説明

スイッチ構造、及び電子機器

【課題】押しボタン式のスイッチ構造において、外付けケースのボタンを露出させる開口の一部を削除してアンダーカットにならない切り欠き形状にしたり、ボタンを筐体と同じ面にして出っ張らない形状にしたりすることなく、さらに、誤動作を防止する。
【解決手段】筐体2の開口21に突出可能に組み込まれるスリーブ状部材4と、そのスリーブ状部材4を開口21から突出方向に付勢する第1のバネ6と、スリーブ状部材4に突出可能に組み込まれるボタン3と、そのボタン3をスリーブ状部材4から突出方向に付勢する第2のバネ9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタン式のスイッチ構造と、そのスイッチ構造を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なデジタル撮影機器において、シャッターや電源などの押しボタンが備えられ、例えば外付けケースを装着させようとする場合、筐体側面のボタンがアンダーカットとなるため、装着することは困難である。
そのため、例えば外付けケースのボタンを露出させる開口の一部を削除してアンダーカットにならない切り欠き形状にしたり、ボタンを筐体と同じ面にして出っ張らない形状にしたり、外付けケースの着脱の際にボタンの一時的な沈み込みを可能とするロック機構を設けたりすることが考えられる。
【0003】
また、特許文献1において、ボタンを筐体に対し沈み込み可能としたスイッチ構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−90769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、外付けケースに切り欠きを形成すると、外付けケースの形状・デザインに対して大きな制約となり、外付けケースの剛性が低下する。また、外付けケースの外れ防止構造が別途必要となる。
また、ボタンを出っ張らない形状にすると、ボタンが外付けケースの開口より窪んだ位置となるため、ボタンが押しづらくなる。従って、操作性を保持するためには、外付けケースの開口を大きくする必要があることから、外付けケースのデザインに対して大きな制約となり、外付けケースの剛性が低下する。また、外付けケースの外れ防止構造も別途必要となる。
また、ボタンの一時的な沈み込みを可能とするロック機構を設けると、そのボタンの沈み込み状態のロックのためにロックレバーが必要となるため、筐体のデザインに対して大きな制約となる。また、外付けケースにロックレバー用の開口も必要となるため、外付けケースのデザインに対して大きな制約となり、外付けケースの剛性が低下する。
【0006】
また、特許文献1のスイッチ構造では、筐体に沈み込み可能なボタンが外付けケースの開口周囲に直接擦れてしまうことにより、誤動作の発生や磨耗による外観性の問題が考えられる。
【0007】
本発明の課題は、押しボタン式のスイッチ構造において、外付けケースのボタンを露出させる開口の一部を削除してアンダーカットにならない切り欠き形状にしたり、ボタンを筐体と同じ面にして出っ張らない形状にしたりすることなく、さらに、誤動作を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明は、筐体の開口に突出可能に組み込まれるスリーブ状部材と、前記スリーブ状部材を前記開口から突出方向に付勢する第1のバネと、前記スリーブ状部材に突出可能に組み込まれるボタンと、前記ボタンを前記スリーブ状部材から突出方向に付勢する第2のバネと、を備えるスイッチ構造を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外付けケースのボタンを露出させる開口の一部を削除してアンダーカットにならない切り欠き形状にしたり、ボタンを筐体と同じ面にして出っ張らない形状にしたりすることなく、外付けケース及び筐体を自由にデザインできるとともに、外付けケースの剛性も確保でき、さらに、誤動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成を示すもので、カメラと外付けケースの分解斜視図である。
【図2】図1のカメラのボタン部分の透視拡大図である。
【図3】図1のボタン部分の縦断面図である。
【図4】図3のボタン部分を押し込んだ状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態)
図1は本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成としてカメラ1とその外付けケース100を示すものである。
【0012】
図示のように、カメラ1の筐体2の上面には、シャッターや電源などのボタン3と、そのボタン3の周囲で一段低い位置に押すと沈んで離すと元に戻るスリーブ状部材4が備えられている。
外付けケース100は、後面が全面開放されて、前面に鏡筒用の開口101とフラッシュ用の開口102を有し、上面にボタン3及びスリーブ状部材4を露出させる開口103を有している。
【0013】
図2及び図3はカメラ1のボタン3及びスリーブ状部材4の詳細を示すものである。
ここで、ボタン3、スリーブ状部材4、板金部材7、タクトスイッチ8、ボタン保持用バネ9によりスイッチブロックが構成される。
【0014】
図示のように、ボタン3は、スリーブ状部材4の内部に突出可能に組み込まれ、スリーブ状部材4は、筐体2の上面に形成した開口21の内部に突出可能に組み込まれている。
具体的には、筐体2の内部に固定したマグネシウム金属製のベース部材5に対し、スリーブ状部材4がスイッチブロック保持用バネ6を介して板金部材7とともに可動に組み付けられている。
【0015】
スイッチブロック保持用バネ6は、スリーブ状部材4を開口21から突出方向に付勢するもので、図示例では、ベース部材5に設けたボス部51と板金部材7との間に2個並列に配置されている。
板金部材7の上には、タクトスイッチ8が固定され、このタクトスイッチ8からは接続用FPC(フレキシブル回路基板)81が導出されている。この接続用FPC81は、カメラ1に内蔵した図示しない制御回路に接続される。
【0016】
そして、スリーブ状部材4に対し、ボタン3がボタン保持用バネ9を介して可動に組み付けられている。
ボタン保持用バネ9は、ボタン3をスリーブ状部材4から突出方向に付勢するもので、図示例では、スリーブ状部材4の内方に中央まで突出して設けられ、ボタン3の下面中央に突出したプッシュロッド31が貫通する中央突出部41と、ボタン3の下面との間に単独で配置されている。
なお、プッシュロッド31は、タクトスイッチ8を押圧してオン動作させる。
【0017】
以上において、ボタン3は、スリーブ状部材4の内周に形成した内方突出部43の上面に重なって没入が規制される。
従って、内方突出部43は、ボタン3がスリーブ状部材4内への没入位置で突き当たるストッパー部として機能する。
【0018】
また、ボタン3は、その下面に突出した抜け止め爪部33が、スリーブ状部材4の内方突出部43の下面に重なって抜け止めされる。
従って、内方突出部43は、ボタン3をスリーブ状部材4からの突出位置で抜け止めする抜け止め部としても機能する。
【0019】
そして、スリーブ状部材4は、下半部に形成した幅広部42の上面が、筐体2の開口21の周囲下面に重なって抜け止めされる。
従って、幅広部42は、スリーブ状部材4を開口21からの突出位置で抜け止めする抜け止め部として機能する。
【0020】
また、スリーブ状部材4は、その幅広部42から板金部材7を貫通して突出した足部45が、ベース部材5の段部54の上面に突き当たって没入が規制される。
従って、足部45及び段部54は、スリーブ状部材4が開口21内への没入位置で突き当たるストッパー部として機能する。
【0021】
さらに、2個並列のスイッチブロック保持用バネ6・6によるスリーブ状部材4を開口21から突出方向に付勢する力は、単独のボタン保持用バネ9によるボタン3をスリーブ状部材4から突出方向に付勢する力とタクトスイッチ8に内蔵されたバネによる上方に付勢する力の総和よりも非常に大きく設定されている。
従って、ボタン3を押すだけの力ではスリーブ状部材4は開口21内に没入せず、2個並列のスイッチブロック保持用バネ6・6に打ち勝つ力を掛けることで、スリーブ状部材4が開口21内に没入する。
【0022】
次に、カメラ1の筐体2に対する外付けケース100の着脱手順を説明する。
まず、ボタン3を押してスリーブ状部材4を筐体2の上面から押し込むと、スイッチブロック保持用バネ6に保持されているスイッチブロック全体が沈み込む。
【0023】
すなわち、ボタン3をボタン保持用バネ9及びタクトスイッチ8のバネの付勢に抗してスリーブ状部材4の内方突出部43に突き当ててから、さらにボタン3を2個並列のスイッチブロック保持用バネ6・6の付勢に抗して押し込むと、図4に示すように、スリーブ状部材4、板金部材7、タクトスイッチ8、ボタン保持用バネ9が沈み込む。
このとき、スリーブ状部材4の幅広部42から板金部材7を貫通して突出した足部45が、ベース部材5の段部54の上面に突き当たってストッパーとなり、沈み込みが規制される。
【0024】
これにより、筐体2の上面には、ボタン3及びスリーブ状部材4が突出しない状態となり、外付けケース100に対するアンダーカットがなくなることから、筐体2上面のボタン3及びスリーブ状部材4を、外付けケース100上面の開口103に容易に位置させることができて、図1に示すように、筐体2に外付けケース100が着脱可能となる。
【0025】
このとき、ボタン保持用バネ9の荷重とタクトスイッチ8のメイク荷重の総和に対して、2個並列のスイッチブロック保持用バネ6・6の荷重が非常に大きくなるようにバネ定数が設定されているので、ボタン3の通常使用時の不要な沈みこみを防止することができる。
【0026】
そして、スイッチブロック保持用バネ6を2個並列としたことで、単独で大計のバネを設ける場合と比較して、筐体2の前後方向の厚みを薄型化することができる。
【0027】
また、スリーブ状部材4は、ベース部材5がストッパーとなり、ある一定ストローク以上は押し込まれない構造となっているので、スリーブ状部材4の必要以上の沈み込みを防止することができる。
【0028】
しかも、ベース部材5はマグネシウム金属製なので、スリーブ状部材4が押し込まれた際の荷重を確実に受け止めることができる。
【0029】
以上のとおり、ボタン3の周囲の外観に馴染んだスリーブ状部材4と、バネ定数の異なるスイッチブロック保持用バネ6及びボタン保持用バネ9を用いた沈み込み機構により、デザインに大きなダメージを与えることなく、カメラ1の筐体2に対する外付けケース100の着脱時のアンダーカット回避を可能とすることができる。
【0030】
そして、組み込み上のアンダーカットを考慮する必要がないので、外付けケース100の自由なデザインが可能となる。
【0031】
しかも、外付けケース100には切り欠きや不要な開口を設ける必要がないので、外付けケース100の剛性を確保することができる。
【0032】
また、ボタン3の周囲の外観に馴染んだスリーブ状部材4により、ロックレバーが不要となり、筐体2のデザインの自由度を向上することができる。
【0033】
さらに、外付けケース100の装着時に、ボタン3のスリーブ状部材4が外付けケース100の開口103に嵌合することで、外れ防止となるため、外れ防止専用の機構を設ける必要がない。
【0034】
また、スリーブ状部材4の存在により、ボタン3と外付けケース100の開口103の周囲が直接擦れることがないので、ボタン3の誤動作を防止でき、しかも、ボタン3の磨耗による外観劣化も防止することができる。
【0035】
なお、ボタン3及びスリーブ状部材4の押し込み動作時においては、タクトスイッチ8への通電を強制オフにすることが望ましい。
【0036】
(変形例)
以上の実施形態においては、カメラとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラを備える携帯電話など他の電子機器であってもよい。
また、実施形態では、スイッチブロック保持用バネを2個並列に設けたが、単独で設けてよい。
さらに、ボタン及びスリーブ状部材の形状や金属の種類等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0037】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。
付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
筐体の開口に突出可能に組み込まれるスリーブ状部材と、
前記スリーブ状部材を前記開口から突出方向に付勢する第1のバネと、
前記スリーブ状部材に突出可能に組み込まれるボタンと、
前記ボタンを前記スリーブ状部材から突出方向に付勢する第2のバネと、を備えることを特徴とするスイッチ構造。
<請求項2>
前記第1のバネによる前記スリーブ状部材を前記開口から突出方向に付勢する力が、前記第2のバネによる前記ボタンを前記スリーブ状部材から突出方向に付勢する力より大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ構造。
<請求項3>
前記スリーブ状部材を前記開口からの突出位置で抜け止めする第1の抜け止め部と、
前記ボタンを前記スリーブ状部材からの突出位置で抜け止めする第2の抜け止め部と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチ構造。
<請求項4>
前記スリーブ状部材が前記開口内への没入位置で突き当たる第1のストッパー部と、
前記ボタンが前記スリーブ状部材内への没入位置で突き当たる第2のストッパー部と、を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスイッチ構造。
<請求項5>
前記筐体内の少なくとも前記第1のストッパー部を含む部分が金属により形成されていることを特徴とする請求項4に記載のスイッチ構造。
<請求項6>
前記第1のバネが複数並列に設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のスイッチ構造。
<請求項7>
請求項1から6のいずれか一項に記載のスイッチ構造を筐体に備えることを特徴とする電子機器。
<請求項8>
前記筐体には、前記ボタン及びスリーブ状部材が露出する開口を有する外付けケースが装着可能であることを特徴とする請求項7に記載の電子機器。
【符号の説明】
【0038】
1 カメラ
2 筐体
21 開口
3 ボタン
31 プッシュロッド
33 抜け止め爪部
4 スリーブ状部材
41 中央突出部
42 幅広部
43 内方突出部
45 足部
5 ベース部材
51 ボス部
54 段部
6 スイッチブロック保持用バネ
7 板金部材
8 タクトスイッチ
81 接続用FPC
9 ボタン保持用バネ
100 外付けケース
103 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の開口に突出可能に組み込まれるスリーブ状部材と、
前記スリーブ状部材を前記開口から突出方向に付勢する第1のバネと、
前記スリーブ状部材に突出可能に組み込まれるボタンと、
前記ボタンを前記スリーブ状部材から突出方向に付勢する第2のバネと、を備えることを特徴とするスイッチ構造。
【請求項2】
前記第1のバネによる前記スリーブ状部材を前記開口から突出方向に付勢する力が、前記第2のバネによる前記ボタンを前記スリーブ状部材から突出方向に付勢する力より大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ構造。
【請求項3】
前記スリーブ状部材を前記開口からの突出位置で抜け止めする第1の抜け止め部と、
前記ボタンを前記スリーブ状部材からの突出位置で抜け止めする第2の抜け止め部と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチ構造。
【請求項4】
前記スリーブ状部材が前記開口内への没入位置で突き当たる第1のストッパー部と、
前記ボタンが前記スリーブ状部材内への没入位置で突き当たる第2のストッパー部と、を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスイッチ構造。
【請求項5】
前記筐体内の少なくとも前記第1のストッパー部を含む部分が金属により形成されていることを特徴とする請求項4に記載のスイッチ構造。
【請求項6】
前記第1のバネが複数並列に設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のスイッチ構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のスイッチ構造を筐体に備えることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
前記筐体には、前記ボタン及びスリーブ状部材が露出する開口を有する外付けケースが装着可能であることを特徴とする請求項7に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−54904(P2013−54904A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192244(P2011−192244)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】