説明

スイッチ回路

【課題】 2つの入力端間のアイソレーションおよび選択されない入力端と出力端間のアイソレーションを向上する。
【解決手段】 第1の入力端41と、第2の入力端42と、第1の入力端41との間又は第2の入力端42との間で択一的に導通する出力端43と、第1の入力端41又は第2の入力端42を終端するための終端手段61、62とを備え、第1の入力端41と出力端43との間を導通したときに第2の入力端42を終端手段62によって終端し、第2の入力端42と出力端43との間を導通したときに第1の入力端41を終端手段61によって終端した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星放送受信用屋外コンバー(BSコンバータ)タ等に使用される単極双投型スイッチ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の単極双投型スイッチ回路を使用したBSコンバータの構成を図4に従って説明する。第一の入力端子1に入力された12GHz帯の左旋回の衛星放送信号は第一の低雑音増幅器2、第一のバンドパスフィルタ3を介して第一の混合器4に入力される。第一の混合器4には局部発振器5から局部発振信号が供給される。第一の混合器4から出力されたほぼ1GHzの第一の中間周波信号は第一の中間周波前置増幅器6を介して第一の抵抗分配器31に入力される。
【0003】
一方、第二の入力端子7に入力された12GHz帯の右旋回の衛星放送信号は第二の低雑音増幅器8、第二のバンドパスフィルタ9を介して第二の混合器10に入力される。第二の混合器10にも局部発振信号が供給されている。第二の混合器10から出力されたはほぼ1GHzの第二の中間周波信号は第二の中間周波前置増幅器11を介して第二の抵抗分配器32に入力される。
【0004】
第一の抵抗分配器31で分配された第一の中間周波信号の一方と第二の抵抗分配器32で分配された第二の中間周波信号の一方は単極双投型の第一の切替スイッチ33によって何れかが選択され、第一の中間周波出力増幅器12を介して第一の出力端子14に出力される。
同様に、第一の抵抗分配器31で分配された第一の中間周波信号の他方と第二の抵抗分配器32で分配された第二の中間周波信号の他方は単極双投型の第二の切替スイッチ34によって何れかが選択され、第二の中間周波出力増幅器13を介して第二の出力端子15に出力される(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−235801号公報(図1)
【0006】
第一の切替スイッチ33及び第二の切替スイッチ34は、それぞれ2個のピンダイオードの組み合わせによって構成され、一方のピンダイオードをオンとした場合は他方のピンダイオードがオフとされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の切替スイッチは2つの入力端の何れか一方が出力端に接続される構成を有しているので、一方の入力端が出力端に接続された場合には他方の入力端が開放されるので、解放端の前段に接続されている回路は出力オープンとなり、その回路の信号が出力端に飛びつきやすくなって、2つの入力端間のアイソレーションが低下するという問題が発生する。
【0008】
本発明は、2つの入力端間のアイソレーションおよび選択されない入力端と出力端間のアイソレーションを向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の解決手段として、第1の入力端と、第2の入力端と、前記第1の入力端との間又は前記第2の入力端との間で択一的に導通する出力端と、前記第1の入力端又は前記第2の入力端を終端するための終端手段とを備え、前記第1の入力端と前記出力端との間を導通したときに前記第2の入力端を前記終端手段によって終端し、前記第2の入力端と前記出力端との間を導通したときに前記第1の入力端を前記終端手段によって終端した。
【0010】
また、第2の解決手段として、前記終端手段はダイオードと抵抗との直列回路からなり、前記直列回路を前記第1の入力端とグランドとの間及び前記第2の入力端とグランドとの間にそれぞれ接続し、前記2つの直列回路の前記ダイオードを択一的に導通させた。
【0011】
また、第3の解決手段として、前記ダイオードが導通したときの前記直列回路のインピーダンスを、前記第1の入力端及び前記第2の入力端にそれぞれ接続される回路インピーダンスに等しくした。
【0012】
また、第4の解決手段として、前記終端手段は、第1の周波数又はそれよりも高い第2の周波数にトラップ点が切り替えられるトラップ回路からなり、前記トラップ回路を前記第1の入力端とグランドとの間及び前記第2の入力端とグランドとの間にそれぞれ接続し、前記第1の入力端と前記出力端との間を導通したときに前記第1の入力端に接続された前記トラップ回路によって前記第1の周波数をトラップすると共に、前記第2の入力端に接続された前記トラップ回路によって前記第2の周波数をトラップし、前記第2の入力端と前記出力端との間を導通したときに前記第2の入力端に接続された前記トラップ回路によって前記第1の周波数をトラップすると共に、前記第1の入力端に接続された前記トラップ回路によって前記第2の周波数をトラップした。
【0013】
また、第5の解決手段として、前記トラップ回路はダイオードと、前記ダイオードに直列接続された抵抗と、前記ダイオードに並列接続された第1の容量素子と、前記抵抗に並列接続された直列共振回路とからなり、前記2つのトラップ回路のダイオードを択一的に導通させた。
【0014】
また、第6の解決手段として、前記第1の周波数を前記第1の入力端及び前記第2の入力端に入力される信号の周波数帯における最低周波数よりも低くし、前記第2の周波数を前記周波数帯の最高周波数近傍とした。
【発明の効果】
【0015】
第1の解決手段によれば、第1の入力端と、第2の入力端と、第1の入力端との間又は第2の入力端との間で択一的に導通する出力端と、第1の入力端又は第2の入力端を終端するための終端手段とを備え、第1の入力端と出力端との間を導通したときに第2の入力端を終端手段によって終端し、第2の入力端と出力端との間を導通したときに第1の入力端を終端手段によって終端したので、開放される側の入力端の信号は反射することなく、他方の入力端及び出力端への信号の飛び付きがなくなり、アイソレーションが向上する。
【0016】
また、第2の解決手段によれば、終端手段はダイオードと抵抗との直列回路からなり、直列回路を前記第1の入力端とグランドとの間及び第2の入力端とグランドとの間にそれぞれ接続し、2つの直列回路のダイオードを択一的に導通させたので、開放される側の入力端を抵抗によって終端できる。
【0017】
また、第3の解決手段によれば、ダイオードが導通したときの直列回路のインピーダンスを、第1の入力端及び第2の入力端にそれぞれ接続される回路インピーダンスに等しくしたので、開放される側の入力端に接続された前段回路のインピーダンスを整合した状態で終端できる。
【0018】
また、第4の解決手段によれば、終端手段は、第1の周波数又はそれよりも高い第2の周波数にトラップ点が切り替えられるトラップ回路からなり、トラップ回路を第1の入力端とグランドとの間及び第2の入力端とグランドとの間にそれぞれ接続し、第1の入力端と出力端との間を導通したときに第1の入力端に接続されたトラップ回路によって第1の周波数をトラップすると共に、第2の入力端に接続されたトラップ回路によって第2の周波数をトラップし、第2の入力端と出力端との間を導通したときに第2の入力端に接続されたトラップ回路によって第1の周波数をトラップすると共に、第1の入力端に接続されたトラップ回路によって第2の周波数をトラップしたことで、開放される側の入力端の信号を減衰することができ、他の入力端および出力端への信号の飛び付きを少なくしてアイソレーションを一層向上できる。とくに、高域側のアイソレーション向上に効果が得られる。
【0019】
また、第5の解決手段によれば、トラップ回路はダイオードと、ダイオードに直列接続された抵抗と、ダイオードに並列接続された第1の容量素子と、抵抗に並列接続された直列共振回路とからなり、2つのトラップ回路のダイオードを択一的に導通させたので、2カ所の周波数ポイントを切り替えてトラップすることができる。
【0020】
また、第6の解決手段によれば、第1の周波数を第1の入力端及び第2の入力端に入力される信号の周波数帯における最低周波数よりも低くし、第2の周波数を周波数帯の最高周波数近傍としたので、入力される信号周波数帯の低域側周波数特性を補正できるとともに、信号が入力されない端子側の高域のアイソレーション特性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1を参照して本発明の第1実施形態を説明する。第1の入力端41には第1のダイオード44のカソードが接続され、そのアノードは、第1のチョークインダクタ46を介して第1の制御端48に接続されると共に、第1の直流カットコンデンサ50を介して出力端43に結合される。また、第2の入力端42には第2のダイオード45のカソードが接続され、そのアノードは、第2のチョークインダクタ47を介して第2の制御端49に接続されると共に、第2の直流カットコンデンサ51を介して出力端43に結合される。
【0022】
また、第1のダイオード44のカソードは第3の直流カットコンデンサ52を介して第三のダイオード53のアノードに結合され、そのカソードは第1の抵抗54を介して接地される。第3のダイオード53と第1の抵抗54との直列回路は第1の終端手段61を構成する。第3のダイオード53のアノードは第3のチョークインダクタ55を介して第2のダイオード45のカソードに接続される。第2のダイオード45のカソードは第4の直流カットコンデンサ56を介して第4のダイオード57のアノードに結合され、そのカソードは第2の抵抗58を介して接地される。第4のダイオード57と第2の抵抗58との直列回路は第2の終端手段62を構成する。第4のダイオード57のアノードは第4のチョークインダクタ59を介して第1のダイオード44のカソードに接続される。
【0023】
第1乃至第4のダイオード44、45、53、57はピンダイオードで構成され、第1乃至第4の直流カットコンデンサ50、51、52、56は高周波信号に対して低インピーダンスを呈する。また、第1の抵抗54及び第2の抵抗58の抵抗値はおよそ50Ω程度である。
【0024】
第1の入力端41及び第2の入力端42の前段には、例えば、それぞれ周波数変換用のミキサ(図示せず)が接続され、各ミキサによって中間周波数に変換された1GHz〜2.5GHzの衛星放送信号(中間周波信号)が入力されるが、第1の入力端41には右偏波の中間周波信号が入力され、第2の入力端42には左偏波の中間周波信号が入力される。出力端子43には中間周波増幅器(図示せず)が接続される。そして、第1の入力端41に入力された右偏波の中間周波信号又は第2の入力端42に入力された左偏波の中間周波信号の何れかが選択されて出力端子43に出力される。
【0025】
第1の入力端41の中間周波信号を出力するときには第1の制御端48に切替電圧を印加して(第2の制御端49には印加しない。)第1のダイオード44を導通させる。このとき第4のダイオード57も導通するので、第2の入力端42は第4のダイオード57と第2の抵抗58との直列回路によって終端される。従って、第2の入力端42における中間周波信号は反射することが無く、第1の入力端41及び出力端43への信号の飛び付きがなくなり、アイソレーションが向上する。
【0026】
同様に、第2の入力端42の中間周波信号を出力するときには第2の制御端49に切替電圧を印加して(第1の制御端48には印加しない。)第2のダイオード45を導通させる。このとき第3のダイオード53も導通するので、第1の入力端41は第3のダイオード53と第1の抵抗54との直列回路によって終端される。従って、第1の入力端41における中間周波信号は反射することが無く、第2の入力端42及び出力端43への飛び付きがなくなり、アイソレーションが向上する。
【0027】
次に、第2の実施形態を図2に従って説明する。図2においては、第1の終端手段61と第2の終端手段62との構成が図1と異なり、また、第3のチョークインダクタ55は第3のダイオード53のアノードと第1のダイオード44のカソードとの間に接続され、第4のチョークインダクタ59は第4のダイオード57のアノードと第2のダイオード45のカソードとの間に接続される。その他の構成は図1と同じである。
【0028】
第1の終端手段61においては、第3のダイオード53に小容量の第1の容量素子63が並列接続され、第1の抵抗54に第1の直列共振回路64が並列接続される。第1の容量素子63の容量値はおよそ0.6pFである。第1の直列共振回路64は第2の容量素子64aと第1のインダクタンス素子64bからなり第2の容量素子64aの容量値はおよそ8.0pF、第1のインダクタンス素子64bのインダクタンスはおよそ4.3nHである。
【0029】
第2の終端手段62は第1の終端手段61と同一の構成を有している。すなわち、第4のダイオード57に小容量の第3の容量素子65が並列接続され、第2の抵抗58に第2の直列共振回路66が並列接続される。第2の容量素子65の容量値はおよそ0.6pFである。第2の直列共振回路66は第4の容量素子66aと第2のインダクタンス素子66bからなり第4の容量素子66aの容量値はおよそ8.0pF、第2のインダクタンス素子66bのインダクタンスはおよそ4.3nHである。
【0030】
第1の終端手段61を代表して特性を説明する。第3のダイオード53が導通した状態では、第1の終端手段61は第1の直列共振回路64の共振特性を示し、その共振周波数はおよそ860MHzとなる。また、第3のダイオード53が非導通の状態では第3のダイオード53の端子間容量がおよそ0.4pFであるので、共振周波数はおよそ2570MHzとなる。従って、第1の終端手段61及び第2の終端手段62は直列共振周波数が860MHz又は2570MHzに切り替えられるトラップ回路として機能する。
【0031】
そして、第1のダイオード44を導通させた場合、第3のダイオード53も導通するので、第1の終端手段61は860MHzをトラップし、第1の入力端41と出力端43との間の伝送特性は図3のAのようになる。しかし、第2のダイオード45は導通せず、さらに、第4のダイオード57も導通しないので第2の終端手段62は2570MHzをトラップし、第2の入力端42と出力端43との間の伝送特性は図3のBのようになる。ここで、もし、第2の終端手段62が設けられていないと仮定すると、第2の入力端42と出力端43との間の伝送特性は図3のCに示すように、周波数が高くなるに従って、伝送レベルが大きくなってアイソレーションが劣化するが、第2の終端手段62が設けられることでアイソレーションが向上することが理解できる。
【0032】
第2のダイオード45を導通して第1のダイオード44を非導通にした場合は、上記と全く逆の関係となり、同様にアイソレーションの向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のスイッチ回路における第1の実施形態の構成を示す回路図である。
【図2】本発明のスイッチ回路における第2の実施形態の構成を示す回路図である。
【図3】本発明のスイッチ回路の伝送特性図である。
【図4】従来のスイッチ回路を用いたBSコンバータの回路図である。
【符号の説明】
【0034】
41:第1の入力端
42:第2の入力端
43:出力端
44:第1のダイオード
45:第2のダイオード
46:第1のチョークインダクタ
47:第2のチョークインダクタ
48:第1の制御端
49:第2の制御端
50:第1の直流カットコンデンサ
51:第2の直流カットコンデンサ
52:第3の直流カットコンデンサ
53:第3のダイオード
54:第1の抵抗
55:第3のチョークインダクタ
56:第4の直流カットコンデンサ
57:第4のダイオード
58:第2の抵抗
59:第4のチョークインダクタ
61:第1の終端手段
62:第2の終端手段
63:第1の容量素子
64:第1の直列共振回路
64a:第2の容量素子
64b:第1のインダクタンス素子
65:第3の容量素子
66:第2の直列共振回路
66a:第4の容量素子
66b:第2のインダクタンス素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力端と、第2の入力端と、前記第1の入力端との間又は前記第2の入力端との間で択一的に導通する出力端と、前記第1の入力端又は前記第2の入力端を終端するための終端手段とを備え、前記第1の入力端と前記出力端との間を導通したときに前記第2の入力端を前記終端手段によって終端し、前記第2の入力端と前記出力端との間を導通したときに前記第1の入力端を前記終端手段によって終端したことを特徴とするスイッチ回路。
【請求項2】
前記終端手段はダイオードと抵抗との直列回路からなり、前記直列回路を前記第1の入力端とグランドとの間及び前記第2の入力端とグランドとの間にそれぞれ接続し、前記2つの直列回路の前記ダイオードを択一的に導通させたことを特徴とする請求項1に記載のスイッチ回路。
【請求項3】
前記ダイオードが導通したときの前記直列回路のインピーダンスを、前記第1の入力端及び前記第2の入力端にそれぞれ接続される回路インピーダンスに等しくしたことを特徴とする請求項2に記載のスイッチ回路。
【請求項4】
前記終端手段は、第1の周波数又はそれよりも高い第2の周波数にトラップ点が切り替えられるトラップ回路からなり、前記トラップ回路を前記第1の入力端とグランドとの間及び前記第2の入力端とグランドとの間にそれぞれ接続し、前記第1の入力端と前記出力端との間を導通したときに前記第1の入力端に接続された前記トラップ回路によって前記第1の周波数をトラップすると共に、前記第2の入力端に接続された前記トラップ回路によって前記第2の周波数をトラップし、前記第2の入力端と前記出力端との間を導通したときに前記第2の入力端に接続された前記トラップ回路によって前記第1の周波数をトラップすると共に、前記第1の入力端に接続された前記トラップ回路によって前記第2の周波数をトラップしたことを特徴とする請求項1に記載のスイッチ回路。
【請求項5】
前記トラップ回路はダイオードと、前記ダイオードに直列接続された抵抗と、前記ダイオードに並列接続された第1の容量素子と、前記抵抗に並列接続された直列共振回路とからなり、前記2つのトラップ回路のダイオードを択一的に導通させたことを特徴とする請求項4に記載のスイッチ回路。
【請求項6】
前記第1の周波数を前記第1の入力端及び前記第2の入力端に入力される信号の周波数帯における最低周波数よりも低くし、前記第2の周波数を前記周波数帯の最高周波数近傍としたことを特徴とする請求項4又は5に記載のスイッチ回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate