説明

スイッチ回路

【課題】多くの個別素子による回路を用いることなく、容易に簡素な回路構成で端子外れ検出を行うことが可能なスイッチ回路の提供。
【解決手段】ゲートがセンサ回路に接続され、ドレインが第1の電圧制限抵抗に接続された第1の出力ドライバと、物理量検出信号出力端子と接地端子の間に接続された第2の電圧制限抵抗と、非反転入力端子が第1の基準電圧回路に接続され、反転入力端子が前記物理量検出信号出力端子に接続され、出力が論理回路に接続された第1の比較器と、反転入力端子が第2の基準電圧回路に接続され、非反転入力端子が前記物理量検出信号出力端子に接続され、出力が論理回路に接続された第2の比較器と、ゲートが前記論理回路の出力に接続され、ドレインが断線診断信号出力端子に接続された第2の出力ドライバで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力物理量に応じて“H”/“L”出力を切り替えるスイッチ回路の出力構成に関し、受信側回路の外付け部品点数の大幅な増加を招くことなく、また、A/D変換入力端子を不要とした端子外れ・端子ショートの検出診断を容易にした構成に関する。
【背景技術】
【0002】
各種物理量に応じて出力論理の“H”/“L”出力を切り替えるスイッチICが広く使われている。物理量は温度、照度、磁界など多岐に渡り、所定の基準値を上回るもしくは下回る物理量が入力されると出力論理電圧レベルを反転させるように回路が構成される。
【0003】
アナログ信号処理を行うスイッチICには高いダイナミックレンジが要求されるため比較的高い電源電圧が必要なのに対し、スイッチICの出力を読み込むためのマイコンはCMOSプロセスの微細化に伴う素子耐圧低下のため、許容される電源電圧が比較的低く、出力回路形式としてはレベルシフトの目的でオープンドレイン出力形式が取られる。特にスイッチICが産業・車載用途など過酷な環境で使用される場合、端子外れ検出機能が要求されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図2に、従来のスイッチ回路を備えたホールセンサ装置の回路図を示す。従来のスイッチ回路を備えたホールセンサ装置は、ECU(エンジンユニットコントローラ)201とアクチュエータ(ACTR)202とは、電源ライン210とGNDライン211とを共通接続されている。電源ライン210には電源電圧VBが印加されており、GNDライン211は接地されている。電源電圧VBの電圧値は、たとえば12Vである。またECU201とアクチュエータ202とは、信号ライン212により接続されている。
【0005】
ECU201は、マイクロコンピュータ(マイコン)などの制御部230と、ダイオードD1、D2と、容量C1と、抵抗R5、R6を有している。制御部230は、判定部231(判定回路)と、マイコンA/Dポート232(測定回路)と、マイコン割込みポート233(検出回路)とを有している。アクチュエータ(ACTR)202は、ホールIC224と、抵抗R1、R2、R3、R4と、トランジスタTR1を有している。
【0006】
従来のスイッチ回路を備えたホールセンサ装置の動作について説明する。
抵抗R3と抵抗R4と抵抗R5とは、ホールIC224から出力される信号の電圧を、接地電圧GNDと基準電圧VCCとの間の中間電位にする回路(電圧制御回路)として機能する。正常な場合にはトランジスタTR1が導通状態となっているため、ホールIC224がOFF(OPEN)の場合は、上述した中間電位の電圧は、接地電圧GNDと基準電圧VCCとを、抵抗R4と抵抗R5とで抵抗分圧された第1の電圧V1となる。またホールIC224がONの場合は、上述した中間電位の電圧は、抵抗R3と抵抗R4と抵抗R5とで抵抗分圧された第2の電圧V2となる。異常な場合にはマイコンA/Dポート232により測定される電圧は、基準電圧VCCと接地電圧GNDとの間の中間電位ではなく、中間電位よりも高い電圧または低い電圧となる。
【0007】
このようにして、従来のスイッチ回路を備えたホールセンサ装置は、ホールIC224が正常であるか異常であるかを判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−226844号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のスイッチ回路では、多くの個別素子による回路が必要となり容易に検知できないという課題があった。本発明は、このような問題点を解決するために考案されたものであり、多くの個別素子による回路を用いることなく実現するものである。
【0010】
スイッチ回路の出力ドライバと直列に電圧制限抵抗を挿入し、信号受信側の電源ラインに接続されたプルアップ抵抗との間で形成される抵抗分圧回路によって正常動作時の“L”レベルの下限・上限を規定することによってスイッチ回路内部で端子外れ状態を検出し、断線診断端子によって接続状態の異常を報知する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のスイッチ回路は、ゲートがセンサ回路に接続され、ドレインが第1の電圧制限抵抗に接続された第1の出力ドライバと、物理量検出信号出力端子と接地端子の間に接続された第2の電圧制限抵抗と、非反転入力端子が第1の基準電圧回路に接続され、反転入力端子が前記物理量検出信号出力端子に接続され、出力が論理回路に接続された第1の比較器と、反転入力端子が第2の基準電圧回路に接続され、非反転入力端子が前記物理量検出信号出力端子に接続され、出力が論理回路に接続された第2の比較器と、ゲートが前記論理回路の出力に接続され、ドレインが断線診断信号出力端子に接続された第2の出力ドライバで構成した。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスイッチ回路によれば、正常動作時の“L”レベルと端子外れ状態におけるGNDレベルを容易に区別することが出来、システムの誤動作を未然に防ぐことが出来る。また、外付け部品点数増加によるコストを抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態のスイッチ回路を説明する構成図である。
【図2】従来のスイッチ回路を説明する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のスイッチ回路1と受信側のマイコン20への接続を示す構成図である。スイッチ回路1は、物理量検出信号出力端子6と、断線診断端子41と、センサ回路2と、第1の出力ドライバ3と、第1の電圧制限抵抗4と、第2の電圧制限抵抗5と、第1の比較器33と、第1の基準電圧回路31と、物理量検出信号線10と、第2の比較器34と、第2の基準電圧回路32と、論理回路37と、第2の出力ドライバ40と、接地端子101で構成される。マイコン20は、第1の入力端子23と、第2の入力端子24で構成される。
【0015】
第1の出力ドライバ3はセンサ回路2の出力信号がゲート端子に入力され、ソースとバルクは接地端子101に接続され、ドレインには第1の電圧制限抵抗4が接続される。第1の電圧制限抵抗4のもう一方は、物理量検出信号線10を介して物理量検出信号出力端子6に接続される。第2の電圧制限抵抗5は、一方が接地端子101に接続され、もう一方が物理量検出信号線10を介して物理量検出信号出力端子6に接続される。第1の比較器33は、非反転入力端子は第1の基準電圧回路31の出力が接続され、反転入力端子は物理量検出信号線10を介して物理量検出信号出力端子6に接続され、出力は論理回路37に接続される。第2の比較器34は、反転入力端子は第2の基準電圧回路32の出力が接続され、非反転入力端子は物理量検出信号線10を介して物理量検出信号出力端子6に接続され、出力は論理回路37に接続される。論理回路37の出力信号38は第2の出力ドライバ40のゲート端子に接続される。第2の出力ドライバは、ドレインは断線診断端子41に接続され、ソース及びバルクは接地端子101に接続される。物理量検出信号線10に接続される物理量検出信号出力端子6とマイコンの第1の入力端子23、断線診断端子41とマイコンの第2の入力端子24は、物理量検出信号線52と断線診断信号線51を束ねたハーネス21を経由して接続される。第1のプルアップ抵抗22及び第2のプルアップ抵抗42はそれぞれ物理量検出信号端子6及び断線診断端子41と電源端子の間に接続される。
【0016】
次に、本実施形態のスイッチ回路の動作について説明する。
<通常動作時>
センサ回路2は、スイッチ回路1に入力された対象物理量が所定の基準値を超えた検出状態において“H”もしくは“L”を、所定の基準値を下回った解除状態において“L”または“H”を出力する。第1の出力ドライバ3はゲート入力端子に“H”が入力されるとオン状態、“L”が入力されるとオフ状態となる。第1の出力ドライバ3がオン状態となったときに、第1の電圧制限抵抗4の抵抗値をR1、第2の電圧制限抵抗5の抵抗値をR2、第1のプルアップ抵抗22の抵抗値をR3、電源電圧をVDD、オン状態における第1の出力ドライバ3の等価抵抗値をゼロ、オフ状態における第1の出力ドライバ3の等価抵抗値を無限大とすると、物理量検出信号線10の電圧VOLは以下のように与えられる。
VOL=VDD・(R1//R2)/{(R1//R2)+R3}
=VDD・(R1・R2)/{R1・R2+R3(R1+R2)} (1)
ここで、R1<<R2ならば、
VOL=VDD・R1/(R1+R3) (2)
同様に、第1の出力ドライバがオフ状態となったときの物理量検出信号線10の電圧VOHは以下のように与えられる。
VOH=VDD・R2/(R2+R3) (3)
例えば、9・R1=R3=R2/9なる関係を満たしているとき、
VOL=0.1・VDD (4)
VOH=0.9・VDD (5)
となる。受信側マイコン20の第1の入力端子23の論理しきい値は概ね0.2・VDD及び0.8・VDD程度であるので、式(4)、(5)で与えられる出力レベルは“L”レベル、“H”レベルとして判別可能である。
【0017】
第1の比較器33及び第2の比較器34は、物理量検出信号線10の電位がそれぞれ第1の基準電圧31より高い側、第2の基準電圧32よりも低い側となった場合に”L“を出力するように接続されている。第1の基準電圧をVREF1、第2の基準電圧をVREF2とすると、以下の式(6)、(7)のように設定することによって、通常動作時に第1の比較器33の出力電圧35及び第2の比較器34の出力電圧36はそれぞれ”H“を出力する。
VREF1=VOH+α (6)
VREF2=VOL−α (7)
【0018】
論理回路37は出力電圧35及び出力電圧36の両者が“H”であるので、論理出力38を“H”レベルとして出力する。第2の出力ドライバ40はオン状態となり、マイコンの第2の入力端子24には“L”レベルが入力される。マイコン側は第2の入力端子24の電位が“L”レベルのときは、スイッチ回路1とマイコン2の接続状態が正常であると認識し、第1の入力端子23の電圧を正常な物理量検出信号として処理する。
【0019】
<物理量検出信号線断線時>
次に、ハーネス21内の物理量検出信号線52が損傷し、断線した場合の動作を示す。センサ回路2の出力レベルが“H”であり第1の出力ドライバ3がオン状態であるか、出力レベルが“L”であり第1の出力ドライバ3がオフ状態であるかに関わらず、第2の電圧制限抵抗5によって、物理量検出信号線10は接地端子にプルダウンされているため、常に接地レベルとなる。そのとき、第2の比較器34の出力電圧36は“L”となり、論理回路37は“L”を出力する。第2の出力ドライバ40はゲート端子に“L”が入力され、オフ状態となり、マイコンの第2の入力端子24には“H”レベルが入力される。このとき、マイコン2ではスイッチ回路1との接続に異常があると見なし、通常の処理を停止し、断線異常検出を報知する動作モードへと切り替わる。
【0020】
<断線診断信号線断線時>
次に、ハーネス21内の断線診断信号線51が損傷し、断線した場合の動作を示す。断線診断信号線51が断線すると、第2のプルアップ抵抗42によって断線診断端子は強制的に“H”レベルとなる。このとき、マイコン2ではスイッチ回路1との接続に異常があると見なし、通常の処理を停止し、断線異常検出を報知する動作モードへと切り替わる。
【0021】
第1のプルアップ抵抗22は信号線52の対接地間寄生容量との間に充放電時定数を持つため、アプリケーションによって要求される応答時間に応じてその抵抗値が選択される。電圧制限抵抗4、5の抵抗値は第1のプルアップ抵抗22に合わせて式(4)(5)のような適切な比率を持つように設定される。前述の要求に合わせて選択されたプルアップ抵抗値に応じて、同一マスクセット上で電圧制限抵抗値を適切に設定するためには、予めパターン上に用意した冗長抵抗の電圧制限抵抗に対する接続本数を金属配線マスク変更によって変更してもよいし、レーザートリミングやヒューズカット、ツェナーザッピング等のトリミング工程で抵抗値を変更してもよい。
【0022】
また、MOSトランジスタによるスイッチを用いて、冗長抵抗の両端を短絡する、短絡しないという2つの状態をスイッチ用MOSトランジスタのゲート電圧を制御することによって電圧制限抵抗値を離散的に調整してもよい。このようにすることによって同一のマスクセットで途中の工程まで製造された製品を、最終工程に近い金属配線層蒸着工程にて異なるプルアップ抵抗に対応した品種の製品に振り分けることができ、多品種少量の顧客要求に対応出来るという在庫管理上のメリットがある。
【0023】
また、所望の分解能に応じたビット数を持ち、同一半導体基板上に搭載された記憶回路によって、製品の製造工程だけでなく、製品出荷後にユーザーが使用するプルアップ抵抗値に合わせて電圧制限抵抗値を調整するためのビットを外部から書き換えられるようにしてもよい。このようにすることによって、ユーザーにとって同一品種の製品で異なる電圧制限抵抗を用いることができ、すなわち、用途に応じて異なるプルアップ抵抗を用いることが出来るというメリットがある。
【0024】
以上により、本発明のスイッチ回路は物理量検出信号線の断線や断線診断信号の断線を検知することができる。スイッチ回路は“L”/“H”論理出力端子を少なくとも1つ備えていればよく、検知対象となる物理量は一切限定されない。例えば、検知対象の物理量が、温度であるものには温度スイッチ、磁束密度であるものには磁気スイッチ、赤外線であるものには焦電スイッチ、可視光線であるものには照度スイッチが挙げられる。
【符号の説明】
【0025】
1 スイッチ回路
2 センサ回路
3 第1の出力ドライバ
6 物理量検出信号出力端子
10 物理量検出信号線
20 マイコン
21 ハーネス
33 第1の比較器
34 第2の比較器
37 論理回路
40 第2の出力ドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象物理量の入力量に応じて出力論理電圧を切り替えるスイッチ回路において、
ゲートがセンサ回路に接続され、ドレインが第1の電圧制限抵抗に接続された第1の出力ドライバと、
物理量検出信号出力端子と接地端子の間に接続された第2の電圧制限抵抗と、
非反転入力端子が第1の基準電圧回路に接続され、反転入力端子が前記物理量検出信号出力端子に接続され、出力が論理回路に接続された第1の比較器と、
反転入力端子が第2の基準電圧回路に接続され、非反転入力端子が前記物理量検出信号出力端子に接続され、出力が前記論理回路に接続された第2の比較器と、
ゲートが前記論理回路の出力に接続され、ドレインが断線診断信号出力端子に接続された第2の出力ドライバと、を備える
ことを特徴とするスイッチ回路。
【請求項2】
前記物理量検出信号出力端子は、
プルアップ抵抗が接続され、前記第1及び第2の電圧制限抵抗との間で分圧回路が形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチ回路。
【請求項3】
前記第1及び第2の電圧制限抵抗は、
抵抗値をウェハ製造工程におけるトリミングで調整される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチ回路。
【請求項4】
前記スイッチ回路は、外部からデータを書込み可能な記憶回路を備え、
前記第1及び第2の電圧制限抵抗は、前記記憶回路のデータに応じて抵抗値が調整される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチ回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−77912(P2013−77912A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215467(P2011−215467)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】