説明

スイッチング電源システム

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明はスイッチング電源システムに関し、特にスイッチング動作をするトランジスタを有するスイッチング電源の制御に関する。
【0002】
【従来技術】従来、この種のスイッチング電源システムは、図4に示されているように、電源出力用のトランス100 の他にメイン回路におけるスイッチングトランジスタ4への電流検出用のトランス90を設けて異常検出を行っていた。すなわち、従来のスイッチング電源システムにおいては、スイッチング電源のメイントランジスタ4に直列にメイン回路の電流を検出するトランス90が接続されており、このトランス90の2次側は、トランス90の2次側電圧値が設定した基準値を越えた場合、その情報を電源制御部43に送信する異常検出回路92に接続されている。異常検出回路92は、スイッチング電源の動作制御を行う電源制御部43に接続されている。
【0003】次に、動作を説明する。
【0004】メイン回路内に異常電流が流れると、この電流はメイントランジスタに直列に接続されたトランス90の1次側に流れ、これによりトランスの2次側に電圧が発生する。この電流は整流部91で整流後、異常検出回路92において、この整流電圧と予め設定された基準電圧値とが比較器(CMP)で比較される。基準電圧値を越えた場合、異常検出回路92はこの情報を電源制御部93へ送信し、電源制御部93は、トランジスタ4へのスイッチングパルスの出力を断とし、スイッチング電源の動作を停止させていた。
【0005】しかし、上述した従来の制御方式では、メイン回路の電流を検出しているためメインスイッチングトランジスタ4のオン動作時のエミッタ―コレクタ間の電圧がトランジスタの温度上昇、不良等により上昇しても検出できない。よって、エミッタ―コレクタ間の電圧が上昇し、トランジスタの損失が増加し続け、破壊するまで動作してしまうという欠点があった。
【0006】
【発明の目的】本発明は上述した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的はスイッチングトランジスタの破壊を有効に防止することのできるスイッチング電源システムを提供することである。
【0007】
【発明の構成】本発明によるスイッチング電源システムはスイッチング動作をするスイッチングトランジスタと、抵抗と所定の順方向電圧値を有する少なくとも1つのダイオードとが直列接続されこれらが前記スイッチングトランジスタと並列に接続された回路と、前記少なくとも1つのダイオードの両端の電圧及び前記スイッチングトランジスタのコレクタ−エミッタ間の電圧の少なくとも一方を検出する検出回路と、この検出結果に応じて前記スイッチングトランジスタの動作を停止せしめる制御手段と、を有することを特徴とする。本発明による他のスイッチング電源システムは、スイッチング動作をするスイッチングトランジスタと、抵抗と所定の順方向電圧値を有する少なくとも1つのダイオードとが直列接続されこれらが前記スイッチングトランジスタと並列に接続された回路と、前記少なくとも1つのダイオードの両端の電圧及び前記スイッチングトランジスタのコレクタ−エミッタ間の電圧の少なくとも一方を検出する検出回路とこの検出結果に応じて前記トランジスタの負荷を減少せしめる制御手段と、を有することを特徴とする。本発明によるさらに他のスイッチング電源システムは、スイッチング動作をするスイッチングトランジスタと、前記トランジスタを冷却せしめる冷却手段と、抵抗と所定の順方向電圧値を有する少なくとも1つのダイオードとが直列接続されこれらが前記スイッチングトランジスタと並列に接続された回路と、前記少なくとも1つのダイオードの両端の電圧及び前記スイッチングトランジスタのコレクタ−エミッタ間の電圧の少なくとも一方を検出する検出回路とこの検出結果に応じて前記冷却手段の冷却能力を増加せしめる制御手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
【実施例】次に、本発明について図面を参照して説明する。
【0009】図1,図2,図3は、夫々本発明によるスイッチング電源システムの第1,第2,第3の実施例の構成を示すブロック図であり、図4と同等部分は同一符号により示されている。これら各実施例では、従来と異なり、トランジスタ4のコレクタ―エミッタ間の電圧を検出しており、その電圧値が所定値を越えたときに所定の制御を行うものである。
【0010】まず、第1の実施例が示されている図1において、スイッチング電源1,2及び3は、その出力端子がバス17により並列に接続されている。そして、これらスイッチング電源は負荷18に対して安定化直流を供給するための並列運転を行っており、スイッチング電源1,2,3は各々信号線14,15,16を介して電源制御部13により制御されている。
【0011】スイッチング電源内のトランジスタ4のコレクタには抵抗5が接続され、抵抗器5の他端はダイオード6,7及び8を介してトランジスタ4のエミッタに接続されている。ダイオード6のアノードは異常検出部9に接続され、異常検出部9はダイオード6のアノードとトランジスタ4のエミッタとの間の電圧を検出して予め設定された基準電圧と比較する。そして、ダイオード6のアノードとトランジスタ4のエミッタとの間の電圧の方が高い場合は、その情報が信号線10,11,12を介して電源制御部13に報告される。
【0012】すなわち、いずれかの異常検出部9において、ダイオード6のアノードとトランジスタ4のエミッタとの間の電圧が予め設定された基準電圧より高くなり、異常動作が検出された時、その情報は信号線10,11,12を介して電源制御部13に報告される。その報告により電源制御部13は、スイッチング電源1,2,3に対し信号線14,15,16を介して動作停止命令を送り、これによりスイッチング電源1,2,3は動作を停止する。
【0013】以上の異常検出動作を詳細に説明する。トランジスタ4のコレクタ―エミッタ間には、それと並列に抵抗器5並びにダイオード6、7及び8とが接続されている。そして、異常検出部9は3つのダイオード6、7及び8の両端の電圧を検出入力とする。
【0014】抵抗器5は非常に高い値、例えば500 [KΩ]とし、電源電圧は例えば300 [V]とする。
【0015】トランジスタ4はスイッチング制御されるが、そのオン時にのみコレクタ―エミッタ間電圧を検出するために、異常検出部9の入力段には図示せぬアナログスイッチが設けられており、トランジスタ4のオン時にこのアナログスイッチがオンとなる。トランジスタ4のオフ時には、アナログスイッチもオフとなる。
【0016】かかる構成において、トランジスタ4がオフ状態の時には、抵抗器5並びに3つのダイオード6、7及び8を電流が流れる。ここで、各ダイオードの構成を同一とし、1つ当りのVF を0.6 [V]とすれば、トランジスタ4がオフ状態の時には、0.6 ×3=1.8 [V]が現れる。
【0017】一方、トランジスタ4がオフ状態の時には、正常であればコレクタ―エミッタ間電圧は、0.8 [V]程度になる。このとき、異常検出部9の入力段に設けられている図示せぬアナログスイッチがオンし、この電圧値が検出される。なお、3つのダイオード6、7及び8には電流が流れない。
【0018】コレクタ―エミッタ間電圧が異常になり、例えば2[V]程度になると、異常検出部9内の基準電圧値を越え、その情報が電源制御部13に報告される。これにより、スイッチング電源1の停止制御が行われる。
【0019】なお、本例では、3つのダイオード6、7及び8を設けているため、トランジスタ4のオンオフの状態にかかわらず、異常検出部9には、最大でも2[V]程度が印加されるだけで済み、回路設計上都合が良い。
【0020】他のスイッチング電源2や3についても同様の内部構成で、同様の動作を行う。
【0021】次に、第2の実施例が示されている図2において、ダイオード6のアノードとトランジスタ4のエミッタとの間の電圧が予め設定された基準電圧より高くなり、いずれかの異常検出部9で異常動作が検出された時(異常検出自体は図1と同様に行われる)、その情報は信号線10,11,12を介して電源制御部131 に報告される。その報告により、電源制御部131 は、スイッチング電源1に対してトランジスタの負荷を減少させる命令を信号線14を介して送出し、またスイッチング電源2,3に対してはトランジスタの負荷を増加させる命令を信号線15,16を介し送出し、各々スイッチング電源は電源制御部131 の指示に従って動作する。
【0022】すなわち、3つのスイッチング電源1〜3のうち、トランジスタの損失が大きいものについては、そのトランジスタの温度上昇を抑えるために負荷電流(出力電流)を減じさせ、その損失が小さいものについては、負荷電流(出力電流)を増加させることにより、各トランジスタの温度が安全領域に入るように動作させるのである。
【0023】この場合、図5に示されているように、各スイッチング電源1〜3のメイン回路の電流を各トランスにて検出し、それを整流部で整流して電圧信号に変換する。この各電圧信号を電源制御部131 内の演算器30(CPU等)に入力して電流値に換算し、電流を減少させる電源及びそれを増加させる電源を決定し、その減少量及び増加量に応じた電圧信号を送出する。この電圧信号は比較器(CMP)31〜33に入力され、所定の三角波と比較されてスイッチングパルス幅が決定される。
【0024】これにより、各々のスイッチング電源内のトランジスタへのスイッチングパルスの幅が変わるのでトランジスタの負荷電流の増減調整ができるのである。なお、増減の程度は、上述のように、各トランジスタの温度が安全領域に入るようにすれば良い。
【0025】次に、第3の実施例が示されている図3において、ダイオード6のアノードとトランジスタ4のエミッタとの間の電圧が予め設定された基準電圧より高くなり、いずれかの異常検出部9で異常動作が検出された時(異常検出自体は図7と同様に行われる)、その情報は信号線10,11,12を介して電源制御部132 に報告される。その報告により、電源制御部132 は、スイッチング電源1を冷却している冷却ファン19に対して、風量を増加させる命令を信号線20を介して送出し、冷却ファン19はファンの風量を増加させる。すなわち、冷却ファン19への印加電圧を上昇させれば良い。また、正常時には冷却ファンを停止させておき、異常時にのみ動作させても良い。さらに、ファン以外の冷却手段を設け、これを同様に制御しても良い。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、トランジスタのコレクタ―エミッタ電圧の異常を直接検出し、スイッチング電源の停止、ファンの風量増加等の制御を行うことにより、スイッチングトランジスタの破壊を有効に防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例によるスイッチング電源システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施例によるスイッチング電源システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第3の実施例によるスイッチング電源システムの構成を示すブロック図である。
【図4】従来のスイッチング電源システムの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施例におけるトランジスタの負荷の増減方式の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1,2,3 スイッチング電源
4 トランジスタ
5 抵抗器
9 異常検出部
13,131 ,132 電源制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 スイッチング動作をするスイッチングトランジスタと、抵抗と所定の順方向電圧値を有する少なくとも1つのダイオードとが直列接続されこれらが前記スイッチングトランジスタと並列に接続された回路と、前記少なくとも1つのダイオードの両端の電圧及び前記スイッチングトランジスタのコレクタ−エミッタ間の電圧の少なくとも一方を検出する検出回路と、この検出結果に応じて前記スイッチングトランジスタの動作を停止せしめる制御手段と、を有することを特徴とするスイッチング電源システム。
【請求項2】 スイッチング動作をするスイッチングトランジスタと、抵抗と所定の順方向電圧値を有する少なくとも1つのダイオードとが直列接続されこれらが前記スイッチングトランジスタと並列に接続された回路と、前記少なくとも1つのダイオードの両端の電圧及び前記スイッチングトランジスタのコレクタ−エミッタ間の電圧の少なくとも一方を検出する検出回路と、この検出結果に応じて前記トランジスタの負荷を減少せしめる制御手段と、を有することを特徴とするスイッチング電源システム。
【請求項3】 スイッチング動作をするスイッチングトランジスタと、前記トランジスタを冷却せしめる冷却手段と、抵抗と所定の順方向電圧値を有する少なくとも1つのダイオードとが直列接続されこれらが前記スイッチングトランジスタと並列に接続された回路と、前記少なくとも1つのダイオードの両端の電圧及び前記スイッチングトランジスタのコレクタ−エミッタ間の電圧の少なくとも一方を検出する検出回路と、この検出結果に応じて前記冷却手段の冷却能力を増加せしめる制御手段と、を有することを特徴とするスイッチング電源システム。

【図4】
image rotate


【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図5】
image rotate


【特許番号】第2818510号
【登録日】平成10年(1998)8月21日
【発行日】平成10年(1998)10月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−353875
【出願日】平成3年(1991)12月18日
【公開番号】特開平5−168232
【公開日】平成5年(1993)7月2日
【審査請求日】平成7年(1995)11月29日
【出願人】(000168285)甲府日本電気株式会社 (572)
【参考文献】
【文献】特開 昭54−97752(JP,A)
【文献】特開 平5−146149(JP,A)
【文献】実開 平2−103788(JP,U)
【文献】実開 平1−82682(JP,U)