説明

スイッチング電源回路

【課題】電力効率の高いスイッチング電源を実現する。
【解決手段】スイッチング電源回路において、直流電源に対して直列接続される第1及び第2のスイッチング素子と、共振回路と、1次側巻線と第1及び第2の2次側巻線とを有するトランスと、第1の2次側巻線の電圧を整流平滑し外部負荷に供給するための出力端子と、1次側巻線と共振回路とに共振電流を流すために第1及び第2のスイッチング素子を交互に開閉するためのパルスを生成するパルス生成手段と、出力端子に接続された外部負荷における消費電力レベルが所定の電力レベル以上であるか否かを検知する検知手段と、所定の電力レベル以上であることが検知された場合に所定の電圧をパルス生成手段に入力し、所定の電力レベル未満であることが検知された場合に第2の2次側巻線の電圧を整流平滑した電圧をパルス生成手段に入力する切替手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パルス幅を制御することにより出力電圧を調節するパルス幅変調(PWM)制御型のスイッチング電源がある(例えば特許文献1や特許文献2)。更に、電流共振を利用し、損失改善、ノイズ低減を図ったスイッチング電源がある。図9は、パルス幅制御に加えて、電流共振を利用した電源回路(以下、電流共振型PWM電源と呼ぶ)の代表的な回路構成図である。図9において、直流電源1,2は、通常、商用AC電源を整流平滑し構成される。直流電源は、スイッチング素子3,4に接続され、2つのスイッチング素子3,4は、交互にON/OFFし、トランス7の1次側巻線に正および負方向の電流を交互に流す動作をおこなう。スイッチング素子3,4をON/OFF制御するパルス信号は、パルス幅制御部15から供給される。
【0003】
パルス幅制御部15は、例えば専用ICにより実現され、発振、基準電圧生成、誤差アンプ、パルス幅制御を行う回路を有する。トランス7に流れる電流は、インダクタンス6、コンデンサ5を介して、直流電源1,2に戻る。コンデンサ5の容量は、インダクタンス6との組み合わせで決定される直列共振周波数が、パルス周波数より若干高めになるように選定される。ここで、インダクタンス6は、独立素子またはトランス7の1次側巻線の漏れインダクタンスである。トランス7の1次側巻線8に流れる電流によって誘起されるアンプ出力用巻線9の交流出力は、ブリッジダイオード11、平滑コンデンサ12により整流平滑され直流電圧が得られる。直流出力電圧は、電力の供給先である外部負荷14に印加される。なお、図9における外部負荷14は、任意の負荷回路(例えばアンプなど)の入力インピーダンスを等価的に表現したものである。
【0004】
また、直流出力には、誤差検出抵抗13が接続されており、負荷に加わる電圧を分圧し、分圧電圧をパルス幅制御部15に送る。パルス幅制御部内の誤差アンプは分圧電圧と基準電圧の誤差を増幅し、パルス幅制御回路は当該誤差に基づいて出力するパルス幅を制御する。具体的には、分圧電圧が基準電圧より高い場合は、パルス幅を狭くし、分圧電圧が基準電圧より低い場合は、パルス幅を広くするように動作する。このようにして、負荷抵抗14に加わる直流電圧が一定に維持される。すなわち、外部負荷14の抵抗値が小さな値に変化した場合は、負荷電流が増加し直流出力電圧が低下するため、パルス幅が広くなるように(電圧が高くなるように)フィードバックがかかり、出力電圧が一定になるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−22760号公報
【特許文献2】特開2007−020391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電力を供給する外部負荷として高出力オーディオアンプを想定する場合、アンプ出力用(増幅動作用)の直流電圧(例えば90V)と音声信号処理用の直流電圧(例えば12V)とでは、たとえば、7.5倍もの差がある。そこで、効率の観点から、図10に示すように、2次側アンプ出力用巻線9、信号系用巻線(図示せず)をそれぞれに別々の2次側巻線として用意する。また、パルス幅制御部15は、低電圧(例えば12V)で動作するため、同様に、パルス幅制御部15用の制御用直流電圧を取り出す制御巻線10を用意することを考える。制御巻線10の交流出力を整流平滑回路17を介して制御用直流電圧とし、パルス幅制御部15に入力することにより、整流平滑回路17の出力電圧が一定となるように制御することが出来る。なお、ここでは、電源のスイッチングノイズが音声信号処理系に悪影響するのを防ぐため、制御巻線10を信号系用巻線(図示せず)とは別の巻線として用意することを想定している。
【0007】
しかしながら、図10に示す回路においては、アンプ出力段の直流電圧および音声信号処理用の直流電圧の方は、一定電圧に制御されない可能性がある。具体的には、アンプの音声入力信号が小さくアンプ出力が小さい場合、負荷インピーダンス値が大きい値となる。そのため、シンク電流が小さく、平滑コンデンサ12での放電による電圧降下の応答速度が遅くなり、結果として定電圧制御が正しく行われず高めの電圧になるという問題が生じ得る。
【0008】
また、アンプの音声入力信号が大きくアンプ出力が大きい場合、トランスのコアサイズの制限(巻き数制限)から漏れインダクタンスの影響が相対的に大きくなる。例えば、制御巻線の巻き数は4ターンであり、アンプ出力用巻線の巻き数は30ターンである。定電圧制御される制御用の直流電圧は、漏れインダクタンスと本来の巻線部分のインダクタンスとに現れる交流電圧が整流平滑されたもので、本来の巻線部分の交流電圧は低めである。つまり、本来の巻線部分の交流電圧がアンプ出力用巻線9の交流電圧に反映されるため、アンプ出力段電圧は低めになる。特に、高出力時には、この影響が顕著に現れることになる。さらに、高出力時には、共振回路に流れる電流が大きく、共振回路のQ値の影響によりパルス幅の変化が抑えられる。そのため、制御巻線10に対する定電圧制御の精度が下がりアンプ出力段電圧が低下するとも考えられる。つまり、高負荷時に定格出力が得られないという問題が生じ得る。
【0009】
本発明は、上述の1以上の問題点を解決し、高出力時の出力低下を低減しつつ電力効率の高いスイッチング電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の1以上の問題点を解決するため、本発明のスイッチング電源回路は以下の構成を備える。すなわち、スイッチング電源回路において、直流電源に対して直列接続される、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子と、インダクタンスとコンデンサとを含む共振回路と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点及び前記共振回路に接続された1次側巻線と、第1の2次側巻線と、第2の2次側巻線と、を有するトランスと、前記第1の2次側巻線に誘起する誘起電圧を整流平滑し外部負荷に供給するための出力端子と、前記1次側巻線と前記共振回路とに共振電流を流すために、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とを交互に開閉するためのパルスを生成するパルス生成手段と、前記出力端子に接続された前記外部負荷における消費電力レベルが所定の電力レベル以上であるか否かを検知する検知手段と、前記検知手段により前記外部負荷における消費電力レベルが前記所定の電力レベル以上であることが検知された場合に、所定の定電圧を前記パルス生成手段に入力し、前記検知手段により前記外部負荷における消費電力レベルが前記所定の電力レベル未満であることが検知された場合に、前記第2の2次側巻線に誘起する誘起電圧を整流平滑した電圧を前記パルス生成手段に入力する切替手段と、を備え、前記パルス生成手段は、前記切替手段から入力される電圧が基準電圧より高い場合は生成するパルスのパルス幅を狭くし、前記切替手段から入力される電圧が前記基準電圧より低い場合は生成するパルスのパルス幅を広くするよう構成されており、前記所定の定電圧は前記基準電圧より低く設定されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高出力時の出力低下を低減しつつ電力効率の高いスイッチング電源を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る電源回路の回路図である。
【図2】変形例1に係る電源回路の回路図である。
【図3】変形例2に係る電源回路の回路図である。
【図4】第2実施形態に係るオーディオアンプ装置の主要部の回路図である。
【図5】第3実施形態に係るオーディオアンプ装置の主要部の回路図である。
【図6】他の検知部を使用する電源回路の回路図である。
【図7】更に他の検知部を使用する電源回路の回路図である。
【図8】パルス幅制御モード及び電流共振モードにおける損失の比較を示す図である。
【図9】従来の電流共振型PWM電源回路の回路図である。
【図10】制御巻線を用意した電流共振型PWM電源回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。なお、以下の実施の形態はあくまで例示であり、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
【0014】
(第1実施形態)
本発明に係る電源回路の第1実施形態として、高出力オーディオアンプへの出力を想定したスイッチング電源回路を例に挙げて以下に説明する。
【0015】
<回路構成>
図1は、第1実施形態に係る電源回路の回路図である。なお、従来の電源回路を示した図9及び図10と同一の機能部又は素子には同一の参照番号を付している。
【0016】
図1において、1,2は直流電源であり、これは、例えば、商用交流電源を整流平滑したものが利用される。直流電源は、第1のスイッチング素子であるスイッチング素子3及び第2のスイッチング素子であるスイッチング素子4に直列接続されている。スイッチング素子3,4は、交互にON/OFFし、スイッチング素子3,4の接続点に接続されたトランス7の1次側巻線8に正および負方向の電流を交互に流す動作をおこなう。スイッチング素子3,4をON/OFF(開閉)制御するパルス信号は、パルス幅制御部15から供給される。パルス生成手段であるパルス幅制御部15は、発振機能、基準電圧、誤差アンプ、パルス幅制御回路を含む。
【0017】
トランス7の1次側巻線8に流れる電流は、インダクタンス6、コンデンサ5を介して、直流電源に戻る。コンデンサ5の容量は、インダクタンス6とコンデンサ5で構成される共振回路の共振周波数がパルス周波数より若干高めになるように選定される。ここで、インダクタンス6は、独立した素子により実現してもよいし、少なくとも一部をトランス7の1次側巻線8の漏れインダクタンスにより実現しても良い。
【0018】
トランス7の1次側巻線8に流れる共振電流によって誘起される2次側のアンプ出力用巻線9(第1の2次側巻線)の誘起電圧である交流出力は、ブリッジダイオード11、平滑コンデンサ12により整流平滑され直流出力電圧が得られる。直流出力電圧は出力端子を介して外部負荷14に供給される。外部負荷14は、アンプ出力段のインピーダンスを等価的に表現したものである。一方、2次側の制御巻線10(第2の2次側巻線)に誘起される交流出力からは、整流平滑回路17を介して、制御用直流出力電圧が得られる。
【0019】
また、外部負荷14と並列して電圧降下検知部16が接続され、電圧降下検知部16は、直流出力電圧の低下が検知されると検知出力信号を出力する。
【0020】
検知出力信号は、例えばリトリガラブルタイマにより構成されるタイマ回路19に送られ、一定時間幅(たとえば1秒)のパルスに変換される。そして、タイマ回路19から出力されるパルスに基づいて、後述する切替スイッチ20は切り替え制御を行う。なお、タイマ回路19は、外部負荷14に流れる電流が短時間の間に増減を繰り返した際に、切替スイッチ20が所定時間以内に切替を行うのを抑止するためのものである。
【0021】
切替スイッチ20は、パルス幅制御部15において基準電圧と比較される対象となる電圧を切り替えるスイッチである。具体的には、制御巻線10に誘起される交流出力から生成される制御用の直流出力電圧と、共振設定電圧生成部21から供給される共振設定電圧と、の何れかをパルス幅制御部15に入力する。なお、共振設定電圧は、パルス幅制御部内の基準電圧より十分低い電圧として設定されている。
【0022】
<回路の動作>
切替スイッチ20は、タイマ回路19からパルス信号が入力されている間だけ、共振設定電圧生成部21から供給される共振設定電圧をパルス幅制御部15に入力するよう切り替える。つまり、外部負荷14に流れる電流が小さく、電圧降下検知部16から検知出力信号が出ない間は、制御巻線10からの直流出力電圧がパルス幅制御部15に入力される。
【0023】
パルス幅制御部15内の誤差アンプは、基準電圧との誤差電圧を増幅し、パルス幅制御回路を制御するよう構成されている。具体的には、パルス幅制御部15に入力された電圧が基準電圧より高い場合はパルス幅を狭く(短く)するよう制御する。一方、入力された電圧が基準電圧より低い場合は、パルス幅を広く(長く)するように制御する。
【0024】
そのため、外部負荷14に流れる負荷電流が小さく、制御巻線10からの直流出力電圧がパルス幅制御部15に入力されている間は、図10で説明した電流共振型PWM制御と同様の制御を行う。ここでは、この動作モードを「パルス幅制御モード」と呼ぶ。
【0025】
一方、外部負荷14に流れる負荷電流が大きくなると、アンプ出力用巻線9からのアンプ出力用直流電圧は、漏れインダクタンスにより低下する。電圧降下検知部16は、当該電圧降下を検知し、検知出力信号を出力する。タイマ回路19は、入力された検知出力信号に応答して、一定時間幅(たとえば1秒)のパルスを生成する。これにより、切替スイッチ20は、共振設定電圧生成部21から供給される共振設定電圧をパルス幅制御部15に入力するよう切り替える。ところで、共振設定電圧は、予め、パルス幅制御部内の基準電圧より十分低く設定されている。つまり、共振設定電圧をパルス幅制御部15に入力されている間、パルス幅制御部15内のパルス幅制御回路は、常時最大幅のパルスを出力するように維持される。ここでは、この動作モードを「電流共振モード」と呼ぶ。
【0026】
電流共振モードにおいては、パルス幅制御部15から常時最大幅のパルスが出力されるため、結果として、アンプ出力用巻線9からの直流出力電圧は上昇することになる。つまり、直流出力電圧の低下に基づいて、外部負荷14での消費電力レベルが所定の電力レベル以上であると判定している。そして、この場合に電流共振モードで動作させることにより、従来の電流共振型PWM電源(図10)における高出力時の出力低下という問題を解決することが出来る。一方、直流出力電圧の低下が検知されない場合は、外部負荷14での消費電力レベルが所定の電力レベル未満であると判定し、パルス幅制御モードで動作させる。
【0027】
図8は、パルス幅制御モード及び電流共振モードにおける損失の比較の例を示す図である。図から理解されるように、高出力時においては、電流共振モードはパルス幅制御モードに比較し電力損失が小さい。一方、低出力時においては、パルス幅制御モードは電流共振モードに比較し電力損失が小さい。従って、低出力時にはパルス幅制御モードで動作させ、高出力時には電流共振モードで動作させることにより、より広いアンプ出力範囲で高効率なスイッチング電源が実現されることが分かる。
【0028】
なお、パルス幅制御モードと電流共振モードとの切り替え条件(閾値)は、電圧降下検知部16に検知させる電圧値(または電圧低下幅)を予め設定することが出来る。この電圧値は、図8に例示されるパルス幅制御モード及び電流共振モードそれぞれにおけるアンプ出力と電力損失との関係に基づいて決定すると良い。
【0029】
なお、2つのモードを切り替える電圧値は、当該2つのモードにおける電力効率のクロスポイントの電圧値と一致させる必要は無いが、以下の点を考慮することが望ましい。
【0030】
2つのモードにおける電力効率のクロスポイントの電圧値よりも低い電圧値で切り替える場合、切り替え時の電圧値とクロスポイントの電圧値との間で電力損失が多少大きくなる。しかしながら、低出力から高出力にわたって動作がよりスムーズとなるメリットがある。一方、2つのモードにおける電力効率のクロスポイントの電圧値よりも高い電圧値で切り替える場合、クロスポイントの電圧値と切り替え時の電圧値との間で電力損失が多少大きくなる。しかし、例えば、定常動作状態が、クロスポイントよりも高い出力レベルかつモード切り替えポイントよりも低い出力レベルである場合、モード切り替え動作の発生を抑制可能というメリットがある。これにより、定常動作状態においてより安定した動作が期待できる。なお、定常動作状態とは、例えば外部負荷をスピーカとした場合、連続でその電力値を有する音量で継続的に出力可能な状態を指す。
【0031】
以上説明したとおり第1実施形態に係る電源回路によれば、電源出力段での電圧降下の検知に基づいて、通常時はパルス幅制御モードで動作させ、電圧降下検知時には電流共振モードで動作させる。これにより、より広いアンプ出力範囲で高効率なスイッチング電源を実現することが可能となる。
【0032】
(変形例1)
図2は、変形例1に係る電源回路の回路図である。直流電源1が単電源であること、電流共振コンデンサ5は、静電容量が等しい2個のコンデンサで構成される点が第1実施形態(図1)と異なる。ただし、図2の電源回路における制御動作は、図1を参照して説明した制御動作と同様であるため説明は省略する。
【0033】
(変形例2)
図3は、変形例2に係る電源回路の回路図である。アンプ出力用巻線9が、センタータップを有し、2次側平滑コンデンサが、2個の平滑コンデンサ12a,12bで構成され、両電源出力になっている点が第1実施形態(図1)と異なる。そのため、外部負荷は、両電源に対応した外部負荷14a,14bが接続される。図3の電源回路における制御動作は、図1の動作と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0034】
(第2実施形態)
本発明に係る電源回路の第2実施形態として、デジタルオーディオアンプ装置を例に挙げて以下に説明する。
【0035】
<装置構成>
図4は、オーディオアンプ装置の主要部の回路図であり、図1の外部負荷14に相当するAMP部、商用AC電源から直流電源を生成する電源部、及びこれらの各部にクロックを供給するクロック部を含んでいる。特に、図4では、AMP部において浮動電源方式アンプを使用したものを示している。なお、クロック部を共通としているのは、電源部とAMP部を接続する際に生じるクロック間干渉を低減するためである。
【0036】
・AMP部の構成
浮動電源方式アンプにおいて、差動アンプ34に正弦波信号が入力されると、帰還回路53からの帰還信号との差分が増幅される。コンパレータ(COMP)36は、差動アンプ34の出力と、アンプクロックに同期した三角波生成回路38からの三角波とを比較する。コンパレータ37は、反転アンプ35によって逆相に変換された差動アンプ34の出力と、アンプクロックに同期した三角波生成回路38からの三角波とを比較する。
【0037】
コンパレータ36、37からのパルス出力は、フォトカプラ39、40により絶縁分離され、ドライバ43、44に入力される。ここで、ドライバ43、44の正側入力端子には、インバータ41、42を介して反転された信号が入力される。
【0038】
ドライバ43、44からの出力パルスは、スイッチング素子45、46、47、48に入力され各スイッチング素子のON/OFFが制御させる。スイッチング素子45と48がONされると、インダクタンス49に単電源電圧の正パルスが出力される。一方、スイッチング素子46と47がONされると、インダクタンス49に単電源電圧の負パルスが出力される。これら、正パルス及び負パルスは、インダクタンス49、コンデンサ50とでフィルタリングされ、増幅された正弦波が出力される。出力された正弦波は、リレーを介して、スピーカ52を駆動する。
【0039】
また、図4の29はアンプ信号系直流電源、59はアンプドライバ系直流電源である。これらの直流電源は、電源部のトランス7の対応する2次側巻線から生成される定電圧源である。
【0040】
・クロック部の構成
分周回路33は、外部から入力される源クロックからアンプクロックを生成し三角波生成回路38に入力する。また、同時に、分周回路33は、外部から入力される源クロックから電源クロックを生成し、フォトカプラ31及び分周回路32を介して、パルス幅制御部15に所定のクロックを供給する。
【0041】
・電源部の構成
上述の第1実施形態とほぼ同様の構成及び動作であるため、以下では電圧降下検知部16についてのみ説明する。電圧降下検知部16からの検知出力信号は、フォトカプラ30により絶縁分離されてのち、タイマ回路19に送られる。絶縁分離は、電源クロックのノイズが、GNDなどを経由して、アンプ側に回りこまないようにする為である。
【0042】
<電源部の動作>
AMP部の差動アンプ34への入力レベルが所定の入力レベル未満である間は、スピーカ52に流れる電流も所定の範囲に収まり、平滑コンデンサ12の直流電圧は所定の電圧に維持される。しかしながら、AMP部の差動アンプ34への入力レベルが増大し、スピーカ52に流れる電流が増加すると、平滑コンデンサ12の直流電圧が低下する。
【0043】
電圧降下検知部16は、平滑コンデンサ12の直流電圧の低下を検知した場合、検知出力信号を出力する。検知出力信号はフォトカプラ30を介してタイマ回路19に入力される。タイマ回路19は、入力された検知出力信号に応答して、一定時間幅(たとえば1秒)のパルスを生成する。これにより、切替スイッチ20は、共振設定電圧生成部21から供給される共振設定電圧をパルス幅制御部15に入力するよう切り替える。つまり、スピーカ52に流れる電流が増加し、平滑コンデンサ12の直流電圧が低下した場合、電源部の動作を電流共振モードに切り替える。
【0044】
電流共振モードにおいては、パルス幅制御部15から常時最大幅のパルスが出力されるため、結果として、アンプ出力用巻線9からの直流出力電圧は上昇することになる。つまり、高出力時の直流出力電圧の低下を検知し電流共振モードに切り替えることにより、従来の電流共振型PWM電源(図10)における高出力時の出力低下に伴うスピーカ52の出力低下を解決することが出来る。
【0045】
以上説明したとおり第2実施形態に係るオーディオアンプ装置によれば、通常時は電源部をパルス幅制御モードで動作させ、AMP部へ印加される入力電圧の降下を検知すると電源部を電流共振モードで動作させる。これにより、より広い出力範囲で安定した高効率なオーディオアンプ装置を実現することが可能となる。
【0046】
(第3実施形態)
本発明に係る電源回路の第3実施形態として、他のデジタルオーディオアンプ装置を例に挙げて以下に説明する。
【0047】
<装置構成>
図5は、オーディオアンプ装置の主要部の回路図であり、図1の外部負荷14に相当するAMP部、商用AC電源から直流電源を生成する電源部、及びこれらの各部にクロックを供給するクロック部を含んでいる。特に、図5では、AMP部においてフルブリッジアンプを使用したものを示している。なお、第2実施形態(図4)との主要な違いは、当該フルブリッジアンプを使用し、両電源を生成している点である。また、クロック部及び電源部の構成については上述の第2実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0048】
・AMP部の構成
フルブリッジアンプは、以下の点で上述の浮動電源方式アンプと異なるが、動作はほぼ同様であるため詳細な説明は省略する。つまり、コンパレータ36、37が反転出力を有する(このためインバータ不要)こと、フォトカプラ39、40がないこと、入力段GNDと出力段GNDが共通であることが異なる。また、2個のインダクタンス49、コンデンサ50は差動出力対応であること、帰還(FB)回路53が2系統あり差動出力、差動入力対応であることが異なる。
【0049】
<電源部の動作>
AMP部の差動アンプ34への入力レベルが所定の入力レベル未満である間は、スピーカ52に流れる電流も所定の範囲に収まり、2個の平滑コンデンサ12の両端間の電圧は所定の電圧に維持される。しかしながら、AMP部の差動アンプ34への入力レベルが増大し、スピーカ52に流れる電流が増加すると、2個の平滑コンデンサ12の両端間の電圧が低下する。
【0050】
電圧降下検知部16は、2個の平滑コンデンサ12の両端間の電圧の低下を検知した場合、検知出力信号を出力する。検知出力信号はフォトカプラ30を介してタイマ回路19に入力される。タイマ回路19は、入力された検知出力信号に応答して、一定時間幅(たとえば1秒)のパルスを生成する。これにより、切替スイッチ20は、共振設定電圧生成部21から供給される共振設定電圧をパルス幅制御部15に入力するよう切り替える。つまり、スピーカ52に流れる電流が増加し、2個の平滑コンデンサ12の両端間の電圧が低下した場合、電源部の動作を電流共振モードに切り替える。
【0051】
以上説明したとおり第3実施形態に係るオーディオアンプ装置によれば、AMP部においてフルブリッジアンプを使用した場合においても、より広い出力範囲で安定した高効率なオーディオアンプ装置を実現することが可能となる。
【0052】
(変形例3)
上述の実施形態においては、外部負荷14(AMP部)に印加される電圧の電圧降下を検知し、降下を検知すると電源部を電流共振モードで動作させるよう説明した。しかしながら、他の物理量を検出し切り替えに利用しても良い。
【0053】
図6は、電圧降下検知部16の代わりに電流検知抵抗54を使用する一例を示す図である。つまり、ここでは、スピーカ52に流れる負荷電流の検知を行う。出力電流検知部55は、電流検知抵抗54に所定レベル以上の電流が流れていることを検知すると検知出力信号を出力する。検知出力信号はフォトカプラ30を介してタイマ回路19に入力される。タイマ回路19は、入力された検知出力信号に応答して、一定時間幅(たとえば1秒)のパルスを生成する。これにより、切替スイッチ20は、共振設定電圧生成部21から供給される共振設定電圧をパルス幅制御部15に入力するよう切り替える。
【0054】
図7は、電圧降下検知部16の代わりに、AMP部への入力信号(音声信号)の電圧レベルを検出する入力電圧検知部56を使用する一例を示す図である。つまり、入力電圧検知部56は、AMP部への入力信号の電圧レベルが所定レベル以上となったことを検知すると検知出力信号を出力する。検知出力信号はフォトカプラ30を介してタイマ回路19に入力される。タイマ回路19は、入力された検知出力信号に応答して、一定時間幅(たとえば1秒)のパルスを生成する。これにより、切替スイッチ20は、共振設定電圧生成部21から供給される共振設定電圧をパルス幅制御部15に入力するよう切り替える。
【0055】
このように、外部負荷14(AMP部)で消費される消費電力レベルは様々な物理量により検出可能である。そのため、当該検出した物理量に基づいて、消費電力レベルが所定の電力レベル以上である場合に電流共振モードで動作させることにより、高効率なオーディオアンプ装置を実現することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング電源回路であって、
直流電源に対して直列接続される、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子と、
インダクタンスとコンデンサとを含む共振回路と、
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続点及び前記共振回路に接続された1次側巻線と、第1の2次側巻線と、第2の2次側巻線と、を有するトランスと、
前記第1の2次側巻線に誘起する誘起電圧を整流平滑し外部負荷に供給するための出力端子と、
前記1次側巻線と前記共振回路とに共振電流を流すために、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とを交互に開閉するためのパルスを生成するパルス生成手段と、
前記出力端子に接続された前記外部負荷における消費電力レベルが所定の電力レベル以上であるか否かを検知する検知手段と、
前記検知手段により前記外部負荷における消費電力レベルが前記所定の電力レベル以上であることが検知された場合に、所定の定電圧を前記パルス生成手段に入力し、前記検知手段により前記外部負荷における消費電力レベルが前記所定の電力レベル未満であることが検知された場合に、前記第2の2次側巻線に誘起する誘起電圧を整流平滑した電圧を前記パルス生成手段に入力する切替手段と、
を備え、
前記パルス生成手段は、前記切替手段から入力される電圧が基準電圧より高い場合は生成するパルスのパルス幅を狭くし、前記切替手段から入力される電圧が前記基準電圧より低い場合は生成するパルスのパルス幅を広くするよう構成されており、前記所定の定電圧は前記基準電圧より低く設定されている
ことを特徴とするスイッチング電源。
【請求項2】
前記検知手段は、前記外部負荷に印加される電圧及び前記外部負荷に流れる電流の少なくとも一方に基づいて、前記外部負荷における消費電力レベルが前記所定の電力レベル以上であるか否かを検知することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源。
【請求項3】
前記インダクタンスの少なくとも一部が、前記1次側巻線の漏れインダクタンスであることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチング電源。
【請求項4】
前記切替手段は、所定時間以内での前記パルス生成手段に入力する電圧の切替を抑止するタイマ回路を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のスイッチング電源。
【請求項5】
前記外部負荷はデジタルオーディオアンプであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のスイッチング電源。
【請求項6】
前記検知手段は、前記デジタルオーディオアンプへ入力される音声信号の入力レベルに基づいて、前記外部負荷における消費電力レベルが前記所定の電力レベル以上であるか否かを検知することを特徴とする請求項5に記載のスイッチング電源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−115916(P2013−115916A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259508(P2011−259508)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】