより200〜550℃にしておく。この温度条件の下で、フレーム炉1の上部よりジルコニウムを含む使用済燃料(以下単に混合物という)3とフッ素ガス4を供給する。混合物3とフッ素ガス4は、反応熱を発して急速に反応する。この時、反応熱により高温の反応場であるフレーム5が形成される。フレーム5の温度は1200〜1600℃である。
【0050】
この温度条件において、フレーム炉1内での混合物3とフッ素ガス4の反応により、図9に示されるフッ化物が生成される。図9には、左からフッ化物の種類(分類)101、フッ化物の化学式102、沸点103を記載している。またフッ化物の種類101としては、フッ化物の成分が主に核燃料物質であるウランのフッ化物A、揮発性フッ化核分裂生成物B、不揮発性フッ化核分裂生成物C、被覆管の主成分であるジルコニウムの化合物(フッ化ジルコニウム)Dに分類できる。
【0051】
ここで、各種類でのフッ化物の化学式102並びにその沸点103は図示したとおりであり、詳細な説明を省略するが、要するに分類されたフッ化物の種類101ごとに沸点103が顕著に相違する。
【0052】
この結果、沸点が低い核燃料物質A(UF)と、揮発性FPフッ化物(B)は、フレーム炉1の内部では凝縮せず、下部の固体貯留室20に設けられた通気口21から気体として回収される。回収した核燃料物質A(UF)と揮発性フッ化核分裂生成物(B)は、ウラン精製工程で処理して高純度のUFを得て、再び核燃料物質として使用することもできる。また、ウラン精製工程として、例えば吸着材(フッ化ナトリウムやフッ化マグネシウム等)が充填された吸着塔へ核燃料物質A(UF)と、揮発性FPフッ化核分裂生成物(B)を流通させて揮発性フッ化核分裂生成物を吸着材に吸着させる方法がある。
【0053】
一方、フッ化ジルコニウムD(ZrF)は、高温のフレーム5において昇華し、一時的にガス状となる。ZrFガスは、フレーム炉1内に拡散し、そしてフレーム5よりも低温のジルコニウム回収部2へ近づくと冷却される。ZrFガスは、ここで固体として凝縮して、ジルコニウム回収部2に付着する。
【0054】
最後に、不揮発性フッ化核分裂生成物Cに分類されるフッ化物についてみると、このうち沸点が高い(2000度台)YF、BaF、SmF、SrFは、フレーム5において固体のままであり、そのままフレーム炉1の下部に設けられた固体貯留室2へ落下して回収される。
【0055】
また不揮発性フッ化核分裂生成物Cのうち、沸点が800度から1400度台であるSnF、CsF、RbFは、その一部がフレーム5において揮発すると考えられる。しかし、フッ化ジルコニウムD(ZrF)の昇華点(600度)よりも沸点が高いため、ジルコニウム回収部2で回収される量は少ない。つまり、フレーム5で揮発したSnF、CsF、RbFは、ジルコニウム回収部2に近づくに従い温度環境が低下し、その昇華点(例えばSnFでは850度)以下となったところで固体になり落下してしまうので、ジルコニウム回収部2にまで到達することは少ないと考えられる。
【0056】
そのため、SnF、CsF、RbFは、最終的には凝縮してフレーム炉1の下部に設けられた固体貯留室2へ落下して回収されると考えられる。なお、フレーム炉1の下部の固体貯留室20で回収された不揮発性フッ化核分裂生成物(C)は高温加水分解により酸化物に転換された後、ガラス固化処理される。
【0057】
以上の手順により混合物3は、ウラン(A)とジルコニウム(D)と核分裂生成物(B,C)に大別される。なお、ジルコニウム回収部2に回収されたZrFは、フレーム炉1を開封してジルコニウム回収部2を外部に取り出した後、機械的に剥ぎ取ることで個別に回収する。もしくはジルコニウム回収部2を600℃以上に加熱して、付着しているZrFを揮発させて分離してもよい。もしくは、後述する塩化物ガス(例えばBClやSiCl)を使用する方法、つまりフレーム炉1に塩化物ガスを供給してZrFをZrClに転換し、350℃以上で揮発して回収してもよい。
【0058】
図2は、図1の処理装置30の各部(フレーム5、ジルコニウム回収部2、固体貯留室20)とその機能、および各部における各種物質の状態を纏めたものである。この図は、左側から処理装置30の各部201、各部における各種物質の状態202、各部の機能203を記述している。
【0059】
これによれば、フレーム5内では混合物3(ジルコニウムを含む使用済燃料)は、核燃料物質A,揮発性フッ化核分裂生成物B,不揮発性フッ化核分裂生成物C,フッ化ジルコニウムDとして存在する。核燃料物質Aと揮発性フッ化核分裂生成物Bとフッ化ジルコニウムDと一部の不揮発性フッ化核分裂生成物Cはガス状であり、一部の不揮発性フッ化核分裂生成物Cは固体である。この状態は、フレーム5においてジルコニウム化合物(フッ化物)の昇華温度以上の温度環境としたことで実現されている。
【0060】
次にジルコニウム回収部2では、フッ化ジルコニウムDが固体として吸着される。この状態は、ジルコニウム回収部2においてジルコニウム化合物(フッ化物)の昇華温度以下の温度環境としたことで、実現されている。
【0061】
最後に固体貯留室20では、ガス状の核燃料物質Aと揮発性フッ化核分裂生成物Bが通気口21から取り出される。また途中段階が気体、固体のいずれの状態であっても最終的に不揮発性フッ化核分裂生成物Cが固体として落下し、固体貯留室20に貯留される。
【0062】
このように、本発明ではジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境と、ジルコニウム化合物の昇華温度以下の温度環境を処理装置内に作ることで、混合物3をウラン(A)とジルコニウム(D)と核分裂生成物(B,C)に大別することを可能にしている。
【実施例2】
【0063】
図3は、他の実施形態に係る処理装置31の断面の模式図である。図3に示されるフレーム炉型の処理装置31では、ジルコニウム回収部2が固体貯留室2内に設置されている。この例では特にジルコニウム回収部2が、六フッ化ウランUFガスAと揮発性フッ化核分裂生成物Bを回収する通気口21の近傍に設置されている。
【0064】
この実施例2も、ジルコニウム化合物としてフッ化ジルコニウムの昇華点(600℃)が不揮発性核分裂生成物の沸点に比べて低いことに着目したものである。
【0065】
この構造の処理装置31では、第1段階としてフレーム炉1は外部ヒーター22により200℃以上に加温されている。但し、ジルコニウム回収部2の温度は常温のままとされている。この状態で、フレーム炉1の上部よりジルコニウムを含む使用済燃料3とフッ素ガス4を供給する。混合物3とフッ素ガス4は、反応熱を発して急速に反応する。この時、反応熱により高温の反応場であるフレーム5が形成される。フレーム5の温度は1200〜1600℃である。
【0066】
この温度条件において、フレーム炉1内での混合物3とフッ素ガス4の反応により、図9に示すフッ化物が生成される。具体的にはフレーム5の部分で、気体状のウランのフッ化物Aと気体状の揮発性フッ化核分裂生成物Bと気体状のフッ化ジルコニウムDと、固体状の不揮発性フッ化核分裂生成物Cに分類される。
【0067】
本処理装置31を用いて混合物3をフッ素ガス4と反応させる場合、これらの物質のうちUFガスAと不揮発性フッ化核分裂生成物Bは、図1と同様に気体として通気口21から回収される。また、不揮発性フッ化核分裂生成物Cも、図1と同様に最終的にはフレーム炉1の下部に設けられた固体貯留室2へ落下して回収される。
【0068】
これに対しこの処理方式では、フッ化ジルコニウムD(ZrF)は、フレーム5で一時的に揮発するが、フレーム炉1の炉壁の近傍へ拡散するに従って冷却されて凝縮し、不揮発性フッ化核分裂生成物Cとともにフレーム炉1の下部に設けられた固体貯留室2へ落下し、固体として回収される。
【0069】
このままでは、フッ化ジルコニウムD(ZrF)と不揮発性フッ化核分裂生成物Cは区別されないまま、フレーム炉1の下部に設けられた固体貯留室2へ落下貯留することになるので、第2段階ではこれを分離する。
【0070】
具体的には、混合物3とフッ素ガス4の供給を停止した後、ジルコニウム回収部2の温度が、それ以前には常温であったものを、600℃以下程度まで加温する。次いで、固体として回収されたフッ化ジルコニウムZrFと不揮発性核分裂生成物Cを600〜800℃に加温する。するとフッ化ジルコニウムZrFは揮発し、ジルコニウム回収部2において冷却されて凝縮し、不揮発性核分裂生成物Cと分離される。
【0071】
図4は、図3の処理装置31の各部(フレーム5、ジルコニウム回収部2、固体貯留室20)とその機能、および各部における各種物質の状態を纏めたものである。この図は、左側から処理装置31の各部301、各部における各種物質の状態302、各部の機能303を記述している。
【0072】
これによれば、フレーム5内では混合物3(ジルコニウムを含む使用済燃料)は、核燃料物質A,揮発性フッ化核分裂生成物B,不揮発性フッ化核分裂生成物C,フッ化ジルコニウムDとして存在する。核燃料物質Aと揮発性フッ化核分裂生成物Bとフッ化ジルコニウムDと一部の不揮発性フッ化核分裂生成物Cはガス状であり、一部の不揮発性フッ化核分裂生成物Cは固体である。この状態は、フレーム5においてジルコニウム化合物(フッ化物)の昇華温度以上の温度環境としたことで実現されている。
【0073】
このとき固体貯留室20では、ガス状の核燃料物質Aと揮発性フッ化核分裂生成物Bが通気口21から取り出される。また途中段階が気体、固体のいずれの状態であっても最終的に不揮発性フッ化核分裂生成物Cが固体として落下し、固体貯留室20に貯留される。同時にフッ化ジルコニウムDも気体状態から固体に変化して落下し、固体貯留室20に貯留される。
【0074】
第2段階では、混合物3とフッ素ガス4の供給を停止した後、ジルコニウム回収部2の温度が、それ以前には常温であったものを、600℃以下程度まで加温する。次いで、固体として回収されたZrFと不揮発性核分裂生成物Cを600〜800℃に加温する。
【0075】
このとき、固体として回収されたZrFと不揮発性核分裂生成物Cは、再度ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境に置かれることになり、ZrF(D)が昇華し、その後ジルコニウム回収部2において、フッ化ジルコニウムDが吸着される。この吸着状態は、ジルコニウム回収部2においてジルコニウム化合物の昇華温度以下の温度環境としたことで、実現されている。
【0076】
図4を図2と比較すると、図4ではジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境が2回構築されているがいずれの場合にも、本発明ではジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境と、ジルコニウム化合物の昇華温度以下の温度環境を処理装置内に作ることで、混合物3をウラン(A)とジルコニウム(D)と核分裂生成物(B,C)に大別することを可能にしている。
【実施例3】
【0077】
以下、本発明の実施形態の他の一例を図5に基づいて説明する。図5は本発明の処理装置32の断面図である。処理装置32は、バッチ式フッ化装置10で形成され、その内部にジルコニウム回収部2、台座11が設置された構成となっている。
【0078】
この実施例3も、ジルコニウム化合物としてフッ化ジルコニウムの昇華点(600℃)が不揮発性核分裂生成物の沸点に比べて低いことに着目したものである。
【0079】
バッチ式フッ化装置10は円筒の形状をしており、その外部にはバッチ式フッ化装置10の内面温度を上昇できる外部ヒーター22が備え付けられている。
【0080】
バッチ式フッ化装置10の内部には、コリウムなどの混合物(燃料被覆管のジルコニウムと混合した使用済燃料)3を乗せる台座11が備えられている。台座11には温度調整が可能な内部ヒーター(図示せず)が備え付けられており、コリウムなどの混合物3を加熱する。
【0081】
バッチ式フッ化装置10の底面にはフッ素ガス4を供給する通気口が備えられ、上部にはUFガスAと揮発性フッ化核分裂生成物Bを回収する通気口21が備えられている。
【0082】
ジルコニウム回収部2は、筒状の形状をしており、バッチ式フッ化装置10の内面を覆うように設置されている。また、ジルコニウム回収部2は温度調整が可能な内部ヒーター(図示せず)を有している。
【0083】
次に、ジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法の手順を述べる。バッチ式フッ化装置10の内部の台座11の上に混合物3を置く。この状態で、処理装置32の各部を以下の温度環境とする。
【0084】
まず、バッチ式フッ化装置10の外部ヒーター22により、バッチ式フッ化装置10の面温度を200℃以上とする。また、台座11の図示せぬ内部ヒーターにより、台座11上の混合物を600〜800℃に加温する。また、ジルコニウム回収部2の温度を図示せぬ内部ヒーターにより200〜550℃にしておく。
【0085】
図3の場合に、上記の温度環境条件が、図1のそれと同じであることが明らかである。台座11上の混合物の温度600〜800℃は、ジルコニウム化合物の昇華温度以上であり、ジルコニウム回収部2の温度200〜550℃は、ジルコニウム化合物の昇華温度以下である。このため、この温度条件化で次にフッ素ガス4をバッチ式フッ化装置10へ供給すると、混合物3とフッ素ガス4の反応により、実施例1などと同様に図9に示されるフッ化物が生成される。
【0086】
図9のフッ化物のうち、六フッ化ウランUF(A)と、揮発性フッ化核分裂生成物Bの沸点は低いため、バッチ式フッ化装置10の内部では凝縮せず、気体として通気口21から回収される。その後の処理については図1と同様に、回収した六フッ化ウランUF(A)と、揮発性フッ化核分裂生成物Bをウラン精製工程で処理して高純度の六フッ化ウランUFを得て、再び核燃料物質として使用することもできる。
【0087】
フッ化ジルコニウムD(ZrF)は、混合物3とフッ素ガス4の反応部(台座11の上)において一時的にガスとなる。フッ化ジルコニウムZrFガスは拡散してジルコニウム回収部2へ接触すると、固体として凝縮する。尚この場合には、不揮発性フッ化核分裂生成物Cは沸点が高く、固体のまま台座11の上に残る。
【0088】
上記処理後、フッ素ガス4の供給を停止した後にバッチ式フッ化装置10を開封し、不揮発性フッ化核分裂生成物Cが回収される。また図1と同様に不揮発性フッ化核分裂生成物は高温加水分解により酸化物に転換された後、ガラス固化処理される。
【0089】
以上の手順によりジルコニウムを含む使用済燃料は、ウランとジルコニウムと核分裂生成物に大別される。図1と同様にジルコニウム回収部2に回収されたフッ化ジルコニウムZrF(D)は、バッチ式フッ化装置10を開封してジルコニウム回収部2を外部に取り出した後、機械的に剥ぎ取ることで個別に回収される、もしくは加熱により揮発させて回収される。もしくは、塩化物ガス(例えばBClやSiCl)を使用する方法で、ZrClとして揮発して回収される。
【0090】
図6は、図5の処理装置32の各部(台座11、ジルコニウム回収部2、通気口21)とその機能、および各部における各種物質の状態を纏めたものである。この図は、左側から処理装置32の各部401、各部における各種物質の状態402、各部の機能403を記述している。
【0091】
これによれば、台座11上の混合物3(ジルコニウムを含む使用済燃料)は、核燃料物質A,揮発性フッ化核分裂生成物B,不揮発性フッ化核分裂生成物C,フッ化ジルコニウムDとして存在する。核燃料物質Aと揮発性フッ化核分裂生成物Bとフッ化ジルコニウムDと一部の不揮発性フッ化核分裂生成物Cはガス状であり、一部の不揮発性フッ化核分裂生成物Cは固体である。この状態は、台座11においてジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境としたことで実現されている。
【0092】
次にジルコニウム回収部2では、フッ化ジルコニウムDが吸着される。この状態は、ジルコニウム回収部2においてジルコニウム化合物の昇華温度以下の温度環境としたことで、実現されている。
【0093】
最後にガス状の核燃料物質Aと揮発性フッ化核分裂生成物Bが通気口21から取り出される。また不揮発性フッ化核分裂生成物Cが固体として台座11上に残る。
【0094】
このように、本発明の図5の実施例でもジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境と、ジルコニウム化合物の昇華温度以下の温度環境を処理装置内に作ることで、混合物3をウラン(A)とジルコニウム(D)と核分裂生成物(B,C)に大別することを可能にしている。
【0095】
以上、実施例1,2,3について説明した。これらの事例では混合物のフッ化装置としてフレーム炉方式もしくはバッチ方式を用いる。そして、ジルコニウム化合物としてフッ化ジルコニウムの昇華点(600℃)が不揮発性核分裂生成物の沸点に比べて低いことに着目した方式である。
【0096】
これらの処理装置構成は一部相違するところもあるが、要するに内部に200〜550℃に保温されたジルコニウム回収部を設けておく。これによりジルコニウム化合物としてフッ化ジルコニウムの昇華点(600℃)以下の温度環境を作っている。
【0097】
他方において、フッ素ガスと混合物の反応部の温度を600℃以上とする。この反応部は、フレームであり、台座上である。これによりジルコニウム化合物としてフッ化ジルコニウムの昇華点(600℃)以上の温度環境を作っている。このフッ化装置を用いてフッ素ガスと混合物を反応させた場合、反応部ではUFとZrF、揮発性フッ化核分裂生成物が揮発する。
【0098】
反応部で揮発したZrFはジルコニウム回収部では凝縮して回収される。UFと揮発性フッ化核分裂生成物はジルコニウム回収部の温度では凝縮しないため、気体として分離回収される。不揮発性フッ化核分裂生成物は、フレーム炉方式の場合はフレーム炉下部に落下することで固体として回収される。
【0099】
なお、バッチ方式の場合は混合物を置いた場所に残渣として残ることで固体として回収される。UFと揮発性フッ化核分裂生成物は、例えば公知の方法である吸着材に揮発性フッ化核分裂生成物を吸着させる方法や、精留する方法で分離可能である。
【実施例4】
【0100】
以下、本発明の実施形態の他の一例を図7に基づいて説明する。図7は、図5の処理装置32における一部処理のあとに、同処理装置32を用いて第2段の処理を実施する。
【0101】
この実施例では、ジルコニウム化合物として塩化ジルコニウム(ZrCl)の昇華点(331℃)がZrFの昇華点よりも低いことに着目した。
【0102】
図7上部に示した第1段処理では、図5で説明した処理の一部を実施する。説明が重複するが、バッチ式フッ化装置10の内部の台座11の上に混合物3を置く。この状態で、処理装置32各部を以下の温度環境とする。
【0103】
まず、バッチ式フッ化装置10の外部ヒーター22により、バッチ式フッ化装置10面温度を200℃以上とする。また台座11上の混合物3の温度を300〜600℃に加温する。また、ジルコニウム回収部2の温度を図示せぬ内部ヒーターにより200〜300℃にしておく。
【0104】
次にフッ素ガス4をバッチ式フッ化装置10へ供給する。混合物3とフッ素ガス4の反応により、図9に示されるフッ化物が生成される。
【0105】
図9のフッ化物のうち、六フッ化ウランUF(A)と揮発性フッ化核分裂生成物Bの沸点は低いため、バッチ式フッ化装置10の内部では凝縮せず、気体として通気口21から回収される。六フッ化ウランUF(A)と揮発性フッ化核分裂生成物Bをウラン精製工程で処理して高純度の六フッ化ウランUFを得て、再び核燃料物質として使用することもできる。
【0106】
なお、台座11上の混合物3の温度は300〜600℃に加温された状態なので、フッ化ジルコニウムD(ZrF)は昇華することなく、フッ化核分裂生成物Cとともに、固体として台座11の上に残っている。図7上部に示した第1段処理ではここまでの処理を実施する。
【0107】
図7下部に示した第2段処理では、この状態でフッ素ガス4の供給を停止し、次に塩化物ガス12をバッチ式フッ化装置10へ供給する。この時、台座11の図示せぬ内部ヒーターにより台座11上の固体を350℃以上に加温しておく。塩化物ガス12としては、例えばBClやSiClを使用する。
【0108】
フッ化ジルコニウムD(ZrF)は塩化物ガス12と反応し、ジルコニウムの塩化物F(ZrCl)を生成する。ジルコニウムの塩化物F(ZrCl)と塩化物ガス12の反応部の温度は350℃以上であるので、生成したジルコニウムの塩化物F(ZrCl)は揮発する。
【0109】
ジルコニウムの塩化物F(ZrCl)ガスは拡散してジルコニウム回収部2へ接触すると、固体として凝縮する。不揮発性核分裂生成物Cは一部が塩化物ガスと反応するものの、ほとんどが不揮発性核分裂生成物化合物Cとして台座11の上に残る。
【0110】
反応で生成した廃塩化物ガス14と廃フッ化物ガス15は回収後、冷却により凝縮回収するか、活性アルミナ等の吸着材に吸着させて処理する。上記処理後、塩化物ガス12の供給を停止した後にバッチ式フッ化装置10を開封し、不揮発性核分裂生成物化合物Gが回収される。他の実施例と同様に不揮発性核分裂生成物化合物Gは高温加水分解により酸化物に転換された後、ガラス固化処理される。
【0111】
以上の手順により混合物は、ウランとジルコニウムと核分裂生成物に大別される。他の実施例と同様にジルコニウム回収部2に回収されたジルコニウムの塩化物F(ZrCl)は、バッチ式フッ化装置10を開封してジルコニウム回収部2を外部に取り出した後、機械的に剥ぎ取ることで個別に回収される、もしくは加熱により揮発させて回収される。
【0112】
図7で説明した本発明の実施例は、他の実施例とは相違する部分がある。これは2段階に処理するという点もさることながら、他の実施例ではジルコニウム化合物としてフッ化ジルコニウムの昇華温度(600度)を利用して昇華(気体化)し、逆にこの温度以下とすることで固体化させていた。
【0113】
この点に関し、図7の実施例では、ジルコニウム化合物として塩化ジルコニウム(ZrCl)の昇華温度(331度)を利用した。いずれの場合であれ、本発明ではジルコニウム化合物の昇華温度の温度環境を作ることで昇華させ、あるいは固体化することで分離を行ったものである。
【0114】
図8は、図7の処理装置32の各部(台座11、ジルコニウム回収部2、通気口21)とその機能、および各部における各種物質の状態を纏めたものである。この図は、左側から処理装置32の各部501、各部における各種物質の状態502、各部の機能503を記述している。
【0115】
これによれば、台座11上の混合物3(ジルコニウムを含む使用済燃料)は、核燃料物質A,揮発性フッ化核分裂生成物B,不揮発性フッ化核分裂生成物C,フッ化ジルコニウムDとして存在する。ここでは、核燃料物質Aと揮発性フッ化核分裂生成物Bがガス状であり、フッ化ジルコニウムDと不揮発性フッ化核分裂生成物Cは固体である。
【0116】
ガス状の核燃料物質Aと揮発性フッ化核分裂生成物Bは通気口21から取り出される。ここまでがフッ素ガスを用いて化合物を形成する第一段階の処理である。
【0117】
第二段階の処理では、台座11上において塩素ガスを用いて化合物を形成する。この結果、フッ化ジルコニウムDは塩化ジルコニウムFに変化する。このときに台座11上に形成される温度環境(350度以上)は、塩化ジルコニウムFの昇華温度(331度)以上であり、塩化ジルコニウムFはガス化される。このときの台座上の温度環境が、ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境となる。
【0118】
またジルコニウム回収部2では、塩化ジルコニウムFの昇華温度(331度)以下とされているので、塩化ジルコニウムFが吸着される。この状態は、ジルコニウム回収部2においてジルコニウム化合物の昇華温度以下の温度環境としたことで、実現されている。
【0119】
このように、本発明の図7の実施例でもジルコニウム化合物(塩化物)の昇華温度以上の温度環境と、ジルコニウム化合物の昇華温度以下の温度環境を処理装置内に作ることで、混合物3をウラン(A)とジルコニウム(D)と核分裂生成物(B,C)に大別することを可能にしている。
【0120】
以上説明した実施例では、混合物のフッ化装置としてバッチ方式を用い、ジルコニウム化合物として塩化ジルコニウム(ZrCl)の昇華点(331℃)がZrFの昇華点よりも低いことに着目した。
【0121】
そして、フッ化装置内に200〜300℃に保温されたジルコニウム回収部を設けておく。フッ素ガスと混合物の反応部の温度を300℃以上とする。この図7方式は、図1などの方式よりも、フッ化反応の温度を低くできる利点がある。
【0122】
このフッ化装置を用いてフッ素ガスと混合物を反応させた場合、反応部ではUFと揮発性フッ化核分裂生成物が揮発する。UFと揮発性フッ化核分裂生成物はジルコニウム回収部の温度では凝縮しないため、気体として分離回収される。
【0123】
このとき、フッ化装置の内部にはZrFと不揮発性フッ化核分裂生成物が固体として残っている。UFと揮発性フッ化核分裂生成物は、例えば吸着材に揮発性フッ化核分裂生成物を吸着させることで分離可能である。
【0124】
次に、フッ化装置内に塩化物ガスを供給する。塩化物ガスの種類としては塩化ホウ素(BCl)と塩化ケイ素(SiCl)がある。塩化物フッ素ガスとZrF・揮発性フッ化核分裂生成物の反応部の温度を350〜600℃とする。塩化物ガスを供給するとZrFと反応してZrClが生成する。反応部の温度はZrClの昇華点以上なのでZrClは揮発し、ジルコニウム回収部で凝縮回収される。
【符号の説明】
【0125】
1:フレーム炉
2:ジルコニウム回収部
3:混合物(燃料被覆管のジルコニウムと混合した使用済燃料)
4:フッ素ガス
5:フレーム
10:バッチ式フッ化装置
11:台座
12:塩化物ガス
20:固体貯留室
21:通気口
22:外部ヒーター
30,31,32:処理装置
101,201,301,401,501:フッ化物の種類(分類)
102,202,302,402,502:フッ化物の化学式
103,203,303,403,503:沸点
A:六フッ化ウランUFガス
B:揮発性フッ化核分裂生成物
C:不揮発性フッ化核分裂生成物
D:フッ化ジルコニウム(ZrF
F:塩化ジルコニウム(ZrCl

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウムを含む使用済燃料を、核燃料物質と、ジルコニウムと、核分裂生成物に分離するためのジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置において、
ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境を前記処理装置内に得るための加熱手段と、前記ジルコニウム化合物の昇華温度以下の温度環境とされ、揮発したジルコニウム化合物を凝縮して回収するジルコニウム回収部と、前記ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境で残存した個体を貯留する固体貯留部と、気体を回収する為の通気口とを備えたジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置において、
前記加熱手段は、ジルコニウムを含む使用済燃料をフッ素ガスと反応させてフレームを形成させるための第1の加熱手段を含むことを特徴とするジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置において、
前記加熱手段は、ジルコニウムを含む使用済燃料をフッ素ガスと反応させてフレームを形成させるための第1の加熱手段と、前記固体貯留部の固体を前記ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度に加熱する為の第2の加熱手段とを備えることを特徴とするジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載のジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置において、
前記加熱手段は、ジルコニウムを含む使用済燃料を載置する台座を備え、台座上でフッ素ガスと反応させるときにジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境を得るための第3の加熱手段を備えることを特徴とするジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載のジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置において、
前記加熱手段は、ジルコニウムを含む使用済燃料を載置する台座を備え、台座上でフッ素ガスと反応させた後に、塩素ガスと反応させるときにジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境を得るための第4の加熱手段を備えることを特徴とするジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載のジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置において、
ジルコニウム化合物は、フッ化ジルコニウムであることを特徴とするジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載のジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置において、
ジルコニウム化合物は、塩化ジルコニウムであることを特徴とするジルコニウムを含む使用済燃料の処理装置。
【請求項8】
ジルコニウムを含む使用済燃料を、核燃料物質と、ジルコニウムと、核分裂生成物に分離するためのジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法において、
前記ジルコニウムを含む使用済燃料を、ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境下で処理し、前記ジルコニウム化合物の昇華温度以下の温度環境下で揮発したジルコニウム化合物を凝縮して回収し、前記ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境で残存した個体と、気体に分けて回収する使用済燃料の処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載のジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法において、
前記ジルコニウムを含む使用済燃料について、ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境下での第1回目の処理により気体と固体に分離し、第1回目の処理後の個体について、ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境下で第2回目の処理を行い、前記ジルコニウム化合物の昇華温度以下の温度環境下で揮発したジルコニウム化合物を凝縮して回収し、前記ジルコニウム化合物の昇華温度以上の温度環境で残存した個体と、気体に分けて回収する使用済燃料の処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載のジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法において、
前記ジルコニウムを含む使用済燃料について、フッ素ガスと反応させて気体と固体に分離し、分離後の個体について、塩化ジルコニウムの昇華温度以上の温度環境下で塩素ガスと反応させ、前記塩化ジルコニウムの昇華温度以下の温度環境下で揮発した塩化ジルコニウムを凝縮して回収し、前記塩化ジルコニウムの昇華温度以上の温度環境で残存した個体と、気体に分けて回収する使用済燃料の処理方法。
【請求項11】
請求項8に記載のジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法において、
ジルコニウム化合物は、フッ化ジルコニウムであることを特徴とするジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法。
【請求項12】
ジルコニウムを含む使用済燃料を、核燃料物質と、ジルコニウムと、核分裂生成物に分離するためのジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法において、
燃料被覆管のジルコニウムと使用済燃料を、フッ素ガスと600℃以上の温度で反応させることでフッ化ジルコニウムガスを生成し、そのフッ化ジルコニウムガスを反応装置内部に設置されたジルコニウム回収部に凝縮して回収することを特徴とするジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法。
【請求項13】
請求項12に記載のジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法において、
ジルコニウム回収部に回収したフッ化ジルコニウムと塩化物ガスを反応させて塩化ジルコニウムを生成し、その塩化ジルコニウムを350℃以上で揮発させることでジルコニウム回収部からジルコニウムを分離することを特徴としたジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法。
【請求項14】
請求項12に記載のジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法において、
燃料被覆管のジルコニウムと使用済燃料を、フッ素ガスと300〜600℃の温度で反応させて使用済燃料中のウランをUFとして回収した後、固体として残ったフッ化ジルコニウムを350℃以上で塩化物ガスと反応させて塩化ジルコニウムガスを生成し、その塩化ジルコニウムガスを反応装置内部に設置されたジルコニウム回収部に凝縮して回収することを特徴とした使用済燃料の処理方法。
【請求項15】
請求項13〜14に記載のジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法において、
塩化物ガスとして塩化ホウ素と塩化ケイ素ガスを使用することを特徴としたジルコニウムを含む使用済燃料の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−101066(P2013−101066A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245285(P2011−245285)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)