説明

スイッチング電源装置

【課題】入力電圧範囲が広い場合でも、アクティブフィルタ回路を低コストで、かつ起動特性の良好なスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】スイッチング電源装置は主出力スイッチングレギュレータ1と従出力レギュレータ2とを備え、従出力レギュレータ2は降圧レギュレータ回路IC1と主出力制御回路21とを有する。主出力制御回路21は、従出力端子23から従出力電圧(DC5[V])が出力されてからアクティブフィルタ回路11が直流入力電圧を一次側直流電圧にまで昇圧する間、整流平滑部12と主出力端子13との間に介装されたFETQ2をオフ状態とし、直流入力電圧を一次側直流電圧に昇圧した後にFETQ2をオン状態とし、主出力端子13から主出力電圧(DC24[V])を出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブフィルタ回路を有する多出力のスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置において、力率の改善および高調波電流の抑制方法の一つとしてアクティブフィルタ回路を用いる例が多い。また、アクティブフィルタ回路は100[V]/200[V]入力の商用電源にも対応することができ、いわゆるワールドワイド入力対応のスイッチング電源装置の実現に適した方法の一つである(特許文献1参照)。
【0003】
アクティブフィルタ回路を有する多出力のスイッチング電源装置においては、アクティブフィルタ回路の起動立上がり時に、入力側電解コンデンサの充電に要する充電電力と、装置の全ての出力電力とを同時にまかなうようにアクティブフィルタ回路の電力容量を設定するのが通常である。
【0004】
スイッチング電源装置に入力される入力電圧範囲に関して、例えば、最小入力電圧が最大入力電圧の約1/4である広範囲の入力電圧変動仕様に対応し、最小入力電圧かつ最大入力電流の条件で起動できるアクティブフィルタ回路の場合、アクティブフィルタ回路の電力容量を、スイッチング回路の全出力電力にさらに入力側電解コンデンサの充電に要する充電電力を加えた電力容量に設定する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−276341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4に従来のスイッチング電源装置を示す。以下においては、スイッチング電源装置の出力電力の定格を38[W](主出力:24[V],1.5[A]/従出力:5[V],0.4[A])とし、スイッチング回路の効率とアクティブフィルタ回路の力率を考慮し、アクティブフィルタ回路の入力皮相電力を約50[VA](例えば、入力電圧:20[V]、入力電流:2.5[A])とした場合について説明する。このアクティブフィルタ回路の入力皮相電力はスイッチング電源装置を通常の定格負荷の状態で動作させた時の値である。
【0007】
アクティブフィルタ回路は、交流入力電源(AC IN)からの交流入力電圧をダイオードブリッジ(DB1)で全波整流した電圧を、アクティブフィルタ制御回路(A1)とスイッチング素子であるFET(Q4)とインダクタ(L1)とダイオード(D1)等とで構成される昇圧方式スイッチング回路を経由して直流電圧(例えば、電解コンデンサC2の端子間電圧で120[V])に変換する。このようなアクティブフィルタ方式を採用した装置によれば、交流入力電圧をダイオードブリッジのみを経由して直流電圧に変換するスイッチング電源装置と比較して、交流電源ラインに影響を及ぼす高調波電流を抑制するとともに、力率を改善(標準0.99)して入力皮相電力を低減し、交流入力電流の実効値を低下させることができる。
【0008】
図4に示すスイッチング電源の入力電圧仕様をAC18〜72[V]とした場合、いずれの入力電圧でもアクティブフィルタ回路を起動させるためには、電解コンデンサC2を充電し、DC120[V]まで昇圧しなければならない。電解コンデンサC2の静電容量を470[μF]とした場合、最小入力電圧AC18[V](DC25[V])からDC120[V]まで昇圧するときのエネルギーはジュールの法則により、
充電エネルギー=(1/2)CV
=470×10−6×(1202−252)÷2
=3.237[J]
仮に200[ms]の時間で充電する場合、3.237[J]/0.2[s]=16.18[W]の電力が必要となる。起動時のアクティブフィルタ回路の力率を0.95とすると、充電に必要な入力皮相電力は、16.18[W]/0.95≒17[VA]となる。
【0009】
図5に図4に示すスイッチング電源装置の各部電圧のタイムチャートを示す。前述のとおり、スイッチング電源装置の出力電力の定格を38[W]とした場合、アクティブフィルタ回路の入力皮相電力は約50[VA]である。しかしながら、アクティブフィルタの起動時に電解コンデンサC2を充電するまでの間(充電時間:200[ms])、充電に必要な入力皮相電力(17[VA])が追加されて、アクティブフィルタ回路の入力皮相電力は合計67[VA]になる(図5(D))。
【0010】
また、アクティブフィルタ回路の入力皮相電力が67[VA]のとき、入力電圧を20[V]とすると、入力電流は3.35[A]になり、定格出力で動作するときと比較して、電流容量が1.34倍(3.35[A]/2.5[A])に増加する。このように、アクティブフィルタ回路を起動させるためには、アクティブフィルタ回路の設定電力容量を50[VA]ではなく、67[VA]として設計しなければならず、装置のコストアップの主要因となっていた。
【0011】
さらに、スイッチング電源装置が搭載されるシステム機器と他のシステム機器の運用状態によっては、交流電源ラインに抵抗が介在し、これにより、スイッチング電源装置の入力電圧が20[V]から更に下降する懸念がある。例えば、入力ライン抵抗を1[Ω]とすると、通常の定格負荷による運用では2.5[V](=2.5[A]×1[Ω])の降下が生じ、入力電圧は20[V]から17.5Vに変動し入力電圧仕様の下限である18Vを下回ってしまう。また、起動時に入力電流が2.5[A]から3.35[A]に増加すると、入力電圧は16.65[V]に降下し、入力電圧仕様範囲から大きく外れる。この場合、入力電流は67[VA]/16.65[V]≒4[A]となり、ライン抵抗による電圧降下が連鎖的に発生し、起動不能の状態に陥る。このように、従来装置を搭載したシステム機器を運用する場合、正常に起動しなくなるといった起動不良を招くおそれがあった。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、入力電圧範囲が広い場合でも、アクティブフィルタ回路を低コストで、かつ起動特性の良好なスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、交流入力電圧を整流平滑して得られた直流入力電圧をアクティブフィルタ回路により所定の一次側直流電圧にまで昇圧し、トランスの一次巻線に接続された第1スイッチング素子により一次側直流電圧をスイッチングしてトランスの二次巻線に交流誘起電圧を誘起させ、該交流誘起電圧を整流平滑部で整流平滑して得た二次側直流電圧から主出力電圧を生成して主出力端子から出力する主出力スイッチングレギュレータと、二次側直流電圧を降圧レギュレータ部で降圧して従出力電圧を従出力端子から出力する従出力レギュレータとを備えた多出力型スイッチング電源装置であって、上記目的を達成するため、主出力スイッチングレギュレータは、整流平滑部と主出力端子との間に介装され、オン/オフ制御されることで、整流平滑部と主出力端子との導通/非導通を切り替える第2スイッチング素子を有し、従出力レギュレータは、第2スイッチング素子のオン/オフ状態を制御する主出力制御回路を有し、主出力制御回路は、従出力端子から従出力電圧が出力されてからアクティブフィルタ回路が直流入力電圧を一次側直流電圧にまで昇圧する間、第2スイッチング素子をオフ状態とし、直流入力電圧を一次側直流電圧に昇圧した後に第2スイッチング素子をオン状態とし、主出力端子から主出力電圧を出力させることを特徴としている。
【0014】
この構成によれば、従出力端子から従出力電圧が出力されてからアクティブフィルタ回路が直流入力電圧を一次側直流電圧にまで昇圧する間、第2スイッチング素子がオフ状態とされ、主出力スイッチングレギュレータ(主出力端子)からの出力が遮断される。そして、直流入力電圧が一次側直流電圧に昇圧された後に、第2スイッチング素子がオン状態とされ、主出力スイッチングレギュレータからの出力が行われる。このため、アクティブフィルタ回路の昇圧タイミングと、主出力スイッチングレギュレータからの出力タイミングとを完全に分離することができる。これにより、アクティブフィルタ回路の電力容量の設定に際し、装置の全出力電力にさらにアクティブフィルタ回路の昇圧に要する電力を加える必要がない。また、定格出力動作時に対する入力電流の増加を回避することができ、起動不良の発生を防止することができる。よって、入力電圧範囲が広い場合でも、アクティブフィルタ回路を低コストで、かつ起動特性の良好なスイッチング電源装置を実現することができる。
【0015】
ここで、主出力制御回路は、第2スイッチング素子のオン/オフ状態を切り替える第3スイッチング素子と、従出力端子と電気的に接続されるとともに第3スイッチング素子をオフ状態からオン状態に切り替える閾値電圧を出力可能な遅延コンデンサとを有し、従出力端子から従出力電圧が出力され遅延コンデンサより閾値電圧が第3スイッチング素子に出力されると、第3スイッチング素子は第2スイッチング素子をオフ状態からオン状態に切り替えるように構成され、従出力端子から従出力電圧が出力されてから遅延コンデンサより閾値電圧が出力されるまでの期間が、従出力端子から従出力電圧が出力されてからアクティブフィルタ回路が直流入力電圧を一次側直流電圧にまで昇圧するまでの期間と同等以上であることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、従出力端子から従出力電圧が出力され遅延コンデンサから閾値電圧が第3スイッチング素子に出力されると、第3スイッチング素子は第2スイッチング素子をオフ状態からオン状態に切り替える。ここで、従出力端子から従出力電圧が出力されてから遅延コンデンサより閾値電圧が出力されるまでの期間が、従出力端子から従出力電圧が出力されてからアクティブフィルタ回路が直流入力電圧を一次側直流電圧にまで昇圧するまでの期間と同等以上であるため、アクティブフィルタ回路が直流入力電圧を一次側直流電圧にまで昇圧するまでの間、第2スイッチング素子をオフ状態とし、主出力端子から主出力電圧が出力されるのを遮断することができる。このため、上記した期間条件を満たすように遅延コンデンサの容量を適切に設定することにより、アクティブフィルタ回路の設定電力容量の増加を抑えることができる。
【0017】
なお、アクティブフィルタ回路は、一端に直流入力電圧が入力される昇圧用インダクタと、該昇圧用インダクタの他端にアノードが接続されたダイオードと、昇圧用インダクタとダイオードを繋ぐ結線に接続され、アクティブフィルタ制御回路により制御される第4スイッチング素子と、ダイオードのカソードに接続されたコンデンサとを有し、コンデンサを満充電することで該コンデンサの端子間に一次側直流電圧を発生させるように構成してもよい。この構成によれば、コンデンサが満充電されるまでの間、主出力電圧の出力が遮断され、アクティブフィルタ回路の設定電力容量の増加を抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、入力電圧範囲が広い場合でも、アクティブフィルタ回路を低コストで、かつ起動特性の良好なスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図2】図1に示すスイッチング電源装置のタイムチャートである。
【図3】本発明の変形形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図4】従来のスイッチング電源装置の回路図である。
【図5】図4に示すスイッチング電源装置のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。スイッチング電源装置は主出力スイッチングレギュレータ1と従出力レギュレータ2とを備える。主出力スイッチングレギュレータ1では、入力された交流入力電圧AC−IN(この実施形態ではAC18〜72[V])はダイオードブリッジDB1で全波整流され、コンデンサC1で平滑される。こうして得られた直流入力電圧はアクティブフィルタ回路11により所定の一次側直流電圧(この実施形態では120[V])まで昇圧される。
【0021】
アクティブフィルタ回路11は、一端に直流入力電圧が入力される昇圧用インダクタL1と、該昇圧用インダクタL1の他端にアノードが接続されたダイオードD1と、昇圧用インダクタL1とダイオードD1を繋ぐ結線に接続され、アクティブフィルタ制御回路A1により制御されるFETQ4(本発明の「第4スイッチング素子」に相当)と、ダイオードD1のカソードに接続されたコンデンサC2とを有する。そして、コンデンサC2が満充電されることで該コンデンサC2の端子間に一次側直流電圧を発生させる。
【0022】
アクティブフィルタ回路11(コンデンサC2)から出力された一次側直流電圧は、トランスT1の一次巻線(一方端)とスイッチング制御回路A2へ起動電流を供給する起動抵抗R3に導かれる。これにより、起動抵抗R3からスイッチング制御回路A2の内部回路を通して補助電源端子(Vcc)に繋がるコンデンサC4の端子間電圧が上昇し、所定のスイッチング条件に設定されたパルス出力(DRV)がトランスT1の一次巻線(他方端)に接続されたFETQ1(本発明の「第1スイッチング素子」に相当)のスイッチング動作を開始する。
【0023】
トランスT1の二次巻線に接続された整流平滑部12(トランスT1の二次巻線間に直列に接続されたダイオードD4、コンデンサC5)は、トランスT1の二次巻線に誘起される交流誘起電圧を整流・平滑して二次側直流電圧を生成する。同時にトランスT1の補助巻線にも交流電圧が誘起されて整流ダイオードD2を通じてコンデンサC3の端子間に補助電源電圧を生成する。さらに、ダイオードD3を通じてスイッチング制御回路A2の補助電源端子(Vcc)に補助電源電圧を安定的に供給する。
【0024】
このように、主出力スイッチングレギュレータ1が起動すると、スイッチング制御回路A2の補助電源端子(Vcc)に補助電源電圧が供給されると同時に、アクティブフィルタ制御回路A1の補助電源端子(Vcc)にも補助電源電圧が供給される。スイッチング制御回路A2には、例えば富士電機デバイステクノロジー製のスイッチング電源制御用IC「FA5541」を使用することができ、アクティブフィルタ制御回路A1には、例えばインターナショナル・レクティファイアー製のアクティブフィルタ制御用IC「IR1150」を使用することができる。
【0025】
二次側直流電圧はFETQ2(本発明の「第2スイッチング素子」に相当)を経由して主出力(この実施形態では、主出力電圧:24[V]、主出力電流:1.5[A])として主出力端子13から出力される。このように、FETQ2は整流平滑部12と主出力端子13との間に介装され、オン/オフ制御されることで、整流平滑部12と主出力端子13との導通状態(導通/非導通)を切り替えることができる。
【0026】
また、整流平滑部12とFETQ2とを結ぶ結線には帰還制御回路A3が接続されており、帰還制御回路A3は二次側直流電圧の多寡情報をフォトカプラPC1を介してスイッチング制御回路A2にフィードバックして、当該二次側直流電圧が所定の電圧に保たれるようFETQ1のスイッチング動作を制御する。
【0027】
従出力レギュレータ2は降圧レギュレータ回路IC1(本発明の「降圧レギュレータ部」に相当)と主出力制御回路21とを有する。帰還制御回路A3によって安定化された二次側直流電圧は降圧レギュレータ回路IC1に入力される。降圧レギュレータ回路IC1は、二次側直流電圧を降圧した電圧を従出力(この実施形態では、従出力電圧:5[V]、従出力電流:0.4[A])として従出力端子23から出力する。この降圧レギュレータ回路IC1には、汎用3端子レギュレータ「7805」等を用いることができる。
【0028】
主出力制御回路21は、降圧レギュレータ回路IC1の出力に接続され、FETQ2のオン/オフ状態を切り替え制御する。主出力制御回路21は、従出力端子23(+5[V])に一端が接続された抵抗R8と、抵抗R8の他端とGND(0[V])間に接続されたコンデンサC9(本発明の「遅延コンデンサ」に相当)と、抵抗8とコンデンサC9との接続点にゲートが接続され、ドレインが抵抗R7を介してFETQ2のゲートに接続され、ソースが接地されたFETQ3(本発明の「第3スイッチング素子」に相当)とを有する。また、FETQ3のゲート−ソース間には抵抗R9が接続され、従出力端子23とFETQ3のゲートとの間にダイオードD5が接続されている。
【0029】
従出力端子23から従出力電圧が出力されると、抵抗R8を介してコンデンサC9の充電が開始され、コンデンサC9の充電電圧がFETQ3のゲートに印加される。その印加電圧がゲート閾値電圧(FETQ3をオフ状態からオン状態に切り替える閾値電圧)を超えると、FETQ3がオフ状態からオン状態に切り替わる。その結果、整流平滑部12と主出力端子13との間に介装されたFETQ2がオンし、導通状態となる。これにより、主出力端子13から主出力電圧が出力される。
【0030】
ここで、従出力端子23から従出力電圧が出力されてからコンデンサC9よりFETQ3のゲート閾値電圧が出力されるまでの期間が、従出力端子23から従出力電圧が出力されてからアクティブフィルタ回路11が直流入力電圧を一次側直流電圧にまで昇圧するまで(コンデンサC9が満充電されるまで)の期間と同等以上になるように、コンデンサC9の静電容量が設定される。
【0031】
次にこのように構成されたスイッチング電源装置の動作を説明する。図2は図1に示すスイッチング電源装置のタイムチャートである。交流入力電圧AC−IN(AC18〜72[V])が入力されると、上記したようにアクティブフィルタ制御回路A1に補助電源電圧が供給され、アクティブフィルタ制御回路A1が作動する。これにより、所定のスイッチング条件に設定されたパルス出力(DRV)が抵抗R1を通してFETQ4の駆動を開始し、昇圧用インダクタL1とダイオードD1による昇圧動作によりコンデンサC2の端子間電圧が一次側直流電圧にまで昇圧される。この実施形態では、一次側直流電圧を120[V]に安定化するようにアクティブフィルタ制御回路A1が動作する。
【0032】
コンデンサC2の充電に要する時間を200[ms]とすると、コンデンサC2の充電に必要な入力皮相電力は、[発明が解決しようとする課題]の項で説明したように、17[VA]となる。
【0033】
主出力スイッチングレギュレータ1は、FETQ1により一次側直流電圧をスイッチングして、トランスT1の二次巻線に誘起される交流誘起電圧を整流平滑部12により整流・平滑して二次側直流電圧を生成する。生成された二次側直流電圧は、降圧レギュレータ回路IC1により降圧され、従出力電圧(DC5[V])として従出力端子23から出力される(図2(B))。なお、従出力端子23から従出力が出力開始される段階では、FETQ2はオフ状態となっているため、主出力端子13から主出力は出力されない。よって、アクティブフィルタ回路が要する入力皮相電力は、コンデンサC2の充電分と従出力分を併せて約20[V]となる(図2(D))。
【0034】
従出力端子23から従出力電圧(DC5[V])が出力されると、抵抗R8を通じてコンデンサC9の充電が開始される。この充電電圧(コンデンサC9の端子間電圧)がFETQ3のゲートに印加され、印加電圧がゲート閾値電圧を超えるとFETQ3がオン状態となる。そして、FETQ3がオンすると、FETQ2がオンし、整流平滑部12と主出力端子13とが導通状態となり、主出力端子13から主出力電圧(DC24[V])が出力される。すなわち、従来技術(図5(C))と異なり、従出力端子23からの出力に遅延して主出力端子13から主出力電圧が出力される(図2(C))。
【0035】
この実施形態では、従出力端子23から従出力電圧が出力されてからコンデンサC9よりゲート閾値電圧が出力されるまでの期間が、従出力端子23から従出力電圧が出力されてからアクティブフィルタ回路11が直流入力電圧を一次側直流電圧にまで昇圧するまでの期間と同等以上に設定されている。すなわち、コンデンサC2が満充電され、コンデンサC9の端子間に一次側直流電圧が発生するまでの間、FETQ2はオフ状態とされる。これにより、アクティブフィルタ回路の昇圧タイミング(コンデンサC2の充電タイミング)と、主出力スイッチングレギュレータ1からの出力タイミングとを完全に分離することができる。
【0036】
以上のように、この実施形態によれば、従出力端子23から従出力電圧が出力されてからアクティブフィルタ回路11が直流入力電圧を一次側直流電圧にまで昇圧する間、FETQ2をオフ状態としている。そして、直流入力電圧を一次側直流電圧に昇圧した後にFETQ2をオン状態とし、主出力端子13から主出力電圧を出力させるように構成している。このため、アクティブフィルタ回路11の電力容量の設定に際し、装置の全出力電力にさらに一次側直流電圧までの昇圧に要する電力を加える必要がない。また、定格出力動作時に対する入力電流の増加を回避することができ、起動不良の発生を防止することができる。よって、入力電圧範囲が広い場合でも、アクティブフィルタ回路を低コストで、かつ起動特性の良好なスイッチング電源装置を実現することができる。
【0037】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、降圧レギュレータ回路IC1として、汎用の3端子レギュレータ「7805」等を用いているが、図3に示すように、サンケン電気製の降圧レギュレータ「SAI01」等を用いてもよい。
【0038】
図3は本発明の変形形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。降圧レギュレータ回路IC1として、「SAI01」を用いる場合、外付け部品として、IC1の出力端子と従出力端子23との間に直列にインダクタL3を介挿するとともに、IC1の出力端子とGND(0[V])間にダイオードD6を付加すればよい。また、同図に示すように、本発明の「第3スイッチング素子」(Q3)として、FETに代えてバイポーラトランジスタを用いてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 主出力スイッチングレギュレータ
2 従出力レギュレータ
11 アクティブフィルタ回路
12 整流平滑部
13 主出力端子
21 主出力制御回路
23 従出力端子
A1 アクティブフィルタ制御回路
C2 (アクティブフィルタ回路の)コンデンサ
C9 遅延コンデンサ
D1 (アクティブフィルタ回路の)ダイオード
IC1 降圧レギュレータ回路(降圧レギュレータ部)
L1 インダクタ(昇圧用インダクタ)
Q1 FET(第1スイッチング素子)
Q2 FET(第2スイッチング素子)
Q3 FET、バイポーラトランジスタ(第3スイッチング素子)
Q4 FET(第4スイッチング素子)
T1 トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流入力電圧を整流平滑して得られた直流入力電圧をアクティブフィルタ回路により所定の一次側直流電圧にまで昇圧し、トランスの一次巻線に接続された第1スイッチング素子により前記一次側直流電圧をスイッチングして前記トランスの二次巻線に交流誘起電圧を誘起させ、該交流誘起電圧を整流平滑部で整流平滑して得た二次側直流電圧から主出力電圧を生成して主出力端子から出力する主出力スイッチングレギュレータと、
前記二次側直流電圧を降圧レギュレータ部で降圧して従出力電圧を従出力端子から出力する従出力レギュレータと
を備えたスイッチング電源装置において、
前記主出力スイッチングレギュレータは、前記整流平滑部と前記主出力端子との間に介装され、オン/オフ制御されることで、前記整流平滑部と前記主出力端子との導通/非導通を切り替える第2スイッチング素子を有し、
前記従出力レギュレータは、前記第2スイッチング素子のオン/オフ状態を制御する主出力制御回路を有し、
前記主出力制御回路は、前記従出力端子から前記従出力電圧が出力されてから前記アクティブフィルタ回路が前記直流入力電圧を前記一次側直流電圧にまで昇圧する間、前記第2スイッチング素子をオフ状態とし、前記直流入力電圧を前記一次側直流電圧に昇圧した後に前記第2スイッチング素子をオン状態とし、前記主出力端子から前記主出力電圧を出力させることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記主出力制御回路は、前記第2スイッチング素子のオン/オフ状態を切り替える第3スイッチング素子と、前記従出力端子と電気的に接続されるとともに前記第3スイッチング素子をオフ状態からオン状態に切り替える閾値電圧を出力可能な遅延コンデンサとを有し、前記従出力端子から前記従出力電圧が出力され前記遅延コンデンサより前記閾値電圧が前記第3スイッチング素子に出力されると、前記第3スイッチング素子は前記第2スイッチング素子をオフ状態からオン状態に切り替えるように構成され、
前記従出力端子から前記従出力電圧が出力されてから前記遅延コンデンサより前記閾値電圧が出力されるまでの期間が、前記従出力端子から前記従出力電圧が出力されてから前記アクティブフィルタ回路が前記直流入力電圧を前記一次側直流電圧にまで昇圧するまでの期間と同等以上である請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記アクティブフィルタ回路は、一端に前記直流入力電圧が入力される昇圧用インダクタと、該昇圧用インダクタの他端にアノードが接続されたダイオードと、前記昇圧用インダクタと前記ダイオードを繋ぐ結線に接続され、アクティブフィルタ制御回路により制御される第4スイッチング素子と、ダイオードのカソードに接続されたコンデンサとを有し、
前記コンデンサを満充電することで該コンデンサの端子間に前記一次側直流電圧を発生させる請求項1または2記載のスイッチング電源装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−250528(P2011−250528A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119006(P2010−119006)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】