説明

スイッチング素子の駆動回路

【課題】一対のスイッチング素子S*#a,S*#bを同一の駆動信号によって駆動する場合、駆動に異常が生じることでそれらの温度同士の乖離が大きくなるものの、これを迅速に検出する手段がないこと。
【解決手段】スイッチング素子S*#a,S*#bの温度を検出する感温ダイオードSDa,SDbの出力電圧は、端子T6a,T6bに印加される。端子T6a,T6bの電位差は、差動増幅回路50を介してウィンドウコンパレータ52に取り込まれる。ウィンドウコンパレータ52では、これらの差が大きい場合に、異常が生じている旨判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の駆動対象スイッチング素子のそれぞれの状態を検出する状態検出手段を備えて且つ、該複数の駆動対象スイッチング素子を単一の駆動信号によって駆動するスイッチング素子の駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載インバータ等の電力変換回路にあっては、大電流を扱う関係上、複数のスイッチング素子を並列に設ける(パラ接続する)ことで、扱うことのできる電流量を倍増させることも提案され、実用化されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−243660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、複数のスイッチング素子をパラ接続して駆動する場合、駆動が正常なら、パラ接続された各スイッチング素子に同一の電流が流れ温度も略同一となると考えられる一方、駆動に異常が生じる場合には、電流や温度に相違が生じると考えられる。ただし、複数のスイッチング素子のそれぞれの状態を検出する状態検出手段は、従来、対象とする1の駆動対象スイッチング素子に信頼性の低下を招くような異常が生じるか否かを検出するために用いられているため、上記のようなパラ接続特有の異常を迅速に検出することができない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、複数の駆動対象スイッチング素子を単一の駆動信号によって駆動するに際し、該複数の駆動対象スイッチング素子のそれぞれの状態を検出する状態検出手段を備える新たなスイッチング素子の駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、複数の駆動対象スイッチング素子のそれぞれの状態を検出する状態検出手段を備えて且つ、該複数の駆動対象スイッチング素子を単一の駆動信号によって駆動するスイッチング素子の駆動回路において、前記複数の駆動対象スイッチング素子のうちの少なくとも2つに対応する状態検出手段による状態の検出結果同士の乖離度合いが大きいことに基づき、前記駆動対象スイッチング素子の駆動に際して異常が生じたと判断する異常判断手段を備えることを特徴とする。
【0008】
単一の駆動信号に基づき駆動対象スイッチング素子が駆動される場合、駆動が正常なら、複数の駆動対象スイッチング素子の状態も互いに近似すると考えられる。上記発明では、この点に鑑み、状態の検出結果同士の乖離度合いが大きい場合に異常があると判断する。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記検出結果は、前記駆動対象スイッチング素子の温度の検出結果を含み、前記異常判断手段は、前記少なくとも2つに対応する温度の検出結果同士の乖離度合いが大きいことに基づき前記異常が生じたと判断するものであることを特徴とする。
【0010】
駆動対象スイッチング素子が同一に駆動されない場合、これらに温度差が生じうる。このため、温度の検出結果同士の乖離度合いが大きい場合には、駆動対象スイッチング素子同士で駆動状態がそろわない異常が生じていると判断できる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記異常判断手段は、前記異常が生じたと判断するための前記乖離度合いの閾値を、前記駆動対象スイッチング素子を流れる電流量に応じて可変設定する可変手段を備えることを特徴とする。
【0012】
駆動対象スイッチング素子の個体差や配置環境の相違等に起因して、駆動が正常であっても温度にずれが生じうる。そしてこの温度のずれは、駆動対象スイッチング素子を流れる電流が大きいほど大きくなると考えられる。これは、電流が大きいほど駆動対象スイッチング素子の温度が高くなるためである。上記発明では、この点に鑑み、閾値を可変設定する。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の発明において、前記駆動対象スイッチング素子は、電圧制御形のスイッチング素子であり、前記異常判断手段は、前記異常が生じたと判断するための前記乖離度合いの閾値を、前記駆動対象スイッチング素子の電流の流通経路の一対の端部のいずれか一方および開閉制御端子間の容量と前記開閉制御端子に印加する電圧値との少なくとも一方に応じて可変操作可能な操作手段を備えることを特徴とする。
【0014】
駆動対象スイッチング素子が同一に駆動されない場合、これらに温度差が生じうる。このため、温度の検出結果同士の乖離度合いが大きい場合には、駆動対象スイッチング素子同士で駆動状態がそろわない異常が生じていると判断できる。ただし、駆動対象スイッチング素子の個体差や配置環境の相違等に起因して、駆動が正常であっても温度にずれが生じうる。そしてこの温度のずれは、駆動対象スイッチング素子の上記容量や開閉制御端子に対する印加電圧に応じて相違する。上記発明では、この点に鑑み、閾値を可変操作可能とした。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記状態検出手段は、前記駆動対象スイッチング素子付近の温度を検出する感温ダイオードを備え、前記異常判断手段は、前記検出結果としての前記感温ダイオードについての前記少なくとも2つに対応する出力電圧同士の乖離度合いに基づき前記異常の有無を判断することを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記駆動対象スイッチング素子は、電圧制御形のスイッチング素子であり、前記状態検出手段は、前記駆動対象スイッチング素子の電流の流通経路の一対の端部のいずれか一方および開閉制御端子間の電圧を検出する電圧検出手段と、前記駆動対象スイッチング素子を流れる電流を検出する電流検出手段とを備え、前記異常判断手段は、前記電流検出手段の検出値に基づき前記駆動対象スイッチング素子に電流が流れ始めたと判断されるときに前記電圧検出手段によって検出される電圧についての前記少なくとも2つに対応する値同士の差に基づき、前記異常の有無を判断することを特徴とする。
【0017】
駆動対象スイッチング素子に電流が流れ始める際の上記いずれか一方および開閉制御端子間の電圧である閾値電圧は、駆動対象スイッチング素子の温度に応じて変化する。このため、閾値電圧を検出することで、温度を検出することができる。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記状態検出手段は、前記駆動対象スイッチング素子を流れる電流を検出する電流検出手段を備え、前記異常判断手段は、前記駆動対象スイッチング素子に流れる電流についての前記電流検出手段によって検出される波形に基づき、前記異常の有無を判断することを特徴とする。
【0019】
駆動対象スイッチング素子の閾値電圧は、温度に依存して変化する。このため、駆動対象スイッチング素子同士で温度が相違すると、同一の駆動信号によってオン状態に切り替えたとしても電流の流れ始めるタイミングが相違しうる。上記発明では、この点に鑑み、電流の波形に基づき温度を検出する。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記状態検出手段は、前記駆動対象スイッチング素子を流れる電流を検出する電流検出手段を備え、前記異常判断手段は、前記少なくとも2つに対応する前記電流検出手段によって検出される値同士の乖離度合いが大きいことに基づき、前記駆動対象スイッチング素子の駆動に際して異常が生じたと判断することを特徴とする。
【0021】
駆動対象スイッチング素子が同一に駆動されない場合、これらに流れる電流が相違するおそれがある。上記発明では、この点に鑑み異常の有無を判断する。
【0022】
請求項9記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記駆動対象スイッチング素子は、電圧制御形のスイッチング素子であり、前記状態検出手段は、前記駆動対象スイッチング素子の電流の流通経路の一対の端部のうちのいずれか一方および開閉制御端子間の電圧を検出する電圧検出手段を備え、前記異常判断手段は、前記少なくとも2つに対応する電圧検出手段によって検出される電圧同士の乖離度合いが大きいことに基づき、前記駆動対象スイッチング素子の駆動に際して異常が生じたと判断することを特徴とする。
【0023】
駆動対象スイッチング素子が同一に駆動されない場合、これら開閉制御端子の電圧が相違するおそれがある。上記発明では、この点に鑑み異常の有無を判断する。
【0024】
請求項10記載の発明は、請求項8または9記載の発明において、前記異常判断手段は、前記異常が生じたと判断するための前記乖離度合いの閾値を、前記駆動対象スイッチング素子を流れる電流量に応じて可変設定する可変手段を備えることを特徴とする。
【0025】
駆動対象スイッチング素子が正常に駆動されている場合であっても、これらの個体差等に起因して、これらを流れる電流量や、開閉制御端子の電圧にはずれが生じうる。そして電流量のずれ量は、電流量が大きいほど大きくなると考えられる。また、ミラー期間を過ぎる以前の開閉制御端子の電圧は、駆動対象スイッチング素子を流れる電流量に応じて変化する。上記発明では、この点に鑑み、電流量に応じた可変設定を行なう。
【0026】
請求項11記載の発明は、請求項8〜10のいずれか1項に記載の発明において、前記駆動対象スイッチング素子は、電圧制御形のスイッチング素子であり、前記異常判断手段は、前記異常が生じたと判断するための前記乖離度合いの閾値を、前記駆動対象スイッチング素子の電流の流通経路の一対の端部のいずれか一方および開閉制御端子間の容量と前記開閉制御端子に印加する電圧値との少なくとも一方に応じて可変操作可能な操作手段を備えることを特徴とする。
【0027】
駆動対象スイッチング素子が正常に駆動されている場合であっても、これらの個体差等に起因して、これらを流れる電流量や、開閉制御端子の電圧にはずれが生じうる。そしてこれらのずれ量は、印加する電圧値の大きさや上記容量に応じて変化すると考えられる。上記発明では、この点に鑑み、可変操作を可能とした。
【0028】
請求項12記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の発明において、前記異常判断手段によって異常がある旨判断される場合、前記駆動対象スイッチング素子の駆動を制限する制限手段をさらに備えることを特徴とする。
【0029】
上記発明では、異常時に駆動制限をすることで、異常事態が悪化することを好適に抑制することができる。
【0030】
請求項13記載の発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記異常判断手段によって異常がある旨判断される場合、その旨を外部に通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする。
【0031】
上記発明では、通知手段を備えることで、異常事態を把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるドライブユニットの回路構成を示す回路図。
【図3】第2の実施形態にかかるドライブユニットの回路構成を示す回路図。
【図4】第3の実施形態にかかるドライブユニットの回路構成を示す回路図。
【図5】同実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す流れ図。
【図6】第4の実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す流れ図。
【図7】第5の実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す流れ図。
【図8】第6の実施形態にかかる異常診断処理の手順を示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかるスイッチング素子の駆動回路を車載主機としての回転機に接続される電力変換回路の駆動回路に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0034】
図1に、本実施形態にかかる制御システムの全体構成を示す。モータジェネレータ10は、車載主機であり、図示しない駆動輪に機械的に連結されている。モータジェネレータ10は、インバータINVを介してたとえば百V以上の端子電圧を有する高電圧バッテリ12およびコンデンサCに接続されている。インバータINVは、スイッチング素子S*pa,S*na(*=u,v,w)の直列接続体と、スイッチング素子S*pb,S*bの直列接続体との一対の直列接続体を3組ずつ備えており、これら各一対の直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。これらスイッチング素子S*#a,S*#b(*=u,v,w;#=p,n)として、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードD*#a,D*#bが逆並列に接続されている。
【0035】
制御装置18は、低電圧バッテリ16を電源とする制御装置である。制御装置18は、モータジェネレータ10を制御対象とし、その制御量を所望に制御すべく、インバータINVを操作する。詳しくは、インバータINVのスイッチング素子S*pa,S*Pb,S*na,S*nbを操作すべく、操作信号g*p,g*nをドライブユニットDUに出力する。ここで、高電位側の操作信号g*pと、対応する低電位側の操作信号g*nとは、互いに相補的な信号となっている。換言すれば、高電位側のスイッチング素子S*pa,S*pbと、対応する低電位側のスイッチング素子S*na,S*nbとは、交互にオン状態とされる。
【0036】
上記高電圧バッテリ12を備える高電圧システムと低電圧バッテリ16を備える低電圧システムとは、互いに絶縁されており、これらの間の信号の授受は、例えばフォトカプラ等の絶縁素子を備えるインターフェース14を介して行われる。
【0037】
図2に、上記ドライブユニットDUの構成を示す。
【0038】
図示されるように、ドライブユニットDUは、1チップ化された半導体集積回路であるドライブIC20を備えている。ドライブIC20は、端子電圧VHの直流電圧源22を備え、これが、端子T1、定電流用抵抗体24、端子T2、PチャネルMOS電界効果トランジスタ(定電流用スイッチング素子26)を介して端子T3に接続されている。そして端子T3には、ゲート抵抗体28を介してスイッチング素子S*#a,S*#bのゲートが接続されている。
【0039】
一方、上記端子T3は、放電用スイッチング素子30を介して端子T4に接続されている。そして、端子T4は、スイッチング素子S*#a,S*#bの電流の流通経路の一対の端部のうちの一方(エミッタ)に接続されている。
【0040】
上記定電流用スイッチング素子26および放電用スイッチング素子30は、ドライブIC20内の駆動制御部32によって操作される。すなわち、駆動制御部32では、端子T5を介して入力される上記操作信号g*#に基づき、定電流用スイッチング素子26と放電用スイッチング素子30とを交互にオン・オフすることでスイッチング素子S*#a,S*#bを駆動する。詳しくは、操作信号g*#がオン操作指令となることで、放電用スイッチング素子30をオフして且つ定電流用スイッチング素子26をオンする。一方、操作信号g*#がオフ操作指令となることで、定電流用スイッチング素子26をオフして且つ放電用スイッチング素子30をオンする。
【0041】
ここで、定電流用スイッチング素子26をオン操作する期間においては、その開閉制御端子(ゲート)への印加電圧を、定電流用抵抗体24の電圧降下量(端子T1,T2間の電圧Vm)を規定値に制御するために操作する。これにより、定電流用抵抗体24を流れる電流量を目標値とすることができ、ひいてはスイッチング素子S*#a,S*#bのゲート充電処理を定電流制御にて行うことができる。なお、定電流用スイッチング素子26を用いた定電流制御によれば、スイッチング素子S*#a,S*#bのゲート電圧は、端子電圧VHに収束する。ゲート電圧が収束値へと近づくと、定電流制御の制御性が低下する。これは、ゲート電圧Vgeが、目標値の電流が流れる場合の定電流用抵抗体24およびゲート抵抗体28の電圧降下量と定電流用スイッチング素子26の電圧降下量の最小値とを端子電圧VHから減算した値以上となると、定電流用スイッチング素子26のゲート電圧の操作によっては、定電流用抵抗体24の電圧降下量を規定値に制御することができなくなるためである。このため、端子電圧VHは、スイッチング素子S*#a,S*#bの正常駆動時においてスイッチング素子S*#a,S*#bを流れる電流の最大値を飽和電流とするゲート電圧までは、定電流制御の制御性が低下しない値に設定されている。
【0042】
スイッチング素子S*#a付近には、スイッチング素子S*#aの温度を検出するための感温ダイオードSDaが配置されている。感温ダイオードSDaのアノードには、端子T6aを介して直流電圧源40aを電源とする定電流源42aが接続されている。一方、スイッチング素子S*#b付近には、スイッチング素子S*#bの温度を検出するための感温ダイオードSDbが配置されている。感温ダイオードSDbのアノードには、端子T6bを介して直流電圧源40bを電源とする定電流源42bが接続されている。
【0043】
端子T6aの電圧は、コンパレータ44aの反転入力端子に接続され、コンパレータ44aの非反転入力端子には、基準電源46の基準電圧Vrefが印加される。これにより、コンパレータ44aの出力は、感温ダイオードSDaによって検出される温度が閾値温度以上となる場合に論理「H」に反転する。ちなみに、コンパレータ44aの反転入力端子に感温ダイオードSDaのアノードを接続したのは、感温ダイオードSDaのアノード電圧と温度との間に負の相関があるためである。
【0044】
同様に、端子T6bの電圧は、コンパレータ44bの反転入力端子に接続され、コンパレータ44bの非反転入力端子には、基準電源46の基準電圧Vrefが印加される。これにより、コンパレータ44bの出力は、感温ダイオードSDbによって検出される温度が閾値温度以上となる場合に論理「H」に反転する。
【0045】
上記コンパレータ44a,44bの少なくとも一方が論理「H」に反転すると、OR回路58を介してフェール信号FL(論理「H」の信号)が駆動制御部32に出力される。これにより、駆動制御部32では、定電流用スイッチング素子26や放電用スイッチング素子30の駆動を停止させる。フェール信号FLは、また、端子T7を介して低電圧システム(制御装置18)に出力される。さらに、このフェール信号FLによって、先の図1に示すフェール処理部14aでは、インバータINVをシャットダウンする。ちなみに、フェール処理部14aの構成は、例えば特開2009−60358号公報の図3に記載のものとすればよい。
【0046】
本実施形態では、上記スイッチング素子S*#a,S*#bの温度が閾値温度以上となることでスイッチング素子S*#a,S*#bの駆動に異常が生じたと判断する処理に加えて、スイッチング素子S*#a,S*#b同士の状態が乖離する異常の有無を判断する処理をも行なう。すなわち、一対のスイッチング素子S*#a,S*#bは、互いに同一の操作信号g*#によって駆動されるものである。より詳しくは、共通の端子T3を介して出力される電荷によって充電されるものであり、また、共通の端子T3を介してゲートの電荷が引き抜かれるものである。このため、これら一対のスイッチング素子S*#a,S*#b同士の状態は、これらの駆動状態が正常であるなら互いに等しいと考えられる。このため、状態の乖離に基づき駆動異常の有無を判断することができる。
【0047】
詳しくは、乖離度合いの判断対象となる状態として、本実施形態では温度を採用する。これは、一対のスイッチング素子S*#a,S*#bを流れる電流が相違する等、一対のスイッチング素子の駆動状態が同一とならない場合には、これらの温度が相違することとなると考えられることに鑑みたものである。
【0048】
具体的には、端子T6a,T6bの電位差は、差動増幅回路50によって所定に変換された後、変換されたアナログ電圧信号が、ウィンドウコンパレータ52に取り込まれる。ウィンドウコンパレータ52には、判定用電源54の判定電圧VthL(<0)と、判定用電源56の判定電圧VthH(>0)とが入力される。これにより、ウィンドウコンパレータ52では、差動増幅回路50の出力電圧が判定電圧VthLと判定電圧VthHとの間にない場合に、論理「H」の信号をOR回路58に出力する。なお、ウィンドウコンパレータ52は、たとえば一対のコンパレータを備えて構成することができる。
【0049】
こうした構成によれば、感温ダイオードSDaによって検出されるスイッチング素子S*#aの温度と、感温ダイオードSDbによって検出されるスイッチング素子S*#bの温度との乖離度合いが大きい場合に、ウィンドウコンパレータ52から異常である旨の信号(論理「H」の信号)が出力される。ここで、一対の判定電圧VthL,VthHを用いているのは、感温ダイオードSDa,SDbのいずれの出力電圧が高いかにかかわらずこれら一対の出力電圧同士の乖離が大きい場合に異常であると判断するためである。
【0050】
さらに、本実施形態では、判定電圧VthL,VthHをスイッチング素子S*#a、S*#bに流れる電流に応じて可変設定する。これは、一対のスイッチング素子S*#a,S*#bに流れる電流が大きいほどそれらの温度が高くなる傾向にあるため、電流が大きいほど正常時におけるこれらの温度のばらつきも大きくなると考えられるためである。具体的には、本実施形態では、スイッチング素子S*#aを流れる電流に応じて判定電圧VthL,VthHを可変設定する。すなわち、スイッチング素子S*#aは、これを流れる電流と相関を有する微小電流を出力するセンス端子Stを備えており、センス端子Stは、抵抗体60a,62aを介してエミッタに接続されている。そして、抵抗体62aの電圧降下量(抵抗体60a,62a間の電圧)が端子T8を介して判定用電源54,56に取り込まれる。判定用電源54,56では、端子T8の電圧に応じて判定電圧VthL,VthHを可変設定する。詳しくは、端子T8の電圧が高いほど、一対の判定電圧VthL,VthH間の間隔を拡大する。
【0051】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0052】
(1)一対のスイッチング素子S*#a,S*#bの温度の検出結果同士の乖離度合いが大きい場合に、一対のスイッチング素子S*#a,S*#bの駆動に異常が生じたと判断した。これにより、一対のスイッチング素子S*#a,S*#b同士で駆動状態がそろわない異常が生じているか否かを判断できる。
【0053】
(2)一対のスイッチング素子S*#a,S*#b同士の温度の乖離度合いの閾値(判定電圧VthL,VthH)を、スイッチング素子S*#a,S*#bを流れる電流量に応じて可変設定した。これにより、異常の有無をより高精度に判断することができる。すなわち、電流量が大きいほど温度が高くなる傾向にあるため、正常時であっても温度ばらつきが大きくなる。ここで、電流量が大きいときに基づいて閾値を設定する場合には、電流量が小さい場合に異常を検知することが困難となる。また、電流量が小さいときに基づいて閾値を設定する場合には、電流量が大きい場合に正常であるにもかかわらず異常である旨誤判断するおそれがある。
【0054】
(3)一対のスイッチング素子S*#a,S*#b同士の温度の乖離度合いが大きい異常がある場合、一対のスイッチング素子S*#a,S*#bの駆動を停止させた。これにより、異常事態が悪化することを好適に抑制することができる。
【0055】
(4)一対のスイッチング素子S*#a,S*#b同士の温度の乖離度合いが大きい異常がある場合、その旨を制御装置18に通知した。これにより、異常事態を把握させることができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0056】
本実施形態では、判定電圧VthL,VthHを、スイッチング素子S*#a,S*#bの仕様やドライブユニットDUの仕様に応じて可変設定する。詳しくは、スイッチング素子S*#a,S*#bのゲートおよびエミッタ間容量や、ゲート印加電圧(直流電圧源22の電圧VH)に応じて可変設定する。ここで、スイッチング素子S*#a,S*#bのゲートおよびエミッタ間容量は、スイッチング素子S*#a,S*#bのオン抵抗(コレクタおよびエミッタ間電圧)を定めるパラメータである。また、ゲート印加電圧も、スイッチング素子S*#a,S*#bのオン抵抗(コレクタおよびエミッタ間電圧)を定めるパラメータである。このため、スイッチング素子S*#a,S*#bを流れる電流が同一であったとしても、上記パラメータに応じてこれらの温度が変化する。
【0057】
図3に、本実施形態にかかるドライブユニットDUの回路構成を示す。なお、図3において、先の図2に示した部材に対応するものついては、便宜上同一の符号を付している。
【0058】
図示されるように、判定電圧VthLは、電源73の電圧が、抵抗体70,72によって分圧されることで生成される。そして、抵抗体72は、端子T9,T10を介してドライブIC20に対して外付けされている。一方、判定電圧VthHは、電源77の電圧が、抵抗体74,76によって分圧されることで生成される。そして、抵抗体74は、端子T11,T12を介してドライブIC20に対して外付けされている。
【0059】
こうした構成によれば、ドライブIC20に接続されるスイッチング素子S*#a,S*#bの仕様に応じて、抵抗体72,76の抵抗値を調節することで、判定電圧VthL,VthHを可変設定することができる。同様に、ゲート印加電圧(ドライブIC20に対して外付けされた直流電圧源22の電圧VH)に応じて、抵抗体72,76の抵抗値を調節することで、判定電圧VthL,VthHを可変設定することができる。
【0060】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1),(3),(4)の各効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0061】
(5)ドライブIC20に対して外付けされた抵抗体72,76の抵抗値を調節することで、判定電圧VthL,VthHを操作可能とした。これにより、スイッチング素子S*#a,S*#bの仕様やゲート印加電圧に応じて、判定電圧VthL,VthHを可変設定することができる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0062】
図4に、本実施形態にかかるドライブユニットDUの回路構成を示す。なお、図4において、先の図2に示した部材に対応するものついては、便宜上同一の符号を付している。
【0063】
本実施形態では、ドライブIC20の上述した端子T3に、ツェナーダイオード80およびクランプ用スイッチング素子82の直列接続体を介して端子T4が接続されている。ここで、ツェナーダイオード80のブレークダウン電圧は、スイッチング素子S*#a,S*#bに過度の電流が流れない程度にスイッチング素子S*#,S*#bのゲート電圧を制限するものである。
【0064】
上記端子T3には、さらに、ソフト遮断用抵抗体84およびソフト遮断用スイッチング素子86を介して端子T4が接続されている。
【0065】
一方、上記スイッチング素子S*#aのセンス端子Stは、抵抗体60a,62aの直列接続体を介してエミッタに電気的に接続されており、抵抗体60a,62aによる電圧降下量(抵抗体60a,62aの接続点の電圧Vsda)は、端子T8aを介して、コンパレータ88aの非反転入力端子に取り込まれる。一方、コンパレータ88aの反転入力端子には、基準電源90の基準電圧Vrefが印加されている。これにより、コレクタ電流が過電流閾値Ith以上となることで、コンパレータ88aの出力信号が論理「L」から論理「H」に反転する。
【0066】
同様に、スイッチング素子S*#bのセンス端子Stは、抵抗体60b,62bの直列接続体を介してエミッタに電気的に接続されており、抵抗体60b,62bによる電圧降下量(抵抗体60b,62bの接続点の電圧Vsdb)は、端子T8bを介して、コンパレータ88bの非反転入力端子に取り込まれる。一方、コンパレータ88bの反転入力端子には、基準電源90の基準電圧Vrefが印加されている。これにより、コレクタ電流が過電流閾値Ith以上となることで、コンパレータ88bの出力信号が論理「L」から論理「H」に反転する。
【0067】
コンパレータ88a,88bの出力する論理「H」の信号は、OR回路92を介してクランプ用スイッチング素子82に印加されるとともに、ディレイ94に取り込まれる。ディレイ94は、入力信号が所定時間に渡って論理「H」となることで、フェール信号FLをOR回路58に出力する。
【0068】
こうした構成によれば、スイッチング素子S*#,S*#bに過電流が流れる場合には、まずクランプ用スイッチング素子82のオン操作に伴ってツェナーダイオード80がオン状態とされることで、スイッチング素子S*#a,S*#bのゲート電圧が低下する。これにより、スイッチング素子S*#a,S*#bを流れる電流を制限することができる。そしてその後、過電流が所定時間継続する場合には、ソフト遮断用スイッチング素子86がオン状態とされることから、スイッチング素子S*#a,S*#bが強制的にオフとされる。
【0069】
これにより、コレクタ電流が過電流閾値Ith以上となる状態が所定時間以上継続することで、ソフト遮断用スイッチング素子86がオンとされ、ソフト遮断用抵抗体84およびゲート抵抗体28を介して、スイッチング素子S*#a,S*#のゲートの電荷が放電される。ここで、ソフト遮断用抵抗体84は、放電経路の抵抗値を高抵抗とするためのものである。これは、コレクタ電流が過大である状況下にあっては、スイッチング素子S*#a,S*#bをオン状態からオフ状態へと切り替える速度、換言すればコレクタおよびエミッタ間の遮断速度を大きくすると、サージが過大となるおそれがあることに鑑みたものである。このため、コレクタ電流が過電流閾値Ith以上となると判断される状況下にあっては、ゲート抵抗体28および放電用スイッチング素子30を備える放電経路よりも抵抗値の大きい経路によってスイッチング素子S*#a,S*#bのゲートを放電させる。
【0070】
なお、上記クランプ用スイッチング素子82およびツェナーダイオード80を備えるクランプ回路によるクランプ電圧を、本実施形態では、スイッチング素子S*#a,S*#bを流れる電流を規定値(≧過電流閾値Ith)以下に制限する値に設定する。
【0071】
ここで、本実施形態では、スイッチング素子S*#a,S*#bに過度に大きい電流が流れるか否かの判断に加えて、一対のスイッチング素子S*#a,S*#b同士の温度の乖離度合いが大きいか否かの判断をも行なう。そして一対のスイッチング素子S*#a,S*#bの温度は、これらのゲート電圧Vge、Vgebと、これらを流れる電流(電圧Vsda,Vsdb)とに基づき間接的に検出される。
【0072】
詳しくは、異常判断部95では、端子T8a,T8bの電圧Vsda,Vsdbに加えて、端子T13a,T13bを介してスイッチング素子S*#a,S*#bのゲート電圧Vgea,Vgebを取り込む。
【0073】
図5に、本実施形態にかかる異常の有無の判断処理の手順を示す。この処理は、異常判断部95において、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0074】
この一連の処理では、まずステップS10において、操作信号g*#のオフ操作指令からオン操作指令への切り替え時であるか否かを判断する。そしてステップS10において肯定判断される場合、ステップS12において、スイッチング素子S*#a,S*#bのそれぞれがオン状態に切り替わる電圧(閾値電圧Vtha,Vthb)を取得する処理を行なう。ここで、閾値電圧Vthaは、スイッチング素子S*#aに電流が流れ始めた際(電圧Vsdaが所定値ΔV以上となる時点)でのゲート電圧Vgeaであり、閾値電圧Vthbは、スイッチング素子S*#bに電流が流れ始めた際(電圧Vsdbが所定値ΔV以上となる時点)でのゲート電圧Vgebである。
【0075】
続くステップS14においては、閾値電圧Vtha,Vthb同士の差の絶対値が判定電圧Δth以上であるか否かを判断する。この処理は、スイッチング素子の温度と閾値電圧との間に相関関係があることに鑑み、スイッチング素子S*#a,S*#bの温度同士の乖離度合いが大きいか否かを判断するものである。ここで、判定電圧ΔVthは、スイッチング素子S*#aを流れる電流(電圧Vsda)に応じて可変設定される。なお、実際には、この判定電圧ΔVthは、スイッチング素子S*#a,S*#bの仕様やゲート印加電圧等によっても可変設定される。これは、先の図4に示すように、異常判断部95に印加される電圧信号を抵抗体100の抵抗値によって可変操作することで行なわれる。すなわち、異常判断部95には、直流電圧源98の電圧が、抵抗体99,100によって分圧されたものが印加されている。そして、抵抗体100は、端子T14,T15を介してドライブIC20に対して外付けされているため、これによって異常判断部95に印加される分圧値を可変操作することができる。
【0076】
先の図5の上記ステップS14において肯定判断される場合、ステップS16において、フェール信号FLを出力する。
【0077】
なお、上記ステップS16の処理が完了する場合や、ステップS10,S14において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0078】
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態に準じた効果を得ることができる。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0079】
図6に、本実施形態にかかる異常の有無の判断処理の手順を示す。この処理は、異常判断部95において、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0080】
この一連の処理では、まずステップS20において、操作信号g*#のオフ操作指令からオン操作指令への切り替え時であるか否かを判断する。そしてステップS20において肯定判断される場合、ステップS22において、スイッチング素子S*#a,S*#bに電流が流れ始めるまでに要する時間を計時するタイマTの計時動作を開始する。続くステップS24においては、スイッチング素子S*#aに電流が流れ始めるまでに要した時間Ta(電圧Vsdaが所定値ΔV以上となるまでに要した時間)と、スイッチング素子S*#bに電流が流れ始めるまでに要した時間Tb(電圧Vsdbが所定値ΔV以上となるまでに要した時間)とを取得する。
【0081】
続くステップS26では、時間Taと時間Tbとの差の絶対値が規定時間ΔT以上であるか否かを判断する。この処理は、スイッチング素子の温度と閾値電圧との間に相関関係があることに鑑み、スイッチング素子S*#a,S*#bの温度同士の乖離度合いが大きいか否かを判断するためのものである。ここで、規定時間ΔTは、スイッチング素子S*#aを流れる電流(電圧Vsda)に応じて可変設定される。なお、実際には、この規定時間ΔTは、スイッチング素子S*#a,S*#bの仕様やゲート印加電圧等によっても可変設定される。
【0082】
上記ステップS26において肯定判断される場合、ステップS28においてフェール信号FLを出力する。なお、上記ステップS28の処理が完了する場合や、ステップS20,S26において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0083】
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態に準じた効果を得ることができる。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0084】
図7に、本実施形態にかかる異常の有無の判断処理の手順を示す。この処理は、異常判断部95において、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0085】
この一連の処理では、まずステップS30において、操作信号g*#のオフ操作指令からオン操作指令への切り替え時であるか否かを判断する。そしてステップS30において肯定判断される場合、ステップS32において、オン操作指令への切り替えタイミングからの時間を計時するタイマTの計時動作を開始する。続くステップS34においては、タイマTの値が規定時間Tth以上となったか否かを判断する。ここで、規定時間Tthは、ゲート電圧が直流電圧源22の電圧VHとなると想定されるよりも短い時間に設定される。より詳しくは、ミラー期間にあると想定される時間に設定される。
【0086】
ステップS34において肯定判断される場合、ステップS36において、スイッチング素子S*#aのゲート電圧Vgeaとスイッチング素子S*#bのゲート電圧Vgebとの差の絶対値が判定電圧ΔVge以上であるか否かを判断する。この処理は、一対のスイッチング素子S*#a,S*#bの駆動状態が相違する異常の有無を判断するためのものである。ここで、ミラー期間と想定される期間におけるゲート電圧が相違する要因としては、ゲートおよびエミッタ間容量のばらつきが大きくなっていることや、ゲート充電速度に相違が生じていること等が考えられる。なお、ゲートおよびエミッタ間容量のばらつきは、温度ばらつきによって生じると考えられる。また、上記判定電圧ΔVgeは、スイッチング素子S*#a,S*#bの仕様やゲート印加電圧等によって可変設定される。
【0087】
上記ステップS36において肯定判断される場合、ステップS38においてフェール信号FLを出力する。なお、上記ステップS38の処理が完了する場合や、ステップS30,S36において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0088】
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態に準じた効果を得ることができる。
<第6の実施形態>
以下、第6の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0089】
図8に、本実施形態にかかる異常の有無の判断処理の手順を示す。この処理は、異常判断部95において、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0090】
この一連の処理では、まずステップS40において、操作信号g*#のオフ操作指令からオン操作指令への切り替え時であるか否かを判断する。ステップS40において肯定判断される場合、ステップS42において、先の図4の端子T8aに印加される電圧Vsdaと端子T8bに印加される電圧Vsdbとの差の絶対値が判定電圧ΔVsd以上であるか否かを判断する。この処理は、一対のスイッチング素子S*#a,S*#bの駆動状態が相違する異常の有無を判断するためのものである。なお、上記判定電圧ΔVsdは、スイッチング素子S*#a,S*#bの仕様やゲート印加電圧等によって可変設定される。
【0091】
上記ステップS42において肯定判断される場合、ステップS44においてフェール信号FLを出力する。なお、上記ステップS44の処理が完了する場合や、ステップS40,S42において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0092】
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態に準じた効果を得ることができる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0093】
「可変手段の入力パラメータとしての電流について」
電圧Vsdaに限らず、電圧Vsdbであってもよい。また、スイッチング素子S*#の電流の流通経路の一対の端部間の電圧(コレクタエミッタ間電圧)であってもよい。さらに、モータジェネレータ10に対する指令電流に応じた信号を制御装置18から取り込んで利用してもよい。
【0094】
「操作手段について」
操作手段としては、外付けの抵抗体の抵抗値によって閾値を可変操作するものに限らず、たとえば、一対の入力端子のうちの一方をプルダウンして且つ他方をプルアップすることとし、いずれをプルダウンするかに応じて閾値を内部で可変操作するものとしてもよい。
【0095】
「異常判断処理におけるゲート電圧の利用手法について」
ミラー期間となると想定されるタイミングでの電圧同士の乖離度合いに基づく異常の有無の判断に限らない。たとえばゲート電圧の検出値が閾値電圧Vthとなるまでの時間同士の乖離度合いが大きいことに基づき、スイッチング素子S*#a、S*#bの温度差が大きくなる異常が生じていると判断してもよい。
【0096】
「状態検出手段について」
電流の検出手段としては、電圧Vsda,Vsdbを検出するものに限らず、たとえばスイッチング素子S*#の電流の流通経路の一対の端部間の電圧(コレクタエミッタ間電圧)を検出するものであってもよい。
【0097】
「制限手段について」
スイッチング素子S*#a,S*#bの駆動状態が相違する異常時において充電用スイッチング素子(定電流用スイッチング素子26)を強制的にオフして且つ放電用スイッチング素子30を強制的にオンする手段や、フェール信号FLを用いてインバータINVをシャットダウンさせる手段に限らない。たとえば、スイッチング素子S*#a,S*#bの駆動状態が相違する異常時においても、ソフト遮断用スイッチング素子86を用いてスイッチング素子S*#を強制的にオフ操作するものであってもよい。
【0098】
「通知手段について」
駆動状態の対称性の崩れに関する異常を通知する通知手段としては、フェール信号FLを制御装置18に出力するものに限らない。たとえば、感温ダイオードSDによって検出される温度が過度に大きい異常や、スイッチング素子S*#を流れる電流が過度に大きい異常を示す信号とは別の信号を制御装置18に出力するものであってもよい。この場合、制御装置18は、スイッチング素子S*#を流れる温度が過度に大きい異常が生じた場合とは相違する対処をすることも可能となる。これはたとえば、駆動状態の対称性の崩れに関する異常が生じた場合には、モータジェネレータ10のトルク(電流)の絶対値をゼロよりも大きい値に制御しつつこれを制限した状態で運転することで実現することができる。
【0099】
「1の集積回路によって駆動対象とされる駆動対象スイッチング素子の数について」
1つまたは2つに限らず、3つ以上の場合にも対処可能なものであってもよい。この場合、各2つずつの状態を直接対比させることなく、状態の平均値と各状態との差に基づき、乖離度合いの大小を判断することもできる。
【0100】
「駆動対象スイッチング素子について」
駆動対象スイッチング素子としては、IGBTに限らず、たとえばパワーMOS電界効果トランジスタ等であってもよい。この際、Nチャネルにも限らず、Pチャネルであってもよい。ただしこの場合、電流の流通経路の一対の端部のうちのいずれか一方の電位(ソース電位)に対して開閉制御端子の電位(ゲート電位)を低下させることでオン状態となるため、ゲートに「負」の電荷を充電することで駆動対象スイッチング素子がオン状態となる。
【0101】
「そのほか」
・駆動対象スイッチング素子S*#のオン状態への切り替え処理としては、定電流処理に限らず、たとえばゲート抵抗を介して直流電圧源22の電圧を常時印加するものであってもよい。
【0102】
・駆動対象スイッチング素子S*#のオフ状態への切り替え処理を定電流制御によって行なってもよい。
【0103】
・モータジェネレータ10としては、車載主機に限らず、たとえばシリーズハイブリッド車に搭載される発電機であってもよい。
【符号の説明】
【0104】
50…差動増幅回路、52…ウィンドウコンパレータ、SDa,SDb…感温ダイオード、54,56…判定用電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動対象スイッチング素子のそれぞれの状態を検出する状態検出手段を備えて且つ、該複数の駆動対象スイッチング素子を単一の駆動信号によって駆動するスイッチング素子の駆動回路において、
前記複数の駆動対象スイッチング素子のうちの少なくとも2つに対応する状態検出手段による状態の検出結果同士の乖離度合いが大きいことに基づき、前記駆動対象スイッチング素子の駆動に際して異常が生じたと判断する異常判断手段を備えることを特徴とするスイッチング素子の駆動回路。
【請求項2】
前記検出結果は、前記駆動対象スイッチング素子の温度の検出結果を含み、
前記異常判断手段は、前記少なくとも2つに対応する温度の検出結果同士の乖離度合いが大きいことに基づき前記異常が生じたと判断するものであることを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項3】
前記異常判断手段は、前記異常が生じたと判断するための前記乖離度合いの閾値を、前記駆動対象スイッチング素子を流れる電流量に応じて可変設定する可変手段を備えることを特徴とする請求項2記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項4】
前記駆動対象スイッチング素子は、電圧制御形のスイッチング素子であり、
前記異常判断手段は、前記異常が生じたと判断するための前記乖離度合いの閾値を、前記駆動対象スイッチング素子の電流の流通経路の一対の端部のいずれか一方および開閉制御端子間の容量と前記開閉制御端子に印加する電圧値との少なくとも一方に応じて可変操作可能な操作手段を備えることを特徴とする請求項2または3記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項5】
前記状態検出手段は、前記駆動対象スイッチング素子付近の温度を検出する感温ダイオードを備え、
前記異常判断手段は、前記検出結果としての前記感温ダイオードについての前記少なくとも2つに対応する出力電圧同士の乖離度合いに基づき前記異常の有無を判断することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項6】
前記駆動対象スイッチング素子は、電圧制御形のスイッチング素子であり、
前記状態検出手段は、前記駆動対象スイッチング素子の電流の流通経路の一対の端部のいずれか一方および開閉制御端子間の電圧を検出する電圧検出手段と、前記駆動対象スイッチング素子を流れる電流を検出する電流検出手段とを備え、
前記異常判断手段は、前記電流検出手段の検出値に基づき前記駆動対象スイッチング素子に電流が流れ始めたと判断されるときに前記電圧検出手段によって検出される電圧についての前記少なくとも2つに対応する値同士の差に基づき、前記異常の有無を判断することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項7】
前記状態検出手段は、前記駆動対象スイッチング素子を流れる電流を検出する電流検出手段を備え、
前記異常判断手段は、前記駆動対象スイッチング素子に流れる電流についての前記電流検出手段によって検出される波形に基づき、前記異常の有無を判断することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項8】
前記状態検出手段は、前記駆動対象スイッチング素子を流れる電流を検出する電流検出手段を備え、
前記異常判断手段は、前記少なくとも2つに対応する前記電流検出手段によって検出される値同士の乖離度合いが大きいことに基づき、前記駆動対象スイッチング素子の駆動に際して異常が生じたと判断することを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項9】
前記駆動対象スイッチング素子は、電圧制御形のスイッチング素子であり、
前記状態検出手段は、前記駆動対象スイッチング素子の電流の流通経路の一対の端部のうちのいずれか一方および開閉制御端子間の電圧を検出する電圧検出手段を備え、
前記異常判断手段は、前記少なくとも2つに対応する電圧検出手段によって検出される電圧同士の乖離度合いが大きいことに基づき、前記駆動対象スイッチング素子の駆動に際して異常が生じたと判断することを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項10】
前記異常判断手段は、前記異常が生じたと判断するための前記乖離度合いの閾値を、前記駆動対象スイッチング素子を流れる電流量に応じて可変設定する可変手段を備えることを特徴とする請求項8または9記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項11】
前記駆動対象スイッチング素子は、電圧制御形のスイッチング素子であり、
前記異常判断手段は、前記異常が生じたと判断するための前記乖離度合いの閾値を、前記駆動対象スイッチング素子の電流の流通経路の一対の端部のいずれか一方および開閉制御端子間の容量と前記開閉制御端子に印加する電圧値との少なくとも一方に応じて可変操作可能な操作手段を備えることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項12】
前記異常判断手段によって異常がある旨判断される場合、前記駆動対象スイッチング素子の駆動を制限する制限手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項13】
前記異常判断手段によって異常がある旨判断される場合、その旨を外部に通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−191724(P2012−191724A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52018(P2011−52018)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】