説明

ジンセノサイドコンパウンド‐Kの製薬中における新規使用

本発明は関節炎の予防または治療薬物の製造におけるジンセノサイド コンパウンド‐Kの使用について、以下のような構造式を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製薬中におけるジンセノサイド コンパウンド‐Kの新規使用、特にジンセノサイド コンパウンド‐Kの関節炎の予防または治療薬物の製造中の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中国特許(公開番号CN1570133A)はジンセノサイド コンパウンド‐Kの構造及びその製造方法と抗腫瘍方面におけるいくつかの使用について公開している。ジンセノサイド コンパウンド‐Kは以下のような構造を有する。:
【化1】

【0003】
ただし、関節炎の予防または治療におけるその使用についてはまだ報告されていない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の内容
本発明はその他の領域におけるジンセノサイド コンパウンド‐Kの使用の可能性を探り、それにより製薬中におけるその新用途を提供することを目的とする。
【0005】
本発明はジンセノサイド コンパウンド‐Kの関節炎の予防または治療薬物の製造における使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
具体的な実施方式
実施例1 初回毒素検査
ジンセノサイド コンパウンド‐K、360mg/kgの試薬量を静脈注射したところ、マウスの活動は正常で異常は見られなかった。
【0007】
実施例2 カラゲニンにより誘発されたマウス足裏の腫脹にジンセノサイド コンパウンド‐Kが与える影響
1、実験目的:カラゲニンによる引き起こされたマウスの急性炎症に被検サンプルが与える影響について観察する。
【0008】
2、材料及び試薬:
1)薬物:ジンセノサイド コンパウンド‐K、 試薬量は10mg/kg、5mg/kg、2.5mg/kg
インドメタシン 10mg/kg
カラゲニン、再蒸留水を用いて1%濃度にする。
【0009】
2)動物:
昆明種のマウス60匹
体重:19−21g
性別:オス
各グループの動物数:10匹
実験室温度:24〜26℃、相対湿度:60〜70%。
【0010】
3、実験方法:
動物を先に多投薬量グループ:10mg/kg、 iv;中投薬量グループ:5mg/kg、 iv;少投薬量グループ:2.5mg/kg、 iv;インドメタシングループ:10mg/kg、 po;ブランク対照グループ:生理食塩水10mg/kg、 ivに分ける。上記の方法により3日投薬し、炎症を引き起こす前に1回、プレシスモメータにより各グループにおけるマウスの右側後肢の足裏体積を測る。最終回の投薬から1時間後に、マウスの右側後肢の足裏皮下に1%のカラゲニン0.1mlを注射して炎症を引き起こし、以後1時間ごとに1回、足裏の体積を測る。マウスの炎症発症前と発症後の異なる時点における右側後肢の足裏の体積差の値が腫脹値である。腫脹率及び抑制率を計算し、グループ間の差異をt検定により比較する。
【0011】
腫脹率% =(En−Eo)/Eo×100%
En = 炎症発症後の異なる時点の腫脹値
Eo = 炎症発症前の腫脹値
抑制率% =(c−t)/c×100%
C = 対照グループの腫脹率
T = 治療グループの腫脹率。
【0012】
4、結果
結果を表1に示す。ジンセノサイド コンパウンド‐Kはカラゲニンによる引き起こされたマウス足裏の急性炎症を明らかに抑制することができる。その中で多投薬量グループの作用が最も高く、4時間(4h)での作用が最も良くて、マウス急性炎症への抑制率は65.66%にも達し、インドメタシングループと少投薬量グループの作用は同等であった。
【表1】

【0013】
実施例3 カラゲニンにより誘発されたラット足裏の腫脹にジンセノサイド コンパウンド‐Kが与える影響
1、実験目的:カラゲニンによる引き起こされたラット急性炎症に対する被検サンプルの影響を観察する。
【0014】
2、材料及び試薬:
1)薬物:ジンセノサイド コンパウンド‐K、試薬量は10mg/kg、5mg/kg、2.5mg/kg
インドメタシン、1mg/kg
カラゲニン、再蒸留水を用いて1%濃度にする。
【0015】
2)動物:
ラット、SD系
体重:130〜150g
性別:オス
各グループの動物数:8匹
実験室温度:24〜26℃、相対湿度:60〜70%。
【0016】
3、実験方法:
動物を先に多投薬量グループ:10mg/kg、 iv;中投薬量グループ:5mg/kg、 iv;少投薬量グループ:2.5mg/kg、 iv;インドメタシングループ:1mg/kg、 po;ブランク対照グループ:生理食塩水10mg/kg、 ivに分ける。動物をまずグループ分けし、上記の方法により3日投薬し、炎症を引き起こす前に1回、プレシスモメータにより各グループにおけるラットの右側後肢の足裏体積を測る。最終回の投薬から1時間後に、ラットの右側後肢の足裏皮下に1%のカラゲニン0.1mlを注射して炎症を引き起こし、以後1時間ごとに1回、足裏の体積を測る。上記の方法で腫脹率及び抑制率を計算し、グループ間の差異をt検定により比較する。
【0017】
4、結果
結果を表2に示す。ジンセノサイド コンパウンド‐Kはカラゲニンによる引き起こされたラットの足裏急性炎症を明らかに抑制することができる。そのうち多投薬量グループの作用が最も高く、ラット急性炎症に対する抑制率は最高で78.23%にも達する。インドメタシングループの作用は多投薬量及び少投薬量の間にあった。
【表2】

【0018】
実施例4 アジュバントにより誘発されたラットのアジュバント性関節炎にジンセノサイド コンパウンド‐Kが与える影響
(A)アジュバントに誘発されたラットのアジュバント性関節炎に対するジンセノサイド コンパウンド‐Kの予防作用。
【0019】
1、材料及び試薬:
1)薬物:ジンセノサイド コンパウンド‐K、試薬量は10mg/kg、5mg/kg、2.5mg/kg
インドメタシン:1mg/kg
トリプテリジウム ウィルフォルディ フック F(Tripterygium Wilfordii Hook F (TWHF)):1.5mg/kg
フロイント完全アジュバント(Freund‘s Complete Adjuvant(FCA)):シグマ(Sigma)社より購入、各ラットにおける右側後肢の足裏の皮下に0.1mlを注射して炎症を引き起こす。
【0020】
2)動物:
ラット、SD系
体重:130〜150g
性別:オス
各グループの動物数:8匹
実験室温度:24〜26℃、相対湿度:60〜70%。
【0021】
2、実験方法:
動物を先に多投薬量グループ:10mg/kg、 iv;中投薬量グループ: 5mg/kg、 iv;少投薬量グループ: 2.5mg/kg、 iv;インドメタシングループ:1mg/kg、 po;TWHFグループ:1.5mg/kg、 po;ブランク対照グループ:生理食塩水10mg/kg、 ivに分ける。動物に炎症を発症させる前にまずプレシスモメータにより右後ろ足裏の体積を1回測り、その後ラット右側後肢の足裏の皮下に0.1mlのFCAを注射して炎症を発症させる。発症後翌日、上記のとおりにグループ分けして、15日間の投薬を開始する。一定時間ごとに足裏の体積を測り、上記の方法で腫脹率及び抑制率を計算し、グループ間の差異をt検定により比較する。
【0022】
3、結果
結果を表3に示す。ジンセノサイド コンパウンド‐Kはラットのアジュバント性関節炎を予防することができ、そのうち多投薬量グループの作用はTWHFグループより若干高く、インドメタシングループと同等であった。
【表3】

【0023】
(B)アジュバントにより誘発されたラットのアジュバント性関節炎に対するジンセノサイド コンパウンド‐Kの治療作用。
【0024】
1、材料及び試薬:
1)薬物:ジンセノサイド コンパウンド‐K、試薬量は10mg/kg、5mg/kg、2.5mg/kg
インドメタシン:1mg/kg
トリプテリジウム ウィルフォルディ フック F(Tripterygium Wilfordii Hook F (TWHF)):1.5mg/kg
フロイント完全アジュバント(Freund‘s Complete Adjuvant (FCA)):シグマ(Sigma)社より購入、各ラットの右側後肢の足裏の皮下に0.1mlを注射して炎症を引き起こす。
【0025】
2)動物:
ラット、SD系
体重:130〜150g
性別:オス
各グループの動物数:8匹
実験室温度:24〜26℃、相対湿度:60〜70%。
【0026】
2、実験方法:
動物を先に多投薬量グループ:10mg/kg、 iv;中投薬量グループ: 5mg/kg、 iv;少投薬量グループ: 2.5mg/kg、 iv;インドメタシングループ:1mg/kg、 po;TWHFグループ:1.5mg/kg、 po;ブランク対照グループ:生理食塩水10mg/kg、 ivに分ける。動物に炎症を発症させる前、まずプレシスモメータにより1回右側後肢の足裏の体積を測り、その後ラットの右側後肢の足裏の皮下に0.1mlのFCAを注射して炎症を発症させる。発症後20日たってから上記の通りにグループ分けして、8日間の投薬を開始する。一定時間ごとに足裏の体積を測り、上記の方法で腫脹率及び抑制率を計算して、グループ間の差異をt検定により比較する。
【0027】
3、結果
結果を表4に示す。ジンセノサイド コンパウンド‐Kはラットのアジュバント性関節炎を治療することができた。そのうち多投薬量グループの作用が最も高く、26日目(26day)の作用が最良で、抑制率は最高で36.15%にも達することができ、インドメタシングループ及びTWHFグループを明らかに上回った。
【表4】

【0028】
実施例5 II型コラーゲン(CII)に誘発されたラットの関節炎にジンセノサイド コンパウンド‐Kが与える影響
1、材料及び試薬:
1)薬物:
薬物:ジンセノサイド コンパウンド‐K、試薬量は10mg/kg、5mg/kg、2.5mg/kg
エンブレル(Enbrel): 9mg/kg、4日に1回、皮下に注射する
トリプテリジウム ウィルフォルディ フック F(Tripterygium Wilfordii Hook F (TWHF)):1.5mg/kg。
【0029】
炎症誘発剤:II型コラーゲンを0.1mol/Lの酢酸中に溶解し、最終的に濃度2mg/mlのコラーゲン溶液にする。4℃で一晩置いて、翌日II型コラーゲン溶液を冷やしたフロイント不完全アジュバント(Freund‘s Incomplete Adjuvant (FIA))中に滴下し、充分に乳化(II型コラーゲン液:FIA=1:1)させ、II型コラーゲンの最終濃度を1mg/mlにする。II型コラーゲン乳剤を4℃の冷蔵庫に保管して使用に備える。
【0030】
免疫方法:各ラットの背中5箇所に皮下注射をして免疫処理を行う。各点0.1ml、全量5ml(II型コラーゲンの含有量は0.5mg)とし、7日後に同様の方法で1回免疫を追加する。対照グループには0.1mol/Lの酢酸及びFIA乳化液を注射し、注射前及び免疫後20日よりプレシスモメータにより右側後肢の足踝部関節の腫脹度を測る。
【0031】
2)動物:
ラット、SD系
体重:140〜160g
性別:オス
各グループの動物数:8匹
実験室温度:24〜26℃、相対湿度:60〜70%。
【0032】
2. II型コラーゲン(CII)により誘発された関節炎に対するジンセノサイド コンパウンド‐Kの予防作用
2.1実験方法:
まず0.1mol/Lの酢酸に溶解させ、一晩放置したII型コラーゲンを2mg/mlの濃度に調整した後、1:1の比率でゆっくりとFIA中に滴下し、充分に乳化した後、各ラットの背中5箇所において皮膚内に注射をする。各点0.1ml(ラット1匹につき全量0.5ml、コラーゲン0.5mgを含む)で最初の免疫処理を行う。その後7日目に同様の方法により2回目の免疫処理を行うと、炎症発症動物となる。これと同様の方法で正常対照グループの動物を処理するが、免疫成分にはコラーゲンは含まれない。
【0033】
動物を多投薬量グループ:ジンセノサイド コンパウンド‐K10mg/kg、 iv;中投薬量グループ:ジンセノサイド コンパウンド‐K5mg/kg、 iv;少投薬量グループ:ジンセノサイド コンパウンド‐K2.5mg/kg、 iv;TWHFグループ:1.5mg/kg、 po;Enbrelグループ:9mg/kg、 sc;ブランク対照グループ:生理食塩水10mg/kg、 ivに分ける。投薬グループの動物に対しては初回免疫時より投薬を開始し、第一回の免疫から8日で投薬を停止する。プレシスモメータにより免疫前と初回免疫後20、22、24、27及び29日の足踝関節の腫脹値を測り、上記の方法で腫脹率及び抑制率を計算し、グループ間の差異はt検定で比較する。実験の後で、足踝関節を取って病理検査を行なう。
【0034】
2.2 結果
結果は表5の通りである。ジンセノサイド コンパウンド‐KはII型コラーゲンに誘発された関節炎を明らかに予防することができ、そのうち多投薬量グループの作用は最も高く、その作用は明らかにTWHFグループを上回り、enbrelグループと同等であった。
【表5】

【0035】
3. II型コラーゲン(CII)により誘発された関節炎に対するジンセノサイド コンパウンド‐Kの治療作用
3.1実験方法:
II型コラーゲン(CII)とFIAを研磨して乳剤にし、それぞれ各ラット背中部分の皮膚内に注射して免疫処理を行う。19日経つとラットの足関節の大部分が腫脹し始めるので、足関節に腫脹が生じた過敏性ラット40匹を選び、5グループに分ける。各グループ8匹で、それぞれ炎症発症対照グループ:ジンセノサイド コンパウンド‐K10mg/kg、 iv、中投薬量グループ:ジンセノサイド コンパウンド‐K5mg/kg、 iv、少投薬量グループ:ジンセノサイド コンパウンド‐K2.5mg/kg、 iv、Enbrelグループ:9mg/kg、 sc、TWHFグループ1.5mg/kg;ブランク対照グループ:生理食塩水10mg/kg、 ivとする。連続8日間投薬する。プレシスモメータにより炎症発症前及び症状開始後(20日後)の異なる時点で足の腫脹値を測り、腫脹率及び抑制率を計算し、グループ間の差異はt検定により比較する。
【0036】
3.2 結果
結果を表6に示す。ジンセノサイド コンパウンド‐KはII型コラーゲンが誘発する関節炎を治療することができた。そのうち多投薬量グループの作用が最も高く、31日目(31day)の作用が最良で、抑制率は最高で27.67%に達し、TWHFグループより高く、enbrelグループと同等である。
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節炎の予防または治療薬物の製造におけるジンセノサイド コンパウンド‐Kの使用。

【公表番号】特表2010−503711(P2010−503711A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528576(P2009−528576)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【国際出願番号】PCT/CN2007/002354
【国際公開番号】WO2008/034328
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(509079732)チュージャン・ヒスン・ファーマシューティカル・カンパニー・リミテッド (2)
【出願人】(509079949)フーダン・ユニバーシティー (1)
【出願人】(509079721)シャンハイ・インスティテュート・オブ・ファーマシューティカル・インダストリー (1)
【Fターム(参考)】