説明

ジルコニウム含有組成物及びその製造方法

【課題】
各種樹脂の架橋剤や各種樹脂の合成触媒として好適に使用することが可能であり、アセトンのような低沸点溶剤を含まず、かつ、環境負荷の高いトルエンも含まないジルコニウム含有組成物を提供すること。
【解決手段】
少なくとも、1原子のジルコニウムに対して4分子のβ−ジケトンが結合した構造を有するジルコニウム化合物(成分A)、炭酸エステル類(成分B)及びアルコール類(成分C)を反応及び/又は混合してなる組成を有するものであることを特徴とするジルコニウム含有組成物、及び、該ジルコニウム含有組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニウム含有組成物に関し、更に詳細には、ジルコニウムに対して4分子のβ−ジケトンが結合した構造を有するジルコニウム化合物と、炭酸エステル類と、アルコール類とを、反応及び/又は混合してなる組成を有するジルコニウム含有組成物に関するものであり、特に、水酸基やカルボキシル基などの官能基を有する樹脂を架橋する架橋剤や、各種樹脂を合成するための触媒などとして好適に使用されるジルコニウム含有組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジルコニウム化合物は、各種樹脂の架橋剤、各種樹脂の合成触媒などとして使用されているが、溶剤に対する溶解性や、かかる溶剤の性状に関しては課題が多い。ジルコニウム化合物の中でも、「ジルコニウムに対して4分子のβ−ジケトンが結合した構造を有するジルコニウム化合物」は、安定性が良好、各種樹脂の架橋剤として使用した場合に着色が小さいなどの特長を有するため、上記用途などに比較的多用されるが、やはりその溶解に関して上記したものと同様の問題点を有していた。
【0003】
例えば、「ジルコニウムに対して4分子のβ−ジケトンが結合した構造を有するジルコニウム化合物」は、アセトンとメタノールの混合溶剤や、トルエンとメタノールの混合溶剤に溶解することが知られている(非特許文献1)。
【0004】
また、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート化合物を、トルエン、メタノールに溶解し、かつ、アセチルアセトン、水又はカルボン酸を添加した例が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
しかしながら、アセトンとメタノールの場合、アセトンは沸点が低く、揮発性が高いことから、計量が困難であり、樹脂の架橋剤や、各種樹脂の合成触媒として使用することが難しく、また、ジルコニウムに対して4分子のβ−ジケトンが結合した構造を有するジルコニウム化合物を、溶解はするものの、その溶解性が低いことから高濃度にすることが困難であった。
【0006】
一方、トルエンとメタノールの混合溶剤による溶解に関しては、ジルコニウムに対して4分子のβ−ジケトンが結合した構造を有するジルコニウム化合物の溶解性は、高いことが知られている。
【0007】
しかしながら、トルエンは、シックハウス症候群などで問題視されているように、環境への負荷が高く、そのため、各種樹脂の架橋剤として使用する場合や各種樹脂の合成触媒として用いた場合に、(架橋された)樹脂などに含有されるトルエンが問題になることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−104843号公報
【特許文献2】特開平07−145337号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】杉山岩吉、「含有金属有機化合物とその利用」、M.R.機能性物質シリーズNo.5(日本シーエムアイ株式会社)、p.163〜p.164
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、各種樹脂の架橋剤や各種樹脂の合成触媒として好適に使用することが可能であり、アセトンのような低沸点溶剤を含まず、かつ、環境負荷の高いトルエンも含まないジルコニウム含有組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、1原子のジルコニウムに対して4分子のβ−ジケトンが結合した構造を有するジルコニウム化合物(成分A)と、炭酸エステル類(成分B)と、アルコール類(成分C)とを反応及び/又は混合した組成物が、上記課題を解決することを見いだして本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
少なくとも、
「1原子のジルコニウムに対して4分子のβ−ジケトンが結合した構造を有するジルコニウム化合物(成分A)」、
「炭酸エステル類(成分B)」、及び
「アルコール類(成分C)」
を、反応及び/又は混合してなる組成を有するものであることを特徴とするジルコニウム含有組成物を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、
少なくとも、
「1原子のジルコニウムに対して4分子のβ−ジケトンが結合した構造を有するジルコニウム化合物(成分A)」、
「炭酸エステル類(成分B)」、及び
「アルコール類(成分C)」
を、反応及び/又は混合することを特徴とするジルコニウム含有組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のジルコニウム含有組成物によれば、トルエンを含有しないため、安全性が高く、環境負荷が低く、アセトンのような低沸点で揮発性が高い化合物を使用しないため、使用に際して計量がし易い組成物が提供できる。また、溶解性が良好であるため、ジルコニウムの含有濃度が高いジルコニウム含有組成物を提供することができる。そして、結果として、特に安全性や取扱性に優れた、樹脂の架橋剤、樹脂の合成触媒などを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の具体的形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0016】
本発明のジルコニウム含有組成物は、「1原子のジルコニウムに対して4分子のβ−ジケトンが結合した構造を有するジルコニウム化合物」(本発明においては、括弧内を「成分A」と略記する場合がある)と、炭酸エステル類(本発明においては、「成分B」と略記する場合がある)と、アルコール類(本発明においては、「成分C」と略記する場合がある)とを、反応及び/又は混合してなる組成を有する。
【0017】
<成分A>
成分Aとしては、1原子のジルコニウムに対して4分子のβ−ジケトンが結合した構造を有するジルコニウム化合物であれば、β−ジケトンの種類に特に限定はないが、該β−ジケトンとして、下記式(1)で示される構造を有するものであることが、ジルコニウム化合物の安定性、反応性などの点で特に好ましい。また、炭酸エステル類(成分B)とアルコール類(成分C)との組み合わせにより、溶解性に優れたジルコニウム含有組成物ができる点で特に好ましい。
【0018】
本発明において「溶解性」とは、本発明のジルコニウム含有組成物が他の溶媒に溶解する能力が高いことではなく、本発明のジルコニウム含有組成物自身に白濁や沈殿物がなく、良好な溶解状態を保っている性質をいう。なお、本発明のジルコニウム含有組成物は、別途準備した他の溶媒に溶解する能力も高い。
【0019】
【化1】

[式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜18個のアルキル基、アリール基又はアルケニル基を示す。]
【0020】
及びRの炭素数は、それぞれ独立に1〜18個が好ましいが、1〜10個がより好ましく、1〜5個が特に好ましい。また、R及びRの何れかがメチル基であることが特に好ましい。R及びRの炭素数が多すぎると、ジルコニウム化合物としての反応性が著しく低下する場合がある。
【0021】
式(1)中のアルキル基、アリール基又はアルケニル基は、置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、炭素数1〜18個の範囲のアルキル基、アルケニル基、フェニル基などが好ましい。置換基の個数は特に限定はないが、0(置換基なし)〜4個が特に好ましい。
【0022】
上記β−ジケトンは、具体的には特に限定はないが、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトン)、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンなどが挙げられる。該β−ジケトンは、単独又は2種類以上混合してジルコニウムに結合して成分Aの構造をとることができる。
【0023】
成分Aとしては、2,4−ペンタンジオンが4分子結合したジルコニウム化合物が、ジルコニウム化合物の安定性、反応性などの面で特に好ましい。
【0024】
<成分B>
成分Bである炭酸エステル類としては、炭酸のジエステル類であることが、ジルコニウム化合物の溶解性の点で好ましい。また、環状エステルでも、鎖状エステルでもよいが、下記式(2)で表される構造を有する炭酸の鎖状エステルが、ジルコニウム化合物の溶解性の点から特に好ましい。
【0025】
【化2】

[式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜18個のアルキル基、アリール基又はアルケニル基を示す。]
【0026】
及びRの炭素数は、それぞれ独立に1〜18個が好ましいが、1〜10個がより好ましく、1〜7個が特に好ましい。R及びRの炭素数が多すぎると、ジルコニウム化合物の溶解性が著しく低下する場合がある。また、成分Bは、R及びRの炭素数が異なる非対称炭酸エステル類でもよいが、R及びRの炭素数が同一の対称炭酸エステル類が、ジルコニウム化合物の溶解性の点から特に好ましい。
【0027】
式(1)中のアルキル基、アリール基又はアルケニル基は、置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、炭素数1〜18個の範囲のアルキル基、アルケニル基、フェニル基などが好ましい。置換基の個数は特に限定はないが、0(置換基なし)〜4個が特に好ましい。
【0028】
上記成分(B)は、具体的には特に限定はないが、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジノルマルプロピル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジノルマルブチル、炭酸ジイソブチル、炭酸ジターシャリーブチル、炭酸ジセカンダリーブチル、炭酸ジペンチル、炭酸ジヘキシル、炭酸ジヘプチル、炭酸ジビニルなどが挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。中でも、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル又は炭酸ジノルマルプロピルが、前記した成分(A)の溶解性が高い点で特に好ましい。
【0029】
<成分C>
成分Cであるアルコール類としては、特に限定はないが、炭素数1〜18個のアルキル基を有するアルコール類であることが、ジルコニウム化合物の溶解性の点から好ましい。炭素数はより好ましくは1〜18個、特に好ましくは1〜8個、更に好ましくは1〜3個である。上記炭素数のアルキル基に直接水酸基が結合したアルコール類が特に好ましい。炭素数は多すぎると、溶解性が著しく低下する場合がある。
【0030】
成分Cであるアルコール類は、1級、2級、3級アルコール類の何れでもよい。また、1分子中のアルコール性水酸基の数は特に限定はないが、1個であることが(1価のアルコール類であることが)、ジルコニウム化合物の溶解性の点から好ましい。
【0031】
具体的には、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、セカンダリーブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール、ノルマルペンタノール、ノルマルヘキサノール、ノルマルヘプタノール、ノルマルオクタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0032】
中でも、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール又はイソプロパノールが、前記した成分(A)の溶解性が高い点でより好ましく、更に、メタノール又はエタノールが上記点から特に好ましい。
【0033】
<使用割合>
成分Aと成分Bと成分Cの使用割合は特に限定はないが、質量比で、成分A/成分B=1/100〜100/1が好ましく、5/80〜80/5がより好ましく、10/70〜70/10が特に好ましい。成分Aに対して成分Bが少なすぎると、成分Aが溶解せずに析出する場合があり、成分(A)に対して成分(B)が多すぎると、すなわち、成分(B)に対して成分(A)が少なすぎると、得られたジルコニウム含有組成物を、各種樹脂の架橋剤や各種樹脂の合成触媒として使用した際に、架橋性能や触媒性能が不足する場合がある。
【0034】
また、質量比で、成分(A)/成分(C)=1/100〜100/1が好ましく、5/80〜80/5がより好ましく、10/70〜70/10が特に好ましい。成分(A)に対して成分(C)が少なすぎると、成分Aが溶解せずに析出する場合があり、成分(A)に対して成分(C)が多すぎると、すなわち、成分(C)に対して成分(A)が少なすぎると、得られたジルコニウム含有組成物を、各種樹脂の架橋剤や各種樹脂の合成触媒として使用した際に、架橋性能や触媒性能が不足する場合がある。
【0035】
また、質量比で、成分(B)/成分(C)=1/100〜100/1が好ましく、5/80〜80/5がより好ましく、10/70〜70/10が特に好ましい。成分(B)/成分(C)の値は、小さすぎる場合も、大きすぎる場合も、成分Aが十分には溶解せず、析出する場合がある。
【0036】
<ジルコニウム含有組成物の態様>
「成分Aと成分Bと成分Cの反応及び/又は混合してなる組成を有するジルコニウム含有組成物化合物」(成分A)には、主に以下の7形態があり、その何れでもよい。
(1)成分Aと成分Bと成分Cの反応により得られる組成を有するもの。
(2)「成分Aと成分Bの反応により得られる組成を有するもの」及び成分Cを混合してなる組成を有するもの。
(3)「成分Aと成分Cの反応により得られる組成を有するもの」及び成分Bを混合してなる組成を有するもの。
(4)「成分Aと成分Bの混合により得られる組成を有するもの」及び成分Cを反応してなる組成を有するもの。
(5)「成分Bと成分Cの混合により得られる組成を有するもの」及び成分Aを反応してなる組成を有するもの。
(6)「成分Aと成分Cの混合により得られる組成を有するもの」及び成分Bを反応してなる組成を有するもの。
(7)成分Aと成分Bと成分Cを混合により得られる組成を有するもの。
【0037】
反応と混合が平行して起こる場合も上記態様に含まれる。また、未反応物がその反応後に混合される場合も含まれる。例えば、「成分Aと成分Bとの反応により得られる反応物」、該反応で未反応のまま残った成分B及び成分Cの混合により得られる組成物も上記態様に含まれる。すなわち、上記した態様中の「反応により得られる組成」には未反応物が存在する場合も含まれる。
【0038】
「反応」は、共有結合を生成するものの他、イオン結合、配位結合、成分同士の相互作用を生じさせるものなども含まれる。また、同じ成分同士の反応を排除するものではない。
【0039】
このうち、(7)「成分Aと成分Bと成分Cを混合により得られる組成を有するもの」が特に好ましい。
【0040】
本発明のジルコニウム含有組成物は、少なくとも、成分A、成分B及び成分Cを反応及び/又は混合してなる組成を有するものであることを特徴とするが、本発明の前記効果を奏する範囲において、成分A、成分B及び成分C以外の成分の混在を排除するものではない。ただ、実質的に、成分A、成分B及び成分Cのみを反応及び/又は混合してなる組成を有するものであることが好ましい。
【0041】
本発明のジルコニウム含有組成物は、上記した操作(プロセス)を用いて生成された化学構造や混合組成を有する組成物であれば、その製造方法は限定されるものではない。別の製造方法で製造された結果、同一のものが生成した場合のそのジルコニウム含有組成物も本発明に含まれる。
【0042】
<製造方法>
ただし、本発明の帯電防止離型組成物の製造方法としては、上記製造方法が好ましい。すなわち、少なくとも、1原子のジルコニウムに対して4分子のβ−ジケトンが結合した構造を有するジルコニウム化合物(成分A)、炭酸エステル類(成分B)及びアルコール類(成分C)を反応及び/又は混合することを特徴とするジルコニウム含有組成物の製造方法が好ましい。
【0043】
<用途>
本発明のジルコニウム含有組成物を用いた「樹脂の架橋剤」や、本発明のジルコニウム含有組成物を用いた「樹脂の合成触媒」は、トルエンを含有しないために環境負荷が低く、アセトンのような低沸点で揮発性が高い化合物を使用しないために計量がし易い。また、ジルコニウム化合物(成分A)の溶解性が良好であり、ジルコニウムの含有濃度が高いジルコニウム含有組成物を提供することができるので、「樹脂の架橋剤」、「樹脂の合成触媒」などに好適に使用できる。
【0044】
架橋される樹脂は、限定はされないが、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの官能基を有しているものであることが好ましい。また、本発明のジルコニウム含有組成物を合成触媒として合成される樹脂としては、限定はないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0046】
実施例1
炭酸ジメチル(成分B)40gとメタノール(成分C)40gの混合溶剤をマグネチックスターラーにて攪拌しながら、ジルコニウム化合物(成分A)として、ジルコニウムテトラキス(2,4−ペンタンジオネート)20gを添加し、25℃で10分間、攪拌混合して、ジルコニウム含有組成物を調製した。溶解の状態を以下の基準にて外観の目視観察を行った。「溶解性」の結果を表1に示す。
【0047】
[溶解性の判定基準]
○・・・透明
△・・・わずかに白濁あり
×・・・白濁又は沈降物あり
【0048】
実施例2〜15
実施例1において、ジルコニウム化合物(成分A)、炭酸エステル類(成分B)、アルコール類(成分C)を、表1に記載の種類と量に代えた以外は、実施例1と同様の方法にて攪拌混合を行い、溶解の状態を確認した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
比較例1〜35
表2に示すジルコニウム化合物(成分A)、炭酸エステル類(成分B)、アルコール類(成分C)、成分Bや成分Cに代えて表2に示す「溶剤」を使用し、実施例1と同様の方法にて、攪拌混合を行い、溶解の状態を確認した。結果を表2に示す。
【0051】
溶剤として、アセトンとトルエンは、前記した背景技術に記載したように、揮発性、安全性などの「溶解性以外の問題点」があった。そのため、溶解性の評価結果を示す表2には記載していない。
【0052】
【表2】

【0053】
表1から分かるように、本発明のジルコニウム含有組成物は、全て溶解性に優れていた。一方、表2から分かるように、たとえジルコニウム化合物として成分Aを用いても、成分Bと成分Cの組み合わせ使用がないと、何れも溶解性に劣っていた。これより、炭酸エステル類(成分B)をアルコール類(成分C)に組み合わせて使用したとき、特異的に成分Aの溶解性が良くなる(すなわち、ジルコニウム含有組成物の溶解性が良くなる)ことが分かった。
【0054】
また、実施例のジルコニウム含有組成物の製造方法(調製条件)から分かるように、本発明のジルコニウム含有組成物は、充分ジルコニウムの含有率が大きいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のジルコニウム含有組成物は、トルエンを使用していないため、環境負荷が少なく、アセトンなどの低沸点溶剤を使用しないことから、使用時の計量がし易く、また、ジルコニウム含有濃度を高くすることができることから、樹脂を合成する際の触媒分野や塗料分野などの産業分野に広く利用されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、1原子のジルコニウムに対して4分子のβ−ジケトンが結合した構造を有するジルコニウム化合物(成分A)、炭酸エステル類(成分B)及びアルコール類(成分C)を反応及び/又は混合してなる組成を有するものであることを特徴とするジルコニウム含有組成物。
【請求項2】
上記β−ジケトンが下記式(1)で示される構造を有するものである請求項1に記載のジルコニウム含有組成物。
【化1】

[式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜18個のアルキル基、アリール基又はアルケニル基を示す。]
【請求項3】
上記炭酸エステル類(成分B)が、下記式(2)で示される構造を有するものである請求項1又は請求項2に記載のジルコニウム含有組成物。
【化2】

[式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜18個のアルキル基、アリール基又はアルケニル基を示す。]
【請求項4】
上記アルコール類(成分C)が、炭素数1〜18個のアルキル基を有するアルコール類である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載のジルコニウム含有組成物。
【請求項5】
少なくとも、1原子のジルコニウムに対して4分子のβ−ジケトンが結合した構造を有するジルコニウム化合物(成分A)、炭酸エステル類(成分B)及びアルコール類(成分C)を反応及び/又は混合することを特徴とするジルコニウム含有組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載のジルコニウム含有組成物を含有することを特徴とする樹脂の架橋剤。
【請求項7】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載のジルコニウム含有組成物を含有することを特徴とする樹脂の合成触媒。

【公開番号】特開2011−126839(P2011−126839A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288843(P2009−288843)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000188939)マツモトファインケミカル株式会社 (26)
【Fターム(参考)】