説明

スイッチング電源装置

【課題】冷却水路での圧力損失低減を図り、発熱の大きい部品を効率良く冷却できるとともに、生産性向上・小型化が図れるスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】冷却水路202は、発熱部品を固定する金属筐体201に直線状に形成されており、スイッチング素子および整流素子107a、107bは、直線状に形成された冷却水路202の上に配置されているとともに、トランス120a、120bあるいは平滑コイル108a、108bなどの発熱部品は、発熱が大きい部品ほど冷却水路202側に近くなるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱部品を冷却するための冷却水路を設けたスイッチング電源装置に係わり、さらに詳しくは、冷却水路での圧力損失低減を図り、発熱部品を効果的に冷却できるとともに、生産性向上・小型化が図れる絶縁型のスイッチング電源装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高電圧の直流電圧を所望の直流電圧に降下させるスイッチング電源装置として、直流入力電圧をスイッチング素子により矩形波電圧に変換し、変換した矩形波電圧をトランスの一次巻線に印加し、トランスの二次巻線から取り出された矩形波電圧を整流素子、チョークコイル、コンデンサなどで構成される回路にて整流、平滑することにより、所望の直流電圧を得るスイッチング電源装置がある。
特に、近年注目され始めたハイブリッド車や電気自動車などの車両に搭載されるスイッチング電源装置では、数百V(ボルト)に達する高電圧バッテリの電圧を、従来車の電源系電圧として採用されている14Vに降圧し、多くの電気負荷や鉛バッテリに電力を供給している。
【0003】
また、ハイブリッド車や電気自動車は、スイッチング電源装置の他にもモータやインバータなどの発熱機器が存在するために、一般的には電動ウォーターポンプやラジエータを備えた専用の冷却系を有している。
ハイブリッド車や電気自動車に搭載されるスイッチング電源装置の内部に流れる電流は、数十A(アンペア)〜百数十Aに達するため、特に、スイッチング素子や整流素子での発熱やトランスなど磁性部品での発熱が大きくなる。
このため、先ほど述べた冷却系の冷却水が流れる水路(冷却水路)をスイッチング電源装置の金属筐体に設けることにより、発熱部品を冷却する。
金属筐体に冷却水路を備えたスイッチング電源装置としては、例えば特許文献1(特許第3730968号公報)に示すものが提案されている。この特許文献1には複数の屈曲部を有して複雑に引き回された冷却水路が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3730968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スイッチング電源装置を構成するスイッチング素子やトランスなどは、相当の熱を発生するため、これらの発熱部品で発生する熱は金属筐体により放熱処理される。
金属筐体に設けられる冷却水路は、一般的に発熱部(発熱部品)の直下を通過するようにレイアウトされることが多い。
そのため、発熱部品が点在している場合は冷却水路が複雑な形状になり、冷却水路での冷却水の圧力損失が増加して冷却水の流れが悪くなって、発熱部品を効果的に冷却できなくなるという問題点がある。
また、冷却水路での冷却水の圧力損失の増加に伴って、冷却水路に冷却水を流すための電動ウォーターポンプの性能を上げるなどの対策が必要になる。
このため、圧力損失が小さくなる直線状の冷却水路を設け、直線状の冷却水路上にスイッチング電源装置の主回路部品(すなわち、発熱部品)を配置することにより有効に冷却できる。
しかし、直線状の冷却水路の場合は、全ての発熱部品を冷却水路の真上に配置すると、
スイッチング電源装置の形状が細長くなって小型化が阻害されるとともに、部品間の結線も難しくなり生産性も悪くなるという問題点が発生する。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、スイッチング素子、整流素子、トランス、平滑コイル、共振コイルなどの発熱部品を、直線状をした冷却水路の上部(真上)あるいは近傍に合理的に配置することによって、発熱の大きい部品を効率良く(効果的に)冷却できるとともに、生産性向上・小型軽量化などが図れるスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスイッチング電源装置は、スイッチング素子を設けて入力する直流電圧から交流電圧を発生させるインバータ回路と、前記インバータ回路の一次側スイッチング素子がゼロボルトスイッチング動作するのに必要な共振コイルと、前記インバータ回路から一次巻線の両端に印加される交流電圧を異なる交流電圧に変換して二次巻線に出力するトランスと、前記トランスの二次巻線から出力する交流電圧を整流するための二次側整流素子と、前記二次側整流素子を設けた整流回路からの出力を平滑する平滑コイルと、前記整流回路から出力されるリップル電圧波形を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コイルと前記平滑コンデンサによって得られる直流電圧を出力するための出力端子と、前記一次側スイッチング素子、前記共振コイル、前記トランス、前記二次側整流素子および前記平滑コイルを固定し、かつ、前記一次側スイッチング素子、前記共振コイル、前記トランス、前記二次側整流素子および前記平滑コイルで発生する熱を放熱するための冷却水路を設けた金属筐体とを備えた絶縁型のスイッチング電源装置であって、
前記冷却水路は、前記金属筐体に直線状に形成されており、
前記スイッチング素子および前記整流素子は、直線状に形成された前記冷却水路の上に配置されているとともに、前記トランスあるいは前記平滑コイルなどの発熱部品は、発熱が大きい部品ほど前記冷却水路側に近くなるように配置されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、冷却水路は金属筐体に直線状に形成されており、特に発熱が大きい発熱部品であるスイッチング素子および整流素子は、直線状に形成された冷却水路の上に配置されているとともに、さらに、トランスあるいは平滑コイルなどの発熱部品は、発熱が大きい部品ほど前記冷却水路側に近くなるように配置されているので、冷却水路での圧力損失を低減して、発熱の大きい部品を効率良く(効果的に)冷却できる。
また、冷却水路が直線状であるため、金属筐体に冷却水路を設けるための加工が容易となり、生産性の向上を図れる。
また、冷却水路での圧力損失を低減できるので、金属筐体の厚みを薄くすることが可能であり、冷却系の小形化や軽量化も図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】スイッチング電源装置の一例を説明するための回路図である。
【図2】実施の形態1に係わるスイッチング電源装置の主要構成部品の配置例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1および図2を用いて、本発明の実施の形態例について説明する。
なお、各図間において、同一符号は、同一あるいは相当のものであることを表す。
実施の形態1.
本発明に係わる実施の形態について説明するために、絶縁型スイッチング電源の一般的な回路方式であるフルブリッジ・センタータップ式同期整流方式を例に挙げる。
フルブリッジ・センタータップ式同期整流方式は、一般的な全波整流回路と同等の整流
波形を得ることができる整流回路の一種である。フルブリッジ・センタータップ式同期整流方式の回路図を図1に示す。
図1に示すスイッチング電源装置は、トランスの一次巻線が直列に接続され、トランスの二次巻線が並列に接続されている。
【0011】
図1に示したスイッチング電源装置の各構成部品について説明する。
101a、101bは、スイッチング電源へ直流電圧を印加する入力端子である。
入力端子101a、101bには、スイッチング電源装置の出力電圧よりも高い直流電圧が印加される。
102は、入力端子101a、101bに入力された直流電圧を交流電圧に変換するためのスイッチング素子で構成されるインバータ回路である。一般的には、インバータ回路102は、MOSFETなどの複数のスイッチング素子から構成される。
103は、インバータ回路102のスイッチング素子で発生するスイッチング損失の低減を図るための「ゼロボルトスイッチング動作(ZVS動作)」に必要な共振コイル(共振インダクタ)である。
【0012】
104a、104bは、インバータ回路102から出力される矩形波交流電圧が印加されるトランス(例えば、フルブリッジ・センタータップ式同期整流方式の整流回路を構成するトランス)の一次巻線である。
インバータ回路102に設けられた複数のスイッチング素子をスイッチングすることによって生成される矩形波に近い電圧波形が、トランスの一次巻線104a、104bに印加される。
105a、105bは、トランスの巻き数比に応じて異なる電圧レベルに変換された矩形波交流電圧が印加されるトランスの二次巻線である。
106a、106bは、トランスの一次巻線104a、104bとトランスの二次巻線105a、105bを電磁気的に結合するための磁性体コアである。例えば、トランスを構成する各巻線が、磁性体コアに設けられた中脚部の周囲に配置される。
【0013】
107a、107bは、トランスの二次巻線105a、105bから出力する交流電圧を整流するための整流素子である。
本実施の形態では、同期整流を実現するためのMOSFETを用いるが、ダイオードなどのその他の整流素子であってもよい。
108a、108bは、整流素子107a、107bで整流したリップル電圧波形を平滑するための平滑コイルである。
109a、109bは、整流素子107a、107bで整流したリップル電圧波形を平滑するための平滑コンデンサである。平滑コンデンサ109a、109bの片側は平滑コイルに接続され、もう一方の片側はグランドである金属筐体に接続されている。
110は、整流回路・平滑回路で得られた直流電圧をスイッチング電源の外部へ出力するための出力端子である。なお、本実施の形態では、二次側回路のグランドを金属筐体と同電位にしているため、出力電圧は出力端子110と金属筐体の間に出力される。
111は、スイッチング電源の金属筐体に接続されたグランド端子である。本実施の形態では、二次側回路のグランドとして、金属筐体を用いている。
ところで、120a、120bは、インバータ回路102から出力される矩形波交流電圧が印加されるトランスである。トランス120aは、前述した一次巻線104a、磁性体コア106a、二次巻線105aで構成され、トランス120bは、前述した一次巻線104b、磁性体コア106b、二次巻線105bで構成されている。
各トランスの一次巻線と二次巻線は絶縁されており、一次巻線に接続されるインバータ回路のスイッチング素子を「一次側スイッチング素子」、二次巻線に接続される整流素子を「二次側整流素子」とも称する。
【0014】
図2は、本発明に係るスイッチング電源装置を構成する部品(発熱部品)を金属筐体に配置した例を示す図であり、金属筐体に固定される各部品を上面から描いた図である。
図2に示した構成部品について説明する。
201は、インバータ回路、共振コイル103、トランス、整流回路、平滑回路などの構成部品を固定するための金属筐体である。
202は、インバータ回路、共振コイル、トランス、整流回路、平滑回路などで発生する熱を放熱するために金属筐体201に設けられた冷却水路である。
【0015】
203は、インバータ回路に含まれるスイッチング素子を実装するための第一の金属基板である。放熱性を確保するため、本実施の形態では、第一の金属基板203として金属のベースプレートを備えた金属基板を用いている。
なお、本実施の形態では、第一の金属基板203にスイッチング素子を実装しているが、絶縁体を介してスイッチング素子を金属筐体201に接触させて放熱し、インバータ回路102の配線を基板や銅板で構成する方法や、その他の方法を用いてもよい。
【0016】
204は、整流素子107a、107bを実装するための第二の金属基板である。放熱性を確保するため、本実施の形態では、第二の金属基板204として金属のベースプレートを備えた金属基板を用いている。
本実施の形態では、第二の金属基板204に整流素子107a、107bを実装しているが、絶縁体を介して整流素子107a、107bを金属筐体201に接触させて放熱し、整流回路の配線を基板や銅板で構成する方法や、その他の方法を用いてもよい。
なお、上述の説明では、スイッチング素子を第一の金属基板203に、整流素子を第二の金属基板204に実装する場合について述べているが、第一の金属基板と第二の金属基板の二枚の金属基板は用いずに、スイッチング素子と整流素子の両方を一枚の金属基板に実装してもよい。
【0017】
205a、205bは、トランスの二次巻線105a、105bと平滑コイル108a、108bを電気的に接続するための配線であり、トランス120a、120bの上部を跨ぐ形で配置されている。本実施の形態では、配線205a、205bは銅板を用いているが、ケーブルや基板など、その他の手段を用いてもよい。
通常、トランスの二次巻線と平滑コイルを電気的に接続するための配線は、トランスや平滑コイルの脇(側部)を通過するように配置されるが、実装面積の増加を招くだけでなく、トランスや平滑コイルを金属筐体に固定するために設ける固定部材と干渉し易いため、トランスの上部を跨ぐ形で配置する。
また、206a、206bは、平滑コイル108a、108bと平滑コンデンサ109a、109bおよび出力端子110を電気的に接続するための配線であり、平滑コイルの上部を跨ぐ形で配置されている。
本実施の形態では、配線206a、206bは銅板を用いているが、ケーブルや基板など、その他の手段を用いてもよい。
【0018】
207a〜207cは、トランス120a、120bを金属筐体201に固定するためのトランス固定部材である。
208a〜208cは、トランス固定部材207a〜207cを金属筐体201に固定するために設けた金属筐体の盛り上がり箇所である。
209a、209bは、平滑コイル108a、108bを金属筐体201に固定するための平滑コイル固定部材である。
210a〜210cは、平滑コイル固定部材209a、209bを金属筐体201に固定するために設けた金属筐体の盛り上がり箇所である。
211は、共振コイル103を金属筐体201に固定するための共振コイル固定部材である。
212は、共振コイル固定部材211を金属筐体201に固定するために設けた金属筐体の盛り上がり箇所である。
【0019】
本実施の形態によるスイッチング電源装置は、スイッチング素子を設けて入力する直流電圧から交流電圧を発生させるインバータ回路102と、インバータ回路102の一次側スイッチング素子がゼロボルトスイッチング動作するのに必要な共振コイル103と、インバータ回路102から一次巻線104a、104bの両端に印加される交流電圧を異なる交流電圧に変換して二次巻線105a、105bに出力するトランス120a、120bと、トランスの二次巻線105a、105bから出力する交流電圧を整流するための二次側整流素子107a、107bと、二次側整流素子107a、107bを設けた整流回路からの出力を平滑する平滑コイル108a、108bと、整流回路から出力されるリップル電圧波形を平滑する平滑コンデンサ109a、109bと、平滑コイル108a、108bと平滑コンデンサ109a、109bによって得られる直流電圧を出力するための出力端子110と、一次側スイッチング素子、共振コイル103、トランス120a、120b、二次側整流素子107a、107bおよび平滑コイル108a、108bを固定し、かつ、一次側スイッチング素子、共振コイル103、トランス120a、120b、二次側整流素子107a、107bおよび平滑コイル108a、108bで発生する熱を放熱するための冷却水路202を設けた金属筐体201を備えている。
そして、冷却水路202は、金属筐体201に直線状に形成されており、一次側スイッチング素子および二次側整流素子107a、107bは、直線状に形成された冷却水路202の上に配置されているとともに、トランス、平滑コイルあるいは共振コイルなどの発熱部品は、発熱が大きい部品ほど冷却水路202側に近くなるように配置されている。
【0020】
本実施の形態によるスイッチング電源装置によれば、冷却水路202は、金属筐体201に直線状に形成されており、特に高い熱を発生する一次側スイッチング素子および二次側整流素子107a、107bは、直線状に形成された冷却水路202の上部(真上)に配置されているとともに、さらに、トランス、平滑コイルあるいは共振コイルなどの発熱部品は、発熱が大きい部品ほど冷却水路202側に近くなるように配置されている。従って、冷却水の圧力損失を低減して、発熱部品を効果的に冷却することが可能となる。
そのため、電動ウォーターポンプの定格を小さくすることが可能となる。すなわち、他のコンポーネント(モータ、インバータ)が存在する専用冷却系へスイッチング電源装置を追加しやすくなる。
また、冷却水路202が直線状の形状をしているので、金属筐体201に冷却水路を設けるための加工が容易となる。(例えば、金属筐体201に直線状の貫通穴を設けるだけで冷却水路202を構成することができる。)
【0021】
複雑な形状の冷却水路を構成する場合、金属筐体に複雑な形状の加工を施す必要があるため、加工後の水路の上に防水加工を施した上で、蓋を取り付ける必要が出てくる。このため、冷却系の組立工程が複雑になる。
これに比べ、本発明では、冷却水路202は直線形状であるので、貫通穴の加工のみでよく、貫通穴の両側にニップルを施すだけで金属筐体の冷却水路を構成できる。
また、金属筐体201の厚みを薄くすることができる。すなわち、冷却器を簡素化することができる。このため、スイッチング電源装置の低背化、小型化、軽量化が可能となり、燃費・消費電力の改善へとつながる。
なお、「冷却器」とは、冷却水路202および冷却水路202を設けた金属筐体201を含む冷却系全体のことを指す。
仮に最も発熱の大きい部品を冷却水路から離れた位置に配置した場合、金属筐体201の厚みを厚くする必要が出てくることに加え、場合によっては冷却器に冷却フィンの加工を施す必要が出てくる場合がある。
【0022】
また、本実施の形態によるスイッチング電源装置は、一次側スイッチング素子は金属のベースプレートを備えた第一の金属基板203に、二次側整流素子107a、107bは金属のベースプレートを備えた第二の金属基板204に実装されており、第一の金属基板203および第二の金属基板204は、一次側スイッチング素子および二次側整流素子のうち、発熱の大きい部材を実装した方を冷却水路202の上流に、発熱の小さい部材を実装した方を冷却水路202の下流に配置されている。
これにより、一次側スイッチング素子を実装した第一の金属基板と二次側整流素子を実装した第二の金属基板を別々に製造することが可能となり、生産性の向上が図れると共に、さらに、一次側スイッチング素子を実装した第一の金属基板と二次側整流素子を実装した第二の金属基板を合理的・効果的に冷却することができる。
【0023】
また、本実施の形態によるスイッチング電源装置は、トランスの二次巻線105a、105bを構成するバスバーの接続端子を、冷却水路202側に設けている。
これにより、発熱の大きい部品ほど冷却水路202に近くなるように配置することが容易となる。具体的には、「二次側整流素子−トランス−平滑コイル」と、発熱の大きい順番に冷却水路202に近くなるように配置することができる。
通常、図1に示すような回路構成では、「トランス−二次側整流素子−平滑コイル」の順番で構成されているが、トランスの二次巻線の接続端子を二次側整流素子が配置される冷却水路202側に設けることによって、「二次側整流素子−トランス−平滑コイル」の順番に冷却水路202に近づけて配置しやすくなる。
従って、発熱の大きな一次側スイッチング素子と二次側整流素子を冷却水路202の上で一直線状に並べることができるとともに、さらに、他の発熱部品(トランス、共振コイル、平滑コイルなど)についても、発熱の大きい部品ほど冷却水路202に近くなるように配置することができ、発熱部品の冷却を合理的・効果的に行うことが可能となる。
【0024】
また、本実施の形態によるスイッチング電源装置では、トランスの二次巻線105a、105bと平滑コイル108a、108bを電気的に接続するための配線205a、205bが、トランス120a、120bの上部を跨いで配置されている。
従って、発熱の大きい部品ほど冷却水路202に近くなるように配置することが容易となる。具体的には、発熱の大きさに応じて「整流素子−トランス−平滑コイル」の順番で並べることができる。
トランスの二次巻線と平滑コイルを電気的に接続するための配線が、トランス上部を跨ぐ形に配置することにより、「二次側整流素子−トランス−平滑コイル」と、発熱の大きい順番に配置しやすくなる。
これにより、発熱の大きな一次側スイッチング素子と二次側整流素子を冷却水路202の上で一直線状に並べることができるとともに、発熱の大きい部品ほど冷却水路に近づけて配置できるので、効率良く(効果的に)発熱部品を冷却できる。
さらに、トランスの二次巻線と平滑コイルを電気的に接続するための配線をトランスの脇(側部)に設ける場合に比べて、実装面積を低減することが可能であり、スイッチング電源装置の小型化が図れる。また、トランスの二次巻線と平滑コイルを電気的に接続するための配線がトランス固定用の固定部材と干渉することがない。
【0025】
また、本実施の形態では、平滑コイル108a、108bと平滑コンデンサ109a、109bおよび出力端子110を接続するための配線206a、206bが、平滑コイル108a、108bの上部を跨いで配置されている。
これによって、冷却水路202により近い場所に平滑コイルを配置できることに加え、平滑コイルの長手方向と冷却水路が平行となるように配置しやすくなる。
このため、冷却水路202と直交する方向の金属筐体201の寸法を低減することができるのに加え、トランスや平滑コイルなどの発熱部材の長手方向と冷却水路202を平行に配置し、さらに、冷却水路202に近づけて配置することによって、効果的に発熱部材
を冷却できるので、冷却器の冷却条件を緩和することができる。
このため、金属筐体201の厚みを薄くすることができる。すなわち、冷却器の構造を簡素化することができる。
結果的に、スイッチング電源装置の低背化、小型化、軽量化が可能となり、燃費改善・消費電力改善へとつながる。
また、平滑コイル108a、108bと平滑コンデンサ109a、109bおよび出力端子110を接続するための配線206a、206bを平滑コイルの脇(側部)に設ける場合に比べて、実装面積を低減することができる。また、配線206a、206bが平滑コイル固定用の固定部材と干渉することがない。
【0026】
また、本実施の形態では、共振コイル103の長手方向が冷却水路202と平行となるように配置されている。このため、冷却水路202と直交する方向の金属筐体201の寸法を低減することが可能となり、金属筐体201の厚みを薄くすることができる。
すなわち、冷却器を簡素化することができる。従って、スイッチング電源装置の、低背化、小型化、軽量化が可能となり、燃費改善・消費電力改善へとつながる。
仮に、共振コイル103の長手方向と冷却水路202が直交するように配置した場合、共振コイル103の端と冷却水路202の距離が離れてしまうため、金属筐体201を厚くする必要が出てくることに加え、場合によっては冷却器に冷却フィンの加工を施す必要が出てくる場合がある。
【0027】
また、本実施の形態では、トランス120a、120bの長手方向が冷却水路202と平行となるように配置されている。
このため、冷却水路202と直交する方向の金属筐体201の寸法を低減することが可能となり、金属筐体201の厚みを薄くすることができる。すなわち、冷却器の構造を簡素化することができる。
従って、スイッチング電源装置の低背化、小型化、軽量化が可能となり、燃費改善・消費電力改善へとつながる。
仮にトランスの長手方向と冷却水路202が直交するように配置した場合、トランスの端と冷却水路の距離が離れてしまうため、金属筐体201を厚くする必要が出てくることに加え、場合によっては冷却器に冷却フィンの加工を施す必要が出てくる場合がある。
【0028】
また、本実施の形態では、平滑コイル108a、108bの長手方向が冷却水路202と平行となるように配置されている。
このため、冷却水路202と直交する方向の金属筐体201の寸法を低減することが可能となり、金属筐体201の厚みを薄くすることができる。すなわち、冷却器の構造を簡素化することができる。
従って、スイッチング電源装置の低背化、小型化、軽量化が可能となり、燃費改善・消費電力改善へとつながる。
仮に、平滑コイルの長手方向と冷却水路が直交するに配置した場合、平滑コイルの端と冷却水路の距離が離れてしまうため、金属筐体を厚くする必要が出てくることに加え、場合によっては冷却器に冷却フィンの加工を施す必要が出てくる場合がある。
【0029】
また、本実施の形態では、共振コイル103が複数個存在する場合、冷却水路202から複数の共振コイルまでの距離がそれぞれ等しくなるように配置されている。
このため、複数の共振コイル103の「熱の不平衡状態」を防ぐことができる。例えば、複数のコンバータ主回路が存在するために、複数の共振コイルが存在する場合、共振コイルの磁性体の熱が不平衡状態になることにより、例えば透磁率の温度特性によって磁気特性が不平衡となる。
従って、コンバータの電気回路の平衡度を確保できなくなるが、冷却水路から複数の共振コイルまでの距離がそれぞれ等しくなるように配置することにより、この問題を解決す
ることができる。
【0030】
また、本実施の形態では、トランスが複数個存在する場合、冷却水路202から複数のトランスまでの距離がそれぞれ等しくなるように配置されている。
そのため、トランスの「熱の不平衡状態」を防ぐことができる。例えば、複数のコンバータ主回路が存在するために複数のトランスが存在する場合、トランスの磁性体の熱が不平衡状態になることにより、例えば透磁率の温度特性によって磁気特性が不平衡となる。
このためコンバータの電気回路の平衡度を確保できなくなるが、冷却水路202から複数のトランスまでの距離がそれぞれ等しくなるように配置することにより、この問題を解決することができる。
【0031】
また、本実施の形態では、平滑コイルが複数存在する場合、冷却水路202から複数の平滑コイルまでの距離がそれぞれ等しくなるように配置されている。
そのため、平滑コイルの「熱の不平衡状態」を防ぐことができる。例えば、複数のコンバータ主回路が存在するために複数の平滑コイルが存在する場合、平滑コイルの磁性体の熱が不平衡状態になることにより、例えば透磁率の温度特性によって磁気特性が不平衡となる。
このためコンバータの電気回路の平衡度を確保できなくなるが、冷却水路202から複数の平滑コイルまでの距離がそれぞれ等しくなるように配置することによって、この問題を解決することができる。
【0032】
なお、上述した実施の形態の説明では、スイッチング電源装置として図1に示すような回路構成を例に上げたが、これに限られるものではなく、その他の回路方式のスイッチング電源装置であってもよい。
また、上述した実施の形態の説明では、複数のトランス、複数の平滑コイルが存在する場合を例に上げているが、一つのトランス、一つの平滑コイルで構成される場合であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、発熱の大きい部材を効率良く冷却できるとともに、生産性向上・小型化などが図れる「ハイブリッド車や電機自動車などでの使用に適したスイッチング電源装置」の実現に有用である。
【符号の説明】
【0034】
101a、101b 入力端子
102 インバータ回路 103 共振コイル
104a、104b トランスの一次巻線
105a、105b トランスの二次巻線
106a、106b 磁性体コア
107a、107b 整流素子
108a、108b 平滑コイル
109a、109b 平滑コンデンサ
110 出力端子 111 グランド端子
120a、120b トランス
201 金属筐体 202 冷却水路
203 第一の金属基板 204 第二の金属基板
205a、205b トランスの二次巻線と平滑コイルを接続する配線
206a、206b 平滑コイル、平滑コンデンサ、出力端子を接続する配線
207a〜207c トランス固定部材
208a〜208c 金属筐体の盛り上がり箇所
209a〜209c 平滑コイル固定部材
210a〜210c 金属筐体の盛り上がり箇所
211 共振コイル固定部材
212 金属筐体の盛り上がり箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を設けて入力する直流電圧から交流電圧を発生させるインバータ回路と、前記インバータ回路の一次側スイッチング素子がゼロボルトスイッチング動作するのに必要な共振コイルと、前記インバータ回路から一次巻線の両端に印加される交流電圧を異なる交流電圧に変換して二次巻線に出力するトランスと、前記トランスの二次巻線から出力する交流電圧を整流するための二次側整流素子と、前記二次側整流素子を設けた整流回路からの出力を平滑する平滑コイルと、前記整流回路から出力されるリップル電圧波形を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コイルと前記平滑コンデンサによって得られる直流電圧を出力するための出力端子と、前記一次側スイッチング素子、前記共振コイル、前記トランス、前記二次側整流素子および前記平滑コイルを固定し、かつ、前記一次側スイッチング素子、前記共振コイル、前記トランス、前記二次側整流素子および前記平滑コイルで発生する熱を放熱するための冷却水路を設けた金属筐体とを備えた絶縁型のスイッチング電源装置であって、
前記冷却水路は、前記金属筐体に直線状に形成されており、
前記一次側スイッチング素子および前記二次側整流素子は、直線状に形成された前記冷却水路の上に配置されているとともに、前記トランス、前記平滑コイルあるいは共振コイルなどの発熱部品は、発熱が大きい部品ほど前記冷却水路側に近くなるように配置されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記一次側スイッチング素子は金属のベースプレートを備えた第一の金属基板に、前記二次側整流素子は金属のベースプレートを備えた第二の金属基板に実装されており、
前記第一の金属基板および第二の金属基板は、前記一次側スイッチング素子および前記二次側整流素子のうち、発熱の大きい部材を実装した方を前記冷却水路の上流に、発熱の小さい部材を実装した方を前記冷却水路の下流に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記トランスの二次巻線を構成するバスバーの接続端子を、前記冷却水路側に設けていることを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記トランスの二次巻線と前記平滑コイルを電気的に接続するための配線が、前記トランスの上部を跨いで配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記平滑コイルと前記平滑コンデンサおよび前記出力端子を接続するための配線が、前記平滑コイルの上部を跨いで配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記共振コイルの長手方向が、前記冷却水路と平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記トランスの長手方向が、前記冷却水路と平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記平滑コイルの長手方向が、前記冷却水路と平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記共振コイルが複数個存在する場合、前記冷却水路から複数の共振コイルまでの距離がそれぞれ等しくなるように配置されていることを特徴とする請求項6に記載のスイッチング電源装置。
【請求項10】
前記トランスが複数個存在する場合、前記冷却水路から複数のトランスまでの距離がそれぞれ等しくなるように配置されていることを特徴とする請求項7に記載のスイッチング電源装置。
【請求項11】
前記平滑コイルが複数存在する場合、前記冷却水路から複数の平滑コイルまでの距離がそれぞれ等しくなるように配置されていることを特徴とする請求項8に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−62998(P2013−62998A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201523(P2011−201523)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】