説明

スイッチ装置、試験装置、スイッチ方法、および製造方法

【課題】ON/OFF動作回数を重ねても擬着が発生しない接点を有するスイッチ。
【解決手段】第1接点および第1接点と接触する表面に保護導電層が設けられた第2接点を備えるスイッチ装置であって、第1接点および第2接点を接触または離間させる可動部と、保護導電層に対して保護用の金属を補う金属供給部と、を備えるスイッチ装置、試験装置、スイッチ方法、および製造方法を提供する。第2接点は、接点用の金属を含む接点層を有し、金属供給部は、第1接点とは反対側から接点層を介して第1接点側へと保護用の金属を析出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置、試験装置、スイッチ方法、および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の接点を有して接点同士を接触させることでON状態とするスイッチは、接点の表面に保護導電膜を設けて、接点の接触抵抗を上昇させずに接点同士の擬着を抑制していた(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 国際公開第2007/083769号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなスイッチのON/OFF動作の回数が増えてくると、保護導電膜層が摩耗して、接点同士の擬着が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、本発明の第1の態様においては、第1接点および第1接点と接触する表面に保護導電層が設けられた第2接点を備えるスイッチ装置であって、第1接点および第2接点を接触または離間させる可動部と、保護導電層に対して保護用の金属を補う金属供給部と、を備えるスイッチ装置を提供する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態に係るスイッチ装置100の構成例を示す。
【図2】図1の加熱部146におけるA−A'断面を上方から見た図をヒータ電源部240およびヒータ制御部250と共に示す。
【図3】本実施形態に係るスイッチ装置100の動作フローを示す。
【図4】本実施形態に係るスイッチ装置100の製造フローを示す。
【図5】本実施形態に係る試験装置510の構成例を被試験デバイス500と共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係るスイッチ装置100の構成例を示す。スイッチ装置100は、第1接点10と、第1接点10と接触する表面に保護導電層120が設けられた第2接点20とを備えるスイッチ装置であって、スイッチ装置100のON/OFF動作に伴う保護導電層120の劣化に応じて保護用の金属を補う。スイッチ装置100は、可動部110と、保護導電層120と、接点層130と、金属供給部140と、配線層150と、計測部160と、判定部170とを備える。
【0009】
可動部110は、第1接点10および第2接点20を接触または離間させる。可動部110は、加熱されない状態において第1接点10および第2接点20を接触させ、加熱されると第2接点20を第1接点10から離間させるバイモルフを含む、熱駆動の可動接点であってよい。これに代えて可動部110は、2枚の圧電素子を貼り合わせたバイモルフ構造に代えて、1枚の圧電素子と金属板を貼り合わせたユニモルフを含んでよい。
【0010】
また、可動部110は、入力されたエネルギーを物理運動量に変換するアクチュエータであってよい。例えば、可動部110は、静電引力によって可動する静電アクチュエータ、圧電材料に電圧を印加して可動させる圧電アクチュエータ、磁力を用いて可動させる電磁アクチュエータ、または熱膨張によって可動させる熱型アクチュエータである。
【0011】
本実施例において、第1接点10は、可動部110により移動される可動接点であり、第2接点20は、可動部110を保持する基板に設けられた固定接点である。第2接点20は、保護導電層120と、接点層130とを有する。
【0012】
保護導電層120は、第1接点10と接触する第2接点20の表面に設けられる。保護導電層120は、第1接点10と第2接点20とを接触させた場合に、接点同士が擬着してスイッチ機能が失われることを防止する。保護導電層120は、第1接点10と第2接点20とを電気的に接続する金属酸化物であってよい。例えば、保護導電層120は、ニッケル(Ni)、金(Au)、または金パラジウム(Au−Pd)合金を含む。保護導電層120は、数nmから数十nm程度の厚さであってよい。
【0013】
接点層130は、保護導電層120と金属供給部140との間に設けられ、接点用の金属を含む。例えば、接点層130は、Ni、Au、ニッケル−クロム(Ni−Cr)合金、またはAu−Pd合金を含む。接点層130は、100nm以上の厚さであってよい。
【0014】
金属供給部140は、接点層130と配線層150の間に設けられ、保護導電層120に対して保護用の金属を補う。金属供給部140は、第1接点10とは反対側から接点層130を介して第1接点10側へと保護用の金属を析出させる。金属供給部140は、スイッチ装置100のON/OFF動作に伴う保護導電層120の劣化に応じて保護用の金属を補ってよい。金属供給部140は、数百nmから数μm程度の厚さであってよい。金属供給部140は、金属供給層143と、加熱部146とを有する。
【0015】
金属供給層143は、第1接点10の反対側において接点層130と重ねられた、保護用の金属を含む。金属供給層143は、保護用の金属として、保護導電層120が含むNi、Au、またはAu−Pd合金を含んでよい。
【0016】
加熱部146は、金属供給層143および接点層130を加熱して、金属供給層143から接点層130を介して保護導電層120へと保護用の金属を析出させる。加熱部146は、第1接点10と接することによって生じた第2接点20の保護導電層120の劣化を補うべく、第1接点10と接する第2接点20の下方の金属供給層143および接点層130を加熱してよい。
【0017】
配線層150は、スイッチ装置100を通過させる信号を伝送する。配線層150は、Ni、Au、ニッケル−クロム(Ni−Cr)合金、またはAu−Pd合金を含む伝送ラインであってよい。本実施例において、スイッチ装置100は、可動部110を可動させて第1接点10を第2接点20に接触/離間することによって、配線層150aから配線層150bへの信号伝送または配線層150bから配線層150aへの信号伝送をON/OFFする。
【0018】
計測部160は、第1接点10および第2接点20が接触した状態において、第1接点10および第2接点20間の抵抗を計測する。計測部160は、予め定められた電圧または電流を配線層150aおよび配線層150bの間にかけて電位の降下した値を測定することで抵抗を測定してよい。ここで計測部160は、四端子法によって精度を上げて抵抗を測定してもよい。
【0019】
判定部170は、計測した抵抗の大きさに基づいて、保護導電層120に対して保護用の金属を補うか否かを判定する。判定部170は、計測した抵抗値が予め定められた基準抵抗値よりも小さくなった場合に、保護導電層120に対して保護用の金属を補うと判断してよい。また、判定部170は、保護導電層120に保護用の金属を補った後の抵抗の測定結果が、補う前の測定値に比べて変化が無い場合、または予め定められた抵抗値の変化の範囲内にある場合に、保護用の金属を補う効果が無いと判断してよい。
【0020】
図2は、図1の加熱部146におけるA−A'断面を上方から見た図をヒータ電源部240およびヒータ制御部250と共に示す。図中の点線で囲まれた四角は、加熱部146の上方に設けられる金属供給層の配置260の一例を示す。また、一点鎖線で囲まれた四角は、加熱部146の上方に設けられ第1接点10と接触する第2接点の配置270の一例を示す。加熱部146は、金属供給層143を、接点層130とは反対側から加熱するヒータ210と、絶縁部220とを含む。
【0021】
ヒータ210は、金属供給層143における接点層130とは反対側に、電流を流すと熱を発するヒータ線を引き回して形成される。ヒータ210は、配線層150と、金属供給層143との間に設けられる。ヒータ210は、Ni−Cr合金等を含む電気抵抗の大きい発熱線であってよい。ヒータ210は、金属供給層143を加熱した場合に、保護導電層120が第1接点10と接触して劣化した位置に保護用の金属を析出させるように、第2接点20が第1接点10と接触する位置の下方に配置される。
【0022】
絶縁部220は、ヒータ210と、金属供給層143との間を電気的に絶縁する。また、絶縁部220は、ヒータ210と、配線層150との間を電気的に絶縁してよい。また、絶縁部220は、ヒータ210とヒータ電源部240とを接続する配線と、金属供給層143および/または配線層150との間を電気的に絶縁してもよい。
【0023】
絶縁部220は、金属供給層143における面方向の少なくとも一部の領域において、配線層150および金属供給層143を導通させるための開口部分230を含む。開口部分230は、絶縁部220の形状に応じて複数含まれてよい。これによって、加熱部146は、配線層150と第2接点20とを導通させてスイッチ装置100を通過させる信号を伝送させつつ、配線層150から第2接点20への伝送とは絶縁させた電源ラインおよびヒータ210を用いて金属供給層143を加熱することができる。
【0024】
ヒータ電源部240は、ヒータ210に電源を供給する。ヒータ制御部250は、ヒータ電源部240の電源供給を制御する。例えば、ヒータ制御部250は、判定部170が保護導電層120に対して保護用の金属を補うと判定した場合にヒータ電源部240の電源供給を開始する。また、ヒータ制御部250は、ヒータ電源部240の電源供給を開始した後に、予め定められた加熱時間経過したことに応じてヒータ電源部240の電源供給を停止してよい。これに代えてヒータ制御部250は、判定部170の指示に応じてヒータ電源部240の電源供給を停止してもよい。
【0025】
図3は、本実施形態に係るスイッチ装置100の動作フローを示す。スイッチ装置100は、可動部110を駆動して第1接点10と第2接点20とを接触させ、スイッチをON状態にする(S300)。スイッチ装置100は、この状態において配線層150aと配線層150bとを導通状態に保つ。
【0026】
計測部160は、スイッチON状態を確認すべく、第1接点10および第2接点20間の抵抗を計測する(S310)。判定部170は、計測した抵抗の大きさに基づいて、保護用の金属を補うか否かを判定する(S320)。ここで判定部170は、計測した抵抗値と予め定められた抵抗の期待値とを比較して判定してよく、これに代えて判定部170は、計測した抵抗値が予め定められた抵抗値の範囲内に入っているか否かに応じて判定してよい。
【0027】
これに代えて、第2接点20に含まれる接点用の金属は、保護用の金属より高い導電性を有し、判定部170は、計測した抵抗が基準未満の場合に、保護導電層120に対して保護用の金属を補うことを決定する。保護用の金属の導電性が接点層130の導電性より低い場合、スイッチ装置100のON/OFF動作で保護導電層120が劣化すると抵抗値は下がり、保護用の金属を析出させると抵抗値が上がるので、判定部170は、予め定められた基準抵抗値と比較して抵抗値が低い場合に保護用の金属を析出させるように判定してよい。
【0028】
これに代えて、判定部170は、正常動作をしているスイッチ装置100の抵抗値または前回計測した抵抗値を記憶しておき、今回計測した抵抗値と比較して予め定められた基準範囲よりも大きく抵抗値が変動した場合に、保護用の金属を析出させるように判定してもよい。これに代えて、判定部170は、第1接点10および第2接点20間に予め定められた電圧または電流を流して、流れる電流または降下した電圧等に応じて判定をしてもよい。
【0029】
これに代えて計測部160は、スイッチ装置100のスイッチング速度を計測し、判定部170は、スイッチング速度が基準時間以上となったことに応じて保護用の金属を補うことを決定しても良い。ここで計測部160は、配線層150aと配線層150bの間に流れる電流が第1の基準電流以上の状態から第2の基準電流以下になるまでの時間を計測して、スイッチ装置100のON状態からOFF状態に変わるスイッチング速度を計測してよい。接点同士の擬着が生じるまでには、接点同士の離間時間が徐々に遅くなる傾向にある場合、判定部170はON状態からOFF状態になるスイッチング速度に基づいて判断することで、接点同士の擬着を防ぐことができる。
【0030】
スイッチ装置100は、保護用の金属を析出させる場合、可動部110を駆動して第1接点10と第2接点20とを離間させ、スイッチをOFF状態にする(S330)。ヒータ制御部250は、ヒータ電源部240をON状態にさせて金属供給層143、接点層130、および保護導電層120を加熱する(S340)。加熱により、金属供給層143の保護用の金属は、拡散金属として接点層130内に拡散され、やがて保護導電層120に到達して析出する。即ち、保護導電層120は、金属供給層143から接点層130を介して保護用の金属が析出される。
【0031】
ヒータ制御部250は、予め定められた時間が経過したことに応じて、ヒータ電源部240をOFF状態にしてよい。ここで、保護導電層120は、加熱部146の加熱面積、加熱温度、加熱時間、および130の層厚等に応じて、析出される金属の量が決められる。ヒータ制御部250には、加熱部146の加熱面積および130の層厚等に応じた加熱温度および加熱時間を予め設定されてよい。
【0032】
金属供給部140は、第1接点10および第2接点20が離間した状態で保護導電層120に対して保護用の金属を補い、可動部110は、保護導電層120に保護用の金属が補われたことに応じて、第1接点10および第2接点20を少なくとも1回または複数回接触および離間させてエージングさせる(S350)。これによって、スイッチ装置100は、安定した接触抵抗でスイッチング動作させることができる。
【0033】
次に、スイッチ装置100は、ステップS300に戻り、計測部160は、保護導電層120に対して保護用の金属を補った後に第1接点10および第2接点20が接触した状態において第1接点10および第2接点20間の抵抗を再び計測し、判定部170は、再び計測した抵抗が基準未満の場合に、保護導電層120に対して保護用の金属を再び補うことを決定する。スイッチ装置100は、判定部170の判定が保護用の金属を補わないとする結果が得られるまで以上の動作を繰り返してよい。
【0034】
スイッチ装置100は、保護導電層120が保護用の金属を補わなくてもよい状態になった場合、可動部110を駆動して第1接点10と第2接点20とを離間させ、スイッチをOFF状態にして、保護導電層120への金属の析出を終了させる(S360)。これによって、スイッチ装置100は、ON/OFF動作の繰り返し等によって生じる保護導電層120の摩耗を修復することができ、接点同士の擬着を防ぐことができる。即ち、本実施例に係るスイッチ装置100は、接点の接触抵抗を上昇させずに接点同士の擬着を抑制しつつ、スイッチのON/OFF動作回数を重ねても接点同士の擬着を防止することができる。
【0035】
スイッチ装置100は、以上の動作フローを、スイッチ装置100の製造後の動作試験段階で実行してよく、また、スイッチ装置100を装置等に実装させた後に診断試験として定期的に実行してもよい。また、予め定められたスイッチング動作回数毎に実行してもよい。
【0036】
以上の本実施例のスイッチ装置100は、加熱部146を金属供給層143と配線層150との間に設ける例を説明したが、これに代えて、加熱部146は配線層150の第2接点20とは反対側の面に設けられ、配線層150の裏面側から配線層150を介して金属供給層143を加熱してもよい。これによって、スイッチ装置100は、開口部分230を省くことができ、また、絶縁部220の形成も簡略化することができる。また、スイッチ装置100は、加熱部146を別プロセスで形成させることもでき、スイッチ装置100の製造プロセスを簡略化することができる。
【0037】
以上の本実施例のスイッチ装置100は、1つの第1接点10と1つの第1接点10に対応する2つの第2接点20によってスイッチング動作させる例を説明した。これに代えて、スイッチ装置100は、複数の第1接点10および複数の第1接点10に対応する独立してまたは同時に動作する複数の第2接点20を備え、加熱部146は、複数の第2接点20に対応する金属供給層143および接点層130を同時に加熱してもよい。これによってスイッチ装置100は、複数のスイッチを有し、複数のスイッチの接触抵抗を上昇させずに接点同士の擬着を抑制しつつ、スイッチのON/OFF動作回数を重ねても接点同士の擬着を防止することができる。
【0038】
以上の本実施例の加熱部146は、ヒータ210を含み、金属供給層143と配線層150との間に設けられる例を説明した。これに代えて、加熱部146は、接点層130および金属供給層143の少なくとも一方にレーザを照射することにより、接点層130および金属供給層143を加熱してもよい。これによってスイッチ装置100は、加熱部146をスイッチ装置100から独立させることができ、スイッチ装置100の製造プロセスを簡略化させることができる。
【0039】
これに代えて加熱部146は、ヒータ210およびレーザを含み、ヒータ210およびレーザの両方で加熱してもよい。また、加熱部146は、レーザに代えて、LEDまたはランプ等の光源でもよい。加熱部146は、レンズ等の光学系でビーム状または局所的に集光することが容易な光源を用いることで、保護導電層120の摩耗した部分を集中的に加熱することができる。
【0040】
以上の本実施例のスイッチ装置100は、保護導電層120を形成する第2接点20が固定接点である例を説明した。これに代えて第2接点20は、可動部110により移動される可動接点であり、第1接点10は、可動部110を保持する基板に設けられた固定接点であってよい。
【0041】
以上の本実施例の加熱部146は、金属供給層143を加熱する例を説明した。これに代えて加熱部146は、可動部110が熱駆動である場合に、金属供給層143の加熱および可動部110の加熱を実行してよい。例えば、可動部110が熱駆動である場合、可動部110はヒータを有する。そこで、可動部110の第1接点10に保護用の金属を析出させるように、可動部110は、金属供給層143と、接点層130と、保護導電層120とを順に設けて第1接点10を形成する。
【0042】
これによって、可動部110を駆動するヒータは、第1接点に保護用の金属を析出させる加熱部146としても用いることができる。ここでスイッチ装置100は、第1接点10および第2接点20を離間させてオフ状態とする場合に加熱するスイッチであってよい。これによって、加熱部146は、第1接点10に保護用の金属を析出させるように加熱する場合、第1接点10および第2接点20を離間させたまま加熱することができる。
【0043】
また、加熱部146は、保護導電層120に対して保護用の金属を補う場合に、第1接点10および第2接点20を離間させてオフ状態とする場合と比較してより高い温度に可動部110、金属供給層143、および接点層130を加熱する。これにより、スイッチ装置100は、保護用の金属を補う場合には加熱温度を高くし、可動部110の駆動させる場合は加熱温度を低くすることで、それぞれの制御を1つの加熱部146で実行することができる。
【0044】
図4は、本実施形態に係るスイッチ装置100の製造フローを示す。まず、基板の表面に配線層150を形成する(S400)。基板は絶縁物または誘電物であってよく、一例としてガラス基板であってよい。配線層150は、基板の裏面と電気的に接続する貫通ビアを含んでよい。配線層150は、一例としてメッキ法により形成されてよい。
【0045】
次に、配線層150の上面に、金属供給層143および接点層130を加熱する加熱部146を形成する(S410)。加熱部146の上面に、保護導電層120に対して保護用の金属を補う金属供給層143を形成する(S420)。金属供給層143は、一例として、スパッタ法によって成膜されてよい。
【0046】
金属供給層143の上面に、第1接点10の反対側において第2接点20が有する接点層130を形成する(S430)。接点層130は、一例として、スパッタ法によって成膜されてよい。
【0047】
次に、第2接点20の表面に保護導電層120を形成する(S440)。ここで、保護導電層120は、金属供給層143および接点層130を加熱して、金属供給層143から接点層130を介して金属供給層143の反対側へと保護用の金属を析出させて形成されてよい。これによって、第1接点10と接触する表面に保護導電層120が設けられた第2接点20が形成される。
【0048】
次に、第1接点10および第2接点20を接触または離間させる可動部110を形成する。可動部110は、シリコン等の半導体基板に、第2接点20とは別のプロセスで作成されてよい。スイッチ装置100は、第2接点20が形成された基板と、可動部110が形成された基板とを接合することで形成されてよい。この場合、2つの基板の接合は、陽極接合によって接合されてよい。また、スイッチ装置100は、気密封止されて接点表面に汚れまたは異物等が付着することを防止してよい。
【0049】
以上のフローによって製造されたスイッチ装置100は、製造後において加熱部146により金属供給層143および接点層130を加熱して、金属供給層143から接点層130を介して保護導電層120へと保護用の金属を析出させる。これによって、スイッチ装置100は、製造後にスイッチのON/OFF動作回数を重ねても接点同士の擬着を防止することができる。
【0050】
図5は、本実施形態に係る試験装置510の構成例を被試験デバイス500と共に示す。試験装置510は、アナログ回路、デジタル回路、アナログ/デジタル混載回路、メモリ、およびシステム・オン・チップ(SOC)等の少なくとも1つの被試験デバイス500を試験する。試験装置510は、被試験デバイス500を試験するための試験パターンに基づく試験信号を被試験デバイス500に入力して、試験信号に応じて被試験デバイス500が出力する出力信号に基づいて被試験デバイス500の良否を判定する。
【0051】
試験装置510は、試験部520と、信号入出力部530とを備える。試験部520は、被試験デバイス500との間で電気信号を授受して被試験デバイス500を試験する。試験部520は、試験信号発生部523と、期待値比較部526とを有する。
【0052】
試験信号発生部523は、被試験デバイス500へ供給する複数の試験信号を発生する。試験信号発生部523は、試験信号に応じて被試験デバイス500が出力する応答信号の期待値を生成してよい。試験信号発生部523は、信号入出力部530を介して複数の被試験デバイス500に接続されて、複数の被試験デバイス500を試験してよい。
【0053】
期待値比較部526は、信号入出力部530が受信した受信データ値を期待値と比較する。期待値比較部526は、期待値を試験信号発生部523から受信してよい。試験装置510は、期待値比較部526の比較結果に基づき、被試験デバイス500の良否を判定してよい。
【0054】
信号入出力部530は、1以上の被試験デバイス500に接続され、試験装置510と被試験デバイス500との試験信号をやり取りする。信号入出力部530は、複数の被試験デバイス500を搭載するパフォーマンスボードであってよい。信号入出力部530は、スイッチ装置100を有する。
【0055】
スイッチ装置100は、試験部520および被試験デバイス500の間に設けられ、試験部520および被試験デバイス500の間を電気的に接続または切断する。試験装置510は、本実施形態に係るスイッチ装置100によって電気的な接続または切断を実行してよい。これによって試験装置510は、接触抵抗の低い接点で、スイッチのON/OFF動作回数を重ねても接点同士の擬着を防止できるスイッチ装置100を用いて試験を実行することができる。即ち、試験装置510は、低損失かつ長寿命で、電気信号の伝送およびスイッチングを実行することができる。
【0056】
本実施例において、信号入出力部530は1つの被試験デバイス500に接続され、スイッチ装置100は、1つの被試験デバイス500の入力信号ラインおよび出力信号ラインにそれぞれ1つ設けられる例を説明した。これに代えて信号入出力部530は、複数の被試験デバイス500に接続され、スイッチ装置100は、複数の被試験デバイス500の入力信号ラインおよび出力信号ラインのそれぞれに1つ設けられてよい。また、信号入出力部530から1つの被試験デバイス500へ接続される信号入出力ラインが1つの場合、1つの入出力ラインに1つのスイッチ装置100が設けられてよい。
【0057】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0058】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0059】
10 第1接点、20 第2接点、100 スイッチ装置、110 可動部、120 保護導電層、130 接点層、140 金属供給部、143 金属供給層、146 加熱部、150 配線層、160 計測部、170 判定部、210 ヒータ、220 絶縁部、230 開口部分、240 ヒータ電源部、250 ヒータ制御部、260 金属供給層の配置、270 第2接点の配置、500 被試験デバイス、510 試験装置、520 試験部、523 試験信号発生部、526 期待値比較部、530 信号入出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接点および前記第1接点と接触する表面に保護導電層が設けられた第2接点を備えるスイッチ装置であって、
前記第1接点および前記第2接点を接触または離間させる可動部と、
前記保護導電層に対して保護用の金属を補う金属供給部と、
を備えるスイッチ装置。
【請求項2】
前記第2接点は、接点用の金属を含む接点層を有し、
前記金属供給部は、前記第1接点とは反対側から前記接点層を介して前記第1接点側へと保護用の金属を析出させる
請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記金属供給部は、
前記第1接点の反対側において前記接点層と重ねられた、保護用の金属を含む金属供給層と、
前記金属供給層および前記接点層を加熱して、前記金属供給層から前記接点層を介して前記保護導電層へと保護用の金属を析出させる加熱部と、
を有する請求項2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記加熱部は、前記金属供給層を、前記接点層とは反対側から加熱するヒータを含む請求項3に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記ヒータは、前記金属供給層における前記接点層とは反対側に、電流を流すと熱を発するヒータ線を引き回して形成され、
前記加熱部は、前記ヒータ線と、前記金属供給層との間を電気的に絶縁する絶縁部を更に含む請求項4に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記ヒータは、前記スイッチ装置を通過させる信号を伝送する配線層と、前記金属供給層との間に設けられ、
前記絶縁部は、前記金属供給層における面方向の少なくとも一部の領域において、前記配線層および前記金属供給層を導通させるための開口部分を含む請求項5に記載のスイッチ装置。
【請求項7】
当該スイッチ装置は、複数の前記第1接点および前記複数の第1接点に対応する複数の前記第2接点を備え、
前記加熱部は、前記複数の第2接点に対応する前記金属供給層および前記接点層を同時に加熱する
請求項3から6のいずれかに記載のスイッチ装置。
【請求項8】
前記加熱部は、前記接点層および前記金属供給層の少なくとも一方にレーザを照射することにより、前記接点層および前記金属供給層を加熱する請求項3から7のいずれかに記載のスイッチ装置。
【請求項9】
前記第1接点および前記第2接点が接触した状態において前記第1接点および前記第2接点間の抵抗を計測する計測部と、
計測した抵抗の大きさに基づいて、前記保護導電層に対して保護用の金属を補うか否かを判定する判定部と、
を備える請求項3から8のいずれかに記載のスイッチ装置。
【請求項10】
前記第2接点に含まれる接点用の金属は、保護用の金属より高い導電性を有し、
前記判定部は、計測した抵抗が基準未満の場合に、前記保護導電層に対して保護用の金属を補うことを決定する
請求項9に記載のスイッチ装置。
【請求項11】
前記計測部は、前記保護導電層に対して保護用の金属を補った後に前記第1接点および前記第2接点が接触した状態において前記第1接点および前記第2接点間の抵抗を再び計測し、
前記判定部は、再び計測した抵抗が基準未満の場合に、前記保護導電層に対して保護用の金属を再び補うことを決定する
請求項10に記載のスイッチ装置。
【請求項12】
前記金属供給部は、前記第1接点および前記第2接点が離間した状態で前記保護導電層に対して保護用の金属を補い、
前記可動部は、前記保護導電層に保護用の金属が補われたことに応じて、前記第1接点および前記第2接点を少なくとも1回接触および離間させてエージングさせる
請求項3から11のいずれかに記載のスイッチ装置。
【請求項13】
前記第1接点は、前記可動部により移動される可動接点であり、
前記第2接点は、前記可動部を保持する基板に設けられた固定接点である、
請求項3から12のいずれかに記載のスイッチ装置。
【請求項14】
前記第2接点は、前記可動部により移動される可動接点であり、
前記第1接点は、前記可動部を保持する基板に設けられた固定接点である、
請求項3から12のいずれかに記載のスイッチ装置。
【請求項15】
前記可動部は、加熱されない状態において前記第1接点および前記第2接点を接触させ、加熱されると前記第2接点を前記第1接点から離間させるバイモルフを含み、
前記加熱部は、前記第1接点および前記第2接点を離間させてオフ状態とする場合および前記保護導電層に対して保護用の金属を補う場合に、前記可動部、前記金属供給層、および前記接点層を加熱する
請求項14に記載のスイッチ装置。
【請求項16】
前記加熱部は、前記保護導電層に対して保護用の金属を補う場合に、前記第1接点および前記第2接点を離間させてオフ状態とする場合と比較してより高い温度に前記可動部、前記金属供給層、および前記接点層を加熱する請求項15に記載のスイッチ装置。
【請求項17】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスとの間で電気信号を授受して前記被試験デバイスを試験する試験部と、
前記試験部および前記被試験デバイスの間に設けられ、前記試験部および前記被試験デバイスの間を電気的に接続または切断する請求項1から16のいずれかに記載のスイッチ装置と、
を備える試験装置。
【請求項18】
請求項1から16のいずれかに記載のスイッチ装置によるスイッチ方法であって、
前記第1接点および前記第2接点を接触または離間させる可動段階と、
前記保護導電層に対して保護用の金属を補う金属供給段階と、
を備えるスイッチ方法。
【請求項19】
第1接点および前記第1接点と接触する第2接点を備えるスイッチ装置の製造方法であって、
前記第2接点の表面に保護導電層を形成する保護導電層形成段階と、
前記保護導電層に対して保護用の金属を補う金属供給部を形成する金属供給部形成段階と、
前記第1接点および前記第2接点を接触または離間させる可動部を形成する可動部形成段階と、
を備える製造方法。
【請求項20】
前記金属供給部形成段階は、
前記第1接点の反対側において前記第2接点が有する接点層と重ねられる、保護用の金属を含む金属供給層を形成する金属供給層形成段階と、
製造後において前記金属供給層および前記接点層を加熱して、前記金属供給層から前記接点層を介して前記保護導電層へと保護用の金属を析出させる加熱部を形成する加熱部形成段階と、
を有し、
前記保護導電層形成段階は、前記金属供給層および前記接点層を加熱して、前記金属供給層から前記接点層を介して前記金属供給層の反対側へと保護用の金属を析出させて前記保護導電層を形成して、前記第1接点と接触する表面に前記保護導電層が設けられた前記第2接点を形成する
請求項19に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−249182(P2011−249182A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122334(P2010−122334)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】