説明

スイッチング電源装置

【課題】広い入力電圧範囲に対しても補助電源電圧が安定で、低コストな高効率スイッチング電源装置を提供することを目的としている。
【解決手段】入力電源12とメインスイッチング素子TR1が直列に接続された一次巻線TN1、同期整流素子TR21、TR22、出力チョークコイルLo、出力コンデンサCoから構成された出力平滑回路20が接続された二次巻線TN2とを備えたトランスT1と、ダイオードDsubを介してコンデンサCsubに充電する補助電源回路22と、電源装置を制御する制御回路14とを備えたスイッチング電源装置において、補助電源回路22は、アクティブクランプ回路24を介してトランスT1の三次巻線TN3に接続しており、クランプコンデンサC2と、スイッチング用のクランプ素子TR2とから構成され、クランプ素子TR2はメインスイッチング素子TR1と交互にオン・オフする動作を行っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を所望の電圧に変換し電子機器に供給するためのスイッチング電源装置に関し、特に、高効率化を追求するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置は、直流電力をスイッチング素子のオン・オフにより交流電力に変換してトランスの一次側に供給し、トランスの二次側に伝達される交流電力を整流・平滑することで所定の直流電力を得る電源装置である。代表的なものとしては、トランスの一次側から二次側へのエネルギーの伝達を、スイッチング素子がオン状態の時に行うフォワードコンバータ方式のスイッチング電源装置があり、スイッチング素子のオン・オフを行う制御回路には補助電源から電圧が供給されている。
【0003】
スイッチング電源内部の制御回路を動作させるための補助電源回路としては、トランスに三次巻線を設け、ダイオード及びコンデンサを接続した回路が知られている(例えば特許文献1等参照)。
【0004】
本方式の補助電源回路は、入力電圧範囲が広く、スイッチング周波数が高いスイッチング電源装置では、電源を高効率なものにすることができない。
【0005】
このため、電源の高効率化を図った補助電源回路として、三次巻線TN3に、ダイオードDsub1、ダイオードDsub2、チョークコイルLsub、コンデンサCsubを接続した回路構成が提案されている(例えば特許文献2等参照)。
【0006】
本方式の補助電源回路は、スイッチング電源装置の出力電流が小さくなると補助電源電圧が低下する。即ち、スイッチング電源装置の出力電流が小さくなると、デューティを狭くする制御が行われ、その結果、補助電源電圧が低下することになる。この補助電源電圧の低下を改善する方法として、出力整流平滑回路を同期整流化する方法がある。
【0007】
二次巻線の出力平滑を同期整流化することで、スイッチング電源装置の出力電流によらず、出力チョークコイルが電流連続モードで動作することができるようになり、補助電源電圧の低下が改善されるが、この補助電源回路では、補助電源チョークコイルを電流連続モードで用いるため、補助電源チョークコイルを大きなインダクタンスのチョークコイルとする必要がある。また、トランスに設ける三次巻線TN3の巻数が増大する。
【0008】
高効率なスイッチング電源装置を実現する手段として、同期整流を用いた出力整流平滑回路を持つフォワードコンバータでは、一次巻線側にアクティブクランプ回路を適用したものがある(例えば特許文献3等参照)。
【0009】
トランスの一次巻線側にアクティブクランプ回路を用いたフォワードコンバータは、メインスイッチング素子に印加される電圧を低く抑えることができ、導通抵抗の低い素子を使用することが可能となり、スイッチング電源の効率を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−316722号公報
【特許文献2】特開2004−64862号公報
【特許文献3】特開2002−78328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、広い入力電圧範囲に対しても補助電源電圧が安定な高効率スイッチング電源装置とするためには、従来提案された回路には以下に説明する問題がある。
【0012】
図4は、補助電源回路として、トランスに三次巻線を設け、ダイオード及びコンデンサを接続した回路を、フォワードコンバータ方式のスイッチング電源装置50に適用した回路図を示している。入力電源52から絶縁トランスT1に巻回された一次巻線TN1に、MOS−FETを使用したメインスイッチング素子TR1が接続され、スイッチング動作を行う。絶縁トランスT1には、二次巻線TN2を巻回し、二次巻線TN2にダイオードD21およびD22、出力チョークコイルLo、出力コンデンサCoからなる出力整流平滑回路58を接続している。また、補助電源回路60として、絶縁トランスT1に巻回された三次巻線TN3を設け、ダイオードDsub1、コンデンサCsubを接続し、補助電源電圧Vsubを制御回路54に供給している。
【0013】
メインスイッチング素子TR1がオンの時、トランスT1の一次巻線TN1のドット印側にプラスの電圧が印加され、三次巻線TN3のドット印側にプラスの電圧が発生する。三次巻線TN3に発生した電圧によって、ダイオードDsub1を介してコンデンサCsubを充電する。このとき、コンデンサCsubの電圧が、補助電源電圧Vsubとなる。入力電圧Vin、一次巻線TN1の巻数N1、三次巻線TN3の巻数N3より、ダイオードDsub1の順方向電圧降下が無視できるものとすると、補助電源電圧Vsubは次式で与えられる。
【0014】
【数1】

本補助電源回路60は、式(1)から分かるように、入力電圧Vinが変化すると補助電源電圧Vsubが比例して変化する。例えば、入力電圧が2倍の範囲で変動する場合、補助電源の電圧も2倍の変動を持つことになる。
【0015】
スイッチング電源装置50を低損失なものとするためには、メインスイッチング素子TR1のオン抵抗が飽和するだけの電圧を与える必要がため、入力電圧Vinが最低のときでもメインスイッチング素子TR1のゲートに十分な電圧を与えることができるように、巻数N1と巻数N3の巻数比を設定することになる。ところが、図4のスイッチング電源装置50は、入力電圧Vinが高くなると補助電源電圧Vsubも高くなるため、制御回路54に供給される電圧も高くなり、従って、メインスイッチング素子TR1のゲートにも高い電圧が印加されることになる。
【0016】
メインスイッチング素子TR1のゲートに飽和電圧以上の電圧を与えてもオン抵抗は変化せず、また、メインスイッチング素子TR1は、オン・オフの際にゲート電荷を充放電するため、ゲートに必要電圧以上の電圧を与えると損失が増加することになる。この損失は、ゲート電圧が高いほど、また、スイッチング周波数が高いほど顕著になる。ここで、メインスイッチング素子TR1のゲートの充放電の損失を低減するために、補助電源回路60と制御回路54の間に電圧を安定化するためのシリーズレギュレータ回路等を挿入することもできるが、この場合、入力電圧Vinが高くなるとシリーズレギュレータ回路の損失が増加することになる。
【0017】
従って、本方式の補助電源回路60は、入力電圧範囲が広く、スイッチング周波数が高いスイッチング電源装置では、電源を高効率なものにすることができない。
【0018】
このため、電源の高効率化を図った補助電源回路として提案されているのは、三次巻線TN3に、ダイオードDsub1、ダイオードDsub2、チョークコイルLsub、コンデンサCsubを接続した回路構成である。
【0019】
図5は、この補助電源回路をフォワードコンバータ方式のスイッチング電源装置に適用した回路図を示している。図4に対して、補助電源回路74は、ダイオードDsub2と補助電源チョークコイルLsubが追加されている。補助電源チョークコイルLsubのインダクタンスは、補助電源チョークコイルLsubの臨界電流が補助電源の出力電流Isub以下になるように設定する。これにより、補助電源チョークコイルLsubは常に臨界電流以上の電流が流れている状態となり、補助電源チョークコイルLsubは電流連続モードで動作する状態とする。
【0020】
メインスイッチング素子TR1がオンの時、トランスT1の一次巻線TN1のドット印側にプラスの電圧が印加され、三次巻線TN3のドット印側にもプラスの電圧が発生する。三次巻線TN3に発生した電圧によって、ダイオードDsub1、補助電源チョークコイルLsubを介してコンデンサCsubに電流が流れ、補助電源チョークコイルLsubを励磁すると共にコンデンサCsubが充電される。
【0021】
メインスイッチング素子TR1がオフの時、トランスT1にリセット電圧が発生することで、三次巻線のドット印が付されていない側にプラスの電圧が発生する。同時に、補助電源チョークコイルLsubに誘起電圧が発生し、補助電源チョークコイルLsubのドット印の付されていない側にプラスの電圧が発生する。これにより、ダイオードDsub1には逆バイアスが印加された状態となり、ダイオードDsub2には順バイアスが印加された状態となる。ここでは、補助電源チョークコイルLsubからコンデンサCsubを経由してダイオードDsub2を通過し、補助電源チョークコイルLsubへ戻る電流経路が形成され、補助電源チョークコイルLsubが消磁するとともにコンデンサCsubが充電される。
【0022】
補助電源電圧Vsubは、ダイオードDsub1、Dsub2の電圧降下が無視できるものとして、メインスイッチング素子TR1がオンとなるデューティdutyから次式で得られる。
【0023】
【数2】

ここで、スイッチング電源装置の出力電圧Voは、出力チョークコイルLoが電流連続モードで動作しているとして、ダイオードD21、D22の電圧降下が無視できるものとすると、メインスイッチング素子TR1がオンとなるデューティdutyから次式で得られる。
【0024】
【数3】

また、三次巻線TN3に設けた補助電源回路74の構成は、二次巻線TN2に設けた出力整流平滑回路72と同じ構成であることから、補助電源電圧Vsubと出力電圧Voの関係は、次式で表すことができる。
【0025】
【数4】

式(4)から、補助電源回路74の補助電源電圧Vsubは、出力電圧Voと、二次巻線TN2と三次巻線TN3の巻数比で決定されるため、入力電圧Vinが上昇しても補助電源電圧Vsubが上昇することが無い。従って、補助電源電圧Vsubが上昇することによる制御回路54の消費電力の増大からスイッチング電源装置の効率が低下する現象は生じない。このため、図4で示した補助電源回路60の欠点が解決された回路構成となっている。
【0026】
ここまで、出力整流平滑回路72の出力チョークコイルLo、補助電源回路74の補助電源チョークコイルLsub共に、電流連続モードで動作している場合について述べてきたが、スイッチング電源装置70に要求する出力電流が小さくなることで、出力整流平滑回路72の出力チョークコイルLoが電流不連続モードになった場合、制御回路54はメインスイッチング素子TR1のデューティdutyを減少させる制御を行うことになる。
【0027】
この様な出力チョークコイルLoが電流不連続モードの場合の出力電圧Voは、メインスイッチング素子TR1のオン時間をTon、オフ時間をToffとして、次式で得られる。
【0028】
【数5】

補助電源チョークコイルLsubが電流連続モードで動作しており、式(2)が成立しているので、出力チョークコイルLoのインダクタンスをLoとすれば、式(2)と式(5)から、補助電源電圧Vsubは次式となる。
【0029】
【数6】

式(6)より、出力電流Ioが小さくなると補助電源電圧Vsubが低下することが分かる。つまり、スイッチング電源装置70の出力電流Ioが小さくなると、デューティdutyが狭くなる制御が行われ、その結果、補助電源電圧Vsubが低下することになる。この補助電源電圧Vsubの低下を改善する方法として、出力整流平滑回路72を同期整流化する方法がある。
【0030】
図6は、図5のスイッチング電源装置70の出力整流平滑回路72を同期整流化した出力整流平滑回路84の回路構成を適用したスイッチング電源回路80を示している。図6のスイッチング電源装置80では、スイッチング電源装置70でのダイオードD21を、NチャネルMOS−FETである同期整流素子TR21とし、スイッチング電源装置70でのダイオードD22を、NチャネルMOS−FETである同期整流素子TR22として置き換えている。
【0031】
二次巻線TN2の出力平滑を同期整流化することで、スイッチング電源装置80の出力電流Ioによらず、出力チョークコイルLoが電流連続モードで動作することができるようになり、補助電源電圧Vsubの低下が改善されるが、この補助電源回路86では、補助電源チョークコイルLsubを電流連続モードで用いるため、補助電源チョークコイルLsubを大きなインダクタンスのチョークコイルとする必要がある。
【0032】
例えば、図6のスイッチング電源装置80を、巻数N1:巻数N2=8ターン:2ターンのトランスT1を用いて、スイッチング周波数fsw=200kHzとして、入力電圧Vin=48Vで出力電圧Vo=5Vを得るようなスイッチング電源にしたとする。補助電源としては、MOS−FETのゲートを駆動するための電圧が必要であるので、補助電源電圧Vsub=約10V、制御回路54に必要な電流として、補助電源電流Isub=0.05Aとした場合を考える。
【0033】
まず、三次巻線TN3に必要な巻数N3は、式(4)から次式で得られる。
【0034】
【数7】

補助電源チョークコイルLsubのインダクタンスLsubと臨界電流Icrの関係は、補助電源チョークコイルの臨界電流Icr、スイッチング周波数fsw、補助電源チョークコイルのインダクタンスLsubを考慮して次式で表わされる。
【0035】
【数8】

補助電源チョークコイルの臨界電流Icrが、0.05A以下になると、電流不連続モードとなることから、臨界電流Icr=0.05Aとして、入力電圧Vin=48V、スイッチング周波数fsw=200kHzの場合に対してインダクタンスLsubを計算すると、最低でも292μHが必要であることが分かる。入力電圧Vinが高い場合や、スイッチング周波数fswが低い場合は、さらに大きなインダクタンスLsubが必要になる。
【0036】
292uHのインダクタンスのチョークコイルを得るためには、フェライトコア等の磁性材料に多数の巻線を巻く必要があり、チョークコイルの高コスト化を招く。また、「補助電源の出力電流Isub>チョークコイルの臨界電流Icr」の関係を考慮しなければならないため、スイッチング電源装置の使用環境に対して式(8)を精査する必要が有り、設計が複雑になると言う問題も併せ持つ。
【0037】
さらには、補助電源電圧Vsubは、出力電圧Voに対して、式(4)で得られるため、出力電圧Voが低いスイッチング電源装置に本補助電源回路86を用いると、トランスに設ける三次巻線TN3の巻数が増大する(上記条件では4ターン)欠点をもつ。三次巻線TN3の巻数N3が増加すると、トランスT1の大型化を招くことになる。もし、トランスT1の大きさを変更できない場合には、三次巻線TN3の分だけ、一次巻線TN1や二次巻線TN2がトランスT1に占める割合が減少することになり一次巻線TN1や二次巻線TN2の導通抵抗が上昇し、スイッチング電源装置の効率の低下につながる。
【0038】
ここで、同期整流を用いた出力整流平滑回路を持つフォワードコンバータの一次側トランスにアクティブクランプ回路を適用してスイッチング電源装置の効率を向上させることができる。
【0039】
図6のスイッチング電源装置80は、出力整流回路に同期整流回路を持ち、出力チョークコイルが電流連続モードで動作するフォワードコンバータとして、アクティブクランプ回路を組み合わせて用いる事ができる。
【0040】
図7は、図6のフォワードコンバータにアクティブクランプ回路96を適用したスイッチング電源装置90を示している。アクティブクランプ回路96は、クランプ素子TR12とクランプコンデンサC12を直列に接続して、トランスT1の一次巻線TN1に並列に接続している。スイッチング電源装置90は、クランプ素子TR12とメインスイッチング素子TR1を交互にオン・オフさせる動作を行う。
【0041】
アクティブクランプ回路を用いたフォワードコンバータは、メインスイッチング素子TR1に印加される電圧を低く抑えることができるため、スイッチング素子に耐圧の低い素子を使用することが可能となる。耐圧の低い素子は、耐圧の高い素子に比較して、導通抵抗が小さいと言う特性を持つため、導通損失を低減することが可能となり、スイッチング電源の効率を向上できる。また、同期整流回路により二次側の同期整流素子TR21、同期整流素子TR22,の導通抵抗を低減することが可能となり、スイッチング電源装置をさらに高効率なものとすることができる。
【0042】
しかしながら、図7に示したスイッチン電源装置90でスイッチング電源の効率を向上できたとしても、補助電源回路96に大型のインダクタンスが必要であることは変わりなく、このインダクタンスの設計には、スイッチング電源使用環境、即ち、入力電圧、スイッチング周波数、補助電源回路電流を考慮しなければならず、設計が難しいこと、また、三次巻線の巻数が多くなること等の問題はそのまま残っており、さらに、部品点数が増加するため、スイッチング電源装置が大型で高コストなものになってしまう問題もある。
【0043】
本発明は、上記問題点を解決し、広い入力電圧範囲に対しても補助電源電圧が安定な高効率スイッチング電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0044】
本発明によるスイッチング電源装置は、
直流入力電圧を断続して断続電圧を発生させるために、直列に接続された、直流入力電源と絶縁トランスの一次巻線とオン・オフ動作を行うメインスイッチング素子と、
メインスイッチング素子のオン・オフ動作によって絶縁トランスの二次巻線に発生する断続電圧を整流平滑して直流出力電圧を生成し、負荷に電力を供給する出力整流平滑回路と、
メインスイッチング素子のオン・オフ動作を制御する制御回路と、
絶縁トランスに設けた三次巻線に接続され、制御回路の電源を供給する補助電源回路とを備えたフォワードコンバータ型のスイッチング電源装置において、
補助電源回路は、三次巻線とアクティブクランプ回路を介して接続されていることを特徴とするスイッチング電源装置である。
【0045】
アクティブクランプ回路は、直列接続されたオン・オフ動作を行うクランプ素子とクランプコンデンサが、三次巻線と並列に接続され、クランプ素子の両端に、補助電源回路が接続されている。
【0046】
補助電源回路は、ダイオードとダイオードのカソードに直列接続されたコンデンサとで構成され、コンデンサ両端に発生する電圧を補助電源電圧として、制御回路に供給する。
【0047】
出力整流平滑回路は、同期整流素子駆動回路と、同期整流素子駆動回路によりオン・オフ制御され、二次巻線に並列に接続される2個の同期整流素子と、同期整流素子の一方の両端に並列に、直列に接続された出力チョークコイルと出力コンデンサとから構成され、コンデンサの両端に発生する電圧を負荷に供給する。
【発明の効果】
【0048】
本発明によるスイッチング電源装置は、補助電源として使用されているトランスの三次巻線に、一定の電源を超えないように規制するアクティブクランプ回路を接続し、クランプ素子の両端に発生する断続電圧を、ダイオードとコンデンサから構成される整流平滑回路を用いて取り出して補助電源としている。これにより、広い入力電圧範囲においても変動の小さい補助電源電圧を得ることができる。また、従来の補助電源回路からチョークコイルを不要とし、このために、チョークコイルのインダクタンス設計をする必要が無くなる他、トランスに巻回する三次巻線の巻数が低減でき、スイッチング電源装置の部品点数の低減と小型化を可能とする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明によるスイッチング電源装置を説明する図。
【図2】本発明によるスイッチング電源装置の各部電圧を説明する図。
【図3】入力電圧と補助電源電圧との関係を示す図。
【図4】従来のフォワードコンバータ電源に補助電源回路を設けた従来のスイッチンング電源装置を説明する図。
【図5】図4の補助電源回路を改良した従来のスイッチンング電源装置を説明する図。
【図6】図5のスイッチンング電源装置の出力平滑回路に同期整流素子を使用して高効率化を図ったスイッチンング電源装置を説明する図。
【図7】図6のスイッチンング電源装置の一次側トランスにアクティブクランプ回路を使用して高効率化を図ったスイッチンング電源装置を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明によるスイッチング電源装置について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0051】
図1は、本発明によるスイッチング電源装置10を説明する回路図であり、絶縁型同期整流フォワードコンバータタイプであり、補助電源回路22は、アクティブクランプ回路24を介してトランスT1に巻回された三次巻線TN3と接続されている。
【0052】
入力電源12は直流電源であり、絶縁トランスT1の一次巻線TN1と接続され、一次巻線TN1からさらにメインスイッチング素子TR1が直列に接続されている。メインスイッチング素子TR1は、制御回路14により制御され、直流電圧を断続的にオン・オフし、断続電圧に変換する。絶縁トランスT1のニ次巻線TN2には出力整流平滑回路20が接続され、負荷16に電源を供給している。出力整流平滑回路20は、直列に接続された同期整流素子TR21と同期整流素子TR22が絶縁トランスT1と並列に接続されている。同期整流素子TR21と同期整流素子TR22は、同期整素子駆動回路18により制御されている。同期整流素子TR22の両端には、直列に接続された出力コンデンサCoと出力チョークコイルLoが、並列に接続され、出力コンデンサCoの両端に発生する電圧を出力電圧として負荷16に供給している。
【0053】
アクティブクランプ回路24は、直列に接続されたクランプコンデンサC2とクランプ素子TR2が、三次巻線TN3と並列に接続した構成である。クランプ素子TR2は制御回路14により、メインスイッチング素子TR1と交互にオン・オフする制御がされている。
【0054】
補助電源回路22は、ダイオードDsubとコンデンサCsubから構成される整流平滑回路となっており、ダイオードDsubのアノードからカソード方向に流れる電流がコンデンサCsubに充電される構成となっており、クランプ素子TR2の両端と接続されている。コンデンサCsubに発生した電圧を補助電源電圧Vsubとして制御回路14に供給している。
【0055】
メインスイッチング素子TR1、同期整流素子TR21、同期整流素子TR22とクランプ素子TR2は、NチャネルのMOS−FETを用いているが、同様の動作をする素子であれば、他の素子を用いても良い。
【0056】
本発明のスイッチング電源10の動作を具体的に説明するため、入力電圧Vin=30V〜60Vの範囲で出力電圧Vo=5V、MOS−FETを駆動する補助電源電圧Vsub=約10Vを得る場合を例として説明する。絶縁トランスT1の一次巻線TN1の巻数N1は8ターン、ニ次巻線TN2の巻数N2は2ターンとした。本発明では、補助電源回路にチョークコイルを用いないため、臨界電流、補助電源の出力電流、および、スイッチング周波数の関係は考慮する必要が無い。
【0057】
本発明のスイッチング電源装置10では、メインスイッチング素子TR1がオンの時にはクランプ素子TR2がオフし、メインスイッチング素子TR1がオフの時にはクランプ素子TR2がオンする動作を行う。実際の制御では、クランプ素子TR2のオフとメインスイッチング素子TR1のオンの間にデッドタイムを設けることで、メインスイッチング素子TR1のドレイン・ソース間電圧が低下した後でオンするように制御して、メインスイッチング素子TR1のスイッチング動作に伴うスイッチング損失を低減している。
【0058】
本発明では、スイッチング電源装置10の出力電流Ioによらず、出力チョークコイルLoを電流連続モードで動作させるために、同期整流回路を使用する同期整流フォワードコンバータ方式としている。同期整流素子駆動回路18は、メインスイッチング素子TR1がオンの時には同期整流素子TR21がオンし同期整流素子TR22がオフ、メインスイッチング素子TR1がオフの時には、同期整流素子TR21がオフ、同期整流素子TR22がオンとなるように、メインスイッチング素子TR1に同期して、同期整流素子TR21と同期整流素子TR22を制御している。
【0059】
図2(A)に、入力電圧Vinを30Vとした場合における本発明によるスイッチング電源装置10の各部の動作波形を、また、図2(B)に、入力電圧Vinを60Vとした場合における本発明によるスイッチング電源装置10の各部の動作波形を示す。図2において、メインスイッチング素子TR1の、ゲート・ソース間電圧Vgsは(a)に、ドレイン・ソース間電圧Vdsは(b)に、また、アクティブクランプ回路24におけるクランプ素子TR2の、ゲート・ソース間電圧VGSは(c)に、ドレイン・ソース間電圧VDSは(d)に示している。入力電圧を一定に保つために、入力電圧が低い場合、即ち、入力電圧Vinが30Vの場合は、図2(A)のように、メインスイッチング素子TR1のゲート・ソース間電圧を示す(a)Vgsのオン時間Tonを長くしてデューティdutyを広げ、入力電圧が高い場合は、即ち、入力電圧Vinが60Vの場合は、図2(B)のようにメインスイッチング素子TR1のゲート・ソース間電圧を示す(a)Vgsのオン時間Tonを短くしてデューティdutyを狭くする制御を行う。
【0060】
メインスイッチング素子TR1がオンの時に絶縁トランスT1の一次巻線には、入力電圧Vinが印加される。アクティブクランプ方式のフォワードコンバータの絶縁トランスT1は、メインスイッチング素子TR1がオンしている時に励磁した分を、メインスイッチング素子TR1がオフしているときに消磁するように動作し、励磁量と消磁量が同じになるように動作している。図2(A)及び(B)のメインスイッチング素子TR1のドレイン・ソース間電圧を示す(b)Vdsで示したように、励磁と消磁が同じになるためには、(入力電圧Vin×メインスイッチング素子TR1のオン時間Ton)と、(メインスイッチング素子TR1がオフの時にトランスに発生する電圧Vr×メインスイッチング素子TR1のオフ時間Toff)が等しくなるように、絶縁トランスT1に電圧Vrが発生する。このため、入力電圧Vinが低いと絶縁トランスT1に発生する電圧Vrが高くなり、入力電圧Vinが高いと絶縁トランスT1に発生する電圧Vrが低くなる。
【0061】
この時、クランプ素子TR2の、ゲート・ソース間電圧VGSは、図2(A)及び(B)の(c)VGSに示したように、メインスイッチング素子TR1とは逆位相でオン・オフ制御され、クランプ素子TR2の、ドレイン・ソース間電圧VDSは(d)VDSで示したように、クランプ素子TR2の、ゲート・ソース間電圧を示す(b)Vdsと同位相の電圧となる。
【0062】
この時、クランプ素子TR2のドレイン・ソース間電圧VDSは、以下のように求めることができる。
【0063】
本発明のスイッチング電源装置10は、出力チョークコイルLoが電流連続モードで動作する同期整流フォワードコンバータであり、メインスイッチング素子TR1のデューティdutyは、式(3)を変形した次式となる。
【0064】
【数9】

メインスイッチング素子TR1のオン時間Tonとメインスイッチング素子TR1のオフ時間Toffの比は、デューティdutyと(1−duty)の比に等しいため、次式が成立する。
【0065】
【数10】

メインイッチング素子TR1がオンの時、絶縁トランスT1の一次巻線TN1に印加された入力電圧Vinが三次巻線TN3に伝えられる。絶縁トランスT1の三次巻線TN3は、図1においてドット印を付した側にプラスの電圧が発生する。このとき、三次巻線TN3に発生する電圧VN3は次式となる。
【0066】
【数11】

従って、三次巻線TN3に発生する電圧VN3は、入力電圧Vinに比例し、入力電圧Vinが低いと三次巻線TN3に発生する電圧VN3が低くなり、入力電圧Vinが高いと三次巻線TN3に発生する電圧VN3が高くなる。
【0067】
メインスイッチング素子TR1がオフの時、一次巻線TN1に電圧Vrが発生すると同時に、三次巻線TN3にも電圧Vrに比例した電圧が発生する。三次巻線TN3は、図1におけるドット印の無い側にプラスの電圧が発生する。三次巻線TN3に発生する電圧は、クランプコンデンサC2の電圧VC2に蓄えられることになるので、ダイオードDsubの順方向電圧降下が無視できるとすると、クランプコンデンサC2の電圧VC2は次式となる。
【0068】
【数12】

メインスイッチング素子TR1がオンの時、クランプ素子TR2のドレインには、クランプコンデンサC2の電圧VC2に、三次巻線TN3に発生する電圧VN3を加えた値が印加される。従って、クランプ素子TR2のドレインに印加される電圧は、メインスイッチング素子TR1のドレインに印加される電圧をトランスの巻数比で換算した値と等しく、クランプ素子TR2に印加される電圧VDSは次式で得られる。
【0069】
【数13】

本スイッチング電源装置10は、メインスイッチング素子TR1がオフの時にトランスに発生する電圧Vrは、入力電圧Vinが低いと高くなり、入力電圧Vinが高いと低くなる特性を持つため、入力電圧Vinが大きく変化しても、入力電圧Vinとメインスイッチング素子TR1がオフの時にトランスに発生する電圧Vrを足した電圧は大きく変動しない。従って、クランプ素子TR2のドレインに印加される電圧も大きく変化しない。
【0070】
補助電源回路22は、クランプ素子TR2のドレイン―ソース間電圧VDSを、ダイオードDsubとコンデンサCsubから構成される整流回路で構成されており、整流した電圧を制御回路の補助電源としているため、補助電源電圧Vsubはクランプ素子TR2に印加される電圧VDSとなる。このため、補助電源の電圧として約10Vを得るためには、式(13)より、三次巻線TN3の巻数N3を1ターンに設定すれば良いことになる。
【0071】
図3に本発明のスイッチング電源装置の入力電圧Vinに対する、メインスイッチング素子TR1がオフ時にトランスに発生する電圧Vrおよび補助電源電圧Vsubを示した。図3より、入力電圧Vinが高くなると、メインスイッチング素子TR1がオフ時にトランスに発生する電圧Vrが低くなることが分かる。一方、入力電圧Vinが大きく変化しても、補助電源電圧Vsubはほとんど変化せず、約10Vとなっていることが分かる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。
【符号の説明】
【0073】
10 スイッチング電源装置
12 入力電源
14 制御回路
16 負荷
18 同期整流素子駆動回路
20 出力整流平滑回路
22 補助電源回路
24 アクティブクランプ回路
T1 絶縁トランス
TN1 絶縁トランスの一次巻線
N1 一次巻線の巻数
TN2 絶縁トランスのニ次巻線
N2 絶縁トランスのニ次巻線の巻数
TN3 三次巻線
TR1 メインスイッチング素子
TR21 同期整流素子
TR22 同期整流素子
Vin 入力電圧
Vo 出力電圧
Vsub 補助電源電圧
TR2 クランプ素子
Io 出力電流
Lo 出力チョークコイル
Vsub 補助電源電圧
Isub 補助電源電流
Vds メインスイッチング素子のドレイン・ソース間電圧
Vgs メインスイッチング素子のゲート・ソース間電圧
VDS クランプ素子のドレイン・ソース間電圧
VGS クランプ素子のゲート・ソース間電圧
Dsub ダイオード
Csub コンデンサ
C2 クランプコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流入力電圧を断続して断続電圧を発生させるために、直列に接続された、直流入力電源と絶縁トランスの一次巻線とオン・オフ動作を行うメインスイッチング素子と、
前記メインスイッチング素子のオン・オフ動作によって前記絶縁トランスの二次巻線に発生する断続電圧を整流平滑して直流出力電圧を生成し、負荷に電力を供給する出力整流平滑回路と、
前記メインスイッチング素子のオン・オフ動作を制御する制御回路と、
前記絶縁トランスに設けた三次巻線に接続され、前記制御回路の電源を供給する補助電源回路とを備えたフォワードコンバータ型のスイッチング電源装置において、
前記補助電源回路は、前記三次巻線とアクティブクランプ回路を介して接続されていること、を特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記アクティブクランプ回路は、
直列接続されたオン・オフ動作を行うクランプ素子とクランプコンデンサが、前記三次巻線と並列に接続され、
前記クランプ素子の両端に、前記補助電源回路が接続されていること、
を特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記補助電源回路は、ダイオードと前記ダイオードのカソードに直列接続されたコンデンサとで構成され、
前記コンデンサ両端に発生する電圧を補助電源電圧として、前記制御回路に供給することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記出力整流平滑回路は、同期整流素子駆動回路と、前記同期整流素子駆動回路によりオン・オフ制御され、前記二次巻線に並列に接続される2個の同期整流素子と、前記同期整流素子の一方の両端に並列に、直列に接続された出力チョークコイルと出力コンデンサとから構成され、前記コンデンサの両端に発生する電圧を負荷に供給することを特徴とするスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−244652(P2012−244652A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109161(P2011−109161)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】