説明

ジルコニウムジアラルキル錯体及びそれを用いたアリールアレン類の製造方法

【課題】本発明は、新規なジルコニウム錯体を用いて、フィッシャー・トロプシュ反応を穏和な条件下で進行させて、効率よく所望のアレン化合物を高選択的に製造する方法を提供する。また、本発明は、前記ジルコニウム錯体、その製造方法、該ジルコニウム錯体の配位子の製法を提供する。
【解決手段】一般式(8):
【化1】


(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を示す)
で表されるアリールアレン化合物の製造方法であって、一般式(6):
【化2】


(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基を示し、Arは前記に同じ)
で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体に、一酸化炭素を反応させることを特徴とするアリールアレン化合物の製造方法等に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ジルコニウムジアラルキル錯体を用いた、アリールアレン類を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィッシャー・トロプシュ反応は、合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)から炭化水素を製造する反応であり、気体分子から液体分子への変換(Gas to Liquid)技術として有機合成上極めて重要な反応として位置づけられる(非特許文献1)。
【0003】
しかし、フィッシャー・トロプシュ反応においては、得られる生成物が炭化水素の混合物となるため、目的物を選択的に得ることが難しく、単一の炭化水素を選択的に合成する方法は未だ確立されていない。また、フィッシャー・トロプシュ反応は、不均一系反応(heterogeneous reaction)であり、高温、高圧等の過酷な反応条件が必要であるため、使用できる装置が限定され、運転に際し電力を大量に消費するという問題点がある。そのためより穏和な条件で反応が進行し、目的物を選択的に得ることができる製造方法を見出すことができれば好都合である。
【0004】
また、金属錯体分子を用いた一酸化炭素の活性化やフィッシャー・トロプシュ反応に関連する研究がいくつか報告されている。例えば、一酸化炭素の水素化、脱酸素化、炭素−炭素結合形成に関する報告例がある(非特許文献2、3)。しかし、金属錯体分子を用いて水素と一酸化炭素から炭化水素に変換した例は、これまで知られていない。
【0005】
ところで、アレン化合物はその特異な化学構造、化学反応性等から、種々の有機化合物の重要な合成原料となっている。かかるアレン化合物を、簡便、高収率かつ選択的に製造する方法が確立されれば、極めて有用な有機合成上のツールとなり得る。
【非特許文献1】F. Fischer and H. Tropsch, Ber. 56, 2428 (1923)
【非特許文献2】R. E. LaPointe, P. T. Wolczanski, and J. F. Mitchell, J. Am. Chem. Soc. 108, 6382 (1986).
【非特許文献3】R. Toreki, R. E. LaPointe, and P. T. Wolczanski, J. Am. Chem. Soc. 109, 7558 (1987).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規なジルコニウム錯体を用いて、フィッシャー・トロプシュ反応(一酸化炭素の水素化、脱酸素化、炭素−炭素結合形成、及び炭化水素の生成)を穏和な条件下で進行させて、効率よく所望のアレン化合物を高選択的に製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、前記ジルコニウム錯体、その製造方法、該ジルコニウム錯体の配位子の製造方法を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定のビスフェノール化合物(3)を配位子とするジルコニウムジアラルキル錯体(5)に、水素を反応させてジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体(6)を得、これに一酸化炭素を反応させることにより、ジルコニウムオキソ錯体(7)と共にアリールアレン化合物(8)が高収率かつ高選択的に生成することを見出した。かかる知見に基づき、本発明者らは、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の、ジルコニウムジアラルキル錯体、ジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体、それらの製造方法、前記錯体の配位子の製造方法、前記錯体を用いたアリールアレン化合物の製造方法等を提供する。
【0010】
項1.一般式(8):
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を示す)
で表されるアリールアレン化合物の製造方法であって、一般式(6):
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基を示し、Arは前記に同じ)
で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体に、一酸化炭素を反応させることを特徴とするアリールアレン化合物の製造方法。
【0015】
項2.一般式(6):
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基、Arは置換されていてもよいアリール基を示す)
で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体の製造方法であって、一般式(5):
【0018】
【化4】

【0019】
(但し、Ar、R、R、R及びRは前記に同じ)
で表されるジルコニウムジアラルキル錯体に水素を反応させることを特徴とするジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体の製造方法。
【0020】
項3.一般式(8):
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を示す)
で表されるアリールアレン化合物の製造方法であって、一般式(5):
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基を示し、Arは前記に同じ)
で表されるジルコニウムジアラルキル錯体に、水素を反応させた後、続いて一酸化炭素を反応させることを特徴とするアリールアレン化合物の製造方法。
【0025】
項4.一般式(5):
【0026】
【化7】

【0027】
(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基、Arは置換されていてもよいアリール基を示す)
で表されるジルコニウムジアラルキル錯体の製造方法であって、一般式(4):
Zr(CHAr) (4)
(但し、Arは前記に同じ)
で表されるテトラアラルキル化合物と一般式(3):
【0028】
【化8】

【0029】
(但し、R、R、R及びRは前記に同じ)
で表されるビスフェノール化合物を反応させることを特徴とするジルコニウムジアラルキル錯体の製造方法。
【0030】
項5.一般式(3):
【0031】
【化9】

【0032】
(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基を示す)
で表されるビスフェノール化合物の製造方法であって、一般式(1):
【0033】
【化10】

【0034】
(但し、R、R及びRは前記に同じ)
で表されるトリフェノール化合物と、一般式(2):
−OSO (2)
(式中、RはC1−2アルキル基、Rはアリール基、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す)
で表されるアルキル化剤を反応させることを特徴とするビスフェノール化合物の製造方法。
【0035】
項6.一般式(5):
【0036】
【化11】

【0037】
(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基、Arは置換されていてもよいアリール基を示す)
で表されるジルコニウムジアラルキル錯体。
【0038】
項7.一般式(6):
【0039】
【化12】

【0040】
(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基、Arは置換されていてもよいアリール基を示す)
で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体。
【0041】
以下、本発明を詳述する。
I.ビスフェノール化合物(2)の製造
一般式(3)で表されるビスフェノール化合物は、下記式に示すように、一般式(1)で表されるトリフェノール化合物に、一般式(2)で表されるアルキル化剤を反応させて製造できる。
【0042】
【化13】

【0043】
(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基、Rはアリール基、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す)
一般式(1)及び(3)で表される化合物において、Rで示されるC3−4アルキル基としては、iso-プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、そのうちtert−ブチル基が好適である。Rで示されるC1−4アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec−ブチル基又はtert−ブチル基が挙げられ、そのうちメチル基が好適である。Rで示されるC1−4アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec−ブチル基又はtert−ブチル基が挙げられ、そのうちメチル基又はtert−ブチル基が好適である。
【0044】
一般式(2)及び(3)で表される化合物において、Rで示されるC1−2アルキル基としては、メチル基又はエチル基が挙げられ、そのうちメチル基が好適である。
【0045】
一般式(2)で表されるアルキル化剤において、Rで示されるアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基等が挙げられる。Rとしては、トルイル基、特にパラトルイル基が好適である。即ち、一般式(2)で表されるアルキル化剤としては、パラトルエンスルホン酸メチルが好適である。
【0046】
一般式(1)で表されるトリフェノール化合物及び一般式(2)で表されるアルキル化剤は、共に市販されているか又は当業者が容易に製造できる化合物である。
【0047】
上記の一般式(3)で表されるビスフェノール化合物の製造方法を、具体的に説明する。
【0048】
一般式(1)で表されるトリフェノール化合物に、溶媒中、塩基の存在下、一般式(2)で表されるアルキル化剤を反応させて、一般式(3)で表されるビスフェノール化合物を製造できる。
【0049】
溶媒としては、反応に悪影響を与えない溶媒であれば特に限定はなく、例えば、アセトニトリル、エーテル(ジエチルエーテル等)、THF、ジオキサン等の極性有機溶媒、トルエン等の無極性有機溶媒、水等が例示され、これらのうち1種を単独又は2種以上からなる混合溶媒を用いることができる。中でも、アセトニトリルが好適である。
【0050】
塩基としては、無機塩基又は有機塩基のいずれでも良く、一般式(1)で表されるトリフェノール化合物に対し、1〜1.1当量程度を用いればよい。無機塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。中でも、炭酸カリウムが好適である。
【0051】
反応温度は特に限定はなく、例えば室温〜80℃程度であれば良く、必要であれば溶媒の沸点温度で還流させても良い。また、反応時間は特に限定はなく、通常1〜48時間程度であればよい。
【0052】
好適な反応条件としては、一般式(1)で表されるトリフェノール化合物をアセトニトリルに溶解し、これに一般式(1)で表されるトリフェノール化合物に対し1〜1.1当量の炭酸カリウム(即ち、一般式(1)で表されるトリフェノール化合物1モルに対し0.5〜0.55モルの炭酸カリウム)、及び一般式(1)で表されるトリフェノール化合物に対し1〜1.1当量の一般式(2)で表されるアルキル化剤を加えて、加熱還流下12時間程度撹拌する。反応終了後、常法により精製することにより、一般式(3)で表されるビスフェノール化合物を製造できる。より具体的な、実施形態として、実施例1及び2が挙げられる。
【0053】
本発明の製造方法によれば、トリフェノールの中央のフェノール性水酸基のみを選択的にモノアルキル化することができ、目的とする一般式(3)で表されるビスフェノール化合物を、高純度でほぼ定量的に製造することができるという特徴を有している。
【0054】
従来、ビスフェノール化合物の製造方法は、米国特許第3109829号明細書や、V. Bohmer et al., Makromol. Chem., 184, 1793-1806 (1983) に報告例があるが、いずれも反応条件が厳しく、極めて収率が低いものであった。
【0055】
これに対し、本発明の製造方法では、穏和な条件下、ほぼ定量的に高純度のビスフェノール化合物を製造することができるため、極めて有効な合成方法であるといえる。
II.ジルコニウムジアラルキル錯体(5)の製造
一般式(5)で表されるジルコニウムジアラルキル錯体は、下記式に示すように、一般式(4)で表されるテトラアラルキル化合物に、一般式(3)で表されるビスフェノール化合物を反応させて製造できる。
【0056】
【化14】

【0057】
(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を示し、R、R、R及びRは前記に同じ)
一般式(4)及び(5)で表される化合物において、Arで示される置換されていてもよいアリール基のアリール基としては、1〜3環のアリール基が挙げられ、具体的には、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基等が例示される。アリール基の置換基としては、本発明のジルコニウム錯体の製造及びアレン化合物の製造に悪影響を与えない置換基であればよく、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、アリロキシ基(フェノキシ基等)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、シリル基(トリメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等)、シロキシ基(トリメチルシロキシ基、フェニルジメチルシロキシ基、tert−ブチルジメチルシロキシ基等)等が例示される。これらの置換基は、上記のアリール基上に1〜3個有していてもよい。
【0058】
なお、一般式(5)で表されるジルコニウムジアラルキル錯体では、金属(Zr)と配位子との結合状態が、共有結合性又は配位結合性を有するかは明瞭ではないため、金属と配位子との化学結合をすべて単結合で表記している。
【0059】
一般式(4)で表されるテトラアラルキルジルコニウム化合物は、市販されているか又は当業者が容易に製造できる化合物である。例えば、該テトラアラルキルジルコニウム化合物は、U. Zucchini, E. Albizzati, and U. Giannini, J. Organomet. Chem. 26, 357 (1971) 或いは U. Zucchini, U. Giannini, E. Albizzati, and R. D’Angelo, J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1174 (1969)などに従って製造することができる。
【0060】
上記の一般式(5)で表されるジルコニウムジアラルキル錯体の製造方法を、具体的に説明する。
【0061】
一般式(4)で表されるテトラアラルキルジルコニウム化合物に、溶媒中、一般式(3)で表されるビスフェノール化合物を反応させて、一般式(5)で表されるジルコニウムジアラルキル錯体を製造できる。
【0062】
溶媒としては、反応に悪影響を与えない溶媒であれば特に限定はなく、例えば、
エーテル、THF等の極性有機溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の無極性有機溶媒が例示され、これらのうち1種を単独又は2種以上からなる混合溶媒を用いることができる。中でも、トルエンが好適である。
【0063】
反応は、不活性気体(アルゴン、窒素等)中で行うことが好ましい。反応温度は、−40〜30℃程度であれば良く、また、反応時間は、特に限定はなく、通常30分〜48時間時間程度であればよい。
【0064】
好適な反応条件としては、アルゴン雰囲気下、一般式(4)で表されるテトラアラルキルジルコニウム化合物をトルエンに溶解し、0℃に冷却する。これに、一般式(4)で表されるテトラアラルキルジルコニウム化合物に対し1〜1.1当量の一般式(3)で表されるビスフェノール化合物を加えて、室温にて1〜4時間撹拌する。反応終了後、常法により精製することにより、一般式(5)で表されるで表されるジルコニウムジアラルキル錯体を製造できる。より具体的な実施形態として、実施例3〜5が挙げられる。
【0065】
本発明の製造方法によれば、目的とする一般式(5)で表されるジルコニウムジアラルキル錯体を、高純度かつ高収率で製造することができる。
III.ジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体(6)の製造
一般式(6)で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体は、下記式に示すように、一般式(5)で表されるジルコニウムジアラルキル錯体に、水素を反応させて製造できる。
【0066】
【化15】

【0067】
(式中、Ar、R、R、R及びRは前記に同じ)
一般式(6)表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体では、金属(Zr)と配位子との結合状態が、共有結合性又は配位結合性を有するかは明瞭ではないため、金属と配位子との化学結合をすべて単結合で表記している。
【0068】
上記の一般式(6)で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体の製造方法を、具体的に説明する。
【0069】
一般式(5)で表されるジルコニウムジアラルキル錯体に、溶媒中、水素を反応させて、ジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体を製造できる。
【0070】
溶媒としては、反応に悪影響を与えない溶媒であれば特に限定はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ペンタン等の無極性有機溶媒が例示され、これらのうち1種を単独又は2種以上からなる混合溶媒を用いることができる。中でも、トルエンが好適である。
【0071】
反応は、一旦、不活性気体(アルゴン、窒素等)で反応系内を置換し、その後水素に置換して行う。水素の圧力は、特に限定はないが、常圧(1気圧)程度で充分であるが、水素が消費されることを考慮して、1〜10気圧程度であればよい。反応温度は、0〜60℃程度であれば良く、また、反応時間は、特に限定はなく、通常1〜48時間程度であればよい。
【0072】
好適な反応条件としては、アルゴン雰囲気下、一般式(5)で表されるジルコニウムジアラルキル錯体をトルエンに溶解し、反応系内を水素(1気圧)に置換して、室温(15−25℃程度、以下同じ)にて1〜4時間撹拌する。反応終了後、常法により精製することにより、一般式(6)で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体を製造できる。より具体的な実施形態として、実施例6〜9が挙げられる。
【0073】
本発明の製造方法によれば、目的とする一般式(6)で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体を、高純度でほぼ定量的に製造することができる。
IV.アリールアレン化合物(8)の製造
一般式(8)で表されるアリールアレン化合物は、下記式に示すように、一般式(6)で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体に、一酸化炭素を反応させて製造できる。
【0074】
【化16】

【0075】
(式中、Ar、R、R、R及びRは前記に同じ)
一般式(7)表されるジルコニウムオキソ錯体では、金属(Zr)と配位子との結合状態が、共有結合性又は配位結合性を有するかは明瞭ではないため、金属と配位子との化学結合をすべて単結合で表記している。
【0076】
上記の一般式(8)で表されるアリールアレン化合物の製造方法を、具体的に説明する。
【0077】
一般式(6)で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体に、溶媒中、一酸化炭素を反応させて、一般式(7)表されるジルコニウムオキソ錯体及び一般式(8)で表されるアリールアレン化合物を製造できる。
【0078】
溶媒としては、反応に悪影響を与えない溶媒であれば特に限定はなく、例えば、
エーテル、THF等の極性有機溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ペンタン等の無極性有機溶媒が例示され、これらのうち1種を単独又は2種以上からなる混合溶媒を用いることができる。中でも、ベンゼン、トルエンが好適である。
【0079】
反応は、一旦、不活性気体(アルゴン、窒素等)で反応系内を置換し、その後一酸化炭素に置換して行う。一酸化炭素の圧力は、特に限定はないが、常圧(1気圧)程度で充分であるが、一酸化炭素が消費されることを考慮して、1〜10気圧程度であればよい。反応温度は、0〜60℃程度であれば良く、また、反応時間は、特に限定はなく、通常1〜48時間程度であればよい。
【0080】
好適な反応条件としては、アルゴン雰囲気下、一般式(6)で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体をベンゼンに溶解し、反応系内を一酸化炭素(1気圧)に置換して、室温にて1〜12時間撹拌する。反応終了後、常法により精製することにより、一般式(7)表されるジルコニウムオキソ錯体及び一般式(8)で表されるアリールアレン化合物を製造できる。
【0081】
或いは、一般式(5)で表されるジルコニウムジアラルキル錯体を水素と反応させて、反応系内で一旦一般式(6)で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体を生成させ、単離精製することなくこれを一酸化炭素と反応させて、一般式(7)で表されるジルコニウムオキソ錯体及び一般式(8)で表されるアリールアレン化合物を製造することもできる。つまり、一般式(5)で表されるジルコニウムジアラルキル錯体から、ワンポットで一般式(8)で表されるアリールアレン化合物に導くこともできる。
【0082】
好適な反応条件としては、アルゴン雰囲気下、一般式(5)で表されるジルコニウムジアラルキル錯体をトルエンに溶解し、反応系を水素(1気圧)に置換して、室温にて1〜4時間撹拌する。その後、反応系内を一酸化炭素(1気圧)に置換して、室温にて1〜12時間撹拌する。反応終了後、常法により精製することにより、一般式(7)表されるジルコニウムオキソ錯体及び一般式(8)で表されるアリールアレン化合物を製造できる。より具体的な実施形態として、実施例10〜12が挙げられる。
【0083】
本発明の製造方法によれば、目的とする一般式(8)で表されるアリールアレン化合物を、高純度かつ高収率で製造することができる。
【0084】
上記した一般式(5)及び(6)で表されるジルコニウム錯体は、いずれも新規化合物であり、一般式(8)で表されるアリールアレン化合物の製造原料となり得る化合物である。該アリールアレン化合物のアリール(Ar)部分は、一般式(4)で表されるテトラアラルキル化合物のArに由来することから、該テトラアラルキル化合物のArを種々変換することにより、バラエティーに富んだアリールアレン化合物を製造することができる。そのため、本発明の製造法は、アリールアレン化合物を簡便かつ効率的に製造し得る有機合成上有用な合成ツールとなり得る。
【発明の効果】
【0085】
本発明によれば、新規なジルコニウム錯体を用いて、フィッシャー・トロプシュ反応(一酸化炭素の水素化、脱酸素化、炭素−炭素結合形成、及び炭化水素の生成)を穏和な条件下で進行させて、効率よく所望のアレン化合物を高選択的に製造することができる。また、環境にやさしく、エネルギー問題的にも有用である。さらに、本発明によれば、上記のアレン化合物を製造し得る前記ジルコニウム錯体、その製造方法、該ジルコニウム錯体の中間体を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
次に、本発明を実施例によって更に詳述するが、これに限定されるものではない。
【0087】
【化17】

【0088】
実施例1
ビスフェノール誘導体(3a)の合成
冷却管、撹拌子を備えた500 mL三口フラスコに、トリフェノール誘導体(1a)(10.0 g, 19.9mmol)、炭酸カリウム(1.40 g, 10.1 mmol)、p−トルエンスルホン酸メチル(3.95 g, 21.2 mmol)、及びアセトニトリル(250 mL)を入れ、一晩加熱還流下撹拌した。希塩酸で加水分解した後、塩化メチレンで抽出し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水乾燥した。溶媒留去後、乾燥することにより表題化合物を無色結晶として得た。収量10.1 g(19.5 mmol)。収率98%。
【0089】
実施例2
ビスフェノール誘導体(3b)の合成
冷却管、撹拌子を備えた500 mL三口フラスコに、トリフェノール誘導体(1b)(5.01 g, 10.9mmol)、炭酸カリウム(775 mg, 5.61 mmol)、p−トルエンスルホン酸メチル(2.10 g, 11.3 mmol)、及びアセトニトリル(250 mL)を入れ、一晩加熱還流下撹拌した。希塩酸で加水分解した後、塩化メチレンで抽出し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水乾燥した。溶媒留去後、乾燥することにより表題化合物を無色結晶として得た。収量5.09 g(10.7 mmol)。収率98%。
【0090】
3bの結晶学的データ:単斜晶形、空間群P21/n (#14)、a = 5.951(6) A、b = 25.48(2) A、c = 9.209(9) A、β = 102.74(2) deg、V = 1362(2) A3、Z = 2、密度(計算値)= 1.165 g cm-3 、R1 = 0.088(I > 2σ(I))、Rw = 0.184(all data)、GOF = 1.079.
3bの結晶構造図を図1に示す。なお、ヒドロキシル基以外の水素原子は省略している。
【0091】
【化18】

【0092】
実施例3
ジルコニウムジベンジル錯体(5a)の合成(NMR実験)
アルゴン置換したNMR管にジルコニウムテトラベンジル錯体(7.9mg, 17.3mmol)とビスフェノール誘導体(3a)(9.0mg, 17.4mmol)を入れ、重ベンゼン(0.5 mL)に溶解させた。1H NMRスペクトルの測定により、ほぼ定量的に表題化合物が生成することを確認した。
【0093】
実施例4
ジルコニウムジベンジル錯体(5a)の合成(シュレンク実験)
高真空系、撹拌子を備え、脱気乾燥後アルゴン置換した200 mLシュレンク管にジルコニウムテトラベンジル錯体(1.75 g, 3.84 mmol)とトルエン(60 mL)を入れ、0 ℃に冷却した。ここに、ビスフェノール誘導体(3a)(1.96g, 3.79mmol)のトルエン溶液(80 mL)を加えた後、2時間撹拌した。不溶物を遠心分離機で除いた後、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサンで洗浄し、表題化合物を淡黄色結晶として得た。収量2.15g(2.73 mmol)。収率72%。
【0094】
元素分析(ヘキサン0.5分子含む):計算値;C, 75.22; H, 8.18. 実測値;C, 75.16; H, 8.01.
5aの結晶学的データ(ヘキサンを0.5分子含んでいる):三斜晶形、空間群P1- (#2)、a = 9.270(6) A、b = 14.473(9) A、c = 17.22(1) A、α = 96.73(1) deg、β = 90.85(3) deg、γ = 90.55(7) deg、V = 2293(2) A3、Z = 2、密度(計算値)= 1.223 g cm-3 、R1 = 0.071(I > 2σ(I))、Rw = 0.148(all data)、GOF = 0.926.
5aの結晶構造図を図2に示す。なお、水素原子は省略している。
【0095】
実施例5
ジルコニウムジベンジル錯体(5b)の合成(シュレンク実験)
高真空系、撹拌子を備え、脱気乾燥後アルゴン置換した200 mLシュレンク管にジルコニウムテトラベンジル錯体(1.35 g, 2.96 mmol)とトルエン(60 mL)を入れ、0 ℃に冷却した。ここに、ビスフェノール誘導体(3b)(1.41g, 2.97mmol)のトルエン溶液(50 mL)を加えた後、2時間撹拌した。不溶物を遠心分離機で除いた後、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサンで洗浄し、表題化合物を淡黄色結晶として得た。収量1.73g(2.32 mmol)。収率78%。
【0096】
元素分析(ヘキサン1分子含む):計算値;C, 75.21; H, 8.34. 実測値;C, 75.19; H, 8.40.
5bの結晶学的データ(トルエンを1分子含んでいる):三斜晶形、空間群P1- (#2)、a = 9.311(3) A、b = 14.646(5) A、c = 17.238(6) A、α = 95.777(7) deg、β = 92.230(3) deg、γ = 102.844(7) deg、V = 2275(1) A3、Z = 2、密度(計算値)= 1.223 g cm-3 、R1 = 0.067(I > 2σ(I))、Rw = 0.128(all data)、GOF = 0.901.
5bの結晶構造図を図3に示す。なお、水素原子は省略している。
【0097】
【化19】

【0098】
実施例6
ジルコニウムベンジリデンジヒドリド錯体(6a)の合成(NMR実験)
アルゴン置換したNMR管にジルコニウムジベンジル錯体(5a)(17.2mg, 21.8mmol)を入れ、重ベンゼン(0.5 mL)に溶解させた。アルゴンを水素(1 atm)に置換して、ときおり振り混ぜた。1時間後、1H NMRスペクトルの測定により、定量的に表題化合物が生成することを確認した。
【0099】
実施例7
ジルコニウムベンジリデンジヒドリド錯体(6b)の合成(NMR実験)
アルゴン置換したNMR管にジルコニウムジベンジル錯体(5b)(20.1mg, 26.9mmol)を入れ、重ベンゼン(0.6 mL)に溶解させた。アルゴンを水素(1 atm)に置換して、ときおり振り混ぜた。4時間後、1H NMRスペクトルの測定により、定量的に表題化合物が生成することを確認した。
【0100】
実施例8
ジルコニウムベンジリデンジヒドリド錯体(6a)の合成(シュレンク実験)
高真空系、撹拌子を備え、脱気乾燥後アルゴン置換した200 mLシュレンク管にジルコニウムジベンジル錯体(5a)(766 mg, 0.97 mmol)を入れ、トルエン(30 mL)に溶解させた。アルゴンを水素(1 atm)に置換した後、2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、表題化合物を橙色結晶として定量的に得た。
【0101】
元素分析(ヘキサンを1分子含む)計算値;C, 71.71; H,8.27. 実測値;C, 71.30; H,8.23.
実施例9
ジルコニウムベンジリデンジヒドリド錯体(6b)の合成(シュレンク実験)
高真空系、撹拌子を備え、脱気乾燥後アルゴン置換した200 mLシュレンク管にジルコニウムジベンジル錯体(5b)(491 mg, 0.66 mmol)を入れ、トルエン(30 mL)に溶解させた。アルゴンを水素(1 atm)に置換した後、4時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、表題化合物を橙色結晶として定量的に得た。
【0102】
元素分析計算値;C, 69.90 H, 7.27. 実測値;C, 69.55; H, 7.87.
6bの結晶学的データ(ヘキサンを1分子含んでいる):三斜晶形、空間群P1- (#2)、a = 12.301(3) A、b = 14.652(4) A、c = 20.832(6) A、α = 80.921(7) deg、β = 83.410(8) deg、γ = 72.137(6) deg、V = 3519(1) A3、Z = 2、密度(計算値)= 1.230 g cm-3 、R1 = 0.069(I > 2σ(I))、Rw = 0.149 (all data)、GOF = 1.000.
6bの結晶構造図を図4に示す。なお、架橋水素とベンジリデンα−水素以外の水素原子は省略している。
【0103】
【化20】

【0104】
実施例10
ジルコニウムベンジリデンジヒドリド錯体(6a)と一酸化炭素の反応(NMR実験)
アルゴン置換したNMR管にジルコニウムジベンジル錯体(5a)(17.2mg, 21.8mmol)を入れ、重ベンゼン(0.5 mL)に溶解させた。アルゴンを水素(1 atm)に置換して、ときおり振り混ぜた。1時間後、1H NMRスペクトルの測定により、定量的にジルコニウムベンジリデンジヒドリド錯体(6a)が生成することを確認した。続いて、水素を一酸化炭素(1 atm)に置換して、ときおり振り混ぜた。半日後、1H NMRスペクトルの測定により、ほぼ定量的にジルコニウムオキソ錯体(7a)とフェニルアレン(8)が生成することを確認した。
【0105】
7aの結晶学的データ(ヘキサンを1分子含んでいる):単斜晶形、空間群C2/c (#15)、a = 32.98(1) A、b = 10.163(4) A、c = 23.335(9) A、β= 95.960(4) deg、V = 7783(4) A3、Z = 8、R1 = 0.077(I > 2σ(I))、Rw = 0.108 (all data)、GOF = 1.057.
7aの結晶構造図を図5に示す。なお、水素原子は省略している。
【0106】
実施例11
ジルコニウムベンジリデンジヒドリド錯体(6b)と一酸化炭素の反応(NMR実験)
アルゴン置換したNMR管にジルコニウムジベンジル錯体(5b)(20.1mg, 26.9mmol)を入れ、重ベンゼン(0.6 mL)に溶解させた。アルゴンを水素(1 atm)に置換して、ときおり振り混ぜた。4時間後、1H NMRスペクトルの測定により、定量的に表題化合物が生成することを確認した。続いて、水素を一酸化炭素(1 atm)に置換して、ときおり振り混ぜた。半日後、1H NMRスペクトルの測定により、ほぼ定量的にジルコニウムオキソ錯体(7b)とフェニルアレン(8)が生成することを確認した。
【0107】
実施例12
ジルコニウムベンジリデンジヒドリド錯体(6b)と一酸化炭素の反応(シュレンク実験)
高真空系、撹拌子を備え、脱気乾燥後アルゴン置換した200 mLシュレンク管にジルコニウムジベンジル錯体(5b)(551mg, 0.74mmol)を入れ、トルエン(30 mL)に溶解させた。アルゴンを水素(1 atm)に置換した後、6時間撹拌して、ジルコニウムベンジリデンジヒドリド錯体(6b)を得た。続いて、水素を一酸化炭素(1 atm)に置換して、約1日撹拌した。ジルコニウムオキソ錯体(7b)を無色結晶として得た。また、フェニルアレン(8)をトルエンとの混合物として得た。
7b:収量360 mg(0.31 mmol)。収率84%。8:NMR収率約80%。
【0108】
7bの結晶学的データ:三斜晶形、空間群P1- (#2)、a = 12.014(8) A、b = 12.223(8) A、c = 13.920(6) A、α = 108.292(6) deg、β = 111.403(7) deg、γ = 92.685(5) deg、V = 1776(2) A3、Z = 1、R1 = 0.090(I > 2σ(I))、Rw = 0.177 (all data)、GOF = 1.003.
7bの結晶構造図を図6に示す。なお、水素原子は省略している。
【0109】
8のスペクトルデータを以下に示す。1H NMR (C6D6, d) 7.0-7.3 (m, 5 H, Ph), 6.00 (t, J = 6.8 Hz, 1 H, CH), 4.81 (d, J = 6.8 Hz, 2 H, CH2). 13C NMR (C6D6, d) 209.4 (allene sp), 94.7 (allene sp2), 79.0 (allene sp2).
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施例2で得られたビスフェノール化合物(3b)の結晶構造図である。
【図2】実施例4で得られたジルコニウムジベンジル錯体(5a)の結晶構造図である。
【図3】実施例5で得られたジルコニウムジベンジル錯体(5b)の結晶構造図である
【図4】実施例9で得られたジルコニウムベンジリデンジヒドリド錯体(6b)の結晶構造図である。
【図5】実施例10で得られたジルコニウムオキソ錯体(7a)の結晶構造図である。
【図6】実施例12で得られたジルコニウムオキソ錯体(7b)の結晶構造図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(8):
【化1】

(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を示す)
で表されるアリールアレン化合物の製造方法であって、一般式(6):
【化2】

(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基を示し、Arは前記に同じ)
で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体に、一酸化炭素を反応させることを特徴とするアリールアレン化合物の製造方法。
【請求項2】
一般式(6):
【化3】

(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基、Arは置換されていてもよいアリール基を示す)
で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体の製造方法であって、一般式(5):
【化4】

(但し、Ar、R、R、R及びRは前記に同じ)
で表されるジルコニウムジアラルキル錯体に水素を反応させることを特徴とするジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体の製造方法。
【請求項3】
一般式(8):
【化5】

(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を示す)
で表されるアリールアレン化合物の製造方法であって、一般式(5):
【化6】

(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基を示し、Arは前記に同じ)
で表されるジルコニウムジアラルキル錯体に、水素を反応させた後、続いて一酸化炭素を反応させることを特徴とするアリールアレン化合物の製造方法。
【請求項4】
一般式(5):
【化7】

(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基、Arは置換されていてもよいアリール基を示す)
で表されるジルコニウムジアラルキル錯体の製造方法であって、一般式(4):
Zr(CHAr) (4)
(但し、Arは前記に同じ)
で表されるテトラアラルキル化合物と一般式(3):
【化8】

(但し、R、R、R及びRは前記に同じ)
で表されるビスフェノール化合物を反応させることを特徴とするジルコニウムジアラルキル錯体の製造方法。
【請求項5】
一般式(3):
【化9】

(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基を示す)
で表されるビスフェノール化合物の製造方法であって、一般式(1):
【化10】

(但し、R、R及びRは前記に同じ)
で表されるトリフェノール化合物と、一般式(2):
−OSO (2)
(式中、RはC1−2アルキル基、Rはアリール基、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す)
で表されるアルキル化剤を反応させることを特徴とするビスフェノール化合物の製造方法。
【請求項6】
一般式(5):
【化11】

(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基、Arは置換されていてもよいアリール基を示す)
で表されるジルコニウムジアラルキル錯体。
【請求項7】
一般式(6):
【化12】

(式中、RはC3−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−4アルキル基、RはC1−2アルキル基、Arは置換されていてもよいアリール基を示す)
で表されるジルコニウムアラルキリデンジヒドリド錯体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−69986(P2006−69986A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257631(P2004−257631)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年3月11日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第84春季年会 講演予稿集1」に発表
【出願人】(504261077)大学共同利用機関法人自然科学研究機構 (156)
【Fターム(参考)】